(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のインクは、重量平均分子量1000以上4000未満の範囲のバインダーと、着色剤と、有機溶剤としてケトン系溶剤とを含有することを特徴とする。本発明のインクは、例えばインクジェット記録用インクとして好適に使用でき、なかでも、コンティニュアス方式(荷電制御方式)のインクジェット記録用インクに好適に使用できる。
【0012】
[バインダー]
前記インクに含まれるバインダーとしては、重量平均分子量1000以上4000未満の範囲のものを使用する。これにより、連続印刷する場合のノズル閉塞に起因したインクの不吐出といった吐出異常が生じることのない長期間に亘る吐出信頼性、インクの保存安定性、被記録媒体への密着性、印刷物の耐摩耗性、良好な視認性に優れる。
【0013】
前記バインダーとしては、1200以上3500未満の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、1500以上3200未満の範囲ものを使用することが、長期間にわたる吐出信頼性やインクの保存安定性に優れ、かつ、インクに含まれるバインダーの質量割合を比較的高く設定できることから被記録媒体への密着性や印刷物の耐摩耗性、視認性に優れた印刷物を形成可能なインクを得るうえでより好ましい。
【0014】
前記バインダーとしては、200〜300の範囲の酸価を有するものを使用することが好ましく、220〜270範囲の酸価を有するものを使用することが、インクの再溶解性に優れ、かつ、ポリオレフィン記録媒体をはじめとする被記録媒体への密着性に優れたインクを得るうえでより好ましい。なお、インクの再溶解性が優れるとは、インクの連続吐出を中断させ、再度吐出をさせた場合であっても、吐出異常を起こすことなく、連続吐出を再開できることを指す。
【0015】
前記バインダーとしては、例えば、後述するケトン系溶剤、特にメチルエチルケトンに溶解可能で、長期間にわたり、常温、高温および低温環境下において析出しにくいものを使用することが、吐出異常を防止し、吐出信頼性に優れたインクを得るうえで好ましい。
【0016】
前記バインダーとしては、具体的には、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等のビニル重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ロジンマレイン酸樹脂、ケトン樹脂、セルロース系樹脂、ロジンエステル、ニトロセルロース樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂等を単独または2以上組み合わせ使用することができる。なかでも、前記バインダーとしては、ビニル重合体を使用することが好ましく、とりわけスチレン−アクリル重合体を使用することが、ポリオレフィン記録媒体をはじめとする被記録媒体への密着性に優れたインクを得るうえでより好ましい。
【0017】
前記スチレン−アクリル重合体としては、具体的にはスチレン−αメチルスチレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキル−メタクリル酸アルキル−スチレン共重合体、スチレン−アクリル系共重合体、変性アクリル系共重合体等を使用することができる。
【0018】
前記バインダーは、前記インクの全量に対して、10質量%〜30質量%の範囲で使用することが好ましく、15質量%〜25質量%の範囲で使用することが、とりわけコンティニュアス方式(荷電制御方式)でも使用可能なインクジェット記録用インクに適度な粘度を与えるうえで、ポリオレフィン記録媒体をはじめとする被記録媒体への密着性に優れ、耐摩耗性に優れた印刷物の製造に使用可能なインクを得るうえでより好ましい。
【0019】
[着色剤]
本発明のインクに含まれる着色剤としては、染料、有機顔料、無機顔料等を使用することができる。なかでも、前記着色剤としては、染料を使用することが好ましく、後述するケトン系溶剤、特にメチルエチルケトンに溶解可能な染料を使用することが、耐水性に優れた印刷物を得るうえでより好ましい。
【0020】
前記染料としては、メチルエチルケトンに溶解可能な染料は、例えば、クロム錯塩染料、銅フタロシアニン染料、ニグロシン系染料、造塩染料等を使用することができる。
【0021】
前記染料としては、具体的には、C.I.ソルベントブラック22、27、29、34、43、45、C.I.アシッドバイオレット66、C.I.ソルベントオレンジ62、C.I.ソルベントレッド8、89、91、92、122,124、127、132、C.I.ソルベントイエロー19、21、62、79、83、83:1、C.I.ソルベントブルー38、70等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0022】
前記染料としては、耐水性や耐光性に優れた印刷物を得るうえで、クロム錯塩染料を使用することが好ましく、なかでもアゾ系クロム錯塩染料を使用することがより好ましい。
【0023】
前記着色剤は、前記インクの全量に対して、3質量%〜15質量%の範囲で使用することが好ましく、5質量%〜10質量%の範囲で使用することが、実用上十分な発色濃度を有する印刷物を得るうえでより好ましい。
【0024】
[有機溶剤]
本発明のインクに含まれる有機溶剤としては、ケトン系溶剤を必須成分とし、必要に応じてその他の有機溶剤を組み合わせ使用することができる。
【0025】
前記ケトン系溶剤としては、乾燥性の高いアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を使用することができ、なかでも、メチルエチルケトンを使用することが、乾燥性が高く、耐摩耗性と耐水性と耐候性とに優れた印刷物を得るうえでより好ましい。
【0026】
前記ケトン系溶剤は、前記インクの全量に対して、45質量%〜65質量%の範囲で使用することが好ましく、50質量%〜62質量%の範囲で使用することが、高温および低温環境下において前記着色剤とバインダー等の析出を抑制でき、長期間にわたり溶解した安定状態を維持でき、その結果、吐出異常を防止し、吐出信頼性に優れたインクを得るうえで好ましい。
【0027】
前記ケトン系溶剤と組み合わせ使用可能なその他の有機溶剤としては、例えば、安全性の高い低級アルコール、エステル系溶剤等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0028】
低級アルコールとしては、炭素原子数4以下のアルコールを使用することができ、具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールが挙げられる。
【0029】
前記エステル系溶剤としては、染料をはじめとする着色剤の溶解性をさらに高めることができ、インクの安定性を高める効果があるものを使用することができ、例えばプロピレングリコールモノアルキルエーテルアルキレート、ポリプロピレングリコールモノアルキルアセテート、カルボン酸エステル、アルコキシカルボン酸エステル等が好ましい。
【0030】
プロピレングリコールモノアルキルエーテルアルキレートの、モノアルキルエーテルを構成するアルキル基の炭素原子数及びアルキレートを構成するアルキル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。前記アルキル基は直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。
【0031】
前記ポリプロピレングリコールモノアルキルアセテートとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルブチレート等を使用することがさらにより好ましく、印字ドットの濡れ広がりを防止することで、良好な視認性が得られる、更に、低温環境下での染料の析出を防止する効果を奏するうえでプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが特に好ましい。
【0032】
前記カルボン酸エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸ヘキシル等を使用することがより好ましく、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸アミル、プロピオン酸ヘキシル等を使用することがさらにより好ましく、プロピオン酸エチルを使用することが特に好ましい。
【0033】
前記その他の有機溶剤は、前記着色剤の質量に対して10質量%〜100質量%の範囲で使用することが好ましく、20質量%〜80質量%の範囲で使用することがより好ましく、30質量%〜70質量%の範囲で使用することが印字ドットの濡れ広がり防止することで、良好な視認性が得られる、低温環境下での染料の析出を抑制しインクの吐出異常を防止するうえで特に好ましい。
【0034】
本発明のインクは、前記インクの全量に対して水の含有量が2質量%以下であることが好ましく、0〜1.5質量%であることがより好ましく、実質的に0質量%であることが、耐水性に優れた印刷物を得るうえで特に好ましい。
【0035】
[任意成分]
本発明のインクは、前記した成分のほかに、必要に応じて、例えば導電性付与物質、シリコーン系化合物、フッ素系化合物等を使用することができる。なかでも本発明のインクをコンティニュアス方式(荷電制御方式)で印刷する場合、導電性付与物質を使用することが、被記録媒体に着弾する前のインク液滴を帯電させ、インク液滴の量(大きさ)を制御し、これを静電場で偏向させることで、被記録媒体の所定の位置に着弾させることができ、かつ、インクの液滴曲がりといった吐出異常を生じることがなく、優れた吐出性を実現可能なインクを得るうえで好ましい。
【0036】
前記導電性付与物質としては、例えば硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸アンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラメチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム−4−ヒドロキシナフタレン−1−スルフォネート等が好ましい。
【0037】
前記導電性付与物質は、導電性付与物質を除くインクの合計100質量部に対して0.01質量部〜8質量部の範囲で使用することが好ましく、0.2質量〜5質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0038】
前記シリコーン系化合物としては、印刷物の耐摩耗性、印刷物の色移り度合いを判断する耐転写性、先端が鋭利な突起物等での耐擦性、即ち、耐スクラッチ性等を向上させるうえで、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、シリコーンレジン等を使用することができ、具体的には、信越化学工業(株)製のKF−56(シリコーンオイル)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製のTSF−410(高級脂肪酸変性シリコーンオイル)、TSF−4446、4460(ポリエーテル変性シリコーンオイル)、TSF−4710(アミノ変性シリコーンオイル)、信越化学工業(株)製のKR−216、KP−316、360A(シリコーンレジン)等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
【0039】
前記フッ素系化合物としては、フッ素系界面活性剤等が挙げられ、具体的には、DIC(株)製のメガファックF−470、F−173、F−177等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。前記フッ素系化合物は、前記シリコーン系化合物と組み合わせ使用することもできる。
【0040】
[インクの製造方法]
本発明のインクは、前記バインダー、着色剤、有機溶剤及び必要に応じて任意成分を混合し、ディスパミルに代表される高速攪拌機等で撹拌した後、必要に応じてろ過することによって製造することができる。
【0041】
[記録媒体]
本発明のインクは、様々な被記録媒体への印刷に使用することができる。
【0042】
前記被記録媒体としては、例えば前記インクに含まれる溶媒を吸収し得る吸収性媒体や、インクに含まれる溶媒を吸収しないまたは吸収しにくい低吸収性媒体を使用することができる。本発明のインクは、低吸収性媒体への印刷に使用した場合であっても、乾燥性の高いケトン系溶剤を使用しているため、濡れ広がりの無い均一したドット径を有する優れた印刷物を得ることができる。
【0043】
前記低吸収性媒体としては、例えばポリオレフィン等の樹脂を含む被記録媒体、金属、ガラスからなる被記録媒体等が挙げられる。
[印刷方法]
本発明のインクは、もっぱらインクジェット印刷法での印刷に好適に使用することができる。なかでも本発明のインクは、導電性付与物質を含有するインクを、コンティニュアス方式(荷電制御方式)でのインクジェット印刷用インクとして使用することが好ましい。
【0044】
導電性付与物質を含有するインクは、前記インクの液柱を電歪素子で振動させることによって一定の大きさのインク液滴を形成し、インク液滴を帯電し、インク液滴を静電場で偏向させることで、被記録媒体の所定の位置に着弾させ、鮮明な印刷物を得ることができるため好ましい。
【0045】
[印刷物]
本発明のインクを用いた印刷物としては、例えば紙パック、瓶ラベル、レトルトパウチパック、缶詰、包装フィルム、建材、銅板、チューブ、薬品個装箱、化粧品個装箱等のものが挙げられる。これらの印刷物は、密着性、耐摩耗性、印字ドットの濡れ広がりがない良好な視認性を有することに加え、耐熱性、耐溶剤性、耐転写性、耐煮沸性等も備えており、実使用に好適とされる優れた特徴をも有している。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0047】
(実施例1)
メチルエチルケトン60.0質量部及びメタノール7.5質量部に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン−アクリル重合体、重量平均分子量1700、酸価238)19.0質量部、ベンジルトリブチルアンモニウム−4−ヒドロキシナフタレン−1−スルフォネート(導電性付与物質)3.0質量部、及び、「KR−216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)3.0質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0048】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLACK 3820」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブラック27)7.5質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式(荷電制御方式)のインクジェット記録用ブラックインク(1)を得た。
【0049】
(実施例2)
メチルエチルケトン58質量部及びメタノール8.5質量部に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン−アクリル重合体、重量平均分子量1700、酸価238)18質量部、ベンジルトリブチルアンモニウム−4−ヒドロキシナフタレン−1−スルフォネート(導電性付与物質)3.0質量部、及び、「KR−216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)3.0質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0050】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST RED 3320」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントレッド132)9質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式(荷電制御方式)のインクジェット記録用レッドインク(2)を得た。
【0051】
(実施例3)
メチルエチルケトン59質量部及びメタノール9.5質量部に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン−アクリル重合体、重量平均分子量1700、酸価238)18質量部、ベンジルトリブチルアンモニウム−4−ヒドロキシナフタレン−1−スルフォネート(導電性付与物質)4.0質量部、及び、「KR−216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)3.5質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0052】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLUE 2680」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブルー70)6質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式(荷電制御方式)のインクジェット記録用ブルーインク(3)を得た。
【0053】
(実施例4)
メチルエチルケトン54質量部及びメタノール9質量部に、「ジョンクリル682」(BASF製、スチレン−アクリル重合体、重量平均分子量1700、酸価238)21質量部、ベンジルトリブチルアンモニウム−4−ヒドロキシナフタレン−1−スルフォネート(導電性付与物質)4質量部、及び、「KR−216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)3質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0054】
次に、前記で得た攪拌混合物に「Orasol BLUE 855」(BASF製、ソルベントブルー70)3.5質量部、「Orasol YEllow 081」(BASF製、ソルベントブルー70)5.5質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式(荷電制御方式)のインクジェット記録用グリーンインク(4)を得た。
【0055】
(比較例1)
メチルエチルケトン69質量部及びメタノール7.5質量部に、「ジョンクリル683」(BASF製、スチレン−アクリル重合体、重量平均分子量8000、酸価160)10質量部、ベンジルトリブチルアンモニウム−4−ヒドロキシナフタレン−1−スルフォネート(導電性付与物質)3質量部、及び、「KR−216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)3質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0056】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLACK 3820」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブラック27)7.5質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式(荷電制御方式)のインクジェット記録用ブラックインク(H1)を得た。
【0057】
(比較例2)
メチルエチルケトン74質量部及びメタノール7.5質量部に、「ジョンクリル690」(BASF製、スチレン−アクリル重合体、重量平均分子量16500、酸価240)5質量部、ベンジルトリブチルアンモニウム−4−ヒドロキシナフタレン−1−スルフォネート(導電性付与物質)3質量部、及び、「KR−216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)3質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0058】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLACK 3820」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブラック27)7.5質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式(荷電制御方式)のインクジェット記録用ブラックインク(H2)を得た。
【0059】
(比較例3)
メチルエチルケトン31質量部及びメタノール32.5質量部に、「ジョンクリル678」(BASF製、スチレン−アクリル重合体、重量平均分子量8500、酸価215)10質量部、ベンジルトリブチルアンモニウム−4−ヒドロキシナフタレン−1−スルフォネート(導電性付与物質)3質量部、及び、「KR−216」(信越化学工業(株)製、シリコーンレジン)3質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、撹拌混合した。
【0060】
次に、前記で得た攪拌混合物に「VALIFAST BLACK 3820」(オリエント化学工業(株)製、ソルベントブラック27)7.5質量部を加え、分散撹拌機(ディスパミル)で60分間、撹拌混合したものを、0.45μmのメンブランフィルタでろ過することによって、コンティニュアス方式(荷電制御方式)のインクジェット記録用ブラックインク(H3)を得た。
【0061】
[インク保存安定性の評価方法]
(1)高温60℃での保存安定性の評価方法
はじめに、製造直後のインクの粘度を、E型粘度計(東機産業社製のTV−20型、コーン型ローター使用)を用い20℃の環境下で測定した(初期粘度X1)。
【0062】
次に、前記インクを、60℃の環境下に1440時間静置した。
【0063】
前記静置後のインクを60℃環境下から取り出し、前記インクが常温になるまで常温の環境下に静置した。
【0064】
前記常温のインクの粘度を、E型粘度計(東機産業社製のTV−20型、コーン型ローター使用)を用い20℃の環境下で測定した(粘度X2)。
【0065】
前記方法で測定した初期粘度X1と粘度X2と下記式とを用い、粘度変化率を算出した。
粘度変化率(%)=[{(粘度X2)−(初期粘度X1)}/初期粘度(X1)]×100
【0066】
○ 粘度変化率が±5%未満
△ 粘度変化率が±5%以上±10%未満
× 粘度変化率が±10以上%以上
【0067】
(2)低温−5℃での保存安定性の評価方法
はじめに、製造直後のインクの粘度を、E型粘度計(東機産業社製のTV−20型、コーン型ローター使用)を用い20℃の環境下で測定した(初期粘度X1)。
【0068】
次に、前記インクを、−5℃の環境下に1440時間静置した。
【0069】
前記静置後のインクを−5℃環境下から取り出し、前記インクが常温になるまで常温の環境下に静置した。
【0070】
前記常温のインクの粘度を、E型粘度計(東機産業社製のTV−20型、コーン型ローター使用)を用い20℃の環境下で測定した(粘度X2)。
【0071】
前記方法で測定した初期粘度X1と粘度X2と下記式とを用い、粘度変化率を算出した。
粘度変化率(%)=[{(粘度X2)−(初期粘度X1)}/初期粘度(X1)]×10
【0072】
○ 粘度変化率が±5%未満
△ 粘度変化率が±5%以上±10%未満
× 粘度変化率が±10以上%以上
【0073】
(3)ろ過性試験の評価方法
製造直後のインクを、60℃の環境下に1440時間静置した。また、製造直後のインクを、−5℃の環境下に1440時間静置した。
【0074】
前記静置後のインクを、前記インクが常温になるまで常温の環境下に静置した。
【0075】
次に、前記インクを、ポアサイズ0.6μm径のメンブレンフィルタでろ過した。
【0076】
前記メンブレンフィルタ上に析出物(残渣物)が目視で確認できたものを「×」と評価し、析出物が確認できなかったものを「○」と評価した。
【0077】
[吐出信頼性の評価方法]
実施例及び比較例で得たインクを、荷電量制御方式のインクジェットプリンター(日立産機システム社製のコンティニアス方式のインクジェットプリンター)を用いて、1500時間の連続吐出した。吐出されたインクは、ガターで回収され、プリンター内のインク経路を通じて再び吐出されるように設定した。
【0078】
1500時間経過後、インクの吐出方向異常が発生したことによりガターで回収されず、ガター周辺がインクで着色したものを「×」と評価し、1500時間経過後であってもインクの吐出方向異常が発生せず、吐出されたインクのすべてがガターで回収されたものを「○」と評価した。
【0079】
[密着性の評価方法]
実施例及び比較例で得たインクを、荷電量制御方式のインクジェットプリンターを用いて、ポリエチレンフィルムの表面に、100個のドット(10cm×10cm)を印字した。
【0080】
前記印刷物を25℃の環境下に30分間静置した後、印刷物の表面にセロハン粘着テープ(ニチバン製)を貼り付けた。次に、前記セロハン粘着テープを、印刷物の表面に対して180度方向に剥離し、印刷面の状態を目視で確認した。
【0081】
印刷面のドットの剥離が0個であったものを「○」と評価し、1以上25個未満のドットがはがれたものを「△」と評価し、25個以上のドットがはがれたものを「×」と評価した。
【0082】
[耐摩耗性の評価方法]
実施例及び比較例で得たインクを、荷電量制御方式のインクジェットプリンターを用いて、ポリエチレンフィルムの表面に、100個のドット(10cm×10cm)を印字した。
【0083】
前記印刷物を25℃の環境下に30分間静置した後、印刷物の表面を綿棒で20回こすった面の状態を目視で確認した。
【0084】
印刷面のドットの剥離が0個であったものを「○」と評価し、1以上25個未満のドットがはがれたものを「△」と評価し、25個以上のドットがはがれたものを「×」と評価した。
【0085】
[視認性の評価方法]
実施例及び比較例で得たインクを、荷電量制御方式のインクジェットプリンター(日立産機システム社製のコンティニアス方式のインクジェットプリンター)を用いて、ポリエチレンフィルムの表面に100個のドット(縦10cm×横10cmの範囲に、縦10個×横10個のドット)を印刷し、25℃の環境下で30分間乾燥させることによって印刷物を得た。
【0086】
印刷物を目視で確認し、ドットが重なりあうことなく、独立した100個のドットを確認できた印刷物を「○」と評価し、ドットがポリエチレンフィルムの表面で濡れ広がることで、2個以上のドットが部分的に重なり、1つの大きなドットを形成したものを「×」と評価した。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】