特許第6972549号(P6972549)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972549
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】HUD装置、車両装置及び表示方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/0962 20060101AFI20211111BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   G08G1/0962
   B60K35/00 A
【請求項の数】16
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-256066(P2016-256066)
(22)【出願日】2016年12月28日
(65)【公開番号】特開2018-106655(P2018-106655A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年11月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】片桐 敬太
(72)【発明者】
【氏名】齊所 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】草▲なぎ▼ 真人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友規
(72)【発明者】
【氏名】山口 紘史
【審査官】 山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/004784(WO,A1)
【文献】 特開2013−047021(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/199574(WO,A1)
【文献】 特開2006−015803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/0962
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるHUD装置であって、
前記車両に対する対象物の相対的な位置を検出する検出系と、
前記検出系での検出結果に基づいて、前記位置を指し示すための指示表示を表示エリア内に虚像として表示する表示系と、を備え、
前記表示系は、前記指示表示の指示方向を前記位置の変化に追従させる制御手段を含み、
前記制御手段は、前記車両内の基準視点と、前記表示エリア内の前記対象物寄りの点とを結ぶ線分上に前記指示表示を表示させ、前記対象物の少なくとも一部が前記表示エリアの画角内にある場合に、前記指示表示を、前記指示方向が前記線分に対して平行となるよう表示させることを特徴とするHUD装置。
【請求項2】
車両に搭載されるHUD装置において、
前記車両に搭載され該車両に対する対象物の相対的な位置を検出する検出装置での検出結果に基づいて、前記位置を指し示すための指示表示を表示エリア内に虚像として表示する表示系を備え、
前記表示系は、前記指示表示の指示方向を前記位置の変化に追従させる制御手段を含み、
前記制御手段は、前記車両内の基準視点と、前記表示エリア内の前記対象物寄りの点とを結ぶ線分上に前記指示表示を表示させ、前記対象物の少なくとも一部が前記表示エリアの画角内にある場合に、前記指示表示を、前記指示方向が前記線分に対して平行となるよう表示させることを特徴とするHUD装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記指示表示の前記表示エリア内における表示位置を前記位置の変化に追従させることを特徴とする請求項1又は2に記載のHUD装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記対象物の全体が前記表示エリアの画角外にある場合に、前記指示表示を、前記指示方向が前記対象物の位置を向くように前記線分に対して角度を成すよう表示することを特徴とする請求項1に記載のHUD装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記指示表示を表示する際、該指示表示を前記表示エリア内において前記線分上で前記基準視点側から前記対象物寄りの点側へ移動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のHUD装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記対象物が複数ある場合に、前記指示表示で指示すべき優先順位が第1位の一の前記対象物を前記指示表示で指示する指示対象に決定し、
前記第1位が変更になったとき、前記指示対象を前記一の対象物から前記変更後の第1位の別の前記対象物に切り替えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のHUD装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記指示対象を一の対象物から前記他の対象物に切り替えるとき、前記指示表示を前記表示エリア内において前記一の対象物に近い位置から前記他の対象物に近い位置に移動させることを特徴とする請求項6に記載のHUD装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記指示表示を曲線に沿って移動させることを特徴とする請求項7に記載のHUD装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記指示対象を前記一の対象物から前記他の対象物に切り替えるとき、その切り替えを認識させるための表示を前記表示エリア内で行うことを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のHUD装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記対象物が存在しない場合、前記指示表示を前記表示エリア内に表示しないことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のHUD装置。
【請求項11】
前記表示系は、
光により前記指示表示の画像を形成する形成手段と、
前記画像を形成する光を透過反射部材に導く導光手段と、を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のHUD装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のHUD装置と、
前記HUD装置が搭載される車両と、を備える車両装置。
【請求項13】
車両に対する対象物の相対的な位置を指し示すための指示表示を表示エリア内に虚像として表示する表示方法であって、
前記位置を検出する第1の検出工程と、
前記指示表示の指示方向を前記第1の検出工程で検出された前記位置に向けて、前記車両内の基準視点と、前記表示エリア内の前記対象物寄りの点とを結ぶ線分上に表示し、前記対象物の少なくとも一部が前記表示エリアの画角内にある場合に、前記指示方向が前記線分に対して平行となるよう表示する工程と、
前記位置を検出する第2の検出工程と、
前記第1及び第2の検出工程で検出された前記位置が異なる場合に、前記指示表示の前記指示方向を前記第2の検出工程で検出された前記位置に向ける工程と、
を含む表示方法。
【請求項14】
前記位置を検出する第3の検出工程と、
前記第2及び第3の検出工程で検出された前記位置が異なる場合に、前記指示表示の前記指示方向を前記第3の検出工程で検出された前記位置に向ける工程と、を更に含むことを特徴とする請求項13に記載の表示方法。
【請求項15】
車両に対する対象物の相対的な位置を指し示すための指示表示を表示エリア内に虚像として表示する表示方法であって、
前記対象物が複数ある場合に、該複数の対象物の前記位置を検出する第1の検出工程と、
前記第1の検出工程での検出結果に基づいて、前記複数の対象物から前記指示表示で指示すべき優先順位が第1位の前記対象物を選択する第1の選択工程と、
前記指示表示の指示方向を前記第1の選択工程で選択された前記対象物の前記第1の検出工程で検出された前記位置に向けて、前記車両内の基準視点と、前記表示エリア内の前記対象物寄りの点とを結ぶ線分上に表示し、前記対象物の少なくとも一部が前記表示エリアの画角内にある場合に、前記指示方向が前記線分に対して平行となるよう表示する工程と、
前記対象物が複数ある場合に、該複数の対象物の前記位置を検出する第2の検出工程と、
前記第2の検出工程での検出結果に基づいて、前記複数の対象物から前記指示表示で指示すべき優先順位が第1位の前記対象物を選択する第2の選択工程と、
前記第1及び第2の選択工程で選択された前記対象物が同じ場合、かつ該対象物の前記第1及び第2の検出工程で検出された前記位置が異なる場合に前記指示表示の前記指示方向を該対象物の前記第2の検出工程で検出された前記位置に向け、前記第1及び第2の選択工程で選択された前記対象物が異なる場合に、前記指示表示の前記指示方向を前記第2の選択工程で選択された前記対象物の前記第2の検出工程で検出された前記位置に向ける工程と、を含む表示方法。
【請求項16】
前記対象物が複数ある場合に、該複数の対象物の位置を検出する第3の検出工程と、
前記第3の検出工程での検出結果に基づいて、前記複数の対象物から前記指示表示で指示すべき優先順位が第1位の前記対象物を選択する第3の選択工程と、
前記第2及び第3の選択工程で選択された前記対象物が同じ場合、かつ該対象物の前記第2及び第3の検出工程で検出された前記位置が異なる場合に、前記指示表示の前記指示方向を該対象物の前記第3の検出工程で検出された前記位置に向け、前記第2及び第3の選択工程で選択された前記対象物が異なる場合に、前記指示表示の前記指示方向を前記第3の選択工程で選択された前記対象物の前記第3の検出工程で検出された前記位置に向ける工程と、を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HUD装置、車両装置及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、対象物を特定するマークを表示エリア内に虚像として表示するHUD装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示されているHUD装置では、車両に対する対象物の相対的な位置を安定して正確に認識させることに関して改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、車両に搭載されるHUD装置であって、前記車両に対する対象物の相対的な位置を検出する検出系と、前記検出系での検出結果に基づいて、前記位置を指し示すための指示表示を表示エリア内に虚像として表示する表示系と、を備え、前記表示系は、前記指示表示の指示方向を前記位置の変化に追従させる制御手段を含み、前記制御手段は、前記車両内の基準視点と、前記表示エリア内の前記対象物寄りの点とを結ぶ線分上に前記指示表示を表示し、前記対象物の少なくとも一部が前記表示エリアの画角内にある場合に、前記指示表示を、前記指示方向が前記線分に対して平行となるよう表示することを特徴とするHUD装置である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、車両に対する対象物の相対的な位置を安定して正確に認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態のHUD装置の概略構成を示す図である。
図2】HUD装置の制御系のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】HUD装置の機能ブロック図である。
図4】HUD装置の光源装置について説明するための図である。
図5】HUD装置の光偏向器について説明するための図である。
図6】光偏向器のミラーと走査範囲の対応関係を示す図である。
図7】2次元走査時の走査線軌跡の一例を示す図である。
図8図8(A)及び図8(B)は、マイクロレンズアレイにおいて入射光束径とレンズ径の大小関係の違いによる作用の違いについて説明するための図である。
図9】画像データ生成部の構成例を示すブロック図である。
図10図10(A)〜図10(D)は、対象物が自車両の前方にあるときの指示表示の表示例を示す図である。
図11図11(A)及び図11(B)は、対象物が自車両の斜め前方にあるときの指示表示の表示例(その1)を示す図である。
図12図12(A)及び図12(B)は、対象物が自車両の斜め前方にあるときの指示表示の表示例(その2)を示す図である。
図13】対象物が上方から見て表示エリア内にあるときの指示表示の表示例を示す図である。
図14】対象物が上方から見て表示エリア外にあるときの指示表示の表示例を示す図である。
図15】対象物が上方及び視認者から見て表示エリア外にあるときの指示表示の表示例を示す図である。
図16図16(A)及び図16(B)は、指示表示を連続的に移動させて表示する例を説明するための図である。
図17】表示処理1を説明するためのフローチャートである。
図18】指示表示の位置及び向きを同一対象物の位置の変化に追従させる例を説明するための図である。
図19】表示処理2を説明するためのフローチャートである。
図20図20(A)〜図20(C)は、対象物が複数あるときに指示対象を切り替える例(その1)について説明するための図である。
図21図21(A)〜図21(C)は、対象物が複数あるときに指示対象を切り替える例(その2)について説明するための図である。
図22図22(A)及び図22(B)は、対象物が複数あるときに指示対象を切り替える際の指示表示の移動方法について説明するための図である。
図23図23(A)及び図23(B)は、複数の対象物を対応する複数の指示表示で指示する例を説明するための図である。
図24図24(A)及び図24(B)は、指示表示の向きを同一対象物の位置の変化に追従させる例を説明するための図である。
図25図25(A)及び図25(B)は、対象物が複数あるときに指示表示の向きを切り替える例を説明するための図である。
図26図26(A)は指示表示の向きを同一対象物の連続的な位置の変化に追従させる例を説明するための図であり、図26(B)は指示表示の向き及び長さを同一対象物の連続的な位置の変化に追従させる例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[概要]
以下に、一実施形態のHUD装置100について図面を参照して説明する。なお、「HUD」は「ヘッドアップディスプレイ」の略称である。
【0008】
図1には、本実施形態のHUD装置100の全体構成が概略的に示されている。
【0009】
《HUD装置の全体構成》
ところで、ヘッドアップディスプレイの投射方式は、液晶パネル、DMDパネル(デジタルミラーデバイスパネル)、蛍光表示管(VFD)のようなイメージングデバイスで中間像を形成する「パネル方式」と、レーザ光源から射出されたレーザビームを2次元走査デバイスで走査し中間像を形成する「レーザ走査方式」がある。特に後者のレーザ走査方式は、全画面発光の部分的遮光で画像を形成するパネル方式とは違い、各画素に対して発光/非発光を割り当てることができるため、一般に高コントラストの画像を形成することができる。
【0010】
そこで、HUD装置100では「レーザ走査方式」を採用している。無論、投射方式として上記「パネル方式」を用いることもできる。
【0011】
HUD装置100は、一例として、車両に搭載され、該車両のフロントウインドシールド50(図1参照)を介して該車両の操縦に必要なナビゲーション情報(例えば車両の速度、進路情報、目的地までの距離、現在地名称、車両前方における物体(対象物)の有無や位置、制限速度等の標識、渋滞情報などの情報)を視認可能にする。この場合、フロントウインドシールド50は、入射された光の一部を透過させ、残部の少なくとも一部を反射させる透過反射部材としても機能する。以下では、HUD装置100がフロントウインドシールド50を備える、車両としての自動車に搭載される例を、主に説明する。
【0012】
HUD装置100は、図1に示されるように、光源装置11、光偏向器15及び走査ミラー20を含む光走査装置10と、スクリーン30と、凹面ミラー40とを備え、フロントウインドシールド50に対して画像を形成する光(画像光)を照射することにより、視認者A(ここでは自動車の乗員である運転者)の視点位置から虚像Iを視認可能にする。つまり、視認者Aは、光走査装置10によりスクリーンに形成(描画)される画像(中間像)を、フロントウインドシールド50を介して虚像Iとして視認することができる。
【0013】
HUD装置100は、一例として、自動車のダッシュボードの下方に配置されており、視認者Aの視点位置からフロントウインドシールド50までの距離は、数十cmから精々1m程度である。
【0014】
ここでは、凹面ミラー40は、虚像Iの結像位置が所望の位置になるように、一定の集光パワーを有するように既存の光学設計シミュレーションソフトを用いて設計されている。
【0015】
HUD装置100では、虚像Iが視認者Aの視点位置から例えば1m以上かつ30m以下(好ましくは10m以下)の位置(奥行位置)に表示されるように、凹面ミラー40の集光パワーが設定されている。
【0016】
なお、通常、フロントウインドシールドは、平面でなく、僅かに湾曲している。このため、凹面ミラー40とフロントウインドシールド50の曲面により、虚像Iの結像位置が決定される。
【0017】
光源装置11では、画像データに応じて変調されたR,G,Bの3色のレーザ光が合成される。3色のレーザ光が合成された合成光は、光偏向器15の反射面に導かれる。偏向手段としての光偏向器15は、半導体製造プロセス等で作製された2軸のMEMSスキャナであり、直交する2軸周りに独立に揺動可能な単一の微小ミラーを含む。光源装置11、光偏向器15の詳細は、後述する。
【0018】
光源装置11からの画像データに応じた光(合成光)は、光偏向器15で偏向され、走査ミラー20で折り返されてスクリーン30に照射される。そこで、スクリーン30が光走査され該スクリーン30上に中間像が形成される。すなわち、光偏向器15と走査ミラー20を含んで光走査系が構成される。なお、凹面ミラー40は、フロントウインドシールド50の影響で中間像の水平線が上または下に凸形状となる光学歪み要素を補正するように設計、配置されることが好ましい。
【0019】
スクリーン30を介した光は、凹面ミラー40でフロントウインドシールド50に向けて反射される。フロントウインドシールド50への入射光束の一部はフロントウインドシールド50を透過し、残部の少なくとも一部は視認者Aの視点位置に向けて反射される。この結果、視認者Aはフロントウインドシールド50を介して中間像の拡大された虚像Iを視認可能となる、すなわち、視認者から見て虚像Iがフロントウインドシールド50越しに拡大表示される。
【0020】
なお、フロントウインドシールド50よりも視認者Aの視点位置側に透過反射部材としてコンバイナを配置し、該コンバイナに凹面ミラー40からの光を照射するようにしても、フロントウインドシールド50のみの場合と同様に虚像表示を行うことができる。
【0021】
《HUD装置の制御系のハードウェア構成》
図2には、HUD装置100の制御系のハードウェア構成を示すブロック図が示されている。HUD装置100の制御系は、図2に示されるように、FPGA600、CPU602、ROM604、RAM606、I/F608、バスライン610、LDドライバ6111、MEMSコントローラ615を備えている。
【0022】
FPGA600は、画像データに応じてLDドライバ6111を介して後述するLDを動作させ、MEMSコントローラ615を介して光偏向器15を動作させる。CPU602は、HUD装置100の各機能を制御する。ROM604は、CPU602がHUD装置100の各機能を制御するために実行する画像処理用プログラムを記憶している。RAM606は、CPU602のワークエリアとして使用される。I/F608は、外部コントローラ等と通信するためのインターフェイスであり、例えば、自動車のCAN(Controller Area Network)等に接続される。
【0023】
《HUD装置の機能ブロック》
図3には、HUD装置100の機能を示すブロック図が示されている。HUD装置100は、図3に示されるように、車両情報入力部800、外部情報入力部802、画像データ生成部804及び画像描画部806を備えている。車両情報入力部800には、CAN等から車両の情報(速度、走行距離、対象物の位置、外界の明るさ等の情報)が入力される。外部情報入力部802には、外部ネットワークから車両外部の情報(例えば自動車に搭載されたカーナビからのナビ情報等)が入力される。画像データ生成部804は、車両情報入力部800、外部情報入力部802等から入力される情報に基づいて、描画すべき画像の画像データを生成し、画像描画部806に送信する。画像描画部806は、制御部8060を備え、受信した画像データに応じた画像を描画する。画像データ生成部804及び制御部8060は、FPGA600によって実現される。画像描画部806は、FPGA600に加えて、LDドライバ6111、MEMSコントローラ615、光走査装置10、スクリーン30、凹面ミラー40等によって実現される。
【0024】
《光源装置の構成》
図4には、光源装置11の構成が示されている。光源装置11は、図4に示されるように、単数あるいは複数の発光点を有する複数(例えば3つの)の発光素子111R、111B、111Gを含む。各発光素子は、LD(レーザダイオード)であり、互いに異なる波長λR、λG、λBの光束を放射する。例えばλR=640nm、λG=530nm、λB=445nmである。以下では、発光素子111RをLD111R、発光素子111GをLD111G、発光素子111BをLD111Bとも表記する。LD111R、111G、111Bから放射された波長λR、λG、λBの光束は、対応するカップリングレンズ112R、112G、112Bにより後続の光学系にカップリングされる。カップリングされた光束は、対応するアパーチャ部材113R、113G、113Bにより整形される。各アパーチャ部材の開口形状は、光束の発散角等に応じて円形、楕円形、長方形、正方形等、様々な形状とすることができる。その後、対応するアパーチャ部材で整形された光束は、合成素子115により光路合成される。合成素子115は、プレート状あるいはプリズム状のダイクロイックミラーであり、波長に応じて光束を反射/透過し、1つの光路に合成する。合成された光束は、レンズ119により光偏向器15の反射面に導かれる。レンズ119は、光偏向器15側に凹面が向くメニスカスレンズである。
【0025】
《光偏向器の構成》
図5には、光偏向器15の構成が示されている。光偏向器15は、半導体プロセスにて製造された2軸のMEMSスキャナであり、図5に示されるように、反射面を有するミラー150と、α軸方向に並ぶ複数の梁を含み、隣り合う2つの梁が折り返し部を介して蛇行するように接続された一対の蛇行部152とを有する。各蛇行部152の隣り合う2つの梁は、梁A(152a)、梁B(152b)とされ、枠部材154に支持されている。複数の梁には、複数の圧電部材156(例えばPZT)が個別に設けられている。各蛇行部の隣り合う2つの梁の圧電部材に異なる電圧を印加することで、該蛇行部の隣り合う2つの梁が異なる方向に撓み、それが蓄積されて、ミラー150がα軸周り(=垂直方向)に大きな角度で回転することになる。このような構成により、α軸を中心とした垂直方向の光走査が、低電圧で可能となる。一方、β軸を中心とした水平方向では、ミラー150に接続されたトーションバーなどを利用した共振による光走査が行われる。
【0026】
HUD装置100からは、瞬間的にはレーザビーム径に相当する点像しか投射されないが、非常に高速に走査させるため、一フレーム画像内では十分に人間の目に残像が残っている。この残像現象を利用することで、視認者には、あたかも「表示エリア」に像を投射させているように知覚される。実際には、スクリーンに映った像が、凹面ミラー40とフロントウインドシールド50によって反射されて視認者に「表示エリア」において虚像として知覚される。このような仕組みであるので、像を表示させない場合は、LDの発光を停止すれば良い。つまり、「表示エリア」において虚像が表示される箇所以外の箇所の輝度を実質0にすることが可能となる。
【0027】
すなわち、HUD装置100による虚像の結像位置は、該虚像を結像可能な所定の「表示エリア」内の任意の位置となる。この「表示エリア」は、HUD装置の設計時の仕様で決まる。
【0028】
このように、「レーザ走査方式」を採用したことにより、表示したい部分以外では、表示の必要がないためLDを消灯したり、光量を低下させたりするなどの措置を取ることができる。
【0029】
これに対して、例えば液晶パネル及びDMDパネルのようなイメージングデバイスで中間像を表現する「パネル方式」では、パネル全体を照明する必要があるため、画像信号としては非表示とするために黒表示であったとしても、液晶パネルやDMDパネルの特性上、完全には0にし難い。このため、黒部が浮き上がって見えることがあったが、レーザ走査方式ではその黒浮きを無くすことが可能となる。
【0030】
ところで、光源装置11の各発光素子は、FPGA600によって発光強度や点灯タイミング、光波形が制御され、LDドライバ6111によって駆動され、光を射出する。各発光素子から射出され光路合成された光は、図6に示されるように、光偏向器15によってα軸周り、β軸周りに2次元的に偏向され、走査ミラー20(図1参照)を介して走査光としてスクリーン30に照射される。すなわち、走査光によりスクリーン30が2次元走査される。なお、図6では、走査ミラー20の図示が省略されている。
【0031】
走査光は、スクリーン30の走査範囲を、2〜4万Hz程度の速い周波数で主走査方向に振動走査(往復走査)しつつ、数十Hz程度の遅い周波数で副走査方向に片道走査する。すなわち、ラスタースキャンが行われる。この際、走査位置(走査光の位置)に応じて各発光素子の発光制御を行うことで画素毎の描画、虚像の表示を行うことができる。
【0032】
1画面を描画する時間、すなわち1フレーム分の走査時間(2次元走査の1周期)は、上記のように副走査周期が数十Hzであることから、数十msecとなる。例えば主走査周期20000Hz、副走査周期を50Hzとすると、1フレーム分の走査時間は20msecとなる。
【0033】
スクリーン30は、図7に示されるように、画像が描画される(画像データに応じて変調された光が照射される)画像領域30a(有効走査領域)と、該画像領域を取り囲むフレーム領域30bとを含む。
【0034】
ここで光偏向器15によって走査しうる全範囲を「走査範囲」と呼ぶ。ここでは、走査範囲は、スクリーン30における画像領域30aとフレーム領域30bの一部(画像領域30aの外縁近傍の部分)を併せた範囲とされている。図7には、走査範囲における走査線の軌跡がジグザグ線によって示されている。図7においては、走査線の本数を、便宜上、実際よりも少なくしている。
【0035】
スクリーン30の画像領域30aは、例えばマイクロレンズアレイ等の光拡散効果を持つ透過型の素子で構成されている。画像領域は、矩形、あるいは平面である必要はなく、多角形や曲面であっても構わない。また、スクリーン30は、光拡散効果を持たない平板や曲板であっても良い。また、画像領域は、装置レイアウトによっては例えばマイクロミラーアレイ等の光拡散効果を持つ反射型の素子とすることもできる。
【0036】
以下に、図8(A)及び図8(B)を参照して、スクリーン30の画像領域に用いられるマイクロレンズアレイにおける拡散と干渉性ノイズ発生について説明する。
図8(A)において、符号852はマイクロレンズアレイを示す。マイクロレンズアレイ852は、微細凸レンズ851を配列した微細凸レンズ構造を有する。符号853で示す「画素表示用ビーム」の光束径857は、微細凸レンズ851の大きさよりも小さい。すなわち、微細凸レンズ851の大きさ856は、光束径857よりも大きい。なお、説明中の形態例で、画素表示用ビーム853はレーザ光束であり、光束中心のまわりにガウス分布状の光強度分布をなす。従って、光束径857は、光強度分布における光強度が「1/e」に低下する光束半径方向距離である。
図8(A)では、光束径857は微細凸レンズ851の大きさ856に等しく描かれているが、光束径857が「微細凸レンズ851の大きさ856」に等しい必要は無い。微細凸レンズ851の大きさ856を食み出さなければよい。
図8(A)において、画素表示用ビーム853は、その全体が1個の微細凸レンズ851に入射し、発散角855をもつ拡散光束854に変換される。なお、「発散角」は、以下において「拡散角」と呼ぶこともある。
図8(A)の状態では、拡散光束854は1つで、干渉する光束が無いので、干渉性ノイズは発生しない。なお、発散角855の大きさは、微細凸レンズ851の形状により適宜設定できる。
図8(B)では、画素表示用ビーム811は、光束径が微細凸レンズの配列ピッチ812の2倍となっており、2個の微細凸レンズ813、814に跨って入射している。この場合、画素表示用ビーム811は、入射する2つの微細凸レンズ813、814により2つの発散光束815、816のように拡散される。2つの発散光束815、816は、領域817において重なり合い、この部分で互いに干渉して干渉性ノイズを発生する。
【0037】
図7に戻り、走査範囲における画像領域30aの周辺領域(フレーム領域30bの一部)には、受光素子を含む同期検知系60が設置されている。ここでは、同期検知系60は、画像領域の−X側かつ+Y側の隅部の+Y側に配置されている。以下では、スクリーン30の主走査方向をX方向とし、副走査方向をY方向として説明する。
【0038】
同期検知系60は、光偏向器15の動作を検出して、走査開始タイミングや走査終了タイミングを決定するための同期信号をFPGA600に出力する。
【0039】
[詳細]
《指示表示》
ところで、車両の運転者は主にフロントウインドシールド50越しの視界内の情報を頼りに車両の運転操作を行うが、安全運転を促進するためには、特に他車両、歩行者、障害物等の対象物の位置を運転者に正確に認識させることが要求される。
【0040】
そこで、HUD装置100では、対象物を指示する指示表示を表示エリア内に虚像として表示する(例えば図10参照)
【0041】
HUD装置100は、この「指示表示」を表示するための構成として、上述した基本的な構成に加えて、図9に示されるように、対象物の位置を検出する検出系としてのレーザレーダ200を備えるとともに、画像データ生成部804に必要な構成、機能が盛り込まれている。
【0042】
なお、「検出系」は、「指示表示」を表示するための専用のものでなくても良く、例えば車両の自動制御(例えばオートブレーキ、オートステアリング等)に用いられる検出装置を利用しても良い。このような「検出装置」を利用する場合には、HUD装置は、検出系を備える必要がない。
【0043】
また、「検出系」や「検出装置」としては、要は、車両の前方(斜め前方を含む)における対象物の有無及び位置を検出できるものであれば良く、レーザレーダ(例えば半導体レーザを光源に用いるレーダ)の代わりに、LEDを光源に用いたレーダ、ミリ波レーダ、赤外線レーダ、単眼カメラ、ステレオカメラ、あるいはこれらの組み合わせを用いても良い。
【0044】
レーザレーダ200は、例えば自動車のフロントバンパー、バックミラー付近等に装着されており、検出結果である対象物の3次元位置情報(距離画像とも呼ぶ)を車両情報入力部800を介して画像データ生成部804に送る。
【0045】
レーザレーダ200は、少なくとも1つのレーザ光源(例えば半導体レーザ)を含む投光系と、該投光系から投光され対象物で反射された光を受光する少なくとも1つの受光素子(例えばフォトダイオード)を含む受光系と、対象物までの距離を演算する処理系とを有する。レーザレーダ200の投光範囲は、自車両前方及び斜め前方の所定範囲となっている。レーザレーダ200の測距方式は、レーザ光源の発光タイミングと受光素子の受光タイミングとの時間差を算出し該時間差から対象物までの距離を求める直接TOF方式であっても良いし、受光素子の受光信号を複数の位相信号に分割し該複数の位相信号を用いた演算によって上記時間差を算出し、該時間差から対象物までの距離を求める間接TOF方式であっても良い。また、投光系は、走査型及び非走査型のいずれであっても良い。
【0046】
画像データ生成部804は、表示制御手段902と、指示表示データ生成手段903とを含む。
【0047】
表示制御手段902は、レーザレーダ200での検出結果に基づいて指示表示の指示方向及び表示エリア内における指示表示の表示位置(以下では「指示表示位置」とも呼ぶ)を設定し、指示方向及び指示表示位置の設定情報を指示表示データ生成手段903に送る。
【0048】
指示表示データ生成手段903は、受信した指示方向及び指示表示位置の設定情報に基づいて指示表示の画像データを生成し、制御部8060に送る。
【0049】
制御部8060は、受信した指示表示の画像データに基づいてLDドライバ6111及びMEMSコントローラ615を制御して、指示表示を表示エリア内に虚像として表示する。
【0050】
このようにして、例えば図10に示されるように自車両の前方風景に重なる表示エリア内に対象物(例えば前方車両)の位置を指し示す指示表示が表示されれば、運転者は対象物の位置を正確に認識(把握)できる。
【0051】
ここで、指示表示は、例えば図10に示される矢印、V字等の任意の一方向を指し示すことができる表示であれば良い。本明細書では、指示表示が指し示す一方向を「指示方向」とも呼ぶ。指示表示の大きさは、表示エリア内に表示可能な大きさであれば良い。なお、図10等では、指示表示は、対象物の、自車両の進行方向に直交する面内における2次元位置を示す2次元形状のみを有するかの如く図示されているが、図13等から分かるように、実際には、対象物の、車両の進行方向に直交する面内における2次元位置及び車両の進行方向の1次元位置を示す3次元形状を有しているため、視認者からは、指示表示が対象物の3次元位置を指示しているように見える。
【0052】
ここで、表示エリアは、一例として上方から見て自車両から離れるほど広がる略等脚台形状であって(例えば図13参照)、車両の進行方向に直交する断面(以下では、単に「断面」とも呼ぶ)が矩形(例えば図10参照)の四角錐台形状となっている。すなわち、表示エリアは、自車両から離れるほど断面が大きくなる。
【0053】
図10では、指示表示の指示方向を対象物の方向(視認者から見て上方成分と前方成分を含む方向)に向けるとともに、指示表示の表示エリア内における位置を対象物に近い位置としている。
【0054】
図10(A)及び図10(B)には、対象物の全体が表示エリアの画角(広がり角)から上方に外れている例が示されている。なお、図10(A)は視認者から見た図であり、図10(B)は図10(A)の状態を横から見た図である。図10(C)及び図10(D)には、対象物の下半部が表示エリアの画角内に入っている例が示されている。なお、図10(C)は視認者から見た図であり、図10(D)は図10(C)の状態を横から見た図である。
【0055】
図10(A)及び図10(B)の例では、指示表示としての矢印が、視認者の視点位置と、対象物の中心を通る鉛直線上における表示エリアの上端付近の位置とを結ぶ線分上に該線分に対して指示方向(矢印の向き)が、対象物を通る鉛直線上における対象物の下端位置を向くように角度を成して表示されている。
【0056】
図10(C)及び図10(D)の例では、指示表示としての矢印が、視認者の視点位置と、対象物の中心を通る鉛直線上における該対象物の下端付近の位置とを結ぶ線分上に該線分に対して指示方向(矢印の向き)が平行になるように表示されている。
【0057】
図11では、指示表示の指示方向を対象物の方向(視認者から見て上方成分と前方成分と横方成分を含む方向)に向けるとともに、指示表示の表示エリア内における位置を対象物に近い位置としている。
【0058】
図11(A)には、視認者から見て、対象物の全体が表示エリアの画角から斜め上方に外れている例が示されている。図11(B)には、視認者から見て、対象物の左下部分が表示エリアの画角内に入っている例が示されている。
【0059】
図11(A)の例では、指示表示としての矢印が、視認者の視点位置と、対象物の中心を通る鉛直線上における表示エリアの上端付近の位置とを結ぶ線分(視認者から見て水平方向に対して角度R1を成す線分)上に該線分に対して指示方向(矢印の向き)が、対象物の中心を通る鉛直線上における対象物の下端位置を向くように角度を成して表示されている。なお、角度R1は、自車両のロール方向の角度である。
【0060】
図11(B)の例では、指示表示としての矢印が、視認者の視点位置と、対象物の中心を通る鉛直線上における該対象物の下端位置とを結ぶ線分(視認者から見て水平方向に対して角度R1を成す線分)上に該線分に対して指示方向(矢印の向き)が平行になるように表示されている。
【0061】
図12では、指示表示の指示方向を対象物の方向(視認者から見て上方成分と前方成分と横方成分を含む方向)に向けるとともに、指示表示の表示エリア内における位置を対象物に近い位置としている。
【0062】
図12(A)には、視認者から見て、対象物の全体が表示エリアの画角から斜め上方に外れている例が示されている。図12(B)には、視認者から見て、対象物の左下部分が表示エリアの画角内に入っている例が示されている。
【0063】
図12(A)の例では、指示表示としての矢印が、視認者の視点位置と、対象物の中心とを結ぶ線分(視認者から見て水平方向に対して角度R1を成す線分)上に該線分に対して指示方向(矢印の向き)が対象物の中心の方を向くように角度を成して表示されている。なお、角度R1は、自車両のロール方向の角度である。
【0064】
図12(B)の例では、指示表示としての矢印が、視認者の視点位置と、対象物の中心とを結ぶ線分(視認者から見て水平方向に対して角度R1を成す線分)上に該線分に対して指示方向(矢印の向き)が平行になるように表示されている。
【0065】
図13には、上方から見て、対象物が自車両の斜め前方にあり、かつ該対象物の後半部が表示エリア内にある例が示されている。図13では、指示表示が、上方から見て、自車両の進行方向に対して角度R2を成す線分(視認者の視点位置と対象物後端を結ぶ線分)上に該線分に対して指示方向が平行となるように表示されている。なお、角度R2は、自車両のヨー方向の角度である。
【0066】
図14には、上方から見て、対象物が自車両の斜め前方であって表示エリアの前にある例が示されている。図14では、指示表示が、上方から見て、自車両の進行方向に対して角度R2を成す線分(視認者の視点位置と対象物後端を結ぶ線分)上に該線分に対して指示方向が平行となるように表示されている。
【0067】
図13及び図14のように、対象物の少なくとも一部が表示エリアの画角(広がり角)内に収まるときは、指示表示の方向及び位置を、自車両から対象物までの距離と、角度R2と、角度R1(図11及び図12参照)を用いて設定することができる。この場合、角度R1、角度R2は、視認者の視点位置と対象物とを結ぶ線分の方向から得られる。
【0068】
図15には、上方から見て、対象物が自車両の斜め前方であって表示エリアの横にある例が示されている。図15では、指示表示が、上方から見て、自車両の進行方向に対して角度R2を成す線分上に該線分に対して指示方向が角度R3を成して(ここでは対象物の後端を指すように)表示されている。このように、対象物が表示エリアの画角から外れているときは、指示表示の方向及び位置を、自車両から対象物までの距離と角度R2と角度R1に加えて、角度R3を用いて設定する必要がある。なお、角度R3は、自車両のヨー方向の角度である。また、指示表示を実空間で角度R3回転させると引き伸ばされて表示されて視認しづらくなるため、実空間へ投影させる前のテンプレート画像内で角度R3回転させることが好ましい。
【0069】
ここでは、指示表示の先端から対象物の後端までの距離Lが予め設計値として定められており、この設計値の条件を満たしつつ、指示表示が表示エリア内に収まるように角度R1、角度R2及び角度R3を決める。
【0070】
ここで、指示表示を初めて表示させるときや、表示から非表示に切り替えた後さらに非表示から表示に切り替えるときは、例えば図16(A)及び図16(B)に示されるように、指示表示を表示エリア内において基準点から対象物に近い位置(以下では「近接位置」とも呼ぶ)に向けて移動させ、近接位置で停止させることが好ましい。この場合、対象物が検出された位置を視認者に体感的に容易に理解させることができる。
【0071】
次に、本実施形態のHUD装置100で実施される表示処理1について図17を参照して説明する。図17のフローチャートは、CPU602によって実行される処理アルゴリズムに基づいている。表示処理1は、HUD装置100が搭載される自動車(自車両)の電気系統がONになったときに開始される。
【0072】
最初のステップS1では、対象物があるか否かを判断する。具体的には、CPU602が、レーザレーダ200から「対象物あり」の検出結果を受信したときに「対象物あり」と判断する。ステップS1での判断が肯定されるとステップS2に移行し、否定されるとステップS10に移行する。
【0073】
ステップS2では、当該対象物の位置情報を取得する。具体的には、レーザレーダ200が当該対象物の3次元位置情報を検出し、該3次元位置情報を表示制御手段902及びCPU602に送信する。CPU602は、受信した対象物の3次元位置情報をRAM606に保存する。
【0074】
次のステップS3では、指示表示の指示方向及び表示位置を設定する。具体的には、表示制御手段902が、受信した対象物の3次元位置情報に基づいて指示表示の指示方向及び表示位置を設定し、その設定情報を指示表示データ生成手段903に送信する。指示表示データ生成手段903は、受信した設定情報における指示方向及び表示位置と、指示表示の基準位置からの表示位置までの移動経路に関する情報を含む指示表示データを生成し、制御部8060に送信する。
【0075】
次のステップS4では、指示表示を虚像として表示する。具体的には、制御部8060が、受信した指示表示データに基づいてLD6111及びMEMSコントローラ615を制御して、指示表示を表示エリア内に虚像として表示する。この際、指示表示は、表示エリア内において基準点に表示されてから表示位置に向けて直線的に移動し表示位置で停止する。
【0076】
次のステップS5では、当該対象物があるか否かを判断する。具体的には、CPU602が、レーザレーダ200から「当該対象物あり」の検出結果を受信したときに「当該対象物あり」と判断する。ステップS5での判断が肯定されるとステップS6に移行し、否定されるとステップS10に移行する。
【0077】
ステップS6では、当該対象物の位置情報を取得する。具体的には、レーザレーダ200が当該対象物の3次元位置情報を検出し、該3次元位置情報をCPU602に送信する。CPU602は、受信した対象物の3次元位置情報をRAM606に保存する。
【0078】
次のステップS7では、当該対象物が自車両に対して相対的に移動したか否かを判断する。具体的には、CPU602が前回取得した3次元位置情報と新たに取得した3次元位置情報を比較することにより当該対象物の移動の有無を判定する。なお、例えば、自車両が停止し、かつ対象物が停止した移動物体もしくは静止物体である場合や、自車両と対象物が同一方向に同一の速さで移動している場合には、対象物が自車両に対して相対的に移動していないことになる。ステップS7での判断が肯定されるとステップS8に移行し、否定されるとステップS5に戻る。
【0079】
ステップS8では、指示表示の指示方向及び表示位置を再設定する。具体的には、CPU602が対象物の最新の3次元位置情報を表示制御手段902に送信する。表示制御手段902は、受信した対象物の最新の3次元位置情報に基づいて指示表示の指示方向及び表示位置を再設定し、その設定情報を指示表示データ生成手段903に送信する。指示表示データ生成手段903は、受信した設定情報における指示方向及び表示位置と、指示表示の現在の表示位置から再設定後の表示位置までの移動経路及び該移動経路上での向き(図18参照)に関する情報を含む指示表示データを生成し、制御部8060に送信する。なお、図18には、指示表示を同一対象物の移動に追従させて移動させる具体例が示され、初期の対象物及び指示表示が実線で表され、再設定毎の対象物及び指示表示が仮想線で表されている。
【0080】
ステップS9では、指示表示の指示方向及び表示位置を再設定後の状態に移行させる。具体的には、制御部8060が、受信した指示表示データに基づいてLD6111及びMEMSコントローラ615を制御して、指示表示を表示エリア内で再設定後の指示方向及び表示位置になるよう向きを変えつつ移動させる(図18参照)。ステップS9が実行されると、ステップS5に戻る。
【0081】
ステップS10では、指示表示が表示されているか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS11に移行し、否定されるとステップS12に移行する。
【0082】
ステップS11では、指示表示を非表示とする。指示表示により指示すべき対象物が存在しない場合に指示表示を表示させる必要がなく、また誤解を招くからである。具体的には、CPU602が制御部8060に非表示の要求を送信する。制御部8060は、非表示の要求を受信すると表示を停止させる。ステップS11が実行されると、ステップS12に移行する。
【0083】
ステップS12では、処理終了か否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS1に戻る。ここでは、HUD装置100が搭載される自動車(自車両)の電気系統がONのままのときは処理を継続させ、OFFになったときに処理を終了させる。
【0084】
以上説明した表示処理1は、対象物が単一の場合を想定したものとなっているが、実際には、対象物は複数であることが多く、その場合、複数の対象物と自車両との位置関係の変化に応じて指示表示により指示する対象物を切り換えることが好ましい。そこで、以下に、対象物が単数の場合のみならず複数の場合も想定した表示処理2について説明する。
【0085】
本実施形態のHUD装置100で実施される表示処理2について図19を参照して説明する。図19のフローチャートは、CPU602によって実行される処理アルゴリズムに基づいている。表示処理1は、HUD装置100が搭載される自動車(自車両)の電気系統がONになったときに開始される。
【0086】
最初のステップS21では、対象物があるか否かを判断する。具体的には、CPU602が、レーザレーダ200から「対象物あり」の検出結果を受信したときに「対象物あり」と判断する。ステップS21での判断が肯定されるとステップS22に移行し、否定されるとステップS36に移行する。
【0087】
ステップS22では、対象物が複数であるか否かを判断する。具体的には、CPU602が、ステップS1でレーザレーダ200から受信した検出結果が「対象物が複数であること」を示す場合には対象物が複数であると判定し、「対象物が単数であること」を示す場合には対象物が単数であると判定する。ステップS22での判断が肯定されるとステップS23に移行し、否定されるとステップS24に移行する。
【0088】
ステップS23では、複数の対象物の位置情報を取得する。具体的には、レーザレーダ200が複数の対象物の3次元位置情報を検出し、該3次元位置情報をCPU602に送信する。CPU602は、受信した複数の対象物の3次元位置情報をRAM606に保存する。ステップS23が実行されると、ステップS25に移行する。
【0089】
ステップS24では、唯一の対象物を指示対象に決定し、その位置情報を取得する。具体的には、レーザレーダ200が指示対象の3次元位置情報を検出し、該3次元位置情報を表示制御手段902及びCPU602に送信する。CPU602は、受信した指示対象の3次元位置情報をRAM606に保存する。ステップS24が実行されると、ステップS26に移行する。
【0090】
ステップS25では、指示表示により指示すべき優先順位が第1位の対象物を指示対象に決定し、その位置情報を読み出す。この優先順位の「第1位」の決め方としては、ステップS23で取得された複数の対象物の3次元位置情報に基づいて、例えば同一車線内にある対象物(例えば前方車両)のうち自車両に最も近いものの優先順位を第1位としても良いし(図20参照)、自車両に最も近い対象物(例えば他の対象物、歩行者、障害物等)の優先順位を第1位としても良い(図21参照)。CPU602は、指示対象を決定した後、該指示対象の3次元位置情報をRAM606から読み出し表示制御手段902に送信する。ステップS25が実行されると、ステップS26に移行する。
【0091】
ステップS26では、指示表示の指示方向及び表示位置を設定する。具体的には、表示制御手段902が、受信した指示対象の3次元位置情報に基づいて指示表示の指示方向及び表示位置を設定し、その設定情報を指示表示データ生成手段903に送信する。指示表示データ生成手段903は、受信した設定情報における指示方向及び表示位置と、基準位置からの表示位置までの移動経路に関する情報を含む指示表示データを生成し、制御部8060に送信する。
【0092】
次のステップS27では、指示表示を虚像として表示する。具体的には、制御部8060が、受信した指示表示データに基づいてLD6111及びMEMSコントローラ615を制御して、指示表示を表示エリア内に虚像として表示する。この際、指示表示は、表示エリア内において基準点に表示されてから表示位置に向けて直線的に移動し表示位置で停止する。
【0093】
次のステップS28では、指示対象があるか否かを判断する。具体的には、CPU602が、レーザレーダ200から「指示対象あり」の検出結果を受信したときに「指示対象あり」と判断する。ステップS28での判断が肯定されるとステップS29に移行し、否定されるとステップS21に戻る。
【0094】
ステップS29では、他の対象物があるか否かを判断する。具体的には、CPU602が、レーザレーダ200から「他の対象物あり」の検出結果を受信したときに「他の対象物あり」と判断する。ステップS29での判断が肯定されるとステップS30に移行し、否定されるとステップS29.5に移行する。
【0095】
ステップS29.5では、指示対象の位置情報を取得する。具体的には、レーザレーダ200が指示対象の3次元位置情報を検出し、該3次元位置情報をCPU602に送信する。CPU602は、受信した指示対象の3次元位置情報をRAM606に保存する。ステップS29.5が実行されると、ステップS33に移行する。
【0096】
ステップS30では、指示対象を含む複数の対象物の位置情報を取得する。具体的には、レーザレーダ200が指示対象を含む複数の対象物の3次元位置情報を検出し、該3次元位置情報をCPU602に送信する。ステップS30が実行されると、ステップS31に移行する。
【0097】
ステップS31では、指示表示により指示すべき優先順位が第1位の対象物を指示対象に決定する。この優先順位の「第1位」の決め方としては、例えば同一車線内にある前方車両のうち自車両に最も近いものの優先順位を第1位としても良いし(図20参照)、自車両に最も近い他の対象物、歩行者、障害物等の優先順位を第1位としても良い(図21参照)。ステップS31が実行されると、ステップS32に移行する。
【0098】
ステップS32では、優先順位の第1位が変更されたか否かを判断する。すなわち、指示対象が変更されたか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS34に移行し、否定されるとステップS33に移行する。
【0099】
ステップS33では、指示対象が自車両に対して相対的に移動したか否かを判断する。具体的には、CPU602が前回取得した指示対象の3次元位置情報と新たに取得した指示対象の3次元位置情報を比較することにより指示対象の移動の有無を判定する。ステップS33での判断が肯定されるとステップS34に移行し、否定されるとステップS28に戻る。
【0100】
ステップS34では、指示表示の指示方向及び表示位置を再設定する。具体的には、CPU602が指示対象の最新の3次元位置情報をRAM606から読み出し、表示制御手段902に送信する。表示制御手段902は、受信した指示対象の最新の3次元位置情報に基づいて指示表示の指示方向及び表示位置を再設定し、その設定情報を指示表示データ生成手段903に送信する。指示表示データ生成手段903は、受信した設定情報における指示方向及び表示位置と、指示表示の現在の表示位置から再設定後の表示位置までの移動経路及び該移動経路上での向き(図18又は図22参照)に関する情報を含む指示表示データを生成し、制御部8060に送信する。ステップS34が実行されると、ステップS35に移行する。
【0101】
ステップS35では、指示表示の指示方向及び表示位置を再設定後の状態に移行させる。具体的には、制御部8060が、受信した指示表示データに基づいてLD6111及びMEMSコントローラ615を制御して、指示表示を表示エリア内で再設定後の指示方向及び表示位置になるよう向きを変えつつ移動させる(図18又は図22参照)。ステップS35が実行されると、ステップS28に戻る。
【0102】
ステップS36では、指示表示が表示されているか否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとステップS37に移行し、否定されるとステップS38に移行する。
【0103】
ステップS37では、指示表示を非表示とする。指示表示により指示すべき対象物が存在しない場合に指示表示を表示させる必要がなく、また誤解を招くからである。具体的には、CPU602が制御部8060に非表示の要求を送信する。制御部8060は、非表示の要求を受信すると表示を停止させる。ステップS37が実行されると、ステップS38に移行する。
【0104】
ステップS38では、処理終了か否かを判断する。ここでの判断が肯定されるとフローは終了し、否定されるとステップS21に戻る。ここでは、HUD装置100が搭載される自動車(自車両)の電気系統がONのままのときは処理を継続させ、OFFになったときに処理を終了させる。
【0105】
以下に、表示処理2の説明において参照した図20図22について補足説明を行う。
20(A)〜図20(C)には、同一車線内にある対象物(例えば前方車両)のうち自車両に最も近いものの優先順位を第1位とする場合において指示対象を一の対象物から他の対象物へ切り替える手順の具体例が示されている。
【0106】
図21(A)〜図21(C)には、自車両に最も近い対象物(例えば他の車両、歩行者、障害物等)の優先順位を第1位とする場合において指示対象を一の対象物から他の対象物へ切り替える手順の具体例が示されている。
【0107】
図22(A)及び図22(B)には、自車両に最も近い対象物(例えば他の車両、歩行者、障害物等)の優先順位を第1位とする場合において指示対象を一の対象物を指示する状態から他の対象物を指示する状態に移行(移動)させる過程の具体例が示されている。
【0108】
図22(B)では、指示表示の指示方向を移動経路上で徐々に変えているが、指示表示の指示方向を、再設定前又は再設定後の表示位置で1度に変えても良い。また、図22(B)では、指示表示の移動経路を曲線としているが、直線としても良い。以上説明した図22(B)の指示表示の移動経路及び該移動経路上での指示方向に関する議論は、図18の移動経路及び該移動経路上での指示方向に関しても成立する。
【0109】
なお、以上の説明では、表示エリア内に単一の指示表示を表示し、該指示表示の指示方向及び表示位置を対象物の位置に追従させる例について説明したが、これに限られない。例えば表示エリア内に複数(例えば2つ)の指示表示を表示し、該複数の指示表示の指示方向及び表示位置をそれぞれ複数(例えば2つ)の対象物に追従させることとしても良い(図23参照)。この際、指示表示により指示すべき優先順位が高い方の指示表示を低い方の指示表示よりも強調して表示することが好ましい(図23(A)及び図23(B)参照)。図23(A)では、優先順位が高い(ここでは自車両に近い)一の対象物を指示する指示表示を黒塗りの矢印とし、優先順位が低い(ここでは自車両から遠い)他の対象物を指示する指示表示を白抜きの矢印としている。図23(B)では、優先順位が高い(ここでは自車両に近い)他の対象物を指示する指示表示を黒塗りの矢印とし、優先順位が低い(ここでは自車両から遠い)一の対象物を指示する指示表示を白抜きの矢印としている。補足すると、一の対象物と他の対象物の優先順位が逆転し、図23(A)の状態から図23(B)の状態に移行する際、一の対象物に追従する指示表示が黒塗りの矢印から白抜きの矢印に変更され、他の対象物に追従する指示表示が白抜きの矢印から黒塗りの矢印に変更される。なお、矢印の色を変えることに変えて、矢印の大きさ(長さや幅)を変えても良いし、矢印の色調(トーン)を変えても良いし、矢印の線を変えて(例えば実線と仮想線)も良い。
【0110】
また、図24及び図25に示されるように、同一対象物の移動や対象物間での優先順位の変化に応じて指示表示を、例えば基準点(例えば表示エリアの一の断面の下辺中点)を軸に回転させても良い。なお、例えば基準点を指示表示の重心とし、該重心を軸として指示表示を回転させても良い。
【0111】
図24(A)及び図24(B)には、指示表示を同一対象物の移動に応じて基準点を軸に回転させる例が示されている。
【0112】
図25(A)及び図25(B)には、指示表示を基準点を軸に回転させて一の対象物を指示する方向から他の対象物を指示する方向へ切り替える例が示されている。
【0113】
図26(A)には、指示表示を基準点を軸に回転させて同一対象物の移動に連続的に追従させる例が示されている。
【0114】
なお、図26(B)に示されるように、指示表示を基準点を軸に回転させるとともに、指示表示の長さを変化させても良い。
【0115】
以上説明した本実施形態のHUD装置100は、第1の観点からすると、車両に搭載されるHUD装置であって、車両に対する対象物の相対的な位置(以下では「相対位置」とも呼ぶ)を検出するレーザレーダ200(検出系)と、該レーザレーダ200での検出結果に基づいて、相対位置を指し示すための指示表示を表示エリア内に虚像として表示する、画像データ生成部804及び画像描画部806として機能する表示系と、を備え、該表示系は、指示表示の指示方向を相対位置の変化に追従させる表示制御手段902(制御手段)を含むHUD装置である。
【0116】
また、本実施形態のHUD装置100は、第2の観点からすると、車両に搭載されるHUD装置において、車両に搭載され該車両に対する対象物の相対的な位置(以下では「相対位置」とも呼ぶ)を検出するレーザレーダ200(検出装置)での検出結果に基づいて、相対位置を指し示すための指示表示を表示エリア内に虚像として表示する画像データ生成部804及び画像描画部806として機能する表示系を備え、該表示系は、指示表示の指示方向を相対位置の変化に追従させる表示制御手段902(制御手段)を含むことを特徴とするHUD装置である。
【0117】
HUD装置100では、指示表示の指示方向が対象物の相対位置の変化に追従するため、該相対位置が変化しても指示表示が対象物の位置を指し示すことができる。
【0118】
HUD装置100によれば、車両に対する対象物の相対的な位置を安定して正確に認識させることができる。
【0119】
一方、例えば特許文献1には、対象物を特定するためのマークを対象物に対して常に直接的に(近接させて)表示させる技術が開示されている。しかし、このようなマークは、表示エリアの大きさや対象物の相対位置によっては表示できない場合がある。すなわち、このようなマークの表示は、視認者から見て対象物が表示エリアに重なっている場合には可能であるが、重なっていない場合には不可能となる。また、仮にマークを表示エリア内に表示することとしても、マークの向きが対象物の位置の変化に追従しないため、マークが対象物から離れると対象物を特定できず、対象物の位置を認識させることもできない。
【0120】
HUD装置100では、視認者から見て対象物が表示エリアに重ならない場合でも、表示エリア内において指示表示により対象物の位置を指し示すことができる。また、指示表示の向きが対象物の位置の変化に追従するため、指示表示が対象物から離れても対象物の位置を認識させることができる。
【0121】
また、表示制御手段902は、指示表示の表示エリア内における表示位置を相対位置に追従させることが好ましい。この場合、指示表示を表示エリア内において対象物に近い位置に表示させることができるため、指示表示の指示方向のみならず表示位置によっても相対位置を認識させることができる。すなわち、対象物の位置をより安定して正確に認識させることができる。
【0122】
また、表示制御手段902は、車両内の基準視点と、表示エリア内の対象物寄りの点とを結ぶ線分上に指示表示を表示することが好ましい。「基準視点」とは、設計上の視認者の視点位置であって、任意の視認者の目が位置すると想定される所定領域内の任意の点を意味する。例えば視認者が車両の運転者である場合には、基準視点は車両内における運転席上方の所定領域内の任意の点となる。
【0123】
また、表示制御手段902は、対象物の少なくとも一部が表示エリアの画角内にある場合に、指示表示を、指示方向が上記線分に対して平行となるよう表示する。
【0124】
また、表示制御手段902は、対象物の全体が表示エリアの画角外にある場合に、指示表示を、指示方向が上記線分に対して角度を成すよう表示する。
【0125】
また、表示制御手段902は、指示表示を表示する際、該指示表示を表示エリア内において上記線分上で基準視点側(例えば表示エリアの基準点)から対象物寄りの点側へ移動させることが好ましい。なお、基準点は、表示エリアの外縁上にあることが好ましい。
【0126】
この場合、指示表示の動きによって相対位置を体感的により認識し易くすることができる。
【0127】
また、表示制御手段902は、対象物が複数ある場合に、指示表示で指示すべき優先順位が第1位の一の対象物を指示表示で指示する指示対象に決定し、優先順位の第1位が変更になったとき、指示対象を一の対象物から変更後の第1位の別の対象物に切り替えることが好ましい。この場合、常に、優先順位が第1位の対象物の相対位置を指示表示によって指示することができる。
【0128】
また、表示制御手段902は、指示対象を一の対象物から他の対象物に切り替えるとき、指示表示を表示エリア内において一の対象物に近い位置から他の対象物に近い位置に移動させることが好ましい。この場合、指示表示の動きによって、指示対象が一の対象物から他の対象物に切り替わったことを体感的により認識し易くすることができる。
【0129】
また、表示制御手段902は、例えば指示対象を切り替えるときや、指示表示を対象物の移動に追従させるときに、指示表示を曲線に沿って滑らかに移動させることが好ましい。この場合、例えば直線に沿って急激に移動させる場合に比べて、指示表示の動きを目で追い易くなり、指示対象がどの対象物からどの対象物に切り替わったかや、対象物がどの位置からどの位置へ移動したかをより認識し易くすることができる。
【0130】
また、表示制御手段902は、指示対象を一の対象物から他の対象物に切り替えるとき、その切り替えを認識させるための表示を表示エリア内で行うことが好ましい。この表示としては、例えば指示表示の指示方向や表示位置を変更中に該指示表示の輝度を上げて強調したり、点滅させたりすることが考えられる。
【0131】
また、表示制御手段902は、対象物が存在しない場合、指示表示を表示エリア内に表示しない。この場合、視認者に対象物が存在しないことを認識させることができ、また対象物があたかも存在すると誤認させることを抑制できる。
【0132】
また、表示系は、光により指示表示の画像を形成する、光走査装置10及びスクリーン30を含む形成手段と、上記画像を形成する光をフロントウインドシールド50(透過反射部材)に導く凹面ミラー40(導光手段)と、を含む。
【0133】
また、HUD装置100と、HUD装置100が搭載される車両と、を備える車両装置によれば、対象物の相対位置に応じた適切な運転操作を促進できる。
【0134】
また、本実施形態の表示方法1は、車両に対する対象物の相対的な位置(以下では「相対位置」とも呼ぶ)を指し示すための指示表示を表示エリア内に虚像として表示する表示方法であって、相対位置を検出する第1の検出工程と、指示表示を第1の検出工程で検出された相対位置に向けて表示する工程と、相対位置を検出する第2の検出工程と、第1及び第2の検出工程で検出された相対位置が異なる場合に、指示表示を第2の検出工程で検出された相対位置に向ける工程と、を含む表示方法である。この場合、指示表示の指示方向を対象物の相対位置の変化に追従させることができるため、該相対位置が変化しても指示表示が対象物の位置を指し示すことができる。この結果、車両に対する対象物の相対的な位置を安定して正確に認識させることができる。
【0135】
また、本実施形態の表示方法1は、相対位置を検出する第3の検出工程と、第2及び第3の検出工程で検出された相対位置が異なる場合に、指示表示を第3の検出工程で検出された相対位置に向ける工程と、を更に含むことが好ましい。この場合、指示表示の指示方向を対象物の相対位置の更なる変化に追従させることができるため、相対位置が更に変化しても指示表示が対象物の位置を指し示すことができる。
【0136】
また、本実施形態の表示方法2は、車両に対する対象物の相対的な位置を指し示す指示表示を虚像として表示する表示方法であって、対象物が複数ある場合に、該複数の対象物の位置を検出する第1の検出工程と、第1の検出工程での検出結果に基づいて、複数の対象物から指示表示で指示すべき優先順位が第1位の対象物を選択する第1の選択工程と、指示表示を第1の選択工程で選択された対象物の第1の検出工程で検出された位置に向けて表示する工程と、対象物が複数ある場合に、該複数の対象物の位置を検出する第2の検出工程と、第2の検出工程での検出結果に基づいて、複数の対象物から指示表示で指示すべき優先順位が第1位の対象物を選択する第2の選択工程と、第1及び第2の選択工程で選択された対象物が同一の場合、かつ該対象物の第1及び第2の検出工程で検出された位置が異なる場合に指示表示を該対象物の第2の検出工程で検出された位置に向け、第1及び第2の選択工程で選択された対象物が異なる場合に、指示表示を第2の選択工程で選択された対象物の第2の検出工程で検出された位置に向ける工程と、を含む表示方法である。この場合、指示表示の指示方向を対象物の相対位置の変化に追従させることができるため、該相対位置が変化しても指示表示が対象物の位置を指し示すことができる。さらに、優先順位の第1位が変更されたときに、指示対象を該変更前の対象物から該変更後の対象物に切り替えることができる。
【0137】
この結果、車両に対する対象物の相対的な位置を安定して正確に認識させることができる。さらに、指示対象の変化にも対応できる。
【0138】
また、本実施形態の表示方法2は、対象物が複数ある場合に、該複数の対象物の位置を検出する第3の検出工程と、第3の検出工程での検出結果に基づいて、複数の対象物から指示表示で指示すべき優先順位が第1位の対象物を選択する第3の選択工程と、第2及び第3の選択工程で選択された対象物が同一の場合、かつ該対象物の第2及び第3の検出工程で検出された位置が異なる場合に、指示表示を該対象物の第3の検出工程で検出された位置に向け、第2及び第3の選択工程で選択された対象物が異なる場合に、指示表示を第3の選択工程で選択された対象物の第3の検出工程で検出された位置に向ける工程と、を更に含むことが好ましい。この場合、優先順位の第1位が更に変更されたときに、指示対象を該変更前の対象物から該変更後の対象物に切り替えることができる。
【0139】
また、上記実施形態では、指示表示の指示方向及び表示位置の設定を、表示制御手段902が行うこととしているが、例えば制御部8060やCPU602が行うこととしても良い。この場合には表示制御手段902は不要であり、制御部8060やCPU602が本発明の「制御手段」として機能する。
【0140】
また、上記実施形態では、本発明の「制御手段」を、表示制御手段902で構成しているが、表示制御手段902に加えて、指示表示データ生成手段903を含んで構成しても良い。
【0141】
さらに、上記実施形態では、指示表示の指示方向及び表示位置の設定情報に基づいて指示表示の画像データを、指示表示データ生成手段903が生成することとしているが、例えば制御部8060やCPU602が生成することとしても良い。この場合には、指示表示データ生成手段903は不要である。
【0142】
また、上記実施形態では、虚像を視認する者として車両の運転者を例にとって説明したが、虚像を視認する者であれば車両の運転者以外の者(例えば車両に乗っている運転者以外の者)であっても良い。
【0143】
また、上記実施形態のHUD装置において、導光手段は、凹面ミラー40(凹面鏡)から構成されているが、これに限らず、例えば、凸面鏡から構成されても良いし、曲面鏡(凹面鏡や凸面鏡)と、該曲面鏡とスクリーン30との間に配置された折り返しミラーとを含んで構成されても良い。
【0144】
また、上記実施形態では、光走査装置は、走査ミラー20を有しているが、有していなくても良い。
【0145】
また、上記実施形態では、光源としてLD(端面発光レーザ)を用いているが、例えば面発光レーザ等の他のレーザ等を用いても良い。
【0146】
また、上記実施形態では、HUD装置は、カラー画像に対応するように構成されているが、モノクロ画像に対応するように構成されても良い。
【0147】
また、透過反射部材は、車両のフロントウインドシールドに限らず、例えばサイドウインドシールド、リアウインドシールド等であっても良く、要は、透過反射部材は、虚像を視認する視認者が搭乗する車両に設けられ、該視認者が車両の外部を視認するための窓部材(ウインドシールド)であることが好ましい。
【0148】
また、上記実施形態では、HUD装置は、例えば自動車に搭載されるものを一例として説明したが、要は、路面上を走行する車両に搭載されるものであれば良い。例えば、本発明の車両装置に用いられる車両としては、4輪の自動車に限らず、自動二輪車、自動三輪車等であっても良い。この場合、透過反射部材としてのウインドシールドもしくはコンバイナを装備する必要がある。また、車両の動力源としては、例えばエンジン、モータ、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0149】
また、上記実施形態に記載した具体的な数値、形状等は、一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更である。
【符号の説明】
【0150】
10…光走査装置(表示系の一部、形成手段の一部)、30…スクリーン(表示系の一部、形成手段の一部)、40…凹面ミラー(表示系の一部、導光手段)、100…HUD装置、200…レーザレーダ(検出系、検出装置)、902…表示制御手段(制御手段、表示系の一部)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0151】
【特許文献1】特開2000‐57491号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26