(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態)
以下に添付図面を参照して、飛行体及び飛行システムの実施の形態を詳細に説明する。ここでは、飛行体の一例としてテールシッター型のVTOL(Vertical Take-Off and Landing)機(以下、「テールシッター機」と省略する)に適用した例を示す。
【0010】
図1は、本実施の形態に係るテールシッター機の構成の一例を示す図である。
図1に示すテールシッター機の機体1は垂直離着陸時の姿勢(垂直姿勢)の状態を示している。
図1に示すテールシッター機の機体1は、メインプロペラ(第1のプロペラ21、第2のプロペラ22)や、内燃機関のエンジン23や、4つの姿勢制御用プロペラ(第1の姿勢制御用プロペラ31−1、第2の姿勢制御用プロペラ31−2、第3の姿勢制御用プロペラ31−3、第4の姿勢制御用プロペラ31−4)や、4つの姿勢制御用プロペラのそれぞれの電気モータ(第1の電気モータ32−1、第2の電気モータ32−2、第3の電気モータ32−3、第4の電気モータ32−4)や、サーボモータ(「サーボ制御手段」の一例)51−1や、リンク機構52や、一対の固定翼(固定翼41、固定翼42)や、2組の脚部(脚部61、脚部62)などを有する。当該テールシッター機の機体1は、搭載した制御回路(
図4参照)により各部を制御する。
【0011】
メインプロペラは、機体1を主に垂直離着陸させるための大径のプロペラである。メインプロペラは、
図1に示すように機体1の中央
部に、互いに反転向きに回転するように配置された大径の第1のプロペラ21と大径の第2のプロペラ22とを有する。
【0012】
エンジン23は、メインプロペラを回転させる「第一の動力手段」の一例である。「第一の動力手段」は、エンジン23に限らず、後述する「第二の動力手段」よりも出力が高い動力手段であれば良い。エンジン23のエンジン出力は、フライホイールや、遠心クラッチや、ワンウェイクラッチや、かさ歯車など、クラッチボックス内部に収められている駆動列系を伝達してメインプロペラの第1のプロペラ21と第2のプロペラ22とに回転力として出力される。エンジン23を始動し、メインプロペラを回転させることにより、機体1の全重量を持ち上げる推進力が得られる。
【0013】
4つの姿勢制御用プロペラ(第1の姿勢制御用プロペラ31−1、第2の姿勢制御用プロペラ31−2、第3の姿勢制御用プロペラ31−3、第4の姿勢制御用プロペラ31−4)は、機体1の姿勢を制御するための小径のプロペラで、各プロペラは、操縦指令や姿勢制御指令に応じて回転が制御される。
【0014】
図1に示す各姿勢制御用プロペラの配置は、一例として二重反転プロペラの第1のプロペラ21と第2のプロペラ22との間の中間領域に配置したときの状態を示している。ここで「中間領域」とは、第1のプロペラ21と第2のプロペラ22のそれぞれの回転面に挟まれた領域のことを指す。
【0015】
ここでは特に、そのような中間領域の内の、2つの回転面からの中間距離に位置するエリア(平行面上)に各姿勢制御用プロペラを配置した場合の例を示している。各姿勢制御用プロペラは、上記中間領域の内、2つの回転面の中間の距離又はその近傍のエリアに配置することが好ましい。特に機体1の重心に近い位置に配置した場合、機体1の急峻な遷移が可能になる。
【0016】
4つの電気モータ(第1の電気モータ32−1、第2の電気モータ32−2、第3の電気モータ32−3、第4の電気モータ32−4)は、「第二の動力手段」の一例であり、それぞれの出力軸に姿勢制御用プロペラが装着されている。
【0017】
各電気モータには、直流(DC)ブラシレスモータなど、回転数の制御が可能なものを採用し、各姿勢制御用プロペラを機体1の上記操縦指令や姿勢制御指令に応じて回転する。
【0018】
サーボモータ51−1とリンク機構52とは、二重反転プロペラの第1のプロペラ21のピッチ角を可変する「可変ピッチ手段」の一例である。二重反転プロペラの第2のプロペラ22の「可変ピッチ手段」については、図示されない位置に配置されている。第1のプロペラ21と第2のプロペラ22の、2つの可変ピッチ手段は、この例では何れもサーボモータとリンク機構とにより構成されている。なお、リンク機構の構成については、後に
図3を用いて説明する。
【0019】
一対の固定翼(固定翼41、固定翼42)は飛行時において揚力を発生する構造を有する。機体1は、垂直離陸から飛行に切り替える際、垂直姿勢の機体1をピッチ方向へ90°倒す、つまり機体1が起きて水平飛行の姿勢になる。その後、機体1は飛行方向へ加速し速度が増すと、固定翼41と固定翼42のそれぞれの上面部(
図1の紙面手前側の面)と下面部(
図1の紙面奥側の面)とに圧力差が生まれて機体1が固定翼41と固定翼42とから揚力を受ける。
【0020】
2組の脚部(脚部61、脚部62)は、垂直離着陸エリア(例えば地上)に機体1を垂直姿勢で接地させるためのものである。脚部を設けたことにより、特別な発進装置や、着陸地点から機体1を回収する回収装置などを使用せずに、機体1を垂直姿勢のまま離陸させたり着陸させたりすることが可能になる。例えば、テールシッター機の進出先での着陸や、その着陸地点からの再離陸などを可能にする。
【0021】
図2は、各種のプロペラの回転方向を説明するための図である。
図2には、
図1に示す機体1の上面図と各種のプロペラの回転方向の一例を示している。なお、
図1の紙面手前側の面を上向きに、紙面奥側の面を下向きに示している。
図2に示す回転方向の例では、第1のプロペラ21が破線矢印の向きに左回転し、第2のプロペラ22が、第1のプロペラ21とは反転方向である実線矢印の向きに右回転する。
【0022】
また、各姿勢制御用プロペラは、第1の姿勢制御用プロペラ31−1と第2の姿勢制御用プロペラ31−2とが、実線矢印の向きに右回転し、第3の姿勢制御用プロペラ31−3と第4の姿勢制御用プロペラ31−4とが破線矢印の向きに左回転する。
【0023】
各姿勢制御用プロペラは、機体1の操縦指令や姿勢制御指令に応じ、全て同じ回転数で回転したり、一部が他と異なる回転数で回転したりする。一部が異なる回転数で回転する場合には、各姿勢制御用プロペラの推進力のバランスが変化するため、機体1の向きが何れかの方向へ振れる。このため、推進力のバランスの変化を利用して、姿勢制御用プロペラを回転させて、機体1をホバリングの状態で操縦する。
【0024】
図3は、リンク機構52の説明図である。
図3には、
図1のリンク機構52とその周辺部を拡大して示している。
図3に示す破線矢印は、第1のプロペラ21の回転方向の一例を示している。
図3に示すように、リンク機構52は、サーボモータ51−1の駆動により、リンク521を介し、一端がリンク521に接続されているL字状の回動アーム522を回動する。この回動により、L字型の回動アーム522の他端に接続されているすべり軸受け523を第1のプロペラ21の回転軸524上をスライドさせる。すべり軸受け523の上方には、第1のプロペラ21の一対の各ブレード211、212を、ピッチ角方向にすべり軸受け523の押し上げ量に応じた傾き量で傾かせる可動部525を有する。
【0025】
図3に示す動作例は、サーボモータ51−1が正回転してリンク521が第1のプロペラ21側に押し込まれ、L字型の回動アーム522が回動してすべり軸受け523が上方へスライドした場合のものである。この場合、第1のプロペラ21の一対のブレード211、212は、それぞれ、
図3の各ブレードの周囲に実線矢印で示す方向、つまりピッチ角が大きくなる向きに傾けられる。
【0026】
サーボモータ51−1を逆回転した場合には、第1のプロペラ21側に押し込まれたリンク521が引き戻されてL字型の回動アーム522が逆方向に回動し、すべり軸受け523が下方へスライドする、この場合、第1のプロペラ21の一対のブレード211、212は、それぞれ、
図3の実線矢印とは逆の方向、つまりピッチ角が小さくなる向きに傾けられる。
【0027】
なお、二重反転プロペラの第2のプロペラ22のリンク機構については、第1のプロペラ21のリンク機構52と同じ構成であるため、ここでの説明を省略する。
【0028】
続いて、
図2と
図3を参照しながら、機体1の制御方法について説明する。以下に示す各部の制御は、地上の操縦手段から発信される操縦指令を機体1が搭載する受信機で受信し、その受信信号(操縦信号)に基づき機体1の制御回路が行う。なお、操縦指令は、地上から送信されるものに限らない。機体1が操縦者が搭乗できる大きさと出力を兼ねるものであれば、機体1に搭載させた操縦手段(操縦部など)からの操縦指令であっても良い。機体1と操縦手段とを有する飛行システムの構成については、後に、
図5に示す一例を参照しながら説明する。
【0029】
(垂直姿勢から飛行姿勢への姿勢制御)
機体1をピッチ方向に略90°回転させることにより垂直姿勢から飛行姿勢へ移行させることができる。この制御には、4つの姿勢制御用プロペラの内の第1の姿勢制御用プロペラ31−1と第3の姿勢制御用プロペラ31−3の回転数を下げ、第2の姿勢制御用プロペラ31−2と第4の姿勢制御用プロペラ31−4の回転数を上げることが必要になる。従って、制御回路は、垂直姿勢から飛行姿勢への移動期間、第1の電気モータ32−1と第3の電気モータ32−3の回転スピードを出力が下がる方向に制御し、第2の電気モータ32−2と第4の電気モータ32−4とを回転スピードが上がる方向に制御する。
【0030】
この制御により、垂直姿勢の機体1が倒れて略水平の飛行姿勢になる。垂直姿勢のホバリング時にはプロペラからの推進力が地面と垂直の方向に得られていたが、機体1が略水平になると自重を持ち上げるための推進力はプロペラから得られなくなる。飛行姿勢に移行した後には、機体1の速度が上がることで固定翼41、42から揚力を受け、その揚力により飛行を続けることが可能になる。飛行姿勢では、各姿勢制御用プロペラと二重反転プロペラの回転制御により飛行制御を行う。
【0031】
(飛行姿勢から垂直姿勢への姿勢制御)
機体1をピッチ方向に略−90°回転させることにより飛行姿勢から垂直姿勢へ移行させることができる。この制御には、4つの姿勢制御用プロペラの内の第1の姿勢制御用プロペラ31−1と第3の姿勢制御用プロペラ31−3の回転数を上げ、第2の姿勢制御用プロペラ31−2と第4の姿勢制御用プロペラ31−4の回転数を下げることが必要になる。従って、制御回路は、第1の電気モータ32−1と第3の電気モータ32−3の回転スピードを出力が上がる方向に制御し、第2の電気モータ32−2と第4の電気モータ32−4とを回転スピードが下がる方向に制御する。
【0032】
この制御により、機体1は垂直姿勢に戻る。垂直姿勢後は、地面と垂直の方向にプロペラからの推進力が得られるため、各種プロペラの制御により垂直姿勢でのホバリングを維持することができる。
【0033】
なお、ロール回転とピッチ回転のそれぞれの回転中は、二重反転プロペラの第1のプロペラ21と第2のプロペラ22のそれぞれのピッチ角を同じ角度に調節する。これにより、第1のプロペラ21と第2のプロペラ22のトルク差が相殺されるため、ロール回転やピッチ回転時の機体1の回転に影響を与えることはない。
【0034】
(垂直姿勢におけるヨー方向の回転制御)
垂直姿勢におけるヨー方向の回転制御では、回転させたい方向とは逆向きにトルク差を生み出す。
【0035】
例えば、
図2のヨー軸zのz1方向にヨー回転する場合、次の2つの制御がある。1つ目は、二重反転プロペラの内の第1のプロペラ21のピッチ角を大きく、第2のプロペラ22のピッチ角を小さくする制御で、この制御により、トルクの高い向きの反トルク方向であるz1方向に機体1が回転し始め、ヨー回転する。このような制御を第一のヨー回転発生制御とする。2つ目は、4つの姿勢制御用プロペラの内の第3の姿勢制御用プロペラ31−3と第4の姿勢制御用プロペラ31−4の回転数を上げ、第1の姿勢制御用プロペラ31−1と第2の姿勢制御用プロペラ31−2の回転数を下げる制御で、このように制御すると、回転速度に差が生じ、回転数の高い方がトルクが高い為、反トルク方向であるz1方向に機体1がヨー回転する。このような制御を第二のヨー回転発生制御とする。
【0036】
第一のヨー回転発生制御では第二のヨー回転発生制御よりも大きなトルクが発生する。上記トルクが大きいとヨー回転速度が速く、上記トルクが小さいとヨー回転速度は遅い。メインプロペラのピッチ可変機構で微小なトルクを制御して機体1のヨー回転の停止位置精度を向上する場合、リンク機構の各部の遊びやガタの低減に伴う部品の強度アップを行いピッチ角の微小な角度コントロールが必要になり、機体の重量増加につながる。一方、本実施の形態に示す構成では、第一のヨー回転発生制御だけでなく第二のヨー回転発生制御によるヨー回転の制御が可能であるため、リンク機構の強度アップにより機体1の重量を増やす場合と比較して、簡単な構成で機体1のヨー回転の停止位置精度を向上することができる。
【0037】
本実施の形態では、速い速度で回転できる第一のヨー回転発生制御を粗調整用、遅い速度で回転できる第二のヨー回転発生制御を微調整用として、組み合わせて使用する。例えば、風などの外乱が少ない時の姿勢制御は大きなトルクで急峻に旋回させると停止位置を合わせ難い。この場合、小さなトルクでゆっくり旋回させた方が停止位置を合わせやすい。また急峻な旋回が必要な時に、小さなトルクでは旋回が遅く時間がかかってしまうので、大きなトルクで停止位置付近まで旋回させる。風などの外乱が少ない時の姿勢制御は第二のヨー回転発生制御のみを用い、急旋回時では第一のヨー回転発生制御のみ、もしくは第一と第二のヨー回転発生制御を合わせて使用する。
【0038】
第一のヨー回転発生制御と第二のヨー回転発生制御の切り替えは、ピッチ角を変えるサーボモータ51−1、51−2と電気モータ32−1、32−2、32−3、32−4に電力を与えるESC(Electronic Speed Controller)への制御入力値に閾値を設定して切り変える。
【0039】
図4は、テールシッター機の機体1に搭載する制御回路(「制御手段」の一例)の制御ブロックの構成の一例を示す図である。当該制御回路は、第一のヨー回転発生制御を行うように動作する「第一のヨー回転発生制御手段」と第二のヨー回転発生制御を行うように動作する「第二のヨー回転発生制御手段」とを共に備えた制御回路である。
図4は、一例として、ラジコン飛行機などに用いられるラジコン用送信機(通称「プロポ」)からの操縦指令を処理する制御ブロックの構成を示している。なお、モータの回転により得られる推進力は、モータへの入力値であるPWM(Pulse Width Modulation)の値に線形であると仮定する。また、プロポとの無線通信は、例えば2.4GHz帯で行う。
【0040】
図4に示す制御ブロック100は、CPU(Central Processing Unit)を有するフライトコントローラに実装されている。当該フライトコントローラは、上記CPUの他、自己位置や姿勢の推定に必要な各種センサ、例えばMEMSジャイロや、地磁気センサや、気圧センサなどが搭載されているものである。更にGPSと接続が可能になっていても良い。
【0041】
また、当該フライトコントローラは、アナログ出力回路やデジタル出力回路を備え、デジタル又はアナログの制御値を外部出力する。なお、カメラが搭載された機体であれば、更にカメラのシャッタ制御や、ジンバルの制御なども可能である。
【0042】
図4には、制御回路の制御ブロック100の構成の他、制御ブロック100の制御対象との対応関係が分かるようにするために、その制御対象であるモータ等を図示している。制御ブロック100は、操縦指令や姿勢制御指令が入力されるとPWM制御によりサーボモータ51−1、51−2の回転角度を制御する。
【0043】
続いて、
図4の制御ブロック100の構成について、プロポから入力される各種操縦指令(スロットル信号、ロール信号、ピッチ信号、ヨー信号)の信号処理に沿って説明する。
【0044】
フライトコントローラは、プロポから入力した操縦指令のうちのロール信号と、ピッチ信号と、ヨー信号とに基づいて姿勢制御指令を計算する。
【0045】
具体的に、フライトコントローラは、ロール信号の入力値d11から微調整用のトリムで設定するオフセット(OFF−r)を引いて偏差を求めロールの目標値(REF−r)d12とする。また、ピッチ信号の入力値d21から微調整用のトリムで設定するオフセット(OFF−p)を引いて偏差を求めピッチの目標値(REF−p)d22とする。ロール信号とピッチ信号の入力がない場合は、ホバリングにおけるロールの目標値d12とピッチの目標値d22は水平なので「0」となる。
【0046】
続いて、フライトコントローラは、ロールについては、センサの姿勢角データからロール角の推定を行い、ロールの目標値d12とロール角推定値d13との誤差を出力し、当該誤差d14の積分値と当該誤差d14の微分値とに制御ゲインを掛け、それらと制御ゲインとを加えたものをロールの制御量d15とする。当該制御ゲインは、その他のピッチやヨーの制御ゲインと共に、実際に機体1をホバリングさせて、安定する値を決定する。不適切な制御ゲインが入った場合は、姿勢が一定にならない、振動して安定しないといった不具合が起きるので、安定する値を決定できる。
【0047】
フライトコントローラは、ピッチについても同様な信号処理を行う。つまり、センサの姿勢角データからピッチ角の推定を行い、ピッチの目標値とピッチ角推定値d23の誤差を出力し、当該誤差d24の積分値と当該誤差d24の微分値とに制御ゲインを掛け、それらと制御ゲインとを加えたものをピッチの制御量d25とする。
【0048】
ヨー信号については次のように処理する。フライトコントローラは、ヨー信号の入力値d31から微調整用のトリムで設定するオフセット(OFF−y)を引いて偏差を求め、更にその偏差を積分回路により累積したものを目標値(REF−y)d32とする。これは、プロポからのヨー信号の入力値を累積し、入力がなくなった時点でヨー方向の回転を止めるためである。
【0049】
続いて、フライトコントローラは、センサの姿勢角データからヨー角の推定を行い、ヨーの目標値とヨー角推定値d33との誤差を出力し、当該誤差d34の積分値と当該誤差d34の微分値とに制御ゲインを掛け、それらと制御ゲインとを加えたものをヨーの制御量d35とする。
【0050】
制御対象の4つの姿勢制御用のモータ(第1の電気モータ32−1、第2の電気モータ32−2、第3の電気モータ32−3、第4の電気モータ32−4)へは、操縦指令が有する制御指令であるスロットルの制御量d41と、姿勢制御指令であるロールの制御量d15と、ピッチの制御量d25と、ヨーの制御量d35とを、
図4に示す演算方法(「+」は加算、「−」は減算を示す)で足し合わせたり差し引いたりしたものをそれぞれの制御値m1、m2、m3、m4として出力する。
【0051】
制御対象のサーボモータ51−1、51−2(ピッチ角可変用)へは、それぞれ、スロットルの制御量d41とヨーの制御量d35とを出力する。サーボモータ51−1、51−2は、それぞれ、スロットルの制御量d41とヨーの制御量d35とを
図4に示す演算方法で足し合わせたり差し引いたりして得た制御値m5、m6に基づき回転角を計算する。エンジン23のエンジンスロットル71へは、スロットルの制御量d41を出力する。
【0052】
続いて、ヨー信号が入力される場合の制御ブロック100の制御について説明する。ここでは、一例として、推進力を得る場合の制御と、ホバリング時にヨー方向に回転させる場合の制御とについて説明する。
【0053】
(推進力を得るための制御)
図4において、スロットルの制御量d41のみが大きくなると各姿勢制御用モータ(第1の電気モータ32−1、第2の電気モータ32−2、第3の電気モータ32−3、第4の電気モータ32−4)に向けてのそれぞれの制御値m1、m2、m3、m4が高くなり、各姿勢制御用モータの推進力が増加する。同時に、二重反転プロペラのピッチ角を制御する各サーボモータ51−1、51−2の制御値m5、m6も高くなり、第1のプロペラ21と第2のプロペラ22のそれぞれのピッチ角が大きくなって二重反転プロペラの推進力が増加する。また、エンジン23のエンジンスロットル71の制御量d41が高くなり、エンジン出力が上がるため、機体1は、水平を保ちながら浮上して上昇する。
【0054】
なお、姿勢制御用モータ間の回転数のバランスは、送信機のトリムにより微調整用のオフセットを与えることで調節する。
【0055】
(ヨー方向に回転する制御)
図4において、ヨー信号が入力されると、そのヨーの制御量d35が、制御ブロック100に設定した閾値より大きい場合、サーボモータ51−1にヨーの制御量d35が正の指令値として入力され、サーボモータ51−2にヨーの制御量d35が負の指令値として入力される。これにより、制御値m5、m6が計算され、二重反転プロペラの第1のプロペラ21はピッチ角が大きく、第2のプロペラ22はピッチ角は小さくなる。このピッチ角の差でトルク差が発生し、機体1がヨー回転する。これが第一のヨー回転発生制御である。なお、
図4に示す構成では、姿勢制御用の第3の電気モータ32−3と第4の電気モータ32−4においても、ヨーの制御量d35が正の指令値として入力され、姿勢制御用の第1の電気モータ32−1と第2の電気モータ32−2に、ヨーの制御量d35が負の指令値として入力されている。
【0056】
また、ヨーの制御量d35が、制御ブロック100に設定した閾値以下の場合、サーボモータ51−1およびサーボモータ51−2に、それぞれヨーの制御量d35=0が入力される。従って、サーボモータ51−1およびサーボモータ51−2には、スロットルの制御量d41で制御値m5、m6が計算される。第3の姿勢制御用プロペラ31−3と第4の姿勢制御用プロペラ31−4は、正の指令値により回転数が上がり、第1の姿勢制御用プロペラ31−1と第2の姿勢制御用プロペラ31−2は、負の指令値により回転数が下がる。このように姿勢制御用プロペラの回転数の差でトルク差が発生し、機体1がヨー回転する。これが第二のヨー回転発生制御である。
【0057】
この例では、ヨーの制御量d35が閾値より小さいときは、サーボモータ51−1、51−2へのヨーの制御量d35は入力されないので、第二のヨー回転制御のみが働く。ヨーの制御量d35が閾値より大きいときは、サーボモータ51−1、51−2と第1の電気モータ32−1、第2の電気モータ32−2、第3の電気モータ32−3、第4の電気モータ32−4にヨーの制御量d35は入力され、第一と第二のヨー回転制御の両方が働く。なお、ヨーの制御量d35が閾値より大きいときは、第一のヨー回転制御のみ働くようにしても良い。
【0058】
第一と第二のヨー回転制御を閾値を用いて選択的に使用することで、姿勢制御中の機体の微小なヨー回転時や、急旋回時でも停止位置精度が向上する。
【0059】
なお、その他のロー方向の制御や、ピッチ方向の制御や、垂直姿勢から飛行制御への移動のための制御などについては、
図4から同様に理解できるため、ここでの説明を省略する。
【0060】
図5は、本実施の形態にかかる飛行システムの一例を示す図である。
図5に示す飛行システム2は、機体1と操縦手段としての操縦装置20とを有する。操縦装置20は、機体1を操縦する操縦装置(例えばプロポなど)である。
【0061】
操縦装置20は、無線通信機(不図示)を内蔵し、オペレータが操縦する各種の操作スロットルからの移動方向や速度などを示す各種操縦指令(スロットル信号、ロール信号、ピッチ信号、ヨー信号)を複数チャンネルを使って機体1に発信する。
【0062】
機体1は、各種操縦指令を受信して、各信号からフライトコントローラで姿勢制御指令を算出し、機体1を制御する。なお、機体1については、既に詳細に説明しており、重複説明になるため、これ以上の説明は省略する。
【0063】
本実施の形態では、二重反転プロペラにおいてトルク差を生み出すために第1のプロペラ21と第2のプロペラ22のピッチ角を共に変えたが、二重反転プロペラにトルク差が生じれば良い。従って、例えば、第1のプロペラ21と第2のプロペラ22の内の一方のピッチ角を変えても良い。
【0064】
二重反転プロペラにおいてトルク差を生み出す方法は、固定ピッチのプロペラの場合には、一方のプロペラの回転を速くしたり遅くしたりすることで行っても良い。この場合、一方のプロペラの回転を速くする事でトルクが高くなり、もう一方のプロペラとの間にトルク差が生じる。或いは、一方のプロペラの回転を遅くすることでトルクが小さくなり、もう一方のプロペラとの間にトルク差が生じる。また或いは、一方のプロペラの回転を速くし、もう一方のプロペラの回転を遅くすることで、2つのプロペラ間にトルク差が生じる。
【0065】
また、エンジン23などの内燃機関を動力にするため、長距離飛行が可能である。更に、垂直姿勢時には、内燃機関により回転する二重反転プロペラのそれぞれのプロペラのピッチ角に差を付け、トルク差を生じさせるため、ホバリング時のヨー方向の回転も自在である。
【0066】
従って、地上からは接近や立ち入りが困難な現場における遠方からの情報収集などに有用である。例えば現場まで水平飛行し、現場では垂直姿勢でホバリングを行い、カメラ撮影などで情報収集を行う。なお、テールシッター機が進出した先に垂直着陸に必要な地形があれば、エネルギー効率の悪いホバリングを行わなくとも、着陸して定常的な情報収集及び待機時間の延伸が可能である。
【0067】
また、本実施の形態のテールシッター機では、脚部61と脚部62のように脚部を設けている。このため、進出先において着陸した後の再離陸も可能である。
【0068】
テールシッター型VTOL機では複雑で重量増加となるティルト機構等を必要とせず、比較的簡素な機体構成でありながら飛行及び定点での離着陸が行える。
【0069】
また、本実施の形態では、姿勢制御用プロペラの駆動に高出力電池を用いることが可能なため、電動の急峻な推力変化が可能な姿勢制御を行うことも可能である。
【0070】
本実施の形態に一例として示すように、姿勢制御用のモータより出力の大きい内燃機関のプロペラが、機体の中心で回転している場合、ヨー方向に機体を回転させるには大きなトルク差が必要になる。本実施の形態では、内燃機関のプロペラにトルク差を生じさせるため、ヨー方向に機体を回転させることができる。なお、本実施の形態で示したプロペラは、ねじり角のないロータであっても良い。