特許第6972942号(P6972942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6972942
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】感圧センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20211111BHJP
   H01H 13/18 20060101ALI20211111BHJP
   H01H 3/16 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   G01L1/20 A
   H01H13/18 Z
   H01H3/16 B
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-216009(P2017-216009)
(22)【出願日】2017年11月9日
(65)【公開番号】特開2018-109608(P2018-109608A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2020年5月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-256304(P2016-256304)
(32)【優先日】2016年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】中山 明成
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/194030(WO,A1)
【文献】 特開2009−002663(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/140943(WO,A1)
【文献】 特開2002−324441(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0232391(US,A1)
【文献】 特開2013−018957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/20
G01L 5/00
H01H 13/18
H01H 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部が長手方向に連続して形成される弾性変形可能な長尺状の中空絶縁体と、
前記中空部の内周面に沿って長手方向にわたって設けられ、前記中空絶縁体の弾性変形に伴って撓んだときに互いに接触するように離間して対向配置される、導体の外周に導電性被覆が設けられる複数の電極線と、
前記中空絶縁体の外周を被覆するように形成される外層と、を備え、
前記中空絶縁体は、JIS K6262に準拠した70℃における圧縮ひずみが12%以上31%以下のスチレン系熱可塑性エラストマ(a1)を含む絶縁性組成物(A)から形成され、
前記外層は、ポリエーテル系ポリウレタンで形成された熱可塑性ポリウレタン(c1)と不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性され、JIS K6262に準拠した70℃における圧縮永久ひずみが48%以上81%以下の酸変性ポリマ(c2)とを含む絶縁性組成物(C)から形成され、
前記中空絶縁体を形成する前記スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)は、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、およびスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体の少なくとも1つで形成され、
前記外層を形成する前記絶縁性組成物(C)は、前記熱可塑性ポリウレタン(c1)を90質量部以上99質量部以下と、前記酸変性ポリマ(c2)を1質量部以上10質量部未満とを合計で100質量部含有する、感圧センサ。
【請求項2】
前記複数の電極線は、前記中空部で互いに接触しないように螺旋状に対向配置される、請求項1に記載の感圧センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感圧センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両などにはドアパネルを電動で移動させる自動開閉装置が取り付けられている。自動開閉装置は、車両の乗降口の周縁部とドアパネルとの間の開閉部において異物や人体が挟まれたり接触したりすることを検知すべく、感圧センサが取り付けられるようになっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
感圧センサは、一般に、中空部が長手方向に連続して形成される長尺状の中空絶縁体と、中空部内に、中空絶縁体が弾性変形したときに互いに接触するように離間して対向配置される複数の電極線と、を備えて構成される。電極線は、導体の外周に導電性の樹脂組成物から形成される導電性被覆が設けられたものである。感圧センサにおいては、異物との接触による外圧に応じて中空絶縁体が弾性変形したときに、その中空部にある電極線同士が接触して抵抗値が変化することで、異物が接触したことが検知される。
【0004】
中空絶縁体や電極線の導電性被覆には感圧センサにおいて所望の感度を得る観点から柔軟性と弾性変形からの回復性とが必要とされるため、それらの形成材料としては一般にゴム組成物が用いられている。ゴム組成物としては、例えばエチレン−プロピレン−ジエン共重合体やシリコーンゴムなどのゴム成分をベースとして、導電性を付与する場合にカーボンブラックなどの導電性付与剤が配合される。
【0005】
中空絶縁体や導電性被覆をゴム組成物で形成する場合、所望の弾性率を得るために成形後に架橋処理を施すことになる。架橋処理としては、熱風、熱プレス、高圧水蒸気下などで架橋させる方法がある。ただし、これらの架橋処理をゴム組成物の成形と別工程で行うと工程数が増加するため、仮に成形と同一ラインで行ったとしても架橋処理に時間がかかるため、製造コストが増えてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、ゴム成分に代わって、成形後の架橋処理が必要のないエラストマ成分を用いることが検討されている。例えば、スチレン系の熱可塑性エラストマが検討されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−158336号公報
【特許文献2】特開2012−119309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、中空絶縁体の外周には保護部材としての外層が設けられる。この外層には、保護部材としての特性だけでなく、中空絶縁体や導電性被覆と同様に柔軟性や弾性変形からの回復性が求められる。そのため、外層の形成材料としては機械特性にも優れる熱可塑性ポリウレタンが検討されている。
【0009】
しかしながら、熱可塑性ポリウレタンを含む組成物から外層を形成すると、スチレン系熱可塑性エラストマを含む組成物で形成する中空絶縁体との接着性が十分に確保できない場合がある。感圧センサにおいては、センサ内部の防水性を高める目的で端末が樹脂で封止されることがあるが、中空絶縁体と外層との接着性が不十分であると、射出成形された樹脂が界面に侵入することで、外観不良や寸法不良が生じてしまう。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、中空絶縁体と外層との接着性に優れる感圧センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、
中空部が長手方向に連続して形成される弾性変形可能な長尺状の中空絶縁体と、
中空部の内周面に沿って長手方向にわたって設けられ、中空絶縁体の弾性変形に伴って撓んだときに互いに接触するように離間して対向配置される、導体の外周に導電性被覆が設けられる複数の電極線と、
中空絶縁体の外周を被覆するように形成される外層と、を備え、
中空絶縁体は、スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)を含む絶縁性組成物(A)から形成され、
外層は、熱可塑性ポリウレタン(c1)と不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性された酸変性ポリマ(c2)とを含む絶縁性組成物(C)から形成される、感圧センサが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、中空絶縁体と外層との接着性に優れる感圧センサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る感圧センサの概略構成を示す斜視図であり、(b)は、感圧センサの長手方向に垂直な断面図である。
図2】感圧センサが外圧により変形した状態を示す断面図である。
図3】実施例において感圧センサにおける電極線と中空絶縁体との接着性および高温環境での耐圧縮性を評価する試験方法を説明する概略図である。
図4】感圧センサの端末をモールド樹脂で封止したときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態に係る感圧センサについて図面を用いて説明をする。図1は、(a)が本発明の一実施形態に係る感圧センサの概略構成を示す斜視図であり、(b)が感圧センサの長手方向に垂直な断面図である。図2は、感圧センサが外圧により変形した状態を示す断面図である。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
〔感圧センサの概略構成〕
本実施形態の感圧センサ10は、図1(a)および(b)に示すように、中空部15が長手方向に連続して形成される弾性変形可能な長尺状の中空絶縁体14と、中空部15の内周面に沿って長手方向にわたって設けられ、中空絶縁体14の弾性変形に伴って撓んだときに互いに接触するように離間して対向配置される、導体11の外周に導電性被覆12が設けられる複数の電極線13と、中空絶縁体14の外周を被覆するように形成される外層16と、を備えて構成され、長尺なケーブル状物である。
【0016】
中空絶縁体14は、後述する絶縁性組成物(A)により形成されるとともに中空部15が長手方向に連続して形成されて略円筒状をなすことにより、感圧センサ10が外圧を受けたときに弾性変形可能なように構成されている。
【0017】
中空絶縁体14は中空部15を有していればよく、その形状や厚さは特に限定されない。中空部15は、複数の電極線13を接触しないように収容できるような大きさであればよく、電極線13の本数に応じて適宜変更することができる。
【0018】
中空絶縁体14の中空部15の内周面には、中空絶縁体14に保持されるように1対の電極線13が配置されている。1対の電極線13は、中空部15において互いに接触しないよう互いに離間して対向配置されている。また本実施形態では、1対の電極線13は、図1(a)に示すように、中空部15の内周面に沿って長手方向にわたって螺旋状に巻回されて、感圧センサ10における長手方向のいずれの箇所でも対向するように配置されている。
【0019】
電極線13は、図1(b)に示すように、導体11と、後述する導電性組成物(B)から形成される導電性被覆12とを備えている。
【0020】
導体11としては、通常用いられる金属線、例えば銅線、軟銅線、銅合金線の他、アルミニウム線、金線、銀線などを用いることができる。また、耐熱性の向上のために金属線の外周に錫、ニッケル、銀および金などの金属めっきを施したものを用いてもよい。さらに、金属線を撚り合わせた集合撚り導体を用いることもできる。導体11の外径は、特に限定されず、電極線13に求められる電気特性に応じて適宜変更するとよい。
【0021】
導体11の外周には導電性被覆12が設けられている。導電性被覆12は後述の導電性組成物(B)から形成されており、外圧による中空絶縁体14の変形に伴って電極線13が撓んで電極線13同士が接触したときに導通させる。導電性被覆12の厚さは、電極線13に要求される導電性や柔軟性に応じて適宜変更するとよい。
【0022】
中空絶縁体14の外周には外層16が設けられている。外層16は、後述する絶縁性組成物(C)により形成され、中空絶縁体14を被覆して保護する。外層16の厚さは、中空絶縁体14を被覆して保護しつつ、柔軟性を維持できるような厚さとするとよい。
【0023】
感圧センサ10は、例えば、一方の端末から引き出した2本の電極線13を抵抗を介して接続するとともに、もう一方の端末から引き出した2本の電極線13に給電部(図示略)が接続され、電極線13に電流が供給されるように構成される。そして、図1(b)に示すように、感圧センサ10に外圧が加わっていない状態では、給電部から一方の電極線13に供給される電流が抵抗を介して、もう一方の電極線13に流れる。これに対して、図2に示すように、感圧センサ10に外圧が加わると、外圧が加わった箇所における中空絶縁体14が弾性変形するとともに、その変形に伴って中空部15にある電極線13が撓むことで、電極線13同士が接触し、その接触部分からも電流が流れることになる。これにより抵抗値が変動し、給電部が一定の電圧で電流を供給している場合であれば、電流値が変化することになる。そして、この電流値の変化を検知することにより、感圧センサ10に外圧が加わったことが検知されることになる。
【0024】
〔各部材の形成材料〕
続いて、上述の感圧センサ10を構成する中空絶縁体14、電極線13の導電性被覆12、および外層16の各形成材料について説明する。
【0025】
(中空絶縁体の形成材料)
上述したように、本実施形態では中空絶縁体14の架橋処理を省略するため、中空絶縁体14を、架橋処理が必要となるゴム組成物に替えて架橋処理の必要のないエラストマ組成物を用いて形成する。このエラストマ組成物として、機械特性、耐熱性、柔軟性、および弾性変形からの回復性(耐圧縮性)の観点から、スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)を含む絶縁性組成物(A)を用いる。
【0026】
スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)(以下、単に(a1)成分ともいう)は、ハードセグメントとしてスチレン系単量体(例えばポリスチレン)からなる重合体ブロックと、ソフトセグメントとしてオレフィンからなる重合体ブロックと、を有するブロック共重合体またはランダム共重合体である。具体的には、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)や、これらに水素添加したスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)などを用いることができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)は、分子鎖中の不飽和結合が少ないほど耐熱性が高くなるので、中空絶縁体14の耐熱性を向上させる観点からは、水素添加により分子鎖に二重結合を含まないものが好ましく、具体的には、SEBS、SEPSおよびSEEPSなどが好ましい。
【0028】
スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)は、感圧センサ10の高温環境下での作動性(高温作動性)を高める観点から、中空絶縁体14が高温環境下で変形を繰り返した場合であっても元の形状に復元できるとよく、70℃における圧縮永久ひずみが30%以下であることが好ましい。圧縮永久ひずみが大きくなると、中空絶縁体14が変形を繰り返し受けたときに復元せずに電極線13同士が接触したままの状態となり、感圧センサ10が正常に作動しなくなるおそれがあるが、30%以下とすることにより、感圧センサ10の高温作動性を高く維持することができる。なお、ここでの70℃における圧縮永久ひずみはJIS K6262に準拠して測定されるものである。
【0029】
なお、スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)のスチレン含有量や分子量は特に限定されない。
【0030】
また、絶縁性組成物(A)はスチレン系熱可塑性エラストマ(a1)以外にゴム成分や結晶性樹脂などを含んでもよい。
【0031】
また、絶縁性組成物(A)は必要に応じて加工助剤、オイル、難燃剤、難燃助剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、銅害防止剤、滑剤、充填剤、相溶化剤、安定剤、着色剤等の他の添加物を含んでもよい。
【0032】
(導電性被覆の形成材料)
導電性被覆12には、感圧センサ10を長期間にわたって機能させるために、中空絶縁体14を変形させて元の状態に復元させるという過程を繰り返し行っても中空絶縁体14から剥がれないような接着性が求められる。本実施形態では、所望の接着性を得るため、導電性被覆12は中空絶縁体14と同様のエラストマ成分を用いて形成されるとともに所定の導電性を付与すべく導電性付与剤が配合されることが好ましい。すなわち、導電性被覆12は、スチレン系熱可塑性エラストマ(b1)および導電剤(b2)を含む導電性組成物(B)から形成されることが好ましい。
【0033】
導電性被覆12を形成するスチレン系熱可塑性エラストマ(b1)(以下、単に(b1)成分ともいう)としては、中空絶縁体14を形成するスチレン系熱可塑性エラストマ(a1)と同様のものを用いることができる。
【0034】
導電性付与剤(b1)は、スチレン系熱可塑性エラストマ(b1)に導電性を付与するものである。導電性付与剤(b1)としては、特に限定されず、例えばカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。カーボンブラックの中でもケッチェンブラックが好ましい。ケッチェンブラックによれば、少ない配合量で優れた導電性を得られるので、導電性被覆12への配合量を少なくして柔軟性を高く維持することができる。なお、粒子径は、特に限定されない。
【0035】
導電性付与剤(b1)の配合量は、導電性被覆12に求められる導電性に応じて適宜変更するとよいが、スチレン系熱可塑性エラストマ(b1)100質量部に対して10質量部〜100質量部であることが好ましい。10質量部以上とすることにより、導電性被覆12において所望の導電性が得られる。100質量部以下とすることにより、導電性付与剤(b1)の配合によって導電性組成物(B)が硬くなることを抑制して、導電性組成物(B)の加工性とともに導電性被覆12の柔軟性および耐摩耗性を高く維持することができる。
【0036】
なお、導電性組成物(B)は、絶縁性組成物(A)と同様、スチレン系熱可塑性エラストマ(b1)以外のゴム成分や結晶性樹脂などを含んでもよく、上述した他の添加剤を含んでもよい。
【0037】
(外層の形成材料)
外層16には、中空絶縁体14を保護できるような機械特性、柔軟性、そして中空絶縁体14との高い接着性が求められる。本実施形態では、機械特性および柔軟性の観点から熱可塑性ポリウレタン(c1)(以下、単に(c1)成分ともいう)を用いるが、(c1)成分は中空絶縁体14を形成するスチレン系熱可塑性エラストマ(b1)との親和性が低く、中空絶縁体14との間で十分な接着性が得られない。そこで、本実施形態では、(c1)成分に、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性された酸変性ポリマ(c2)(以下、単に(c2)成分ともいう)を配合して接着性を向上させている。
【0038】
熱可塑性ポリウレタン(c1)は、ジオール成分とジイソシアネート成分と必要に応じて鎖伸長剤とを反応させて得られ、特に外層16の機械特性や柔軟性に寄与する。(c1)成分としては、ポリエステル系ポリウレタン(アジペート系、カプロラクトン系およびポリカーボネート系など)とポリエーテル系ポリウレタンを用いることができる。耐湿熱性の観点からはポリエーテル系ポリウレタンが好ましい。
【0039】
熱可塑性ポリウレタン(c1)を構成するジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール等を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
熱可塑性ポリウレタン(c1)を構成するジイソシアネート成分としては、例えばテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
酸変性ポリマ(c2)は、ポリマが不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性されたものであり、外層16の中空絶縁体14との接着性を高めるものである。
【0042】
酸変性ポリマ(c2)を構成するポリマとしては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、ポリブテン、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、エチレン−ブテン−ヘキセン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、およびエチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などの結晶性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1−ジエン共重合体、エチレン−オクテン−1−ジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴム、およびアクリルゴムなどのゴム、並びにポリオレフィン系、スチレン系、ポリエステル系、およびポリアミド系などの熱可塑性エラストマを用いることができる。
不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびフマル酸などを用いることができ、不飽和カルボン酸の誘導体としては上記不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、エステル、無水物等があり、これらの中でも無水マレイン酸が好ましい。
【0043】
酸変性ポリマ(c2)としては、外層16の高温での圧縮永久ひずみを小さくして感圧センサ10の高温作動性を高く維持する観点からは、上記成分の中でも70℃における圧縮永久ひずみが70%以下であるものが好ましい。このような(c2)成分によれば、圧縮永久ひずみの比較的小さな熱可塑性ポリウレタン(c1)と混合して外層16を形成したときに、その圧縮永久ひずみを60%以下とすることができる。なお、外層16は、感圧センサ10の単位長さ当たりの体積(いわゆる目付量)が中空絶縁体14と比べて小さいので、圧縮永久ひずみが中空絶縁体14よりも大きくてもよいが、60%以下とすることにより感圧センサ10の高温作動性をより高く維持することができる。なお、酸変性ポリマ(c2)の結晶性や分子量などは圧縮永久ひずみが70%以下となるような範囲であればよい。
【0044】
外層16を形成する絶縁性組成物(C)において、熱可塑性ポリウレタン(c1)および酸変性ポリマ(c2)の含有量は特に限定されないが、(c1)成分を30質量部〜99質量部と、(c2)成分を1質量部〜70質量部とを、合計で100質量部含有することが好ましい。(c2)成分の配合量を1質量部以上とすることにより中空絶縁層との接着性を確保することができる一方、70質量部以下とすることにより(c1)成分が本来有する機械特性や柔軟性を高く維持することができる。接着性、機械特性および柔軟性を高い水準でバランスよく得る観点からは、(c1)成分を40質量部〜95質量部、(c2)成分を5質量部〜60質量部とすることが好ましい。
【0045】
なお、絶縁性組成物(C)は、絶縁性組成物(A)や導電性組成物(B)と同様、上述した他の添加剤を含んでもよい。
【0046】
〔感圧センサの製造方法〕
続いて、感圧センサ10の製造方法について説明する。
【0047】
まず、導体11の外周に導電性被覆12が設けられた電極線13を準備する。電極線13は、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマ(b1)および導電剤(b2)を含む導電性組成物(B)を導体11の外周に押し出して導電性被覆12を形成して作製される。
【0048】
続いて、1本の長尺なスペーサを中心として、その周囲に2本の電極線13と4本の長尺なスペーサとを電極線13同士が互いに接触しないように離間させて配置し、これらを撚り合わせてコアを形成する。コアにおいては、2本の電極線13がスペーサの長手方向に沿って螺旋状に対向配置されることになる。
【0049】
続いて、コアの外周に、スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)を含む絶縁性組成物(A)を押し出すことで、コアを被覆する略円筒状の絶縁体を形成する。また、絶縁体の外周に、熱可塑性ポリウレタン(c1)と酸変性ポリマ(c2)とを含む絶縁性組成物(C)を押し出して外層16を形成する。本実施形態では、絶縁体および外層16をエラストマ成分で形成しているので、架橋処理を必要としない。
【0050】
そして、絶縁体からスペーサを引き抜くことにより、長手方向に連続して形成される中空絶縁体14が形成される。中空絶縁体14では、2本の電極線13が中空部15の内周面に沿って長手方向にわたって螺旋状に巻回されるとともに、互いに接触しないように離間して対向配置されている。
【0051】
以上により、本実施形態の感圧センサ10を得る。
【0052】
<本実施形態にかかる効果>
本実施形態の感圧センサ10では、中空絶縁体14を、スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)を含む絶縁性組成物(A)で形成するとともに、外層16を、熱可塑性ポリウレタン(c1)および酸変性ポリマ(c2)を含む絶縁性組成物(C)で形成している。(c1)成分に(c2)成分を配合して外層16を形成することにより、(a1)成分を含む中空絶縁体14との接着性を高めることができる。また、(a1)成分によれば、架橋処理を施す必要がないので、感圧センサ10の製造工程数を減らしてコストを下げることができる。したがって、本実施形態によれば、架橋処理が必要なく、中空絶縁体14と外層16との接着性に優れる感圧センサ10が得られる。
【0053】
また、本実施形態では、電極線13の導電性被覆12を、スチレン系熱可塑性エラストマ(b1)および導電剤(b2)を含む導電性組成物(B)で形成している。すなわち、導電性被覆12と中空絶縁体14とを同じエラストマ成分で形成している。これにより、中空絶縁体14と導電性被覆12との接着性を高め、感圧センサ10を繰り返し作動させた場合であっても中空絶縁体14からの電極線13の剥離を抑制することができる。よって、感圧センサ10の長期信頼性を高めることができる。
【0054】
外層16を形成する絶縁性組成物(C)は、熱可塑性ポリウレタン(c1)を30質量部〜99質量部と、酸変性ポリマ(c2)を1質量部〜70質量部とを合計で100質量部含有することが好ましい。これにより、外層16の中空絶縁体14との接着性を確保しつつ、外層16において(c1)成分が本来有する機械特性および柔軟性を高く維持することができる。
【0055】
熱可塑性ポリウレタン(c1)がポリエーテル系ポリウレタンであることが好ましい。これにより、外層16の耐湿熱性を高め、感圧センサ10の高温作動性を高めることができる。
【0056】
酸変性ポリマ(c2)は、JIS K6262に準拠した70℃における圧縮永久ひずみが70%以下であることが好ましい。これにより、外層16における圧縮永久ひずみを60%以下として、高温環境下での圧縮永久ひずみを低減でき、感圧センサ10の高温作動性および長期信頼性を高めることができる。
【0057】
スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)は、JIS K6262に準拠した70℃における圧縮永久ひずみが30%以下であることが好ましい。これにより、中空絶縁体14における高温環境下での圧縮永久ひずみを低減して、感圧センサ10の高温作動性および長期信頼性を高めることができる。
【0058】
中空絶縁体14の中空部15にて、複数の電極線13が互いに接触しないように螺旋状に対向配置されていることが好ましい。複数の電極線13を感圧センサ10の長手方向にわたって螺旋状に巻回させることにより、感圧センサ10の長手方向のいずれの箇所においても電極線13同士が対向して配置させることができる。そのため、感圧センサ10の屈曲性を高めるために電極線13の本数を2本に減らした場合であっても、感圧センサ10の感度を維持することができる。
【0059】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0060】
上述の実施形態では、2本の電極線を長手方向にわたって螺旋状に巻回されるように配置する場合について説明したが、電極線の本数やその配置は特に限定されない。例えば、電極線を4本として、これらが互いに接触しないように直線状に配置するようにしてもよい。
【0061】
また、上述の実施形態では、中空絶縁体と外層とを別々に押し出して形成する場合について説明したが、電極線とスペーサとを撚り合わせたコアの外周に2層を同時に押出するようにして形成してもよい。
【実施例】
【0062】
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0063】
本実施例で用いた材料は以下のとおりである。
【0064】
スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)として以下の3種類を用いた。
(a1−1)成分:スチレン系熱可塑性エラストマ(アロン化成株式会社製「AR−1050」、圧縮永久ひずみ(70℃×24h)12%)
(a1−2)成分:スチレン系熱可塑性エラストマ(アロン化成株式会社製「AR−AR−720」、圧縮永久ひずみ(70℃×24h)28%)
(a1−3)成分:スチレン系熱可塑性エラストマ(アロン化成株式会社製「AR−750」、圧縮永久ひずみ(70℃×24h)31%)
【0065】
オレフィン系熱可塑性エラストマとして、リケンテクノス株式会社製「LVG9608N」(圧縮永久ひずみ(70℃×24h)15%)を用いた。
【0066】
スチレン系熱可塑性エラストマ(b1)および導電性付与剤(b2)を含む導電性材料(B)として以下を用いた。
導電性スチレン系熱可塑性エラストマ(アロン化成株式会社製「AR−EL2−D30B」、カーボンブラック含有)
【0067】
熱可塑性ポリウレタン(c1)として、エーテル系ポリウレタン(BASFジャパン株式会社製「エラストラン1180A、圧縮永久ひずみ(70℃×24h)45%」)を用いた。
【0068】
酸変性ポリマ(c2)として以下を用いた。
(c2−1)成分:無水マレイン酸共重合エチレンエチルアクリレート(アルケマ株式会社製「ボンダインLX4110」、圧縮永久ひずみ(70℃×24h)48%)
(c2−2)成分:無水マレイン酸変性SEBS(旭化成ケミカルズ株式会社製「タフテックH1041」、圧縮永久ひずみ(70℃×24h)70%)
(c2−3)成分:無水マレイン酸変性エチレンビニルアセテート(三菱化学株式会社製「モディックAP A515」、圧縮永久ひずみ(70℃×24h)81%)
【0069】
<感圧センサの作製>
まず、電極線を作製した。具体的には、7本の銅素線から構成される外径0.127mmの撚り導体の外周に導電性スチレン系熱可塑性エラストマを電線外径が0.8mmとなるように押し出し、電極線を作製した。続いて、同じ外径のスペーサ用電線1本を中心として、その周囲に電極線を2本と同じ外径のスペーサ用電線4本とを、電極線間にスペーサ用電線が周方向に2本挟まるように配置して撚り合わせることでコアを作製した。その後、表1に示す組成の中空絶縁体に用いる絶縁性組成物(A)と外層に用いる絶縁性組成物(C)とをコアの外周に同時に押し出し、中空絶縁体の外径が4mm、外層の厚さが0.3mmとなるようにそれぞれ押出成形した。そして、スペーサ用電線を引き抜き、感圧センサを作製した。
【0070】
実施例1〜11および比較例1,2では、下記表1に示すように、中空絶縁体の形成材料もしくは外層の形成材料を適宜変更した以外は同様にして感圧センサを作製した。
【0071】
【表1】
【0072】
<評価方法>
作製した感圧センサを以下の方法により評価した。
【0073】
(中空絶縁体と電極線との接着性)
中空絶縁体と電極線との接着性は、図3に示すように、感圧センサ10と直角に直径4mmのステンレス製丸棒20を配置し、感圧センサ10と丸棒20とを接触させた状態から感圧センサ10を繰り返し圧縮する試験を行い評価した。具体的には、ストローク長を2mm、周波数を1Hz、圧縮回数を1万回として繰り返し圧縮させ、試験後、感圧センサ10を解体し、圧縮部において中空絶縁体から電極線が剥離していないかを観察した。本実施例では、剥離していなければ合格と判断して〇、剥離していれば不合格と判断して×と表記した。
【0074】
(中空絶縁体と外層との接着性)
中空絶縁体と外層との接着性は、図4に示すサンプルを作製して評価した。具体的には、感圧センサ10の一方の端末の中空部をUV硬化樹脂により封止し、ポリアミド樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製「レニー1002F」、ガラス繊維:30質量%)を射出成形してモールド成形体30を形成した。モールド成形体30は、直径が15mm、長さが20mm、感圧センサ10の挿入長さが15mmであった。本実施例では、モールド加工後、外観が良好であれば合格と判断して〇、中空絶縁体と外層との間にポリアミド樹脂が流れ込み、外観不良が生じれば不合格と判断して×と表記した。
【0075】
(外層の圧縮永久ひずみ)
感圧センサの外層と同じ組成物でシートサンプルを別途作製し、このシートサンプルについて、JIS K6262に準拠した圧縮永久ひずみを測定した。本実施例では、試験温度を70℃、試験時間を24時間とした。圧縮永久ひずみは数値が低くなるほど、元の形状に復元することを示す。
【0076】
(高温環境での耐圧縮性)
図3に示すように、感圧センサ10と直角に直径4mmのステンレス製丸棒20を配置し、感圧センサ10と丸棒20とが接触した状態から2mm圧縮させ、この状態を保ったまま90℃の恒温槽に24時間放置した。24時間経過後、室温まで冷却して感圧センサ10から丸棒20を取り除き、電極線間の導通の有無を抵抗計を用いて測定した。導通がないものを合格とし、電極線同士が接触し導通が生じたものを不合格とした。不合格の場合は試験温度を10℃ずつ下げ、合格するまで試験を実施した。この合格温度が高いほど、高温環境での耐圧縮性に優れていることを示す。
【0077】
<評価結果>
評価結果を表1に示す。表1に示すように、実施例1〜11では、架橋処理を施すことなく、中空絶縁体と外層との間で高い接着性を得られることが確認された。また、導電性被覆と中空絶縁体とをともにスチレン系熱可塑性エラストマで形成したため、高い接着性を得られることが確認された。
実施例1〜3によると、中空絶縁体に含まれるエラストマ成分の圧縮永久ひずみを小さくするほど、感圧センサの高温環境での耐圧縮性を向上できることが確認された。
実施例1,4,5によると、外層に含まれる酸変性ポリマ(c2)の圧縮永久ひずみを小さくするほど、外層での圧縮永久ひずみを小さくでき、ひいては感圧センサの高温環境での耐圧縮性を向上できることが確認された。
実施例4,6,7によると、外層に含まれる酸変性ポリマ(c2)の配合量が少なく、熱可塑性ポリウレタン(c1)の比率が高くなるほど、外層での圧縮永久ひずみを小さくでき、ひいては感圧センサの高温環境での耐圧縮性を向上できることが確認された。(c2)成分の配合量としては(c1)成分との合計100質量部に対してとするとよいが、中空絶縁体と外層との接着性を維持しつつ、感圧センサでの耐圧縮性を高める観点からは1質量部〜10質量部とするとよいことが確認された。
実施例8〜11に示す通り、熱可塑性ポリウレタン(c1)に対する酸変性ポリマ(c2)の比率を上げても良い。実施例8,9によると、酸変性ポリマとして(c2−1)を用いた場合、その配合量を(c1)成分との合計100質量部に対して40質量部〜60質量部としても、実施例1と同等の評価結果が得られることが確認された。実施例10,11によると、酸変性ポリマとして(c2−2)を用いた場合、その配合量を(c1)成分との合計100質量部に対して40質量部〜60質量部としても、中空絶縁体と外層との接着性を維持しつつ、感圧センサでの耐圧縮性が得られることが確認された。
【0078】
一方、比較例1では、中空絶縁体をスチレン系熱可塑性エラストマ(a1)ではなく、オレフィン系熱可塑性エラストマで形成したため、熱可塑性ポリウレタン(c1)を含む外層との接着性を得られないばかりか、電極線との間でも十分な接着性を得られないことが確認された。
また、比較例2では、外層に酸変性ポリマ(c2)を配合しなかったため、スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)を含む中空絶縁体との間で十分な接着性を得られないことが確認された。
【0079】
以上のように、感圧センサにおいて、中空絶縁体をスチレン系熱可塑性エラストマ(a1)を含む絶縁性組成物(A)で形成するとともに、外層を熱可塑性ポリウレタン(c1)および酸変性ポリマ(c2)を含む絶縁性組成物(C)で形成することにより、中空絶縁体と外層との間で所望の接着性を得られる。また、電極線の導電性被覆をスチレン系熱可塑性エラストマ(b1)を含む絶縁性組成物(B)で形成することにより、中空絶縁体と電極線との間で所望の接着性を得られる。また、(a1)成分は架橋処理を施す必要がないので、感圧センサの製造において架橋処理を省略して工程数を減らすことができる。よって、本発明によれば、架橋処理が必要なく、中空絶縁体と外層の接着性および長期信頼性に優れる感圧センサが得られる。
【0080】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0081】
<付記1>
中空部が長手方向に連続して形成される弾性変形可能な長尺状の中空絶縁体と、
前記中空部の内周面に沿って長手方向にわたって設けられ、前記中空絶縁体の弾性変形に伴って撓んだときに互いに接触するように離間して対向配置される、導体の外周に導電性被覆が設けられる複数の電極線と、
前記中空絶縁体の外周を被覆するように形成される外層と、を備え、
前記中空絶縁体は、スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)を含む絶縁性組成物(A)から形成され、
前記外層は、熱可塑性ポリウレタン(c1)と不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性された酸変性ポリマ(c2)とを含む絶縁性組成物(C)から形成される、感圧センサ。
【0082】
<付記2>
付記1の感圧センサにおいて、好ましくは、
前記外層を形成する前記絶縁性組成物(C)は、前記熱可塑性ポリウレタン(c1)を30質量部以上99質量部以下と、前記酸変性ポリマ(c2)を1質量部以上70質量部以下とを合計で100質量部含有する。
【0083】
<付記3>
付記2の感圧センサにおいて、好ましくは、
前記外層を形成する前記絶縁性組成物(C)は、前記熱可塑性ポリウレタン(c1)を40質量部以上95質量部以下と、前記酸変性ポリマ(c2)を5質量部以上60質量部以下とを合計で100質量部含有する。
【0084】
<付記4>
付記1〜3の感圧センサにおいて、好ましくは、
前記熱可塑性ポリウレタン(c1)はポリエーテル系ポリウレタンである。
【0085】
<付記5>
付記1〜4の感圧センサにおいて、好ましくは、
前記酸変性ポリマ(c2)は、JIS K6262に準拠した70℃における圧縮永久ひずみが70%以下である。
【0086】
<付記6>
付記1〜5の感圧センサにおいて、好ましくは、
前記外層は、JIS K6262に準拠した70℃における圧縮永久ひずみが60%以下である。
【0087】
<付記7>
付記1〜6の感圧センサにおいて、好ましくは、
前記スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)は、JIS K6262に準拠した70℃における圧縮永久ひずみが30%以下である。
【0088】
<付記8>
付記1〜7の感圧センサにおいて、好ましくは、
前記スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)は、分子鎖に二重結合を含まない。
【0089】
<付記9>
付記8の感圧センサにおいて、好ましくは、
前記スチレン系熱可塑性エラストマ(a1)は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、およびスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体の少なくとも1つである。
【0090】
<付記10>
付記1〜9の感圧センサにおいて、好ましくは、
複数の電極線は、中空部で互いに接触しないように螺旋状に対向配置される。
【符号の説明】
【0091】
10 感圧センサ
11 導体
12 導電性被覆
13 電極線
14 中空絶縁体
15 中空部
16 外層
20 丸棒
30 モールド成形体
図1
図2
図3
図4