(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸受に軸支された回転軸が、その軸外周から外径方向に、少なくとも軸スリーブ、シール、エキスペラリング、及びフレームプレートの順に遊嵌又は密嵌されると共に、前記回転軸と軸結合されたエキスペラによる遠心軸封部を備えた二重ケーシング構造の遠心ポンプに適用可能なメンテナンス補助用の芯出し治具であって、
外径が前記エキスペラリングの内径と一致すると共に内径が前記軸スリーブの外径と一致し、
前記シールと置換可能な形状であり、中心に前記軸スリーブを被覆した前記回転軸を貫通して密嵌可能な軸孔を有する環状をなし、
前記軸孔は、一方の開口が軸嵌着口として漏斗型に拡径された芯出し治具。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような
二重ケーシング構造の遠心ポンプを定期的に分解修繕するためには熟練技能者が不可欠で、遠心軸封部を主とするメンテナンス方法、特にフレームプレートの交換作業に伴う芯出しに相当の熟練技能を必要とするという問題がある。その熟練技能者を養成し、確保することが昨今の社会環境では困難になりつつあるので、その対策も必要である。特に、
二重ケーシング構造の遠心ポンプにおけるフレームプレートの交換作業を補助し、非熟練者でも芯出しを確実容易にする芯出し治具、及びそれを用いた
二重ケーシング構造の遠心ポンプのメンテナンス方法を実現することが課題である。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、
二重ケーシング構造の遠心ポンプにおけるフレームプレートの交換作業を補助し、非熟練者でも芯出しを確実容易にする芯出し治具、及びそれを用いた
二重ケーシング構造の遠心ポンプのメンテナンス方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するためになされたものである。本発明の一態様は、軸受(92)に軸支された回転軸(60)が、その軸外周(61)から外径(R)方向に、少なくとも軸スリーブ(70)、シール(80)、エキスペラリング(40)、及びフレームプレート(20)の順に遊嵌又は密嵌されると共に、前記回転軸(60)と軸結合されたエキスペラ(30)による遠心軸封部(90)を備えた
二重ケーシング構造の遠心ポンプ(100)に適用可能なメンテナンス補助用の芯出し治具(1)であって、
外径(D1)が前記エキスペラリング(40)の内径(E)と一致すると共に内径(D2)が前記軸スリーブ(70)の外径(F)と一致し、
前記シール(80)と置換可能な形状であり、中心に前記軸スリーブ(70)を被覆した前記回転軸(60)を貫通して密嵌可能な軸孔(2)を有する環状をなし、
前記軸孔(2)は、一方の開口が軸嵌着口(3)として漏斗型に拡径されたものである。
【0009】
また、本発明の他の態様は、前記芯出し治具(1)を用いる
二重ケーシング構造の遠心ポンプ(100)のメンテナンス方法であって、
前記二重ケーシング構造の遠心ポンプ(100)は、軸受(92)に軸支された回転軸(60)が、その軸外周(61)から外径(R)方向に、少なくとも軸スリーブ(70)、シール(80)、エキスペラリング(40)、及びフレームプレート(20)の順番に遊嵌又は密嵌されると共に、前記回転軸(60)と軸結合されたエキスペラ(30)による遠心軸封部(90)を備え、
少なくとも、インペラ(10)、
前記フレームプレート(20)、
前記エキスペラ(30)、及び
前記エキスペラリング(40)を、それぞれ取外す工程(S40,S90,S100)を有し、
前記フレームプレート(20)及び前記エキスペラリング(40)を
前記順番となるように取付ける工程(S220)では、
予め前記エキスペラリング(40)に芯出し治具(1)を装着する工程(S221)と、
新たに取付ける更新フレームプレート(20N)に芯出し治具付きのエキスペラリング(41)を装着する工程(S222)と、
芯出し治具付き更新フレームプレート(21N)を取付ける工程(S223)と、
芯出し治具付きのエキスペラリング(41)を取外す工程(S224)と、
新たに取付ける更新エキスペラリング(40N)にシール(80)を取付ける工程(S225)と、
シール付き更新エキスペラリング(42N)を取付ける工程(S226)と、
を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、
二重ケーシング構造の遠心ポンプにおけるフレームプレートの交換作業を補助し、非熟練者でも芯出しを確実容易にする芯出し治具、及びそれを用いた
二重ケーシング構造の遠心ポンプのメンテナンス方法を提供できる。よって、その工業的価値は極めて大きい。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を用いて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、
二重ケーシング構造の遠心ポンプの概要を示すため軸中心線に沿った縦断面図である。
図2は、
図1に示した
二重ケーシング構造の遠心ポンプの遠心軸封部を拡大した要部拡大断面図である。
図1及び
図2に示す
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100は、ケーシング内で回転するインペラ10により、中心部の吸入口96で被送流体を吸入し、外周部の吐出口97から吐出するように液送力を発生させる遠心ポンプである点で、その基本的構造について、他の一般的なポンプと大差なく、揚程も5〜60mと幅広く、多くのプラントで採用されている。
【0013】
また、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100の特徴は、普通のポンプと違って高粘度の流体専用に使用できる点であり、耐腐食性や強度を高めるため、遠心羽根のブレードを始めシール材やケーシングに、堅牢かつ耐腐食性の材質を用いて構成され、特にインペラ10のブレード、及び軸封部90については、それらの強度、耐腐食性、耐摩耗性、に加えてメンテナンス性を、被送流体の物性や運転条件に適応させている。
【0014】
図1及び
図2に示すように、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100は、ポンプ台91に固定されたポンプ部95及び駆動部99により主要構成され、これらは、外部動力により回転駆動される回転軸60により同軸結合されている。ポンプ部95は、フレームプレート20を始めとするケーシングに包まれた遠心羽根を備えて構成されている。駆動部99は、ポンプ台91に固定された軸受箱(以下、単に「軸受」ともいう)92と、その軸受92に軸支された回転軸60と、を備えている。
【0015】
その回転軸60の一端に配設されて従動するVプーリ94は、不図示の電動機よりVベルトを介して駆動力を得る。この駆動力は、回転軸60に同軸結合され、異なる機能を有する2枚の遠心羽根に回転力を付与する。2枚の遠心羽根は、回転軸60により同軸結合されたインペラ10及びエキスペラ30であり、それらがフレームプレート20及びフレームプレートライナ24により隔てられ、エキスペラシールを構成している。
【0016】
エキスペラシールとは、二重軸封装置、(以下、「遠心式軸封装置」、「遠心軸封部」又は「軸封部」ともいう)90であり、遠心ポンプで揚力を発生するインペラ10の裏側に配設され、インペラ10と同軸回転するエキスペラ30の遠心力によってスラリー揚液をケーシング内に押し戻す力が働き、ポンプ運転中にスラリー揚液が軸封部90に浸入することを抑制するシール機構をいう。なお、ポンプ停止中は、エキスペラシールの機能も停止するため、それを補完可能に配設されたグランドパッキンやリップシール(以下、単に「シール80」ともいう)などでスラリー揚液をシールする。
【0017】
ポンプ部95側の軸封部90は、駆動部99側の軸受92に軸支された回転軸60が、その軸外周61から外径R方向に、少なくとも軸スリーブ70、シール80、エキスペラリング40、及びフレームプレート20の順に、遊嵌又は密嵌されて構成されている。なお、「遊嵌」とは、嵌めたものと嵌められたものとが互いに動けるように嵌めることをいう。さらに、ここでいう「遊嵌」された状態では、ガタツキや液漏れは無いものとする。すなわち、回転軸60、軸スリーブ70、及びシール80は、相互に回転自在かつ液密に支承され、軸封(シール)機能を維持している。
【0018】
一方、シール80、エキスペラリング40、及びフレームプレート20は、相互に密嵌状態で固定されている。このような構成の
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100は、回転軸60と軸結合されたエキスペラ30による遠心軸封部90を備えて、運転中に軸封部90からの漏洩を抑止できるように構成されている。なお、
図3に示すように、フレームプレート20の内径Gと、そこに受容して密嵌されるエキスペラリング40の外径Gと、は同一寸法(同一符号)である。また、エキスペラリング40の内径Eと、そこに受容して密嵌される本治具1の外径D1と、は同一寸法である。また、本治具1の内径D2と、そこに受容して遊嵌される軸スリーブ70の外径Fと、も同一寸法である。
【0019】
また、
図1に示すように、駆動部99の軸受92は、所定間隔をおいて配設された2組のテーパコロ軸受93を備え、これらにより相当の強度で回転軸60を軸支している。したがって、回転軸60は、外径R方向及びスラスト方向Xの何れにも基本的にガタツキや振動はなく、一般的な回転機器の軸受で生じる摩耗等に対応する程度のメンテナンスで足りる。これに対し、スラリー揚液をシールするポンプ95側の軸封部90は、ポンプの液接部の損耗程ではないが、ポンプの運転に応じたある程度の損耗が不可避なので、適切なメンテナンスを要する。
【0020】
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100のメンテナンス方法については後述するが、メンテナンスの際、分解して点検、清掃又は更新する箇所を規定されていることが多く、これに関係する箇所を主に説明する。
図1に示すように、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100は、回転軸60の軸端62の方(
図1及び
図2の右側)から順に、カバープレート11、カバープレートライナ12、インペラ10、フレームプレートライナ24、フレームプレート20、エキスペラ30、エキスペラリング40、シール80、及び軸スリーブ70が、回転軸60に対して同軸上に配設されている。これらは、順番に取外して分解することが可能である。また、概ね逆の順番に組み立てることが可能である。
【0021】
なお、組み立て手順を説明する便宜上、新たに取付ける更新フレームプレート20N、芯出し治具付き更新フレームプレート21N、更新エキスペラリング40N、芯出し治具付きのエキスペラリング41、シール付き更新エキスペラリング42N、といった呼び方により、取外して処分される古い部材と区別する。なお、符号21N,40N,41,42Nは図に記載されていない。
【0022】
図3は、
図1に類似する
二重ケーシング構造の遠心ポンプのフレームプレート交換を説明するために簡略化した斜視図である。なお、
図3に示す
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100と、
図1及び
図2に示す
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100とは、主に駆動部99の形状が異なるものの、本発明の説明に不都合はないので、同一符号を付して説明する。
【0023】
図3に示すように、
図1に類似する
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100において、フレームプレート20は、駆動部99の前方に固定されるように構成されている。駆動部99の概ね中心から水平かつ前方へ回転軸60が突出している。また、この回転軸60と平行かつ前方に、駆動部99から突出するように3本の支持軸98が植設されている。これらに対応するように、フレームプレート20に穿設された軸孔22に回転軸60を挿入すると共に、取付け孔23に支持軸98をそれぞれ挿入し、芯出しした後に位置決め(以下、単に「芯出し」ともいう)してから、フレームプレート20は駆動部99の前方(
図1ではポンプ台91)に固定される。
【0024】
芯出しされたフレームプレート20は、支持軸98の先端近傍に螺設された雄ネジと螺合する不図示のナット等により締結されて固定される。また、上述のように締結されたナット等を緩めれば、フレームプレート20を駆動部99(
図1ではポンプ台91)から取り外して分解することができる。つまり、フレームプレート20は、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100本来の機能を果たした結果による損耗の程度に応じて、適宜に分解清掃又は新品交換することが可能である。なお、フレームプレート20の損耗程度は、目視により確認される。
【0025】
また、フレームプレート20の軸孔22及び取付け孔23の内径寸法は、これらに対応する回転軸60及び支持軸98の外径寸法に対し、所定の余裕を設けてある。一般的な機械装置は、精密に寸法設計されていても、材料、組み立て加工品質、自己重量、運搬、衝撃、環境変化、据え付け、その他諸般の原因によって変形や誤差が生じる。その誤差吸収に加えて、軸封のために比較的柔軟性の有る材料によって形成された軸スリーブ70やシール80の介在まで見込まれて所定の余裕を設けてある。また、分解清掃又は新品交換する際の作業性も考慮して、所定の余裕を設けてある。
【0026】
このため、フレームプレート20を駆動部99に取り付ける際、芯出しの配慮がなければ、上述した余裕の範囲内で当然に軸心がずれて不具合を生じる。つまり、芯出しに配慮を要する理由は、第1に
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100の運転中に軸封部90からの漏洩を抑止する機能、すなわち軸封(シール)機能を維持するためであり、第2に軸封部90の芯出し不備による振動や偏摩耗を抑制して構成部材の長寿命化を図るためである。
【0027】
したがって、取付け部分に設けられた所定の余裕の範囲内で、芯出ししてからボルト締めするような配慮を要する。本発明の目的は、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100におけるフレームプレート20の交換作業を補助し、非熟練者でも芯出しを確実容易にする芯出し治具1(
図3及び
図4)、及びそれを用いた
二重ケーシング構造の遠心ポンプのメンテナンス方法を提供することにある。
【0028】
図4は、本治具を説明するための図であり、
図4(A)は軸嵌着口を斜め前方(
図3の後方)から視認した斜視図、
図4(B)は軸中心線に沿った縦断面図、をそれぞれ示している。
図3及び
図4に示す本治具1は、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100におけるメンテナンスを補助するために用いられるものである。
【0029】
本治具1は、シール80と置換可能な形状の環状をなし、その環状の中心に軸孔2を有する。この軸孔2は、一方の開口が軸嵌着口3を形成し漏斗型に拡径されている。したがって、本治具1の軸孔2に回転軸60の軸端62を嵌挿させる際、円滑に滑り込ませられる。
【0030】
また、本治具1は、外径D1がエキスペラリング40の内径Eに一致すると共に、内径D2が軸スリーブ70の外径Fと一致している。この軸孔2は、回転軸60の外径より軸スリーブ70の厚さ分だけ大きく穿設されている。したがって、本治具1の軸孔2は、軸スリーブ70を被覆した回転軸60を貫通してガタツキ無く遊嵌することが可能である。
【0031】
ここで、エキスペラリング40の内径Eとは、最も縮径された箇所の内径をいう。つまり、
図1及び
図2に示すように、シール80はエキスペラリング40の内周面の凹部に嵌着される構成であるため、その凹部の近傍で凹部よりも軸中心線Xに近い内周面が内径E、すなわち最も縮径された箇所である。
【0032】
このような、エキスペラリング40の内周面の形状に対し、本治具1は、軸中心線Xに沿った前後方向から嵌脱するにあたって、シール80と置換可能な形状であるため、形状だけについては、シール80と置き換え可能である。ただし、本治具1とシール80とは、全く異なる目的及び機能に適合する材質でそれぞれが形成されているため、柔軟性のシール80に代えて硬質性の本治具1を嵌着した状態で
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100を稼働できるものではない。
【0033】
本治具1の使用方法は、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100のメンテナンス方法における各工程の説明の中で詳細に後述するが、以下に簡略な説明をする。
図3を用いて説明したように、本治具1は、その外径D1がエキスペラリング40の内径Eに略一致しているので、新品のエキスペラリング40Nに密嵌できる。この新品のエキスペラリング40Nは、新品のフレームプレート20Nの軸孔22に密嵌できる。
【0034】
このため、新品のフレームプレート20Nの軸孔22に、新品のエキスペラリング40Nが密嵌(
図3矢印J)され、さらにその内径側に本治具1が密嵌(
図3矢印K)された状態、すなわち三つの部材が同心円状に嵌着されて一体化した状態となる。これを説明の便宜上、「芯出し用フレームプレート20N」と呼ぶことにする。この芯出し用フレームプレート20Nを駆動部99に嵌着する(
図3矢印H)作業は容易かつ円滑であり、しかも芯出しまでできる。このことを以下に説明する。
【0035】
上述のように、本治具1は、シール80と置換可能な形状の環状をなし、その中心に軸孔2を有する。この軸孔2は、一方の開口が軸嵌着口3を形成し漏斗型に拡径されている。したがって、本治具1の軸孔2に回転軸60の軸端62を挿入する際、円滑に滑り込ませられる。また、本治具1の軸孔2は、回転軸60の外径より軸スリーブ70の厚さ分だけ大きく穿設されている。したがって、本治具1の軸孔2は、軸スリーブ70を被覆した回転軸60を貫通して液密に遊嵌可能である。このとき、概ね0.1mmレベルの精度で適切に芯出しされた位置決めがなされる。
【0036】
このようにして芯出しされた芯出し用フレームプレート20Nを、駆動部99(
図1ではポンプ台91)にボルト締めする。それから、芯出し用フレームプレート20Nに付随するエキスペラリング40Nから本治具1を外す。本治具1の外されたエキスペラリング40Nには、その代わりに置換可能な形状のシール80を嵌入する。
【0037】
このようにして、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100のメンテナンス作業における組み立作業が、特別な熟練技能を要せずに進められる。つまり、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100のメンテナンス作業において、本治具1を用いれば、一連の作業に高度な熟練作業は含まれない。その結果、本治具1は、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100におけるフレームプレート20の交換作業を、非熟練者でも芯出しまで確実容易にできる。
【0038】
<本方法の概要>
図5及び
図6は、
図4の本治具を用いる本方法の概要を示すフローチャートであり、
図5は本方法における前半の分解補修段階であり、
図6は本方法における後半の組み立段階、をそれぞれ示している。
図5に示すように、本方法は、その前半部に、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100を分解・修繕する工程(S10〜S130)を有している。また、
図6に示すように、本方法は、その後半部に、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100を組み立て・復元する工程(S210〜S290)を有している。なお、
図5末尾の「終了」は、全工程の終了でなく、前半段階の区切りを意味する。
【0039】
図5に示すように、
二重ケーシング構造の遠心ポンプを分解・修繕する工程(S10〜S130)は、分解準備・養生工程(S10)と、内部洗浄工程(S20)と、カバープレート取外し工程(S30)と、インペラ取外し工程(S40)と、インペラボス部ゴムライニング補修工程(S50)と、インペラボスカバー補修工程(S60)と、フレームプレートライナ取外し工程(S70)と、フレームプレート点検工程(S80)と、エキスペラ取外し工程(S90)と、エキスペラリング取外し工程(S100)と、軸スリーブ取外し工程(S110)と、軸受けシール交換工程(S120)と、カバープレートライナ交換工程(S130)と、を有する。
【0040】
まず、分解準備・養生工程(S10)では、被送液の液抜き(drain抜き)、隣接ポンプからの飛散防止のための養生、給電停止の徹底、その他、安全確認等を行う。つぎに、内部洗浄工程(S20)では、不図示の吸入短管(suction pipe)を取外してケーシング(casing)内を水洗する。つぎに、カバープレート取外し工程(S30)では、カバープレート11を外す。
【0041】
つぎに、インペラ取外し工程(S40)では、インペラ10を外して点検し必要なら新品に交換する。つぎに、インペラボス部ゴムライニング補修工程(S50)では、インペラボス部のゴムライニングを点検して必要なら新品に交換する。つぎに、インペラボスカバー補修工程(S60)では、インペラボスカバーに生じる摩耗・脱落の有無を点検して必要なら新品に交換する。これにより、インペラ芯金部に被送液が滲入して腐食することを予防する。
【0042】
つぎに、フレームプレートライナ取外し工程(S70)では、フレームプレートライナ24を外す。つぎに、フレームプレート点検工程(S80)では、ライナの外れたフレームプレート11に穴あきや摩耗の有無を点検し必要なら新品に交換する。つぎに、エキスペラ取外し工程(S90)では、エキスペラ30を外して点検し必要なら新品に交換する。つぎに、エキスペラリング取外し工程(S100)では、エキスペラリング40を外して点検し必要なら新品に交換する。
【0043】
なお、本方法では、少なくとも、インペラ10と、フレームプレート20と、エキスペラ30と、エキスペラリング40と、を取外す工程(S40,S90,S100)を有している場合に限って、所望の効果を得ることが可能である。その理由について、フレームプレート20を交換するためには、そのフレームプレート20に随伴する部材も併せて取外すことが必要だからである。つまり、フレームプレート20を新品に交換するためには、少なくとも、インペラ10、エキスペラ30、及びエキスペラリング40まで併せて順次着脱する必要がある。
【0044】
ここで、軸スリーブ取外し工程(S110)では、軸スリーブ70を外して点検し必要なら新品に交換する。つぎに、軸受けシール交換工程(S120)では、軸受けシール(以下、単に「シール」ともいう)80を外して点検し必要なら新品に交換する。つぎに、カバープレートライナ交換工程(S130)では、カバープレートライナ12を外して点検し必要なら新品に交換する。
【0045】
また、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100を分解・修繕する工程(S10〜S130)によって、適宜に各部の清掃や部品交換を進めたならば、その
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100を組み立て・復元する工程(S210〜S290)によって、本方法によるメンテナンスを完了する。
【0046】
その後、
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100を組み立て・復元する工程(S210〜S290)は、軸スリーブ取付け工程(S210)と、エキスペラリング取付け工程(S220)と、エキスペラ取付け工程(S230)と、フレームプレートライナ取付け工程(S240)と、インペラ取付け工程(S250)と、カバープレート取付け工程(S260)と、吸入短管取付け工程(S270)と、養生撤去・復元工程(S280)と、試運転工程(S290)と、を有する。
【0047】
まず、軸スリーブ取付け工程(S210)では、軸スリーブ70を取り付ける。つぎに、エキスペラリング取付け工程(S220)では、エキスペラリング40を取り付ける。つぎに、エキスペラ取付け工程(S230)では、エキスペラ30を取り付ける。つぎに、フレームプレートライナ取付け工程(S240)では、フレームプレートライナ24を取り付ける。つぎに、インペラ取付け工程(S250)では、インペラ10を取り付ける。
【0048】
つぎに、カバープレート取付け工程(S260)では、カバープレート11を取り付ける。つぎに、吸入短管取付け工程(S270)では、不図示の吸入短管を取り付ける。つぎに、養生撤去・復元工程(S280)では、隣接ポンプからの飛散防止養生を取り外す。つぎに、試運転工程(S290)では、吸入バルブ(suction valve)を開けて液漏れの有無を確認すると共に、Brg温度測定、及びBrgアッセンブリの振動加速度測定、その他異音、異常電流の有無を確認する。以下、本方法の要点についてのみ
図7を用いて説明する。
【0049】
図7は、
図5及び
図6に示した本方法において、フレームプレート交換をより詳細に説明するためのフローチャートである。
図7に示す各工程のうち、既に同一符号を付して
図5及び
図6を用いて説明した工程については重複を避けて省略する。
図7に示すように、フレームプレートライナ取外し工程(
図5のS70)に続くフレームプレート点検工程(S80)において、フレームプレート20の交換が必要か否かを目視により判断する。損耗の程度が軽微なら交換不要であり、洗浄後に再利用する。必要と判断されたならば、新品である更新フレームプレート20Nを用意する。
【0050】
エキスペラ取外し工程(S90)及びエキスペラリング取外し工程(S100)では、軸スリーブ70を軸60に残した状態で、フレームプレート20及びエキスペラリング40が取外される。ここで、フレームプレート被取付け面清掃工程(S101)の後、軸スリーブ70の取外し/取付け工程(S110/S210)が行われる。軸スリーブ70も損耗程度が軽微ならグリスを塗布して継続使用するが、適宜に新品交換する。
【0051】
つぎのエキスペラリング取付け工程(S220)は、本発明の特徴的な工程であり、エキスペラリングへの芯出し治具装着工程(S221)と、更新フレームプレートへの芯出しエキスペラリングの装着工程(S222)と、芯出し治具付き更新フレームプレートの取付け工程(S223)と、芯出しエキスペラリング取外し工程(S224)と、更新エキスペラリングへのシール取付け工程(S225)と、シール付き更新エキスペラリングの取付け工程(S226)と、エキスペラ取付け工程(S230)と、よりなる。
【0052】
まず、更新エキスペラリングへの芯出し治具装着工程(S221)では、エキスペラリング40の内径部に芯出し治具1を嵌着して芯出し治具付きのエキスペラリング41を用意する。つぎに、更新フレームプレートへの芯出しエキスペラリングの装着工程(S222)では、更新フレームプレート20Nの内径部に芯出し治具付きのエキスペラリング41を嵌着することにより、芯出し治具付き更新フレームプレート21Nを用意する。
【0053】
上述したように、この芯出し用フレームプレート20Nは、新品のフレームプレート20Nの軸孔22に、エキスペラリング40が密嵌(
図3矢印J)され、さらにその内径側に本治具1が密嵌(
図3矢印K)された状態、すなわち三つの部材が同心円状に嵌着されて一体化したものをいう。つぎに、芯出し治具付き更新フレームプレートの取付け工程(S223)では、芯出し用フレームプレート20Nを駆動部99に嵌着し、ボルト締めにより固定する。
【0054】
つぎに、芯出しエキスペラリング取外し工程(S224)では、芯出しされて駆動部99に固定された芯出し用フレームプレート20Nから、芯出し治具付きのエキスペラリング41を取り外す。つぎに、更新エキスペラリングへのシール取付け工程(S225)では、新品交換用の更新エキスペラリング40Nの内径に規定どおりのシール80を取付けたシール付き更新エキスペラリング42Nを予め用意しておく。
【0055】
つぎに、シール付き更新エキスペラリングの取付け工程(S226)では、予め用意されたシール付き更新エキスペラリング42Nを、フレームプレート20Nの内径に嵌着する。ここは、芯出し治具付きのエキスペラリング41を取り外した場所である。したがって、既に芯出しがなされているところである。その後、エキスペラ取付け工程(S230)以降は、
図6を用いて説明したとおりである。
【0056】
このようにして、本方法による
二重ケーシング構造の遠心ポンプ100のメンテナンスを完了する。本発明によれば、少なくともフレームプレート20の更新まで含め、非熟練者にも無理なく対応可能な
二重ケーシング構造の遠心ポンプのメンテナンス方法を提供できる。したがって、その工業的価値は極めて大きい。