(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移 動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化した
ことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る金属部材ついて
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は同金属部材の模式的断面説明図、
図2は同じく組成比(組成割合)の模式的説明図である。
【0011】
金属部材1は、少なくとも白金族金属を含む合金であり、本実施形態ではパラジウム(Pd)とニッケル(Ni)の合金としている。そして、金属部材1は、最表面1aのPd(白金族金属)の割合が内部1bのPd(白金族金属)の割合よりも高くなっている。
【0012】
ここで、「最表面1a」は表面から深さ5nmまでの領域としている。最表面1aの白金族金属の割合は、例えば、XPS(X線光電子分光システム)によって分析することができる。XPSとしては、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック製のK−Alpha(登録商標)を使用することができる。
【0013】
そして、金属部材1は、最表面1aのPdの割合を90%以上100%未満とし、表面から5nmを超える深さの内部1bのPdの割合を90%未満としている。
【0014】
Pdは金属部材1の耐食性を向上するため、金属部材1の最表面1aのPdの割合を55%以上とすることが好ましく、特に好ましくは、上記のとおり、90%以上100%未満である。特に、最表面1aのPdの割合が100%になると、表面処理膜との密着性が著しく低下するので、100%未満とする。
【0015】
このように、最表面の白金族金属(ここでは、Pd)の割合が、内部の白金族金属の割合よりも高い構成とする。最表面における白金族金属の割合が、内部に比べて相対的に高いことによって、最表面及び内部を同じ割合とした場合よりも、耐液性などの耐食性が向上する。一方、内部の白金族金属の割合が表面に比べて相対的に低いことによって、最表面及び内部を同じ割合とした場合よりも表面処理膜との密着性が向上する。
【0016】
つまり、従前のように、金属部材に含有する白金族金属の割合が最表面及び内部で一律であるとき、例えば、白金族金属の割合を高くすると表面処理膜との密着性が低下し、白金族金属の割合を低くすると耐食性が低下する。
【0017】
そこで、金属部材(合金)の最表面と内部において、金属部材に含有する白金族金属の割合を異ならせることによって、表面処理膜との密着性を向上し、耐食性を向上することができる。
【0018】
なお、ここでは、白金族金属の割合が最表面と内部で2段階に変化している例で説明しているが、3段階以上で変化する構成とすることもできる。
【0019】
次に、本発明の第2実施形態に係る金属部材ついて
図3を参照して説明する。
図3は同金属部材の組成比(組成割合)の模式的説明図である。
【0020】
本実施形態では、金属部材1の最表面1aから内部1bに向かってPdの割合が漸次減少し、相対的に、Niの割合が増加する傾斜組成としている。
【0021】
ここでは、最表面1aのPdの割合を90%以上100%未満とし、Niの割合が、最表面1aの割合を基準として、表面から深さ10nmの位置において5%以上増加している構成としている。
【0022】
これにより、表面処理膜との密着性を確実に確保することができる。
【0023】
次に、金属部材1の表面からの深さと白金族金属の割合(比率)の関係について
図4を参照して説明する。
図4は同説明に供する説明図である。
【0024】
前述したように、好ましい形態においては、耐食性を確保するために、最表面1aでは白金族金属の割合を90%以上100%未満とする。一方、密着性を確保するために、表面から深さ10nmの位置で白金族金属の割合を95%未満、つまり、Niの割合を、最表面1aの割合を基準として、5%以上増加する割合にする。
【0025】
これを
図4に表している。
図4において、耐食性と密着性を両立するための白金族金属の割合の上限のパターンを実線で、下限のパターンを破線で示している。
【0026】
上限のパターンは、最表面1aの白金族金属の割合が95%以上100%未満となっており、最表面1a表面から深さ10nmにかけて白金族金属の割合が95%未満に低下する。
【0027】
下限のパターンは、最表面1aの白金族金属の割合が90%となっており、表面から内部1bに向かって白金族金属の割合を低下させている。
【0028】
いずれの場合も、表面から深さ5nmまでの白金族金属の割合は90%以上100%未満であり、かつ、表面から深さ10nm以内で白金族金属の割合が95%未満になるので、上限のパターンと下限のパターンに挟まれた領域(斜線を施した領域)では、耐食性と密着性を両立することができる。
【0029】
なお、傾斜組成は、最表面からの深さが深くなるに従って漸次Pdの割合が減少する構成としても良いし、あるいは、途中からPdの割合が一定になるように構成してもよい。
【0030】
次に、本発明の第3実施形態に係る金属部材の製造方法について
図5を参照して説明する。
図5は同説明に供する模式的説明図である。
【0031】
ここでは、
図5(a)に示すようにNiとPdを含む合金部材51を準備し、Pdに対してエッチングレートが高く、Niに対してエッチングレートが低いエッチングガスを使用して、
図5(b)に示すように、純Pd層52を成膜する工程を行う。
【0032】
次いで、
図5(c)に示すように、純Pd層52と合金部材51のPdNi層間の拡散を行う工程を行う。
【0033】
その後、
図5(d)に示すように、表層の純Pd層52を除去する工程を行う。
【0034】
これにより、合金部材51の表面に所要の割合でPdを含有し、Pdの割合が内部よりも高くなっている金属部材1を得ることができる。
【0035】
なお、上記各実施形態においては、金属部材がNiとPdの合金である例で説明しているが、Ni以外の金属を含有する場合にも同様に適用することができる。
【0036】
次に、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドについて
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図、
図7は同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向)の断面説明図である。
【0037】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板101と、流路板102と、壁面部材としての薄膜部材からなる本発明に係る金属部材1で構成した振動板部材103とを積層接合している。そして、振動板部材103を変位させる圧電アクチュエータ111と、共通液室部材としてのフレーム部材120とを備えている。
【0038】
ノズル板101、流路板102及び振動板部材103によって、液体を吐出する複数のノズル104が通じる個別液室106と、個別液室106に液体を供給する流体抵抗部107と、流体抵抗部107に通じる液導入部108とを構成している。
【0039】
そして、フレーム部材120の共通流路としての共通液室110から振動板部材103に形成した開口109を通じて、液導入部108、流体抵抗部107を経て個別液室106に液体が供給される。
【0040】
振動板部材103は、流路板102の個別液室106の壁面を形成する壁面部材である。この振動板部材103は3層構造とし、流路板102側の1層で個別液室106に対応する部分に変形可能な振動領域(振動板)130を形成している。
【0041】
そして、この振動板部材103の個別液室106とは反対側に、振動板部材103の振動領域130を変形させるアクチュエータ手段、圧力発生手段としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ111を配置している。
【0042】
この圧電アクチュエータ111は、ベース部材113上に接着剤接合した複数の積層型圧電部材112を有し、圧電部材112にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材112に対して所要数の柱状の圧電素子(圧電柱)112A、112Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0043】
圧電部材112の圧電素子112A、112Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電素子112Aと、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電素子112Bとしている。
【0044】
そして、圧電素子112Aを振動板部材103の振動領域130に形成した島状の厚肉部である凸部130aに接合している。また、圧電素子112Bを振動板部材103の厚肉部である凸部130bに接合している。
【0045】
この圧電部材112は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、圧電素子112Aの外部電極に駆動信号を与えるためのフレキシブル配線部材としてのFPC115が接続されている。
【0046】
フレーム部材120は、例えばエポキシ系樹脂或いは熱可塑性樹脂であるポリフェニレンサルファイト等で射出成形により形成し、ヘッドタンクや液体カートリッジから液体が供給される共通液室110が形成されている。
【0047】
この液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子112Aに印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電素子112Aが収縮し、振動板部材103の振動領域130が引かれて個別液室106の容積が膨張することで、個別液室106内に液体が流入する。
【0048】
その後、圧電素子112Aに印加する電圧を上げて圧電素子112Aを積層方向に伸長させ、振動板部材103の振動領域130をノズル104方向に変形させて個別液室106の容積を収縮させる。これにより、個別液室106内の液体が加圧され、ノズル104から液体が吐出(噴射)される。
【0049】
そして、圧電素子112Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板部材103の振動領域130が初期位置に復元し、個別液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室110から個別液室106内に液体が充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0050】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0051】
次に、この液体吐出ヘッドにおける流路板102と振動板部材103との接合部分について
図8を参照して説明する。
図8は流路板102と振動板部材103との接合部分の拡大説明図である。
【0052】
本実施形態では、振動板部材103と流路板102とは接着剤160によって接合している。このとき、振動板部材103及び流路板102の表面には、接合強度や耐液性を高めるための表面処理膜(密着膜とも称される。)161が成膜されている。なお、ここでは図示していないが、ノズル板101についても、流路板102と接合する表面には表面処理膜が成膜されている。
【0053】
ここで、振動板部材103は、NiとPdとを含有する合金部材で形成している。この場合、振動板部材103の開口109の壁面は液体に晒されるために耐液性が求められ、流路板102と接合する接合面では接合強度を高めるために表面処理膜との密着性が求められる。
【0054】
この場合、流路板102と接合する部分のPdの割合が100%になると表面処理膜161との密着力が著しく低下することになる。また、表面処理膜161は合金部材(振動板部材103)のNiの割合が高いほど密着性が増すが、Niの割合が高くなるほど合金部材の耐食性が低下することになる。また、表面処理膜161が成膜されるときには、内部への食い込みがあるため、最表面のみではなく内部におけるNiの割合も密着性に影響する。
【0055】
そこで、前述した実施形態で説明したように、表面の白金族金属の割合が、内部の白金族金属の割合よりも高い構成とした金属部材1によって振動板部材3を構成している。
【0056】
これにより、振動板部材3の開口9などにおける耐食性を向上し、表面処理膜161との密着性も向上することができる。
【0057】
なお、本発明に係る金属部材で構成するヘッド構成部材は、振動板部材103に限るものではなく、ノズル板101、流路板102なども本発明に係る金属部材で構成することができる。
【0058】
また、本発明に係る金属部材は、ヘッド構成部材に限らず、表面処理膜との密着性と、耐食性とが求められる部材のいずれにも使用することができる。
【0059】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は同装置の要部平面説明図、
図10は同装置の要部側面説明図である。
【0060】
この液体を吐出する装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0061】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0062】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0063】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0064】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0065】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0066】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0067】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0068】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0069】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0070】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0071】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0072】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0073】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図11を参照して説明する。
図11は同ユニットの要部平面説明図である。
【0074】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0075】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0076】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図12を参照して説明する。
図12は同ユニットの正面説明図である。
【0077】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0078】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0079】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0080】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0081】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0082】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0083】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0084】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0085】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0086】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0087】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0088】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0089】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0090】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0091】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0092】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0093】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0094】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0095】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0096】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0097】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。