(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光吸収材飛翔手段が、前記光を透過可能な光吸収材担持体の表面に担持された前記光吸収材に対し、前記光吸収材担持体の裏面から前記光渦レーザビームを照射する請求項1に記載の光吸収材飛翔装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(光吸収材飛翔装置及び光吸収材飛翔方法)
本発明の光吸収材飛翔装置は、光を吸収する光吸収材と、光吸収材の光吸収波長に対応する光渦レーザビームを光吸収材に照射し、光渦レーザビームのエネルギーにより光吸収材を光渦レーザビームの照射方向に飛翔させ、被付着物に付着させる光吸収材飛翔手段と、を有する。また、本発明の光吸収材飛翔装置は、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明の光吸収材飛翔方法は、光を吸収する光吸収材に、光吸収材の光吸収波長に対応する光渦レーザビームを照射し、光渦レーザビームのエネルギーにより光吸収材を光渦レーザビームの照射方向に飛翔させ、被付着物に付着させる光吸収材飛翔工程を含む。また、本発明の光吸収材飛翔方法は、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
光吸収材飛翔方法は、光吸収材飛翔装置により好適に行うことができ、光吸収材飛翔工程は、光吸収材飛翔手段により好適に行うことができ、その他の工程は、その他の手段により行うことができる。
【0009】
本発明の光吸収材飛翔装置及び光吸収材飛翔方法は、従来技術の光渦レーザビームを用いた光吸収材飛翔装置では、光渦レーザビームにおける螺旋性の調整という点で、光吸収材を更に安定的に飛翔させ得る可能性があるという知見に基づくものである。
また、本発明の光吸収材飛翔装置及び光吸収材飛翔方法は、従来技術の軸対称偏光レーザー発振装置では、より安定的かつ容易に軸対称偏光レーザーが発振可能ではあるが、光吸収材を安定的に飛翔させることは困難であるという知見に基づくものである。
【0010】
一般的なレーザビームは、位相が揃っているため、
図1Aに示すように平面状の等位相面(波面)を有している。レーザビームのポインティングベクトルの方向が平面状の等位相面の直交方向であることにより、レーザビームの照射方向と同じ方向となるため、レーザビームが光吸収材に照射された場合には、光吸収材に対して照射方向に力が作用する。しかし、レーザビームの断面における光強度分布が、
図1Bに示すようにビームの中心が最も強い正規分布(ガウシアン分布)であるため、光吸収材が飛散しやすい。また、位相分布の観察を行うと
図1Cに示すように位相差がないことが確認される。
これに対し、光渦レーザビームは、
図2Aに示すように螺旋状の等位相面を有している。光渦レーザビームのポインティングベクトルの方向が螺旋状の等位相面に対して直交方向であるため、光渦レーザビームが光吸収材に照射された場合には、直交方向に力が作用する。このため、
図2Bに示すように光強度分布がビームの中央が零となる凹んだドーナツ状の分布となり、光渦レーザビームを照射された光吸収材は、ドーナツ状のエネルギーを放射圧として印加される。すると、光渦レーザビームを照射された光吸収材は、光渦レーザビームの照射方向に沿って飛翔し、被付着物に飛散しにくい状態で付着する。また、位相分布の観察を行うと
図2Cに示すように位相差が発生していることが確認される。
【0011】
図3Aは、一般的なレーザビームを光吸収材に照射させたときの一例を示す写真である。
図3Bは、光渦レーザビームを光吸収材に照射させたときの一例を示す写真である。
図3Aと
図3Bとを比較すると、
図3Aのほうが
図3Bよりも光吸収材が飛散していることが確認できる。このことから、光渦レーザビームを照射された光吸収材は、ドーナツ状のエネルギーを放射圧として印加され、光渦レーザビームの照射方向に沿って飛翔し、被付着物に飛散しにくい状態で付着することがわかる。
【0012】
光渦レーザビームか否かを判別する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前述の位相分布の観察、干渉計測などが挙げられ、干渉計測が一般的である。
干渉計測は、レーザビームプロファイラ(Spiricon社製レーザビームプロファイラ、浜松ホトニクス社製レーザビームプロファイラなど)を用いて観察でき、干渉計測した結果の一例を
図4A、
図4Bに示す。
図4Aは、光渦レーザビームにおける干渉計測の結果の一例を示す説明図であり、
図4Bは、中心に光強度0の点を有するレーザビームにおける干渉計測の結果の一例を示す説明図である。
光渦レーザビームを干渉計測すると、
図4Aに示すように、エネルギー分布がドーナツ状であって、
図1Cと同様に中心に光強度0の点を持つレーザビームであることが確認できる。
一方、中心に光強度0の点を有する一般的なレーザビームを干渉計測すると、
図4Bに示すように、
図4Aで示した光渦レーザビームの干渉計測と類似しているが、ドーナツ状部のエネルギー分布が一様ではないことから、光渦レーザビームとの差異が確認できる。
【0013】
<光吸収材飛翔手段及び光吸収材飛翔工程>
光吸収材飛翔工程は、光を吸収する光吸収材に、光吸収材の光吸収波長に対応する光渦レーザビームを光吸収材に照射し、光渦レーザビームのエネルギーにより光吸収材を照射方向に飛翔させ、被付着物に付着させる工程である。光吸収材飛翔工程は、例えば、光吸収材飛翔手段を用いて好適に行うことができる。
光吸収材飛翔手段は、光を吸収する光吸収材に、光吸収材の光吸収波長に対応する光渦レーザビームを光吸収材に照射し、光渦レーザビームのエネルギーにより光吸収材を照射方向に飛翔させ、被付着物に付着させる手段である。
光吸収材飛翔手段が、光を透過可能な光吸収材担持体の表面に担持された光吸収材に対し、光吸収材担持体の裏面から光渦レーザビームを照射することが好ましい。
また、光吸収材飛翔手段は、レーザ光源と、光渦変換部と、波長変換部とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有することが好ましい。
【0014】
<<レーザ光源>>
レーザ光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザビームを発生させる固体レーザ、気体レーザ、半導体レーザなどが挙げられ、パルス発振可能なものが好ましい。
固体レーザとしては、例えば、YAGレーザ、チタンサファイアレーザなどが挙げられる。
気体レーザとしては、例えば、アルゴンレーザ、ヘリウムネオンレーザ、炭酸ガスレーザなどが挙げられる。
これらの中でも、出力が30mW程度の半導体レーザが、装置の小型化及び低コスト化の点で、好ましい。ただし、本実施例では、実験的にチタンサファイアレーザを使用した。
レーザビームの波長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300nm以上11μm以下が好ましく、350nm以上1100nm以下がより好ましい。
レーザビームのビーム径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm以上10mm以下が好ましく、10μm以上1mm以下がより好ましい。
レーザビームのパルス幅としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2ナノ秒以上100ナノ秒以下が好ましく、2ナノ秒以上10ナノ秒以下がより好ましい。
レーザビームのパルス周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10Hz以上200Hz以下が好ましく、20Hz以上100Hz以下がより好ましい。
なお、レーザ光源としては、光渦レーザビームを出力可能なレーザ光源でもよい。
【0015】
<<光渦変換部>>
光渦変換部としては、レーザビームを光渦レーザビームに変換できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回折光学素子、マルチモードファイバ、液晶位相変調器などが挙げられる。
回折光学素子としては、例えば、螺旋位相板、ホログラム素子などが挙げられる。これらの中でも、螺旋位相板(Spiral Phase Plate)が好ましい。
なお、光渦レーザビームを発生させる方法としては、光渦変換部を用いる方法に限らず、例えば、レーザ共振器から光渦を固有モードとして発振させる方法、ホログラム素子を共振器に挿入する方法などが挙げられる。他の光渦レーザビームを発生させる方法としては、例えばドーナツビームに変換した励起光を用いる方法、暗点を有する共振器ミラーを用いる方法、側面励起固体レーザで発生する熱レンズ効果を空間フィルタとして用いて光渦モード発振する方法などが挙げられる。
【0016】
<<波長変換部>>
波長変換部としては、光渦レーザビームに円偏光を付与することにより、以下の式(1)で表されるトータルの回転モーメントJ
L,Sが、|J
L,S|≧0となる条件を満たすことができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。波長変換部としては、例えば、1/4波長板などが挙げられる。1/4波長板の場合には、光学軸を+45°又は−45°以外に設置して光渦レーザビームに楕円状の円偏光を付与してもよいが、光学軸を+45°又は−45°に設置して光渦レーザビームに真円状の円偏光を付与し、上記の条件を満たすことが好ましい。これにより、光吸収材飛翔装置は、光吸収材を安定的に飛翔させ、飛散を抑制した形状で被付着物に付着させる効果を大きくすることができる。
【0017】
【数3】
ただし、式(1)において、ε
0は真空中の誘電率であり、ωは光の角周波数であり、Lはトポロジカルチャージであり、Iは下記数式(2)で表される光渦レーザビームの渦次数に対応する軌道角運動量であり、Sは円偏光に対するスピン角運動量であり、rは円筒座標系の動径である。
【数4】
ただし、式(2)において、ω
0は光のビームウエストサイズである。
なお、トポロジカルチャージとは、光渦レーザビームの円筒座標系における方位方向の周期的境界条件から現れる量子数を意味する。また、ビームウエストサイズとは、光渦レーザビームにおけるビーム径の最小値を意味する。
【0018】
Lは、波長板における螺旋波面の巻数で決まるパラメータである。Sは、波長板における円偏光の向きで決まるパラメータである。なお、L及びSはいずれも整数である。また、L及びSの符号は、それぞれ螺旋の向き(時計回り、反時計回り)を表す。
なお、光渦レーザビームにおけるトータルの回転モーメントをJとすると、J=L+Sと表すことができる。
【0019】
光吸収材飛翔装置は、光渦レーザビームに変換する光渦変換部、及び光渦レーザビームに円偏光を付与する波長変換部を備え、|J
L,S|≧0と設定することにより、高粘度又は固体の光吸収材の飛翔物の直線指向性を発現させ、光吸収材の飛散を抑制できる。
【0020】
<<その他の部材>>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーム径変更部材、ビーム波長変更素子、波長変換部などが挙げられる。
【0021】
―ビーム径変更部材―
ビーム径変更部材としては、レーザビーム又は光渦レーザビームのビーム径を変更できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、集光レンズなどが挙げられる。
光渦レーザビームのビーム径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光吸収材の飛翔が確認されている点で、数μm以上10mm以下が好ましい。なお、ビーム径は、レーザスポット径及び集光レンズにより変更することが可能である。
また、光吸収材が分散体の場合、ビーム径としては、光吸収材の体積平均粒径の最大値以上が好ましく、分散体の最大値の3倍がより好ましい。ビーム径がより好ましい範囲内であると、光吸収材を安定して飛翔させることが可能となる点で有利である。
【0022】
―ビーム波長変更素子―
ビーム波長変更素子としては、レーザビーム又は光渦レーザビームの波長を、光吸収材が吸収可能であり、かつ後述する光吸収材担持体が透過可能である波長に変更できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ビーム波長変更素子としては、例えば、KTP結晶、BBO結晶、LBO結晶、CLBO結晶などが挙げられる。
【0023】
―波長変換部―
波長変換部としては、レーザビーム又は光渦レーザビームを適正な出力値に調整することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラスなどが挙げられる。
1ドット分の光吸収材を飛翔させる際の光渦レーザビームのエネルギー強度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。このエネルギー強度としては、直径200μmのドットの場合、0.1mJ/ドット以上1.0mJ/ドット以下が好ましく、0.1mJ/ドット以上0.6mJ/ドット以下がより好ましい。
【0024】
<その他の手段及びその他の工程>
その他の手段としては、例えば、光吸収材供給手段、ビーム走査手段、被付着物搬送手段、定着手段、制御手段などが挙げられる。
また、光吸収材飛翔手段、光吸収材担持体、光吸収材供給手段、及びビーム走査手段を一体として光吸収体飛翔ユニットとして扱ってもよい。
その他の工程としては、例えば、光吸収材供給工程、ビーム走査工程、被付着物搬送工程、定着工程、制御工程などが挙げられる。
【0025】
<<光吸収材供給手段及び光吸収材供給工程>>
光吸収材供給手段としては、光吸収材飛翔手段と被付着物との間の光渦レーザビームの光路上に、光吸収材を供給できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光吸収材供給手段としては、例えば、光路上に配置された円筒状の光吸収材担持体を介して光吸収材を供給するようにしてもよい。
具体的には、光吸収材が液体であって、光吸収材担持体に光吸収材を供給する場合には、光吸収材供給手段として供給ローラ及び規制ブレードを設けることが、非常に簡単な構成で光吸収材を光吸収材担持体の表面に一定の平均厚みで供給することができる。
この場合、供給ローラは、光吸収材を貯蔵する貯蔵槽に表面が一部浸漬し、光吸収材を表面に担持しながら回転して、光吸収材担持体に当接することにより光吸収材を供給する。規制ブレードは、供給ローラの回転方向における貯蔵槽の下流側に配置され、供給ローラが担持した光吸収材を規制して平均厚みを均一にし、飛翔させる光吸収材の量を安定させる。平均厚みを非常に薄くすることにより、飛翔させる光吸収材の量を低減できるため、光吸収材を飛散が抑制された微小なドットとして被付着物に付着可能とし、網点が太るドットゲインを抑制することができる。なお、規制ブレードは、光吸収材担持体の回転方向における供給ローラの下流側に配置されていてもよい。
【0026】
また、光吸収材が高粘度である場合には、供給ローラの材質は、光吸収材担持体と確実に接触させるようにする点で、少なくとも表面が弾性を有するものが好ましい。光吸収材が比較的低粘度である場合には、供給ローラとしては、例えば、精密ウェットコーティングで用いられるような、グラビアロール、マイクログラビア、フォーワードロールなどが挙げられる。
【0027】
更に、供給ローラを設けない光吸収材供給手段としては、貯蔵槽内の光吸収材に光吸収材担持体を直接接触させた後にワイヤーバーなどで余分な光吸収材を掻き取ることにより光吸収材担持体の表面に光吸収材の層を形成するようにしてもよい。なお、貯蔵槽は、光吸収材供給手段とは別に設け、ホース等で光吸収材を光吸収材供給手段に供給するようにしてもよい。
光吸収材供給工程としては、光吸収材飛翔手段と被付着物との間の光渦レーザビームの光路上に、光吸収材を供給する工程であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収材供給手段を用いて好適に行うことができる。
【0028】
<<ビーム走査手段及びビーム走査工程>>
ビーム走査手段としては、光渦レーザビームを光吸収材に対して走査可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ビーム走査手段は、光吸収材飛翔手段から照射された光渦レーザビームを光吸収材に向けて反射させる反射鏡と、反射鏡の角度及び位置を変化させて光渦レーザビームを光吸収材に対して走査させる反射鏡駆動部とを有するようにしてもよい。
ビーム走査工程としては、光渦レーザビームを光吸収材に走査させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーム走査手段を用いて好適に行うことができる。
【0029】
<<被付着物搬送手段及び被付着物搬送工程>>
被付着物搬送手段としては、被付着物を搬送することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、搬送ローラ対などが挙げられる。
被付着物搬送工程としては、被付着物を搬送する工程であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、被付着物搬送手段を用いて好適に行うことができる。
【0030】
<<定着手段及び定着工程>>
定着手段としては、被付着物に付着させた光吸収材を定着させることができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱加圧部材を用いた熱圧着方式のものなどが挙げられる。
加熱加圧部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱ローラ、加圧ローラ、加熱ローラ及び加圧ローラを組み合わせたものなどが挙げられる。他の加熱加圧部材としては、例えば、これらに定着ベルトを組合せたもの、これらのうち加熱ローラを加熱ブロックに代えたものなどが挙げられる。
【0031】
加圧ローラとしては、被付着物搬送手段により搬送される被付着物と等速度で加圧面が移動するものが、擦れによる画像劣化を抑制する点で、好ましい。この中でも、表面近傍に弾性層を形成したものが、被付着物に対して接触加圧しやすい点で、より好ましい。更に、最表面にシリコーン系の撥水性材料やフッ素化合物などの低表面エネルギーの素材で撥水性表面層を形成した加圧ローラが、表面に光吸収材が付着することによる画像の乱れを抑制する点で、特に好ましい。
シリコーン系の撥水性材料からなる撥水性表面層としては、例えば、シリコーン系離型剤の皮膜、シリコーンオイル又は各種変性シリコーンオイルの焼付皮膜、シリコーンワニスの皮膜、シリコーンゴムの皮膜、シリコーンゴムと各種金属、ゴム、プラスチック、セラミック等の複合物からなる皮膜などが挙げられる。
フッ素化合物からなる撥水性表面層としては、フッ素樹脂の皮膜、有機フッ素化合物の皮膜、フッ素オイルの焼付皮膜又は吸着膜、フッ素ゴムの皮膜、若しくはフッ素ゴムと各種金属、ゴム、プラスチック、セラミック等の複合物からなる皮膜などが挙げられる。
【0032】
加熱ローラにおける加熱温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、80℃以上200℃以下が好ましい。
【0033】
定着ベルトとしては、耐熱性があり、機械的強度が高ければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリイミド、ポリイミド、PET、PEN等のフィルムなどが挙げられる。また、定着ベルトとしては、表面に光吸収材が付着することによる画像の乱れを抑制する点で、加圧ローラの最表面を形成する材料と同じものを用いることが好ましい。定着ベルトは、肉厚を薄くすることができることにより、ベルト自体を加熱するエネルギーを小さくできるため、電源を入れてすぐに使用することができる。このときの温度及び圧力は定着させる光吸収材の組成により変化するが、温度としては200℃以下が省エネの観点から好ましく、圧力としては1kg/cm以下が装置の剛性の点で好ましい。
【0034】
なお、2種以上の光吸収材を用いる場合は、各色の光吸収材が被付着物に付着する毎に定着させてもよく、全種の光吸収材が被付着物に付着して積層された状態で定着させてもよい。
また、光吸収材が非常に高粘度であって、乾燥が遅くなり被付着物に対する付着速度の向上が困難な場合には、被付着物を追加で加熱し、乾燥を促進させてもよい。
更に、光吸収材の被付着物への浸透及び濡れが遅く、付着させた光吸収材が十分に平滑化していない状態で乾燥させた場合、光吸収材が付着した被付着物の表面が粗くなるため、被付着物の表面の光沢が得られない場合がある。被付着物の表面の光沢を得るためには、加圧して定着させる定着手段とすることにより、被付着物に付着した光吸収材をつぶしながら被付着物に押し込むよう定着させて、被付着物の表面粗さを小さくするようにしてもよい。
定着手段は、特に粉体を押し固めて形成した固体の光吸収材を用いた場合、被付着物に定着させるために必要となる。なお、必要に応じて、定着手段とともに公知の光定着器を用いてもよい。
定着工程としては、被付着物に付着させた光吸収材を、被付着物に定着させる工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、定着手段を用いて好適に行うことができる。
【0035】
<<制御手段及び制御工程>>
制御手段としては、各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
制御工程は、各工程を制御する工程であり、制御手段により好適に行うことができる。
【0036】
<光吸収材>
光吸収材は、光吸収物質を有し、更に必要に応じて適宜選択した、その他の物質を有する。
【0037】
<<光吸収物質>>
光吸収物質としては、所定の波長の光を吸収するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顔料、染料などの化合物が挙げられる。
【0038】
光吸収物質における所定の波長の光の透過率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、70%以下が好ましく、50%以下がより好ましく、30%以下が特に好ましい。光吸収物質における所定の波長の光の透過率が好ましい範囲内であると、光渦レーザビームのエネルギーの付与が十分となる点で有利である。
なお、透過率は、例えば、分光光度計(日本分光社製、V−660DS)などを用いてで測定することができる。
【0039】
光吸収材としては、その形態、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
光吸収材の形態としては、例えば、液体、固体、粉体などが挙げられる。特に、高粘性体又は固体を飛翔可能としたことは、従来のインクジェット記録方式には成し得ない長所となっている。
【0040】
液体の光吸収材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顔料及び溶剤を含むインク、導電体及び溶剤を含む導電性ペーストなどが挙げられる。なお、溶剤を含むインクに光渦レーザビームが照射されると、溶剤が光を吸収しない場合には、溶剤以外の光を吸収する含有物に光渦レーザビームのエネルギーが付与され、その含有物とともに溶剤が飛翔する。
液体の光吸収材の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1Pa・s以上が好ましい。
なお、粘度は、例えば、回転粘度計(東機産業株式会社製、VISCOMATE VM−150III)などを用いて25℃の環境下で測定することができる。
【0041】
導電性ペーストは、導電体を含むインクであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、回路基板の製造方法において公知乃至慣用の導電性ペーストなどが挙げられる。
導電体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銀、金、銅、ニッケル、ITO、カーボン、カーボンナノチューブ等の導電性を有する無機粒子;ポリアニリン、ポリチオフェン(例えば、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)等)、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性の有機高分子からなる粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
導電性ペーストの体積抵抗率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常の電極用途として使用できる点から10
3Ω・cm以下が好ましい。
【0042】
粉体の光吸収材としては、例えば、顔料及び結着樹脂を含むトナーなどが挙げられる。この場合、光渦レーザビームが照射されると、顔料に光渦レーザビームのエネルギーが付与され、顔料とともに結着樹脂がトナーとして飛翔する。なお、粉体の光吸収材としては、顔料のみとしてもよい。
【0043】
固体の光吸収材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スパッタや蒸着により製膜された金属薄膜、分散体などの粉体を押し固めたものなどが挙げられる。
【0044】
金属薄膜としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。金属としては、例えば、銀、金、アルミ、白金、銅など蒸着やスパッタ加工が可能な一般的な金属が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
金属薄膜を飛翔させて画像パターンを形成する方法としては、例えば、予めガラスやフィルムなどの光吸収材担持体上に金属薄膜を作成し、金属薄膜に光渦レーザビームを照射して飛翔させることで画像パターンを形成させる方法が挙げられる。また、他の方法としては、非画像部を飛翔させることで画像パターンを形成させる方法などが挙げられる。
【0045】
粉体を押し固めたものとしては、所定の平均厚みである層状であることが好ましく、光吸収材担持体の表面に層状の固体を担持されるようにしてもよい。
【0046】
光吸収材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
光吸収材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上500μm以下が好ましく、1μm以上100μm以下がより好ましい。光吸収材の平均厚みが好ましい範囲内であると、光吸収材を層状にして供給した場合、連続して飛翔させたときであっても層の強度を確保することができるため、安定した供給が可能となる点で有利である。また、光渦レーザビームのエネルギーが大きくなりすぎないため、特に光吸収材が有機物の場合、劣化や分解が発生しにくい点で有利である。
また、光吸収材担持体に光吸収材を塗布することにより、光吸収材の平均厚みを0.5μm未満としても一定の厚みを維持した平滑な層として安定して供給することが可能となる。なお、塗布する方法によっては、一定のパターンを保持した層として供給することも可能となる。
【0047】
平均厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収材に対して任意の複数の点を選択し、複数の点の厚みの平均を算出することにより求める方法、などが挙げられる。平均としては、5点の厚みの平均が好ましく、10点の厚みの平均がより好ましく、20点の厚みの平均が特に好ましい。
平均厚みの測定機器としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マイクロメータなどが挙げられる。
【0048】
光吸収材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像形成を行う場合にはトナーのような着色剤であってもよく、立体造形物を製造する場合には後述する立体造形剤であってもよい。
【0049】
<<光吸収材担持体>>
光吸収材担持体としては、その形状、構造、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光吸収材担持体の形状としては、光吸収材を表面に担持し、裏面から光渦レーザビームを照射可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光吸収材担持体の形状としては、例えば、平板状、真円又は楕円等の筒状、筒状の一部を切り出した面、無端ベルト状などが挙げられる。これらの中でも、光吸収材担持体が筒状であって、周方向に回転する光吸収材担持体の表面に光吸収材を供給する光吸収材供給手段を有するようにすることが好ましい。筒状の光吸収材担持体の表面に光吸収材を担持すると、外周方向における被付着物の寸法に依存せずに供給することができる。また、この場合、筒状の内部には光吸収材飛翔手段を配置し、内部から外周に向けて光渦レーザビームを照射可能とし、光吸収材担持体が周方向に回転することで連続的に照射することができる。また、平板状の光吸収材担持体の形状としては、例えば、スライドガラスなどが挙げられる。
【0050】
光吸収材担持体の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0051】
光吸収材担持体の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、被付着物の幅に合わせた寸法とすることが好ましい。
【0052】
光吸収材担持体の材質としては、光を透過するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光を透過するもののうち、酸化珪素を主成分とする各種ガラスなどの無機材料、透明性の耐熱プラスチック、エラストマーなどの有機材料が、透過率と耐熱性の点で、好ましい。
【0053】
光吸収材担持体における光の透過率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、75%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。透過率が好ましい範囲内であると、光吸収材担持体に吸収された光渦レーザビームのエネルギーが熱に変換されにくいため、光吸収材に乾燥や溶融などの変化を与えることが少ない点で有利である。さらに、透過率が好ましい範囲内であると、光吸収材に与えるエネルギーが低下しにくいため、付着位置のバラつきが生じにくい点で有利である。
なお、透過率は、例えば、分光光度計(日本分光社製、V−660DS)などを用いて測定することができる。
【0054】
光吸収材担持体の表面粗さRaとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、光渦レーザビームの屈折散乱を抑制し、光吸収材に付与するエネルギーを低下させない点で、表面及び裏面のどちらも1μm以下であることが好ましい。また、表面粗さRaが好ましい範囲内であると、被付着物に付着した光吸収材の平均厚みのバラつきを抑制することができ、所望の量の光吸収材を付着させることができる点で有利である。
表面粗さRaは、JIS B0601に従って測定することができ、例えば、触針式表面形状測定装置(Dektak150、ブルカー・エイエックスエス株式会社製)を用いて測定することができる。
【0055】
<被付着物>
被付着物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像を形成するための記録媒体、立体造形物を形成するための造形物支持基板などが挙げられる。
【0056】
被付着物と光吸収材との間隙としては、被付着物と光吸収材とを接触させなければ特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.05mm以上5mm以下が好ましく、0.05mm以上1mm以下がより好ましい。間隙が好ましい範囲内であると、被付着物に対する光吸収材の付着位置の精度が低下しにくくなる点で有利である。また、被付着物と光吸収材とを接触させないことにより、光吸収材、被付着物の組成を選ばず光吸収材を被付着物に付着させることが可能となる。
更に、間隙は、例えば、被付着物の位置を一定に維持する位置制御手段などにより一定に保たれることが好ましい。この場合、光吸収材及び被付着物の位置変動、平均厚みのバラつきを考慮して各部位を配置することが重要となる。
【0057】
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、着色剤飛翔装置を少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。着色剤飛翔装置は、光吸収材が着色剤である光吸収材飛翔装置であり、着色剤飛翔手段により飛翔させる。
本発明の画像形成方法は、着色剤飛翔工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
着色剤飛翔工程は、光吸収材が着色剤である光吸収材飛翔工程である。画像形成方法は、画像形成装置により好適に行うことができ、着色剤飛翔工程は、着色剤飛翔手段により好適に行うことができ、その他の工程は、その他の手段により行うことができる。
【0058】
<着色剤飛翔手段及び着色剤飛翔工程>
着色剤飛翔手段は、光吸収材が着色剤であり、被付着物が記録媒体であること以外は前述の光吸収材飛翔手段と同様であるため、その説明を省略する。
着色剤飛翔工程は、光吸収材が着色剤であり、被付着物が記録媒体であること以外は前述の光吸収材飛翔方法と同様であるため、その説明を省略する。
【0059】
<その他の手段及びその他の工程>
その他の手段としては、例えば、着色剤供給手段、ビーム走査手段、記録媒体搬送手段、定着手段、制御手段などが挙げられる。
【0060】
なお、着色剤飛翔手段、着色剤供給手段、及びビーム走査手段を一体として着色剤飛翔ユニットとして扱ってもよい。
例えば、着色剤飛翔ユニットを画像形成装置に4つ設け、プロセスカラーであるイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの着色剤を飛翔させるようにしてもよい。着色剤の色数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、必要に応じて着色剤飛翔ユニットの数を増減させてもよい。また、記録媒体の搬送方向における、プロセスカラーの着色剤を有する着色剤飛翔ユニットの上流側に、白色の着色剤を有する着色剤飛翔ユニットを配置することで、白色隠蔽層を設けることが可能となるため、透明な記録媒体に色再現性に優れた画像を形成できる。ただし、特にイエロー、白色、透明の着色剤においては、光渦レーザビームの波長の光の透過率が70%以下となるように、レーザ光源を、例えば、ブルーレーザビーム、紫外線レーザビームなどを発生するレーザ光源に変更しなければならない場合がある。
【0061】
更に、画像形成装置では、粉体や高粘度の着色剤を用いることができるので、記録媒体上に順次異なる色の着色剤を重ねて画像を形成しても、着色剤が滲み出して交じり合うブリーディングの発生を抑制できるため、高画質のカラー画像を得ることができる。
【0062】
画像形成装置の小型化などを目的として、着色剤飛翔ユニットを1つだけ設け、供給ローラ及び着色剤担持体に供給する着色剤自体を切り替えて複数色の画像を形成するようにしてもよい。
その他の工程としては、例えば、着色剤供給工程、ビーム走査工程、記録媒体搬送工程、定着工程、制御工程などが挙げられる。
【0063】
<<着色剤供給手段及び着色剤供給工程>>
着色剤供給手段及び着色剤供給工程は、光吸収材が着色剤であり、被付着物が記録媒体であること以外は前述の光吸収材供給手段及び光吸収材供給工程と同様であるため、その説明を省略する。
【0064】
<<ビーム走査手段及びビーム走査工程>>
ビーム走査手段及びビーム走査工程は、光吸収材が着色剤であり、被付着物が記録媒体であること以外は前述のビーム走査手段及びビーム走査工程と同様であるため、その説明を省略する。
【0065】
<<記録媒体搬送手段及び記録媒体搬送工程>>
記録媒体搬送手段及び記録媒体搬送工程としては、光吸収材が着色剤であり、被付着物が記録媒体であること以外は前述の被付着物搬送手段及び被付着物搬送工程と同様であるため、その説明を省略する。
【0066】
<<定着手段及び定着工程>>
画像形成装置における定着手段及び定着工程は、光吸収材が着色剤であり、被付着物が記録媒体であること以外は光吸収材飛翔装置における定着手段及び定着工程と同様であるため、その説明を省略する。
【0067】
<<制御手段及び制御工程>>
画像形成装置における制御手段及び制御工程は、光吸収材飛翔装置における制御手段及び制御工程と同様であるため、その説明を省略する。
【0068】
<着色剤>
着色剤としては、光吸収材と同様に、その形状、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。以下、光吸収材を着色剤とした際に異なる点を説明する。
【0069】
粉体の着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、電子写真方式で用いられるトナーのように、結着樹脂を含む粉体であることが好ましい。
【0070】
結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、電子写真用トナーに用いられる結着樹脂が、記録媒体に定着させる機能、着色剤担持体の表面に均一に層形成するための機能などを付与する点で、好ましい。
【0071】
電子写真用トナーに用いられる結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル、スチレン系共重合体等の汎用の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルが、代表的な記録媒体である紙との親和性が高く、定着性が良好である点で、好ましい。また、ポリエステルは、軟化剤として用いられる脂肪族エステル化合物と類似した分子構造を有するため、相溶性が高い点でも好ましい。
【0072】
ポリエステルを構成するモノマーとしては、例えば、2価のアルコール成分、3価以上の多価アルコール成分、ポリエステル系重合体を形成する酸成分、3価以上の多価カルボン酸成分などが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、又は、ビスフェノールAにエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の環状エーテルが重合して得られるジオールなどが挙げられる。
3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンなどが挙げられる。
ポリエステル系重合体を形成する酸成分としては、例えば、べンゼンジカルボン酸類又はその無水物、アルキルジカルボン酸類又はその無水物、不飽和二塩基酸、不飽和二塩基酸無水物などが挙げられる。
べンゼンジカルボン酸類としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
アルキルジカルボン酸類としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などが挙げられる。
不飽和二塩基酸としては、例えば、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、アルケニルコハク酸、フマル酸、メサコン酸などが挙げられる。
不飽和二塩基酸無水物としては、例えば、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、アルケニルコハク酸無水物などが挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、トリメット酸、ピロメット酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシ−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシ)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、又はこれらの無水物、部分低級アルキルエステルなどが挙げられる。
スチレン系共重合体としては、例えば、スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などが挙げられる。
更に、炭化水素ワックス、モノエステルワックス、カルバウバワックス、ポリエチレンワックスなどのワックス成分を含む場合もある。
【0073】
結着樹脂のガラス転移点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上70℃未満がより好ましい。
ガラス転移点が好ましい範囲内であると、結着樹脂の耐熱保存性を維持することができ、着色剤担持体の表面に層を形成しやすくなるとともに、熱、圧力などで記録媒体に着色剤を定着させるエネルギーを低減できる点で有利である。
【0074】
液体の着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、溶剤としての水に、染料、顔料、着色粒子、着色油滴などを分散させた水性インクが使用可能である。また、水性インクに限らず、溶剤として、例えば、炭化水素系の有機溶剤や各種アルコールなど、比較的低沸点の液体を含んだ着色剤も使用可能である。これらの中でも、揮発成分の安全性、爆発の危険性などの点から、水性インクが好ましい。
【0075】
また、画像形成装置では、版を用いるオフセット印刷用のプロセスインキ、JAPAN COLOR対応インキ、特色インキなどでも画像形成が可能であるため、オフセット印刷で用いる色に合わせたデジタル画像を無版で容易に再現することができる。
更に、UV硬化インキでも画像形成が可能であるため、定着工程において紫外線を照射して硬化することにより、重なった記録媒体が貼り付くブロッキングの防止、及び乾燥工程の簡略化ができる。
【0076】
着色剤の材質としては、例えば、有機顔料、無機顔料、染料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
有機顔料としては、例えば、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンバイオレット、銅フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、サップグリーン、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ポリアゾイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、イソインドリノンイエロー、ファーストイエロー、クロモフタルイエロー、ニッケルアゾイエロー、アゾメチンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、アリザリンレッド、キナクリドンレッド、ナフトールレッド、モノアゾレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッド、アンスラキノニルレッド、ジケトピロロピロールレッド、ジケトピロロピロールオレンジ、ベンズイミダゾロンブラウン、セピア、アニリンブラック、などが挙げられ、有機顔料のうち金属レーキ顔料としては、例えば、ローダミンレーキ、キノリンイエローレーキ、ブリリアントブルーレーキなどが挙げられる。
【0078】
無機顔料としては、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトバイオレット、コバルトグリーン、ジンクホワイト、チタニウムホワイト、チタンイエロー、クロムチタンイエロー、ライトレッド、クロムオキサイドグリ−ン、マルスブラック、ビリジャン、イエローオーカー、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、バーミリオン、リトポン、ウルトラマリーン、タルク、ホワイトカーボン、クレー、ミネラルバイオレット、ローズコバルトバイオレット、シルバーホワイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム、黄銅、金粉、ブロンズ粉、アルミニウム粉、真鍮顔料、アイボリーブラック、ピーチブラック、ランプブラック、カーボンブラック、プルシャンブルー、オーレオリン、雲母チタン、イエローオーカー、テールベルト、ローシェンナ、ローアンバー、カッセルアース、白亜、石膏、バーントシェンナ、バーントアンバー、ラピスラズリ、アズライト、マラカイト、オーピメント、辰砂、珊瑚末、胡粉、ベンガラ、群青、紺青、魚燐箔、酸化鉄処理パールなどが挙げられる。
【0079】
これらの中でも、ブラック顔料としては、色相、画像保存性の点から、カーボンブラックが好ましい。
シアン顔料としては、色相、画像保存性の点から、銅フタロシアニンブルーであるC.I.ピグメントブルー15:3が好ましい。
【0080】
マゼンタ顔料としては、キナクリドンレッドであるC.I.ピグメントレッド122、ナフトールレッドであるC.I.ピグメントレッド269、及びローダミンレーキであるC.I.ピグメントレッド81:4が好ましく、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、色相、画像保存性の点から、C.I.ピグメントレッド122及びC.I.ピグメントレッド269の混合物がより好ましく、C.I.ピグメントレッド122(P.R.122)及びC.I.ピグメントレッド269(P.R.269)の混合物としては、P.R.122:P.R.269が5:95以上80:20以下の混合物が特に好ましい。P.R.122:P.R.269が特に好ましい範囲内であると、色相がマゼンタ色として外れない。
【0081】
イエロー顔料としては、モノアゾイエローであるC.I.ピグメントイエロー74、ジスアゾイエローであるC.I.ピグメントイエロー155、ベンズイミダゾロンイエローであるC.I.ピグメントイエロー180、イソインドリンイエローであるC.I.ピグメントイエロー185が好ましい。これらの中でも、色相、画像保存性の点から、C.I.ピグメントイエロー185がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
光吸収材を着色剤としてのプロセスカラートナーとして用いる場合、4色のトナーセットで用いることが好ましい。
【0083】
無機顔料は、体積平均粒径が10μmを超える粒子からなるものが多い。体積平均粒径が10μm以上の無機顔料を着色剤として用いる場合、着色剤としては、液体であることが好ましい。着色剤が液体であれば、静電気力など非静電付着力以外の力を用いることなく着色剤を安定した状態で維持できる点で有利である。また、この場合、ノズルつまりやインクの沈降などが顕著となりやすく、安定した連続印刷プロセスは望みにくいインクジェット記録方式と比較すると、本発明の画像形成方法は、非常に有効である。更に、着色剤の粒子の表面積が小さくなると十分な帯電量が得られず、安定した連続印刷プロセスとして成立しない電子写真方式と比較しても、本発明の画像形成方法は、非常に有効である。
【0084】
染料としては、例えば、モノアゾ染料、ポリアゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、スチルベンアゾ染料、チアゾールアゾ染料、アントラキノン誘導体、アントロン誘導体、インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体、フタロシアニン染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、ポリメチン染料、アゾメチン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料などが挙げられる。
【0085】
<<着色剤の粘度>>
着色剤の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
記録媒体に浸透する液体の着色剤を用いた場合、記録媒体に付着した着色剤がフェザリングやブリーディングを発生することがあるが、本発明の画像形成装置で取り扱いが可能である高粘度の着色剤にすると、記録媒体への浸透速度に対して乾きのほうが速いため、特にブリーディングの減少によって発色性の向上とエッジ部分の鮮鋭化が図れ、高画質の画像を形成することができる。また、着色剤を重ねて付着させる重ね打ちによる階調表現を行う場合にも、着色剤の量の増加による滲みも少なくすることができる。
更に、この画像形成方法は、液体の着色剤を飛翔させて付着させるものであるため、例えば、フィルム状の着色剤担持体から熱により着色剤を溶融転写するいわゆる熱転写方式と比較すると、記録媒体に微小な凹凸が存在していても良好に記録を行うことができる。
【0086】
<<着色剤の平均厚み>>
着色剤の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100μm以下が好ましい。着色剤の平均厚みが100μm以下であると、着色剤を飛翔させるためのエネルギーを小さくできるため、着色剤担持体の耐久性、着色剤が有機物である場合の組成の分解などが発生しにくくなる点で有利である。なお、平均厚みの好ましい範囲は、記録媒体、目的などにより変化する。
【0087】
例えば、一般的なオフセット印刷で用いられるコート紙や平滑なフィルムを記録媒体として用いる場合には、0.5μm以上5μm以下が好ましい。平均厚みが好ましい範囲内であると、記録媒体の微小な平均厚みの違いによる色差が人間の目でも判別しにくくなるためコート紙でも彩度の高い画像になりやすくなるとともに、網点のドットゲインが顕著とならず鮮鋭な画像が表現しやすくなる点で有利である。
【0088】
また、例えば、オフィスなどで用いられる上質紙など、表面粗さがコート紙やフィルムよりも大きな記録媒体を用いる場合には、3μm以上10μm以下が好ましい。平均厚みが好ましい範囲内であると、記録媒体の表面粗さに影響されにくく良好な画質を得やすくなるとともに、特にプロセスカラーの着色剤でフルカラー画像を表現する場合、複数の着色剤の層を重ね合わせても段差感が顕著となりにくい。
【0089】
更に、例えば、布、繊維などを染色する捺染に用いる場合、記録媒体となる綿、絹、化学繊維などに着色剤を付着させるには、5μm以上の平均厚みが必要となる場合が多い。これは、繊維の太さが紙に比べ大きくなるため、多くの着色剤が必要となる場合が多い。
【0090】
<着色剤担持体>
着色剤担持体は、光吸収材を着色剤とした以外は光吸収材飛翔装置における光吸収材担持体と同様であるため、その説明を省略する。
【0091】
<記録媒体>
記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コート紙、上質紙、フィルム、布、繊維などが挙げられる。
【0092】
記録媒体と着色剤担持体との間隙としては、光吸収材が着色剤であり、被付着物が記録媒体であること以外は光吸収材飛翔装置における光吸収材と光吸収材担持体との間隙の説明と同じであるので、その説明を省略する。
【0093】
(立体造形物の製造装置及び立体造形物の製造方法)
本発明の立体造形物の製造装置は、立体造形剤飛翔装置を少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。立体造形剤飛翔装置は、光吸収材が立体造形剤である光吸収材飛翔装置であり、立体造形剤飛翔手段により飛翔させる。
本発明の立体造形物の製造方法は、立体造形剤飛翔工程を少なくとも含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。立体造形剤飛翔工程は、光吸収材が立体造形剤である光吸収材飛翔工程である。
立体造形物の製造方法は、立体造形物の製造装置により好適に行うことができ、立体造形剤飛翔工程は、立体造形剤飛翔手段により好適に行うことができ、その他の工程は、その他の手段により行うことができる。
【0094】
<立体造形剤飛翔手段及び立体造形剤飛翔工程>
光吸収材飛翔手段は、光吸収材が立体造形剤であり、被付着物が造形物支持基板であること以外は前述の光吸収材飛翔手段と同様であるため、その説明を省略する。なお、光吸収材飛翔手段は、造形物支持基板に対して立体造形剤を層として積み重ね、立体的に付着させる。
立体造形剤飛翔工程は、光吸収材が立体造形剤であり、被付着物が造形物支持基板であること以外は前述の光吸収材飛翔工程と同様であるため、その説明を省略する。なお、立体造形剤飛翔工程には、光吸収材飛翔手段が立体造形剤を造形物支持基板に対して立体的に付着させる工程を含む。
【0095】
<立体造形剤硬化手段及び立体造形剤硬化工程>
立体造形剤硬化手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、立体造形剤が紫外線硬化性材料であれば、紫外線照射器などが挙げられる。
立体造形剤硬化工程としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、立体造形剤が紫外線硬化性材料であれば、紫外線照射工程などが挙げられ、立体造形剤硬化手段を用いて好適に行うことができる。
【0096】
<その他の工程及びその他の手段>
その他の手段としては、例えば、立体造形剤供給手段、立体造形ヘッドユニット走査手段、基板位置調整手段、制御手段などが挙げられる。
その他の工程としては、例えば、立体造形剤供給工程、立体造形ヘッドユニット走査工程、基板位置調整工程、制御工程などが挙げられる。
【0097】
<<立体造形剤供給手段及び立体造形剤供給工程>>
立体造形剤供給手段及び立体造形剤供給工程は、光吸収材が立体造形剤であり、被付着物が造形物支持基板であること以外は前述の光吸収材供給手段及び光吸収材供給工程と同様であるため、その説明を省略する。
【0098】
<<立体造形ヘッドユニット走査手段及び立体造形ヘッドユニット走査工程>>
立体造形ヘッドユニット走査手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光吸収体飛翔ユニットと紫外線照射手段とを一体とした立体造形ヘッドユニットを造形物支持基板上で装置の幅方向(X軸)に走査させてもよい。なお、立体造形ヘッドユニットは、光吸収体飛翔ユニットが付着させた紫外線硬化性の立体造形剤を紫外線照射手段により硬化させるものである。また、立体造形ヘッドユニットは複数設けるようにしてもよい。
立体造形ヘッドユニット走査工程は、立体造形ヘッドユニットを走査する工程であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、立体造形ヘッドユニット走査手段を用いて好適に行うことができる。
【0099】
<<基板位置調整手段及び基板位置調整工程>>
基板位置調整手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、装置の奥行き方向(Y軸)及び高さ方向(Z軸)に造形物支持基板の位置を調整可能な基体(ステージ)としてもよい。
基板位置調整工程としては、造形物支持基板の位置を調整する工程であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板位置調整手段を用いて好適に行うことができる。
【0100】
<<制御手段及び制御工程>>
制御手段及び制御工程は、前述した光吸収材飛翔装置の制御手段及び制御工程と同様であるため、その説明を省略する。
【0101】
<立体造形剤>
立体造形剤としては、光吸収材と同様に、その形状、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。以下、光吸収材を立体造形剤とした際に異なる点を説明する。
【0102】
立体造形剤の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、求められる精密さなどにより変化するが、5μm以上500μm以下が好ましい。平均厚みが好ましい範囲内であると、立体造形物の精度、質感、滑らかさ、製造時間などの点で有利である。また、立体造形剤の平均厚みとしては、5μm以上100μm以下がより好ましい。平均厚みがより好ましい範囲内であると、光渦レーザビームのエネルギーを低く抑えられ、立体造形剤の劣化などを抑制する点で有利である。
【0103】
立体造形剤としては、硬化性材料を少なくとも含有してなり、更に必要に応じて、その他の成分を含有してなる。
【0104】
<<硬化性材料>>
硬化性材料としては、活性エネルギー線(紫外線、電子線等)照射、加熱等により重合反応を生起し硬化する化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性エネルギー線硬化性化合物、熱硬化性化合物などが挙げられる。これらの中でも、常温で液体の材料が好ましい。
活性エネルギー線硬化性化合物は、分子構造中にラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する比較的低粘度のモノマーであり、単官能モノマー、多官能モノマーなどが挙げられる。
【0105】
<<その他の成分>>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、有機溶剤、光重合開始剤、界面活性剤、着色剤、安定化剤、水溶性樹脂、低沸点アルコール、表面処理剤、粘度調整剤、接着性付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防腐剤、分散剤などが挙げられる。
【0106】
<立体造形剤担持体>
立体造形剤担持体は、光吸収材を立体造形剤とした以外は前述の光吸収材担持体と同様であるため、その説明を省略する。
【0107】
<造形物支持基板>
造形物支持基板としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板位置調整手段によりY軸及びZ軸の位置が調整されるようにしてもよい。
【0108】
造形物支持基板と立体造形剤担持体との間隙としては、被付着物と立体造形剤担持体との間隙と同じであるので、その説明を省略する。
【0109】
次に、本発明における画像形成装置の一例について図面を参照して説明する。
なお、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好ましい数、位置、形状等にすることができる。
【0110】
図5Aは、本発明の光吸収材飛翔装置の一例を示す説明図である。
図5Aにおいて、光吸収材飛翔装置300は、光吸収材飛翔手段1と、光を吸収する光吸収材20と、被付着物30と、光吸収材担持体40とを有する。光吸収材飛翔装置300は、光吸収材担持体40に担持されている光吸収材20に、光吸収材飛翔手段1により光の光渦レーザビーム12を照射し、光渦レーザビーム12のエネルギーにより光吸収材20を照射方向に飛翔させ、被付着物30に付着させる装置である。
【0111】
光吸収材飛翔手段1は、レーザ光源2と、ビーム径変更部材3及び7と、ビーム波長変更部材4と、光渦変換部5と、波長変換部6と、を有している。
【0112】
レーザ光源2は、例えば、チタンサファイアレーザであり、パルス発振させたレーザビーム11を発生させ、ビーム径変更部材3に照射する。
ビーム径変更部材3は、例えば、集光レンズであり、レーザ光源2が発生させたレーザビーム11の光路におけるレーザ光源2の下流に配置され、レーザビーム11の径を変更する。
ビーム波長変更部材4は、例えば、KTP結晶であり、レーザビーム11の光路におけるビーム径変更部材3の下流に配置され、レーザビーム11の波長を光吸収材20が吸収可能な波長に変更する。
光渦変換部5は、例えば、螺旋位相板であり、レーザビーム11の光路におけるビーム波長変更部材4の下流に配置され、レーザビーム11を光渦レーザビーム12に変換する。
波長変換部6は、例えば、1/4波長板であり、光渦レーザビームに円偏光を付与することにより、上記の式(1)で表されるトータルの回転モーメントJ
L,Sが0又は2となる条件を満たすように、光渦変換部5と組み合わせて設定される。
【0113】
光吸収材20は、光吸収材飛翔手段1から光渦レーザビーム12を照射され、光渦レーザビーム12の径の範囲におけるエネルギーを受けて飛翔し、被付着物30に付着する。なお、飛翔した光吸収材20は、光渦レーザビーム12により付与されたジャイロ効果により周辺への飛散を抑制されつつ被付着物30に付着する。
このとき、飛翔する光吸収材20の飛翔量は、光渦レーザビーム12が照射された光吸収材20の面積のうち一部又は全部であり、波長変換部6などにより調整することができる。
【0114】
図5Bは、本発明の光吸収材飛翔装置の他の一例を示す説明図である。
図5Bにおいて、光吸収材飛翔装置301は、
図5Aに示した光吸収材飛翔装置300の各手段などに加え、光吸収材担持体40と、ビーム走査手段60とを有している。この光吸収材飛翔装置301は、光吸収材飛翔手段1が発生させた光渦レーザビーム12を、ビーム走査手段60により光渦レーザビーム12の照射方向と直交する方向に走査する。これにより、光吸収材飛翔装置301は、平板状の光吸収材担持体40が担持する光吸収材20の任意の位置に照射し、飛翔させた光吸収材20を被付着物30に付着させることができる。
【0115】
ビーム走査手段60は、光渦レーザビーム12の光路における光吸収材飛翔手段1の下流に配置され、反射鏡61を有している。
反射鏡61は、図示しない反射鏡駆動手段により
図5B中矢印Sで示す走査方向に可動し、光渦レーザビーム12を光吸収材20の任意の位置に反射する。
なお、ビーム走査手段60は、例えば、光吸収材飛翔手段1自体を移動させる、光吸収材飛翔手段1を回動させて光渦レーザビーム12の照射方向を変化させる。あるいは、ビーム走査手段60は、反射鏡61としてポリゴンミラーを用いたりすることにより、任意の位置に光渦レーザビーム12を走査させるようにしてもよい。
【0116】
光吸収材担持体40は、光渦レーザビーム12の光路におけるビーム走査手段60の下流に配置され、例えば、光吸収材20が高粘度の液体である場合、光吸収材20が塗布されて固定する目的で用いられる。この光吸収材担持体40は、光を透過可能であって、光吸収材20を表面に担持し、裏面から光渦レーザビーム12により光吸収材20が照射される。
また、光吸収材20を光吸収材担持体40に担持される段階で、層を形成した光吸収材20の平均厚みが一定となるように制御することにより、光吸収材20の飛翔量を安定させることができる。
なお、光吸収材飛翔手段1と、ビーム走査手段60とを合わせたものを光渦レーザビーム照射ユニット100と称する。
【0117】
図6Aは、光吸収材供給手段及び被付着物搬送手段を付加した
図5Bに示す光吸収材飛翔装置の一例を示す説明図である。
図6Aにおいて、光吸収材飛翔装置302は、
図5Bに示した光吸収材飛翔装置301の各手段などに加え、光吸収材供給手段50と、被付着物搬送手段70とを有しており、平板状の光吸収材担持体40を円筒状の光吸収材担持ローラ41に変更したものである。また、光吸収材担持ローラ41の内側には、光渦レーザビーム照射ユニット100が配置されており、光吸収材担持ローラ41が外周に担持する被付着物30に光渦レーザビーム12を照射する。
【0118】
光吸収材供給手段50は、貯蔵槽51と、供給ローラ52と、規制ブレード53とを有している。
貯蔵槽51は、供給ローラ52の下方の近傍に配置され、光吸収材10を貯蔵する。
供給ローラ52は、光吸収材担持ローラ41と当接するように配置され、貯蔵槽51の光吸収材10に一部が浸漬されている。供給ローラ52は、図示しない回転駆動手段により、又は光吸収材担持ローラ41の回転に従動して
図6A中矢印R2で示す回転方向に回転しながら光吸収材10を表面に付着させる。付着した光吸収材10は、規制ブレード53により平均厚みを均一にされ、光吸収材担持ローラ41に転移することにより層として供給される。光吸収材担持ローラ41の表面に供給された光吸収材10は、光吸収材担持ローラ41が回転することにより、光渦レーザビーム12が照射される位置に連続的に供給される。
規制ブレード53は、図中矢印R2で示す回転方向における光吸収材担持ローラ41の上流側に配置され、供給ローラ52が表面に付着させた光吸収材10を規制し、光吸収材担持ローラ41に供給する光吸収材10の平均厚みを均一にする。
【0119】
被付着物搬送手段70は、光吸収材担持ローラ41と搬送する被付着物30が接触しないように光吸収材担持ローラ41の近傍に配置され、被付着物搬送ローラ71と、被付着物搬送ローラ71に張架された被付着物搬送ベルト72とを有している。この被付着物搬送手段70は、図示しない回転駆動手段により被付着物搬送ローラ71を回転させ、被付着物搬送ベルト72により被付着物30を
図6A中矢印Cで示す搬送方向に搬送する。
このとき、光渦レーザビーム照射ユニット100は、画像情報に従って光吸収材担持ローラ41の内側より光渦レーザビーム12を照射し、被付着物30に光吸収材20を付着させる。被付着物30を被付着物搬送ベルト72により移動させながら、このような光吸収材20を被付着物30に付着させる付着動作を行うことにより、被付着物30に2次元の画像を形成することができる。
【0120】
なお、光吸収材担持ローラ41の表面に担持されたが飛翔させなかった光吸収材20は、光吸収材担持ローラ41が回転し、供給ローラ52との当接により溜まっていき、やがて貯蔵槽51に落下して回収される。また、光吸収材20の回収方法としては、それに限られることなく、光吸収材担持ローラ41の表面の光吸収材20を掻き取るスクレーパなどを設けてもよい。
【0121】
図6Bは、光吸収材供給手段及び被付着物搬送手段を付加した
図5Bに示す光吸収材飛翔装置の他の一例を示す説明図である。
図6Bにおいて、光吸収材飛翔装置303は、
図6Aで示した光吸収材飛翔装置302における円筒状の光吸収材担持ローラ41を、軸方向に沿って2分割した光吸収材担持部42とし、光吸収材飛翔装置302の配置を変更したものである。
【0122】
光吸収材担持部42は、円筒状の一部の面となっており、かつ円筒中心線の対向側には面が無い形状である。このように対向面がない担持体とすることにより、光渦レーザビーム照射ユニット100を円筒状の光吸収材担持ローラ41に設けることなく、光渦レーザビーム12の光路が確保しやすくなるため、装置を単純化することができる。
【0123】
図6Cは、光吸収材供給手段及び被付着物搬送手段を付加した
図5Bに示す光吸収材飛翔装置の他の一例を示す説明図である。
図6Cにおいて、光吸収材飛翔装置304は、
図6Aで示した光吸収材飛翔装置302における規制ブレード53の位置を変更したものである。この光吸収材飛翔装置304は、特に光吸収材20が粉体の場合に好適に用いられる。
【0124】
規制ブレード53は、光吸収材供給手段50から光吸収材担持ローラ41に供給された光吸収材20の担持量を光吸収材担持ローラ41の近傍に配置された規制ブレード53で規制する。この規制ブレード53の配置は、例えば、一般的な電子写真1成分現像機の現像ローラにトナーを供給する手段における規制ブレードの配置と同様である。
このように、光吸収材20が粉体である場合、被付着物30の表面に付着した光吸収材20を加圧又は加熱などの処理を施して被付着物30に定着させるようにしてもよい。
【0125】
図7Aは、定着手段を付加した
図6Aに示す光吸収材飛翔装置の一例を示す説明図である。
図7Aにおいて、光吸収材飛翔装置305は、
図6Aに示した光吸収材飛翔装置302の各手段などに加え、定着手段80を有しており、被付着物30に付着させた光吸収材20を定着させて平滑にするようにしている。なお、被付着物搬送手段70の位置は、
図6Aでは光吸収材担持ローラ41の側面としたが、
図7Aでは説明の便宜上、光吸収材担持ローラ41の上方とした。
【0126】
定着手段80は、加圧方式の定着手段であって、被付着物30の
図7A中矢印Cで示す搬送方向において光吸収材担持ローラ41の下流側に配置され、加圧ローラ83と、対向ローラ84とを有している。この定着手段80は、光吸収材20が付着した被付着物30を、挟持しながら搬送することにより加圧して定着させる。
【0127】
加圧ローラ83は、対向ローラ84に向かって付勢されており、表面が被付着物30と接触し、対向ローラ84とにより被付着物30を挟持しながら加圧する。
対向ローラ84は、加圧ローラ83と当接する位置に配置され、被付着物30を加圧ローラ83とにより被付着物搬送ベルト72を介して挟持する。
【0128】
例えば、光吸収材飛翔装置305を画像形成装置とし、1,000mPa・s以上である非常に高粘度の光吸収材20を用いると、光吸収材20の被付着物30への浸透又は濡れが遅くなりやすい。そして、光吸収材20がそのままの状態で乾燥してしまうと、画像の表面粗さが粗くなり、画像の光沢が低下してしまう場合がある。このような場合、定着手段80は、光吸収材20が付着した被付着物30を加圧ローラ83で加圧し、光吸収材20を被付着物30に押し込む、あるいは光吸収材20を潰すことができるため、光吸収材20が付着した被付着物30の表面粗さを小さくできる。
【0129】
図7Bは、定着手段を付加した
図6Aに示す光吸収材飛翔装置の他の一例を示す説明図である。
図7Bにおいて、光吸収材飛翔装置306は、
図7Aで示した光吸収材飛翔装置305における加圧方式の定着手段80を加熱加圧方式の定着手段81に変更したものである。
定着手段81は、被付着物30の
図7B中矢印Cで示す搬送方向において光吸収材担持ローラ41の下流側に配置され、加熱加圧ローラ85と、定着ベルト86と、従動ローラ87と、ハロゲンランプ88と、対向ローラ84とを有している。この定着手段81は、光吸収材20が付着した被付着物30を、挟持しながら加熱及び加圧して定着させることから、例えば、電子写真用トナー、粉体塗料などの粉体を光吸収材20として用いた場合に用いられる。他の場合としては、定着手段81は、溶融が必要な材料を分散した分散液の光吸収材20として用いた場合で、加圧のみでは狙いの画像を得られないときに用いられる。
【0130】
加熱加圧ローラ85は、対向ローラ84に向かって付勢されており、定着ベルト86を介して、被付着物30を対向ローラ84と挟持しながら加熱及び加圧する。
定着ベルト86は、無端のベルト状であり、加熱加圧ローラ85及び従動ローラ87に張架され、表面が被付着物30と接触する。
従動ローラ87は、加熱加圧ローラ85の下方に配置され、加熱加圧ローラ85の回転に従って従動する。
ハロゲンランプ88は、加熱加圧ローラ85の内部に配置され、被付着物30に光吸収材20を定着させるための熱を発生させる。
対向ローラ84は、定着ベルト86と当接する位置に配置され、被付着物30を加圧ローラ83とにより被付着物搬送ベルト72を介して挟持する。
【0131】
図7Cは、定着手段を付加した
図6Aに示す光吸収材飛翔装置の他の一例を示す説明図である。
図7Cにおいて、光吸収材飛翔装置307は、
図7Aで示した光吸収材飛翔装置305における加圧方式の定着手段80をUV照射方式の定着手段82に変更したものである。
定着手段82は、被付着物30の
図7C中矢印Cで示す搬送方向において光吸収材担持ローラ41の下流側に配置され、UVランプ89を有している。この定着手段81は、光吸収材20として紫外線硬化性材料を用いた場合に使用され、UVランプ89によりUVを照射して被付着物30に定着させる。
【0132】
図8Aは、本発明の画像形成装置の一例を示す説明図である。
図8Aにおいて、画像形成装置200は、
図7Bに示した光吸収材飛翔装置306の各手段などに加え、光吸収体飛翔ユニット120を3つ有しており、光吸収材20を着色剤21に変更したものである。
また、光吸収体飛翔ユニット120は、光吸収材供給手段50と、光吸収材飛翔手段1と、ビーム走査手段60と、光吸収材担持ローラ41と、光吸収材20とにより構成される。
【0133】
光吸収体飛翔ユニット120Y、M、C、Kは、それぞれプロセスカラーであるイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナーを着色剤21として貯蔵している。
これにより、記録媒体31上に各色の画像を順次形成し、カラー画像を得るカラープロセスに適用することができる。
【0134】
図8Bは、本発明の画像形成装置の他の一例を示す説明図である。
図8Bにおいて、画像形成装置201は、
図8Aに示した画像形成装置200の各手段などに加え、中間転写手段90を有している。
【0135】
中間転写手段90は、中間転写体91と、中間転写体駆動ローラ92と、中間転写体従動ローラ93とを有している。
中間転写体91は、例えば、無端状のベルトであり、4つの光吸収体飛翔ユニット120の上方に配置され、中間転写体駆動ローラ92と、中間転写体従動ローラ93とにより張架されている。
中間転写体駆動ローラ92は、図示しない回転駆動手段により
図8B中矢印R2で示す回転方向に回転し、中間転写体91を回転させる。
中間転写体従動ローラ93は、中間転写体駆動ローラ92の回転に従って従動する。
このように、まず中間転写体91に画像を形成し、これを所望の記録媒体31に転写するようにしてもよい。この画像形成装置201においても、画像形成装置200と同様に高画質のカラー画像を得ることができる。また、中間転写体91に形成した画像を記録媒体31に転写する際に中間転写体駆動ローラ92により押圧するので、画像形成装置200と同様に、着色剤21を付着させた記録媒体31の表面粗さを小さくすることができる。
【0136】
図9は、本発明の立体造形物の製造装置の一例を示す説明図である。
図9において、立体造形物の製造装置500は、造形物支持基板122と、ステージ123と、立体造形ヘッドユニット130とを有している。この立体造形物の製造装置500は、付着させた立体造形剤22を硬化しながら積層して立体造形物124を製造する。
立体造形ヘッドユニット130は、立体造形物の製造装置500の上部に配置され、図示しない駆動手段により図中矢印Lで示す方向に走査することができる。この立体造形ヘッドユニット130は、光吸収体飛翔ユニット120と、紫外線照射器121とを有している。
【0137】
光吸収体飛翔ユニット120は、立体造形ヘッドユニット130の中央に配置され、下方に光吸収体20を飛翔させ、造形物支持基板122又はすでに硬化させた光吸収体20に付着させる。
紫外線照射器121は、光吸収体飛翔ユニット120の両側面に配置され、光吸収体飛翔ユニット120が飛翔させた光吸収体20に紫外線を照射して硬化させる。
造形物支持基板122は、立体造形物の製造装置500の下部に配置され、立体造形ヘッドユニット130が立体造形剤22の層を形成する際の基板となる。
ステージ123は、造形物支持基板122の下方に配置され、図示しない駆動手段により造形物支持基板122を図中垂直方向に移動させることができる。また、このステージ123は、図中矢印Hで示す方向に移動させることができ、立体造形ヘッドユニット130と立体造形物124との間隙を調整することができる。
【0138】
なお、光吸収材飛翔装置、画像形成装置及び立体造形物の製造装置においては、被付着物、記録媒体及び造形物支持基板を搬送又は移動させる例を示したが、これに限らず、被付着物などを静止させて光吸収材飛翔ユニットなどを移動させてもよい。あるいは、被付着物などと光吸収材飛翔ユニットなどの両者を移動させてもよい。
また、被記録媒体の全面の画像を同時に形成する場合などでは、少なくとも記録時には両者が静止しレーザのみ動作してもよい。
【実施例】
【0139】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下では、
図5Bに示したような光吸収材飛翔手段を構成し、パルス発振させた光渦レーザビームを光吸収材としての導電性ペースト又はAu蒸着膜に照射して、被付着物に10mmのラインパターンを形成するように付着させた具体的な実施例について説明する。
【0140】
(実施例1)
<光吸収材担持体、光吸収材及び被付着物>
光吸収材担持体としてのスライドガラス(松浪硝子工業社製、マイクロスライドガラスS7213;532nm波長光の透過率が99%)上に、光吸収材として導電性ペースト(太陽インキ製造株式会社製、ELEPASTE AF4820;体積抵抗率5×10
−5Ω・cm、14.5Pa・s)を表面に塗布して、平均厚み5μmとした膜を形成した。このとき、層状の光吸収材における532nm波長光の透過率が1%であった。次に、光吸収材を塗布した表面を被付着物と対向させ、光吸収材の裏面から光渦レーザビームを垂直に照射できるように光吸収材担持体を設置した。
被付着物としては、PETフィルム(東レ株式会社製、平均厚み:100μm)を用い、被付着物と光吸収材との間隙を1.5mmとした。
【0141】
<光吸収材飛翔手段>
光吸収材飛翔手段は、レーザ光源と、ビーム径変更部材と、ビーム波長変更素子と、光渦変換部としての螺旋位相板と、波長変換部としての1/4波長板とを有する。
レーザ光源としては、千葉大学大学院融合科学研究科尾松研究室において自作したレーザ光源(YAG)を用いた。このレーザ光源を用いて、発生させたレーザビームにおける波長を1,064nm、ビーム径を1.25mm×1.23mm、パルス幅を2ナノ秒、パルス周波数を20Hzとした1パルスのレーザビームを発生させた。発生させた1パルスのレーザビームを、ビーム径変更部材としての集光レンズ(シグマ光機社製、YAGレーザ集光レンズ)に照射して、光吸収材に照射させたときのビーム径を100μm×100μmとなるようにした。次に、ビーム径変更部材を経たレーザビームを、螺旋位相板(ルミネックス社製、Voltexフェイズプレート)に通過させて光渦レーザビームに変換させた。次に、螺旋位相板により変換させた光渦レーザビームを、螺旋位相板の下流に配置されている1/4波長板(QWP;株式会社光学技研製)に通過させた。このとき、式(1)で表されるトータルの回転モーメントJが0となるように、螺旋位相板と1/4波長板の光学軸を−45°に設定した。次に、1/4波長板を通過させた光渦レーザビームをスキャンしながら、スライドガラスに担持させた導電性ペーストに照射して導電性ペーストを飛翔させ、PETフィルム上に10mmのラインパターンを形成した。なお、1/4波長板を通過させた光渦レーザビームを導電性ペーストに照射させたときのレーザ出力を0.5mJとした。そして、PETフィルム上に10mmのラインパターンを形成した導電性ペーストを、定温乾燥機(DS−401;ヤマト科学株式会社)を用いて100℃で30分間熱硬化させた。なお、光吸収材の種類及び膜厚、並びに、光渦レーザビームに関する主な条件を表1に示した。
【0142】
<ラインパターンの形成状態の評価>
熱硬化させた導電性ペーストによるラインパターンの形成状態を、倍率を100倍とした顕微鏡により以下の基準で評価し、結果を表2に示した。なお、本評価が○又は△であれば、実使用上問題ないレベルである。
〔評価基準〕
○:飛散がなく、ラインパターンが形成されている
△:わずかに飛散が確認されるが、ラインパターンが形成されている
×:飛散があり、ラインパターンが形成されていない
【0143】
<導電性の評価>
熱硬化させた導電性ペーストによるラインパターンの両端の直流抵抗値Rを抵抗計(RM3542A;日置電機株式会社)用いて、10V印加時の抵抗値を以下の基準で評価し、結果を表2に示した。なお、本評価が○又は△であれば、実使用上問題ないレベルである。
〔評価基準〕
○:1kΩ<R
△:1kΩ≦R<1MΩ
×:1MΩ≦R
【0144】
(実施例2)
実施例1において、トータルの回転モーメントJが2となるように螺旋位相板と1/4波長板を設定した以外は、実施例1と同様にして、ラインパターンの形成状態及び導電性を評価した。結果を表2に示した。
【0145】
(比較例1)
実施例1において、1/4波長板を取り除く以外は、実施例1と同様にして、ラインパターンの形成状態及び導電性を評価した。結果を表2に示した。
【0146】
(比較例2)
実施例1において、螺旋位相板及び1/4波長板を取り除くことにより、光渦レーザビームを
図1A〜
図1Cに示すような一般的なレーザビームにした以外は、実施例1と同様にして、ラインパターンの形成状態及び導電性を評価した。結果を表2に示した。
【0147】
(実施例3)
実施例1において、スライドガラス上に平均厚み5μmとした膜を形成した導電性ペーストから、スライドガラス上に平均厚み5nmとしたAuを蒸着させたAu蒸着膜に変更した以外は、実施例1と同様にして、ラインパターンの形成状態及び導電性を評価した。結果を表2に示した。
【0148】
(実施例4)
実施例3において、トータルの回転モーメントJが2となるように螺旋位相板と1/4波長板を設定した以外は、実施例3と同様にして、ラインパターンの形成状態及び導電性を評価した。結果を表2に示した。
【0149】
(比較例3)
実施例3において、1/4波長板を取り除く以外は、実施例3と同様にして、ラインパターンの形成状態及び導電性を評価した。結果を表2に示した。
【0150】
(比較例4)
実施例3において、螺旋位相板及び1/4波長板を取り除くことにより、光渦レーザビームを
図1A〜
図1Cに示すような一般的なレーザビームにした以外は、実施例3と同様にして、ラインパターンの形成状態及び導電性を評価した。結果を表2に示した。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
表2の結果から、実施例1〜4において、光吸収材飛翔装置で飛翔させた導電性ペーストやAu蒸着膜でラインパターンを形成すると、わずかに飛散が確認される程度であり、ラインパターンの導電性も実使用上問題ないレベルであることが確認される。
【0154】
このように、実施例1〜4においては、導電性ペーストやAu蒸着膜を飛翔させ、ラインパターンの形状に被付着物に付着可能であることから、回路基板の製造分野においても十分応用が可能であると考えられる。
【0155】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 光を吸収する光吸収材と、
前記光吸収材の光吸収波長に対応する光渦レーザビームを前記光吸収材に照射し、前記光渦レーザビームのエネルギーにより前記光吸収材を飛翔させ、被付着物に付着させる光吸収材飛翔手段と、を有し、
前記光吸収材飛翔手段が、レーザビームを発生するレーザ光源、前記レーザ光源が発生した前記レーザビームを前記光渦レーザビームに変換する光渦変換部、及び前記光渦変換部が変換した前記光渦レーザビームに円偏光を付与する波長変換部を備え、
前記光渦変換部及び前記波長変換部を設定することにより、下記数式(1)で表される、前記円偏光を付与した前記光渦レーザビームにおけるトータルの回転モーメントJ
L,Sが、|J
L,S|≧0となる条件を満たす、
ことを特徴とする光吸収材飛翔装置。
【数5】
前記式(1)において、ε
0は真空中の誘電率であり、ωは光の角周波数であり、Lはトポロジカルチャージであり、Iは下記数式(2)で表される前記光渦レーザビームの渦次数に対応する軌道角運動量であり、Sは円偏光に対するスピン角運動量であり、rは円筒座標系の動径である。
【数6】
前記式(2)において、ω
0は光のビームウエストサイズである。
<2> 前記光吸収材飛翔手段が、前記光を透過可能な光吸収材担持体の表面に担持された前記光吸収材に対し、前記光吸収材担持体の裏面から前記光渦レーザビームを照射する前記<1>に記載の光吸収材飛翔装置である。
<3> 前記光吸収材の膜厚が、50nm以上5μm以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の光吸収材飛翔装置である。
<4> 前記光吸収材が導電性材料である前記<1>から<3>のいずれかに記載の光吸収材飛翔装置である。
<5> 前記導電性材料の体積抵抗率が10
3Ω・cm以下である前記<4>に記載の光吸収材飛翔装置である。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の光吸収材飛翔装置を有し、
前記光吸収材が着色剤であることを特徴とする画像形成装置である。
<7> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の光吸収材飛翔装置を有し、
前記光吸収材が立体造形剤であり、
前記光吸収材飛翔手段が、前記立体造形剤を前記被付着物に対して立体的に付着させることを特徴とする立体造形物の製造装置である。
<8> 光を吸収する光吸収材に、前記光吸収材の光吸収波長に対応する光渦レーザビームを照射し、前記光渦レーザビームのエネルギーにより前記光吸収材を飛翔させ、被付着物に付着させる光吸収材飛翔工程を含み、
前記光吸収材飛翔工程が、レーザビームを発生させる発生処理、前記発生処理で発生させた前記レーザビームを前記光渦レーザビームに変換する光渦変換処理、及び前記光渦変換処理で変換した前記光渦レーザビームに円偏光を付与する波長変換処理を備え、
前記光渦変換処理及び前記波長変換処理を設定することにより、下記数式(1)で表される、前記円偏光を付与した前記光渦レーザビームにおけるトータルの回転モーメントJ
L,Sが、|J
L,S|≧0となる条件を満たす、
ことを特徴とする光吸収材飛翔方法である。
【数7】
前記式(1)において、ε
0は真空中の誘電率であり、ωは光の角周波数であり、Lはトポロジカルチャージであり、Iは下記数式(2)で表される前記光渦レーザビームの渦次数に対応する軌道角運動量であり、Sは前記円偏光に対するスピン角運動量であり、rは円筒座標系の動径である。
式(2)
【数8】
前記式(2)において、ω
0は光のビームウエストサイズである。
<9> 前記<8>に記載の光吸収材飛翔方法を含み、
前記光吸収材が着色剤であることを特徴とする画像形成方法である。
<10> 前記<8>に記載の光吸収材飛翔方法を含み、
前記光吸収材が立体造形剤であり、
前記光吸収材飛翔工程が、前記立体造形剤を前記被付着物に対して立体的に付着させる立体造形剤飛翔工程であることを特徴とする立体造形物の製造方法である。