(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記R2−Si系合金はCuを含有し、Cuの含有量はR2−Si系合金全体の0.1mass%以上24.1mass%以下である、請求項1から3のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
前記R1−T1−B系焼結体中の[Pr]/[R1]をα、R2−Si系合金中の[Pr]/[R2]をβとしたとき、β/α≧1.2である、請求項1から4のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
前記R−T−B系焼結磁石はCuを含有し、Cuの濃度は、磁石中央部よりも磁石表面部の方が0.1mass%以上高い、請求項8から11のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示において、希土類元素を総称して「R」と表記する場合がある。希土類元素Rのうちの特定の元素又は元素群を指すとき、例えば「R1」、「R2」、「R3」及び「R4」の符号を用いて他の希土類元素から区別する。また、本開示において、Feを含む遷移金属元素の全体を「T」と表記する。遷移金属元素Tのうちの特定の元素または元素群及び主相のFeサイトと容易に置換される遷移金属元素以外の特定の元素又は元素群の両方を含むとき、「T1」、「T2」及び「T3」の符号を用いて他の遷移金属元素から区別する。
【0027】
本開示によるR−T−B系焼結磁石の製造方法は、
図1に示すように、R1−T1−B系焼結体を準備する工程S10と、R2−Si系合金を準備する工程S20とを含む。R1−T1−B系焼結体を準備する工程S10と、R2−Si系合金を準備する工程S20との順序は任意であり、それぞれ、異なる場所で製造されたR1−T1−B系焼結体及びR2−Si系合金を用いてもよい。
【0028】
本開示において、熱処理前及び熱処理中のR−T−B系焼結磁石をR1−T1−B系焼結体と称し、熱処理後のR1−T1−B系焼結磁体を単にR−T−B系焼結磁石と称する。
【0029】
R1−T1−B系焼結体においては、下記(1)〜(3)が成立している。
(1)R1は希土類元素のうち少なくとも一種でありNd及びPrの少なくとも一方を必ず含み、R1の含有量は、R1−T1−B系焼結体全体の27mass%以上35mass%以下である。
(2)T1はFe又はCo、Al、Mn、Siの少なくとも1つとFeであり、T1全体に対するFeの含有量が80mass%以上である。
(3)Bに対するT1のmol比([T1]/[B])が14.0超15.0以下である。
【0030】
本開示におけるBに対するT1のmol比([T1]/[B])とは、T1を構成する各元素(Fe又はCo、Al、Mn、Siの少なくとも1つとFe)の分析値(mass%)をそれぞれの元素の原子量で除したものを求め、それらの値を合計したもの(a)と、Bの分析値(mass%)をBの原子量で除したもの(b)との比(a/b)である。
【0031】
Bに対するT1のmol比([T1]/[B])が14.0を超えるということは、Bの含有比率がR
2T
14B化合物の化学量論組成比よりも低いことを意味している。言い換えると、R1−T1−B系焼結体において、主相(R
2T
14B化合物)の形成に使われるT1の量に対して相対的にB量が少ない。
【0032】
R2−Si系合金においては、以下の(4)及び(5)が成立している。
(4)R2は希土類元素のうち少なくとも一種であり、Prを必ず含み、R2の含有量は、R2−Si系合金全体の74.4mass%以上96.6mass%以下であり、かつ、希土類元素全体に対するPrの比率が、R1−T1―B系焼結体の希土類元素全体に対するPrの比率よりも高い。
(5)Siの含有量は、R2−Si系合金全体の0.7mass%以上14.0mass%以下である。
【0033】
本開示によるR−T−B系焼結磁石の製造方法では、主相(R
2T
14B化合物)形成に使われるTの量に対して化学量論比で相対的にB量が少ないR1−T1−B系焼結体の表面の少なくとも一部にR2−Si系合金を接触させ、
図1に示すように、真空又は不活性ガス雰囲気中、450℃以上1100℃以下の温度で熱処理を実施する工程S30を行う。これにより、高いB
r及び高いH
cJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができる。
【0034】
まず、R−T−B系焼結磁石の基本構造を説明する。
【0035】
R−T−B系焼結磁石は、原料合金の粉末粒子が焼結によって結合した構造を有しており、主としてR
2T
14B化合物からなる主相と、この主相の粒界部分に位置する粒界相とから構成されている。
【0036】
図2Aは、R−T−B系焼結磁石の主相と粒界相を示す模式図であり、
図2Bは
図2Aの破線矩形領域内を更に拡大した模式図である。
図2Aには、一例として長さ5μmの矢印が大きさを示す基準の長さとして参考のために記載されている。
図2A及び
図2Bに示されるように、R−T−B系焼結磁石は、主としてR
2T
14B化合物からなる主相12と、主相12の粒界部分に位置する粒界相14とから構成されている。また、粒界相14は、
図2Bに示されるように、2つのR
2T
14B化合物粒子(グレイン)が隣接する二粒子粒界相14aと、3つ以上のR
2T
14B化合物粒子が隣接する粒界三重点14bとを含む。
【0037】
主相12であるR
2T
14B化合物は高い飽和磁化と異方性磁界を持つ強磁性相である。したがって、R−T−B系焼結磁石では、主相12であるR
2T
14B化合物の存在比率を高めることによってB
rを向上させることができる。R
2T
14B化合物の存在比率を高めるためには、原料合金中のR量、T量、B量を、R
2T
14B化合物の化学量論比(R量:T量:B量=2:14:1)に近づければよい。R
2T
14B化合物を形成するためのB量又はR量が化学量論比を下回ると、一般的には、粒界相14にFe相又はR
2T
17相等の強磁性体が生成し、H
cJが急激に低下する。しかし、特許文献1に記載されている方法のように、B量をR
2T
14B化合物の化学量論比よりも少なくし、且つ、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属元素Mを含有させると、R
2T
17相から粒界に遷移属リッチ相(例えばR−T−Ga相)が生成されて高いH
cJを得ることできる。しかし、特許文献1に記載されている方法では、B
rが大幅に低下してしまう。
【0038】
本発明者らは検討の結果、低B組成である特定の組成を有するR1−T1−B系焼結体の表面の少なくとも一部に、R2−Si系合金を接触させて特定の熱処理を実施すると、最終的に得られる焼結磁石は、高いB
rと高いH
cJを実現できることがわかった。このとき、R2−Si系合金におけるR2の含有量は、希土類元素全体に対するPrの比率が、R1−T1−B系焼結磁石体の希土類元素全体に対するPrの比率よりも高い。このような比率でR2中にPrが存在すると粒界拡散が促進され、磁石内部にSiを拡散させることが可能になることを見出した。そして、上記特定組成の焼結体にSiを拡散させることにより、Siを含む厚い二粒子粒界を焼結体の内部まで容易に形成することができることがわかった。
【0039】
本開示によるR−T−B系焼結磁石の製造方法は、本開示の特定組成のR2−Si系合金によりPr及びSiを磁石表面から内部に導入することで、高いB
rと高いH
cJを実現することができる。
【0040】
(R1−T1−B系焼結体を準備する工程)
まず、R1−T1−B系焼結体(以下、単に「焼結体」という場合がある)を準備する工程における焼結体の組成を説明する。
【0041】
R1は希土類元素のうち少なくとも一種であり、Nd及びPrの少なくとも一方を必ず含む。R1−T1−B系焼結体のH
cJを向上させるために、一般的に用いられるDy、Tb、Gd、Hoなどの重希土類元素を少量含有してもよい。ただし、本開示による製造方法によれば、重希土類元素を多量に用いずとも十分に高いH
cJを得ることができる。そのため、前記重希土類元素の含有量は、R1−T1−B系焼結体の1mass%以下であることが好ましく、0.5mass%以下であることがより好ましく、含有しない(実質的に0mass%)ことがさらに好ましい。
【0042】
R1の含有量は、R1−T1−B系焼結体全体の27mass%以上35mass%以下である。R1の含有量が27mass%未満では焼結過程で液相が十分に生成せず、R1−T1−B系焼結体を十分に緻密化することが困難になる。一方、R1の含有量が35mass%を超えても本開示の効果を得ることはできるが、R1−T1−B系焼結体の製造工程中における合金粉末が非常に活性になる。その結果、合金粉末の著しい酸化や発火などを生じることがあるため、35mass%以下が好ましい。R1の含有量は、27.5mass%以上33mass%以下であることがより好ましく、28mass%以上32mass%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
T1はFe又はCo、Al、Mn、Siの少なくとも1つとFeであり、T1全体に対するFeの含有量が80mass%以上である。すなわち、T1はFeのみであってもよいし、Co、Al、Mn、Siの少なくとも1つとFeからなってもよい。但し、T1全体に対するFeの含有量は80mass%以上である。Feの含有量が80mass%未満であると、B
r及びH
cJが低下する可能性がある。ここで、「T1全体に対するFeの含有量は80mass%以上」とは、例えばR1−T1−B系焼結体中におけるT1の含有量が70mass%である場合、R1−T1−B系焼結体の56mass%以上がFeであることをいう。好ましくはT1全体に対するFeの含有量は90mass%以上である。より高いB
rと高いH
cJを得ることができるからである。Co、Al、Mn、Siを含有する場合の好ましい含有量は、R1−T1−B系焼結体全体のCoは5.0mass%以下、Alは1.5mass%以下、Mn及びSiはそれぞれ0.2mass%以下である。
【0044】
Bに対するT1のmol比([T1]/[B])は14.0超15.0以下である。
【0045】
Bに対するT1のmol比([T1]/[B])が14.0以下であると高いH
cJを得ることができない。一方、Bに対するT1のmol比([T1]/[B])が15.0を超えるとB
rが低下する可能性がある。Bに対するT1のmol比([T1]/[B])は14.3以上15.0以下であることが好ましい。さらに高いB
rと高いH
cJを得ることができる。また、Bの含有量はR1−T1−B系焼結体全体の0.85mass%以上1.0mass%未満が好ましい。
【0046】
R1−T1−B系焼結体は、上記元素の他にGa、Cu、Ag、Zn、In、Sn、Zr、Nb、Ti、Ni、Hf、Ta、W、Ge、Mo、V、Y、La、Ce、Sm、Ca、Mg、Cr、H、F、P、S、Cl、O、N、C等を含有してもよい。含有量は、Ga、Cu、Ag、Zn、In、Sn、Zr、Nb、及びTiはそれぞれ0.5mass%以下、Ni、Hf、Ta、W、Ge、Mo、V、Y、La、Ce、Sm、Ca、Mg、Crはそれぞれ0.2mass%以下、H、F、P、S、Clは500ppm以下、Oは6000ppm以下、Nは1000ppm以下、Cは1500ppm以下が好ましい。これらの元素の合計の含有量は、R1−T1−B系焼結体全体の5mass%以下が好ましい。これらの元素の合計の含有量がR1−T1−B系焼結体全体の5mass%を超えると高いB
rと高いH
cJを得ることができない可能性がある。
【0047】
次にR1−T1−B系焼結体を準備する工程について説明する。R1−T1−B系焼結体を準備する工程は、R−T−B系焼結磁石に代表される一般的な製造方法を用いて準備することができる。R1−T1−B系焼結体は、原料合金を粒径D
50(気流分散式レーザー回折法による測定で得られる体積中心値=D
50)が3μm以上10μm以下に粉砕した後、磁界中で配向させて焼結を行うことが好ましい。一例を挙げると、ストリップキャスト法などで作製された原料合金を、ジェットミル装置などを用いて粒径D
50が3μm以上10μm以下に粉砕した後、磁界中で成形し、900℃以上1100℃以下の温度で焼結することにより準備することができる。原料合金の粒径D
50が3μm未満では粉砕粉を作製するのが非常に困難であり、生産効率が大幅に低下するため好ましくない。一方、粒径D
50が10μmを超えると最終的に得られるR1−T1−B系焼結体の結晶粒径が大きくなり過ぎ、高いH
cJを得ることが困難となるため好ましくない。粒径D
50は好ましくは、3μm以上5μm以下である。
【0048】
R1−T1−B系焼結体は、前記の各条件を満たしていれば、一種類の原料合金(単一原料合金)から作製してもよいし、二種類以上の原料合金を用いてそれらを混合する方法(ブレンド法)によって作製してもよい。また、得られたR1−T1−B系焼結体は、必要に応じて切断や切削など公知の機械加工を行った後、後述する熱処理を実施してもよい。
【0049】
(R2−Si系合金を準備する工程)
まず、R2−Si系合金を準備する工程におけるR2−Si系合金の組成を説明する。以下に説明する特定の範囲でR2及びSiを含有することにより、後述する熱処理を実施する工程においてR2−Si系合金中のR2及びSiをR1−T1−B系焼結体内部に導入することができる。
【0050】
R2は希土類元素のうち少なくとも一種であり、Prを必ず含み、R2の含有量はR2−Si系合金全体の74.4mass%以上96.6mass%以下である。R2の含有量が74.4mass%未満では後述する熱処理で拡散が十分に進行しない可能性がある。一方、R2の含有量が96.6mass%を超えても本開示の効果を得ることはできるが、R2−Si系合金の製造工程中における合金粉末が非常に活性になる。その結果、合金粉末の著しい酸化や発火などを生じることがあるため、R2の含有量はR2−Si系合金全体の95mass%以下が好ましい。R2の含有量は85mass%以上94mass%以下であることがより好ましい。より高いH
cJを得ることができるからである。
【0051】
さらに、R2は、希土類元素全体に対するPrの比率が、R1−T1―B系焼結体の希土類元素全体に対するPrの比率よりも高い。これにより粒界拡散が促進され、磁石内部にSiを拡散させることができる。Prの比率がR1−T1―B系焼結体の希土類元素全体に対するPrの比率よりも低いと、粒界拡散が促進されずSiの拡散は焼結体の表面近傍にとどまる可能性がある。そのため、Siの磁石表面から内部への導入量が不十分となり、高いB
rと高いH
cJを有するR−T−B系焼結磁石を得ることができない可能性がある。好ましくは、前記R1−T1−B系焼結体中の[Pr]/[R1]をα、R2−Si系合金中の[Pr]/[R2]をβとしたとき、β/α≧1.2である。
【0052】
R2の50mass%以上がPrであることが好ましい。より高いH
cJを得ることができるからである。ここで「R2の50mass%以上がPrである」とは、例えばR2−Si合金中におけるR2の含有量が50mass%である場合、R2−Si合金の25mass%以上がPrであることをいう。さらに好ましくは、R2の70mass%以上がPrであり、最も好ましくはR2がPrのみ(不純物は含む)である。これにより、さらに高いH
cJを得ることができる。
【0053】
R2として、Dy、Tb、Gd、Hoなどの重希土類元素を少量含有してもよい。ただし、本開示の製造方法によれば、重希土類元素を多量に用いずとも十分に高いH
cJを得ることができる。そのため、前記重希土類元素の含有量はR2−Si系合金全体の10mass%以下(R2−Si系合金中の重希土類元素が10mass%以下)であることが好ましく、5mass%以下であることがより好ましく、含有しない(実質的に0mass%)ことがさらに好ましい。また、R2−Si系合金のR2が重希土類元素を含有する場合も、R2の50mass%以上がPrであることが好ましく、重希土類元素を除いたR2がPrのみ(不可避的不純物は含む)であることがより好ましい。
【0054】
Siは、R2−Si系合金全体の0.7mass%以上14.0mass%以下である。Siが0.7mass%未満では、後述する熱処理を実施する工程においてR2−Si系合金中のSiがR1−T1−B系焼結体の内部に導入され難くなり高いH
cJを得ることができない。一方、Siが14.0mass%以上であると、B
rが大幅に低下する可能性がある。Siは0.7mass%以上10mass%以下であることがより好ましく、1.0mass%以上6mass%以下であることがさらに好ましい。より高いB
rと高いH
cJを得ることができるからである。
【0055】
好ましくは、R2−Si系合金はCuを含有し、R2−Si系合金全体の0.1mass%以上24.1mass%以下含有する。Cuが24.1mass%を超えると、粒界におけるSiの存在比率が低下する可能性があるため、24.1mass%以下が好ましい。
【0056】
R2−Si系合金は、上記元素の他にCo、Al、Ag、Zn、Ga、In、Sn、Zr、Nb、Ti、Ni、Hf、Ta、W、Ge、Mo、V、Y、La、Ce、Sm、Ca、Mg、Mn、Cr、H、F、P、S、Cl、O、N、C等を含有してもよい。
【0057】
Coは、耐食性の向上のために0.5mass%以上10mass%以下含有することが好ましい。含有量は、Alは1.0mass%以下、Ag、Zn、Ga、In、Sn、Zr、Nb、及びTiはそれぞれ0.5mass%以下、Ni、Hf、Ta、W、Ge、Mo、V、Y、La、Ce、Sm、Ca、Mg、Mn、Si、Crはそれぞれ0.2mass%以下、H、F、P、S、Clは500ppm以下、Oは6000ppm以下、Nは1000ppm以下、Cは1500ppm以下が好ましい。但し、これらの元素の合計の含有量が20mass%を超えると、R2−Si系合金におけるR2及びSiの含有量が少なくなり、高いB
rと高いH
cJを得ることができない可能性がある。そのため、R2−Si系合金におけるR2とSiの合計の含有量は80mass%以上が好ましく、90mass%以上がさらに好ましい。
【0058】
次にR2−Si系合金を準備する工程について説明する。R2−Si系合金は、Nd−Fe−B系焼結磁石に代表される一般的な製造方法において採用されている原料合金の作製方法、例えば、金型鋳造法やストリップキャスト法や単ロール超急冷法(メルトスピニング法)やアトマイズ法などを用いて準備することができる。また、R2−Si系合金は、前記によって得られた合金をピンミルなどの公知の粉砕手段によって粉砕されたものであってもよい。また、前記によって得られた合金の粉砕性を向上させるために、水素雰囲気中で700℃以下の熱処理を行って水素を含有させてから粉砕を行っても良い。
【0059】
(熱処理を実施する工程)
前記によって準備したR1−T1−B系焼結体の表面の少なくとも一部に、前記R2−Si系合金の少なくとも一部を接触させ、真空又は不活性ガス雰囲気中、450℃以上1100℃以下の温度で熱処理をする。これにより、R2−Si系合金からR2及びSiを含む液相が生成し、その液相がR1−T1−B系焼結体の粒界を経由して焼結体表面から内部に拡散導入され、粒界にR−T−Si相が生成される。熱処理温度が450℃未満であると、R2及びSiを含む液相量が少なすぎて、高いB
rと高いH
cJを得ることができない可能性がある。一方、1100℃を超えると主相の異常粒成長が起こりH
cJが低下する可能性がある。熱処理温度は、450℃以上900℃以下が好ましい。より高いB
rと高いH
cJを得ることができるからである。なお、熱処理時間はR1−T1−B系焼結体やR2−Si系合金の組成や寸法、熱処理温度などによって適正値を設定するが、5分以上20時間以下が好ましく、10分以上15時間以下がより好ましく、30分以上10時間以下がさらに好ましい。また、熱処理は1回だけ行ってもよく、複数回行ってもよい。例えば、比較的低い温度(400℃以上600℃以下)のみでの熱処理(一段熱処理)をしてもよく、あるいは比較的高い温度(700℃以上焼結温度以下(例えば1050℃以下))で熱処理を行った後比較的低い温度(400℃以上600℃以下)で熱処理(二段熱処理)をしてもよい。また、R2−Si系合金は、R1−T1−B系焼結体の重量に対し2mass%以上30mass%以下準備した方が好ましい。R2−Si系合金がR1−T1−B系焼結体の重量に対し2mass%未満であるとH
cJが低下する可能性がある。一方、30mass%を超えるとB
rが低下する可能性がある。
【0060】
前記熱処理は、R1−T1−B系焼結体表面に、任意形状のR2−Si系合金を配置し、公知の熱処理装置を用いて行うことができる。例えば、R1−T1−B系焼結体表面をR2−Si系合金の粉末層で覆い、熱処理を行うことができる。例えば、R2−Si系合金を分散媒中に分散させたスラリーをR1−T1−B系焼結体表面に塗布した後、分散媒を蒸発させてR2−Si系合金とR1−T1−B系焼結体とを接触させてもよい。また、後述する実験例に示すように、R2−Si系合金は、少なくともR1−T1−B系焼結体の配向方向に対して垂直な表面に接触させるように配置することが好ましい。なお、分散媒として、アルコール(エタノール等)、NMP(N−メチルピロリドン)、アルデヒド及びケトンを例示できる。また、熱処理が実施されたR1−T1−B系焼結体に対して切断や切削など公知の機械加工を行ってもよい。
【0061】
[R−T−B系焼結磁石]
本開示によるR-T-B系焼結磁石は、R3-T2-X系(又はR3-T2-X-Si系)焼結磁石と称することもできるが、上述したR-T-B系焼結磁石の製造方法により作製されたことを明確化するため「R-T-B系焼結磁石」と称する。
【0062】
本実施形態により作製されたR−T−B系焼結磁石は、以下の特徴を有する。
R3:27mass%以上38mass%以下(R3は、希土類元素のうちの少なくとも一種であり、R3全体の50mass%以上がNdであり、Prを必ず含む)、
X:0.85mass%以上0.93mass%以下(Xは、B及びCの少なくとも一方であり、必ずBを含む)、
Si:0.1mass%以上2.0mass%以下、
T2:61.0mass%以上(T1は、遷移金属元素の少なくとも一種であり、T1全体の90mass%以上がFeである)、
を含有し、
Xに対するT2のmol比([T2]/[X])は13.0以上であり、
Prの濃度は磁石中央部よりも磁石表面部の方が高く、
Siの濃度は磁石中央部よりも磁石表面部の方が高く、
R4−T3−A化合物(R4は、希土類元素のうち少なくとも一種であり、R4全体の50mass%以上がPrである。T3は、Fe、Co、Ni、Mn、Ti、Crのうち少なくとも一種であり、T3全体の50mass%以上がFeである。AはZn、Cu、Ga、Al、Ge、Siのうち少なくとも一種であり、Siを必ず含む)を含有する。
【0063】
R4−T3−A化合物は、典型的には、La
6Co
11Ga
3型結晶構造を有しており、代表的にはR
6Fe
13Si化合物である。R4−T3−A化合物における組成は、R4は5mol%以上50mol%以下(好ましくは20mol%以上40mol%以下)であり、T3は30mol%以上94mol%以下(好ましくは50mol%以上70mol%以下)であり、Aは1mol%以上20mol%以下(好ましくは2mol%以上20mol%以下)である。
【0064】
R4−T3−A化合物のR4全体の50mass%以上をPrとするには、希土類元素全体に対するPrの比率がR1−T1−B系焼結磁石体の希土類元素全体に対するPrの比率よりも高いR2−Si系合金を用いてR1−T1−B系焼結磁石体へ拡散処理することにより実現することができる。
【0065】
ある実施形態において、R4−T3−A化合物は、少なくとも磁石中央部の粒界に存在し、磁石中央部の前記粒界の厚さは、100nm以上である。粒界の厚さは、断面の顕微鏡写真から計測によって求められ得る。後述する実施例によれば、100nm以上の厚さを有する粒界が磁石の全体にわたって存在している。
【0066】
Pr及びSiの濃度が磁石中央部よりも磁石表面部の方が高いということは、Pr及びSiが磁石表面から内部に拡散されていることを示している。R2−Si系合金にCuを含有する場合は、Cuの濃度は磁石中央部よりも磁石表面部の方が高くなる。
【0067】
「Pr及びSiの濃度が磁石中央部よりも磁石表面部の方が高い」は以下のようにして確認する。
【0068】
磁石表面のうちで配向方向(磁化方向)に直交する面から配向方向に沿って厚さが200μmまでの領域(以下、単に「磁石表面部」と称する場合がある)における100μm×100μmの範囲のPr濃度が、磁石中央部(同様に磁石中央部における100μm×100μmの範囲)におけるPr濃度よりも高いかどうかにより確認する。Si(及びCu)も同様の方法により確認する。「Pr濃度」及び「Si(Cu)濃度」は、例えば、磁石中心部を通り、かつ、配向方向に平行である断面において、磁石中央部及び磁石表面部を走査電子顕微鏡で観察し、更に観察した磁石中央部及び磁石表面部の領域の中心点から±50μm、すなわち100μm×100μmの範囲を走査しながらエネルギー分散X線分光分析(EDX)をそれぞれ実施することによって測定された、範囲全体の平均値を求めればよい。
【0069】
また、磁石が
図3に示すように瓦形状を有し、配向方向が磁石の厚さ方向(矢印101の方向)の場合、磁石表面のうちで配向方向に直交する面は、第1の曲面(上面)104及び第2の曲面(裏面)105の少なくとも一方である。よって、第1の曲面104及び第2の曲面105から配向方向に沿って測定した厚さ200μmの領域が磁石表面部となる。
【0070】
なお、磁石が瓦形状であり、配向方向が磁石が延びる方向(矢印102の方向)の場合は、第1の端面106及び第2の端面107が磁石表面のうちで配向方向に直交する面となる。
【0071】
なお、磁石が円筒形状の場合、
図3における矢印102の方向を中心軸の方向にあわせ、矢印101の方向を半径方向とすれば、瓦形状の磁石について説明したことが適用される。
【0072】
更に、本開示では、磁石が瓦形状であり、配向方向が磁石の幅方向(矢印103の方向)の場合、磁石表面のうちで配向方向に直交する面は、配向方向と略直交する
図3中の第1の側面108及び第2の側面109とする。よって、この場合は、第1の側面108及び第2の側面109から配向方向に沿って測定した厚さ200μmの領域が磁石表面部となる。
【0073】
磁石中央部とは、磁石の中央に位置する部分であり、磁石が多面体形状や円柱形状の場合は典型的には重心部である。磁石が
図3に示すように瓦形状の場合は、磁石中央部は、磁石の厚さ方向(矢印101の方向)、長さ方向(矢印102の方向)、及び幅方向(矢印103の方向)の全ての中心に位置する部分100とする。磁石が円筒形状の場合は、磁石中心部は、磁石の厚さ方向及び長さ方向両方の中心に位置する部分とする。なお、上記の「磁石表面部」は、製造工程の途中において、R2−Si系合金と接触し、R2−Si系合金からPr及びSiの供給を受けた部位である。このような拡散に起因してPr及びSiの濃度勾配が磁石内部に発生し、この濃度勾配は最終的に得られる磁石内部においても残る。Pr及びSiの濃度が磁石中心部に比べ高い「磁石表面部」は、磁石の表面全体に位置している必要はない。
【0074】
Prの濃度は、磁石中央部よりも磁石表面部の方が2.0mass%以上高いことが好ましく、Si及びCuの濃度は、磁石中央部よりも磁石表面部の方が0.1mass%以上高いことが好ましい。ここで本開示における「Prの濃度は、磁石中央部よりも磁石表面部の方が2.0mass%以上高い」とは、磁石表面のうちで配向方向(磁化方向)に直交する面から配向方向に沿って測定した厚さが200μmの領域(「磁石表面部」)におけるPr濃度が、磁石中央部におけるPr濃度よりも、パーセントポイント(mass%)で2.0以上高いことをいう。例えば、磁石中央部のPr濃度が5.0mass%であった場合、磁石表面部のPr濃度が7.0mass%以上であることを意味する。Si及びCuの濃度についても同様である。Pr、SI及びCuの濃度は、例えば、磁石中心部を通り、かつ、配向方向に平行である断面において、磁石中央部及び磁石表面部を走査電子顕微鏡で観察し、更に観察した磁石中央部及び磁石表面部をEDXによって測定することで行われ得る。上記の構成を有することにより、本開示によるR−T−B系焼結磁石は、磁石表面近傍のみならず、磁石内部の保磁力が向上する。これは、二粒子粒界が厚いためである。また、磁石寸法調整のための表面研削によっても保磁力向上効果が大きく損なわれることがない。そして、重希土類元素を用いずとも、高いB
rと高いH
cJを実現できる。
【実施例】
【0075】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0076】
実験例1
[R1−T1−B系焼結体の準備]
Ndメタル、Prメタル、フェロボロン合金、フェロカーボン合金、電解鉄を用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、焼結体がおよそ表1に示す符号1−Aから1−Cの組成となるように配合し、それらの原料を溶解してストリップキャスト法により鋳造し、厚さ0.2〜0.4mmのフレーク状の原料合金を得た。得られたフレーク状の原料合金を水素粉砕した後、550℃まで真空中で加熱後冷却する脱水素処理を施し粗粉砕粉を得た。次に、得られた粗粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を粗粉砕粉100mass%に対して0.04mass%添加、混合した後、気流式粉砕機(ジェットミル装置)を用いて、窒素気流中で乾式粉砕し、粉砕粒径D
50が4μmの微粉砕粉(合金粉末)を得た。なお、粉砕粒径D
50は、気流分散法によるレーザー回折法で得られた体積中心値(体積基準メジアン径)である。
【0077】
前記微粉砕粉に、潤滑剤としてステアリン酸亜鉛を微粉砕粉100mass%に対して0.05mass%添加、混合した後磁界中で成形し成形体を得た。なお、成形装置には、磁界印加方向と加圧方向とが直交するいわゆる直角磁界成形装置(横磁界成形装置)を用いた。
【0078】
得られた成形体を、真空中、1000℃以上1040℃以下(サンプル毎に焼結による緻密化が十分起こる温度を選定)で4時間焼結した後急冷し、R1−T1−B系焼結体を得た。得られた焼結体の密度は7.5Mg/m
3以上であった。得られた焼結体の組成を表1に示す。なお、表1における各成分は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。なお、焼結体の酸素量をガス融解−赤外線吸収法で測定した結果、すべて0.4mass%前後であることを確認した。表1における「[T1]/[B]」は、T1を構成する各元素(不可避の不純物を含む、本実験例ではFe、Al、Si、Mn)に対し、分析値(mass%)をその元素の原子量で除したものを求め、それらの値を合計したもの(a)と、Bの分析値(mass%)をBの分析値(mass%)をBの原子量で除したもの(b)との比(a/b)である。以下の全ての表も同様である。なお、表1の各組成を合計しても100mass%にはならない。これは、前記の通り、各成分によって分析方法が異なるため、さらには、表1に挙げた成分以外の成分(例えばC(カーボン)やN(窒素)など)が存在するためである。その他表についても同様である。
【0079】
【表1】
【0080】
[R2−Si系合金の準備]
Prメタル、Cuメタル、Siメタルを用いて(メタルはいずれも純度99%以上)、合金がおよそ表2に示す符号1−aの組成になるように配合し、それらの原料を溶解して、単ロール超急冷法(メルトスピニング法)により、リボン又はフレーク状の合金を得た。得られた合金を乳鉢を用いてアルゴン雰囲気中で粉砕した後、目開き425μmの篩を通過させ、R2−Si系合金を準備した。得られたR2−Si系合金の組成を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
[熱処理]
表1の符号1−Aから1−CのR1−T1−B系焼結体を切断、切削加工し、11.0mm×5.0mm×4.4mm(配向方向)の直方体とした。次に、
図4に示すように、ニオブ箔により作製した処理容器3中に、主にR1−T1−B系焼結体1の配向方向(図中の矢印方向)と垂直な面がR2−Si系合金2と接触するように、表2に示す符号1−aのR2−Si系合金を、符号1−Aから1−CのR1−T1−B系焼結体のそれぞれの上下に配置した。
【0083】
その後、管状流気炉を用いて、200Paに制御した減圧アルゴン中で、表3に示す熱処理温度及び時間で熱処理を行った後、冷却した。熱処理後の各サンプルの表面近傍に存在するR2−Si系合金の濃化部を除去するため、表面研削盤を用いて各サンプルを全面を0.2mmずつ切削加工し、4.0mm×4.0mm×4.0mmの立方体状のサンプル(R−T−B系焼結磁石)を得た。R−T−B系焼結磁石の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)を使用して測定した。但し、C(炭素量)については、燃焼−赤外線吸収法によるガス分析装置を使用して測定した。結果を表3に示す。表3における「[T2]/[X]」は、T2を構成する各元素(不可避の不純物を含む、本実験例ではFe、Al、Mn、Si)に対し、分析値(mass%)をその元素の原子量で除したものを求め、それらの値を合計したもの(a´)と、X(B及びC)の分析値(mass%)をそれぞれの元素の原子量で除したものを求め、それらの値を合計したもの(b´)との比(a´/b´)である。
【0084】
[サンプル評価]
得られたサンプルを、BHトレーサーにより保磁力(H
cJ)を測定した。測定結果を表3に示す。表3の通り、R1−T1−B系焼結体におけるBに対するT1のmol比([T1]/[B])を14.0以上及びR−T−B系焼結磁石におけるXに対するT2のmol比([T2]/[X])を13.0以上としたときに高いH
cJが得られた。
【0085】
【表3】
【0086】
表3に示すサンプルのうち、No.1−1(本発明例)とNo.1−3(比較例)の断面を走査電子顕微鏡(SEM:日本電子製JCM−7001F)で観察した。その結果、No.1−1(本発明例)では、磁石表面近傍から磁石の中央部まで100nm以上の厚い二粒子粒界が形成されていた。これに対し、No.1−3(比較例)では、厚い二粒子粒界の形成は磁石表面近傍のみにとどまっていた。さらに、本発明例であるNo.1−1の断面に対しSEM(日本電子製JSM-7001F)付属装置(日本電子製JED−2300 SD10)によるエネルギー分散X線分光分析(EDX)を実施した結果、磁石中央部の粒界からも元々R1−T1−B系焼結体が拡散処理前から有していた以上の量のSiが検出されるとともに、その一部は含有量から、R
6T
13(Si,Cu)相と解釈された。
【0087】
実験例2
焼結体がおよそ表4に示す符号2−Aの組成となるように配合する以外は実験例1と同様の方法でR1−T1−B系焼結体を複数個作製した。得られた焼結体の成分分析の結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
【0089】
R2−Si系合金がおよそ表5に示す符号2−aから2−pの組成となるように配合する以外は実験例1と同様の方法でR2−Si系合金を作製した。得られたR2−Si系合金の組成を表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】
複数個のR1−T1−X系焼結体を実験例1と同様に加工した後、実験例1と同様に符号2−aから2−pのR2−Si系合金と符号2−AのR1−T1−B系焼結体とが接触するよう配置し、実験例1と同様に熱処理及び加工を行い、サンプル(R−T−B系焼結磁石)を得た。得られたサンプルを実験例1と同様な方法により測定し、保磁力(H
cJ)を求めた。その結果を表6に示す。表6の通り、本発明例はいずれも高いH
cJが得られた。また、R2として、PrがR2全体に対して50mass%以上とした本発明例はいずれも高いH
cJが得られたのに対し、PrがR2全体の50mass%未満であるサンプルNo.2−10は本発明例の中においては比較的低いH
cJとなった。これに対し、R2−Si系合金におけるSi量がはずれているNo.2−1、R量及びSi量がはずれているNo.2−11及び2−14、R量がはずれているNo.2−16はいずれも高いH
cJが得られていない。
【0092】
【表6】
【0093】
図5A〜Dは表6に示すNo.2−4(本発明例)の断面を走査電子顕微鏡(SEM:日本電子製JCM−7001F)で観察したものである。
図5Aは磁石表面部の領域を観察した写真であり、
図5Bは磁石表面部をさらに拡大して観察した写真であり、
図5Cは磁石中央部の領域を観察した写真であり、
図5Dは磁石中央部をさらに拡大して観察した写真である。同様に
図6A〜Dは表3に示すNo.1−1(本発明例)、
図7A〜Dは表3に示すNo.1−3(比較例)について観察した写真である。
図5A〜
図7Dに示すように、
図5A〜D及び
図6A〜Dの本発明例は磁石中央部まで100nm以上の厚い二粒子粒界が形成されているのに対し、
図7A〜Dの比較例では、磁石中央部において100nm以上の厚い二粒子粒界が得られていない。
【0094】
図5A〜D、
図6A〜D及び
図7A〜D中において、□1から□6で示した100μm×100μmの領域及び○(白丸)1から〇(白丸)6で示した点領域において実施したEDXによる組成分析の結果を表7に示す。□1から□4(本発明例)に示すように、Pr及びSiの濃度はいずれも磁石中央部より磁石表面部の方が高くなっていることが分かる。これに対し、□5及び□6(比較例)では、Siの濃度が磁石表面部と磁石中央部とで同じになっている。
【0095】
【表7】
【0096】
また表7において、図中記号〇(白丸)1〜6は走査電子顕微鏡の観察においてコントラストから磁石表面部及び磁石中央部内に存在するR
6Fe
13(Si,Cu)相と考えられるR4−T3−A化合物の組成を評価したものであるが、いずれもR4全体の50mass%以上がPrとなっている。代表して表7における〇(白丸)2の測定点について、電界放射型透過電子顕微鏡(FE−TEM:日立ハイテクノロジー製HF-2100)を用いて評価したところ、回折パターンからLa
6Co
11Ga
3型の結晶構造であることが示されており、組成比から(Nd,Pr)
6Fe
13(Cu,Si)相であることを確認した。