特許第6972813号(P6972813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6972813硬化型組成物、硬化型インク、収容容器、2次元又は3次元の像形成装置、2次元又は3次元の像形成方法、硬化物、及び硬化性化合物
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  • 特許6972813-硬化型組成物、硬化型インク、収容容器、2次元又は3次元の像形成装置、2次元又は3次元の像形成方法、硬化物、及び硬化性化合物 図000125
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972813
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】硬化型組成物、硬化型インク、収容容器、2次元又は3次元の像形成装置、2次元又は3次元の像形成方法、硬化物、及び硬化性化合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/58 20060101AFI20211111BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20211111BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20211111BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20211111BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20211111BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20211111BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20211111BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20211111BHJP
   C09D 11/101 20140101ALN20211111BHJP
【FI】
   C08F20/58
   C09D11/30
   B29C64/112
   B29C64/264
   B29C64/295
   B33Y70/00
   B41J2/01 501
   B41J2/01 129
   B41M5/00 120
   B41M5/00 100
   !C09D11/101
【請求項の数】12
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2017-175587(P2017-175587)
(22)【出願日】2017年9月13日
(65)【公開番号】特開2018-80321(P2018-80321A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2020年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-219148(P2016-219148)
(32)【優先日】2016年11月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】森田 充展
(72)【発明者】
【氏名】野口 宗
(72)【発明者】
【氏名】岡田 崇
(72)【発明者】
【氏名】永井 一清
(72)【発明者】
【氏名】小飯塚 祐介
(72)【発明者】
【氏名】島田 知幸
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0286435(US,A1)
【文献】 特開2015−013980(JP,A)
【文献】 特開2009−096955(JP,A)
【文献】 米国特許第05683793(US,A)
【文献】 TEARE, D. O. H. et al.,Poly(N-acryloylsarcosine methyl ester) Protein-Resistant Surfaces,Journal of Physical Chemistry B,2005年,20923-20928,DOI:10.1021/jp052767p
【文献】 HARRIS, L. G. et al.,MultiFunctional Molecular Scratchcards,Chemistry of Materials,19,2007年,1546-1551,DOI:10.1021/cm0624670
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/00− 20/70
C08F 120/00−120/70
C08F 222/00−220/70
C09D 11/30
B29C 64/112
B29C 64/264
B29C 64/295
B33Y 70/00
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/101
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物を含有することを特徴とする硬化型組成物。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。Yが下記一般式(2)を表すとき、Xは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Yが下記一般式(3)を表すとき、Xはメチルメチレン基、ブチレン基、及びへキシレン基から選ばれるいずれかを表す。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化3】
ただし、前記一般式(3)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記一般式(4)で表される化合物である請求項1に記載の硬化型組成物。
【化4】
ただし、前記一般式(4)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xはメチルメチレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【請求項3】
前記一般式(4)中のRが炭素数1〜3のアルキル基、及びRが炭素数1〜3のアルキル基である請求項2に記載の硬化型組成物。
【請求項4】
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記構造式で表される化合物の少なくともいずれかである、請求項1から3のいずれかに記載の硬化型組成物。
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【請求項5】
前記一般式(4)で表されるアクリルアミド化合物が、下記構造式(g1−1)、下記構造式(g1−2)、及び下記構造式(g1−5)で表される化合物の少なくともいずれかである請求項2からのいずれかに記載の硬化型組成物。
【化29】
【化30】
【化31】
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の硬化型組成物を含有することを特徴とする硬化型インク。
【請求項7】
インクジェット用である請求項6に記載の硬化型インク。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の硬化型組成物、及び請求項6から7のいずれかに記載の硬化型インクの少なくともいずれかを収容してなることを特徴とする収容容器。
【請求項9】
請求項1から5のいずれかに記載の硬化型組成物、及び請求項6から7のいずれかに記載の硬化型インクの少なくともいずれかを収容する収容部と、エネルギーを付与するための付与手段と、を有することを特徴とする2次元又は3次元の像形成装置。
【請求項10】
請求項1から5のいずれかに記載の硬化型組成物、及び請求項6から7のいずれかに記載の硬化型インクの少なくともいずれかにエネルギーを付与して2次元又は3次元の像を形成することを特徴とする2次元又は3次元の像形成方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれかに記載の硬化型組成物、及び請求項6から7のいずれかに記載の硬化型インクの少なくともいずれかを用いて形成されることを特徴とする硬化物。
【請求項12】
下記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物であることを特徴とする硬化性化合物。
【化32】
ただし、前記一般式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。Yが下記一般式(2)を表すとき、Xは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Yが下記一般式(3)を表すとき、Xはメチルメチレン基、ブチレン基、及びへキシレン基から選ばれるいずれかを表す。
【化33】
ただし、前記一般式(2)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化34】
ただし、前記一般式(3)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型組成物、硬化型インク、収容容器、2次元又は3次元の像形成装置、2次元又は3次元の像形成方法、硬化物、及び硬化性化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等の記録媒体上に画像を形成する方法として、インクジェット記録方式が知られている。このインクジェット記録方式は、インクの消費効率が高く省資源性に優れており、単位記録当たりのインクコストを低く抑えることが可能である。
【0003】
近年、硬化型インクを用いたインクジェット記録方式が注目されている。例えば、エステル構造を有する3級アクリルアミド化合物を用いたインクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、臭気が少なく、重合性及び硬化性に優れ、安全性が高い硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の硬化型組成物は、下記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物を含有する。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。
【化2】
ただし、前記一般式(2)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化3】
ただし、前記一般式(3)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、臭気が少なく、重合性及び硬化性に優れ、安全性が高い硬化型組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明における像形成装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明における別の像形成装置の一例を示す概略図である。
図3】本発明におけるさらに別の像形成装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(硬化型組成物、及び硬化性化合物)
本発明の硬化型組成物は、下記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物を含有し、その他の硬化性化合物、重合開始剤、有機溶媒を含有することが好ましく、更に必要に応じて、色材、その他の成分を含有する。
【化4】
ただし、前記一般式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。
【化5】
ただし、前記一般式(2)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化6】
ただし、前記一般式(3)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【0009】
また、本発明の硬化性化合物は、前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物である。
【0010】
<アクリルアミド化合物>
前記アクリルアミド化合物は、前記一般式(1)で表される。
【0011】
前記一般式(1)におけるRは、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
前記炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。
前記一般式(1)におけるXは、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。
前記炭素数1〜6のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などが挙げられる。
前記一般式(1)におけるYは、前記一般式(2)又は前記一般式(3)を表す。
【0012】
前記一般式(2)におけるRは、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
前記一般式(2)における*は、前記Xとの結合部位を表す。
【0013】
前記一般式(3)におけるRは、直鎖でも分岐鎖でもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。
前記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
前記一般式(3)における*は、前記Xとの結合部位を表す。
【0014】
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物は、単官能で環構造を有しない3級アクリルアミドの末端にエステル構造を有している。一般に、低分子量の3級アクリルアミド化合物は、揮発性を有していることからモノマー独特の臭気を強く感じ、これらの化合物を含む硬化型組成物を扱う上で不快感が生じることになる。
【0015】
このような低分子量の3級アクリルアミド化合物に対して、極性の強い官能基を導入することや、分子量を大きくすることによってアクリルアミド化合物の揮発性を抑え、臭気を低減することは可能である。しかし、その場合には、粘度の上昇を伴うことになり、硬化型組成物、その中でも、インクジェット用インクに対する利用上の制約が大きくなってしまうという問題がある。
そこで、前記一般式(1)で表される3級アクリルアミド化合物は、末端部にエステル構造を有している。そのため、エステル構造による揮発性の低下により、臭気を抑制することができる。また、エステル構造の存在による分子間の相互作用により、硬化性も向上すると考えられる。更に、エステル構造を有する3級アクリルアミド化合物は、強い水素結合を形成しないことから、粘度の上昇も小さく、低粘度を維持できると考えられる。その結果、前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物は、硬化型組成物、その中でも、インクジェット用インクとして好適に用いることができる。
【0016】
一般に、アクリルアミド化合物は急性経口毒性が大きいことから、これらの化合物を含む硬化型組成物は安全性面に懸念があり、また、取扱上の注意が必要である。
これに対し、本発明のエステル構造を有するアクリルアミド化合物は、急性経口毒性が低くなる傾向がある。その中でも、前記一般式(1)におけるYが、前記一般式(3)の場合に、急性経口毒性が非常に低くなる傾向がある。したがって、本発明のアクリルアミド化合物を含有する硬化型組成物は、急性経口毒性が低くなることが期待され、安全性を高めることができる。
【0017】
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下記一般式(4)で表される化合物が好ましい。
【化7】
ただし、前記一般式(4)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xは炭素数1〜3のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。
前記Rで表される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖構造であってもよく、分岐構造であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基などが挙げられる。これらの中でも、Rが炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基がより好ましい。
前記Xで表される炭素数1〜3のアルキレン基としては、直鎖構造であってもよく、分岐構造であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基などが挙げられる。これらの中でも、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基が好ましく、メチレン基、メチルメチレン基がより好ましい。
前記Rで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、直鎖構造であってもよく、分岐構造であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基が好ましく、Rが炭素数1〜3のアルキル基がより好ましい。
【0018】
次に、前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の具体例として、例示化合物a群からh群を示すが、これらに限定されるものではない。
【0019】
前記例示化合物a群としては、例えば、以下に示すa1からa6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
<<例示化合物a1群>>
【化8】
【0021】
<<例示化合物a2群>>
【化9】
【0022】
<<例示化合物a3群>>
【化10】
【0023】
<<例示化合物a4群>>
【化11】
【0024】
<<例示化合物a5群>>
【化12】
【0025】
<<例示化合物a6群>>
【化13】
【0026】
前記例示化合物b群としては、例えば、以下に示すb1からb6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
<<例示化合物b1群>>
【化14】
【0028】
<<例示化合物b2群>>
【化15】
【0029】
<<例示化合物b3群>>
【化16】
【0030】
<<例示化合物b4群>>
【化17】
【0031】
<<例示化合物b5群>>
【化18】
【0032】
<<例示化合物b6群>>
【化19】
【0033】
前記例示化合物c群としては、例えば、以下に示すc1からc6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
<<例示化合物c1群>>
【化20】
【0035】
<<例示化合物c2群>>
【化21】
【0036】
<<例示化合物c3群>>
【化22】
【0037】
<<例示化合物c4群>>
【化23】
【0038】
<<例示化合物c5群>>
【化24】
【0039】
<<例示化合物c6群>>
【化25】
【0040】
前記例示化合物d群としては、例えば、以下に示すd1からd6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
<<例示化合物d1群>>
【化26】
【0042】
<<例示化合物d2群>>
【化27】
【0043】
<<例示化合物d3群>>
【化28】
【0044】
<<例示化合物d4群>>
【化29】
【0045】
<<例示化合物d5群>>
【化30】
【0046】
<<例示化合物d6群>>
【化31】
【0047】
前記例示化合物e群としては、例えば、以下に示すe1からe6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
<<例示化合物e1群>>
【化32】
【0049】
<<例示化合物e2群>>
【化33】
【0050】
<<例示化合物e3群>>
【化34】
【0051】
<<例示化合物e4群>>
【化35】
【0052】
<<例示化合物e5群>>
【化36】
【0053】
<<例示化合物e6群>>
【化37】
【0054】
前記例示化合物f群としては、例えば、以下に示すf1群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
<<例示化合物f1群>>
【化38】
【0056】
前記例示化合物g群としては、例えば、以下に示すg1からg6群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
<<例示化合物g1群>>
【化39】
【0058】
<<例示化合物g2群>>
【化40】
【0059】
<<例示化合物g3群>>
【化41】
【0060】
<<例示化合物g4群>>
【化42】
【0061】
<<例示化合物g5群>>
【化43】
【0062】
<<例示化合物g6群>>
【化44】
【0063】
前記例示化合物h群としては、例えば、以下に示すh1群の化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
<<例示化合物h1群>>
【化45】
【0065】
前記例示化合物a群からh群の中でも、例示化合物a1−1、例示化合物a1−4、例示化合物a6−1、例示化合物d1−1、例示化合物d1−2、例示化合物d1−4、例示化合物d1−5、例示化合物d3−2、例示化合物d4−1、例示化合物d4−5、例示化合物d6−1、例示化合物d6−4、例示化合物g1−1、例示化合物g1−2、及び例示化合物g1−5が好ましく、例示化合物d1−1、例示化合物d1−2、例示化合物g1−1、例示化合物g1−2、及び例示化合物g1−5がより好ましい。
【0066】
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物は、異なる化合物同士を2種以上混合して用いることができ、この場合の異なる化合物には構造異性体も含まれる。混合比は特に限定されない。
【0067】
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物の含有量としては、硬化型組成物全量に対して、20質量%以上98質量%以下が好ましく、30質量%以上90質量%以下がより好ましく、30質量%以上80質量%以下が特に好ましい。
【0068】
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物は、H−NMRスペクトル、及びIRスペクトルを用いることにより、構造解析することができる。
【0069】
<その他の硬化性化合物>
前記その他の硬化性化合物は、前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物以外の硬化性化合物を用いることができる。
【0070】
前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物以外の硬化性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、アニオン重合性化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
前記ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合することが可能なエチレン性不飽和基を1個以上有する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、モノマー、オリゴマー、ポリマーなどを含む化合物などが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、これらの塩、又はこれらから誘導される化合物、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタンが好ましい。
【0072】
前記ラジカル重合性化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、オリゴエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリル酸誘導体、メチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン等のメタクリル酸誘導体、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のアクリルアミド誘導体、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物の誘導体、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルモノビニルエーテル、ヒドロキシノニルモノビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物、ジビニルエーテル化合物、又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物、2−エチルヘキシルジグリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、エトキシ化フェニルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、ノニルフェノールエチレンオキシド付加物アクリレート、変性グリセリントリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、ラクトン変性可撓性アクリレート、ブトキシエチルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ヘキサメチレンジイソシアナートウレタンプレポリマー、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ステアリルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ラクトン変性アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
前記カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
前記アニオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ化合物、ラクトン化合物、アクリル化合物、メタクリル化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ラジカル重合性化合物として例示されたアクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体が好ましい。
【0075】
前記その他の硬化性化合物の含有量としては、前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物100質量部に対して、0.01質量部以上100質量部以下が好ましく、0.1質量部以上50質量部以下がより好ましい。
【0076】
<重合開始剤>
本発明の硬化型組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、エネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜20質量%含まれることが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0077】
前記カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム等の芳香族オニウム化合物のB(C、PF、AsF、SbF、CFSO塩、スルホン酸を発生することが可能なスルホン化物、ハロゲン化水素を発生することが可能なハロゲン化物、鉄アレン錯体などが挙げられる。
【0078】
前記アニオン重合開始剤としては、例えば、o−ニトロベンジルカルバメート誘導体、o−アシルオキシル誘導体、o−カルバモイルオキシムアミジン誘導体などが挙げられる。
【0079】
前記硬化性化合物と前記重合開始剤との組合せとしては、例えば、前記ラジカル重合性化合物と前記ラジカル重合開始剤との組合せ、前記カチオン重合性化合物と前記カチオン重合開始剤との組合せ、前記アニオン重合性化合物と前記アニオン重合開始剤との組合せなどが挙げられる。
【0080】
<有機溶媒>
本発明の硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0081】
<色材>
本発明の硬化型組成物は、色材を含有していてもよい。色材としては、本発明における組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1〜20質量%であることが好ましい。なお、本発明の硬化型組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。 分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
<その他の成分>
本発明の硬化型組成物は、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レべリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0083】
−重合禁止剤−
前記重合禁止剤は、硬化型組成物の保存性(保管安定性)を高めることができ、また、硬化型組成物を加熱し、粘度を低下させて吐出する場合の熱重合によるヘッド詰まりを防ぐことができる。
【0084】
前記重合禁止剤としては、特に制限はなく、例えば、ハイドロキノン、ベンゾキノン、p−メトキシフェノール、TEMPO、TEMPOL、アルミニウムのクペロン錯体などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0085】
前記重合禁止剤の含有量としては、200ppm以上20,000ppm以下が好ましい。
【0086】
−増感剤−
本発明の硬化型組成物は、エネルギー付与による重合開始剤の分解を促進させるため、更に増感剤を含んでいてもよい。
前記増感剤としては、活性エネルギー線や熱を吸収して励起状態となり、その状態で重合開始剤と接触して、例えば、電子移動、エネルギー移動、発熱等の作用により重合開始剤の化学変化(分解、又はラジカル、酸、若しくは塩基の生成)を促進する。
【0087】
前記増感剤の含有量A(質量%)と、前記重合開始剤の含有量B(質量%)との質量比(A/B)としては、5×10−3以上200以下が好ましく、0.02以上50以下がより好ましい。
【0088】
前記増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、波長が350nm以上450nm以下の領域に吸収波長を有する増感色素などが挙げられる。
前記増感色素としては、例えば、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリリウム類(例えば、スクアリリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
−共増感剤−
本発明の硬化型組成物は、更に共増感剤を含んでいてもよい。
前記共増感剤としては、例えば、前記増感色素の活性エネルギー線や熱に対する感度を一層向上させたり、酸素による硬化性化合物の重合阻害を抑制したりすることができる。
【0090】
前記共増感剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等のアミン系化合物、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等のチオール及びスルフィド類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
−溶媒−
前記硬化型組成物は、溶剤を含まないことが好ましいが、例えば、硬化後のインクと記録媒体との接着性を向上させるため、インクの硬化速度等に影響しない場合に限り、溶媒を含んでいてもよい。
前記溶媒としては、特に制限はなく、例えば、有機溶媒、水などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記溶媒の含有量としては、硬化型組成物全量に対して、0.1質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がより好ましい。
【0092】
本発明の硬化型組成物は、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、アクリル樹脂、ゴム樹脂、ワックス類などを更に含んでいてもよい。
また、本発明の硬化型組成物は、ポリオレフィンフィルム、PETフィルム等に対する接着性を改善するため、重合阻害のない粘着付与剤(タッキファイヤー)を更に含んでいてもよい。
【0093】
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高級脂肪酸界面活性剤、シリコーン界面活性剤、フッ素界面活性剤などが挙げられる。
【0094】
<硬化方法>
本発明の硬化型組成物を硬化させる方法としては、例えば、エネルギーを付与して硬化させる方法が挙げられる。
前記エネルギーとしては、例えば、熱、活性エネルギー線などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、活性エネルギー線が好ましい。
【0095】
<硬化手段>
本発明の硬化型組成物を硬化させる手段としては、加熱硬化または活性エネルギー線による硬化が挙げられ、これらの中でも活性エネルギー線による硬化が好ましい。
本発明の硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0096】
<硬化型組成物の調製>
本発明の硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、重合性モノマー、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液にさらに重合性モノマー、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0097】
<粘度>
本発明の硬化型組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3〜40mPa・sが好ましく、5〜15mPa・sがより好ましく、6〜12mPa・sが特に好ましい。また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE−22Lにより、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃〜65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM−150IIIを用いることができる。
【0098】
<用途>
本発明の硬化型組成物の用途は、一般に硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
さらに、本発明の硬化型組成物は、インクとして用いて2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。この立体造形用材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよく、また、図2図3に示すような積層造形法(光造形法)において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。なお、図2は、本発明の硬化型組成物を所定領域に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う方法であり(詳細後述)、図3は、本発明の硬化型組成物5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射して所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成し、これを順次積層して立体造形を行う方法である。
本発明の硬化型組成物を用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や照射手段等を備えるものが挙げられる。
また、本発明は、硬化型組成物を硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0099】
(硬化型インク)
本発明の硬化型インクは、本発明の硬化型組成物を含有する。
前記硬化型組成物としては、本発明の硬化型組成物と同様のものを用いることができる。
【0100】
前記硬化型インクとしては、インクジェット用であることが好ましい。
【0101】
<組成物収容容器>
本発明の組成物収容容器は、硬化型組成物が収容された状態の容器を意味し、上記のような用途に供する際に好適である。例えば、本発明の硬化型組成物がインク用途である場合において、当該インクが収容された容器は、インクカートリッジやインクボトルとして使用することができ、これにより、インク搬送やインク交換等の作業において、インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、または容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【0102】
本発明の2次元又は3次元の像形成装置は、前記硬化型組成物、及び前記硬化型インクの少なくともいずれかを収容する収容部と、エネルギーを付与するための付与手段と、を有する。
本発明の2次元又は3次元の像形成方法は、前記硬化型組成物、及び前記硬化型インクの少なくともいずれかにエネルギーを付与して2次元又は3次元の像を形成する。
【0103】
<像の形成方法、形成装置>
本発明の像の形成方法は、活性エネルギー線を用いてもよいし、加温なども挙げられる。本発明の硬化型組成物を活性エネルギー線で硬化させるためには、活性エネルギー線を照射する照射工程を有し、本発明の像の形成装置は、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、本発明の硬化型組成物を収容するための収容部と、を備え、該収容部には前記容器を収容してもよい。さらに、硬化型組成物を吐出する吐出工程、吐出手段を有していてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
図1は、インクジェット吐出手段を備えた像形成装置の一例である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色硬化型インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える各色印刷ユニット23a、23b、23c、23dにより、供給ロール21から供給された被記録媒体22にインクが吐出される。その後、インクを硬化させるための光源24a、24b、24c、24dから、活性エネルギー線を照射して硬化させ、カラー画像を形成する。その後、被記録媒体22は、加工ユニット25、印刷物巻取りロール26へと搬送される。各印刷ユニット23a、23b、23c、23dには、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。また必要に応じて、接触又は非接触により記録媒体を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する記録媒体に対し、ヘッドを移動させて記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
被記録媒体22は、特に限定されないが、紙、フィルム、セラミックスやガラス、金属、これらの複合材料等が挙げられ、シート状であってもよい。また片面印刷のみを可能とする構成であっても、両面印刷も可能とする構成であってもよい。一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、ダンボール、壁紙や床材等の建材、コンクリート、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。
更に、光源24a、24b、24cからの活性エネルギー線照射を微弱にするか又は省略し、複数色を印刷した後に、光源24dから活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、省エネ、低コスト化を図ることができる。
本発明のインクにより記録される記録物としては、通常の紙や樹脂フィルムなどの平滑面に印刷されたものだけでなく、凹凸を有する被印刷面に印刷されたものや、金属やセラミックなどの種々の材料からなる被印刷面に印刷されたものも含む。また、2次元の画像を積層することで、一部に立体感のある画像(2次元と3次元からなる像)や立体物を形成することもできる。
図2は、本発明に係る別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である。図2の像形成装置39は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット30から第一の硬化型組成物を、支持体用吐出ヘッドユニット31、32から第一の硬化型組成物とは組成が異なる第二の硬化型組成物を吐出し、隣接した紫外線照射手段33、34でこれら各組成物を硬化しながら積層するものである。より具体的には、例えば、造形物支持基板37上に、第二の硬化型組成物を支持体用吐出ヘッドユニット31、32から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて溜部を有する第一の支持体層を形成した後、当該溜部に第一の硬化型組成物を造形物用吐出ヘッドユニット30から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動なステージ38を下げながら複数回繰り返すことで、支持体層と造形物層を積層して立体造形物35を製作する。その後、必要に応じて支持体積層部36は除去される。なお、図2では、造形物用吐出ヘッドユニット30は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
【0104】
(硬化物)
前記硬化物は、本発明の硬化型組成物、及び本発明の硬化型インクの少なくともいずれかを用いて形成される。
前記硬化型組成物としては、前記硬化型組成物と同様のものを用いることができる。
前記硬化型インクとしては、前記硬化型インクと同様のものを用いることができる。
【0105】
(加飾体)
前記加飾体は、基材上に硬化物からなる表面加飾が施されてなり、前記硬化物と同様のものを用いることができる。
【0106】
前記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチックが好ましい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
また、H−NMRスペクトルは、H−NMR(500MHz)(装置名:ECX500、日本電子株式会社製)を用いて測定した。IRスペクトルは、FT−IR(装置名:SpectrumGX、PERKIN ELMER社製)を用いて測定した。
【0108】
(実施例1a)
東京化成工業株式会社製の2−(メチルアミノ)エタノール15.02g(200mmol)を脱水ジクロロメタン200mL中に加え、トリエチルアミン46.8g(462mmol)を加えた。次に、ドライアイス−アセトン混合物中で約−60℃まで冷却した後、和光純薬工業株式会社製のアクリル酸クロリド15.39g(170mmol)を脱水ジクロロメタン8mLで希釈してゆっくりと滴下し、室温下で2時間攪拌した。再度、ドライアイス−アセトン混合物中で約−60℃に冷却し、アセチルクロリド15.7g(200mmol)を脱水ジクロロメタン8mLで希釈してゆっくりと滴下した後に、室温下で約2時間攪拌した。更に、析出物を濾過により除去した後、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次に、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して油状物を得た。更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(a1−1)で表される硬化性化合物の淡茶色油状物6.1g(収率:約21%)を得た。
【0109】
【化46】
【0110】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ2.04−2.08(m,3H),3.04−3.15(m,3H),3.63−3.71(m,2H),4.20−4.27(m,2H),5.69−5.72(m,1H),6.32−6.37(m,1H),6.56−6.63(m,1H)
IR(NaCl):3474,2957,1740,1649,1612,1450,1418,1407,1378,1235,1137,1047,981,795,605cm−1
【0111】
(実施例2a)
東京化成工業株式会社製の2−(メチルアミノ)エタノール6.01g(80mmol)を脱水ジクロロメタン120mL中に加え、トリエチルアミン18.7g(185mmol)を加えた。次に、氷−NaCl混合物中で約−15℃まで冷却した後、和光純薬工業株式会社製のアクリル酸クロリド6.15g(68mmol)を脱水ジクロロメタン4.5mLで希釈してゆっくりと滴下し、室温下で2.5時間攪拌した。再度、氷−NaCl混合物中で約−15℃に冷却し、イソブチルクロリド8.52g(80mmol)を脱水ジクロロメタン4.5mLで希釈してゆっくりと滴下した後に、室温下で約3.5時間攪拌した。更に、析出物を濾過により除去した後、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次に、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して油状物を得た。更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 360gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(a1−4)で表される硬化性化合物の淡黄色油状物2.2g(収率:約16%)を得た。
【0112】
【化47】
【0113】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ1.15−1.20(m,6H),2.52−2.57(m,1H),3.05−3.15(m,3H),3.65−3.71(m,2H),4.20−4.27(m,2H),5.69−5.72(m,1H),6.31−6.38(m,1H),6.55−6.65(m,1H)
IR(NaCl):3474,2975,1734,1649,1613,1471,1417,1343,1260,1191,1156,1082,981,795,753cm−1
【0114】
(実施例3a)
東京化成工業株式会社製の2−(t−ブチルアミノ)エタノール11.72g(100mmol)を脱水ジクロロメタン110mL中に加え、トリエチルアミン23.07g(228mmol)を加えた。次に、氷−NaCl混合物中で約−15℃まで冷却した後、和光純薬工業株式会社製のアクリル酸クロリド8.14g(90mmol)を脱水ジクロロメタン4mLで希釈してゆっくりと滴下し、室温下で3時間攪拌した。再度、氷−NaCl混合物中で約−15℃に冷却し、アセチルクロリド7.85g(100mmol)を脱水ジクロロメタン4mLで希釈してゆっくりと滴下した後に、室温下で約1.5時間攪拌した。更に、析出物を濾過により除去した後、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次に、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して油状物を得た。更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 320gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(a6−1)で表される硬化性化合物の淡黄色油状物0.94g(収率:約4.9%)を得た。
【0115】
【化48】
【0116】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ1.48(s,9H),2.06(s,3H),3.63(t,2H),4.14(t,2H),5.62(dd,1H),6.26(dd,1H),6.63−6.69(m,1H)
IR(NaCl):2966,1743,1650,1612,1415,1368,1234,1105,1051,981,798cm−1
【0117】
(実施例4a)
東京化成工業株式会社製のサルコシン酸メチルエステル・塩酸塩8.37g(60mmol)を脱水ジクロロメタン100mL中に加え、トリエチルアミン17.49g(172mmol)を加えた。次に、氷−NaCl混合物中で約−15℃まで冷却した後、和光純薬工業株式会社製のアクリル酸クロリド6.52g(72mmol)を脱水ジクロロメタン4mLで希釈してゆっくりと滴下し、室温下で3時間攪拌した。更に、析出物を濾過により除去した後、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次に、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して油状物を得た。更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d1−1)で表される硬化性化合物の淡黄色油状物4.69g(収率:約50%)を得た。
【0118】
【化49】
【0119】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ3.05/3.16(s,3H),3.75/3.78(s,3H),4.13/4.20(s,2H),5.68−5.76(m,1H),6.28−6.44/6.61−6.66(m,2H)
IR(NaCl):3484,2955,1748,1650,1614,1482,1459,1437,1420,1367,1280,1212,1125,1060,1010,981,940,890,847,797,709,555cm−1
【0120】
(実施例5a)
東京化成工業株式会社製のサルコシン酸エチルエステル・塩酸塩12.29g(80mmol)を脱水ジクロロメタン110mL中に加え、トリエチルアミン22.34g(220mmol)を加えた。次に、氷−NaCl混合物中で約−15℃まで冷却した後、和光純薬工業株式会社製のアクリル酸クロリド8.69g(96mmol)を脱水ジクロロメタン5mLで希釈してゆっくりと滴下し、室温下で3時間攪拌した。更に、析出物を濾過により除去した後、濾液を水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄した。次に、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧下で濃縮して油状物を得た。更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d1−2)で表される硬化性化合物の淡黄色油状物7.58g(収率:約55%)を得た。
【0121】
【化50】
【0122】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ1.26−1.31(m,3H),3.06/3.16(s,3H),4.11−4.25(m,4H),5.68−5.76(m,1H),6.28−6.44/6.61−6.66(m,2H)
IR(NaCl):3483,2984,1745,1653,1614,1477,1419,1375,1280,1201,1123,1032,980,797cm−1
【0123】
(実施例6a)
東京化成工業株式会社製のメチルアミン7%テトラヒドロフラン(以下、「THF」とも称することがある)溶液31.05g(70mmol)、THF15mLに炭酸カリウム9.68g(70mmol)を加えて室温下で撹拌し、東京化成工業株式会社製のクロロ酢酸n−ブチル11.60g(77mmol)をTHF5mLに溶かした溶液に滴下して反応させ、反応液を得た。次に、得られた反応液を濾過して、得られた濾液に、炭酸カリウム9.68g(70mmol)を水50mLで溶かした溶液を加えて氷浴中で冷却した。アクリル酸クロリド6.96g(77mmol)をゆっくり滴下した後、室温下で2時間撹拌した。その後、酢酸エチルを用いて、抽出により各層に分離させ、酢酸エチル層を分取した。得られた酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することで無色溶液13.3gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d1−4)で表される硬化性化合物の無色液体5.5g(収率:約39%)を得た。
【0124】
【化51】
【0125】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ0.93(t,3H),1.34−1.42(m,2H),1.59−1.66(m,2H),3.06/3.16(s,3H),4.11−4.19(m,4H),5.68−5.76(m,1H),6.28−6.44/6.60−6.66(m,2H)
IR(NaCl):2961,2936,2874,1747,1655,1617,1466,1418,1378,1362,1308,1279,1198,1122,1061,1031,979,797cm−1
【0126】
(実施例7a)
東京化成工業株式会社製のメチルアミン7%THF溶液31.05g(70mmol)、THF15mLに炭酸カリウム9.68g(70mmol)を加えて室温下で撹拌し、東京化成工業株式会社製のクロロ酢酸イソプロピル10.52g(77mmol)をTHF5mLに溶かした溶液を滴下して反応させ、反応液を得た。次に、得られた反応液を濾過して、得られた濾液に、炭酸カリウム9.68g(70mmol)を水50mLで溶かした溶液を加えて氷浴中で冷却した。アクリル酸クロリド6.96g(77mmol)をゆっくり滴下した後、室温下で2時間撹拌した。その後、酢酸エチルを用いて、抽出により各層に分離させ、酢酸エチル層を分取した。得られた酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することで無色溶液8.4gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d1−5)で表される硬化性化合物の無色液体3.9g(収率:約30%)を得た。
【0127】
【化52】
【0128】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ1.26(d,6H),3.05/3.15(s,3H),4.07/4.16(s,2H),5.04−5.10(m,1H),5.67−5.75(m,1H),6.28−6.44/6.61−6.66(m,2H)
IR(NaCl):2938,2982,1741,1655,1617,1467,1418,1374,1279,1211,1107,1060,980,957,900,837,797,726cm−1
【0129】
(実施例8a)
東京化成工業株式会社製のn−プロピルアミン5.25g(88.8mmol)を酢酸エチル60mLに溶解し、炭酸カリウム12.27g(88.8mmol)を加えた。次に、東京化成工業株式会社製のクロロ酢酸エチル10.88g(88.8mmol)を酢酸エチル10mLに溶かした溶液を室温下で滴下し、4時間撹拌して反応させ、反応液を得た。次に、得られた反応液を濾過して析出した塩を除去した後、濃縮して無色溶液を12.3g得た。この溶液を室温下で放置しておき析出した無色結晶を酢酸エチルで洗って乾燥させることで、N−プロピルサルコシンエチルエステルを5.8g得た。この化合物をそのまま下記反応に用いた。
N−プロピルサルコシンエチルエステル5.8g(40mmol)に水10mLを加え、次に、炭酸カリウム6.08g(44mmol)を水20mLに溶かした溶液を加えて氷浴中で冷却した。アクリル酸クロリド3.98g(44mmol)をゆっくり滴下し、室温下で2時間撹拌した。その後、酢酸エチルを用いて、抽出により各層に分離させ、酢酸エチル層を分取した。得られた酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することで無色溶液7.0gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d3−2)で表される硬化性化合物の無色液体4.9g(収率:約62%)を得た。
【0130】
【化53】
【0131】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ0.90−0.95(m,3H),1.26−1.30(m,3H),1.56−1.71(m,2H),3.37−3.44(m,2H),4.08/4.12(s,2H)4.18−4.25(m,2H),5.67−5.74(m,1H),6.28−6.42/6.58−6.63(m,2H)
IR(NaCl):2968,2937,2877,1749,1653,1616,1442,1406,1374,1233,1198,1185,1025,979,796cm−1
【0132】
(実施例9a)
東京化成工業株式会社製のイソプロピルアミン2.95g(50mmol)を酢酸エチル50mLに溶解し、炭酸カリウム6.91(50mmol)を加えて室温下で撹拌した。次に、東京化成工業株式会社製のクロロ酢酸メチル5.43g(50mmol)を酢酸エチル5mLに溶かした溶液を室温下で滴下して2時間撹拌して反応させ、反応液を得た。次に、得られた反応液を濾過して析出した塩を除去した後、炭酸カリウム6.91g(50mmol)を水50mLに溶かした水溶液を加えた。氷浴で冷却した後、アクリル酸クロリド4.98g(55mmol)をゆっくり滴下し、室温下で2時間攪拌した。その後、酢酸エチルを用いて、抽出により各層に分離させ、酢酸エチル層を分取した。得られた酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮することで無色溶液9.8gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d4−1)で表される硬化性化合物の無色液体3.7g(収率:約40%)を得た。
【0133】
【化54】
【0134】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ1.11/1.22(d,6H),3.74/3.77(s,3H),3.99(s,2H),4.26−4.32(m,1H),5.66−5.73(m,1H),6.31−6.35/6.62−6.67(m,2H)
IR(NaCl):2974,1755,1645,1612,1542,1446,1368,1341,1205,1129,1884,1062,985,797cm−1
【0135】
(実施例10a)
東京化成工業株式会社製のイソプロピルアミン2.95g(50mmol)、酢酸エチル50mL、炭酸カリウム6.91g(50mmol)の混合物に、東京化成工業株式会社製のイソプロピルクロロアセテート6.83(50mmol)を酢酸エチル5mLで希釈した溶液を滴下して反応させ、反応液を得た。次に、得られた反応液を濾過して、析出した塩を除去した後、炭酸カリウム6.91g(50mmol)を水50mLに溶かした水溶液を加えた。氷浴で冷却した後、アクリル酸クロリド4.98g(55mmol)をゆっくり滴下し、室温下で2時間攪拌した。その後、酢酸エチルを用いて、抽出により各層に分離させ、酢酸エチル層を分取した。得られた酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することで無色溶液8.5gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d4−5)で表される硬化性化合物の無色液体1.3g(収率:約12%)を得た。
【0136】
【化55】
【0137】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ1.11/1.21(d,6H),1.25(d,6H),3.95(s,2H),4.28/4.93(m,1H),5.05(m,1H),5.65−5.71(m,1H),6.29−6.34/6.61−6.67(m,2H)
IR(NaCl):2981,2939,2879,1746,1650,1614,1465,1443,1373,1340,1286,1256,1202,1146,1108,1084,1060,1010,977,958,900,836,796,757,718cm−1
【0138】
(実施例11a)
東京化成工業株式会社製のn−ヘキシルアミン8.10g(80mmol)、酢酸エチル55mL、炭酸カリウム11.3g(81.8mmol)の混合物に、東京化成工業株式会社製のクロロ酢酸メチル9.55g(88mmol)を滴下して反応させ、反応液を得た。次に、得られた反応液を濾過して、析出した塩を除去した後、炭酸カリウム11.05g(80mmol)を水80mLに溶かした水溶液を加えた。氷浴で冷却した後、アクリル酸クロリド8.0g(88mmol)をゆっくり滴下し、室温下で2時間攪拌した。その後、酢酸エチルを用いて、抽出により各層に分離させ、酢酸エチル層を分取した。得られた酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することで無色溶液16.1gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d6−1)で表される硬化性化合物の無色液体3.5g(収率:約19%)を得た。
【0139】
【化56】
【0140】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ0.89(t,3H),1.26−1.33(m,6H),1.58−1.61(m,2H),3.40/3.44(t,2H),3.74/3.77(s,3H),4.10/4.13(s,2H),5.67−5.75(m,1H),6.29−6.42/6.57−6.62(m,2H)
IR(NaCl):2955,2931,2858,1753,1653,1616,1439,1406,1373,1250,1206,1178,1138,1063,979,796cm−1
【0141】
(実施例12a)
東京化成工業株式会社製のn−ヘキシルアミン5.06g(50mmol)、酢酸エチル50mL、炭酸カリウム6.91g(50mmol)の混合物に、東京化成工業株式会社製のn−ブチルクロロアセテート7.53g(50mmol)を酢酸エチル5mLで希釈した溶液を滴下して反応させ、反応液を得た。次に、得られた反応液を濾過して、析出した塩を除去した後、炭酸カリウム6.91g(50mmol)を水50mLに溶かした水溶液を加えた。氷浴で冷却した後、アクリル酸クロリド4.98g(55mmol)をゆっくり滴下し、室温下で2時間攪拌した。その後、酢酸エチルを用いて、抽出により各層に分離させ、酢酸エチル層を分取した。得られた酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮することで無色溶液13.4gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(d6−4)で表される硬化性化合物の無色液体5.8g(収率:約43%)を得た。
【0142】
【化57】
【0143】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ0.88−1.62(m,18H),3.40/3.44(t,2H),4.05/4.08(s,2H),4.14(t,2H),5.66−5.74(m,1H),6.29−6.41/6.56−6.62(m,2H)
IR(NaCl):2958,2931,2882,2860,1748,1652,1614,1539,1456,1377,1196,1137,1064,1022,977,795,725cm−1
【0144】
(実施例13a)
Combi−Blocks社製のN−メチル−DL−アラニン6.19g(60mmol)をメタノール40mLと混合して得られたスラリーを氷浴中で冷却した後、塩化チオニル14.28g(120mmol)をゆっくり滴下して反応させ、反応液を得た。滴下途中で反応液は透明な溶液となり、そのまま室温下で一晩攪拌した。次に、得られた反応液を濃縮し、N−メチル−DL−アラニンのメチルエステル塩酸塩を無色粘調性液体8.3gとして得た。得られたN−メチル−DL−アラニンのメチルエステル塩酸塩はそのまま次の反応に用いた。
N−メチル−DL−アラニンのメチルエステル塩酸塩8.3g(54mmol)を水20mLに溶解し、炭酸カリウム11.94g(86.5mmol)を水20mLに溶かした水溶液を加え、室温下で1時間攪拌した。氷浴中で冷却した後、アクリル酸クロリド5.38g(59.4mmol)をゆっくり滴下し、室温下で2時間攪拌した。その後、酢酸エチルを用いて、抽出により各層に分離させ、酢酸エチル層を分取した。得られた酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、濃縮して淡黄色液体6.0gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(g1−1)で表される硬化性化合物の無色液体4.1g(収率:約44%)を得た。
【0145】
【化58】
【0146】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ1.43/1.49(d,3H),2.91/3.03(s,3H),3.72/3.75(s,3H),4.68/5.29(q,1H),5.68−5.76(m,1H),6.22−6.39(m,1H),6.49−6.63(m,1H)
IR(NaCl):2989,2952,1742,1651,1614,1446,1416,1332,1281,1211,1096,981,845,796cm−1
【0147】
(実施例14a)
Combi−Blocks社製のN−メチル−DL−アラニン6.19g(60mmol)をエタノール40mLと混合して得られたスラリーを氷浴中で冷却した後、塩化チオニル14.28g(120mmol)をゆっくり滴下して反応させ、反応液を得た。滴下途中で反応液は透明な溶液となり、その後白色固体が析出してスラリー状態となった。そのまま室温下で一晩攪拌すると白色固体が溶解して透明になった。得られた反応液を濃縮し、N−メチル−DL−アラニンのエチルエステル塩酸塩の無色固体物10.3gを得た。得られたN−メチル−DL−アラニンのエチルエステル塩酸塩はそのまま次の反応に用いた。
次に、N−メチル−DL−アラニンのエチルエステル塩酸塩10.3g(61.4mmol)を水12mLに溶解し、炭酸カリウム15.28g(110.6mmol)を水25mLに溶かした水溶液を加え、室温下で1時間攪拌した。氷浴中で冷却した後、アクリル酸クロリド6.11g(67.5mmol)をゆっくり滴下し、室温下で2時間撹拌した。その後、酢酸エチルを用いて、抽出により各層に分離させ、酢酸エチル層を分取した。得られた酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、濃縮して淡黄色液体11.5gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(g1−2)で表される硬化性化合物の無色液体8.1g(収率:約71%)を得た。
【0148】
【化59】
【0149】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ1.27(t,3H),1.43/1.48(d,3H),2.91/3.03(s,3H),4.14−4.22(m,2H),4.66/5.29(q,1H),5.67−5.75(m,1H),6.22−6.38(m,1H),6.50−6.63(m,1H)
IR(NaCl):2984,2941,1738,1651,1613,1447,1416,1378,1329,1281,1203,1094,1023,981,859,796cm−1
【0150】
(実施例15a)
Combi−Blocks社製のN−メチル−DL−アラニン6.19g(60mmol)をイソプロピルアルコール40mLと混合して得られたスラリーを氷浴中で冷却した後、塩化チオニル14.28g(120mmol)をゆっくり滴下して反応させ、反応液を得た。滴下途中で反応液は透明な溶液となり、その後白色固体が析出してスラリー状態となった。そのまま室温下で一晩攪拌したが、白色固体は溶解せず、スラリー状態のままであった。得られた反応液を濃縮し、N−メチル−DL−アラニンのイソプロピルエステル塩酸塩の無色固体物10.0gを得た。得られたN−メチル−DL−アラニンのイソプロピルエステル塩酸塩はそのまま次の反応に用いた。
次に、N−メチル−DL−アラニンのイソプロピルエステル塩酸塩10.0g(55mmol)を水12mLに溶解し、炭酸カリウム13.69g(99.1mmol)を水25mLに溶かした水溶液を加え、室温下で1時間攪拌した。氷浴中で冷却した後、アクリル酸クロリド5.48g(60.6mmol)をゆっくり滴下し、室温下で2時間撹拌した。その後、酢酸エチルを用いて、抽出により各層に分離させ、酢酸エチル層を分取した。得られた酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、濃縮して淡茶色液体5.5gを得た。
更に、和光純薬工業株式会社製のシリカゲルC−300 300gを充填し、溶出液としてヘキサンと酢酸エチルを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製して、下記構造式(g1−5)で表される硬化性化合物の淡茶色液体1.9g(収率:約17%)を得た。
【0151】
【化60】
【0152】
同定データは次に示すとおりである。
H−NMR(CDCl):δ1.25(d,6H),1.41/1.46(d,3H),2.90/3.02(s,3H),4.99−5.07(m,1H),4.62/5.27(q,1H),5.67−5.75(m,1H),6.22−6.38(m,1H),6.50−6.63(m,1H)
IR(NaCl):2982,2940,1735,1652,1614,1466,1453,1415,1375,1325,1281,1207,1109,1018,981,910,865,828,796cm−1
【0153】
(比較例1a)
市販の下記構造式(1)で表されるN,N−ジエチルアクリルアミド(KJケミカルズ株式会社製)を比較例1aの化合物とした。
【0154】
【化61】
【0155】
(比較例2a)
特開2015−13980号公報に記載の実施例1と同様の方法により、下記構造式(2)で表されるアクリルアミドを合成し、比較例2aの化合物とした。
【0156】
【化62】
【0157】
(比較例3a)
特開2015−13980号公報に記載の実施例5と同様の方法により、下記構造式(3)で表されるアクリルアミドを合成し、比較例3aの化合物とした。
【0158】
【化63】
【0159】
得られた硬化性化合物について、粘度、臭気のなさ、及び安全性を、以下のようにして評価した。結果を下記表1に示す。
【0160】
<粘度の測定>
得られた硬化性化合物の粘度を、コーンプレート型回転粘度計(装置名:VISCOMETER TVE−22L、東機産業株式会社製)により、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を25℃にて測定した。
【0161】
<臭気の評価>
得られた硬化性化合物の臭気を、次の(1)〜(3)の手順により確認し、下記評価基準に基づいて、「臭気のなさ」を評価した。
(1)50mLのサンプル瓶(ガラス瓶)に、約100mg(0.1g)の各化合物を秤り取り、フタをした。
(2)室温条件下で、約30分間放置した。
(3)サンプル瓶(ガラス瓶)に鼻を近づけて、フタを開けた時の臭気を嗅いだ。
〔評価基準〕
○:臭いを感じない又は感じても不快ではない
△:特有の臭気により不快感が生じる
×:特有の臭気により強い不快感が生じる
【0162】
<安全性の評価>
実施例1a、実施例4a、比較例1a、及び比較例2aの硬化性化合物について、毒性等級法による急性経口毒性試験(OECD TG423)に準拠した限度試験を以下のようにして行い、安全性を評価した。
【0163】
[急性経口毒性試験に準拠した限度試験]
<<使用動物>>
被験物質である本発明の硬化性化合物について、使用動物として5週齢のSlc:Wistar/ST系のラットの雌24匹を日本エスエルシー株式会社より取り寄せた。使用動物に対し、1週間の馴化を行った。馴化期間中、全ての動物に異常は認められなかった。
投与開始2日前に測定した体重を用いて、体重層別無作為抽出法で、個体の体重が全体の平均体重±20%以内となるように4群(6匹/群)に群分けした。群分けにより外れた動物は試験から除外した。
使用した動物は、試験期間を通して尾部への油性インク塗布により識別し、併せてケージはラベルをつけて識別した。
【0164】
<<飼育環境>>
使用動物は、検疫、馴化期間中を含む全飼育期間を通して、温度19℃〜25℃、相対湿度40%〜70%、換気回数10回〜15回/時間、明暗サイクル12時間間隔(7時点灯〜19時消灯)に設定したバリアーシステムの飼育室で飼育した。
飼育ケージはポリカーボネート製ケージを使用した。使用動物は6匹/ケージで飼育した。
飼料は、マウス、ラット用固型試料(商品名:ラボMRストック、日本農産工業株式会社製)を使用し、使用動物に自由摂取させた。
ケージ及び床敷は、群分け時、及び飼育室からの搬出時に交換し、給水びん及びラックは、群分け時に交換した。
【0165】
[試験方法]
<<群構成>>
限定試験で使用した群構成を以下に示す。
・第1群 実施例1a:被験物質 構造式(a1−1)で表される硬化性化合物、投与量:2,000mg/kg体重、使用動物数:6匹
・第2群 実施例4a:被験物質 構造式(d1−1)で表される硬化性化合物、投与量:2,000mg/kg体重、使用動物数:6匹
・第3群 比較例1a:被験物質 構造式(1)で表されるN,N−ジエチルアクリルアミド、投与量:2,000mg/kg体重、使用動物数:6匹
・第4群 比較例2a:被験物質 構造式(2)で表されるアクリルアミド、投与量:2,000mg/kg体重、使用動物数:6匹
【0166】
<<被験物質の調製>>
被験物質100mgをメスフラスコに秤量し、溶媒として水を加えて1mLに定量し、調整濃度100mg/mLの調製液とした。被験物質調製液は、投与日に調製した。
【0167】
<<投与>>
投与前に約17時間、使用動物に飼料を与えず、水のみ与え、絶食させた。絶食後に体重を測定し、胃ゾンデを用いて被験物質を単回強制経口投与した。投与後、更に3時間〜4時間飼料を与えなかった。
投与は2,000mg/kg体重の1用量で行い、1被験物質につき、6匹の使用動物を用いた。
【0168】
<<観察>>
試験に使用した全動物について、投与開始日から14日間、1日1回以上観察した。なお、観察日の起算法は、投与開始日を1日目とした。
試験期間に死亡した動物の数を求めた。
【0169】
【表1】
【0170】
前記表1の結果から、実施例1aから15aの硬化性化合物は粘度が低く、また臭気が少なく取扱いやすく、更に安全性が高いことがわかる。
【0171】
(実施例1b〜15b、及び比較例1b〜3b)
−硬化型組成物の作製−
実施例1a〜15a、及び比較例1a〜3aの各硬化性化合物950mgと、重合開始剤(商品名:IRGACURE 907、成分名:2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、BASFジャパン株式会社製)50mgを、マグネティックスターラーを用いて混合し、実施例1b〜15b及び比較例1b〜3bの硬化型組成物を作製した。
【0172】
上記実施例1b〜15b及び比較例1b〜3bの各硬化型組成物の重合性と硬化性を、下記のようにして評価した。結果を下記表2に示す。
【0173】
<重合性の評価>
示差走査熱量計(装置名:DSC−7020、セイコーインスツル株式会社製)と、スポット光源(装置名:LA−410UV、林時計工業株式会社製)を組み合わせた測定装置を用いて、各硬化型組成物の「重合性」を評価した。
具体的には、硬化性化合物の重合が終了するのに十分な時間、波長365nmの紫外線を200mW/cmで照射した場合の発熱量を、一つの試料に対して二度測定した。
一回目の測定で得られる発熱量は、硬化性化合物の重合に伴う発熱量に加えて、紫外線照射に伴う発熱量も含んでいる。そこで、一回目の測定で重合が終了している試料に対して、同じ条件で再度紫外線を照射して硬化性化合物の重合に伴う発熱量以外の発熱量を測定した。そして、一回目と二回目の発熱量の差から、硬化性化合物の重合に伴う発熱量を算出した。このとき、紫外線照射の開始から最大発熱量に到達するまでの時間をT[秒]として、重合の速さを比較する指標とした。
【0174】
<硬化性の評価>
粘弾性測定装置(装置名:MCR302、Anton−Parr社製)とオプションのUV硬化測定セル、LED光源(商品名:LIGHTNINGCURE LC−L1、浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、各硬化型組成物の硬化性を評価した。
具体的には、直径20mmのコーンプレートを用いて10μmのギャップに試料を挟んだ後、波長365nmの紫外線を50mW/cmで照射し、弾性率が飽和するまで粘弾性の変化を測定した。測定結果から飽和貯蔵弾性率の最大値を求め、硬化レベルの指標とした。
また、貯蔵弾性率が飽和するまでに照射された紫外線のエネルギー、即ち、硬化エネルギーは、紫外線の強度(50mW/cm)と、紫外線を照射した時間[秒]との積から算出した。
【0175】
【表2】
【0176】
前記表2の結果から、実施例1a〜15aの硬化性化合物を用いた実施例1b〜15bの硬化型組成物は、重合性と硬化性のバランスに優れていることがわかる。これは、環構造を有しない3級アクリルアミド構造により低粘度が実現されるとともに、分子内に導入されているエステル構造により揮発性が抑えられ、臭気の低減と低粘度とを両立していると考えられる。また、このエステル構造により、反応性及び硬化性にも優れ、臭気低減、安全性、低粘度とあわせて非常にバランスのよい硬化型組成物が提供される。
【0177】
(実施例1c〜15c)
−ブラックインクの作製−
実施例1a〜15aの硬化性化合物100質量部、重合開始剤(商品名:IRGACURE 907、BASFジャパン株式会社製)10質量部、及びカーボンブラック(商品名:MICROLITH Black C−K、BASFジャパン株式会社製)3質量部を混合して、実施例1c〜15cのブラックインクを得た。
【0178】
(実施例1d〜15d)
−青色インクの作製−
実施例1a〜15aの硬化性化合物100質量部、重合開始剤(商品名:IRGACURE 907、BASFジャパン株式会社製)10質量部、及び青色顔料(商品名:MICROLITH Blue 4G−K、BASFジャパン株式会社製)3質量部を混合し、実施例1d〜15dの青色インクを得た。
【0179】
<インクの硬化性評価1>
スライドガラス上に、実施例1c〜15c、及び実施例1d〜15dの各インクをインクジェット記録装置(株式会社リコー製、ヘッド:リコープリンティングシステムズ株式会社製GEN4)を用いて、インクジェット吐出した後、UV照射機(装置名:LH6、フュージョン・システムズ・ジャパン株式会社製)を用いて、波長が365nmの紫外線を200mW/cmで照射し硬化させた。
その結果、各インクは、問題なくインクジェット吐出することが可能であり、インク画像が十分に硬化していた。
また、各インクは、実質的に実施例1b〜15bの各硬化型組成物を用いたものに相当するが、念のため各硬化型組成物の場合と同様にして重合性と硬化性を測定したところ、いずれも実施例1b〜15bの硬化型組成物と同様に優れていることが確認された。
【0180】
<インクの硬化性評価2>
つけペンのペン先を実施例1c〜15c、及び実施例1d〜15dの各インクに浸し、PETフィルム及び普通紙に文字を書いた後、UV照射機(装置名:LH6、フュージョン・システムズ・ジャパン株式会社製)を用いて、波長365nmの紫外線を200mW/cmで照射し硬化させた。
その結果、インク画像は十分に硬化していた。
【0181】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 下記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物を含有することを特徴とする硬化型組成物である。
【化64】
ただし、前記一般式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。
【化65】
ただし、前記一般式(2)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化66】
ただし、前記一般式(3)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
<2> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記一般式(4)で表される化合物である前記<1>に記載の硬化型組成物である。
【化67】
ただし、前記一般式(4)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xは炭素数1〜3のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。
<3> 前記一般式(4)中のRが炭素数1〜3のアルキル基、及びRが炭素数1〜3のアルキル基である前記<2>に記載の硬化型組成物である。
<4> 前記一般式(4)中のXがメチレン基、及びメチルメチレン基のいずれかである前記<2>から<3>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
<5> 前記一般式(4)で表されるアクリルアミド化合物が、下記構造式(d1−1)、下記構造式(d1−2)、下記構造式(g1−1)、下記構造式(g1−2)、及び下記構造式(g1−5)で表される化合物の少なくともいずれかである前記<2>から<4>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
【化68】
【化69】
【化70】
【化71】
【化72】
<6> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記構造式(a1−1)で表される化合物である前記<1>に記載の硬化型組成物である。
【化73】
<7> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記構造式(a1−4)で表される化合物である前記<1>に記載の硬化型組成物である。
【化74】
<8> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記構造式(a6−1)で表される化合物である前記<1>に記載の硬化型組成物である。
【化75】
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型組成物を含有することを特徴とする硬化型インクである。
<10> インクジェット用である前記<9>に記載に記載の硬化型インクである。
<11> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型組成物、及び前記<9>から<10>のいずれかに記載の硬化型インクの少なくともいずれかを収容してなることを特徴とする収容容器である。
<12> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型組成物、及び前記<9>から<10>のいずれかに記載の硬化型インクの少なくともいずれかを収容する収容部と、エネルギーを付与するための付与手段と、を有することを特徴とする2次元又は3次元の像形成装置である。
<13> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型組成物、及び前記<9>から<10>のいずれかに記載の硬化型インクの少なくともいずれかにエネルギーを付与して2次元又は3次元の像を形成することを特徴とする2次元又は3次元の像形成方法である。
<14> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型組成物、及び前記<9>から<10>のいずれかに記載の硬化型インクの少なくともいずれかを用いて形成されることを特徴とする硬化物である。
<15> 基材上に前記<14>に記載の硬化物からなる表面加飾が施されてなることを特徴とする加飾体である。
<16> 下記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物であることを特徴とする硬化性化合物である。
【化76】
ただし、前記一般式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xは炭素数1〜6のアルキレン基を表し、Yは下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。
【化77】
ただし、前記一般式(2)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
【化78】
ただし、前記一般式(3)中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を表し、*は前記Xとの結合部位を表す。
<17> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記一般式(4)で表される化合物である前記<16>に記載の硬化性化合物である。
【化79】
ただし、前記一般式(4)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Xは炭素数1〜3のアルキレン基を表し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。
<18> 前記一般式(4)中のRが炭素数1〜3のアルキル基、及びRが炭素数1〜3のアルキル基である前記<17>に記載の硬化性化合物である。
<19> 前記一般式(4)中のXがメチレン基、及びメチルメチレン基のいずれかである前記<17>から<18>のいずれかに記載の硬化性化合物である。
<20> 前記一般式(4)で表されるアクリルアミド化合物が、下記構造式(d1−1)、下記構造式(d1−2)、下記構造式(g1−1)、下記構造式(g1−2)、及び下記構造式(g1−5)で表される化合物の少なくともいずれかである前記<19>に記載の硬化性化合物である。
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
<21> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記構造式(a1−1)で表される化合物である前記<16>に記載の硬化性化合物である。
【化85】
<22> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記構造式(a1−4)で表される化合物である前記<16>に記載の硬化性化合物である。
【化86】
<23> 前記一般式(1)で表されるアクリルアミド化合物が、下記構造式(a6−1)で表される化合物である前記<16>に記載の硬化性化合物である。
【化87】
【0182】
前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型組成物、前記<9>から<10>のいずれかに記載の硬化型インク、前記<11>に記載の収容容器、前記<12>に記載の2次元又は3次元の像形成装置、前記<13>に記載の2次元又は3次元の像形成方法、前記<14>に記載の硬化物、前記<15>に記載の加飾体、及び前記<16>から<23>のいずれかに記載の硬化性化合物によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0183】
【特許文献1】特開2015−013980号公報
図1
図2
図3