特許第6972532号(P6972532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972532湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972532
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20211111BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20211111BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20211111BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20211111BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20211111BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   C08G18/30 070
   C08G18/10
   C08G18/42
   C08G18/79 010
   C08G18/72 010
   C09J175/06
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-208638(P2016-208638)
(22)【出願日】2016年10月25日
(65)【公開番号】特開2018-70684(P2018-70684A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】野中 諒
(72)【発明者】
【氏名】南田 至彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊邦
(72)【発明者】
【氏名】二宮 淳
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−201460(JP,A)
【文献】 特開平04−222888(JP,A)
【文献】 特開2007−161991(JP,A)
【文献】 特開2008−248152(JP,A)
【文献】 特表2001−527117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00− 18/87
C08G 71/00− 71/04
C09J175/00−175/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)と、多官能イソシアネート(B−1)を含むポリイソシアネート(B)と、の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有し、
前記ポリオール(A)が、さらに、前記ポリエステルポリオール(A−1)以外のポリオールを含むものであり、
前記ポリイソシアネート(B)が、更に、ジイソシアネート(B−2)を含み、
前記多官能イソシアネート(B−1)が、イソシアヌレート化合物(B−1−1)及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−1−2)を含み、
前記イソシアヌレート化合物(B−1−1)の含有量が、前記ポリイソシアネート(B)中0.1〜30質量%の範囲であり、
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−1−2)の含有量が、前記ポリイソシアネート(B)中0.1〜30質量%の範囲であることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。
【化1】
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、R及びRの有する炭素原子数の合計は12以上であり、nは3〜40の整数を示す。)
【請求項2】
前記イソシアヌレート化合物(B−1−1)が、脂肪族イソシアヌレート化合物である請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初期強度、及び耐加水分解性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチン扉、クローゼット扉、窓枠等の建築部材やカウンターテーブル等の家具などに用いられる表面に曲面や凹凸を有する材料に対しては、意匠性向上のため、木目印刷の施されたオレフィンシート、PET(ポリエチレンテレフタラート)シート等の合成樹脂製化粧シート、樹脂加工紙、つき板などの表装用シートを連続してラッピングしながら、接着剤を用いて貼り付けるラッピング加工が広く行われている。
【0003】
ラッピング加工を行う際には、前記表面に曲面や凹凸を有する材料に対し、強力な初期強度及び耐加水分解性等の耐久性のある接着剤が求められる。
【0004】
前記ラッピング加工に使用できる接着剤としては、例えば、脂環式ポリエステルポリオール及び脂肪族ポリエステルポリオールを含有するポリオールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0005】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤は、優れた初期接着性を有するものの、耐加水分解性に改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−87150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、初期強度、及び耐加水分解性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)と、多官能イソシアネート(B−1)を含むポリイソシアネート(B)と、の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有することを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物に関する。
【0009】
【化1】
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、R及びRの有する炭素原子数の合計は12以上であり、nは3〜40の整数を示す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト組成物は、初期強度、及び耐加水分解性に優れるものである。よって、本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト組成物は、下足扉、クローゼット扉、キッチン扉、枠材、額縁、廻り縁、巾木等の建築内装材、カウンターテーブル、家具用天板等の家具のラッピング加工に使用される接着剤として特に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト組成物は、下記式(1)で示されるポリエステルポリオール(A−1)を含むポリオール(A)と、多官能イソシアネート(B−1)を含むポリイソシアネート(B)と、の反応物であるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを含有するものである。
【0012】
【化2】
(式(1)中、R及びRは、それぞれ独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基を示し、R及びRの有する炭素原子数の合計は12以上であり、nは3〜40整数を示す。)
【0013】
前記ポリエステルポリオール(A−1)は、優れた初期強度を得るうえで前記式(1)で示されるものを用いることが必須である。
【0014】
前記式(1)中のRは、炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基であり、RとRの有する炭素原子数の合計が12以上になる範囲で適宜選択することができる。中でも、より優れた初期強度が得られる点から、好ましくは炭素原子数が4以上、より好ましくは4〜12、更に好ましくは4〜8の偶数である直鎖のアルキレン基であることが好ましい。
【0015】
前記式(1)中のRは、前記Rとは独立して炭素原子数が偶数である直鎖のアルキレン基であり、RとRの有する炭素原子数の合計が12以上になる範囲で適宜選択できる。中でも、より優れた初期強度が得られる点から、好ましくは炭素原子数が4以上、より好ましくは6〜12の偶数である直鎖のアルキレン基であることが好ましい。
【0016】
前記式(1)中のnは、3〜40の整数を示す。中でも、より優れた初期強度が得られる点から、5〜25が好ましく、9〜15がより好ましい。
【0017】
前記ポリエステルポリオール(A−1)の具体例としては、例えば、炭素原子数が偶数である直鎖ジオールと炭素原子数が偶数の多塩基酸との縮合反応物を用いることができる。
【0018】
前記炭素原子数が偶数である直鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール等を用いることができる。これらのジオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より優れた初期強度が得られる点から、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、及び1,10−デカンジオールからなる群より選ばれる1種以上のジオールを用いることが好ましい。
【0019】
前記炭素原子数が偶数の多塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ドデカメチレンジカルボン酸等を使用することができる。これらのタ塩基酸は単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より優れた初期強度が得られる点から、アジピン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸からなる群より選ばれる1種以上の多塩基酸を用いることが好ましく、セバシン酸及び/又はドデカンニ酸を用いることがより好ましい。
【0020】
前記ポリエステルポリオール(A−1)の数平均分子量としては、より優れた初期強度が得られる点から、500〜10,000の範囲であることが好ましく、700〜8,000の範囲がより好ましく、800〜5,000の範囲が更に好ましい。なお、前記ポリエステルポリオール(A−1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0021】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0022】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A−5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F−550」
【0023】
前記ポリエステルポリオール(A−1)の含有量としては、より優れた初期強度が得られる点から、ポリオール(A)中10〜85質量%の範囲であることが好ましく、20〜70質量%の範囲がより好ましい。
【0024】
前記ポリオール(A)としては、前記ポリエステルポリオール(A−1)以外に、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエーテルポリオール等のポリエーテルポリオール;前記(A−1)以外の脂肪族ポリエステルオール、芳香族ポリエステルポリオール等のポリエステルポリオール;ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ダイマージオールなどのポリオ−ルを用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より優れた溶融粘度、及び耐加水分解性が得られる点から、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及び、芳香族ポリエステルポリオールからなる群より選ばれる1種以上のポリオールを用いることが好ましく、ポリプロピレングリリコール、ポリカーボネートポリオール、及び芳香族ポリエステルポリオールを用いることがより好ましい。
【0025】
前記ポリエステルポリオール(A−1)以外のポリオールの数平均分子量としては、より優れた塗膜の機械的強度、及び、耐加水分解性が得られる点から、500〜20,000の範囲であることが好ましく、700〜8,000の範囲がより好ましい。なお、これらのポリオールの数平均分子量は、前記ポリエステルポリオール(A−1)と同様に測定して得られた値を示す。
【0026】
前記ポリイソシアネート(B)としては、優れた耐加水分解性を得るうえで多官能イソシアネート(B−1)を用いることが必須である。
【0027】
前記多官能イソシアネート(B−1)としては、例えば、ジイソシアネート(B−2)の3量体であるイソシアヌレート化合物(B−1−1);アダクト化合物;ビュレット化合物;アロファネート化合物;ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−1−2)等の多官能ポリイソシアネートを用いることができる。これらの多官能ポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、本発明において前記「多官能ポリイソシアネート(B−1)」の「多官能」とは、イソシアネート基を3個以上有することを示す。
【0028】
前記ジイソシアネート(B−2)としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ポリイソシアネートなどのジイソシアネートを用いることができる。これらのジイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記多官能イソシアネート(B−1)としては、より優れた耐加水分解性を得るうえで、イソシアヌレート化合物(B−1−1)を用いることが好ましく、前記イソシアヌレート化合物(b−1−1)としては、脂肪族イソシアヌレート化合物を用いることがより好ましい。
【0030】
前記イソシアヌレート化合物(B−1)の含有量としては、より優れた耐加水分解性が得られる点から、前記ポリイソシアネート(B)中0.1〜30質量%の範囲であることが好ましく、5〜25質量の範囲がより好ましく、10〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0031】
更に、前記多官能イソシアネート(B−1)としては、より一層優れた耐加水分解性を得るうえで、イソシアヌレート化合物(B−1−1)と、更にポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−1−2)とを組合せ用いることが好ましい。
【0032】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−1−2)としては、具体的には下記式(2)で示されるものであり、好ましくは式(2)中、nが1〜5の整数を示すものである。
【0033】
【化3】
(式(2)中、nは1以上の整数である。)
【0034】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(B−1−2)としては、例えば、東ソー株式会社製「ミリオネート MR−100」、「ミリオネート MR−200」、万華ジャパン株式会社製「WANNATE PM−200」、「WANNATE PM−400」、三井化学株式会社製「コスモネートM−1500」、ダウケミカル株式会社製「ボラネートM−595」等を市販品として入手することができる。
【0035】
前記多官能ポリイソシアネート(B−1−2)を用いる場合の含有量としては、より優れた耐加水分解性が得られる点から、前記ポリイソシアネート(B)中0.1〜30質量%の範囲であることが好ましく、5〜25質量の範囲がより好ましく、10〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0036】
前記イソシアヌレート化合物(B−1−1)と前記多官能ポリイソシアネート(B−1−2)との質量比としては、より優れた溶融粘度、初期強度、及び耐加水分解性が得られる点から、30/70〜70/30の範囲であることが好ましく、40/60〜60/40の範囲であることがより好ましい。
【0037】
前記ポリイソシアネート(B)としては、前記多官能イソシアネート(B−1)以外に、前記ジイソシアネート(B−2)を用いることができる。前記ジイソシアネート(B−2)としては、より優れた接着性、及び耐加水分解性が得られる点から、ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0038】
前記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、前記ポリオール(A)と前記ポリイソシアネート(B)とを反応させて得られるものであり、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される筐体や被着体中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基をポリマー末端や分子内に有するものである。
【0039】
前記ウレタンプレポリマーの製造方法としては、例えば、前記ポリオール(A)を入れた反応容器に、前記ポリイソシアネート(B)を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(B)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(A)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0040】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際の、前記ポリイソシアネート(B)が有するイソシアネート基と前記ポリオール(A)が有する水酸基の当量比([イソシアネート基/水酸基])としては、初期強度をより一層向上でき、適度な溶融粘度が得られる点から、1.1〜5の範囲であることが好ましく、1.5〜3の範囲がより好ましい。
【0041】
前記ウレタンプレポリマーを製造する際には、必要に応じてウレタン化触媒を用いることができる。ウレタン化触媒は、前記反応の任意の段階で、適宜加えることができる。
【0042】
前記ウレタン化触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の含窒素化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の金属塩;ジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物などを用いることができる。これらの触媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
以上の方法によって得られるウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、初期強度の点から、0.5〜10%の範囲であることが好ましく、1.7〜5%の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタンプレポリマーのNCO%は、JISK1603−1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0044】
前記ウレタンプレポリマーの溶融粘度としては、作業性及び初期強度をより一層向上できる点から、120℃における溶融粘度が1,000〜20,000mPa・sの範囲であることが好ましく、2,000〜13,000mPa・sの範囲であることがより好ましい。なお、前記120℃における溶融粘度は、コーンプレート粘度計(ICI製)で測定した値を示す。
【0045】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物は、前記ウレタンプレポリマーのみから構成されてもよいが、必要に応じてその他の添加剤を含有していてもよい。
【0046】
前記その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、安定剤、充填材、染料、顔料、蛍光増白剤、シランカップリング剤、ワックス、熱可塑性樹脂等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0047】
以上の方法により得られる本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト組成物は、初期強度、及び耐加水分解性に優れるものである。よって、本発明の湿気硬化型ウレタンホットメルト組成物は、下足扉、クローゼット扉、キッチン扉、枠材、額縁、廻り縁、巾木等の建築内装材、カウンターテーブル、家具用天板等の家具のラッピング加工に使用される接着剤として特に好適に使用することができる。
【0048】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を用いてラッピング加工する方法としては、例えば、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を100〜120℃の温度で溶融し、その後、基材上に前記溶融した湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を塗布し、その後、シート又はフィルムを公知のラッピング装置により圧着する方法が挙げられる。
【0049】
前記溶融した湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を塗布する方法としては、例えば、ナイフコーター、ヘッドコーター、スリットコーター、T−ダイコーター、ロールコーター等を使用する方法が挙げられる。
【0050】
前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物の塗布物の厚さとしては、使用される用途によって適宜決定されるが、例えば、1〜200μmの範囲である。
【0051】
前記基材としては、例えば、天然木材、合板、MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)、パーチクルボード等の木質基材;鉄等の金属基材;プラスチックボード、アルミなどを用いることができる。前記基材は、溝部、R部、逆R部等の複雑な形状の部位を有していてもよい。
【0052】
前記シート又はフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂を用いて得られたシート又はフィルム;紙;金属箔;突板などを用いることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0054】
[実施例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口を備えた四口フラスコに、ポリエステルポリオール(1,6−ヘキサンジオールとドデカン二酸との反応物、数平均分子量:3,500、以下「HG/DDA」と略記する。)を33質量部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量:2,000、以下「PPG」と略記する。)を48質量部仕込み、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。
次いで、フラスコ内を70℃に冷却し、70℃で溶融した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する。)13質量部、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(東ソー株式会社製「ミリオネート MR−200」、以下「ポリメリックMDI」と略記する。)3質量部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート化合物(以下、「HDIヌレート」と略記する。)3質量部を加え、窒素雰囲気下でNCO%が一定となるまで100℃で約3時間反応させることによってウレタンプレポリマーを得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物とした。
【0055】
[実施例2〜5、及び、比較例1〜2]
用いるポリオール(A)及びポリイソシアネート(B)の種類及び量を表1に示す通り変更した以外は、実施例1と同様にしてウレタンプレポリマーを得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を得た。
【0056】
[初期強度の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を、それぞれ120℃の温度で1時間溶融させた。該接着剤をポリエチレンテレフタレートシート上に厚さが50μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。該塗布層の上に、MDF(ミディアム・デンシティ・ファイバーボード)を貼り合せ、圧着ローラーで圧着した。圧着後5分経過後から25mm幅の試験片に対して、75gの荷重を90°方向に与えて、15分経過後のポリエチレンテレフタレートシートの剥離長さ(mm)を測定し、以下のように評価した。
「○」:剥離長さが5mm未満
「×」:剥離長さが5mm以上
【0057】
[耐加水分解性の評価方法]
実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物を、それぞれ120℃の温度で1時間溶融させた。該接着剤をポリリエチレンテレフタレートシート上に厚さが50μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布した。該塗布層の上に、MDFを貼り合せ、圧着ローラーで圧着した。得られた試験片を23℃、湿度50%の条件下で5日間養生した後、85℃、湿度85%の雰囲気下で、25mm幅に対し、70gの荷重を90°方向に与えたままポリエチレンテレフタレートシートが40mm以上剥離するまでの日数を測定し、以下のように評価した。
「○」:20日以上
「×」:20日未満
【0058】
【表1】
【0059】
表1中の略語は以下のものを示す。
・「HG/SEBA」:1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸との反応物、数平均分子量:3,500
・「HG/AA」:1,6−ヘキサンジオールとアジピン酸との反応物、数平均分子量:3,500
・「PEs2」:エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、イソフタル酸、及びテレフタル酸の反応物、数平均分子量:2,600
【0060】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト組成物である実施例1〜5は、初期強度及び耐加水分解性に優れることがわかった。
【0061】
一方、比較例1は、ポリイソシアネート(B)としてイソシアヌレート化合物(B−1)を含まない態様であるが、耐加水分解性が不良であった。
【0062】
比較例2は、特定のポリエステルポリオール(A−1)の代わりに、他のポリエステルポリオールを用いた態様であるが、初期強度が不良であった。