(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明するが、本発明はこれらに図示される構造に限定されるものではない。
【0017】
(光ファイバ)
本発明の光ファイバは、芯と、芯の外周を取り囲む少なくとも1層からなる鞘とを有する。光ファイバの種類としては、例えば、ステップ・インデックス型光ファイバ、マルチステップ・インデックス型光ファイバ、グレーテッド・インデックス型光ファイバ、多芯光ファイバ等が挙げられる。これらの光ファイバの中でも、熱的に安定であり、製造が容易かつ安価であり、より長距離の通信を可能とすることから、ステップ・インデックス型光ファイバが好ましい。
【0018】
ステップ・インデックス型光ファイバは、芯と鞘との界面で光を全反射させ、芯内で光を伝播させる。
図1に、ステップ・インデックス型光ファイバ10の一例の断面構造を示す。
図1(a)は、鞘が1層からなる場合を示し、芯11の外周を鞘12が取り囲んでいる。
図1(b)は、鞘が2層からなる場合を示し、芯11の外周を1層目の鞘12a(最内層)が取り囲み、その1層目の鞘12aの外周を2層目(最外層)の鞘12bが取り囲んでいる。なお、本発明のステップ・インデックス型光ファイバにおいて、芯は単数でも複数でもよいが、単数であることが好ましい。
【0019】
(芯)
芯を構成する材料(芯材)は、透明性の高い樹脂であれば特に限定されず、使用目的等に応じて適宜選択することができる。透明性の高い樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、カーボネート系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの樹脂の中でも、光ファイバの伝送損失を低減する観点から、アクリル系樹脂が好ましい。
【0020】
アクリル系樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート単独重合体(PMMA)や、メチルメタクリレート単位を50質量%以上含む共重合体(メチルメタクリレート系共重合体)等が挙げられる。これらのアクリル系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアクリル系樹脂の中でも、光学特性、機械特性、耐熱性、透明性に優れることから、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレート単位を50質量%以上含む共重合体が好ましい。メチルメタクリレート系共重合体としては、メチルメタクリレート単位を60質量%以上含む共重合体が好ましく、メチルメタクリレート単位を70質量%以上含む共重合体がより好ましい。芯材は、メチルメタクリレート単独重合体であることが特に好ましい。
尚、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート又はその両方をいう。
【0021】
芯材は、公知の重合方法を用いて製造することができる。芯材を製造するための重合方法としては、例えば、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法等が挙げられる。これらの重合方法の中でも、異物の混入を抑制する観点から、塊状重合法又は溶液重合法が好ましい。
【0022】
(鞘)
鞘は、芯の外周に少なくとも1層形成される。鞘は、
図1(a)に示すように1層で形成されていてもよく、
図1(b)に示すように2層以上で形成されていてもよい。光ファイバの伝送損失を低減する観点から、鞘は、1層〜3層であることが好ましい。また、耐熱性、耐衝撃性及び耐薬品性を付与する観点から、2層であることがより好ましい。
【0023】
鞘を構成する材料(鞘材)は、芯材よりも屈折率が低い材料であれば特に限定されず、芯材の組成や使用目的等に応じて適宜選択することができる。
芯材としてアクリル系樹脂を用いる場合、光ファイバの伝送損失を低減する観点から、鞘材としてフッ素系樹脂を用いることが好ましい。特に、芯材としてメチルメタクリレート単独重合体やメチルメタクリレート単位を50質量%以上含む共重合体を用いる場合、光ファイバの伝送損失を低減する観点から、鞘材としてフッ素系樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
フッ素系樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデン(VDF)単独重合体、VDF/テトラフルオロエチレン(TFE)共重合体、VDF/TFE/ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、VDF/HFP共重合体、VDF/TFE/HFP/(パーフルオロ)アルキルビニルエーテル共重合体、VDF/ヘキサフルオロアセトン共重合体、VDF/TFE/ヘキサフルオロアセトン共重合体、エチレン/VDF/TFE/HFP共重合体、エチレン/TFE/HFP共重合体、VDF/トリフルオロエチレン共重合体、フルオロアルキル(メタ)アクリレート重合体、フルオロアルキル(メタ)アクリレート/アルキル(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。これらのフッ素系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのフッ素系樹脂の中でも、柔軟性、耐衝撃性、透明性、耐薬品性に優れ、低価格であることから、VDF/TFE共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体、VDF/HFP共重合体、エチレン/VDF/TFE/HFP共重合体、エチレン/TFE/HFP共重合体、フルオロアルキル(メタ)アクリレート重合体、フルオロアルキル(メタ)アクリレート/アルキル(メタ)アクリレート共重合体が好ましい。
【0025】
鞘が1層からなる場合、その鞘材は、VDF/TFE共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体、VDF/HFP共重合体、エチレン/VDF/TFE/HFP共重合体、エチレン/TFE/HFP共重合体、フルオロアルキル(メタ)アクリレート重合体、フルオロアルキル(メタ)アクリレート/アルキル(メタ)アクリレート共重合体が好ましく、耐溶剤性に優れることから、VDF/TFE共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体、VDF/HFP共重合体、エチレン/VDF/TFE/HFP共重合体、エチレン/TFE/HFP共重合体がより好ましい。
【0026】
鞘が2層以上からなる場合、1層目の鞘(最内層、
図1(b)における12a)材は、フルオロアルキル(メタ)アクリレート重合体、フルオロアルキル(メタ)アクリレート/アルキル(メタ)アクリレート共重合体が好ましい。また、鞘が2層以上からなる場合、2層目以降の鞘(外側の層、例えば
図1(b)における12b)材は、VDF/TFE共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体、VDF/HFP共重合体、エチレン/TFE/HFP共重合体が好ましく、VDF/TFE共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体、VDF/HFP共重合体がより好ましい。
【0027】
フルオロアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(13FM)、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(17FM)等の下記式(1)に示す長鎖フルオロアルキル(メタ)アクリレート;2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)等の下記式(2)に示す短鎖フルオロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
前記式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Xは、水素原子又はフッ素原子であり、mは、1又は2であり、nは、5〜13の整数である。
【0031】
前記式(2)中、Rは、水素原子又はメチル基であり、Xは、水素原子又はフッ素原子であり、mは、1又は2であり、nは、1〜4の整数である。
【0032】
フルオロアルキル(メタ)アクリレート重合体やフルオロアルキル(メタ)アクリレート/アルキル(メタ)アクリレート共重合体は、光ファイバの伝送損失を低減する観点から、前記式(1)に示す長鎖フルオロアルキル(メタ)アクリレートの単位10〜50質量%、前記式(2)に示す短鎖フルオロアルキル(メタ)アクリレートの単位20〜90質量%、及び他の共重合可能な単量体単位0〜50質量%からなる共重合体であることが好ましく、前記式(1)に示す長鎖フルオロアルキル(メタ)アクリレートの単位19.5〜50質量%、前記式(2)に示す短鎖フルオロアルキル(メタ)アクリレートの単位30〜80質量%、及び他の共重合可能な単量体単位0.5〜30質量%からなる共重合体であることがより好ましい。具体的には、前記組成比を有する17FM/3FM/メチルメタクリレート(MMA)/メタクリル酸(MAA)共重合体、13FM/3FM/メチルメタクリレート(MMA)/メタクリル酸(MAA)共重合体が好ましい。
【0033】
芯材と鞘材の屈折率は、芯材の屈折率よりも鞘材の屈折率が低ければ特に限定されない。光が伝播できる最大角度に対する開口数を大きくする観点から、芯材の屈折率が1.45〜1.55、鞘材の屈折率が1.35〜1.51であることが好ましく、芯材の屈折率が1.46〜1.53、鞘材の屈折率が1.37〜1.49であることがより好ましく、芯材の屈折率が1.47〜1.51、鞘材の屈折率が1.39〜1.47であることが更に好ましい。
尚、本明細書において、屈折率は、25℃においてナトリウムD線を用いて測定した値とする。
【0034】
(成形)
光ファイバは、公知の成形方法を用いて成形することができ、例えば、溶融紡糸法を用いることができる。溶融紡糸法による光ファイバの成形は、例えば、芯材及び鞘材をそれぞれ溶融し、複合紡糸することにより行うことができる。
【0035】
鞘中の異物の量を抑制するために、鞘材を得るための重合工程、重合後の溶融混練工程、溶融混練後のペレット切断工程、鞘材の乾燥工程、及び溶融紡糸のための鞘材の供給工程は、クリーンルームに準ずる環境下で行うことが好ましい。特に、光ファイバの伝送損失を低減する観点から、芯の外周を取り囲む最内層の鞘について、前記各工程をクリーンルームに準ずる環境下で行うことが好ましい。
【0036】
鞘材を得るための重合工程におけるクリーン度は、クラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましく、クラス100以下が更に好ましい。
尚、本明細書において、クリーン度は、米国連邦規格Fed.Std.209Dに準ずるものとする。
【0037】
重合後の溶融混練工程におけるクリーン度は、クラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましく、クラス100以下が更に好ましい。
【0038】
溶融混練後のペレット切断工程におけるクリーン度は、クラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましく、クラス100以下が更に好ましい。
【0039】
鞘材の乾燥工程におけるクリーン度は、クラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましく、クラス100以下が更に好ましい。
特に、最内層の鞘を構成する材料を乾燥する環境のクリーン度は、クラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましく、クラス100以下が更に好ましい。
【0040】
鞘材の供給工程におけるクリーン度は、クラス10000以下が好ましく、クラス1000以下がより好ましく、クラス100以下が更に好ましい。
【0041】
最内層の鞘に含まれる2μm以上のサイズの異物の量は、光ファイバの伝送損失を低減する観点から、2000個/cm
3以下が好ましく、1500個/cm
3以下がより好ましく、1000個/cm
3以下が更に好ましい。
また、最内層の鞘に含まれる64μmより大きいサイズの異物の量は、光ファイバの伝送損失を低減する観点から、0個/cm
3であることが好ましい。
尚、本明細書において、異物のサイズと量は、パーティクルカウンタを用いて測定した値とする。
【0042】
光ファイバの伝送損失を低減する観点から、最内層の鞘に含まれる異物のサイズX(μm)と、異物の量Y(個/cm
3)とが、下記数式(1)を満たすことが好ましく、下記数式(2)を満たすことがより好ましく、下記数式(3)を満たすことが更に好ましい。
【0043】
Y≦1200×e
(−0.067×X) (1)
Y≦1000×e
(−0.067×X) (2)
Y≦750×e
(−0.067×X) (3)
【0044】
尚、上記数式(1)〜(3)において、異物のサイズX(μm)は、2μm以上4μm以下のサイズ(Aサイズ)の異物を4μm、4μmより大きく8μm以下のサイズ(Bサイズ)の異物を8μm、8μmより大きく16μm以下のサイズ(Cサイズ)の異物を16μm、16μmより大きく32μm以下のサイズ(Dサイズ)の異物を32μm、32μmより大きく64μm以下のサイズ(Eサイズ)の異物を64μm、64μmより大きく100μm以下のサイズ(Fサイズ)の異物を100μmとして換算するものとする。eは、自然対数の底(ネイピア数)を示す。
【0045】
光ファイバの直径は、光ファイバの伝送損失を低減でき、取り扱いが容易であることから、0.5mm〜2.0mmが好ましく、0.6mm〜1.7mmがより好ましく、0.7mm〜1.4mmが更に好ましく、0.8mm〜1.2mmが特に好ましい。
【0046】
芯の外周を取り囲む最内層の鞘の厚さは、光ファイバの伝送損失、特に、波長525nmの光の伝送損失を低減でき、光素子との結合効率や光軸ずれに対する許容度の観点から、0.5μm〜4.5μmであり、2.0μm〜4.0μmが好ましく、2.5μm〜3.5μmがより好ましい。
尚、鞘の厚さは、紡糸条件により、適宜設定することができる。
【0047】
最内層の鞘に含まれる2μm以上のサイズの異物の量が2000個/cm
3以下である場合は、芯の外周を取り囲む最内層の鞘の厚さは、0.1μm〜15μmが好ましく、0.5μm〜4.5μmがより好ましく、2.0μm〜4.0μmが更に好ましく、2.5μm〜3.5μmが特に好ましい。
【0048】
光ファイバの直径に対する芯の直径は、光ファイバの伝送損失を低減でき、光素子との結合効率や光軸ずれに対する許容度の観点から、85%〜99.98%が好ましく、90%〜99.9%がより好ましく、93%〜99.6%が更に好ましく、95%〜99.5%が特に好ましい。
【0049】
光ファイバの直径に対する芯の外周を取り囲む最内層の鞘の厚さは、光ファイバの伝送損失、特に、波長525nmの光の伝送損失を低減でき、光素子との結合効率や光軸ずれに対する許容度の観点から、0.01%〜1.5%が好ましく、0.05%〜0.45%がより好ましく、0.20%〜0.40%が更に好ましく、0.25%〜0.35%が特に好ましい。
【0050】
鞘が2層からなる場合、1層目の鞘(最内層、
図1(b)における12a)と、2層目の鞘(最外層、
図1(b)における12b)の厚さは、適宜設定することができる。
鞘が2層からなる場合、1層目の鞘の厚さに対する2層目の鞘の厚さの比は、光ファイバの伝送損失を低減する観点から、1〜10が好ましく、1.2〜5がより好ましく、1.5〜4が更に好ましい。
【0051】
(後処理)
光ファイバは、機械特性を向上させる観点から、加熱延伸処理することが好ましい。加熱延伸処理の条件は、光ファイバの材料によって適宜設定すればよく、連続でもよく、バッチでもよい。
【0052】
光ファイバを温度差の大きい環境で用いる場合、ピストニングを抑制するため、光ファイバをアニール処理することが好ましい。アニール処理の条件は、光ファイバの材料によって適宜設定すればよく、連続でもよく、バッチでもよい。
【0053】
光ファイバの伝送損失を低減させるため、光ファイバを湿熱処理や温水処理してもよい。湿熱処理や温水処理の条件は、光ファイバの材料によって適宜設定すればよく、連続でもよく、バッチでもよい。
【0054】
光ファイバを湿熱処理や温水処理した後、光ファイバを乾燥処理してもよい。乾燥処理の条件は、光ファイバの材料によって適宜設定すればよく、連続でもよく、バッチでもよい。
【0055】
(伝送損失)
本発明の光ファイバは、波長525nm、励振NA=0.45の条件で、25m−1mのカットバック法により測定した伝送損失が、120dB/km以下であり、100dB/km以下であることが好ましい。
【0056】
尚、本明細書において、25m−1mのカットバック法の測定は、IEC 60793−1−40:2001に準拠して行う。具体的には、25mの光ファイバを測定装置にセットし、出力パワーP
2を測定した後、光ファイバをカットバック長(入射端から1m)に切断し、出力パワーP
1を測定し、下記数式(4)を用いて光の伝送損失を算出する。
【0058】
波長525nm、励振NA=0.45の条件で、25m−1mのカットバック法により測定した伝送損失を120dB/km以下とするためには、以下の条件1〜条件3のいずれかを満たすことが必要である。波長525nmの光の伝送損失をより低減できることから、条件1及び条件2の2条件を満たす、又は、条件1及び条件3の2条件を満たすことが好ましく、条件1及び条件2の2条件を満たすことがより好ましく、条件1〜条件3の全ての条件を満たすことが更に好ましい。
条件1:最内層の鞘の厚さを0.5μm〜4.5μmとする。
条件2:最内層の鞘に含まれる2μm以上のサイズの異物を2000個/cm
3以下とする。
条件3:最内層の鞘に含まれる異物のサイズX(μm)と異物の量Y(個/cm
3)とが下記数式(1)を満たす。
Y≦1200×e
(−0.067×X) (1)
【0059】
(被覆層)
本発明の光ファイバは、必要に応じて、外周に被覆層を設け、光ファイバケーブルとして用いてもよい。
【0060】
被覆層を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン樹脂;塩化ビニル樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂等の塩素樹脂;フッ素樹脂;ウレタン樹脂;スチレン樹脂;ポリアミド樹脂等が挙げられる。これらの被覆層を構成する材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
被覆層は、1層でもよく、2層以上でもよい。
【0062】
(用途)
本発明の光ファイバは、長距離の通信に多く用いられる緑色の光(特に、波長525nm)の伝送損失が低く、より長距離の通信を可能とする。そのため、本発明の光ファイバや光ファイバケーブルは、例えば、空港や倉庫等の進入防止フェンスのセンサ用途、ソーラーパネルや店舗ディスプレイ等の盗難防止センサ用途、セキュリティーカメラ用途等の長距離(100m以上)の通信が必要な用途に好適である。
尚、これらの用途に用いる光源のピーク波長は、500nm〜570nmであることが好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
(伝送損失の測定)
実施例及び比較例で得られた光ファイバの伝送損失は、波長525nmの光を用いて、励振NA=0.45の条件で、25m−1mのカットバック法により測定した。
25m−1mのカットバック法の測定は、IEC 60793−1−40:2001に準拠して行った。具体的には、25mの光ファイバを測定装置にセットし、出力パワーP
2を測定した後、光ファイバをカットバック長(入射端から1m)に切断し、出力パワーP
1を測定し、前記数式(4)を用いて光の伝送損失を算出した。
【0065】
(厚さの測定)
実施例及び比較例で得られた光ファイバの断面を、マイクロスコープ(機種名「VHX−1000」、(株)キーエンス製)を用いて、光ファイバの中心から120°ごとに鞘の厚さを3点測定し、3点の平均値を鞘の厚さとした。
【0066】
(鞘の異物のサイズと量の測定)
鞘材として用いる樹脂のペレット4gをアセトン200gに溶解させ、パーティクルカウンタ(パーティクルカウンタ「KL−11A」、光遮断式パーティクルセンサ「KS−65」、リオン(株)製)を用いて、以下に規定する各サイズの異物の量を測定した。
【0067】
Aサイズ:2μm以上4μm以下
Bサイズ:4μmより大きく8μm以下
Cサイズ:8μmより大きく16μm以下
Dサイズ:16μmより大きく32μm以下
Eサイズ:32μmより大きく64μm以下
Fサイズ:64μmより大きく100μm以下
【0068】
(材料)
実施例及び比較例においては、芯材又は鞘材として、以下に示す樹脂を使用した。
樹脂A:PMMA(屈折率1.492)
樹脂B:17FM/3FM/MMA/MAA共重合体(屈折率1.417)
樹脂C:13FM/3FM/MMA/MAA共重合体(屈折率1.417)
樹脂D:VDF/TFE共重合体(モル比80/20、屈折率1.405)
【0069】
[製造例1]樹脂Bの製造
クラス10000のクリーンルーム内において、2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(17FM)30質量部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)51質量部、メチルメタクリレート(MMA)18質量部、メタクリル酸(MAA)1質量部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.05質量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.05質量部、n−オクチルメルカプタン0.037質量部を混合し、得られた混合溶液に窒素ガスを1時間バブリングさせた。次いで、密封した重合容器に、得られた混合溶液を供給し、この重合容器を65℃の浴槽に5時間保持した。その後、この重合容器を120℃の蒸気乾燥器に2時間入れて、重合体を得た。
得られた重合体を、クラス10000のクリーンブース内において、1ベント式一軸押出機を用いて、残存単量体等を除去しながら溶融混練し、クラス100のクリーンブース内において、ペレットに切断し、得られたペレット(樹脂B)をステンレス製容器に採取した。
【0070】
[製造例2]樹脂Cの製造
単量体の混合量を、2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート(13FM)39質量部、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)41質量部、メチルメタクリレート(MMA)18質量部、メタクリル酸(MAA)2質量部に変更した以外は、製造例1と同様の操作を行い、樹脂Cを得た。
【0071】
[実施例1]
クラス100のクリーンブース内において、上記ステンレス製容器内の樹脂Bを60℃で24時間乾燥させ、ステンレス製容器と、紡糸ヘッドを先端に有する押出機とを接続した。その後、溶融させた樹脂A、樹脂B及び樹脂Dを、それぞれ220℃の紡糸ヘッドへ供給した。芯材として樹脂A、1層目の鞘(最内層)材として樹脂B、2層目の鞘(外側の層)材として樹脂Dを、3層構造の同心円状複合紡糸ノズルを用いて紡糸し、140℃の熱風加熱炉中で繊維軸方向に2倍に延伸して、芯の直径が970μm、1層目の鞘の厚さが5μm、2層目の鞘の厚さが10μmである直径1mmの光ファイバを得た。
得られた光ファイバの評価結果を、表1に示す。
【0072】
[実施例2〜3、10〜14、比較例1〜2]
製造条件を、それぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、光ファイバを得た。尚、実施例13においては、鞘が1層である光ファイバを製造した。
得られた光ファイバの評価結果を、表1に示す。
【0073】
[実施例4]
1層目の鞘(最内層)材として樹脂Cを用いて、1層目の鞘の厚さを3.5μmとした以外は、実施例1と同様の操作を行い、芯の直径が973μm、1層目の鞘の厚さが3.5μm、2層目の鞘の厚さが10μmである直径1mmの光ファイバを得た。
得られた光ファイバの評価結果を、表1に示す。
【0074】
[実施例5〜9]
製造条件を、それぞれ表1に示すように変更した以外は、実施例4と同様の操作を行い、光ファイバを得た。
得られた光ファイバの評価結果を、表1に示す。
【0075】
[比較例3]
製造条件を表1に示すように変更し、19個のノズル孔を六方配列で配置した芯−鞘−海複合紡糸ノズルを用いて紡糸した以外は、実施例4と同様の操作を行い、光ファイバを得た。得られた光ファイバは、19個の芯が、それぞれの外周に鞘(1層目の鞘)を有し、更に1つの鞘(海部、2層目の鞘)が1層目の鞘を取り囲んでいる、多芯光ファイバである。
得られた光ファイバの評価結果を、表1に示す。
【0076】
[比較例4]
製造条件を表1に示すように変更し、19個のノズル孔を六方配列で配置した芯−海複合紡糸ノズルを用いて紡糸した以外は、実施例4と同様の操作を行い、光ファイバを得た。得られた光ファイバは、19個の芯と、それを取り囲む1つの鞘(海部、1層目の鞘)からなる多芯光ファイバである。
得られた光ファイバの評価結果を、表1に示す。
【0077】
[比較例5]
製造条件を表1に示すように変更し、151個のノズル孔を六方配列で配置した芯−海複合紡糸ノズルを用いて紡糸した以外は、比較例4と同様の操作を行い、光ファイバを得た。
得られた光ファイバの評価結果を、表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
表1に示すように、実施例1〜14で得られた光ファイバは、比較例1〜5で得られた光ファイバに比べ、波長525nmの光の伝送損失が低かった。