(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定対象に供給するための測定用電流を供給する電流供給部と前記測定対象に生じた電圧を測定するための電圧測定部と前記電圧測定部により測定された測定電圧を前記測定用電流の電流値で除算することによって抵抗値を算出する抵抗算出部とを備える抵抗測定装置の校正方法であって、
(a)それぞれが予め設定された抵抗値を有する複数の設定抵抗が直列接続された直列抵抗部と、予め設定された基礎抵抗値Rsを有する基礎抵抗とが並列接続された基準抵抗器を準備する工程と、
(b)前記基準抵抗器の、前記基礎抵抗に対して前記電流供給部によって前記測定用電流を供給させる工程と、
(c)前記複数の設定抵抗のうちの一又は連続する一部の設定抵抗である選択抵抗部の両端間の電圧を、前記電圧測定部によって前記測定電圧として測定させる工程と、
(d)前記抵抗算出部によって、前記測定電圧を前記測定用電流の電流値で除算させることによって測定抵抗値Rxを算出させる工程と、
(e)下記の式(A)で示される基準抵抗値Rrefを、前記測定抵抗値Rxの目標である校正の目標値として取得する工程とを含む抵抗測定装置の校正方法。
基準抵抗値Rref=Rs×Rt/Rz ・・・(A)
但し、Rtは前記選択抵抗部の抵抗値、Rzは前記直列抵抗部全体の抵抗値である。
前記校正部は、前記測定抵抗値Rxを、下記の式(A)で示される基準抵抗値Rrefに近づけるように、前記抵抗測定装置を校正する請求項2又は3に記載の抵抗測定装置。
それぞれが予め設定された抵抗値を有する複数の設定抵抗が直列接続された直列抵抗部と予め設定された基礎抵抗値Rsを有する基礎抵抗とが並列接続された基準抵抗本体部と、
前記基礎抵抗の両端に接続され、測定用電流の入力を受け付けるための一対の電流入力端子と、
前記複数の設定抵抗相互間の接続点のうち少なくとも三か所にそれぞれ接続され、基準抵抗値Rrefに対応する電圧を測定するための電圧測定用端子とを備える基準抵抗器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、測定対象の抵抗が低抵抗である場合、低抵抗を測定可能な抵抗測定装置を校正するためには、低抵抗の基準抵抗器が必要になる。また、測定対象の抵抗値が変化した場合であっても高精度の抵抗測定を可能にするためには、校正用に、抵抗値の異なる複数の基準抵抗器が必要となる。
【0005】
しかしながら、1mΩ程度の低抵抗の抵抗器は入手が困難であり、市販されていても入手可能な抵抗値が限られ、適切な抵抗値を有する基準抵抗器を入手することが困難である。このような低抵抗の基準抵抗器を入手する方法として、例えば銅を適切な長さと太さに加工することで、任意の抵抗値を有する基準抵抗器を作成することが考えられる。しかしながら、銅は電子部品として市販されている抵抗器と比べて抵抗温度係数が大きい。そのため、銅を用いた抵抗器では、抵抗値の精度が低下するという不都合がある。また、所望の抵抗値にするために銅をある程度の太さと長さにする必要があり、銅を用いた低抵抗の抵抗器は、小型化するのが容易でない。
【0006】
本発明の目的は、低抵抗の基準抵抗値を得ることが容易な基準抵抗器、抵抗測定装置の校正方法、抵抗測定装置、及び基板検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る抵抗測定装置の校正方法は、測定対象に供給するための測定用電流を供給する電流供給部と前記測定対象に生じた電圧を測定するための電圧測定部と前記電圧測定部により測定された測定電圧を前記測定用電流の電流値で除算することによって抵抗値を算出する抵抗算出部とを備える抵抗測定装置の校正方法であって、(a)それぞれが予め設定された抵抗値を有する複数の設定抵抗が直列接続された直列抵抗部と、予め設定された基礎抵抗値Rsを有する基礎抵抗とが並列接続された基準抵抗器を準備する工程と、(b)前記基準抵抗器の、前記基礎抵抗に対して前記電流供給部によって前記測定用電流を供給させる工程と、(c)前記複数の設定抵抗のうちの一又は連続する一部の設定抵抗である選択抵抗部の両端間の電圧を、前記電圧測定部によって前記測定電圧として測定させる工程と、(d)前記抵抗算出部によって、前記測定電圧を前記測定用電流の電流値で除算させることによって測定抵抗値Rxを算出させる工程と、(e)下記の式(A)で示される基準抵抗値Rrefを、前記測定抵抗値Rxの目標である校正の目標値として取得する工程とを含む。基準抵抗値Rref=Rs×Rt/Rz ・・・(A)但し、Rtは前記選択抵抗部の抵抗値、Rzは前記直列抵抗部全体の抵抗値である。
【0008】
また、本発明に係る抵抗測定装置は、測定対象の抵抗を測定する抵抗測定装置であって、前記測定対象に供給するための測定用電流を供給する電流供給部と、前記測定対象に生じた電圧を測定電圧として測定するための電圧測定部と、それぞれが予め設定された抵抗値を有する複数の設定抵抗が直列接続された直列抵抗部と、予め設定された基礎抵抗値Rsを有する基礎抵抗とが並列接続された基準抵抗器と、前記基準抵抗器の前記基礎抵抗に対して、前記電流供給部によって前記測定用電流を供給させる電流供給切替部と、前記複数の設定抵抗のうちの一又は連続する一部の設定抵抗である選択抵抗部の両端間の電圧を、前記電圧測定部によって前記測定電圧として測定させる測定対象切替部と、前記電圧測定部により測定された測定電圧を前記測定用電流の電流値で除算することによって測定抵抗値Rxを算出する抵抗算出部と、下記の式(A)で示される基準抵抗値Rrefを、前記測定抵抗値Rxの目標である校正の目標値として取得する校正部とを備える。基準抵抗値Rref=Rs×Rt/Rz ・・・(A)但し、Rtは前記選択抵抗部の抵抗値、Rzは前記直列抵抗部全体の抵抗値である。
【0009】
これらの構成によれば、基準抵抗器の基礎抵抗に対して電流供給部によって測定用電流が供給され、この測定用電流によって基礎抵抗の両端に生じた電圧が直列抵抗部に印加され、その印加電圧が選択抵抗部によって分圧されて、電圧測定部によって測定電圧として測定される。さらに抵抗算出部によって、電圧測定部により測定された測定電圧が測定用電流の電流値で除算されて測定抵抗値Rxが算出される。その結果、抵抗測定装置の測定結果が正確であれば、得られた測定抵抗値Rxは、式(A)で示される基準抵抗値Rrefと等しくなる。従って、基準抵抗値Rrefを校正の目標値として用いることができる。また、式(A)から、基準抵抗値Rrefは基礎抵抗の基礎抵抗値Rsより小さい。この場合、得ようとする低抵抗の基準抵抗値Rrefよりも抵抗値が大きく、従って入手が容易な基礎抵抗を用いて校正に利用可能な基準抵抗値Rrefを得ることができるので、低抵抗の基準抵抗値を得ることが容易である。
【0010】
また、前記複数の設定抵抗のうち、一又は連続する一部の設定抵抗を、前記選択抵抗部として選択する選択部をさらに備えることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、選択部によって、任意の選択抵抗部を選択することができる。選択抵抗部を選択することができれば、式(A)における選択抵抗部の抵抗値Rzを選択することができる結果、基準抵抗値Rrefを変更することが可能になる。
【0012】
また、前記校正部は、前記測定抵抗値Rxを、下記の式(A)で示される基準抵抗値Rrefに近づけるように、前記抵抗測定装置を校正することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、抵抗測定装置の抵抗測定精度を調整することができる。
【0014】
また、本発明に係る基板検査装置は、上述の抵抗測定装置と、前記電流供給切替部によって、前記電流供給部による前記測定用電流の供給先を前記測定対象に切り替えさせ、前記測定対象切替部によって、前記電圧測定部による前記測定電圧の測定先を前記測定対象に切り替えさせる切替制御部と、前記抵抗算出部によって算出された測定抵抗値Rxに基づいて、前記測定対象である基板の検査を行う基板検査部とを備える。
【0015】
この構成によれば、校正に用いるための低抵抗の基準抵抗値を得ることが容易な基板検査装置を構成することができる。
【0016】
また、本発明に係る基準抵抗器は、それぞれが予め設定された抵抗値を有する複数の設定抵抗が直列接続された直列抵抗部と予め設定された基礎抵抗値Rsを有する基礎抵抗とが並列接続された基準抵抗本体部と、前記基礎抵抗の両端に接続され、測定用電流の入力を受け付けるための一対の電流入力端子と、前記複数の設定抵抗相互間の接続点のうち少なくとも三か所にそれぞれ接続され、基準抵抗値Rrefに対応する電圧を測定するための電圧測定用端子とを備える。
【0017】
この構成によれば、一対の電流入力端子によって受け付けられた測定用電流の電流が基準抵抗器の基礎抵抗に対して供給され、この測定用電流によって基礎抵抗の両端に生じた電圧が直列抵抗部に印加され、その印加電圧が複数の設定抵抗によって分圧されて、その分圧電圧が少なくとも三つの電圧測定用端子間に生じる。この電圧を測定用電流で除算すると、式(A)で示される基準抵抗値Rrefとなるから、基準抵抗器を、基準抵抗値Rrefを与える基準器として用いることができる。そして、式(A)から、基準抵抗値Rrefは基礎抵抗の基礎抵抗値Rsより小さい。この場合、得ようとする低抵抗の基準抵抗値Rrefよりも抵抗値が大きく、従って入手が容易な基礎抵抗を用いて基準抵抗値Rrefを得ることができるので、低抵抗の基準抵抗値を得ることが容易である。
【0018】
また、前記基礎抵抗及び前記複数の設定抵抗は、銅よりも小さい抵抗温度係数を有することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、銅で作成された低抵抗の基準器よりも、温度安定性に優れた基準抵抗器となる。
【0020】
また、前記直列抵抗部は、前記複数の設定抵抗として、第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七、第八、第九、及び第十抵抗をこの順に含み、前記第一及び第二抵抗の抵抗値は10Ω×N、前記第三〜第八抵抗の抵抗値は30Ω×N、前記第九抵抗の抵抗値は10Ω×N、前記第十抵抗の抵抗値は120Ω×N、Nは自然数であり、前記基礎抵抗値Rsは3.3mΩ+3.3mΩ×10×M、Mは0以上の整数であり、前記第一〜第九抵抗相互間の接続点と、前記第一抵抗の前記第二抵抗とは反対側の端部とに、それぞれ前記電圧測定用端子が接続されていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、複数の電圧測定用端子のうち二本を選んでその電圧を測定し、測定用電流で除算することにより、二本の選択の仕方に応じて連続する値の基準抵抗値Rrefを得ることができる。
【発明の効果】
【0022】
このような構成の基準抵抗器、抵抗測定装置の校正方法、抵抗測定装置、及び基板検査装置は、低抵抗の基準抵抗値を得ることが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る抵抗測定装置を用いた基板検査装置1の構成の一例を示すブロック図である。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
【0025】
図1に示す基板検査装置1(抵抗測定装置)は、基準抵抗器3、電流供給部CS、電圧測定部4、電流プローブPc1、電流プローブPc2、検出プローブPv1、検出プローブPv2、切替回路6(電流供給切替部、測定対象切替部)、選択部7、及び制御部5を備えている。基板検査装置1は、基板検査のために抵抗測定を行うから、抵抗測定装置の一例に相当する。
【0026】
図1は、検査対象となる基板Aに対して、基板検査装置1の各プローブが接触された状態を示している。基板検査装置1は、いわゆる四端子測定法により、抵抗測定を行うようになっている。基板検査装置1から後述する基板検査部55を除いた部分が抵抗測定装置の一例に相当している。
【0027】
検査対象の基板は、例えば半導体パッケージ用のパッケージ基板、インターポーザ基板、フィルムキャリア、プリント配線基板、ガラスエポキシ基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板等の基板であってもよく、液晶ディスプレイ、EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイ用の電極板や、タッチパネル用等の透明導電板であってもよく、半導体ウェハ、半導体チップ、CSP(Chip size package)等の半導体基板等々種々の基板であってもよい。
【0028】
また、検査対象の基板は、半導体チップ等の電子部品が埋め込まれた部品内蔵基板(エンベデッド基板)であってもよい。また、検査対象は基板に限られず、半導体チップ等の電子部品であってもよい。検査対象の基板や電子部品には、配線パターン、パッド、ランド、半田バンプ、及び端子等の検査点が形成されている。
【0029】
図1では、検査対象の基板Aとして半導体パッケージ用のインターポーザ基板の断面図を例示している。基板Aの一方の面には、半導体チップと接続されるチップ側電極A1が複数形成されている。基板Aの他方の面には、半導体チップを外部と接続するための外向電極A2が複数形成されている。
【0030】
各チップ側電極A1と各外向電極A2とは、基板Aの厚み方向を貫通するように形成された配線A3(導体)によってそれぞれ導通接続されている。基板検査装置1は、各配線A3の抵抗値を測定し、検査する。配線A3は測定対象の一例に相当している。以下、電流プローブPc1,Pc2、及び検出プローブPv1,Pv2のことを、単にプローブPc1,Pc2,Pv1,Pv2と記載することがある。
【0031】
プローブPc1,Pc2,Pv1,Pv2は、例えば直径が100μm〜200μm程度の弾性(可撓性)を有するワイヤ状の接触子である。電流プローブPc1,Pc2及び検出プローブPv1,Pv2は、例えばタングステン、ハイス鋼(SKH)、ベリリウム銅(Be−Cu)等の金属その他の導電体で形成されている。
【0032】
電流プローブPc1及び検出プローブPv1の先端は、基板Aのチップ側電極A1に接触される。電流プローブPc2及び検出プローブPv2の先端は、チップ側電極A1から離間した位置で外向電極A2に接触される。
【0033】
図1では図示を簡略化してプローブPc1,Pc2,Pv1,Pv2をそれぞれ一つずつ記載しているが、一枚の基板に対し、検査点が数百から数千設定されている場合があり、そのような多数の検査点に対応してプローブPc1,Pc2,Pv1,Pv2がそれぞれ数百から数千設けられている場合がある。
【0034】
電流供給部CSは、一定の電流を流す定電流回路である。測定用電流Iの電流値Isは、例えば20mA程度とされている。電流供給部CSは、切替回路6によって選択された電流プローブPc1,Pc2間、又は選択部7を介して基準抵抗器3へ、測定用電流Iを供給する。
【0035】
電圧測定部4は、検出プローブPv1,Pv2間の電圧、又は後述する基準抵抗器3の選択抵抗端子の電圧を測定する。電圧測定部4は、例えばアナログデジタルコンバータや分圧抵抗等を用いて構成されている。電圧測定部4は、切替回路6によって選択された検出プローブPv1,Pv2間の電圧を測定電圧Vxとして測定し、あるいは選択抵抗端子の電圧を測定電圧Vxとして測定し、測定電圧Vxを示すデータを制御部5へ出力する。
【0036】
基準抵抗器3は、校正のための基準となる基準抵抗値Rrefを提供する。
図2は、
図1に示す基準抵抗器3の構成の一例を示す回路図である。
図2に示す基準抵抗器3は、基準抵抗本体部31と、端子Ts1,Ts2(電流入力端子)と、端子T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8,T9(電圧測定用端子)とを備えている。
【0037】
基準抵抗本体部31は、抵抗Rstd(基礎抵抗)と、抵抗R1(第一抵抗),R2(第二抵抗),R3(第三抵抗),R4(第四抵抗),R5(第五抵抗),R6(第六抵抗),R7(第七抵抗),R8(第八抵抗),RA(第九抵抗),RB(第十抵抗)が直列接続された直列抵抗部32との並列回路から構成されている。抵抗R1,R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,RA,RBは、設定抵抗の一例に相当している。
【0038】
抵抗Rstdの一端に端子Ts1が接続され、抵抗Rstdの他端に端子Ts2が接続されている。抵抗R1の抵抗R2とは反対側の端部に端子T1が接続され、抵抗R1〜R8,RA相互間の接続点に、それぞれ端子T2〜T9が接続されている。抵抗Rstd、及び抵抗R1〜R8,RA,RBの抵抗温度係数は、銅の温度係数よりも小さな値にされている。
【0039】
以下、抵抗Rstdの抵抗値をRs、抵抗R1〜R8の抵抗値をR
1〜R
8、抵抗RA,RBの抵抗値をRa、Rbと表記する。
【0040】
切替回路6は、電流供給部CSの接続先を、電流プローブPc1,Pc2と基準抵抗器3との間で切り替え可能にされている。また、切替回路6は、電圧測定部4の接続先を、検出プローブPv1,Pv2と選択部7との間で切り替え可能にされている。
【0041】
切替回路6は、例えばスイッチ61a,61b,62a,62b,63a,63b,64a,64bを含む複数のスイッチを備えている。これらのスイッチは、例えばトランジスタ等の半導体スイッチや、リレースイッチ等、種々のスイッチング素子である。各スイッチは、例えば制御部5からの制御信号に応じてオン、オフする。
【0042】
具体的には、電流供給部CSの正極(+)は、スイッチ61aの一端とスイッチ61bの一端とに接続され、スイッチ61aの他端が電流プローブPc1に接続され、スイッチ61bの他端が基準抵抗器3の端子Ts1に接続されている。電流供給部CSの負極(−)は、スイッチ62aの一端とスイッチ62bの一端とに接続され、スイッチ62aの他端が電流プローブPc2に接続され、スイッチ62bの他端が基準抵抗器3の端子Ts2に接続されている。
【0043】
電圧測定部4の正極側(+)端子は、スイッチ63aの一端とスイッチ63bの一端とに接続され、スイッチ63aの他端が検出プローブPv1に接続され、スイッチ63bの他端が選択部7を介して基準抵抗器3に接続されている。電圧測定部4の負極側(−)端子は、スイッチ64aの一端とスイッチ64bの一端とに接続され、スイッチ64aの他端が検出プローブPv2に接続され、スイッチ64bの他端が選択部7を介して基準抵抗器3に接続されている。
【0044】
これにより、スイッチ61a,62aがオン、スイッチ61b,62bがオフされると、測定用電流Iの供給先が、測定対象の配線A3側に切り替えられ、配線A3の抵抗測定可能な状態にされる。一方、スイッチ61a,62aがオフ、スイッチ61b,62bがオンされると、測定用電流Iの供給先が基準抵抗器3の端子Ts1,Ts2側に切り替えられ、校正可能な状態にされる。スイッチ61a,61b,62a,62bは、電流供給切替部の一例に相当している。
【0045】
スイッチ63a,64aがオン、スイッチ63b,64bがオフされると、電圧測定部4による測定電圧Vxの測定先が、測定対象の配線A3側に切り替えられ、配線A3の抵抗測定可能な状態にされる。一方、スイッチ63a,64aがオフ、スイッチ63b,64bがオンされると、電圧測定部4による測定電圧Vxの測定先が、選択部7で選択された基準抵抗器3の端子間側に切り替えられ、校正可能な状態にされる。スイッチ63a,63b,64a,64bは、測定対象切替部の一例に相当している。
【0046】
選択部7は、いわゆるマルチプレクサ回路である。選択部7は、制御部5からの制御信号に応じて端子T1〜T9のうち二端子を選択し、スイッチ63b,64bに接続することによって、選択された二端子間の選択抵抗部を選択する。以下、選択抵抗部の両端に位置する二端子を選択抵抗端子と称する。すなわち、選択抵抗端子間に挟まれた抵抗が、選択抵抗部である。
【0047】
制御部5は、例えば、所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、所定の制御プログラム等を記憶する不揮発性の記憶装置、及びこれらの周辺回路等を備えたいわゆるマイクロコンピュータである。記憶装置は、記憶部56としても用いられる。制御部5は、所定の制御プログラムを実行することによって、切替制御部52、抵抗算出部53、校正部54、及び基板検査部55として機能する。
【0048】
図3は、予め記憶部56に記憶されるルックアップテーブルLUTの一例を示す説明図である。
図3に示すルックアップテーブルLUTは、
図2に示す基準抵抗器3において、抵抗値R
1,R
2を10Ω、抵抗値R
3〜R
8を30Ωとした場合の、選択抵抗端子及び選択抵抗部の抵抗値Rtと、基準抵抗値Rrefとを対応付けている。
【0049】
例えば、ルックアップテーブルLUTの「T3−T2:10Ω」との記載は、選択抵抗端子が端子T3,T2であり、端子T3,T2に挟まれた選択抵抗部の抵抗値Rtが10Ωであることを示している。
【0050】
タイプA〜Eは、抵抗値Rs,Ra,Rbの違いによって、異なる基準抵抗値Rrefが得られることを示している。
図2に示す基準抵抗器3では、抵抗値Rs,Ra,Rbは固定値であるから、基板検査装置1に備えられている基準抵抗器3のタイプに対応した部分のみをルックアップテーブルLUTとして記憶部56に記憶させておくようにしてもよい。
【0051】
基準抵抗値Rrefと、抵抗Rstdの抵抗値Rs及び選択抵抗部の抵抗値Rtとの間には、略下記の式(A)で示す関係がある。
【0052】
基準抵抗値Rref=Rs×Rt/Rz ・・・(A)
但し、Rzは直列抵抗部32全体の抵抗値であり、Rz=R
1+R
2+R
3+R
4+R
5+R
6+R
7+R
8+Ra+Rb=330Ωである。ルックアップテーブルLUTは、予め式(A)に基づき計算され、記憶部56に記憶されている。
【0053】
例えば、タイプAで、選択抵抗端子が端子T3,T2であれば、Rs=3.3mΩ、Rt=10Ω、Rz=330Ωであるから、式(A)に代入すると、基準抵抗値Rref=3.3mΩ×10Ω/330Ω=0.1mΩとなり、ルックアップテーブルLUTと一致する。
【0054】
切替制御部52は、測定対象の抵抗測定を行うときは、スイッチ61a,61b,62a,62bによって、電流供給部CSによる測定用電流Iの供給先を基板Aに切り替えさせ、スイッチ63a,63b,64a,64bによって、電圧測定部4による測定電圧Vxの測定先を基板Aに切り替えさせる。以下、この切替状態を測定モードと称する。
【0055】
また、切替制御部52は、抵抗測定の校正を行うときは、スイッチ61a,61b,62a,62bによって、電流供給部CSによる測定用電流Iの供給先を端子Ts1,Ts2(抵抗Rstd)に切り替えさせ、スイッチ63a,63b,64a,64bによって、電圧測定部4による測定電圧の測定先を、選択部7で選択された基準抵抗器3の選択抵抗部に切り替えさせる。以下、この切替状態を校正モードと称する。
【0056】
これにより、校正モードでは、基準抵抗器3の抵抗Rstd(基礎抵抗)に対して電流供給部CSによって測定用電流Iが供給され(工程(b))、選択抵抗部の両端間の電圧が電圧測定部4によって測定電圧Vxとして測定される(工程(c))。
【0057】
なお、本明細書において、「校正」とは、JIS Z 8103:2000「計測用語」の定義に従い、計器又は測定系の示す値(測定抵抗値Rx)と、標準によって実現される値(基準抵抗値Rref)との間の関係を確定することを意味し、必ずしも基板検査装置1を調整して誤差を修正することは含まない。
【0058】
抵抗算出部53は、電圧測定部4によって検出された測定電圧Vxと、測定用電流Iの電流値Isとに基づき、下記の式(1)を用いて測定抵抗値Rxを算出する(工程(d))。
測定抵抗値Rx=Vx/Is ・・・(1)
【0059】
なお、基板検査装置1(抵抗測定装置)は、測定用電流Iの実際の電流値Isを測定する電流測定部を備え、抵抗算出部53は、電流測定部によって測定された電流値Isと測定電圧Vxとを用いて測定抵抗値Rxを算出してもよい。
【0060】
校正部54は、記憶部56に記憶されたルックアップテーブルLUTを参照し、選択部7によって選択される選択抵抗端子に対応する基準抵抗値Rrefを取得する(工程(e))。ルックアップテーブルLUTの基準抵抗値Rrefは、式(A)で示される値とされているから、校正部54は、ルックアップテーブルLUTを参照することによって、式(A)で示される基準抵抗値Rrefを、測定抵抗値Rxの目標である校正の目標値として取得することができる。式(A)によって、校正の目標値である基準抵抗値Rrefが得られる原理については後述する。
【0061】
なお、校正部54は、必ずしもルックアップテーブルLUTを参照することによって、基準抵抗値Rrefを取得する例に限らない。校正部54は、実際に式(A)の計算を実行することによって、基準抵抗値Rrefを取得してもよい。
【0062】
また、校正部54は、予め設定された、あるいは基板検査装置1に外部から入力された基準抵抗値Rrefをそのまま取得してもよい。そして、校正部54は、上記ルックアップテーブルを参照してその基準抵抗値Rrefと対応する選択抵抗端子を取得し、選択部7によって、その選択抵抗端子に対応する電圧測定用端子を選択させるようにしてもよい。
【0063】
校正モードにおいて、抵抗算出部53によって測定抵抗値Rxが算出され、校正部54によって基準抵抗値Rrefが得られたならば、計器又は測定系の示す値(測定抵抗値Rx)と、標準によって実現される値(基準抵抗値Rref)との間の関係が対応付けられて確定されたことになるので、工程(b)〜(e)は、校正に相当する。
【0064】
校正部54は、測定抵抗値Rxを、基準抵抗値Rrefに近づけるように、電流供給部CS、電圧測定部4、又は測定用電流Iの実際の電流値Isを測定する電流測定部等を調整して誤差を修正する工程を実行するようにしてもよい。
【0065】
あるいは、校正部54は、例えば選択抵抗部(選択抵抗端子)を順次切り替えつつ、工程(b)〜(e)を実行し、各選択抵抗部に対応して得られた測定抵抗値Rxと基準抵抗値Rrefとを対応付ける校正テーブル、あるいは測定抵抗値Rxと基準抵抗値Rrefとの差を測定抵抗値Rxに対応付ける校正テーブルを作成して記憶部56に記憶させてもよい。そして、抵抗算出部53は、測定モードにおいて測定抵抗値Rxを算出した後、校正テーブルを参照してその測定抵抗値Rxに対応付けられた基準抵抗値Rref又は差に基づいて測定抵抗値Rxを補正するようにしてもよい。
【0066】
また、校正部54は、測定抵抗値Rxと基準抵抗値Rrefとを含む校正情報を、例えば図略の表示装置に表示させたり、図略の通信回路を用いて外部に送信したりする等して、保守作業者やユーザ等に通知してもよい。校正情報が通知された保守作業者等は、通知された校正情報に基づいて、測定抵抗値Rxを基準抵抗値Rrefに近づけるように基板検査装置1を調整することが可能となる。
【0067】
基板検査部55は、測定モードにおいて、抵抗算出部53によって算出された測定抵抗値Rxに基づき、測定対象である配線A3の検査を行う。具体的には、基板検査部55は、予め記憶部に記憶された判定基準値RRと、測定抵抗値Rxとを比較し、測定抵抗値Rxが判定基準値RRより小さかった場合、その配線A3を良品と判定し、測定抵抗値Rxが判定基準値RR以上であった場合、その配線A3を不良と判定する。
【0068】
次に、基準抵抗器3を用いて、ルックアップテーブルLUTすなわち式(A)に基づいて校正の目標値である基準抵抗値Rrefが得られる原理について説明する。
【0069】
校正モードでは、切替回路6によって、電流供給部CSから出力された電流値Isの測定用電流Iが端子Ts1,Ts2に供給され、抵抗Rstdに流れる。なお、抵抗Rstdと直列抵抗部32とは並列接続されているから、厳密には測定用電流Iは抵抗Rstdと直列抵抗部32とに分流することになる。しかしながら、直列抵抗部32の抵抗値Rzが抵抗Rstdの抵抗値Rsよりも充分大きければ、直列抵抗部32に流れる電流は無視できる。そこで、測定用電流Iはすべて抵抗Rstdを流れるものと近似して説明する。
【0070】
例えば、ルックアップテーブルLUTに示すタイプAの場合、直列抵抗部32の抵抗値Rz=330Ω、抵抗Rstdの抵抗値Rs=3.3mΩであり、Rz:Rs=100000:1となる。Rz、Rsに流れる電流値は抵抗比の逆比となるから、直列抵抗部32に流れる電流は、抵抗Rstdに流れる電流の1/100000となり、略無視できる。
【0071】
抵抗Rstdに電流値Isの測定用電流Iが流れると、抵抗Rstdの両端間の電圧Vsは、Vs=Is×Rsとなる。抵抗Rstdと直列抵抗部32とは並列接続されているから、直列抵抗部32にも電圧Vsが印加される。そうすると、二本の選択抵抗端子間に生じる測定電圧Vxは、直列抵抗部32の抵抗値Rzと選択抵抗部の抵抗値Rtとの分圧により、下記の式(2)で表される。
測定電圧Vx=Vs×(Rt/Rz)=Is×Rs×Rt/Rz ・・・(2)
【0072】
ここで、式(A)から、基準抵抗値Rref=Rs×Rt/Rzである。式(2)に式(A)を代入すると、
【0073】
測定電圧Vx=Is×Rref ・・・(3)
となる。
【0074】
校正モードでは、切替回路6及び選択部7によって、選択抵抗端子が電圧測定部4に接続され、二本の選択抵抗端子間に生じた測定電圧Vxが電圧測定部4で測定される。電圧測定部4で測定された測定電圧Vxから、抵抗算出部53によって、上記式(1)を用いて測定抵抗値Rxが算出される。ここで、式(1)に式(3)を代入すると、下記の式(4)が得られる。
測定抵抗値Rx=Vx/Is=(Is×Rref)/Is=Rref ・・・(4)
【0075】
式(4)から、校正モードにおいて、抵抗算出部53で算出される測定抵抗値Rxは、基準抵抗値Rrefと等しくなる。
【0076】
すなわち、電流供給部CSから出力される測定用電流Iの電流値Isと、電圧測定部4の検出精度とが正確であれば、基準抵抗器3の、抵抗Rstd(基礎抵抗)に対して電流供給部CSによって測定用電流Iを供給させる工程(b)と、選択抵抗部の両端間の電圧を、電圧測定部4によって測定電圧Vxとして測定させる工程(c)と、抵抗算出部53によって、測定電圧Vxを測定用電流Iの電流値Isで除算させることによって測定抵抗値Rxを算出させる工程(d)とを実行することによって、基準抵抗器3を、等価的に基準抵抗値Rrefを有する基準抵抗体として利用できることがわかる。
【0077】
従って、電流供給部CS、電圧測定部4、及び抵抗算出部53を含む抵抗測定回路系の測定精度が正確であれば、校正モードにおいて抵抗算出部53で得られる測定抵抗値Rxは、式(A)で示される基準抵抗値Rref、すなわちルックアップテーブルLUTで示される基準抵抗値Rrefと一致するはずであるから、校正部54は、基準抵抗値Rrefを校正の目標値として用いることができる。
【0078】
ここで、式(A)から、基準抵抗値Rref=Rs×Rt/Rzであるから、分圧比(Rt/Rz)によって、抵抗Rstdの抵抗値Rsよりも小さな基準抵抗値Rrefを得ることができる。
【0079】
例えば、
図3に示すタイプAのように、抵抗Rstdとして抵抗値Rsが3.3mΩの抵抗を一つ用いれば、抵抗R1〜R8,RA,RBは分圧に用いられるだけなので、市場で入手が容易な抵抗値、例えば10〜120Ωの抵抗を用いることができる。その結果、低抵抗の3.3mΩの抵抗Rstdを一つと、入手容易な抵抗値範囲の抵抗を用いて基準抵抗器3を構成することができる。
【0080】
また、基準抵抗器3によれば、3.3mΩの抵抗Rstdよりもさらに低抵抗であるために市場での入手が困難な、0.1mΩ〜2.0mΩの基準抵抗値Rrefを、入手が容易な抵抗値の抵抗R1〜R8,RA,RB、及び抵抗Rstdを組み合わせることによって得ることができるので、低抵抗の基準抵抗値Rrefを得ることが容易となる。
【0081】
また、0.2mΩのような低抵抗の特殊な抵抗は、入手困難であるのみならず、入手できたとしても高価である可能性が高い。一方、抵抗R1〜R8,RA,RB,Rstdは、0.2mΩのような特殊な抵抗よりも入手が容易で安価である可能性が高く、従って、このような特殊な抵抗を用いる場合よりも基準抵抗器3の方が低コストにできる可能性がある。
【0082】
また、基準抵抗器3は、複数の電圧測定用端子T1〜T9を備え、これらの中から選択抵抗端子を選択することによって、複数種類の基準抵抗値Rrefを得ることができる。従って、抵抗値の異なる複数の基準抵抗を備える必要がなく、利便性が向上する。また、複数の基準抵抗を備えるよりも、基準抵抗器3の方が低コストにできる可能性がある。
【0083】
例えば、
図3に示すタイプA〜Eでは、抵抗値Rsを10倍ずつ大きくすることによって、タイプAでは、0.1mΩ〜2.0mΩまで0.1mΩ刻みの基準抵抗値Rrefが得られ、タイプBでは、1mΩ〜20mΩまで1mΩ刻みの基準抵抗値Rrefが得られ、以下、タイプC,D,Eでは10倍ずつ大きな基準抵抗値Rrefが得られ、抵抗値Rsを変えるだけで所望の基準抵抗値Rrefが得られるので、利便性が高い。
【0084】
このように、連続する値の基準抵抗値Rrefが得られる基準抵抗器3は、抵抗R1,R2の抵抗値R
1,R
2を10Ω×N、抵抗R3〜R8の抵抗値R
3〜R
8を30Ω×N、抵抗RAの抵抗値Raを10Ω×N、抵抗RBの抵抗値Rbを120Ω×N、Nは自然数とし、抵抗Rstdの抵抗値Rsを3.3mΩ+3.3mΩ×10×M、Mは0以上の整数とすることによって得られる。
【0085】
また、銅を加工して基準抵抗器を作成した場合、銅は抵抗温度係数が大きいために温度変化に起因する抵抗値の変動が生じ、抵抗値が不安定になる。一方、基準抵抗器3の場合、銅を用いずに、銅より遙かに抵抗温度係数の小さい市販の抵抗器を組み合わせて作成できるので、銅を加工して基準抵抗器を作成した場合よりも遙かに安定性の高い基準抵抗を容易に得ることができる。例えば、銅の温度係数が0.00393[1/℃]であるのに対し、例えばAlpha Electronics社製MPPシリーズ超精密チップ抵抗器では抵抗温度係数が0.2×10
−6/℃程度であり、例えばパナソニック(株)社製低抵抗金属板抵抗器ERJM03Nでは抵抗温度係数が100×10
−6/℃程度である。
【0086】
また、小さなチップ抵抗器が市販されているので、銅で抵抗器を構成する場合よりも小型化が容易である。また、市販の抵抗器を入手すればよいので、銅を加工するよりもリードタイムや加工費が安くなる可能性が高い。
【0087】
なお、四端子測定法で抵抗測定を行う基板検査装置1に基準抵抗器3を備える例を示したが、例えば
図4に示すように、電流プローブPc1と検出プローブPv1との代わりに一つのプローブPr1を備え、電流プローブPc2と検出プローブPv2との代わりに一つのプローブPr2を備え、一つのプローブで電流供給と電圧測定とを兼ねる二端子測定法を行う基板検査装置1aの場合であっても、基準抵抗器3による校正を行うことができる。
【0088】
また、基準抵抗器3は、必ずしも基板検査装置1や抵抗測定装置に組み込まれている必要はない。例えば
図5に示すように、四端子測定法で抵抗測定を行う基板検査装置1b又は抵抗測定装置であって、基準抵抗器3、切替制御部52、及び校正部54を備えない基板検査装置1b又は抵抗測定装置を、本発明に係る抵抗測定装置の校正方法によって校正することも可能である。
【0089】
この場合、
図5に示すように、基準抵抗器3を準備し(工程(a))、電流プローブPc1,Pc2を基準抵抗器3の端子Ts1,Ts2に接触させて電流供給部CSから測定用電流Iを供給させ(工程(b))、検出プローブPv1,Pv2を基準抵抗器3の選択抵抗端子に接触させて電圧測定部4によって測定電圧Vxを測定させ(工程(c))、抵抗算出部53によって測定抵抗値Rxを算出させ(工程(d))、これを保守作業者等に通知させればよい。保守作業者等は、ルックアップテーブルLUTを参照する等して選択抵抗端子に対応する基準抵抗値Rrefを取得し(工程(e))、測定抵抗値Rxとを対比することによって、基板検査装置1b又は抵抗測定装置を校正することが可能となる。
【0090】
図6は、本発明の一実施形態に係る抵抗測定装置の校正方法の一例を示すフローチャートである。まず、基準抵抗器3を準備する(工程(a))。工程(a)には、
図1、
図4に示すように、基板検査装置1,1a等の抵抗測定装置内に基準抵抗器3を組み込むことや、
図5に示すように、基準抵抗器3を、基板検査装置1b等の抵抗測定装置の外部に測定対象として配置することが含まれる。
【0091】
次に、基準抵抗器3の抵抗Rstdに対して電流供給部CSによって測定用電流Iを供給させる(工程(b))。工程(b)には、
図1、
図4に示すように、基板検査装置1,1a等の抵抗測定装置内の内部配線によって抵抗Rstdに測定用電流Iを供給する態様や、
図5に示すように、基板検査装置1b等の抵抗測定装置が備える電流プローブPc1,Pc2を介して電流を供給する態様が含まれる。
【0092】
内部配線によって抵抗Rstdに測定用電流Iを供給する態様では、基準抵抗器3は、必ずしも端子Ts1,Ts2を備える必要はなく、抵抗Rstdの両端に直接配線されていてもよい。
【0093】
次に、選択抵抗部の両端間の電圧を、電圧測定部4によって測定電圧Vxとして測定させる(工程(c))。工程(c)には、
図1、
図4に示すように、基板検査装置1,1a等の抵抗測定装置内の内部配線を介して電圧測定部4を選択抵抗部の両端に接続して測定電圧Vxを測定させる態様や、
図5に示すように、基板検査装置1b等の抵抗測定装置が備える検出プローブPv1,Pv2を選択抵抗端子に接触させて測定電圧Vxを測定する態様が含まれる。
【0094】
次に、抵抗算出部53によって、測定電圧Vxを測定用電流Iの電流値Isで除算させることによって測定抵抗値Rxを算出させる(工程(d))。
【0095】
次に、上記式(A)で示される基準抵抗値Rrefを、測定抵抗値Rxの目標である校正の目標値として取得する(工程(e))。工程(e)には、
図1、
図4に示すような基板検査装置1,1a等の校正部54が基準抵抗値Rrefを取得する態様や、
図5に示すように、基準抵抗器3や校正部54を備えない基板検査装置1b等の抵抗測定装置に測定対象として基準抵抗器3を接続して電流プローブPc1,Pc2及び検出プローブPv1,Pv2を接触させ、保守作業者等が予め作成されたルックアップテーブルLUTを参照するなどして式(A)で示される基準抵抗値Rref、すなわち検出プローブPv1,Pv2を接触させた選択抵抗端子に対応する基準抵抗値Rrefを、測定抵抗値Rxの目標である校正の目標値として取得する態様が含まれる。
【0096】
以上、工程(a)〜(e)によれば、基準抵抗器3を用いて校正の目標値(基準値)となる基準抵抗値Rrefを取得することができる。
【0097】
なお、設定抵抗として、抵抗R1〜R8,RA,RBの10個の抵抗を用いる例を示したが、設定抵抗は二つ以上であればよい。設定抵抗が少なくとも二つあれば、二つの合計抵抗値をRz、二つのうちから選択された選択抵抗部の抵抗値をRtとすることにより、上述の式(2)において抵抗分圧の効果が得られ、従って式(A)を適用することができる。その結果、抵抗Rstdよりも小さい基準抵抗値Rrefを得ることができるから、低抵抗の基準抵抗値を得ることが容易な基準抵抗器を構成することが可能となる。
【0098】
また、電圧測定用端子の一例として9つの端子T1〜T9を示したが、電圧測定用端子は、複数の設定抵抗相互間の接続点のうち少なくとも三か所にそれぞれ接続されていればよい。当該三か所にそれぞれ接続された三つの電圧測定用端子があれば、少なくとも二種類の選択抵抗部を選択することが可能となる。
【0099】
また、基板検査装置1,1bは、選択部7を備えず、選択抵抗端子(選択抵抗部)が固定的に切替回路6に接続されていてもよい。
【0100】
また、抵抗R1〜R8,RA,RB,Rstdの抵抗温度係数は、必ずしも銅より小さい例に限らない。抵抗R1〜R8,RA,RB,Rstdの抵抗温度係数が銅以上であった場合であっても、抵抗Rstdよりも小さい基準抵抗値Rrefを得ることができ、従って低抵抗の基準抵抗値を得ることが容易な基準抵抗器を構成することが可能である。
【0101】
また、基板検査装置1,1a,1bは、基板検査部55を備えない抵抗測定装置として構成されていてもよい。