(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
多孔質電極基材等の多孔質炭素シートは、通常、長尺のシートとして製造され、紙管に巻き回されてロール状物とされる。該ロール状物を搬送する際には、シート状緩衝材で覆った後、段ボール箱等の梱包容器内に個別に梱包される。梱包容器内においては、多孔質炭素シートの破損を抑制するために、ロール状物の紙管が支持部材によって支持された状態とされる。
【0003】
梱包形態としては、例えば、
図6に例示した梱包形態が挙げられる。
具体的には、紙管210に多孔質炭素シート212を巻き回したロール状物200を、シート状緩衝材(不図示)で覆った後、一対の支持部材214,216で支持する。支持部材214は、上部分割片214aと下部分割片214bとを備えている。上部分割片214aの片面の下側には半円状の窪み215aが形成されており、下部分割片214bの片面の上側には半円状の窪み215bが形成されている。同様に、支持部材216は、上部分割片216aと下部分割片216bとを備えている。上部分割片216aの片面の下側には半円状の窪み217aが形成されており、下部分割片216bの片面の上側には半円状の窪み217bが形成されている。
【0004】
上部分割片214aの窪み215aと下部分割片214bの窪み215bとを合わせた円形状の窪みに紙管210の一方の端部を嵌め込み、上部分割片216aの窪み215aと下部分割片214bの窪み215bとを合わせた円形状の窪みに紙管210の他方の端部を嵌め込むことで、ロール状物200を支持する。このように支持部材214,216で支持した状態でロール状物200を段ボール箱218内に梱包する。段ボール箱218内では、支持部材214,216が段ボール箱218における対向する内面にそれぞれ沿うように配置された状態でロール状物200を支持しており、多孔質炭素シート212が段ボール箱218の内面に接しないようになっている。これにより、搬送時に多孔質炭素シート212が損傷することが抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、紙管に多孔質炭素シートを巻き回したロール状物では、紙管から生じる紙粉が多孔質炭素シートに混入することがある。また、多孔質炭素シートが床等に接することで破損が生じたり汚染されたりするため、該ロール状物は床等に直置きできない。また、特許文献1のような、紙管に多孔質炭素シートを巻き回したロール状物の梱包方法では、ロール状物を個別に梱包するため煩雑であり、また梱包部材も多くコスト面でも不利である。
【0007】
本発明は、簡便で低コストに搬送でき、また多孔質炭素シートに紙粉等が混入することや、床等に直置きした際に多孔質炭素シートが破損したり汚染したりすることを抑制できるロール状物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]円筒状の芯材と、前記芯材の両端に前記芯材と直交するようにそれぞれ設けられた平板部とを備えるボビンに、多孔質炭素シートが巻き回され、平らな面に載置した際に前記多孔質炭素シートが載置面に接しない、ロール状物。
[2]前記平板部が円板状であり、前記平板部の直径が、前記多孔質炭素シートが巻き回されて形成されたロール体の直径よりも大きい、[1]に記載のロール状物。
[3]前記平板部の直径が300mm以上である、[2]に記載のロール状物。
[4]少なくとも一方の前記平板部が前記芯材に着脱自在に設けられている、[1]〜[3]のいずれかに記載のロール状物。
[5]前記平板部の前記芯材側の表面に緩衝材が設けられている、[1]〜[4]のいずれかに記載のロール状物。
[6]前記平板部に、前記ボビンが転がることを防止するストッパー部が設けられている、[2]〜[5]のいずれかに記載のロール状物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のロール状物は、簡便で低コストに搬送でき、また多孔質炭素シートに紙粉等が混入することや、床等に直置きした際に多孔質炭素シートが破損したり汚染したりすることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のロール状物は、円筒状の芯材と、前記芯材の両端に前記芯材と直交するようにそれぞれ設けられた平板部とを備えるボビンに、多孔質炭素シートが巻き回され、平らな面に載置した際に前記多孔質炭素シートが載置面に接しないものである。
以下、本発明のロール状物の一例を示してさらに詳細に説明する。
【0012】
本実施形態のロール状物10は、
図1に示すように、ボビン12と、多孔質炭素シート14がボビン12に巻き回されて形成されたロール体15と、を備えている。ボビン12は、
図2に示すように、円筒状の芯材16と、芯材16の両端に芯材16と直交するようにそれぞれ設けられた円板状の第1平板部18及び第2平板部20とを備えている。また、ボビン12における第1平板部18の内側と、第2平板部20の内側には、それぞれ円環状の緩衝材22,24が配置されている。
【0013】
多孔質炭素シート14としては、例えば、燃料電池のガス拡散電極基材として用いられる多孔質電極基材等が挙げられる。多孔質電極基材は、多数のランダムな方向に分散された炭素短繊維が樹脂炭化物で結着されたシート状の基材である。
炭素短繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等の炭素繊維を適当な長さに切断したものが挙げられる。
【0014】
炭素短繊維の平均繊維長は、2〜12mmが好ましく、3〜9μmが好ましく、多孔質電極基材の平滑性の面から、4〜8μmであることがより好ましい。平均繊維長は、市販の繊維長測定機(例えば、野村商事(株)製、HiRes−FQA(商品名)等)により測定することができ、平均繊維径は、市販の繊維径測定機(例えば、ダイアストロン社製、FDAS765(商品名)等)により測定することができる。
【0015】
樹脂炭化物としては、フェノール樹脂等の炭化時の残存質量が大きい樹脂の炭化物が好ましい。
多孔質電極基材の樹脂炭化物の含有量は、5〜25質量%が好ましく、10〜20質量%が好ましい。
【0016】
多孔質電極基材の製造方法としては、特に限定されず、例えば、炭素短繊維を分散してシート状物とし、該シート状物に樹脂を添加した後、加熱して炭素化する方法が挙げられる。
【0017】
芯材16の外径は、80mm〜200mmが好ましく、90mm〜180mmがより好ましい。芯材16の外径が下限値以上であれば、芯材16に巻き回される多孔質炭素シート14に割れ等の破損が生じることを抑制しやすい。芯材16の外径が上限値を超えると、ロール状物が大きくなり、スペースを確保しにくくなる。
【0018】
芯材16の長さは、特に限定されず、多孔質炭素シート14の幅等に応じて適宜設定すればよい。芯材16の長さは、例えば、100〜1000mmとすることができる。
【0019】
第1平板部18及び第2平板部20は、芯材16の両端にそれぞれ設けられた円板状の部材である。この例のロール状物10では、第1平板部18及び第2平板部20の直径はロール体15の直径よりも大きい。これにより、
図3に示すように、平らな載置面100にロール状物10を芯材16が水平方向となるように載置した場合でも、第1平板部18又は第2平板部20の周端部が載置面100に接するため、多孔質炭素シート14は載置面100に接しない。また、平らな載置面100にロール状物10を芯材16が垂直方向となるように載置した場合は、第1平板部18又は第2平板部20の外面が載置面100に接するため、多孔質炭素シート14は載置面100に接しない。このように、ロール状物10は、平らな載置面100に載置した際に多孔質炭素シート14が載置面100に接しない。そのため、保管時や搬送時にロール状物10を載置しても多孔質炭素シート14が破損したり汚染されたりすることを抑制できる。
【0020】
第1平板部18の直径は、300mm以上が好ましく、300〜800mmがより好ましく、400〜600mmがさらに好ましい。第1平板部18の直径が下限値以上であれば、ロール体15の直径をより大きくできるため、多孔質炭素シート14が破損したり汚染されたりすることを抑制しつつ、より大きなロール体15の保管が可能となる。第1平板部18の直径が上限値以下であれば、人力で容易に搬送することができる。
第2平板部20の直径は、第1平板部18の直径と同様の理由から、300mm以上が好ましく、300〜800mmがより好ましく、400〜600mmがさらに好ましい。
第1平板部18の直径と第2平板部20の直径は同じであることが好ましい。
【0021】
第1平板部18及び第2平板部20の少なくとも一方は、着脱自在に芯材16に設けられていることが好ましい。これにより、ロール体15に巻きずれが生じた場合でも第1平板部18及び第2平板部20のいずれか一方又は両方を取り外して巻きずれを修正することができる。また、第1平板部18及び第2平板部20のいずれか一方又は両方を取り外した状態で芯材16に多孔質炭素シート14を巻き回してロール体15を形成することで、ボビン12への多孔質炭素シート14の巻取り操作がより容易に行える。
【0022】
ボビン12を形成する材料としては、特に限定されず、例えば、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネートポリブチレンテレフタレート等の樹脂、アルミニウム、ステンレス等の金属等が挙げられる。なかでも、金属分混入防止の点から、樹脂が好ましく、寸法精度及びコストの観点からABS樹脂がより好ましい。
ボビン12を形成する材料としては、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0023】
この例では、ボビン12における第1平板部18の内側の表面に緩衝材22が配置され、第2平板部20の内側に緩衝材24が配置されている。緩衝材22,24が配置されていることで、保管時や運搬時等にロール体15が芯材16の軸方向に移動したり、巻きずれが生じたりしても、多孔質炭素シート14が第1平板部18や第2平板部20と接して破損することを抑制しやすい。
【0024】
この例の緩衝材22,24はシート状であり、正面視形状が円環状になっている。緩衝材22,24は、接着剤等によって第1平板部18及び第2平板部20に接着されていてもよく、第1平板部18及び第2平板部20とは接着されていない状態であってもよい。
【0025】
緩衝材22,24の材質としては、多孔質炭素シート14が第1平板部18や第2平板部20と接して破損することを抑制できるものであればよく、例えば、ビーズ状発泡タイプ、気泡状発泡タイプ、ウレタンタイプ、発泡シートタイプ等が挙げられる。緩衝材22,24の材質としては、ポリプロピレンやポリエチレンが挙げられる。
【0026】
ロール状物10においては、ロール体15と緩衝材22,24は接しておらず、互いに離間していることが好ましい。すなわち、ロール状物10においては、ロール体15と緩衝材22,24との間に隙間が形成されていることが好ましい。このように、ロール体15と緩衝材22,24との間に隙間を形成することで、芯材16に多孔質炭素シート14を巻き回す作業がより容易に行えるうえ、多孔質炭素シート14に破損が生じることを抑制しやすい。
【0027】
ロール体15と緩衝材22,24との隙間の距離は、1〜20mmが好ましく、2〜10mmがより好ましい。前記隙間の距離が下限値以上であれば、遊びがないため、運送時の振動を吸収することができる。前記隙間の距離が上限値以下であれば、振動の幅を破損が起きない範囲に抑えることができる。
【0028】
なお、第1平板部18及び第2平板部20の内側に緩衝材22,24を設けない場合も、ロール体15と第1平板部18の間、及びロール体15と第2平板部20の間には隙間が形成されることが好ましい。これにより、芯材16に多孔質炭素シート14を巻き回す作業がより容易に行えるうえ、多孔質炭素シート14に破損が生じることを抑制しやすい。
【0029】
以上説明したように本発明のロール状物においては、芯材の両端に平板部が設けられたボビンに多孔質炭素シートが巻き回されており、平らな面に載置した際に多孔質炭素シートが載置面に接しないようになっている。そのため、シート状緩衝材で多孔質炭素シートを覆っていない状態で床等に直に載置しても、多孔質炭素シートが破損したり汚染されたりことを抑制できる。また、搬送の際には個別に梱包せずにそのままの状態で簡便に搬送できる。また、紙管に多孔質炭素シートを巻き回す場合に比べて、紙粉の混入がなく、ボビンの使い回しが可能なためコスト面でも有利である。
【0030】
なお、本発明のロール状物は、前記したロール状物10には限定されない。
例えば、本発明のロール状物は、
図4(A)に例示したロール状物10Aであってもよい。
図4(A)及び
図4(B)における
図1及び
図2と同じ部分には同符合を付して説明を省略する。
【0031】
本実施形態のロール状物10Aは、ボビン12Aと、多孔質炭素シート14がボビン12Aに巻き回されて形成されたロール体15と、を備えている。ボビン12Aは、円筒状の芯材16と、芯材16の両端に芯材16と直交するようにそれぞれ設けられた円板状の第1平板部18A及び第2平板部20Aとを備えている。また、ボビン12における第1平板部18Aの芯材16側(内側)と、第2平板部20Aの芯材16側(内側)には、それぞれ円環状の緩衝材22,24が配置されている。
【0032】
第1平板部18Aは、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、円の一部が直線的に切り欠かれた欠円状の本体部18aと、円弧状の辺と直線状の辺とからなる弓状のストッパー部18bとを備えている。第1平板部18Aの形状は、本体部18aとストッパー部18bとで全体として円板状になっている。本体部18aとストッパー部18bとはヒンジ部19,19を介して接続されている。
第2平板部20Aは、第1平板部18Aと同様に、欠円状の本体部20aと弓状のストッパー部20bとを備えており、全体として円板状になっている。本体部20aとストッパー部20bとはヒンジ部19,19を介して接続されている。
【0033】
ロール状物10Aにおいては、
図5に示すように、第1平板部18のストッパー部18bを本体部18aに対して垂直に外側に開くことができるようになっている。同様に、第2平板部20のストッパー部20bを本体部20aに対して垂直に外側に開くことができるようになっている。この状態でストッパー部18b,20bを下にしてロール状物10Aを平らな載置面100に載置することで、載置した状態からボビン12Aが転がることを防止できる。
【0034】
ロール状物10Aにおいては、
図5に示すように、ストッパー部18b,20bを外側に開き、ストッパー部18b,20bを下にして平らな載置面100に載置した状態でも、ボビン12に巻き回された多孔質炭素シート14が載置面100に接しないようになっている。
【0035】
このように本発明のロール状物において平板部が円板状の場合には、ボビンの平板部に、ボビンが転がることを防止するストッパー部が設けられていることが好ましい。
また、ロール状物におけるボビンの平板部にストッパー部を設ける場合、ストッパー部の態様はロール状物10Aにおけるボビン12Aの第1平板部18A及び第2平板部20のストッパー部18b,20bのような態様には限定されない。
【0036】
本発明のロール状物は、平板部の形状が円板状ではなく、矩形の板状であってもよい。また、本発明のロール状物は、ボビンにおける平板部の内側に緩衝材が配置されていないものであってもよい。