(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について詳述するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
(樹脂組成物)
本発明の実施の形態に係る樹脂組成物は、(A)アクリルポリマー(以下、「(A)成分」とも称する。)と(B)熱硬化性樹脂(以下、「(B)成分」とも称する。)と(C)フィラー(以下、「(C)成分」とも称する。)を含む樹脂組成物であって、前記(C)フィラーとして、(C−1)カップリング処理を施されたフィラー(以下、「(C−1)成分」とも称する。)及び(C−2)カップリング処理を施されていないフィラー(以下、「(C−2)成分」とも称する。)を含有し、
前記(A)アクリルポリマーを含む第1相と、前記(B)熱硬化性樹脂を含む第2相との相分離構造を形成する、樹脂組成物である。
【0016】
[アクリルポリマー:(A)成分]
(A)成分は、アクリルポリマーであり、通常、(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとする重合体である。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸エチレングリコールメチルエーテル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸アミド、アクリル酸イソデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸N−ビニルピロリドン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸エチレングリコールメチルエーテル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(A)アクリルポリマーは、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を含有するアクリルポリマーであることが好ましい。(A)アクリルポリマーが下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルを用いて得られるアクリルポリマーであると、絶縁信頼性がより向上する。
【化2】
[式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、式(1)のR
2はシクロアルキル基、シクロアルキル置換アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示す。]
【0018】
R
2で示されるシクロアルキル基の炭素数は、5〜13が好ましく、7〜10がより好ましい。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基等が挙げられ、これらの中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基が好ましい。
R
2で示されるシクロアルキル置換アルキル基の炭素数は、6〜13が好ましく、7〜10がより好ましい。シクロアルキル置換アルキル基としては、ノルボルニルメチル基、トリシクロデシルエチル基、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロへキシルエチル基等が挙げられる。
R
2で示されるアリール基の炭素数は、6〜13が好ましく、6〜10がより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ノニルフェニル基等が挙げられる。
R
2で示されるアラルキル基の炭素数は、7〜15が好ましく、7〜11がより好ましい。アラルキル基としては、ベンジル基、4−メチルベンジル基等が挙げられる。
これらの中でも、(A)アクリルポリマーは、R
2がシクロアルキル基であることが好ましく、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、イソボルニル基、及びアダマンチル基からなる群から選ばれる少なくとも1種の基であることがより好ましい。
【0019】
また、(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルも好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、2〜10がさらに好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は置換基を有していてもよい。アルキル基の置換基としては、例えば、脂環式炭化水素基、水酸基、ハロゲン、含酸素炭化水素基、含窒素環状基等が挙げられる。
【0020】
(A)アクリルポリマーは、架橋性官能基を付与したアクリルポリマーであることが好ましい。このような(A)アクリルポリマーは、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと架橋性官能基を有する単量体(以下、「官能基含有単量体」ともいう)との共重合体として得ることができる。
官能基含有単量体としては、例えば、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、ビニル基、グリシジル基、エポキシ基等の架橋性の官能基を有するモノマーが挙げられる。これらの中でも、エポキシ基を有することが好ましく、グリシジル基を有することがより好ましく、(メタ)アクリル酸グリシジルを用いることがさらに好ましい。
【0021】
官能基含有単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシ基を有する単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等のエポキシ基を有する単量体;アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等の水酸基を有する単量体;アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド等のアミノ基を有する単量体;アクリルニトリル等のシアノ基を有する単量体などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、電気絶縁信頼性の観点から、カルボキシ基を有する単量体、エポキシ基を有する単量体、水酸基を有する単量体、アミノ基を有する単量体が好ましく、低吸湿性及び耐熱性の観点から、エポキシ基を有する単量体がより好ましく、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルがさらに好ましい。
また、前記一般式(1)に示されるもの以外の(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸N−ビニルピロリドン、メタクリル酸N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、芳香族ビニル化合物、N−置換マレイミド類等の単量体を(メタ)アクリル酸エステルと共に用いて(A)アクリルポリマーを得ることもできる。
【0022】
(A)アクリルポリマーは、前記一般式(1)のR
2がシクロアルキル基である(メタ)アクリル酸エステル5〜30質量部、官能基含有単量体0.5〜30質量部、及び、これらの成分と共重合可能な単量体であってその構造中にニトリル基を持たないその他の単量体40〜94.5質量部を、総質量部が100質量部となるように含有する単量体混合物を重合してなるアクリルポリマーであることが好ましい。
【0023】
(A)アクリルポリマーがエポキシ基を有する場合、そのエポキシ当量は、2,000〜18,000g/eqが好ましく、2,000〜8,000g/eqがより好ましい。エポキシ当量が2,000g/eq以上であると、硬化物のガラス転移温度の低下が抑えられて基板の耐熱性が十分に保たれ、18,000g/eq以下であると、貯蔵弾性率が大きくなりすぎることなく、基板の寸法安定性が保持される傾向にある。
(A)アクリルポリマーのエポキシ当量は、(メタ)アクリル酸グリシジルとこれと共重合可能な他のモノマーとを共重合する際、共重合比を適宜調整することで調節可能である。
エポキシ基を有する(A)アクリルポリマーの市販品としては、例えば、「HTR−860」(ナガセケムテックス株式会社製、商品名、エポキシ当量2,900g/eq)、「KH−CT−865」(日立化成株式会社製、商品名、エポキシ当量3,300g/eq)が入手可能である。
【0024】
(A)アクリルポリマーは、一般的にはラジカルを発生させるラジカル重合開始剤を用いたラジカル重合により得られる。ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過安息香酸tert−ブチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペルピバレート、過酸化水素/第一鉄塩、過硫酸塩/酸性亜硫酸ナトリウム、クメンヒドロペルオキシド/第一鉄塩、過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリンなどが挙げられる。ラジカル重合開始剤は、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0025】
なお、(A)アクリルポリマーは、室温(25℃)で粉状であっても液状であってもよいが、溶剤への溶解性及び樹脂組成物中における(A)アクリルポリマーの分散性に優れる観点から、液状であることが好ましい。樹脂組成物への(A)アクリルポリマーの分散性を高める観点からは、(A)アクリルポリマーは上述した化合物を溶剤へ分散した状態で用いることが好ましい。
【0026】
(A)アクリルポリマーの重量平均分子量は、100,000〜1,500,000であることが好ましく、伸び率を向上させる観点及び低弾性を向上させる観点から、300,000〜1,500,000であることがより好ましく、300,000〜1,100,000であることがさらに好ましい。(A)アクリルポリマーの重量平均分子量が1,500,000以下であると、溶剤に溶けやすくて扱いやすい傾向となる。また、(A)アクリルポリマーの重量平均分子量が1,500,000以下であると、(B)熱硬化性樹脂を配合したときにドメインの比較的大きな共連続相を有する相分離構造を形成しにくい傾向となり、高い絶縁信頼性、高耐熱性、金属箔との高い密着性を発現しやすくなる傾向となる。(A)アクリルポリマーの重量平均分子量が100,000以上であると、(A)アクリルポリマーと(B)熱硬化性樹脂とが完全に相溶することなく相分離構造が形成され易い傾向にあり、(A)アクリルポリマーの有する低弾性及び柔軟性と、(B)熱硬化性樹脂の有する高い絶縁信頼性、高い耐熱性及び高ガラス転移温度(Tg)とを発現しやすい傾向となる。
(A)アクリルポリマーは、重量平均分子量の異なる2種以上を組み合わせてもよい。
上記の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析によって測定される値であって、標準ポリスチレン換算値のことを意味する。GPC分析は、テトラヒドロフラン(THF)を溶解液として用いて行うことができる。
【0027】
また、(A)アクリルポリマーは、プレッシャークッカーバイアステスト(PCBT)等の絶縁信頼性の加速試験において十分な特性を得るためには、そのアルカリ金属イオン濃度が、質量基準で、500ppm以下であることが好ましく、より好ましくは200ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下である。
【0028】
本発明の樹脂組成物中における(A)アクリルポリマーの含有量は、樹脂組成物の固形分総量100質量部に対して、10〜50質量部が好ましい。(A)アクリルポリマーの含有量が10質量部以上であると、(A)アクリルポリマーの優れた特徴である低弾性及び柔軟性が十分に得られる傾向にあり、また、50質量部以下であると、金属箔との十分な密着強度が得られる。
また、低弾性及び柔軟性の観点からは、(A)アクリルポリマーの含有量は、樹脂組成物の固形分総量100質量部に対して、20〜50質量部がより好ましく、30〜50質量部がさらに好ましい。
また、優れた金属箔との接着強度を得る観点からは、(A)アクリルポリマーの含有量は、樹脂組成物の固形分総量100質量部に対して、10〜40質量部がより好ましく、10〜30質量部がさらに好ましい。
ここで、本発明における「固形分」とは、有機溶剤等の揮発性成分を除いた不揮発分のことであり、樹脂組成物を乾燥させた際に揮発せずに残る成分を示し、室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含む。
【0029】
[熱硬化性樹脂:(B)成分]
本発明において用いられる(B)熱硬化性樹脂としては、(A)アクリルポリマーと組み合わせて硬化したときに相分離構造を形成するものが適宜選択される。
本発明における(B)熱硬化性樹脂は、使用する(A)アクリルポリマーの種類、硬化条件、及び硬化触媒により種々の組み合わせが考えられる。これらの中でも、硬化物の相分離構造の平均ドメインサイズが約1μm〜10μm以下となるような組み合わせを選定することが好ましい。
(B)熱硬化性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂とジアミンとの付加重合物、フェノール樹脂、レゾール樹脂、イソシアネート樹脂、トリアリルイソシアヌレート樹脂、トリアリルシアヌレート樹脂、及びビニル基含有ポリオレフィン化合物等が挙げられる。これらの中でも耐熱性、絶縁性等の性能のバランスを考慮すると、エポキシ樹脂(以下、「(B−1)エポキシ樹脂」ともいう)及びシアネート樹脂が好ましい。
【0030】
<エポキシ樹脂:(B−1)成分>
(B−1)エポキシ樹脂の重量平均分子量は、200〜1,000であることが好ましく、300〜900であることがより好ましい。重量平均分子量が200以上であると、(A)アクリルポリマーと相分離構造を形成する傾向があり、1,000以下であるとドメインの比較的小さな第2相を有する相分離構造を形成しやすい傾向があり、低弾性及び柔軟性を発現しやすい傾向がある。
(B−1)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、相溶性の観点から、150〜500g/eq以下であることが好ましく、150〜450g/eqであることがより好ましく、150〜300g/eqであることがさらに好ましい。(B−1)エポキシ樹脂のエポキシ当量が上記の範囲内にあると、第2相の平均ドメインサイズが大きくなり過ぎない傾向にある。
重量平均分子量が200〜1,000であり、エポキシ当量が150〜500g/molであるエポキシ樹脂の含有量は、(B−1)エポキシ樹脂の総量を100質量部としたとき、60質量部以上であることが好ましく、65質量部であることがより好ましく、70質量部であることがさらに好ましい。
【0031】
(B−1)エポキシ樹脂としては、公知のものを用いることができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。(B−1)エポキシ樹脂としては、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
(B−1)エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂である「N770」(DIC株式会社製、商品名)、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂である「EPICLON 153」(DIC株式会社製、商品名)、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂である「NC−3000H」(日本化薬株式会社製、商品名)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である「エピコート1001」(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名)、リン含有エポキシ樹脂である「ZX−1548」(東都化成株式会社製、商品名)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である「EPICLON N−660」(DIC株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0032】
<(B)熱硬化性樹脂の硬化剤>
本発明の樹脂組成物は、(B)熱硬化性樹脂の硬化剤を含んでもよい。(B)熱硬化性樹脂の硬化剤としては、公知のものを用いることができる。
(B)熱硬化性樹脂として、(B−1)エポキシ樹脂を用いる場合、硬化剤としては、例えば、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂の共重合型樹脂及びノボラック型フェノール樹脂等のフェノール樹脂(以下、「(B−1)フェノール樹脂」とも称する。);ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン等のアミン系硬化剤;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の酸無水物硬化剤;これらの混合物などが挙げられる。これらの硬化剤は、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物では、(B)熱硬化性樹脂として(B−1)エポキシ樹脂を含むと共に、金属箔との密着強度確保の観点から、硬化剤として、(B−2)フェノール樹脂を含むことが好ましい。
(B−2)フェノール樹脂は、外層銅との接着性向上の観点から、アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂が好ましく、低吸水性の観点から、フェノールノボラック等のノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
(B−2)フェノール樹脂の市販品として、例えば、クレゾールノボラック型樹脂である「KA−1165」(DIC株式会社製、商品名)、及びビフェニルノボラック型樹脂である「MEH−7851」(明和化成株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0034】
(B−2)フェノール樹脂の配合割合は、(B−1)エポキシ樹脂との組み合わせに応じて任意の割合で使用することができ、通常、ガラス転移温度が高くなるようにその配合比を決定することができる。例えば、(B−2)フェノール樹脂の含有量は、(B−1)エポキシ樹脂のエポキシ基に対して0.5当量〜1.5当量であることが好ましく、0.6〜1.3当量であることがより好ましく、0.7〜1.2当量であることがさらに好ましい。前記範囲内であると、外層銅との接着性、ガラス転移温度及び絶縁性に優れる傾向にある。
【0035】
本発明の樹脂組成物中における(B)熱硬化性樹脂の含有量は、樹脂組成物の固形分総量100質量部に対して、15〜80質量部が好ましく、30〜75質量部がより好ましく、35〜70質量部がさらに好ましい。(B)熱硬化性樹脂の含有量が15質量部以上であると、(B)熱硬化性樹脂の優れた特徴である高弾性、高強度が十分に得られる傾向にあり、80質量部以下であると、低弾性及び柔軟性に優れる傾向にある。
なお、上記(B)熱硬化性樹脂の含有量には、(B−2)フェノール樹脂等の硬化剤の含有量も含まれる。
また、本発明の樹脂組成物中における、(A)アクリルポリマーと(B)熱硬化性樹脂との質量比((A)アクリルポリマー:(B)熱硬化性樹脂)は、10:90〜90:10が好ましく、20:80〜80:20がより好ましく、30:70〜70:30がさらに好ましく、40:60〜60:40が特に好ましい。質量比((A)アクリルポリマー:(B)熱硬化性樹脂)が前記範囲内であると、(A)アクリルポリマー及び(B)熱硬化性樹脂の双方の特徴を十分に発現される相分離構造が得られる傾向にある。
【0036】
[フィラー:(C)成分]
本発明に用いられる(C)フィラーは、(C−1)カップリング処理を施したフィラーを1種以上、且つ、(C−2)カップリング処理を施していないフィラーを1種以上含むことが好ましい。(C−1)成分と(C−2)成分を用いることで、樹脂組成物内のフィラー分散性をコントロールすることができ、(A)アクリルポリマー及び(B)熱硬化性樹脂の双方の特徴を十分に発現することが可能となる。
前記カップリング処理に用いるカップリング剤としては、シランカップリング剤が好ましく、シランカップリング剤としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、アルケニルシラン系カップリング剤、アルキニルシラン系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
(C−1)成分の平均粒径は、0.1μm〜1.5μmであることが好ましく、0.2μm〜1.2μmであることがより好ましく、0.3μm〜1.0μmであることがさらに好ましい。(C−1)成分の平均粒径が0.1μm以上であるとワニス化した際にフィラー同士が分散しやすくなり凝集が起こりにくい傾向があり、1.5μm以下であるとワニス化の際に(C)フィラーの沈降が起き難い傾向がある。
(C−2)成分の平均粒径は、1.0μm〜3.5μmであることが好ましく、1.2μm〜3.2μmであることがより好ましく、1.4μm〜3.0μmであることがさらに好ましい。(C−2)成分の平均粒径が1.0μm以上であるとフィラー同士が分散しやすくなり凝集が起こりにくい傾向があり、3.5μm以下であるとワニス化の際に(C)フィラーの沈降が起き難い傾向がある。
本発明の樹脂組成物中における、(C−1)成分と(C−2)成分との質量比[(C−1):(C−2)]は、10:90〜90:10が好ましく、20:80〜80:20がより好ましく、30:70〜70:30がさらに好ましい。配合比が上記範囲内であると、(A)アクリルポリマー及び(B)熱硬化性樹脂の双方の特徴を十分に発現される傾向にある。
ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0038】
本発明に用いられる(C)フィラーは、公知のものを使用できる。熱膨張率を下げる目的、難燃性を確保する目的のため無機系フィラーを添加することが好ましい。無機系フィラーとしては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、炭化ケイ素等を挙げることができる。中でも、誘電率が低いこと、線膨張率が低いことからシリカを用いることがより好ましい。
本発明で用いられるシリカとしては、湿式法又は乾式法で合成された各種合成シリカ又は珪石を破砕した破砕シリカ、一度溶融させた溶融シリカ等を用いることができる。
【0039】
なお、(C)フィラーは、分散性を高めて、フィラーの添加効果を均質に発現させる観点から、第1相又は第2相の一方の相に偏在することなく、いずれの相にも存在することが好ましい。本発明の樹脂組成物の組成においては、第1相又は第2相のいずれにも(C)フィラーが存在する相分離構造が得られる。
図7(a)及び(b)に、本発明の樹脂組成物から得られたフィラーを含有する硬化物の断面SEM写真を示す。なお、
図7(b)は、
図7(a)の領域Aを拡大したものである。
図7(a)及び(b)から、海相((A)アクリルポリマー)1中には(C)フィラー3が存在し、島相((B)熱硬化性樹脂)2中には(C)フィラー4が存在しており、第1相又は第2相のいずれにも(C)フィラーが存在する相分離構造が得られることが分かる。
【0040】
本発明において、(C)フィラーの含有量は、樹脂組成物の固形分総量100質量部に対して、5質量部〜40質量部であることが好ましく、10質量部〜35質量部であることがより好ましく、15質量部〜30質量部であることがさらに好ましい。(C)フィラーの配合比が40質量部以下であることで、相分離構造の形成が(C)フィラーによって阻害されず、樹脂組成物が脆くなることがなく、(A)アクリルポリマーの有する低弾性、柔軟性が十分に得られる傾向がある。また、(C)フィラーの配合比が5質量部以上であることで、線膨張率が低くなり十分な耐熱性が得られる傾向がある。
【0041】
本発明には、(D)硬化促進剤(以下、「(D)成分」と称する。)を使用することができる。(D)硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、アミン類及びイミダゾール類が好ましい。アミン類は、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルエタン、グアニル尿素等を例示することができる。イミダゾール類は、2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール化合物を例示することができる。
(D)硬化促進剤の含有量は、例えば、樹脂組成物におけるオキシラン環の総量に応じて決定することができるが、一般的に樹脂組成物の樹脂固形分100質量部中、0.01質量部〜10質量部とすることが好ましく、0.02質量部〜9.0質量部であることがより好ましく、0.03質量部〜8.0質量部であることがさらに好ましい。
【0042】
[その他成分]
本発明に係る樹脂組成物は、必要に応じて、イソシアネート、メラミン等の架橋剤;ゴム系エラストマ;リン系化合物等の難燃剤;導電性粒子、カップリング剤、顔料、レベリング剤、消泡剤、イオントラップ剤などを配合して用いてもよい。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物の成分が有機溶媒に溶解又は分散したさせたワニス状の樹脂組成物(以下、単に「ワニス」ともいう)にしてもよい。
ワニスにする際に用いられる有機溶剤としては、特に制限されるものではないが、ケトン系、芳香族炭化水素系、エステル系、アミド系、アルコール系等が用いられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等が挙げられる。
アミド系溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等が挙げられる。
これらの有機溶剤は1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
[相分離構造]
本発明の樹脂組成物は、(A)アクリルポリマーを含む第1相と、(B)熱硬化性樹脂を含む第2相との相分離構造を形成するものである。
本発明における相分離構造とは、海島構造、連続球状構造、複合分散相構造、共連続相構造である。これらの相分離構造については、例えば、「ポリマーアロイ」第325頁(1993)東京化学同人に、連続球状構造については、例えば、Keizo Yamanaka and Takashi Iniue,POLYMER,Vol.30,pp.662(1989)に詳しく述べられている。
図1〜
図4に、それぞれ連続球状構造、海島構造、複合分散相構造、及び共連続相構造を表すモデル図を示す。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、連続球状構造、海島構造、複合分散相構造又は共連続相構造のいずれの構造も形成し得る。これらの中でも、応力緩和性を高める観点からは、海島構造を形成することが好ましい。本願発明の樹脂組成物から海島構造が形成される場合、(A)アクリルポリマーが海相、(B)熱硬化性樹脂が島相を形成する。
ここで、(A)アクリルポリマーが島相ではなくて海相を形成する理由については、分子量が大きくて絡み合いが多い(A)アクリルポリマー中でエポキシ樹脂の相分離が起こる際、(A)アクリルポリマーが島相となるためにはその絡み合い及び架橋網目を切断しなくてはならず、島相になりにくいためと考えられる。
なお、前記第1相は、(A)アクリルポリマーを樹脂成分の主成分として含む相であり、前記第2相は、(B)熱硬化性樹脂を樹脂成分の主成分として含む相である。ここで、樹脂成分の主成分とは、樹脂成分のうち、最も高い含有量を有する樹脂を意味し、樹脂組成物の全量に対する含有量に基づき推定される。
【0046】
さらに、本願発明の樹脂組成物は、前記相分離構造において、(B)熱硬化性樹脂を含む第2相の平均ドメインサイズが好ましくは1μm〜10μmであり、より好ましくは1.5μm〜9μmであり、さらに好ましくは2μm〜8μmの微細構造を示す。
第2相の平均ドメインサイズが上記範囲であることで、(A)アクリルポリマーを含む海相の網目に(B)熱硬化性樹脂が適度に分散するようになるため、(A)アクリルポリマー及び(B)熱硬化性樹脂の持つ特性に偏らなくなる。具体的には、(A)アクリルポリマーの保つ特性であるタック性、低弾性及び柔軟性が十分に発現し、(B)熱硬化性樹脂の持つ特性である高耐熱性、金属箔との密着性及び絶縁信頼性も十分に発現するようになる。
ここで、第2相の平均ドメインサイズとは、例えば、相分離構造が、連続球状構造、海島構造又は複合分散相構造である場合、本発明の樹脂組成物から得られた硬化物の断面をミクロトームにて平滑化した後、電子顕微鏡により得られた断面構造から、70個以上の島相について、最大幅と最小幅をそれぞれ測定し、その平均値を算出した値をいう。また、相分離構造が共連続構造の場合は、第2相のドメインにおいて任意の70点を特定し、各点において、SEM写真上の垂直方向のドメインサイズと、水平方向のドメインサイズを測定し、小さい方のドメインサイズの平均値を算出した値を平均ドメインサイズとする。第2相の平均ドメインサイズは、より具体的には、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0047】
また、本発明の樹脂組成物が相分離構造を形成するかどうかは、本発明の樹脂組成物から得られた硬化物について、損失係数tanδを測定する方法が挙げられる。具体的には、本発明の樹脂組成物から得られた硬化物について動的粘弾性測定を行い、得られた損失係数tanδ曲線において、低温側に表れる(A)アクリルポリマーに由来するピークと、高温側に表れる(B)熱硬化性樹脂に由来するピークの2つのピークが表れるとき、相分離構造が形成されていると判断することができる。
平均ドメインサイズが1μm以上のドメインはSEM観察で確認できることから、前記SEM観察で相分離構造が確認されず、かつ損失係数tanδ曲線で上記のように2つのピークが確認される場合は、平均ドメインサイズが1μm未満の第2相が形成されていると判断することができる。
【0048】
このような微細な相分離構造は、樹脂組成物の触媒種及び反応温度等の硬化条件、あるいは樹脂組成物の各成分間の相溶性を制御することにより得られる。
一般に樹脂硬化物の相構造は相分離速度と架橋反応速度の競争反応で決定される。エポキシ樹脂を例として挙げれば、触媒種及び骨格構造等をコントロールして、特性のそれぞれ異なるエポキシ樹脂を混合し、同時に硬化させることで、平均ドメインサイズが約1〜10μm以下という相分離構造である海島構造を形成することが可能となる。
また、相分離を発生しやすくするためには、例えば、アルキル基置換のエポキシ樹脂を用いてアクリルポリマーとの相溶性を低下させたり、同一の組成系の場合には、硬化温度を高くしたり、触媒種の選択によって硬化速度を遅くすることによって達成できる。
【0049】
図5に、このようにして得られた海島構造を有する樹脂組成物の一例の断面構造を表す電子顕微鏡写真を示す。図示するように、樹脂組成物は、アクリルポリマー相とエポキシ樹脂リッチ相とからなる海島構造を有している。また、エポキシ樹脂からなる島相の平均ドメインサイズは、1μm〜10μmである。このような相分離構造を有することにより、アクリルポリマーの有する低弾性、柔軟性と、熱硬化性樹脂の有する高い絶縁信頼性、高耐熱性、金属箔との高い密着性の双方の優れた特長を兼ね備えることができる。
【0050】
上述のように、本発明に用いられる樹脂組成物は、これに(C)フィラーを添加しない場合は、海島構造又は連続球状構造を形成するが、(C)フィラーを添加することにより、海島構造又は連続球状構造に加えて、微細な共連続相構造又は複合分散相構造の樹脂絶縁層も形成され得る。
図6に、複合分散相構造を有する樹脂組成物の一例の断面構造を表す電子顕微鏡写真を示す。
【0051】
(貯蔵弾性率)
本発明の樹脂組成物から得られる硬化物の貯蔵弾性率は、応力緩和効果を発現させる観点から、2.0×10
9Pa以下が好ましく、1.9×10
9Pa以下がより好ましく、1.8×10
9Pa以下がさらに好ましい。貯蔵弾性率は、例えば、(C)フィラーの含有量を調整することにより上記範囲内とすることができ、このような観点からも、(C)フィラーの含有量は、前記範囲内であることが好ましい。また、硬化物の貯蔵弾性率は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0052】
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物を基材に含浸及び乾燥してなる、プリプレグである。
本発明のプリプレグは、例えば、本発明の樹脂組成物のワニスを基材に含浸させ、例えば、80℃〜180℃の範囲で乾燥させて製造することができる。
基材は、金属張積層板、プリント配線板等を製造する際に用いられるものであれば特に制限されないが、通常、織布、不織布等の繊維基材が用いられる。繊維基材の材質は、ガラス、アルミナ、アスベスト、ボロン、シリカアルミナガラス、シリカガラス、チラノ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア等の無機繊維;アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルフォン、カーボン、セルロース等の有機繊維;これら混抄系などが挙げられる。これらの中でも、ガラスクロスが好ましく、厚みが100μm以下のガラスクロスがより好ましく、厚みが50μm以下のガラスクロスが特に好ましい。ガラスクロスの厚みが50μm以下であると、任意に折り曲げ可能なプリント配線板を得ることができ、製造プロセス上での温度、吸湿等に伴う寸法変化が小さいため好ましい。
【0053】
得られるプリプレグのワニスに使用した溶剤が80質量%以上揮発していることが好ましい。このため、製造方法、乾燥条件等も制限はなく、乾燥時の温度は、例えば、80℃〜180℃、時間はワニスのゲル化時間との兼ね合いで特に制限はない。また、ワニスの含浸量は、ワニス固形分と基材の総量に対して、ワニス固形分が30質量%〜80質量%になるようにされることが好ましい。
【0054】
(樹脂付き金属箔、積層板、金属張積層板及びプリント回路板)
本発明の樹脂組成物は、樹脂付き金属箔、積層板、金属張積層板及びプリント回路板として用いることができる。
本発明の樹脂付き金属箔は、本発明の樹脂組成物と金属箔とを積層してなるものである。 樹脂付き金属箔の製造方法は、上述のプリプレグ又はそれを複数枚、積層し必要に応じてその片面又は両面に金属箔を重ね、通常130℃〜250℃、好ましくは150℃〜230℃の範囲の温度で、通常0.5MPa〜10MPa、好ましくは1〜5MPaの範囲の圧力で加熱加圧成形する。そして、ワニスを金属箔に塗工機により塗工成型し、熱風乾燥させることで樹脂付き金属箔を製造することができる。
【0055】
本発明の積層板は、本発明のプリプレグ又は本発明の樹脂付き金属箔を積層し加熱加圧してなるものである。
本発明の積層板の製造方法は、複数枚のプリプレグを積層し、加熱加圧することで製造する。金属張積層板の製造方法は、複数枚積層したプリプレグの両側の接着面と金属箔とを合わせるように重ね、真空プレス条件にてプレスすることによって製造する。他の金属張積層板の製造方法としては、樹脂付き金属箔の樹脂面が向き合うように重ね、真空プレス条件にてプレスすることによって製造する。
【0056】
本発明のプリント配線板は、本発明の積層板を回路加工してなるものである。
本発明のプリント回路板の製造方法は、金属箔を使用して金属張積層板とし、その金属箔に回路(配線)加工を施すことによって製造する。
【0057】
金属箔は、銅箔及びアルミニウム箔が一般的に用いられるが、通常積層板に用いられている1μm〜200μmのものを使用できる。また、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に0.5μm〜15μmの銅層と10μm〜300μmの銅層を設けた3層構造の複合箔あるいはアルミニウムと銅箔を複合した2層構造複合箔を用いることができる。
【0058】
さらに、本発明のプリント配線板に半導体を搭載することにより半導体パッケージを製造することもできる。半導体パッケージは、本発明のプリント配線板の所定の位置に、半導体チップ、メモリ等を搭載して製造することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を示し、本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
[実施例1〜実施例9]
(A)成分、(B−1)成分、(B−2)成分、(C−1)成分、(C−2)成分を表1に示す配合量で配合し、メチルエチルケトンに溶解後、(D)成分、カップリング剤を表1に従って配合し、不揮発分40質量%の樹脂組成物ワニスを得た。
【0061】
[比較例1〜比較例9]
(A)成分、(B−1)成分、(B−2)成分、(C−1)成分、(C−2)成分を表2に示す配合量で配合し、メチルエチルケトンに溶解後、成分(D)を表2に従って配合し、不揮発分40質量%の樹脂組成物ワニスを得た。
【0062】
[プリプレグ、樹脂付き銅箔、銅張積層板の作製]
(1)プリプレグの作製
実施例1〜9、比較例1〜9で作製したワニスを厚さ0.028mmのガラス布「1037」(旭シュエーベル株式会社製、商品名)に含浸後、140℃にて10分間加熱して、乾燥しプリプレグを得た。
(2)樹脂付き銅箔の作製
実施例1〜9、比較例1〜9で作製したワニスを厚さ18μmの電解銅箔「YGP−18」(日本電解株式会社製、商品名)に塗工機により塗工成型し、140℃にて約6分熱風乾燥させ、樹脂組成物層の厚さが50μmの樹脂付き銅箔を作製した。
(3)銅張積層板の作製
4枚重ねた(1)で作製したプリプレグの両側に厚さ18μmの電解銅箔「YGP−18」(日本電解株式会社製、商品名)を接着面がプリプレグと合わさるように重ね、200℃にて60分間、4MPaの真空プレス条件で両面銅張積層板を作製した。また、樹脂付き銅箔は樹脂面同士が向き合うように2枚重ね、200℃にて60分間、4MPaの真空プレス条件で両面銅張積層板を作製した。
【0063】
[ワニス、プリプレグ及び銅張り積層板の評価方法]
(1)ワニス性
ワニス性の評価は、作製したワニスを透明な容器に受け、24時間後の外観を目視により観察し、ワニス成分の分離、及び、沈降物について観察した。ワニス色相が均一であれば分離していないと判断した。また、容器の底に沈降物の堆積が目視で確認できない場合は沈降物なしと判断した。結果を表1、2に示す。
(2)プリプレグのタック性
プリプレグのタック性の評価は、作製したプリプレグを250mm×250mmサイズに加工し100枚重ね、密閉封入可能な袋に入れたものを、温度25℃、湿度70%の恒温恒湿環境に投入し、プリプレグ同士の密着発生有無を観察した。48時間経過後に、1番下に配置したプリプレグとそれと接するプリプレグが剥がれ、各々が投入前の表面を維持している場合は、密着発生なしとし、タック性が問題ないと判断した。結果を表1、2に示す。
(3)プリプレグの外観(凝集物の有無)
プリプレグの外観の評価は、20倍の拡大鏡を用いて凝集物の発生について観察した。凝集物が観察されなかったものは「なし」と評価した。結果を表1、2に示す。
(4)貯蔵弾性率
貯蔵弾性率の評価は、樹脂付き銅箔を樹脂面が向き合うように重ね作製した銅張積層板を全面エッチングした積層板を、幅5mm×長さ30mmに切断し、動的粘弾性測定装置(UBM社製)を用いて貯蔵弾性率を算出した。25℃の貯蔵弾性率が2.0×10
9Pa以下であれば応力緩和効果を発現可能と判断した。結果を表1、2に示す。
(5)引張り伸び率
引張り伸び率の評価は、樹脂付き銅箔を樹脂面が向き合うように重ね作製した銅張積層板を全面エッチングした積層板を、幅10mm×長さ100mmに切断し、オートグラフ(島津製作所製)を用いて引張り伸び率を算出した。25℃の引張り伸び率が3%以上であれば応力緩和効果を発現可能と判断した。結果を表1、2に示す。
(6)耐熱性
4枚重ねたプリプレグから作製した両面銅張積層板を50mm四方の正方形に切り出して試験片を得た。その試験片を260℃のはんだ浴中に浸漬して、その時点から試験片の膨れが目視で認められる時点までに経過した時間を測定した。経過時間の測定は300秒までとし、300秒以上は耐熱性が十分であると判断した。結果を表1、2に示す。
(7)基板に対する金属箔接着性の評価
4枚重ねたプリプレグから作製した両面銅張積層板の銅箔を部分的にエッチングして、3mm幅の銅箔ラインを形成した。次に、銅箔ラインを、接着面に対して90°方向に50mm/分の速度で引き剥がした際の荷重を測定し、銅箔引き剥がし強さとした。銅箔引き剥がし強さが0.5kN/m以上であれば金属箔との接着性は十分であると判断した。結果を表1、2に示す。
(8)相構造観察試験
樹脂付き銅箔を樹脂面が向き合うように重ね作製した銅張積層板の樹脂絶縁層の断面をミクロトームにて平滑化した後、過硫酸塩溶液でエッチングし、SEM観察を行った。SEM観察により得られた断面構造から、70個以上の島相について、最大幅と最小幅をそれぞれ測定し、その平均値を算出した値をドメイン径とした。結果を表1、2に示す。
(9)電気絶縁信頼性
電気絶縁信頼性は、4枚重ねたプリプレグから作製した両面銅張積層板をスルーホール穴壁間隔が350μmとなるよう加工したテストパターンを用いて、各試料について400穴の絶縁抵抗を経時的に測定した。測定条件は、85℃/85%RH雰囲気中100V印加して行い、導通破壊が発生するまでの時間を測定した。測定時間は2000時間までとし、2000時間以上は電気絶縁信頼性が十分であると判断した。結果を表1、2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
※1:商品名「KH−CT−865」、日立化成株式会社製、(重量平均分子量:Mw=45×10
4〜65×10
4、前記一般式(1)で表される化合物として、エステル部分に炭素数5〜10のシクロアルキル基を有するメタクリル酸エステルを含有、且つ、構造中にニトリル基を含まないアクリルポリマー、エポキシ当量3,300g/eq)
※2:商品名「HTR−860P−3」、ナガセケムテックス株式会社製、(重量平均分子量:Mw=80×10
4、構造中にニトリル基を含まないアクリルポリマー、エポキシ当量2,900g/eq)
※3:商品名「HAN5−M90S」、根上工業株式会社製、(重量平均分子量:Mw=90×10
4、構造中にニトリル基を含むアクリルポリマー)
※4:商品名「N770」、DIC株式会社製、(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)
※5:商品名「EPICLON 153」、DIC株式会社製、(テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂)
※6:商品名「NC−3000H」、日本化薬株式会社製、(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)
※7:商品名「4005P」、三菱化学株式会社製、(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)
※8:商品名「KA−1165」、DIC株式会社製、(クレゾールノボラック型樹脂)
※9:商品名「LA−7054」、DIC株式会社製、(アミノトリアジンノボラック型フェノール樹脂)
※10:商品名「SC−2050KC」、株式会社アドマテック製、(溶融球状シリカ、シランカップリング処理、平均粒子径0.5μm)
※11:商品名「HK−001」、河合石灰株式会社製、(水酸化アルミニウム、平均粒子径4.0μm)
※12:商品名「F05−12」、福島窯業株式会社製、(破砕シリカ、平均粒子径2.5μm)
※13:商品名「F05−30」、福島窯業株式会社製、(破砕シリカ、平均粒子径4.2μm)
※14:商品名「2PZ」、四国化成工業株式会社製、(2−フェニルイミダゾール)
※15:商品名「A−187」、東レ・ダウコーニング株式会社製、(シランカップリング剤)
【0067】
表1から明らかなように、本発明の実施例は弾性率、柔軟性、耐熱性、金属箔との密着性、絶縁信頼性の全てに優れている。一方、比較例は弾性率、柔軟性、耐熱性、金属箔との密着性、絶縁信頼性の全てに優れるものはない。
【0068】
本発明の樹脂組成物により作製されたプリプレグ、樹脂付きフィルム、樹脂付き金属箔及び金属箔張積層板によれば、架橋性官能基を共重合したアクリルポリマーの有する低弾性、柔軟性と熱硬化性樹脂の有する高い絶縁信頼性、高耐熱性、金属箔との高い密着性、等の双方の優れた特長を兼ね備える。