(54)【発明の名称】有機エレクトロニクス材料、及び該材料を用いた有機層、有機エレクトロニクス素子、有機エレクトロルミネセンス素子、表示素子、照明装置、及び表示装置
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電荷輸送性を有する2価の構造単位L及び前記3価以上の構造単位Bが、芳香族アミン構造、ピロール構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、ベンゼン構造、フェノキサジン構造、及びフルオレン構造からなる群から選択される1以上の構造を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクス材料。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
<有機エレクトロニクス材料>
有機エレクトロニクス材料は、下式(I)で表される特定の構造部位を有する電荷輸送性化合物を含有する。
−Ar−X−Y (I)
式中、Arは炭素数2〜30のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表し、Xは炭素数1〜10の脂肪族炭化水素から誘導される2価の基を表し、Yは置換又は非置換の重合性官能基を表す。
【0019】
上記有機エレクトロニクス材料は、上記特定の構造部位を有する電荷輸送性化合物の2種以上を含有しても、さらに他の電荷輸送性化合物を含有してもよい。
[電荷輸送性化合物]
【0020】
上記電荷輸送性化合物は、電荷輸送性を有する構造単位を1以上有し、上記構造単位の少なくとも1つが、上記式(I)で表される構造部位を含む。以下、上記式(I)で表される構造部位について詳細に説明する。
【0021】
上記式(I)において、Arは炭素数2〜30のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子を2個取り除いた構造を有する基を意味する。ヘテロアリーレン基は、芳香族複素環から水素原子を2個取り除いた構造を有する基を意味する。芳香族炭化水素及び芳香族複素環は、それぞれ、例えばベンゼンのような単環構造であってもよく、例えばナフタレンのように環が互いに縮合してなる縮合環構造であってもよい。
芳香族炭化水素の具体例として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、テトラセン、フルオレン、及びフェナントレンが挙げられる。芳香族複素環の具体例として、ピリジン、ピラジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントロリン、フラン、ピロール、チオフェン、カルバゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、及びベンゾチオフェンが挙げられる。
芳香族炭化水素及び芳香族複素環は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環構造であってもよい。このような多環構造を有する芳香族炭化水素の一例として、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニルベンゼンが挙げられる。芳香族炭化水素及び芳香族複素環は、それぞれ、非置換であるか、又は1以上の置換基を有してよい。置換基は、例えば、炭素数1〜22の直鎖、環状又は分岐のアルキル基であってよい。炭素数は、1〜15であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましい。一実施形態において、Arは、フェニレン基又はナフチレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
【0022】
上記式(I)において、Xは、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基から誘導される2価の基(連結基)である。上記連結基は、直鎖、分岐、環状、又はこれらを組み合わせた構造を有してよい。上記連結基は、飽和であっても、不飽和であってもよい。一実施形態において、モノマー入手が容易な観点から、上記連結基は、直鎖構造が好ましい。また飽和の直鎖構造であることがより好ましい。
【0023】
上記の観点から、上記式(I)において、Xは、−(CH
2)n−であることが好ましく、式中、nは1〜10の整数であることが好ましく、1〜8の整数であることがより好ましく、1〜7の整数であることがさらに好ましい。
【0024】
上記式(I)において、Yは、重合性官能基を表す。「重合性官能基」とは、熱、及び光の少なくとも一方を加えることにより、結合を形成し得る官能基をいう。重合性官能基Yは、非置換であっても、置換基を有してよい。
【0025】
重合性官能基Yの具体例として、炭素−炭素多重結合を有する基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、エチニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基)、小員環を有する基(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基等の環状アルキル基;エポキシ基(オキシラニル基)、オキセタン基(オキセタニル基)等の環状エーテル基;ジケテン基;エピスルフィド基;ラクトン基;ラクタム基等)、複素環基(例えば、フラン−イル基、ピロール−イル基、チオフェン−イル基、シロール−イル基)などが挙げられる。
一実施形態において、重合性官能基Yは、置換又は非置換の、オキセタン基、エポキシ基、ビニル基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基のいずれかであってよい。反応性及び有機エレクトロニクス素子の特性の観点から、置換又は非置換の、ビニル基、オキセタン基、又はエポキシ基がより好ましい。これらの重合性官能基が置換基を有する場合、置換基は、炭素数1〜22の直鎖、環状、又は分岐の飽和アルキル基が好ましい。上記炭素数は1〜8がより好ましく、1〜4がさらに好ましい。置換基は、1〜4の直鎖の飽和アルキル基であることが最も好ましい。
【0026】
一実施形態において、保存安定性の観点から、重合性官能基Yは、下式(Y1)で示される置換又は非置換のオキセタン基であることが好ましい。式中、Rは、水素原子、又は炭素数1〜4の飽和のアルキル基であってよい。Rは、メチル基、又はエチル基であることが特に好ましい。
【化1】
【0027】
上記式(I)で表される構造部位を少なくとも1つ有する電荷輸送性化合物は、その構造内に少なくとも1つの重合性官能基Yを含むことになる。重合性官能基を含む化合物は、重合反応によって硬化可能であり、硬化によって溶剤への溶解度を変化させることが可能である。そのため、上記式(I)で表される構造部位を少なくとも1つ有する電荷輸送性化合物は、優れた硬化性を有し、湿式プロセスに適した材料となる。
【0028】
一実施形態において、上記式(I)で表される構造部位は、下式(I−1)で表される構造を有することがより好ましい。
【化2】
【0029】
式中、Yは、上述した重合性置換基であり、置換又は非置換の、オキセタン基、ビニル基、又はエポキシ基であることが好ましい。また、nは1〜10の整数である。nは、耐熱性及び溶解性の観点から、10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。
また、原料モノマーが容易に入手できる観点からも、nは10以下であることが好ましい。一実施形態において、nは、1〜8の整数であることがより好ましく、1〜7の整数であることがさらに好ましい。
【0030】
上記電荷輸送性化合物は、上記式(I)で表される構造部位を有し、かつ、電荷を輸送する能力を有していればよい。一実施形態において、輸送する電荷としては、正孔が好ましい。正孔輸送性の化合物であれば、例えば有機EL素子の正孔注入層や正孔輸送層として用いることができる。また、電子輸送性の化合物であれば、電子輸送層や電子注入層として用いることができる。また、正孔と電子の両方を輸送する化合物であれば、発光層の材料などに用いることができる。一実施形態において、上記電荷輸送性化合物は、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方の材料として使用することが好ましく、正孔注入層材料として使用することがより好ましい。
【0031】
一実施形態において、耐熱性の観点から、電荷輸送性化合物は、300℃加熱時の熱重量減少が、加熱前の質量に対して5質量%以下であることが好ましい。上記熱重量減少は、3.5質量%以下であることがより好ましい。さらに、上記熱質量減少が、3.0重量%以下、2.5質量%以下、及び1.5質量%以下であることがこの順に好ましく、1.0質量%以下であることが最も好ましい。
電荷輸送性化合物として、後述する特定の電荷輸送性ポリマーを使用した場合、材料の熱重量減少を上記範囲内に調整することが容易となる。ここで、「300℃加熱時の熱重量減少」とは、10mgの試料を、空気中で、5℃/分の昇温条件で300℃まで加熱した際の熱重量減少(質量%)をいう。上記熱重量減少の測定は、熱重量−示査熱(TG−DTA)分析装置を用いて実施することができる。
【0032】
電荷輸送性化合物が優れた耐熱性を有する場合、例えば有機膜形成時の熱劣化が抑制され、優れた導電性を有する有機層を得ることが容易となる。また、上記熱劣化による有機層の導電性の低下が抑制されることで、素子の駆動電圧の上昇を抑制することが容易となり、さらに寿命特性などの素子特性の改善が可能となる。
駆動電圧の上昇は、例えば、以下に示す駆動電圧V
1及び駆動電圧V
2の差として求められる上昇値(V
2−V
1)から評価することができる。
駆動電圧V
1:有機エレクトロニクス材料を用い、200℃で30分間にわたって加熱して得た第1の有機層の電流密度300mA/cm時の電圧を表す。
駆動電圧V
2:上記第1の有機層で使用した有機エレクトロニクス材料と同じ材料を用い、200℃で30分間にわたって加熱した後に、さらに230℃で30分間にわたって加熱して得た第2の有機層の電流密度300mA/cm時の電圧を表す。
ここで、上記第1及び第2の有機層の電圧の測定は、例えば、ITOをパターニングしたガラス基板の上に、上記第1の有機層又は第2の有機層(それぞれ膜厚100nm)、α−NPD層(膜厚20nm)、及びAl電極(膜厚100nm)を順次形成して得たサンプルを用いて実施することができる。
【0033】
一実施形態において、素子の寿命特性を向上する観点から、上記駆動電圧の上昇値(V
2−V
1)は、1V以下であることが好ましい。上記駆動電圧の上昇値は0.9V以下であることがより好ましく、0.8V以下であることがさらに好ましく、0.7V以下であることが特に好ましい。
これに対し、上記第1の有機層及び上記第2の有機層を形成するために、上記式(I)で表される構造部位を有する電荷輸送性化合物を含む有機エレクトロニクス材料を使用した場合、上記駆動電圧の上昇値を上記好ましい範囲内に抑えることができるため、素子の寿命特性を改善することが可能となる。
【0034】
湿式プロセスによる成膜をより簡便に実施するためには、インク調製時に、インク溶媒に対して有機エレクトロニクス材料は優れた溶解性を示すことが好ましい。インク溶媒に対する有機エレクトロニクス材料の溶解性を高めることができれば、インクの調製時間を短縮できるため、タクト低減及び低コスト化が可能となる。
インク溶媒に対する優れた溶解性を得る観点から、上記式(I−1)で表される構造部位において、nは3以上の整数であることが好ましく、4以上の整数であることがより好ましい。したがって、一実施形態において、nは、3〜10が好ましく、3〜8がより好ましく、4〜7がさらに好ましい。nが上記範囲の場合、優れた耐熱性に加えて、優れた溶解性を得ることが容易となる。
【0035】
上記式(I−1)で表される構造部位の具体例として、保存安定性の観点から、Yは、置換又は非置換のオキセタン基がより好ましい。この場合、優れた耐熱性と溶解性とを両立させる観点から、3〜6であることが好ましい。なかでも、原料モノマーが容易に入手できる観点から、nは3又は4であることがより好ましい。
【0036】
また、一実施形態において、優れた溶解性を得る観点から、大気下、室温(温度25℃)において、1%トルエン溶液を得るための上記電荷輸送性化合物の溶解時間は10分以下であることが好ましい。すなわち、例えば、トルエン1.145mLに対して、電荷輸送性化合物10mgを加えた時の、電荷輸送性化合物の溶解時間が10分以下であることが好ましい。溶解時間は、9分以下であることが好ましく、8分以下であることがさらに好ましい。ここで、溶解時間は、目視による観察において、電荷輸送性化合物がトルエンに溶解し、透明な溶液を形成するまでに要した時間を意味する。上記式(I−1)で表される構造部位において、nが上記範囲内である場合、好ましい溶解時間を実現することが容易である。
【0037】
電荷輸送性化合物は、1つ又は2つ以上の電荷輸送性を有する構造単位を有し、上記構造単位の少なくとも1つが上記式(I)で表される構造部位を有する。一実施形態において、電荷輸送性化合物は、3方向以上に分岐した構造を有することが好ましい。電荷輸送性化合物は、1つの構造単位から構成される低分子化合物と、複数の構造単位から構成される高分子化合物とに大別され、これらのいずれであってもよい。電荷輸送性化合物を構成する構造単位は、後述のとおりである。
【0038】
電荷輸送性化合物が低分子化合物である場合、高純度の材料が容易に得られる点で好ましい。電荷輸送性化合物が高分子化合物である場合、組成物の作製が容易であり、また、成膜性に優れる点で好ましい。さらに、両者の利点を得る観点から、電荷輸送性化合物として、低分子化合物と高分子化合物とを混合して用いることも可能である。以下、電荷輸送性化合物の一例として、電荷輸送性を有する複数の構造単位から構成される高分子化合物について、より具体的に説明する。
【0039】
[電荷輸送性ポリマー]
電荷輸送性化合物が高分子化合物である場合、電荷輸送性化合物はポリマー又はオリゴマー(以下、まとめて「電荷輸送性ポリマー」と称する)であってもよい。すなわち、一実施形態において、電荷輸送性化合物は電荷輸送性ポリマーであり、上記電荷輸送性ポリマーは、その分子内に、先に説明した下式(I)で表される構造部位を有し、かつ電荷を輸送する能力を有する。
−Ar−X−Y (I)
【0040】
末端部に−Ar−CH
2−O−で表される構造部位を含む電荷輸送性ポリマーは、加熱によって分子内の結合が切断しやすく、耐熱性に乏しい傾向がある。これに対し、上記式(I)で表される構造部位を有する電荷輸送性ポリマーは、加熱によって分子内の結合が切断し難いため、優れた耐熱性を有する。したがって、このような電荷輸送性ポリマーを含む有機エレクトロニクス材料を構成することで、該材料における耐熱性の向上が可能となる。
耐熱性の向上に伴い、例えば、素子作製時の高温プロセスによる有機層の熱劣化が改善されるため、有機層の性能を維持することが容易になる。特に、上記式(I)で表される構造部位を有する電荷輸送性ポリマーを含む有機エレクトロニクス材料用いて塗布法に従い有機層を形成する場合、高温でベーク処理を実施しても、有機層の性能低下が抑制され、高いキャリア移動度を維持することが可能となる。すなわち、素子作製時の熱劣化が改善され、導電性の低下を抑制することができる。また、電荷輸送性ポリマーから形成される有機層の耐熱性及び導電性が向上することで、素子の耐熱性、導電性及び寿命特性を改善することも可能となる。
【0041】
電荷輸送性ポリマーは、直鎖状であっても、又は、分岐構造を有していてもよい。電荷輸送性ポリマーは、電荷輸送性を有する2価の構造単位Lと末端部を構成する1価の構造単位Tとを少なくとも含むことが好ましく、分岐部を構成する3価以上の構造単位Bをさらに含んでもよい。一実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、電荷輸送性を有する2価の構造単位Lと電荷輸送性を有する3価以上の構造単位Bとを含むことが好ましい。電荷輸送性ポリマーは、各構造単位を、それぞれ1種のみ含んでいても、又は、それぞれ複数種含んでいてもよい。電荷輸送性ポリマーにおいて、各構造単位は、「1価」〜「3価以上」の結合部位において互いに結合している。
【0042】
上記式(I)で表される構造部位は、電荷輸送性ポリマーの末端部(すなわち、構造単位T)に導入されていても、末端部以外の部分(すなわち、構造単位L又はB)に導入されていても、末端部と末端以外の部分の両方に導入されていてもよい。硬化性の観点からは、少なくとも末端部に導入されていることが好ましく、硬化性及び電荷輸送性の両立を図る観点からは、末端部のみに導入されていることが好ましい。また、電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合、上記式(I)で表される構造部位は、電荷輸送性ポリマーの主鎖に導入されていても、側鎖に導入されていてもよく、主鎖と側鎖の両方に導入されていてもよい。
【0043】
(電荷輸送性ポリマーの構造)
電荷輸送性ポリマーに含まれる部分構造の例として、以下が挙げられる。電荷輸送性ポリマーは以下の部分構造を有するポリマーに限定されない。部分構造中、「L」は構造単位Lを、「T」は構造単位Tを、「B」は構造単位Bを表す。「*」は、他の構造単位との結合部位を表す。以下の部分構造中、複数のLは、互いに同一の構造単位であっても、互いに異なる構造単位であってもよい。T及びBについても、同様である。
【0044】
直鎖状の電荷輸送性ポリマーの例
【化3】
【0045】
分岐構造を有する電荷輸送性ポリマーの例
【化4】
【化5】
【0046】
(構造単位L)
構造単位Lは、電荷輸送性を有する2価の構造単位である。構造単位Lは、電荷を輸送する能力を有する原子団を含んでいればよく、特に限定されない。例えば、構造単位Lは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ビフェニル構造、ターフェニル構造、ナフタレン構造、アントラセン構造、テトラセン構造、フェナントレン構造、ジヒドロフェナントレン構造、ピリジン構造、ピラジン構造、キノリン構造、イソキノリン構造、キノキサリン構造、アクリジン構造、ジアザフェナントレン構造、フラン構造、ピロール構造、オキサゾール構造、オキサジアゾール構造、チアゾール構造、チアジアゾール構造、トリアゾール構造、ベンゾチオフェン構造、ベンゾオキサゾール構造、ベンゾオキサジアゾール構造、ベンゾチアゾール構造、ベンゾチアジアゾール構造、ベンゾトリアゾール構造、フェノキサジン構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。上記芳香族アミン構造は、アニリン構造であってもよいが、トリアリールアミン構造が好ましく、トリフェニルアミン構造がより好ましい。
【0047】
一実施形態において、構造単位Lは、優れた正孔輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、チオフェン構造、フルオレン構造、ベンゼン構造、ピロール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることが好ましい。一実施形態において、ベンゼン構造は、例えば、トリフェニルアミン構造のように、芳香族アミン構造の一部を構成しても、またはピロール構造との組合せにおいてベンゾポルフィリン構造を形成してもよい。
構造単位Lは、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることがより好ましい。他の実施形態において、構造単位Lは、優れた電子輸送性を得る観点から、置換又は非置換の、フルオレン構造、ベンゼン構造、フェナントレン構造、ピリジン構造、キノリン構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択されることが好ましい。
【0048】
構造単位Lの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Lは、以下に限定されない。
【0051】
一実施形態において、Rは、上記式(I)で表される構造部位であってもよい。
他の実施形態において、Rは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rは、それぞれ独立に、−R
1、−OR
2、−SR
3、−OCOR
4、−COOR
5、−SiR
6R
7R
8、ハロゲン原子、及び、上記式(I)について先に説明した置換又は非置換の重合性官能基Y、からなる群から選択されることが好ましい。
R
1〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子;炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基;又は、炭素数2〜30個のアリール基又はヘテロアリール基を表す。アリール基は、芳香族炭化水素から水素原子1個を除いた原子団である。ヘテロアリール基は、芳香族複素環から水素原子1個を除いた原子団である。アルキル基は、さらに、炭素数2〜20個のアリール基又はヘテロアリール基により置換されていてもよく、アリール基又はヘテロアリール基は、さらに、炭素数1〜22個の直鎖、環状又は分岐アルキル基により置換されていてもよい。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基であることが好ましい。Arは、炭素数2〜30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。アリーレン基は、芳香族炭化水素から水素原子2個を除いた原子団である。ヘテロアリーレン基は、芳香族複素環から水素原子2個を除いた原子団である。Arは、アリーレン基であることが好ましく、フェニレン基であることがより好ましい。
【0052】
芳香族炭化水素としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。芳香族複素環としては、単環、縮合環、又は、単環及び縮合環から選択される2個以上が単結合を介して結合した多環が挙げられる。
一実施形態において、構造単位Lは、芳香族アミン構造及びカルバゾール構造の少なくとも一方を含むことが好ましい。溶解性の観点から、芳香族アミン構造を含むことがより好ましい。芳香族アミン構造は、トリフェニルアミン構造であることが好ましい。トリフェニルアミン構造において、少なくとも1つのフェニル基は置換基を有してもよい。置換基としてアルキル基を有する場合、優れた溶解性を得ることが容易となる傾向がある。一方、置換基としてアルコキシル基を有する場合、優れた耐熱性を得ることが容易となる傾向がある。
【0053】
(構造単位B)
構造単位Bは、電荷輸送性ポリマーが分岐構造を有する場合に、分岐部を構成する3価以上の構造単位である。構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、6価以下が好ましく、3価又は4価がより好ましい。構造単位Bは、電荷輸送性を有する単位であることが好ましい。例えば、構造単位Bは、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、置換又は非置換の、芳香族アミン構造、カルバゾール構造、及び縮合多環式芳香族炭化水素構造が好ましい。
【0054】
構造単位Bの具体例として、以下が挙げられる。構造単位Bは、以下に限定されない。
【化8】
【0055】
Wは、3価の連結基を表し、例えば、炭素数2〜30個のアレーントリイル基又はヘテロアレーントリイル基を表す。アレーントリイル基は、芳香族炭化水素から水素原子3個を除いた原子団である。ヘテロアレーントリイル基は、芳香族複素環から水素原子3個を除いた原子団である。Arは、それぞれ独立に2価の連結基を表し、例えば、それぞれ独立に、炭素数2〜30個のアリーレン基又はヘテロアリーレン基を表す。Arは、アリーレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
Yは、2価の連結基を表し、例えば、構造単位LにおけるR(ただし、上記式(I)で表される構造部位、及び置換又は非置換の重合性官能基Yを除く)のうち水素原子を1個以上有する基から、さらに1個の水素原子を除いた2価の基が挙げられる。
Zは、炭素原子、ケイ素原子、又はリン原子のいずれかを表す。構造単位中、ベンゼン環及びArは、置換基を有していてもよい。置換基の例としては、構造単位LにおけるRが挙げられる。一実施形態において、構造単位Bは、置換基として、上記式(I)で表される構造部位を有してもよい。
一実施形態において、構造単位Bは、芳香族アミン構造及びカルバゾール構造の少なくとも一方を含むことが好ましい。芳香族アミン構造は、トリフェニルアミン構造であることがより好ましい。耐熱性の観点から、構造単位Bは、カルバゾール構造を含むことがより好ましい。
【0056】
(構造単位T)
構造単位Tは、電荷輸送性ポリマーの末端部を構成する1価の構造単位である。構造単位Tは、特に限定されず、例えば、置換又は非置換の、芳香族炭化水素構造、芳香族複素環構造、及び、これらの1種又は2種以上を含む構造から選択される。構造単位Tは構造単位Lと同じ構造を有していてもよい。一実施形態において、構造単位Tは、電荷の輸送性を低下させずに耐久性を付与するという観点から、置換又は非置換の芳香族炭化水素構造であることが好ましく、置換又は非置換のベンゼン構造であることがより好ましい。
中でも、硬化性を高める観点から、電荷輸送性ポリマーは末端部に重合性官能基を有することが好ましい。したがって、一実施形態において、電荷輸送性ポリマーは、構造単位T1として、下式(I)で表される構造部位を末端に有することが好ましい。式中、Ar、X、Yは先に説明したとおりである。
−Ar−X−Y (I)
【0057】
上記構造単位T1を含む電荷輸送性ポリマーを使用することによって、優れた硬化性及び耐熱性を得ることが容易となる。電荷輸送性ポリマーは、構造単位T1として、前述の式(I−1)で表される構造部位を有することがより好ましい。
【0058】
一実施形態において、電荷輸送性ポリマーの硬化性及び耐熱性の双方を高める観点から、全構造単位Tを基準として、上記式(I)で表される構造部位を有する構造単位T1の割合は、50モル%以上が好ましく、75モル%以上がより好ましく、85モル%以上がさらに好ましい。上記構造単位T1の割合は、100モル%とすることもできる。
【0059】
(数平均分子量)
電荷輸送性ポリマーの数平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。数平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、500以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、2,000以上がさらに好ましい。また、数平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。
【0060】
(重量平均分子量)
電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量は、溶剤への溶解性、成膜性等を考慮して適宜、調整できる。重量平均分子量は、電荷輸送性に優れるという観点から、1,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上がさらに好ましい。また、重量平均分子量は、溶媒への良好な溶解性を保ち、インク組成物の調製を容易にするという観点から、1,000,000以下が好ましく、700,000以下がより好ましく、400,000以下がさらに好ましい。
【0061】
数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて下記の条件で測定することができる。
送液ポンプ :L−6050 (株)日立ハイテクノロジーズ
UV−Vis検出器:L−3000 (株)日立ハイテクノロジーズ
カラム :Gelpack(登録商標) GL−A160S/GL−A150S 日立化成(株)
溶離液 :THF(HPLC用、安定剤を含まない) 和光純薬工業(株)
流速 :1mL/min
カラム温度 :室温
分子量標準物質 :標準ポリスチレン
【0062】
(構造単位の割合)
電荷輸送性ポリマーに含まれる構造単位Lの割合は、充分な電荷輸送性を得る観点から、全構造単位を基準として、10モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、30モル%以上がさらに好ましい。また、構造単位Lの割合は、構造単位T及び必要に応じて導入される構造単位Bを考慮すると、95モル%以下が好ましく、90モル%以下がより好ましく、85モル%以下がさらに好ましい。
【0063】
電荷輸送性ポリマーに含まれる構造単位Tの割合は、有機エレクトロニクス素子の特性向上の観点、又は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点から、全構造単位を基準として、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、15モル%以上がさらに好ましい。また、構造単位Tの割合は、充分な電荷輸送性を得る観点から、60モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。一実施形態において、構造単位Tの割合は、上記式(I)で表される構造部位を有する構造単位T1の割合を意味する。他の実施形態において、構造単位Tの割合は、上記構造単位T1と、これ以外の構造単位Tとの合計量を意味する。
【0064】
電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位Bの割合は、有機エレクトロニクス素子の耐久性向上の観点から、全構造単位を基準として、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。また、構造単位Bの割合は、粘度の上昇を抑え、電荷輸送性ポリマーの合成を良好に行う観点、又は、充分な電荷輸送性を得る観点から、50モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましく、30モル%以下がさらに好ましい。
【0065】
電荷輸送性、耐久性、生産性等のバランスを考慮すると、構造単位L及び構造単位Tの割合(モル比)は、L:T=100:1〜70が好ましく、100:3〜50がより好ましく、100:5〜30がさらに好ましい。また、電荷輸送性ポリマーが構造単位Bを含む場合、構造単位L、構造単位T、及び構造単位Bの割合(モル比)は、L:T:B=100:10〜200:10〜100が好ましく、100:20〜180:20〜90がより好ましく、100:40〜160:30〜80がさらに好ましい。
【0066】
構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量を用いて求めることができる。また、構造単位の割合は、電荷輸送性ポリマーの
1H NMRスペクトルにおける各構造単位に由来するスペクトルの積分値を利用し、平均値として算出することができる。簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、仕込み量を用いて求めた値を採用することが好ましい。
【0067】
電荷輸送性ポリマーが正孔輸送性化合物であるとき、高い正孔注入性及び正孔輸送性を得る観点から、正孔輸送性化合物は、芳香族アミン構造を有する単位及びカルバゾール構造を有する単位の少なくとも一方を主要な構造単位として有する化合物であることが好ましい。この観点から、電荷輸送性ポリマー中の全構造単位数(但し、末端の構造単位を除く。)に対する芳香族アミン構造を有する単位及びカルバゾール構造を有する単位の少なくとも一方の全構造単位数の割合は、40%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。芳香族アミン構造を有する単位及びカルバゾール構造を有する単位の少なくとも一方の全構造単位数の割合を100%とすることも可能である。
【0068】
上記式(I)で表される構造部位を有する電荷輸送性ポリマーは、分子内に重合性官能基を含む。重合性官能基は、溶解度の変化に寄与する観点からは、電荷輸送性ポリマー中に多く含まれる方が好ましい。一方、電荷輸送性を妨げない観点からは、電荷輸送性ポリマー中に含まれる量が少ない方が好ましい。したがって、重合性官能基の含有量は、これらを考慮して、適宜設定することができる。
【0069】
例えば、電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基の数は、充分な溶解度の変化を得る観点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。また、重合性官能基数は電荷輸送性を保つ観点から、1,000個以下が好ましく、500個以下がより好ましい。ここで、重合性官能基の数は、上記式(I)で表される構造部位に含まれる重合性官能基と、その他の置換基として存在する重合性官能基との合計を意味する。
【0070】
電荷輸送性ポリマー1分子あたりの重合性官能基の数は、電荷輸送性ポリマーを合成するために使用した、各構造単位に対応するモノマーの仕込み量の合計に対する、重合性官能基を有するモノマーの仕込み量、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量等を用い、平均値として求めることができる。
また、重合性官能基の数は、電荷輸送性ポリマーの
1H NMR(核磁気共鳴)スペクトルにおける重合性官能基に由来するシグナルの積分値と全スペクトルの積分値との比、電荷輸送性ポリマーの重量平均分子量等を利用し、平均値として算出できる。
簡便であることから、仕込み量が明らかである場合は、仕込み量を用いて求めた値を採用することが好ましい。
【0071】
一実施形態において、電荷輸送性ポリマーにおける重合性官能基の割合は、電荷輸送性ポリマーを効率よく硬化させるという観点から、全構造単位を基準として0.1モル%以上が好ましく、1モル%以上がより好ましく、3モル%以上がさらに好ましい。また、重合性官能基の割合は、良好な電荷輸送性を得るという観点から、70モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。なお、ここでの「重合性官能基の割合」とは、全構造単位に対する重合性官能基を有する構造単位の割合をいう。
【0072】
(製造方法)
電荷輸送性ポリマーは、種々の合成方法により製造でき、特に限定されない。例えば、鈴木カップリング、根岸カップリング、園頭カップリング、スティルカップリング、ブッフバルト・ハートウィッグカップリング等の公知のカップリング反応を用いることができる。鈴木カップリングは、芳香族ボロン酸誘導体と芳香族ハロゲン化物の間で、Pd触媒を用いたクロスカップリング反応を起こさせるものである。鈴木カップリングによれば、所望とする芳香環同士を結合させることにより、電荷輸送性ポリマーを簡便に製造できる。
【0073】
カップリング反応では、触媒として、例えば、Pd(0)化合物、Pd(II)化合物、Ni化合物等が用いられる。また、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、酢酸パラジウム(II)等を前駆体とし、ホスフィン配位子と混合することにより発生させた触媒種を用いることもできる。電荷輸送性ポリマーの合成方法については、例えば、国際公開第WO2010/140553号の記載を参照できる。
【0074】
[ドーパント]
有機エレクトロニクス材料は、ドーパントをさらに含有してもよい。ドーパントは、有機エレクトロニクス材料に添加することでドーピング効果を発現させ、電荷の輸送性を向上させ得る化合物であればよく、特に制限はない。ドーピングには、p型ドーピングとn型ドーピングがあり、p型ドーピングではドーパントとして電子受容体として働く物質が用いられ、n型ドーピングではドーパントとして電子供与体として働く物質が用いられる。正孔輸送性の向上にはp型ドーピング、電子輸送性の向上にはn型ドーピングを行うことが好ましい。有機エレクトロニクス材料に用いられるドーパントは、p型ドーピング又はn型ドーピングのいずれの効果を発現させるドーパントであってもよい。また、1種のドーパントを単独で添加しても、複数種のドーパントを混合して添加してもよい。
【0075】
p型ドーピングに用いられるドーパントは、電子受容性の化合物であり、例えば、ルイス酸、プロトン酸、遷移金属化合物、イオン化合物、ハロゲン化合物、π共役系化合物等が挙げられる。具体的には、ルイス酸としては、FeCl
3、PF
5、AsF
5、SbF
5、BF
5、BCl
3、BBr
3等;プロトン酸としては、HF、HCl、HBr、HNO
5、H
2SO
4、HClO
4等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、1−ブタンスルホン酸、ビニルフェニルスルホン酸、カンファスルホン酸等の有機酸;遷移金属化合物としては、FeOCl、TiCl
4、ZrCl
4、HfCl
4、NbF
5、AlCl
3、NbCl
5、TaCl
5、MoF
5;イオン化合物としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、AsF
6−(ヘキサフルオロ砒酸イオン)、BF
4−(テトラフルオロホウ酸イオン)、PF
6−(ヘキサフルオロリン酸イオン)等のパーフルオロアニオンを有する塩、アニオンとして上記プロトン酸の共役塩基を有する塩など;ハロゲン化合物としては、Cl
2、Br
2、I
2、ICl、ICl
3、IBr、IF等;π共役系化合物としては、TCNE(テトラシアノエチレン)、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)等が挙げられる。また、特開2000−36390号公報、特開2005−75948号公報、特開2003−213002号公報等に記載の電子受容性化合物を用いることも可能である。上記の中でも、ルイス酸、イオン化合物、π共役系化合物等が好ましく、イオン化合物がより好ましく、オニウム塩がさらに好ましい。オニウム塩とは、ヨードニウム及びアンモニウム等のオニウムイオンを含むカチオン部と、対するアニオン部とからなる化合物を意味する。
【0076】
n型ドーピングに用いられるドーパントは、電子供与性の化合物であり、例えば、Li、Cs等のアルカリ金属、Mg、Ca等のアルカリ土類金属、LiF、Cs
2CO
3等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩の少なくとも一方、金属錯体、電子供与性有機化合物などが挙げられる。
【0077】
有機層の溶解度の変化を容易にするために、ドーパントとして、重合性官能基に対する重合開始剤として作用し得る化合物を用いることが好ましい。ドーパントとしての機能と重合開始剤としての機能とを兼ねる物質として、例えば、上記イオン化合物が挙げられる。
【0078】
[他の任意成分]
有機エレクトロニクス材料は、電荷輸送性の低分子化合物、他のポリマー等をさらに含有してもよい。
【0079】
[含有量]
電荷輸送性化合物の含有量は、良好な電荷輸送性を得る観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。100質量%とすることも可能である。
【0080】
ドーパントを含有する場合、その含有量は、有機エレクトロニクス材料の電荷輸送性を向上させる観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また、成膜性を良好に保つ観点から、有機エレクトロニクス材料の全質量に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0081】
[重合開始剤]
上記有機エレクトロニクス材料は、重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤として、公知のラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、アニオン重合開始剤等を使用できる。インク組成物を簡便に調製できる観点から、ドーパントとしての機能と重合開始剤としての機能とを兼ねる物質を用いることが好ましい。ドーパントとしての機能も備えたカチオン重合開始剤として、例えば、上記イオン化合物を好適に使用することができる。例えば、パーフルオロアニオンと、ヨードニウムイオン又はアンモニウムイオン等のカチオンとのオニウム塩が挙げられる。オニウム塩の具体例として、以下の化合物が挙げられる。
【化9】
【0082】
<インク組成物>
有機エレクトロニクス材料は、上記実施形態の有機エレクトロニクス材料と該材料を溶解又は分散し得る溶媒とを含有するインク組成物であってもよい。インク組成物を用いることによって、塗布法といった簡便な方法によって有機層を容易に形成できる。
【0083】
[溶媒]
溶媒としては、水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を使用できる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;
ペンタン、ヘキサン、オクタン等のアルカン;
シクロヘキサン等の環状アルカン;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、ジフェニルメタン等の芳香族炭化水素;
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート等の脂肪族エーテル;
1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテル;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;
酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステル;
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;
ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなどが挙げられる。
上記の中でも、芳香族炭化水素、脂肪族エステル、芳香族エステル、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等が好ましい。一実施形態において、溶媒は、芳香族炭化水素が好ましく、なかでもトルエンが好ましい。
【0084】
[添加剤]
インク組成物は、さらに、任意成分として添加剤を含有してもよい。添加剤としては、重合禁止剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、難燃剤、酸化防止剤、還元防止剤、酸化剤、還元剤、表面改質剤、乳化剤、消泡剤、分散剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0085】
[含有量]
インク組成物における溶媒の含有量は、種々の塗布方法へ適用することを考慮して定めることができる。例えば、溶媒の含有量は、溶媒に対する電荷輸送性ポリマーの割合が、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。
また、溶媒の含有量は、溶媒に対する電荷輸送性ポリマーの割合が、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0086】
<有機層>
一実施形態において、有機層は、上記実施形態の有機エレクトロニクス材料を用いて形成された層である。上記実施形態の有機エレクトロニクス材料は、インク組成物として用いてもよい。インク組成物を用いることによって、塗布法により有機層を良好に形成できる。塗布方法としては、例えば、スピンコーティング法;キャスト法;浸漬法;凸版印刷、凹版印刷、オフセット印刷、平版印刷、凸版反転オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷等の有版印刷法;インクジェット法等の無版印刷法などの公知の方法が挙げられる。塗布法によって有機層を形成する場合、塗布後に得られた有機層(塗布層)を、ホットプレート又はオーブンを用いて乾燥させ、溶媒を除去してもよい。
【0087】
光照射、加熱処理等により電荷輸送性化合物の重合反応を進行させ、有機層の溶解度を変化させてもよい。溶解度を変化させた有機層を積層することで、有機エレクトロニクス素子の多層化を容易に図ることが可能となる。有機層の形成方法については、例えば、国際公開第WO2010/140553号の記載を参照できる。
【0088】
乾燥後又は硬化後の有機層の厚さは、電荷輸送の効率を向上させる観点から、0.1nm以上が好ましく、1nm以上がより好ましく、3nm以上がさらに好ましい。
また、有機層の厚さは、電気抵抗を小さくする観点から、300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、100nm以下がさらに好ましい。
【0089】
<有機エレクトロニクス素子>
一実施形態において、有機エレクトロニクス素子は、少なくとも上記実施形態の有機層を有する。有機エレクトロニクス素子として、有機EL素子、有機光電変換素子、有機トランジスタ等が挙げられる。有機エレクトロニクス素子は、少なくとも一対の電極の間に有機層が配置された構造を有することが好ましい。
【0090】
[有機EL素子]
一実施形態において、有機EL素子は、少なくとも上記実施形態の有機層を有する。有機EL素子は、通常、発光層、陽極、陰極、及び基板を備えており、必要に応じて、正孔注入層、電子注入層、正孔輸送層、電子輸送層等の他の機能層を備えている。各層は、蒸着法により形成してもよく、塗布法により形成してもよい。有機EL素子は、有機層を発光層又は他の機能層として有することが好ましいく、機能層として有することがより好ましく、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方として有することがさらに好ましい。
【0091】
図1は、有機EL素子の一実施形態を示す断面模式図である。
図1の有機EL素子は、多層構造の素子であり、基板8、陽極2、上記実施形態の有機層からなる正孔注入層3及び正孔輸送層6、発光層1、電子輸送層7、電子注入層5、並びに陰極4をこの順に有している。以下、各層について説明する。
図1では、正孔注入層3及び正孔輸送層6が、上記有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層であるが、本明細書に記載の有機ELはこのような構造に限らず、他の有機層が上記の有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層であってもよい。
【0092】
[発光層]
発光層に用いる材料としては、低分子化合物、ポリマー、デンドリマー等の発光材料を使用できる。溶媒への溶解性が高く、塗布法に適しているため、ポリマーが好ましい。発光材料としては、蛍光材料、燐光材料、熱活性化遅延蛍光材料(TADF)等が挙げられる。
【0093】
上記蛍光材料としては、ペリレン、クマリン、ルブレン、キナクドリン、スチルベン、色素レーザー用色素、アルミニウム錯体、これらの誘導体等の低分子化合物;ポリフルオレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリビニルカルバゾール、フルオレンーベンゾチアジアゾール共重合体、フルオレン−トリフェニルアミン共重合体、これらの誘導体等のポリマー;これらの混合物などが挙げられる。
【0094】
上記燐光材料としては、Ir、Pt等の金属を含む金属錯体などを使用できる。Ir錯体としては、青色発光を行うFIr(pic)(イリジウム(III)ビス[(4,6−ジフルオロフェニル)−ピリジネート−N,C
2]ピコリネート)、緑色発光を行うIr(ppy)
3(ファク トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム)、赤色発光を行う(btp)
2Ir(acac)(ビス〔2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナート−N,C
3〕イリジウム(アセチル−アセトネート))、Ir(piq)
3(トリス(1−フェニルイソキノリン)イリジウム)等が挙げられる。Pt錯体としては、赤色発光を行うPtOEP(2、3、7、8、12、13、17、18−オクタエチル−21H、23H−フォルフィンプラチナ)等が挙げられる。
【0095】
発光層が上記燐光材料を含む場合、燐光材料の他に、さらにホスト材料を含むことが好ましい。ホスト材料としては、低分子化合物、ポリマー、又はデンドリマーを使用できる。低分子化合物としては、CBP(4,4’−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)ビフェニル)、mCP(1,3−ビス(9−カルバゾリル)ベンゼン)、CDBP(4,4’−ビス(カルバゾール−9−イル)−2,2’−ジメチルビフェニル)、これらの誘導体等が挙げられる。
ポリマーとしては、上記実施形態の有機エレクトロニクス材料、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレン、ポリフルオレン、これらの誘導体等が挙げられる。
【0096】
熱活性化遅延蛍光材料としては、Adv. Mater., 21, 4802-4906 (2009);Appl. Phys. Lett., 98, 083302 (2011);Chem. Comm., 48, 9580 (2012);Appl. Phys. Lett., 101, 093306 (2012);J. Am. Chem. Soc., 134, 14706 (2012);Chem. Comm., 48, 11392 (2012);Nature, 492, 234 (2012);Adv. Mater., 25, 3319 (2013);J. Phys. Chem. A, 117, 5607 (2013);Phys. Chem. Chem. Phys., 15, 15850 (2013);Chem. Comm., 49, 10385 (2013);Chem. Lett., 43, 319 (2014)等に記載の化合物が挙げられる。
【0097】
一実施形態において、上記有機EL素子は、燐光材料を含む発光層を有することが好ましい。他の実施形態において、上記有機EL素子は、熱活性化遅延蛍光材料を含む発光層を有することが好ましい。
【0098】
[正孔輸送層、正孔注入層]
図1では、正孔注入層3及び正孔輸送層6が、上記有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層であってよいが、本実施形態の有機EL素子はこのような構造に限らない。正孔注入層及び正孔輸送層以外の有機層が、上記の有機エレクトロニクス材料を用いて形成されてもよい。
上記有機エレクトロニクス材料は、正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも一方として使用されることが好ましく、少なくとも正孔輸送層として使用されることがさらに好ましい。例えば、有機EL素子が、上記有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層を正孔輸送層として有し、さらに正孔注入層を有する場合、正孔注入層には公知の材料を使用できる。また、例えば、有機EL素子が、上記有機エレクトロニクス材料を用いて形成された有機層を正孔注入層として有し、さらに正孔輸送層を有する場合、正孔輸送層には公知の材料を使用できる。
正孔注入層及び正孔輸送層に用いることができる材料としては、芳香族アミン系化合物(N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(α-NPD)等の芳香族ジアミン)、フタロシアニン系化合物、チオフェン系化合物(チオフェン系導電性ポリマー(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4−スチレンスルホン酸塩)(PEDOT:PSS)等)などが挙げられる。
【0099】
[電子輸送層、電子注入層]
電子輸送層及び電子注入層に用いる材料としては、フェナントロリン誘導体、ビピリジン誘導体、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレン、ペリレン等の縮合環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体(例えば、2,2’,2”−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(TPBi))、キノキサリン誘導体、アルミニウム錯体(例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−4−(フェニルフェノラト)アルミニウム(BAlq))などが挙げられる。また、上記実施形態の有機エレクトロニクス材料も使用できる。
【0100】
[陰極]
陰極材料としては、Li、Ca、Mg、Al、In、Cs、Ba、Mg/Ag、LiF、CsF等の金属又は金属合金が用いられる。
【0101】
[陽極]
陽極材料としては、金属(例えば、Au)又は導電性を有する他の材料が用いられる。他の材料として、酸化物(例えば、ITO:酸化インジウム/酸化錫)、導電性高分子(例えば、ポリチオフェン−ポリスチレンスルホン酸混合物(PEDOT:PSS))が挙げられる。
【0102】
[基板]
一実施形態において、上記有機エレクトロニクス素子は、基板をさらに有することが好ましい。基板としては、ガラス、プラスチック等を使用できる。基板は、透明であることが好ましい。また、フレキシブル性を有する基板(フレキシブル性基板)が好ましい。具体的には、石英ガラス、光透過性の樹脂フィルム等の基板が好ましい。
【0103】
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート等からなるフィルムが挙げられる。
【0104】
樹脂フィルムを用いる場合、水蒸気、酸素等の透過を抑制するために、樹脂フィルムへ酸化珪素、窒化珪素等の無機物をコーティングして用いてもよい。
【0105】
[発光色]
有機EL素子の発光色は特に限定されない。白色の有機EL素子は、家庭用照明、車内照明、時計又は液晶のバックライト等の各種照明器具に用いることができるため好ましい。
【0106】
白色の有機EL素子を形成する方法としては、複数の発光材料を用いて複数の発光色を同時に発光させて混色させる方法を用いることができる。複数の発光色の組み合わせとしては、特に限定されないが、青色、緑色及び赤色の3つの発光極大波長を含有する組み合わせ、青色と黄色、黄緑色と橙色等の2つの発光極大波長を含有する組み合わせなどが挙げられる。発光色の制御は、発光材料の種類と量の調整により行うことができる。
【0107】
<表示素子、照明装置、表示装置>
本発明の実施形態である表示素子は、上記実施形態の有機EL素子を備えている。例えば、赤、緑及び青(RGB)の各画素に対応する素子として、有機EL素子を用いることで、カラーの表示素子が得られる。画像の形成方法には、マトリックス状に配置した電極でパネルに配列された個々の有機EL素子を直接駆動する単純マトリックス型と、各素子に薄膜トランジスタを配置して駆動するアクティブマトリックス型とがある。
【0108】
また、一実施形態において、照明装置は、上記実施形態の有機EL素子を備えている。さらに、一実施形態において、表示装置は、照明装置と、表示手段として液晶素子とを備えている。例えば、表示装置は、バックライトとして上記実施形態の照明装置を用い、表示手段として公知の液晶素子を用いた表示装置、すなわち液晶表示装置とすることができる。
【実施例】
【0109】
以下に、実験例に沿って本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の例示に限定されるものではない。
【0110】
(原料モノマーの調製)
<モノマーC1の調製>
(化合物Aの調製)
【化10】
丸底フラスコに、2−エチルマロン酸ジエチル(27mmol)、脱水テトラヒドロフラン(20ml)を加え、0℃に冷却し15分攪拌したのち、NaH(in 50% Oil)をゆっくり加えた。その後、室温に戻し、2.5時間攪拌後に、1−ブロモ−4−(4−ブロモブチル)ベンゼン(25mmol)をテトラヒドロフラン(10ml)に溶解した溶液を滴下し、室温で19時間攪拌した。その後、水でクエンチ後、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。エバポレーターで溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤:ワコーゲル(登録商標)C−300HG, 移動層:n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1)により精製し、化合物Aを無色油状物として7.8g得た(収率78%)。
化合物Aの
1H−NMRの測定結果は以下のとおりである。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm);0.86(t,J=7.5Hz,3H),1.76(t,J=7.5Hz,2H),3.57(s,2H),4.39(d,J=5.7Hz,2H),4.45(d,J=5.7Hz,2H),4.51(s,2H),7.22(d,J=8.4Hz,2H),7.47(d,J=8.4Hz,2H)。
【0111】
(化合物Bの調製)
【化11】
丸底フラスコに、先に調製した化合物A(19.5mmol)を加え、LiBH4のTHF溶液(43ml)を滴下後、50℃で4.5時間攪拌した。反応終了後、冷却しながら、イソプロパノール、メタノール、水でクエンチしたのち、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。エバポレーターで溶媒を留去し、化合物Bを白色固体として5.56g得た(収率90%)。
化合物Bの
1H−NMRの測定結果は以下のとおりである。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm);0.86(t,J=7.5Hz,3H),1.76(t,J=7.5Hz,2H),3.57(s,2H),4.39(d,J=5.7Hz,2H),4.45(d,J=5.7Hz,2H),4.51(s,2H),7.22(d,J=8.4Hz,2H),7.47(d,J=8.4Hz,2H)。
【0112】
(モノマーC1の調製)
【化12】
丸底フラスコに、先に調製した化合物B(17.6mmol)、ピリジン(200ml)、t-ブトキシカリウム(19.4mmol)と加え、室温で1時間攪拌した。その後、p−トルエンスルホニウムクロリド(21.2mmol)を加え、室温で12時間攪拌した。次いで、t-ブトキシカリウム(26.5mmol)を加えた後、100℃に加熱し、6時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を水でクエンチした後、酢酸エチルで抽出を行い、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。エバポレーターで溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(充填剤:ワコーゲル(登録商標)C−300HG, 移動層:n−ヘキサン:酢酸エチル=8:1)により精製し、無色油状のモノマーC1(1.5g)を得た(収率30%)。
モノマーC1の
1H−NMRの測定結果は以下のとおりである。
1H−NMR(300MHz,CDCl
3,δppm);0.86(t,J=7.5Hz,3H),1.76(t,J=7.5Hz,2H),3.57(s,2H),4.39(d,J=5.7Hz,2H),4.45(d,J=5.7Hz,2H),4.51(s,2H),7.22(d,J=8.4Hz,2H),7.47(d,J=8.4Hz,2H)。
【0113】
(実験例1〜8)
実験例1〜8として、以下に示すようにして正孔輸送性ポリマー1〜8をそれぞれ合成し、各評価を行った。
1.正孔輸送性ポリマーの合成
<Pd触媒の調製>
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、室温下、サンプル管にトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(Pd
2(dba)
3、73.2mg、80μmol)を秤取り、トルエン(15mL)を加え、30分間撹拌した。同様に、サンプル管にトリス(t−ブチル)ホスフィン(129.6mg、640μmol)を秤取り、トルエン(5mL)を加え、5分間撹拌した。これらの溶液を混合し室温で30分間撹拌し触媒とした。全ての溶媒は30分以上、窒素バブルにより脱気した後に使用した。
<正孔輸送性ポリマーの原料モノマー>
以下に示す正孔輸送性ポリマーの合成に使用した原料モノマーは以下のとおりである。
【化13】
【0114】
(正孔輸送性ポリマー1)
三口丸底フラスコに、モノマーA1(5.0mmol)、モノマーB1(2.0mmol)、モノマーC1(4.0mmol)、メチルトリ−n−オクチルアンモニウムクロリド(Alfa Aesar社「アリコート336」)(0.03g)、水酸化カリウム(1.12g)、純水(5.54mL)、及びトルエン(50mL)を加え、調製したPd触媒トルエン溶液(3.0mL)を加えた。全ての溶媒は30分以上、窒素バブルにより脱気した後に使用した。この混合物を2時間、加熱還流した。ここまでの全ての操作は窒素気流下で行った。
【0115】
反応終了後、有機層を水洗し、有機層をメタノール−水(9:1)に注いだ。生じた沈殿を吸引ろ過により回収し、メタノール−水(9:1)で洗浄した。得られた沈殿をトルエンに溶解し、メタノールから再沈殿した。得られた沈殿を吸引ろ過により回収し、トルエンに溶解し、金属吸着剤(Strem Chemicals社製「Triphenylphosphine, polymer-bound on styrene-divinylbenzene copolymer」、沈殿物100mgに対して200mg)を加えて、80℃で2時間撹拌した。撹拌終了後、金属吸着剤と不溶物をろ過して取り除き、ろ液をメタノールから再沈殿した。
生じた沈殿を吸引ろ過により回収し、メタノールで洗浄した。得られた沈殿を真空乾燥し、正孔注入性化合物1を得た。分子量は、溶離液にTHFを用いたGPC(ポリスチレン換算)により測定した。得られた正孔輸送性ポリマー1の数平均分子量は13,600であり、重量平均分子量は49,200であった。
【0116】
数平均分子量及び重量平均分子量は、溶離液にテトラヒドロフラン(THF)を用いたGPC(ポリスチレン換算)により測定した。測定条件は以下のとおりである。
送液ポンプ :L−6050 (株)日立ハイテクノロジーズ
UV−Vis検出器:L−3000 (株)日立ハイテクノロジーズ
カラム :Gelpack(登録商標) GL−A160S/GL−A150S 日立化成(株)
溶離液 :THF(HPLC用、安定剤を含まない) 和光純薬工業(株)
流速 :1mL/min
カラム温度 :室温
分子量標準物質 :標準ポリスチレン
【0117】
(正孔輸送性ポリマー2)
三口丸底フラスコに、上記モノマーA1(5.0mmol)、上記モノマーB2(2.0mmol)、上記モノマーC1(4.0mmol)、及びトルエン(20mL)を加え、さらに、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、正孔輸送性ポリマー1の合成と同様にして、正孔輸送性ポリマー2の合成を行った。得られた正孔輸送性ポリマー2の数平均分子量は14,700であり、重量平均分子量は50,100であった。
【0118】
(正孔輸送性ポリマー3)
三口丸底フラスコに、上記モノマーA2(5.0mmol)、上記モノマーB1(2.0mmol)、上記モノマーC1(4.0mmol)、及びトルエン(20mL)を加え、さらに、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、正孔輸送性ポリマー1の合成と同様にして、正孔輸送性ポリマー3の合成を行った。得られた正孔輸送性ポリマー3の数平均分子量は15,700であり、重量平均分子量は46,400であった。
【0119】
(正孔輸送性ポリマー4)
三口丸底フラスコに、上記モノマーA2(5.0mmol)、上記モノマーB2(2.0mmol)、上記モノマーC1(4.0mmol)、及びトルエン(20mL)を加え、さらに、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、正孔輸送性ポリマー1の合成と同様にして、正孔輸送性ポリマー4の合成を行った。得られた正孔輸送性ポリマー4の数平均分子量は12,300であり、重量平均分子量は47,000であった。
【0120】
(正孔輸送性ポリマー5)
三口丸底フラスコに、上記モノマーA1(5.0mmol)、上記モノマーB1(2.0mmol)、上記モノマーC2(4.0mmol)、及びトルエン(20mL)を加え、さらに、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、正孔輸送性ポリマー1の合成と同様にして、正孔輸送性ポリマー5の合成を行った。得られた正孔輸送性ポリマー5の数平均分子量は17,300であり、重量平均分子量は69,800であった。
【0121】
(正孔輸送性ポリマー6)
三口丸底フラスコに、上記モノマーA1(5.0mmol)、上記モノマーB1(2.0mmol)、上記モノマーC3(4.0mmol)、及びトルエン(20mL)を加え、さらに、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、正孔輸送性ポリマー1の合成と同様にして、正孔輸送性ポリマー6の合成を行った。得られた正孔輸送性ポリマー6の数平均分子量は15,300であり、重量平均分子量は49,800であった。
【0122】
(正孔輸送性ポリマー7)
三口丸底フラスコに、上記モノマーA1(5.0mmol)、上記モノマーB1(2.0mmol)、上記モノマーC4(4.0mmol)、及びトルエン(20mL)を加え、さらに、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、正孔輸送性ポリマー1の合成と同様にして、正孔輸送性ポリマー7の合成を行った。得られた正孔輸送性ポリマー7の数平均分子量は18,900であり、重量平均分子量は49,100であった。
【0123】
(正孔輸送性ポリマー8)
三口丸底フラスコに、上記モノマーA1(5.0mmol)、上記モノマーB1(2.0mmol)、上記モノマーC5(4.0mmol)、及びトルエン(20mL)を加え、さらに、先に調製したPd触媒溶液(7.5mL)を加えた。以降、正孔輸送性ポリマー1の合成と同様にして、正孔輸送性ポリマー8の合成を行った。得られた正孔輸送性ポリマー8の数平均分子量は17,400であり、重量平均分子量は42,300であった。
【0124】
正孔輸送性ポリマー1〜8の合成に使用したモノマーを以下の表1にまとめる。
【表1】
【0125】
2.正孔輸送性ポリマーの評価
先に合成した正孔輸送性ポリマー1〜8について、以下に示すように各種特性について評価した。
<耐熱性>
大気下、300℃での加熱時の正孔輸送性ポリマー1〜8の熱重量減少を表2に示す。ここで、熱重量減少(質量%)は、熱重量−示査熱(TG−DTA)分析装置(島津製作所株式会社製の「DTG−60/60H」)を用いて、各電荷輸送性ポリマー10mgを、空気中、5℃/分の昇温条件で300℃まで加熱した際に測定した値である。測定値が小さいほど、耐熱性に優れていることを意味する。
(評価基準)
◎:熱重量減少率が3%以下である。
○:熱重量減少率が3%を超え、5%以下である。
△:熱重量減少率が5%を超え6%以下である。
×:熱重量減少率が6%を超える。
【表2】
【0126】
表2に示した結果から、上記式(I)で表される特定の構造部位を有する電荷輸送性ポリマー1〜4及び6〜8は、上記式(I)で表される特定の構造部位を含まない電荷輸送性ポリマー5との対比において、300℃加熱時の熱重量減少率が明らかに少ないことが分かる。以上のことから、上記式(I)で表される特定の構造部位を有する電荷輸送性ポリマーを使用することにより、優れた耐熱性を有する有機エレクトロニクス材料を提供できることが分かる。
【0127】
<溶解性>
以下のようにして、正孔輸送性ポリマーのトルエンに対する溶解性を検討した。
正孔輸送性ポリマー1〜8をそれぞれ10mgサンプル管に秤量し、トルエン1.145mL(比重0.864〜0.868g/mL(20℃))を加えた。次いで、25℃において、上記正孔輸送性ポリマーとトルエンをミックスロータで攪拌(50rpm)しながら、目視によって観察し、上記正孔輸送性ポリマーが溶解し、透明な溶液を形成するまでに要した時間(ポリマーの溶解時間)を測定した。溶解時間の測定結果、及び以下の基準に沿った溶解性の評価結果を表3に示す。
(評価基準)
◎:ポリマーの溶解時間が8分以下である。
○:ポリマーの溶解時間が8分を超え、9分以下である。
△:ポリマーの溶解時間が9分を超え、10分以下である。
×:ポリマーの溶解時間が10分を超える。
【0128】
【表3】
【0129】
表3に示した結果から分かるように、重合性官能基に連結するアルキレン鎖の炭素数が3以上の正孔輸送性ポリマーを使用した場合、優れた溶解性を得ることが容易となることが分かる。また、正孔輸送性ポリマー1〜4の対比から、正孔輸送性ポリマーの主骨格として、トリフェニルアミン構造とカルバゾール構造とを含む実施形態と比較して、トリフェニルアミン構造のみを含む実施形態で、より優れた溶解性が得られる傾向があることが分かる。
【0130】
3.有機エレクトロニクス材料の評価
以下のようにして、先に合成した正孔輸送性ポリマー1〜8を含む有機エレクトロニクス材料(インク組成物)を使用して、有機ホールオンリーデバイス(HOD)を作製し、この素子の導電性を評価した。
<有機HOD1>
(有機HOD1の作製)
大気下で、正孔輸送性ポリマー1(10.0mg)、下記重合開始剤1(0.5mg)、及びトルエン(2.3mL)を混合し、インク組成物を調製した。ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、インク組成物を回転数3,000min
−1でスピンコートした後、ホットプレート上で200℃、30分間加熱して硬化させ、有機層(正孔注入層)(100nm)を形成した。
【0131】
【化14】
【0132】
上記有機層を形成したガラス基板を、真空蒸着機中に移し、上記有機層上に、α−NPD(20nm)、及びAl(100nm)の順に蒸着法で成膜し、封止処理を行って有機HOD1(I)を作製した。
【0133】
上記有機HOD1(I)の作製と同様の手法で、ITOを1.6mm幅にパターニングしたガラス基板上に、インク組成物を回転数3,000min
−1でスピンコートした後、ホットプレート上で200℃、30分間加熱した。さらに、窒素雰囲気下で230℃、30分間にわたって追加加熱して有機層(正孔注入層)を形成したことを除き、以後、有機HOD1(I)と同様にして、有機HOD1(II)を作製した。
【0134】
(有機HOD1の評価)
有機HOD1(I)及び(II)にそれぞれ電圧を印加したところ、いずれも電流が流れることが分かり、有機層は正孔注入性の機能を持つことが確認された。また、有機HOD1(I)及び(II)のそれぞれについて、電流密度300mA/cm時の駆動電圧を測定した。測定結果を表4に示す。
【0135】
<有機HOD2〜8>
有機HOD1における有機層(正孔注入層)の形成工程において、正孔輸送性ポリマー1にかえて、表4に示すように正孔輸送性ポリマー2〜8を使用したことを除き、有機HOD1の作製と同様にして、有機HOD(I)、及び有機HOD(II)をそれぞれ作製した。
得られた有機HOD2〜8の(I)及び(II)について、それぞれ電圧を印加したところ、いずれも電流が流れることが分かり、有機層は正孔注入性の機能を持つことが確認された。また、有機HOD2〜8の(I)及び(II)について、有機HOD1と同様にして駆動電圧を測定し評価した。評価結果を表4に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
駆動電圧1:200℃で30分加熱して得た有機層を有する有機HOD(I)について、電流密度300mA/cm時で測定した電圧(V
1)である。
駆動電圧2:200℃で30分加熱し、さらに230℃で30分加熱して得た有機層を有する有機HOD(II)について、電流密度300mA/cm時で測定した電圧(V
2)である。
駆動電圧の上昇値:駆動電圧2(V
2)−駆動電圧1(V
1)の値である。
評価基準は以下のとおりである。
○:駆動電圧の上昇値が1.0V以下である。
×:駆動電圧の上昇値が1.0Vを超える。
【0138】
以上のように、実験例1〜8において、電荷輸送性ポリマー1〜8を合成し、これらの耐熱性及び溶解性について評価した。また、それぞれ電荷輸送性ポリマー1〜8を含む有機エレクトロニクス材料を用いて構成した有機HODの導電性について評価した。これら各種評価の結果を表5に纏めて示す。
【0139】
【表5】
【0140】
本発明の有機エレクトロニクス材料の一実施形態は、上記式(I)で表される特定の構造部位を有する電荷輸送性化合物を含む。実験例1〜4及び6〜8の正孔輸送性ポリマーは、上記式(I)で表される特定の構造部位を有する電荷輸送性化合物の一例であり、実験例1〜4及び6〜8は本発明の実施形態に相当する実施例である。表5から明らかなように、実験例1〜4及び6〜8の正孔輸送性ポリマーは、いずれも優れた耐熱性を有することが分かる。また、これら優れた耐熱性を有する正孔輸送性ポリマーを用いて有機エレクトロニクス材料を構成した場合、優れた導電性が得られることも分かる。さらに、実験例1〜4、7及び8と、実験例6との対比から、上記式(I)で表される特定の構造部位において、重合性官能基に連結するアルキレン鎖の炭素数を3以上にした場合、インク調製時の溶解性の向上が可能となることが分かる。
【0141】
一方、実験例5は、本発明の有機エレクトロニクス材料の実施形態に対する比較例に相当する。実験例5では、優れた溶解性を得られるが、耐熱性が不充分であり、導電性についても劣る結果となった。
以上のように、正孔注入層の構成材料の観点において、上記式(I)で表される特定の構造単位を有する正孔輸送性ポリマーを含む有機エレクトロニクス材料を構成することによって、上記材料の耐熱性及び上記材料からなる有機層の導電性を向上できることが分かる。さらに、重合性官能基に連結するアルキレン基の炭素数を3以上にすることによって、インク調製時の溶解性を向上できることが分かる。