(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
<<インク>>
本発明のインクは、一般式(1)で表される化合物を含有し、必要に応じて、共重合体、水、色材、有機溶剤、界面活性剤、及びその他の成分を含有する。
【0010】
<一般式(1)で表される化合物>
【化2】
一般式(1)で表される化合物において、Xは炭素数5以上9以下のアルキレン基であり、炭素数5以上7以下のアルキレン基であることが好ましく、炭素数6のアルキレン基であることがより好ましい。なお、Xで表されるアルキレン基は、各水素原子が置換されていないことが好ましいが、置換されていてもよく、置換されている場合はメチル基またはメトキシカルボニル基で置換されていることが好ましい。Ar
1、及びAr
2はそれぞれ独立してベンゼン環の1価基、又はナフタレン環の1価基であり、Ar
1、及びAr
2の少なくとも一方がナフタレン環の1価基であることが好ましく、Ar
1、及びAr
2がともにナフタレン環の1価基であることがより好ましい。なお、Ar
1、及びAr
2で表されるベンゼン環の1価基、又はナフタレン環の1価基は、各水素原子が置換されていないことが好ましいが、置換されていてもよい。
【0011】
以下、一般式(1)で表される化合物を例示するが、本願は以下の具体例に制限されるものではない。
【0014】
本発明のインクは、一般式(1)で表される化合物を含有することにより、インク中の粗大粒子数が少なくなり、且つ長期間保存した際における粗大粒子の増加率が低減する。これら効果が生じるメカニズムは定かでないが、以下のように推測する。
一般的に、顔料などの粒子の分散メカニズムは、粒子の凝集体にせん断力がかかり解砕されたときに、分散剤が粒子に吸着することにより再凝集を防ぐことにある。その結果、粒子の小粒子径化と安定化が達成される。このとき、分散剤の粒子への吸着が不十分であると、解砕された粒子同士で再凝集しやすくなり、結果として粗大粒子へと成長する。一般式(1)で表される化合物は、一定の長さのアルキレン基を有し、かつ両末端にベンゼン環またはナフタレン環を有することで、顔料などの粒子表面に吸着しやすい構造となっている。また、ベンゼン環やナフタレン環は疎水的なことから、分散剤の疎水基とも疎水相互作用による引力が働き、分散剤とも親和性が高い。顔料などの粒子と分散剤の両者に対する親和性が高いことから、分散剤と共存することで、より分散剤と粒子の吸着力が上がる。その結果、粒子の再凝集を防ぎ、インク中の粗大粒子数が少なくなり、且つ長期間保存した際における粗大粒子の増加率が低減する。
【0015】
一般式(1)で表される化合物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インク全量に対して、0.0001質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.001質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。含有量が、0.001%以上0.5%以下であると、インク中の粗大粒子数が少なくなり、且つ長期間保存した際における粗大粒子の増加率が低減する。
【0016】
−一般式(1)で表される化合物の合成方法−
一般式(1)で表される化合物は、下記反応式1に示すように、ジイソシアネート化合物(R−1)と過剰量のフェノール(R−2)またはナフトール(R−3)を付加反応させて得られる。
【化5】
【0017】
−一般式(1)で表される化合物の分析方法−
一般式(1)で表される化合物の構造は、必要に応じて、インクから分離、抽出を行い、NMRやIRなどの一般的な分析方法を使用すれば分析可能である。
また、一般式(1)で表される化合物の含有量は、例えば次の方法で求めることが出来る。まず、前処理として、インクをビーカーなどの容器に入れ、ホットプレート上で濃縮乾固させる。次に、濃縮した残渣をソックスレー抽出器に入れ、テトラヒドロフランで抽出を行う。前処理するインクに、濃度既知の標準物質を入れておくことにより、抽出液をGCやHPLC等で測定する際、標準物質の面積比率との比により、一般式(1)で表される化合物の含有量を求めることができる。
【0018】
<共重合体>
本発明のインクは、必要に応じて、一般式(2)で表される構造単位と、アニオン性基を有する構造単位と、を有する共重合体を含有することが好ましい。共重合体を含むことで、普通紙に記録した場合でも高い画像濃度が得られ、保存安定性が高く、粗大粒子の少ないインクが得られる。
【0019】
−一般式(2)で表される構造単位−
【化6】
一般式(2)で表される構造単位において、Rは水素原子又はメチル基であり、水素原子であることが好ましい。Yは炭素数2以上4以下のアルキレン基であり、炭素数2以上3以下のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2のアルキレン基であることがより好ましい。なお、Yで表されるアルキレン基は、各水素原子が置換されていないことが好ましいが、置換されていてもよい。Zは炭素数5以上9以下のアルキレン基であり、炭素数5以上7以下のアルキレン基であることが好ましく、炭素数6のアルキレン基であることがより好ましい。なお、Zで表されるアルキレン基は、各水素原子が置換されていないことが好ましいが、置換されていてもよく、置換されている場合はメチル基またはメトキシカルボニル基で置換されていることが好ましい。
【0020】
以下、一般式(2)で表される構造単位を例示するが、本願は以下の具体例に制限されるものではない。
【0024】
一般式(2)で表される構造単位を有する共重合体において、Zを介して末端に存在するナフチル基は、インク中における顔料などの粒子とπ−πスタッキングすることにより、粒子に対して優れた吸着力を有する。顔料などの粒子を水などの分散媒に分散した分散体を調製する際に、一般式(2)で表される構造単位を有する共重合体を用いると、ナフチル基により、共重合体が粒子表面に吸着し、分散性の高い長期間安定な分散体となる。なお、一般式(2)で表される構造単位は、共重合体の主鎖に含まれることが好ましいが、一部または全部が側鎖に含まれていてもよい。
また、前述の通り一般式(1)で表される化合物は両末端にベンゼン環またはナフタレン環を有するため、分散剤の疎水基と疎水相互作用による引力が働き、分散剤と親和性が高い。言い換えると、一般式(1)で表される化合物の両末端に存在するベンゼン環またはナフタレン環と、共重合体における一般式(2)で表される構造単位と、の間に疎水相互作用が働く。これにより、粒子の再凝集を防ぎ、インク中の粗大粒子数が少なくなり、且つ長期間保存した際における粗大粒子の増加率が低減する。
【0025】
−アニオン性基を有する構造単位−
アニオン性基を有する構造単位は、アニオン性基を有するモノマーを共重合することにより形成される。アニオン性基を有するモノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマーなどが挙げられる。
不飽和カルボン酸モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。不飽和スルホン酸モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。不飽和リン酸モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェートなどが挙げられる。
これらの中でも保存安定性の点で、カルボキシル基を有するモノマーであることが好ましく、アクリル酸またはメタクリル酸であることが更に好ましい。
また、アニオン性基を有するモノマーは、単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0026】
以下、アニオン性基を有する構造単位を例示するが、本願は以下の具体例に制限されるものではない。
【0028】
アニオン性基を有する構造単位は、塩基により中和されていてもよい。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラペンチルアンモニウムヒドロキシド、テトラヘキシルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリオクチルメチルアンモニウムヒドロキシド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、プロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ノニルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、デシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ドデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、オクタデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジドデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジテトラデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、エチルヘキサデシルジメチルアンモニウムヒドロキシド、アンモニア水、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホン、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンなどが挙げられる。
中和剤としての塩基は、単独で用いてもよく、二種類以上を混合して用いてもよい。
中和処理は、アニオン性基を有するモノマーを共重合する際に行ってもよいし、共重合体を溶解させる際に行ってもよい。
【0029】
−共重合体の組成比−
一般式(2)で表される構造単位の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、共重合体全量に対して、60質量%以上90質量%以下が好ましく、75質量%以上90質量%以下がより好ましい。含有量が、60質量%以上90質量%以下であると、インクに用いた場合、画像濃度と保存安定性が良好となる点で有利である。
【0030】
−共重合体の分子量−
共重合体の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、5000以上50000以下が好ましく、15000以上40000以下がより好ましい。重量平均分子量が、5000以上50000以下であると、インクに用いた場合、画像濃度と保存安定性が良好となる点で有利である。
【0031】
−その他のモノマー−
共重合体は、一般式(2)で表される構造単位、および、アニオン性基を有する構造単位以外に、その他の重合性モノマーからなる構造単位を有することができる。その他の重合性モノマーとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合性の疎水性モノマー、重合性の親水性モノマー、重合性界面活性剤などが挙げられる。
【0032】
重合性の疎水性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−クロロメチルスチレン等の芳香族環を有する不飽和エチレンモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、(メタ)アクリル酸ラウリル(C12)、(メタ)アクリル酸トリデシル(C13)、(メタ)アクリル酸テトラデシル(C14)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル(C15)、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル(C16)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル(C17)、(メタ)アクリル酸ノナデシル(C19)、(メタ)アクリル酸エイコシル(C20)、(メタ)アクリル酸ヘンイコシル(C21)、(メタ)アクリル酸ドコシル(C22)等の(メタ)アクリル酸アルキル;1−ヘプテン、3,3−ジメチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、5−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、3,3−ジメチル−1−ヘキセン、3,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、1−ノネン、3,5,5−トリメチル−1−ヘキセン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン等のアルキル基を持つ不飽和エチレンモノマー、などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合性の親水性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−t−オクチルアクリルアミド等の非イオン性不飽和エチレンモノマーなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合性の疎水性モノマーと重合性の親水性モノマーは、それぞれ1種又は2種以上を混合し、一般式(2)で表される構造単位、及び、アニオン性基を有する構造単位を形成するモノマーの合計量に対して、5質量%以上100質量%以下使用することができる。
【0033】
−共重合体の合成−
共重合体は、一般式(3)で表されるモノマーを、ラジカル重合開始剤の存在下でアニオン性基を有するモノマーと共重合させることで得られる。
【化11】
一般式(3)で表されるモノマーにおいて、R、Y、及びZは、それぞれ一般式(2)で表される構造単位におけるR、Y、及びZと同様である。
【0034】
以下、一般式(3)で表されるモノマーを例示するが、本願は以下の具体例に制限されるものではない。
【0038】
一般式(3)で表されるモノマーは、以下のようにして合成し、使用することができる。即ち、下記反応式2〜3に示すように、まず、ジイソシアネート化合物(R−1)とナフトール(R−3)を、アミン又はピリジン等の酸受容体の存在下で反応させて、反応中間体(R−4)を得る。次いで、ヒドロキシアルキルメタクリレート(R−5)と(R−4)とを反応させて、一般式(3)で表されるモノマーを得ることができる。
【0041】
また、別の方法としては、先に(R−1)と(R−5)を反応させた後、(R−3)と反応させて、一般式(3)で表されるモノマーを得ることができる。
さらに別の方法としては、下記反応式4に示すように、ジイソシアネート化合物(R−1)、ナフトール(R−3)、ヒドロキシアルキルメタクリレート(R−5)を反応させることで、前記一般式(3)で表されるモノマーを得ることもできる。
【0043】
なお、上記の一般式(1)で表される化合物は、一般式(3)で表されるモノマーを合成する際に、副生物として得ることもできる。従って、副生物として一般式(1)で表される化合物を含んだ一般式(3)で表されるモノマーの粗集物を共重合体の作成に用い、得られた共重合体をインクに添加した場合、一般式(1)で表される化合物を含むインクが得られる。
しかし、一般に、副生物として生じる一般式(1)で表される化合物は、一般式(3)で表されるモノマーを合成する過程において、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどを用いて精製され、除去される。従って、一般式(3)で表されるモノマーの精製物を共重合体の作成に用い、得られた共重合体をインクに添加した場合、インク中には、実質的に一般式(1)で表される化合物が含まれない。具体的には、一般式(1)で表される化合物の含有量が、インク全量に対して0.0001質量%以上となることはない。実質的に一般式(1)で表される化合物が含まれないインクを用いた場合、インク中の粗大粒子数が少なくなり、且つ長期間保存した際における粗大粒子の増加率が低減する本発明の効果を得ることはできない。
なお、本願において一般式(1)で表される化合物は、上記の通り一般式(3)で表されるモノマーを合成する際の副生物としてインク中に含有されていてもよく、別途合成された一般式(1)で表される化合物をインク中に添加してもよい。一般式(1)で表される化合物を副生物としてインク中に含有させる場合、一般式(1)で表される化合物のインク中における含有量は、例えば、合成時におけるジイソシアネート化合物(R−1)とナフトール(R−3)の比率を変更することで調整することができる。
【0044】
共重合体の合成方法としては、重合操作及び分子量の調整が容易なことから、ラジカル重合開始剤を用いる方法が好ましく、溶液中で重合反応を行う溶液重合法がさらに好ましい。
【0045】
溶液重合法でラジカル重合を行う際に好ましい溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、イソプロパノール、エタノール、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびヘキサメチルホスホアミド等が挙げられ、より好ましくは、ケトン系溶剤、酢酸エステル系溶剤およびアルコール系溶剤である。
【0046】
ラジカル重合開始剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。その例としては、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、シアノ系のアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビス(2,2’−イソバレロニトリル)、非シアノ系のジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、などが挙げられる。これらの中でも、分子量の制御がしやすく分解温度が低い点から、有機過酸化物、アゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物が特に好ましい。
ラジカル重合開始剤の含有量は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、重合性モノマーの総量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0047】
また、ポリマーの分子量を調整するために、連鎖移動剤を適量添加してもよい。連鎖移動剤の例としては、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、2−プロパンチオール、2−メルカプトエタノール、チオフェノール、ドデシルメルカプタン、1−ドデカンチオール、チオグリセロール、などが挙げられる。
【0048】
重合温度は特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以上150℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。重合時間も特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3時間以上48時間以下が好ましい。
【0049】
−共重合体の添加量−
共重合体のインク全量に対する含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、固形分で、0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.3質量%以上5質量%以下がより好ましい。
含有量が、0.05質量%以上であるとインク中の粒子の分散性およびインクの保存性が向上し、10質量%以下であるとインクジェットヘッドからインクを吐出する際におけるインク粘度を適切な範囲とすることができる。
【0050】
−共重合体の用途−
共重合体は、特に制限はなく、顔料などの粒子の分散剤としても、分散体への添加剤としても使用できる。粒子の分散剤として使用すれば、水溶性有機溶剤の含有量が多いインクにおいて保存安定性が向上する。
【0051】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0052】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0053】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0054】
顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT−100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0055】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0056】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、エチル−1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0057】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0058】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0059】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0060】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH
4、NH
3CH
2CH
2OH、NH
2(CH
2CH
2OH)
2、NH(CH
2CH
2OH)
3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0061】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S−1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化18】
(但し、一般式(S−1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(信越化学工業株式会社)、EMALEX−SS−5602、SS−1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ−2105、FZ−2118、FZ−2154、FZ−2161、FZ−2162、FZ−2163、FZ−2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK−33、BYK−387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0062】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2〜16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4〜16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F−1)及び一般式(F−2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化19】
上記一般式(F−1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0〜10の整数が好ましく、nは0〜40の整数が好ましい。
【化20】
上記一般式(F−2)で表される化合物において、YはH、又はCmF
2m+1でmは1〜6の整数、又はCH
2CH(OH)CH
2−CmF
2m+1でmは4〜6の整数、又はCpH
2p+1でpは1〜19の整数である。nは1〜6の整数である。aは4〜14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、キャプストーンFS−30、FS−31、FS−3100、FS−34、FS−35(いずれも、Chemours社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)、ユニダインDSN−403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS−3100、FS−34、FS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF−151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN−403Nが特に好ましい。
【0063】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0064】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0065】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0066】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0067】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0068】
<<インクの製造方法>>
インクの製造方法としては、例えば、水、色材、一般式(1)で表される化合物、共重合体、及びその他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、撹拌混合して製造する方法が挙げられる。また、共重合体は、色材の分散体作製の際に用いる色材分散樹脂として用いてもよい。
分散は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散等により行うことができる。撹拌混合は、例えば、通常の撹拌羽を用いた撹拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等により行うことができる。
【0069】
<<記録媒体>>
記録に用いる記録媒体としては、特に限定されないが、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙等が挙げられる。
【0070】
<<記録物>>
記録物は、記録媒体と、記録媒体上に付与された本発明のインクにより形成された印刷層と、を有する。印刷層は、本発明のインクが付与され、乾燥することで形成される層なので、一般式(1)を含有する。
本発明のインクを、一般的なインク付与量で記録媒体に付与し、ベタ画像を形成した場合、ベタ画像が形成された領域における単位面積(1cm
2)あたりにおける一般式(1)の含有量は、5.6×10
−7mg以上2.8×10
−3mg以下である。なお、ベタ画像とは、単一のインクで形成された領域を少なくとも一部有する画像を意味する。すなわち、ベタ画像は、インクによって形成された画像の全面が単一のインクで形成されている必要はない。また、一般式(1)の含有量は、単位面積(1cm
2)のベタ画像領域に含まれる一般式(1)の含有量から求められるが、単位面積(1cm
2)より大きな面積を有するベタ画像領域に含まれる一般式(1)の含有量、又は単位面積(1cm
2)より大きな総面積を有する複数のベタ画像領域に含まれる一般式(1)の総含有量、から単位面積(1cm
2)あたりにおけるベタ画像領域に含まれる一般式(1)の含有量を計算で求めてもよい。
【0071】
<<インク収容容器>>
インク収容容器は、本発明のインクを収容するインク収容部を備え、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有してもよい。
インク収容容器は、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク収容部を有するもの、大容量のインクタンクなどが好適である。
【0072】
<<記録装置、記録方法>>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について
図1乃至
図2を参照して説明する。
図1は同装置の斜視説明図である。
図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0073】
なお、インクの使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【0074】
<<用途>>
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【実施例】
【0075】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、例中の「部」は、「質量部」を表す。
【0076】
実施例及び比較例で用いた共重合体の平均分子量は、以下のようにして求めた。
[共重合体の平均分子量測定]
GPC(Gel Permeation Chromatography)により以下の条件で測定した。
・装置:GPC−8020(東ソー株式会社製)
・カラム:TSK G2000HXL及びG4000HXL(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0mL/分間
濃度0.5質量%の共重合体を1mL注入し、上記の条件で測定した共重合体の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して共重合体の数平均分子量Mn、及び重量平均分子量Mwを算出した。
【0077】
<一般式(1)で表される化合物の合成例>
−化合物A−7の合成−
50.5g(300mmol)のヘキサメチレンジイソシアナート(東京化成工業社製)、30.4g(300mmol)のトリエチルアミン(東京化成工業社製)を500mlの乾燥トルエンに溶解させ、アルゴン気流下、撹拌しながら105℃に加熱した。ここに86.6g(600mmol)の2−ナフトール(東京化成工業社製)を3000mlの乾燥トルエンに溶解させた溶液をゆっくり滴下した。滴下後、105℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した白色固体をろ過し、トルエン、ヘキサンで洗浄、乾燥させることで119gの一般式(1)の化合物A−7を得た。
【化21】
【0078】
−化合物A−8の合成−
50.5g(300mmol)のヘキサメチレンジイソシアナート(東京化成工業社製)、30.4g(300mmol)のトリエチルアミン(東京化成工業社製)を500mlの乾燥トルエンに溶解させ、アルゴン気流下、撹拌しながら105℃に加熱した。ここに86.6g(600mmol)の1−ナフトール(東京化成工業社製)を3000mlの乾燥トルエンに溶解させた溶液をゆっくり滴下した。滴下後、105℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出した白色固体をろ過し、トルエン、ヘキサンで洗浄、乾燥させることで106gの一般式(1)の化合物A−8を得た。
【化22】
【0079】
<共重合体の合成例>
−共重合体CP−1の合成−
50.5g(300mmol)のヘキサメチレンジイソシアナート(東京化成工業社製)、30.4g(300mmol)のトリエチルアミン(東京化成工業社製)を300mlの乾燥トルエンに溶解させ、アルゴン気流下、撹拌しながら105℃に加熱した。ここに43.3g(300mmol)の2−ナフトール(東京化成工業社製)を1500mlの乾燥トルエンに溶解させた溶液をゆっくり滴下した。滴下後、105℃で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、析出物をろ別し、ろ液を回収した。ろ液から溶媒を留去し、白色固体を得た。ここに200mlのヘキサンを投入し、室温で1時間撹拌した。白色固体をろ別し、53.0gの下記構造式(1)の反応中間体を得た。
【化23】
20.8g(160mmol)の2−ヒドロキシエチルメタクリレート(東京化成工業社製)を80mlのメチルエチルケトンに溶解させ、アルゴン気流下、室温で撹拌した。ここに0.03gのジブチル錫ジラウレート(東京化成工業社製)を滴下し、撹拌しながら50℃へ加熱した。ここに50.0gの構造式(1)の反応中間体を120mlのメチルエチルケトンに溶解させた溶液をゆっくり滴下した。滴下後、50℃で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、不溶物をろ別し、ろ液から溶媒を留去してペースト状の粗収物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/酢酸エチル=6/1)により精製し、目的物となる48.0gのモノマーM−2を得た。
【化24】
12.4g(172mmol)のアクリル酸(東京化成工業社製)、47.6g(108mmol)のモノマーM−2を、420mlの乾燥メチルエチルケトンに溶解してモノマー溶液を調製した。モノマー溶液の10質量%をアルゴン気流下で75℃まで加熱した後、残りのモノマー溶液に2.30gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN、東京化成工業社製)、0.20gのα−チオグリセロール(東京化成工業社製)を溶解した溶液を2.5時間かけて滴下し、75℃で6時間撹拌した。室温まで冷却し、得られた反応溶液をヘキサンに投下した。析出物した共重合体をろ別し、減圧乾燥して、58.5gの共重合体CP−1(重量平均分子量(Mw):22000)を得た。
【0080】
−共重合体CP−2の合成−
14.9g(173mmol)のメタクリル酸(東京化成工業社製)、45.1g(102mmol)のモノマーM−2を、420mlの乾燥メチルエチルケトンに溶解してモノマー溶液を調製した。モノマー溶液の10質量%をアルゴン気流下で75℃まで加熱した後、残りのモノマー溶液に2.30gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN、東京化成工業社製)、0.30gのα−チオグリセロール(東京化成工業社製)を溶解した溶液を2.5時間かけて滴下し、75℃で6時間撹拌した。室温まで冷却し、得られた反応溶液をヘキサンに投下した。析出物した共重合体をろ別し、減圧乾燥して、58.1gの共重合体CP−2(重量平均分子量(Mw):19500)を得た。
【0081】
−共重合体CP−3の合成−
18.6g(160mmol)の2−ヒドロキシエチルアクリレート(東京化成工業社製)を80mlのメチルエチルケトンに溶解させ、アルゴン気流下、室温で撹拌した。ここに0.03gのジブチル錫ジラウレート(東京化成工業社製)を滴下し、撹拌しながら50℃へ加熱した。ここに50.0gの構造式(1)の反応中間体を120mlのメチルエチルケトンに溶解させた溶液をゆっくり滴下した。滴下後、50℃で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、不溶物をろ別し、ろ液から溶媒を留去してペースト状の粗収物を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン/酢酸エチル=6/1)により精製し、目的物となる45.9gのモノマーM−11を得た。
【化25】
14.6g(170mmol)のメタクリル酸(東京化成工業社製)、45.4g(102mmol)のモノマーM−11を、420mlの乾燥メチルエチルケトンに溶解してモノマー溶液を調製した。モノマー溶液の10質量%をアルゴン気流下で75℃まで加熱した後、残りのモノマー溶液に1.90gの2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN、東京化成工業社製)、0.10gのα−チオグリセロール(東京化成工業社製)を溶解した溶液を2.5時間かけて滴下し、75℃で6時間撹拌した。室温まで冷却し、得られた反応溶液をヘキサンに投下した。析出物した共重合体をろ別し、減圧乾燥して、57.8gの共重合体CP−3(重量平均分子量(Mw):29000)を得た。
【0082】
<顔料分散体の調整例>
−顔料分散体PD−1の調整−
1.0部の一般式(1)の化合物A−7と、6.0部の共重合体CP−1を、20.0部のテトラヒドロフランに溶解させたのち、減圧下にて溶媒を除去することで、一般式(1)の化合物A−7と共重合体CP−1の混合物を得た。
この混合物を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントレッド122(トナーマゼンタEO02、クラリアント社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体PD−1(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
【0083】
−顔料分散体PD−2の調整−
0.2部の一般式(1)の化合物A−8と、6.0部の共重合体CP−2を、20.0部のテトラヒドロフランに溶解させたのち、減圧下にて溶媒を除去することで、一般式(1)の化合物A−8と共重合体CP−2の混合物を得た。
この混合物を、pHが8.0となるように、50.0部のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントレッド122(トナーマゼンタEO02、クラリアント社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体PD−2(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
【0084】
−顔料分散体PD−3の調整−
0.1部の一般式(1)の化合物A−7と、5.0部の共重合体CP−3を、20.0部のテトラヒドロフランに溶解させたのち、減圧下にて溶媒を除去することで、一般式(1)の化合物A−7と共重合体CP−3の混合物を得た。
この混合物を、pHが8.0となるように、50.0部のテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントレッド122(トナーマゼンタEO02、クラリアント社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体PD−3(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
【0085】
−顔料分散体PD−4の調整−
0.005部の一般式(1)の化合物A−7と、7.5部の共重合体CP−1を、20.0部のテトラヒドロフランに溶解させたのち、減圧下にて溶媒を除去することで、一般式(1)の化合物A−7と共重合体CP−1の混合物を得た。
この混合物を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントレッド122(トナーマゼンタEO02、クラリアント社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体PD−4(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
【0086】
−顔料分散体PD−5の調整−
0.05部の一般式(1)の化合物A−7をテトラヒドロフランに溶解させ、溶液の全量を100部とした。1.0部の一般式(1)の化合物A−7のテトラヒドロフラン溶液(0.005質量%)と、2.5部の共重合体CP−1を、20.0部のテトラヒドロフランに溶解させたのち、減圧下にて溶媒を除去することで、一般式(1)の化合物A−7と共重合体CP−1の混合物を得た。
この混合物を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントレッド122(トナーマゼンタEO02、クラリアント社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体PD−5(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
【0087】
−顔料分散体PD−6の調整−
0.075部の一般式(1)の化合物A−7と、4.0部の共重合体CP−1を、20.0部のテトラヒドロフランに溶解させたのち、減圧下にて溶媒を除去することで、一般式(1)の化合物A−7と共重合体CP−1の混合物を得た。
この混合物を、pHが8.0となるように、50.0部の水酸化ナトリウム水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を84.0部とした。得られた水溶液84.0部に対し、16.0部のカーボンブラック(NIPEX150、デグサ社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体PD−6(顔料固形分濃度:16質量%)を得た。
【0088】
−顔料分散体PD−7の調整−
0.075部の一般式(1)の化合物A−7と、7.5部の共重合体CP−2を、20.0部のテトラヒドロフランに溶解させたのち、減圧下にて溶媒を除去することで、一般式(1)の化合物A−7と共重合体CP−2の混合物を得た。
この混合物を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントブルー15:3(クロモファインブルーA−220JC、大日精化社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体PD−7(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
【0089】
−顔料分散体PD−8の調整−
0.075部の一般式(1)の化合物A−8と、8.0部の共重合体CP−1を、20.0部のテトラヒドロフランに溶解させたのち、減圧下にて溶媒を除去することで、一般式(1)の化合物A−8と共重合体CP−1の混合物を得た。
この混合物を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントイエロー74(ファーストイエロー531、大日精化社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体PD−8(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
【0090】
<実施例1>
−インクGJ−1の作製−
40.0質量部の顔料分散体PD−1、20.0質量部のグリセリン、5.0質量部の1,3−ブタンジオール、10.0質量部の3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド、5.0質量部の3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、1.0質量部の2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1.0質量部の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1.0質量部のユニダインDSN−403N(ダイキン工業株式会社製)、及び17.0質量部のイオン交換水を混合し、1時間攪拌した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過して、実施例1のインクGJ−1を作製した。
【0091】
<実施例2〜8>
実施例1において、組成を下記表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜8のインクGJ−2〜8を作製した。なお、表1における各数字の単位は「質量部」である。
【0092】
【表1】
【0093】
<比較例1>
−顔料分散体PRD−1の調整−
4.0部の共重合体CP−1を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントレッド122(トナーマゼンタEO02、クラリアント社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体RPD−1(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
−インクRGJ−1の調製−
次に、実施例1のインク作製における顔料分散体PD−1の代わりに、顔料分散体RPD−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較インクRGJ−1を得た。
【0094】
<比較例2>
−顔料分散体PRD−2の調整−
2.25部の一般式(1)の化合物A−7と、6.0部の共重合体CP−1を、20.0部のテトラヒドロフランに溶解させたのち、減圧下にて溶媒を除去することで、一般式(1)の化合物A−7と共重合体CP−1の混合物を得た。
この混合物を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントレッド122(トナーマゼンタEO02、クラリアント社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体RPD−2(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
−インクRGJ−2の調製−
次に、実施例1のインクの作製における顔料分散体PD−1の代わりに、顔料分散体RPD−2を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較インクRGJ−2を得た。
【0095】
<比較例3>
−共重合体RCP−1の合成−
62.0g(525mmol)の1,6−ヘキサンジオール(東京化成社製)を700mLの塩化メチレンに溶解し、20.7g(262mmol)のピリジンを加えた。この溶液に、50.0g(262mmol)の2−ナフタレンカルボニルクロリド(東京化成社製)を100mLの塩化メチレンに溶解した溶液を、2時間かけて攪拌しながら滴下した後、室温で6時間攪拌した。得られた反応溶液を水洗した後、有機相を単離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物を、溶離液として塩化メチレン/メタノール(体積比98/2)混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、52.5gの2−ナフトエ酸−6−ヒドロキシヘキシルエステルを得た。
次に、42.1g(155mmol)の2−ナフトエ酸−2−ヒドロキシヘキシルエステルを80mLの超脱水ジクロロメタン(和光純薬社製)に溶解した。この溶液に、24.0g(155mmol)の2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI)を1時間かけて攪拌しながら滴下した後、40℃で12時間攪拌した。溶媒を留去し,残留物を溶離液として塩化メチレン/メタノール(体積比99/1)混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、57.0gの下記構造式で表されるモノマーRM−1を得た。
【化26】
次いで、3.20g(44.4mmol)のアクリル酸(アルドリッチ社製)、及び15.82g(37.0mmol)のモノマーRM−1、及び0.668g(4.07mmol)の2,2’−アゾビスイソ(ブチロニトリル)(東京化成社製)を128mLのメチルエチルケトン(関東化学社製)に溶解して、モノマー溶液を調製した。反応容器に32mLのメチルエチルケトン(関東化学社製)を加え、アルゴン気流下で75℃まで加熱した後、モノマー溶液を1時間かけて滴下し還流下で5時間撹拌した。室温まで冷却し、得られた反応溶液をヘキサンに投下した。析出物した共重合体をろ別し、減圧乾燥して、19.92gの共重合体RCP−1(重量平均分子量(Mw):20,100、数平均分子量(Mn)9800)を得た。
−顔料分散体RPD−3の調製−
4.0部の共重合体RCP−1を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントレッド122(トナーマゼンタEO02、クラリアント社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体RPD−3(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
−インクRGJ−3の調製−
次に、実施例1のインクの作製における顔料分散体PD−1の代わりに、顔料分散体RPD−3を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較インクRGJ−3を得た。
【0096】
<比較例4>
−顔料分散体RPD−4の調製−
4.0部の共重合体RCP−1を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を84.0部とした。得られた水溶液84.0部に対し、16.0部のカーボンブラック(NIPEX150、デグサ社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体RPD−4(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
−インクRGJ−4の調製−
次に、実施例1のインクの作製における顔料分散体PD−1の代わりに、顔料分散体RPD−4を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較インクRGJ−4を得た。
【0097】
<比較例5>
−顔料分散体RPD−5の調製−
6.0部の共重合体RCP−1を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントブルー15:3(クロモファインブルーA−220JC、大日精化社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体RPD−5(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
−インクRGJ−5の調製−
次に、実施例1のインクの作製における顔料分散体PD−1の代わりに、顔料分散体RPD−5を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較インクRGJ−5を得た。
【0098】
<比較例6>
−顔料分散体RPD−6の調製−
6.0部の共重合体RCP−1を、pHが8.0となるように、50.0部のジエタノールアミン水溶液に溶解した。さらにイオン交換水を加え、水溶液の全量を80.0部とした。得られた水溶液80.0部に対し、20.0部のピグメントイエロー74(ファーストイエロー531、大日精化社製)を加えて12時間攪拌した。
得られた混合物をディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.1mmのジルコニアボール使用)を用いて、周速10m/sで1時間循環分散した後、平均孔径1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し、調整量のイオン交換水を加えて、97.0質量部の顔料分散体RPD−6(顔料固形分濃度:20質量%)を得た。
−インクRGJ−6の調製−
次に、実施例1のインクの作製における顔料分散体PD−1の代わりに、顔料分散体RPD−6を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較インクRGJ−6を得た。
【0099】
次に、上記実施例1〜8及び比較例1〜6で作製した各インクの特性を、下記の方法及び評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0100】
[粗大粒子数]
AccuSizer780(Particle Sizing Systems社製)を用い、インク5μL中に存在する粒子径0.5μm以上の粗大粒子数及び1.0μm以上の粗大粒子数の測定を行った。粒子径0.5μm以上の粗大粒子数が3,000,000個以下である場合であって、且つ粒子径1.0μm以上の粗大粒子数が10,000個以下である場合を実用可能であると判断した。
【0101】
[粗大粒子数の増加率]
各インクをインク収容容器に充填し70℃で1週間保存し、保存前の1.0μm以上の粗大粒子数に対する保存後の1.0μm以上の粗大粒子数の変化率を下記式から求め、下記基準で評価した。粗大粒子数の変化率が25%以内である場合を実用可能であると判断した。
粗大粒子数の増加率(%)=(保存後の1.0μm以上の粗大粒子数−保存前の1.0μm以上の粗大粒子数/保存前の粗大粒子数)×100
[評価基準]
A:粗大粒子数の変化率が±10%以内
B:粗大粒子数の変化率が±10%を超え、±15%以内
C:粗大粒子数の変化率が±15%を超え、±25%以内
D:粗大粒子数の変化率が±25%を超え、±40%以内
E:粗大粒子数の変化率が±40%を超える
【0102】
【表2】
【0103】
表2の結果から、実施例1〜8の一般式(1)で表される化合物を含むインクは、比較例1〜6の一般式(1)で表される化合物を含まないインクに比べ、粗大粒子数が少なく、保存後の粗大粒子数の増加率が少ないことがわかった。
なお、表2中の「−」は、インク中に一般式(1)で表される化合物が実質的に含まれていないことを表す。