(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フィルムに近赤外線吸収機能を付与する技術として、基材に近赤外線吸収性色素含有層を積層する技術が開示されている(特許文献1、2等)。
【0003】
この近赤外線吸収層に含まれる近赤外線吸収色素は一般に太陽光線に含まれる紫外線によって分解し、その性能が長期間の使用によって低下することが知られている。特に、近赤外線吸収色素として一般的に用いられている芳香族ジインモニウム塩化合物は、紫外線による変質が発生しやすい。
【0004】
この点に関し、特許文献1には、近赤外線吸収性色素含有層の両側にプラスチックフィルム基材を積層し、一方のプラスチックフィルム基材に紫外線吸収層を積層することにより、紫外線による変質を回避する技術が開示されている。また、特許文献2には、「最外層/中間層/最外層」の3層構造を有する基材の中間層に紫外線吸収剤を含有させる技術が開示されている。
【0005】
なお、紫外線吸収剤は、特に低分子タイプの場合、紫外線吸収剤のブリードアウトが生じ易くなることが知られている。紫外線吸収剤のブリードアウトは、フィルムの品質低下や、フィルムに積層される機能層との密着性の低下の要因となるため、好ましくない。
この点に関し、特許文献2には、「最外層/中間層/最外層」の3層構造を有する基材の中間層に紫外線吸収剤を含有させ、その両最外層には紫外線吸収剤を実質的に含有させない構成とすることにより、低分子タイプの紫外線吸収剤を用いた場合でも、紫外線吸収剤のブリードアウトを飛躍的に低減するという技術が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献2の技術では、上記のように、「最外層/中間層/最外層」の3層構造を有する基材の両最外層には紫外線吸収剤を実質的に含有させない構成としているため、太陽光線に晒される環境下で使用された場合、太陽光線に最も晒される表層において劣化が進行し易く、表層が劣化すると、中間層が紫外線に直接晒されてしまうため、ブリードアウトの抑制効果が十分に期待できなくなるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、近赤外線吸収機能及び紫外線吸収機能を備え、かつ、太陽光線に晒される環境下で使用された場合でも、紫外線吸収剤のブリードアウトを回避することができるフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構成からなるポリエステルフィルムを用いることにより、上述の課題を解決できることを見出し、以下の発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]〜[4]を提供する。
[1]近赤外線吸収剤及び反応性官能基を有する紫外線吸収剤を含有するポリエステルフィルムであって、前記ポリエステルフィルム中の近赤外線吸収剤の含有量A[重量%]と該ポリエステルフィルムの厚みT[μm]が下記式(1)を満足し、かつ、前記ポリエステルフィルム中の紫外線吸収剤の含有量B[重量%]とフィルム厚みT[μm]が下記式(2)を満足する、ポリエステルフィルム。
200≧T[μm]×A[重量%]≧10・・・・・(1)
1000≧T[μm]×B[重量%]≧100・・・(2)
[2]前記紫外線吸収剤が、1分子中に1〜2個の反応性官能基を有する、[1]に記載のポリエステルフィルム。
[3]前記反応性官能基が、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、ヒドロキシアルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つである、[1]又は[2]に記載のポリエステルフィルム。
[4]前記近赤外線吸収剤が、遷移金属元素を有する近赤外線吸収剤である、[1]〜[3]の何れかに記載のポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明者は、反応性官能基を有する紫外線吸収剤を使用することにより、紫外線吸収剤がポリエステルフィルムの最表層に存在する場合でも、紫外線吸収剤のブリードアウトを回避できることを見出して本発明を完成させた。本発明によれば、紫外線吸収剤がポリエステルフィルムの最表層に存在する場合でも、紫外線吸収剤のブリードアウトを回避できる。
また、本発明では、紫外線吸収剤がポリエステルフィルム自体に含有され、ポリエステルフィルムの最表層にも存在するため、ポリエステルフィルムの最表層が太陽光線に晒される環境下で使用された場合でも、太陽光線に含まれる紫外線は紫外線吸収剤に吸収され、近赤外線吸収色素の変質を回避することができる。
更に、本発明では、近赤外線吸収剤及び紫外線吸収剤がポリエステルフィルム自体に含有されているため、従来のように、基材に近赤外線吸収性色素含有層を積層したり、あるいは、基材に紫外線吸収層を積層する工程を経ることなく、近赤外線吸収機能及び紫外線吸収機能を備えたフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態におけるポリエステルフィルムを詳述する。
【0012】
<ポリエステルフィルム>
本発明においてポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押出される、いわゆる押出法による押し出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、延伸したフィルムを意味する。又は、全ての層が口金から共溶融押出される共押出法により押し出されたものを延伸後、必要に応じて熱固定したものを意味する。
【0013】
以下、ポリエステルフィルムとして3層構造のフィルムについて説明するが、本発明においてポリエステルフィルムは、その目的を満たす限り、単層構造であっても多層構造であってもよい。
【0014】
3層構造のポリエステルフィルムの各層を構成する重合体は、芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとグリコールとを主たる出発原料として得られるポリエステルを主とするものであり、繰り返し構造単位の60%以上がエチレンテレフタレート単位又はエチレン−2,6−ナフタレート単位を有するポリエステルを指す。そして、上記の範囲を逸脱しない条件であれば、他の第三成分を含有していてもよい。芳香族ジカルボン酸成分の例としては、テレフタル酸及びテレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸以外に、例えばイソフタル酸、フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシエトキシ安息香酸等)等を用いることができる。特に、テレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルを用いることが好ましい。グリコール成分の例としては、エチレングリコール以外に、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種又は二種以上を用いることができる。特に、エチレングリコールを用いることが好ましい。
【0015】
ポリエステルの極限粘度は、0.64dl/g以上、好ましくは0.66dl/g以上である。ポリエステルの極限粘度が0.64dl/g以上であると、湿熱処理後において長期耐久性や耐加水分解性が良好なポリエステルフィルムが得られる。一方、ポリエステルの極限粘度の上限はないが、重縮合反応の効率、溶融押出工程での圧力上昇防止の点から0.90dl/g程度である。ポリエステルの極限粘度の測定方法は、実施例に記載の通りである。
【0016】
本発明において本発明の目的を逸脱しない範囲でポリエステルに不活性粒子等を含有させることができ、その方法は特に限定されないが、重合工程で添加する方法、押出機を用い粒子をあらかじめ練込み、マスターバッチとする方法等が採用され得る。特に好ましい方法は、フィルム製造工程中の押出工程で直接粒子を添加混合する方法である。その際の押出機としてはベント付きの二軸押出機が好ましい。また、粒子の分散改良のために、同方向二軸押出機よりも異方向二軸押出機の方が好ましい。
【0017】
<ポリエステルフィルムの製造方法>
以下、本発明のポリエステルフィルムの製造方法に関して具体的に説明するが、本発明の構成要件を満足する限り、本発明は以下の例示に特に限定されるものではない。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムとは、全ての層が口金から共溶融押出しされる共押出法により、押出されたものが二軸方向に延伸、熱固定されたものが好ましい。共溶融押出しの方法としては、フィードブロックタイプ又はマルチマニホールドタイプのいずれを用いてもよい。そこで、本発明のポリエステルフィルムの製造方法を更に具体的に説明する。
【0019】
まず、近赤外線吸収剤と紫外線吸収剤と必要に応じて不活性粒子を含有するポリエステルを、各々別の溶融押出装置に供給し、当該ポリマーの融点以上の温度に加熱し溶融する。次いで、溶融したポリマーを押出口金内において層流状で接合させてスリット状のダイから押出す。そして、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、本発明においては静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が採用される。溶融押出工程においても、条件により末端カルボキシル基量が増加するので、本願発明においては、押出工程における押出機内でのポリエステルの滞留時間を短くする、一軸押出機を使用する場合は原料をあらかじめ水分量が50ppm以下、好ましくは30ppm以下になるように十分乾燥する、二軸押出機を使用する場合はベント口を設け、40ヘクトパスカル以下、好ましくは30ヘクトパスカル以下、更に好ましくは20ヘクトパスカル以下の減圧を維持する等の方法を採用する。
【0020】
このような方法で得られたシートを二軸方向に延伸してフィルム化するのが好ましい。延伸条件について具体的に述べると、前記未延伸シートを縦方向に70〜145℃で2〜6倍に延伸し、縦一軸延伸フィルムとした後、フィルムの少なくとも片面に、ハードコート層や粘着層等を形成するための塗布液を塗布し、適度な乾燥を施すか、あるいは未乾燥で、横方向に90〜160℃で2〜6倍延伸を行い、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行うことが好ましい。この際、熱処理の最高温度ゾーン及び/又は熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向及び/又は横方向に0.1〜20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸及び/又は再横延伸を付加することも可能である。
【0021】
ポリエステルフィルムの全厚みT[μm]は、通常20μm〜250μmである。フィルムの全厚みを20μm以上とすることで、十分な近赤外及び紫外吸収能を備えることができる。フィルムの全厚みを250μm以下とすることで、近年要求の強い軽量化への要求を満たすことができる。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムにハードコート層や粘着層等の塗布層を設けることで用途展開が広がる。一般的にポリエステルフィルムは不活性であることから易接着性、帯電防止性、離型性に乏しく、機能向上のために、塗布層を予め設けることが好ましい。塗布層は、ポリエステルフィルムの片面又は必要に応じて両面に形成してもよい。片面にのみ形成した場合、その反対面には必要に応じて上記の塗布層と異なる塗布層を形成して他の特性を付与することもできる。なお、塗布剤のフィルムへの塗布性や接着性を改良するため、塗布前にフィルムに化学処理や放電処理を施してもよく、更に、表面特性を改良するため、塗布層形成後に放電処理を施してもよい。
【0023】
塗布層を形成する方法としては、テンター入口前(配向結晶化完了前)で塗布してテンター内で乾燥するいわゆるインラインコートする方法が好ましい。この際、塗布は片面又は両面のいずれでもよい。
【0024】
<近赤外吸収剤>
本発明で使用する近赤外吸収剤は、着色性及び赤外吸収能、ブリードアウト抑制から無機系の酸化タングステンセシウム、6ホウ化ランタン、銅化合物、タングステン化合物、酸化インジウム錫、酸化アンチモン錫、リン酸イッテルビウム及びこれらの混合物、ニッケル錯体化合物、三酸化アンチモンなどが好ましいが、他にも有機系であるフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、インドアニリン化合物、ベンゾピラン化合物、キノリン化合物、アントラキノン化合物なども採用しても良い。近赤外吸収剤の種類については、特に限定されるものではなく、単独で使用、場合によっては2種以上の併用であってもよい。
遷移金属元素は自由電子の量が多く、電子遷移の吸収エネルギーが近赤外近傍にあることから、遷移金属元素を有する近赤外線吸収剤が望ましい。
【0025】
ポリエステルフィルム中の近赤外線吸収剤の含有量については、フィルム厚みT[μm]とフィルム中の近赤外線吸収剤量A[重量%]の積Xが10以上、200以下が好ましく、更に好ましくは15以上、150以下である。Xを10以上とすることで、十分な近赤外線吸収機能を備えることができる。Xを200以下とすることで、フィルムの着色を抑制して、視認性の良好なフィルムとすることができる。
【0026】
<紫外線吸収剤>
本発明で使用する紫外線吸収剤は、ポリエステルフィルムの最表層からのブリードアウトを抑制する観点から、フィルム成型時に押出機内でのポリエステルのエステル交換により、ポリエステル鎖中に組み込まれるため、反応性官能基を有することが重要であり、混練や押出などの成形性の観点から、1分子中に1〜2個の反応性官能基を有することが好ましい。反応性官能基の代表的なものとしては、アミン基、ヒドロキシル基、チオール基、ヒドロキシアルキル基などが考えられるが、作業性と環境の観点から、ヒドロキシアルキル基が望ましい。反応性官能基の種類や紫外線吸収剤の種類については、特に限定されるものではなく、単独で使用、場合によっては2種以上の併用であってもよい。
【0027】
基本骨格としては、例えば、有機系紫外線吸収剤として、ベンゾオキサジン系、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、パラアミノ安息香酸系、環状イミノエステル系、ケイ皮酸系紫外線吸収剤等、無機系紫外線級剤として、酸化チタン系、酸化亜鉛系、微粒子酸化鉄系等、各種採用できる。また、紫外線吸収剤と併用して、ラジカル補足剤として、ヒンダードアミン系などの光安定剤(HALS)も採用することができる。
【0028】
その中でも反応性の紫外線吸収剤の代表タイプとしては、例えば、下記(化1)の構造を有する2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2-ヒドロキシエチル)フェノール] CAS 196516-61-7を用いることができる。
【化1】
【0029】
ポリエステルフィルム中の紫外線吸収剤の含有量については、フィルム厚みT[μm]とフィルム中の紫外線吸収剤量B[重量%]の積Yが100以上、1000以下が好ましく、更に好ましくは150以上、750以下である。Yを100以上とすることで、紫外線吸収剤としての能力を満足することができる。Yを1000以下とすることで、ポリエステルの分子量の低下によってポリエステルフィルムの製膜が困難となる問題を回避することができる。
【0030】
<微粒子>
本発明のポリエステルフィルムには、微粒子を含有させることが、フィルムの巻上げ工程、塗工工程、蒸着工程等での作業性を向上させる上で望ましい。この微粒子としてはシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、カオリン等の無機粒子やアクリル樹脂、グアナミン樹脂等の有機粒子や触媒残渣を粒子化させた析出粒子を挙げる事ができるが、これらに限定されるものではない。これら粒子の中では、一時粒子の凝集粒子である多孔質シリカ粒子が特に好ましい。多孔質シリカ粒子はフィルムの延伸時に粒子周辺にボイドが発生しにくいため、フィルムの透明性を向上させる特長を有する。
【0031】
この多孔質シリカ粒子を構成する一次粒子の平均粒径は0.001μm〜0.1μmの範囲にあることが好ましい。一次粒子の平均粒径が0.001μm未満ではスラリー段階で解砕により極微細粒子が生成し、これが凝集体を形成して、異物が多くなる原因となる可能性があり、一方、一次粒子の平均粒径が0.1μmを超えると、粒子の多孔性が失われ、その結果、ボイド発生が少ない特長が失われる可能性がある。
【0032】
更に、凝集粒子の細孔容積は0.5ml/g〜2.0ml/g、好ましくは0.6ml/g〜1.8ml/gの範囲である。細孔容積が0.5ml/g未満では、粒子の多孔性が失われ、ボイドが発生しやすくなり、フィルムの透明性が低下する傾向がある。細孔容積が2.0ml/gより大きいと、解砕、凝集が起こりやすく、粒径の調整を行うことが困難となる場合がある。
【0033】
ポリエステルフィルムに粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用し得る。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し重縮合反応を進めてもよい。また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコール又は水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、又は、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0034】
なお、本発明のポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、染料などを添加することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、この実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定及び評価方法を以下に示す。
【0036】
<極限粘度(dl/g)>
ポリエステルチップをサンプリングする場合は粉砕し、ポリエステルフィルムをサンプリングする場合はカッターやはさみなどで適宜必要量を予め裁断する。得られたサンプルを、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の中に1.0g/dlとなるよう精秤して添加する。120℃で10分間かけて溶解させた後、徐々に室温まで冷却させた。毛細管粘度計を用いて、溶液の流下時間、及び、溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、極限粘度を算出した。その際、Huggins定数を0.33と仮定した。
【0037】
<日射遮蔽係数>
入射した日射熱のうち、厚み1.5mmのフロート板ガラス(透明)を介して室内へ流入する熱量を1とし、フィルム(75μm)を20枚重ねた場合での室内側へ流入する熱量を示したものを日射遮蔽係数として評価した(京都電子工業株式会社 熱流計HFM−201)。日射遮蔽係数が小さいほど、より遮熱することを示す。
【0038】
<透過濃度(OD)>
フィルムを単枚で測定し、Gフィルター下の透過濃度(OD)を測定し、着色性(隠蔽度)の指標とし、表示値が安定後、読み取りを行った(マクベス濃度計TD−904型)。透過濃度(OD)が小さいほど着色性(隠蔽度)が低いことを示す。
【0039】
<分光光線透過率(%)>
分光光度計(島津製作所製UV3100PC)により、ポリエステルフィルムに対し、ハロゲンランプ光源を用いてスキャン速度を低速、サンプリングピッチを1nm、光線波長300〜800nm領域で連続的に光線透過率を測定した。その測定結果より、光線波長380nmにおける光線透過率(Tuv)を読み取り、下記基準にて評価した。
○:Tuv≦40%
×:Tuv>40%
【0040】
<耐ブリード性>
ポリエステルフィルムを、150℃×60minの高温環境下にて処理し、その処理前後でのヘーズ差(ΔHz、日本電色工業(株)製ヘーズメーター NDH−2000にてN=3測定の平均算出)を測定し、下記基準にて評価した。
○:ΔHz≦+2.0%
×:ΔHz>+2.0%
【0041】
<フィルム製膜性>
無定形シートを縦延伸後、横延伸する際、横延伸機(テンター)において、延伸時にフィルムが破断する状況を下記基準にて評価した。
○:延伸時にフィルムが破断せず、生産性が良好な場合
×:時折又は常にフィルムが破断し、生産性が劣るあるいは全くない場合
【0042】
<X、Y>
下記の表1及び2において、Xはポリエステルフィルム中の近赤外線吸収剤の含有量A[重量%]と該ポリエステルフィルムの厚みT[μm]の積(=T[μm]×A[重量%])を意味し、Yはポリエステルフィルム中の紫外線吸収剤の含有量B[重量%]とフィルム厚みT[μm]の積(=T[μm]×B[重量%])を意味する。
上記のように、本発明では、近赤外線吸収剤の含有量、及び紫外線吸収剤の含有量を、それぞれ下記の範囲に規定している。
200≧X(=T[μm]×A[重量%])≧10
1000≧Y(=T[μm]×B[重量%])≧100
【0043】
次に以下の例で使用したポリエステル原料について説明する。
<ポリエステル(a)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム4水塩0.02部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.03部を添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモンを0.04部加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63dl/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断してポリエステル樹脂ペレット(プレポリマー)を製造した。前記ポリエステル樹脂ペレット(プレポリマー)を出発原料とし、真空下220℃にて固相重合を行って、ペレット状態のポリエステル(a)を得た。得られたポリエステルの極限粘度は0.85dl/gであった。
【0044】
<ポリエステル(b)の製造法>
ポリエステル(a)のプレポリマー(極限粘度0.66dl/g)の製造において、エステル交換終了後に、平均粒径が4.10μmのシリカ粒子を3.5重量部を配合する以外はポリエステル(a)のプレポリマーと同様の方法でポリエステル(b)を得た。得られたポリエステルの粘度は0.66であった。
【0045】
<ポリエステル(c)の製造法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール54重量部と1,4−シクロヘキサンジメタノール25重量部とを出発物質とし、触媒としてテトラブチルチタネート0.0110重量ppm、リン酸81重量ppmを反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。1時間後、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63dl/gに相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ストランド状に抜き出して、水冷後、カッターで切断して、ペレット状態のポリエステル(c)を製造した。得られたポリエステルの極限粘度は0.6dl/g3であった。
【0046】
<紫外線吸収剤(d)>
大和化成株式会社社製の反応性紫外線吸収剤(d)であって、下記(化2)の構造を有するDAINSORB T-33(2,2'-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(2-ヒドロキシエチル)フェノール])を使用した。
【化2】
【0047】
<紫外線吸収剤(e)>
ケミプロ化成株式会社社製の非反応性紫外線吸収剤(e)であって、下記(化3)の構造を有する2,2'-p-フェニレンビス(4H-3,1-ベンゾキサジン-4-オン)を使用した。
【化3】
【0048】
<近赤外線吸収剤マスターバッチ(MB)(f)の製造法>
住友金属鉱山株式会社製の近赤外線吸収剤であるKHDS−06(LaB6(6ホウ化ランタン)含有)10重量%及びポリエステル(a)90重量%を二軸混錬機により混練、押出し、ポリエステルのマスターバッチ(f)を得た。
【0049】
実施例1:
前述のポリエステル(a)、(b)及び紫外線吸収剤(d)をそれぞれ81.8%、16.0%、2.2%の割合で混合した混合原料を(A)層の原料(サブ押出機)とし、ポリエステル(c)、紫外線吸収剤(d)、近赤外線吸収剤MB(f)をそれぞれ95.8%、2.2%、2.0%の割合で混合した混合原料を(B)層の原料(メイン押出機)として、2台のベント式二軸押出機に各々を供給し、それぞれ285℃で溶融し、(A)層を最外層(表層)、(B)層を中間層とする2種3層(A/B/A)の層構成で共押出して口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.0倍延伸した後、テンターに導き、横方向に120℃で4.1倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ75μmの、各層の厚みが2.6/69.8/2.6μmの積層ポリエステルフィルムを得た。評価結果は表1に示す。
【0050】
比較例1〜2:
下記表2に示す原料配合比、ならびにフィルム厚みについて、実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果も表2に示す。
比較例1は、X(=T[μm]×A[重量%])が10未満となるように近赤外線吸収剤の配合量とフィルムの膜厚を調整した例である。比較例1では、日射遮蔽係数が大きくなり、十分な近赤外線吸収機能を得られなかった。
比較例2は、X(=T[μm]×A[重量%])が200超となるように近赤外線吸収剤の配合量とフィルムの膜厚を調整した例である。比較例2では、透過濃度が大きくなり、フィルムの着色が大きく視認性が劣ることが確認された。
【0051】
比較例3:
下記表2に示す原料配合比、ならびにフィルム厚みについて、実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果も表2に示す。
比較例3は、反応性紫外線吸収剤(d)を多量に配合した処方であり、溶融押出の工程において、PET分子鎖の解離の触媒としても働くため、極端なIVドロップにより、製膜が困難となった。
【0052】
比較例4:
下記表2に示す原料配合比、ならびにフィルム厚みについて、実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果も表2に示す。
比較例4は、反応性紫外線吸収剤(d)を少量に配合した処方であり、紫外域の光線透過率カットが不十分であった。
【0053】
比較例5〜6:
下記表2に示す原料配合比、ならびにフィルム厚みについて、実施例1と同様の方法で二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。評価結果も表2に示す。
比較例比較例5〜6は、非反応性紫外線吸収剤(e)を配合した処方であり、(A)層かつ(B)層に当該紫外線吸収剤を配合した場合、(B)層のみに当該紫外線吸収剤を配合した場合に関わらず、十分な耐ブリード性が得られなかった。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】