特許第6973280号(P6973280)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973280インプリントモールド用合成石英ガラス基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973280
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】インプリントモールド用合成石英ガラス基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20211111BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   H01L21/30 502D
   B29C33/38
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-89845(P2018-89845)
(22)【出願日】2018年5月8日
(65)【公開番号】特開2019-197768(P2019-197768A)
(43)【公開日】2019年11月14日
【審査請求日】2020年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 雅郎
(72)【発明者】
【氏名】岡藤 大雄
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正樹
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−088793(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/108002(WO,A1)
【文献】 特開2015−068919(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/102313(WO,A1)
【文献】 特開2006−237109(JP,A)
【文献】 特表2016−520862(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/208371(WO,A1)
【文献】 特表2008−534954(JP,A)
【文献】 特開2006−084787(JP,A)
【文献】 特開2013−254938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦の長さL1、横の長さL2(但し、L1≧L2)を有するインプリントモールド用合成石英ガラス基板であって、
モールドパターンが形成される表面に対向する裏面における基板中心から半径R(但し、L2−2R≧10mm)の円で囲まれる円領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第4項の係数が、−(2R/100,000×1)μm〜0μmであり、かつ、第5項〜第8項の係数の絶対値の総和が、4×(2R/100,000×1)μm〜0μmであることを特徴とするインプリントモールド用合成石英ガラス基板。
【請求項2】
前記円領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数が、−(2R/100,000×1)μm〜(2R/100,000×1)μmである請求項1記載のインプリントモールド用合成石英ガラス基板。
【請求項3】
前記円領域内に、段差部が形成された段差加工領域を有する請求項1または2記載のインプリントモールド用合成石英ガラス基板。
【請求項4】
前記段差部が、非貫通穴または貫通穴である請求項3記載のインプリントモールド用合成石英ガラス基板。
【請求項5】
前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第4項の係数が、−(2R/100,000×0.6)μm〜0μmである請求項3または4記載のインプリントモールド用合成石英ガラス基板。
【請求項6】
前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数が、−(2R/100,000×0.6)μm〜0μmである請求項3または4記載のインプリントモールド用合成石英ガラス基板。
【請求項7】
前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数の絶対値の総和が、4×(2R/100,000×0.6)μm〜0μmである請求項3または4記載のインプリントモールド用合成石英ガラス基板。
【請求項8】
前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域における半径R1の任意の円と、これと同心で半径R2の円(但し、R2−R1=10mm)で囲まれるリング状の領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第4項の係数が、−(2R/100,000×0.5)μm〜0μmである請求項3または4記載のインプリントモールド用合成石英ガラス基板。
【請求項9】
前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域における半径R1の任意の円と、これと同心で半径R2の円(但し、R2−R1=10mm)で囲まれるリング状の領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数が、−(2R/100,000×0.2)〜(2R/100,000×0.2)μmである請求項3または4記載のインプリントモールド用合成石英ガラス基板。
【請求項10】
前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域における半径R1の任意の円と、これと同心で半径R2の円(但し、R2−R1=10mm)で囲まれるリング状の領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数の絶対値の総和が、4×(2R/100,000×0.2)μm〜0μmである請求項3または4記載のインプリントモールド用合成石英ガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリントモールド用合成石英ガラス基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年盛んになってきたフォトリソグラフィーの代替技術の1つであるインプリント技術において、インプリントに用いられるモールドには様々な形状の基板が使われており、基板の表面、裏面、端面、面取り部に加工を施す場合が多々見られる。
インプリント技術とは、予め基板表面にマイクロメートルまたはナノメートルサイズの凹凸パターンを刻印したモールドを、被加工材もしくは表面に塗布形成された樹脂に押し付け、微細パターンを一括で精密に転写する手法である。特に、UVナノインプリントのモールドとしては、微細なパターンが必要とされるIC用途において、低熱膨張、純度、熱耐性、耐薬品性の点で合成石英ガラスが有利である。
【0003】
インプリントプロセスは、従来の方法に比して工程の短縮による低コスト化、高い転写再現性等の利点を有するが、モールドと被加工材の1:1の直接接触によって行われるため、種々の欠陥や、モールド全体の高い形状精度の要求等、従来のフォトリソグラフィーでは見られないインプリント特有の問題点が挙げられている。
インプリントモールドの製造作製工程に含まれる凹凸刻印は、多くの場合、半導体製造用またはそれに準ずる装置を用いたフォトリソグラフィー法とウェットエッチングによって行われることが多い。半導体製造におけるパターン位置精度には、数百〜数nmのオーダーが求められるが、微細パターンの加工精度のみならず、モールドの表裏面および端面に至るまで高精度な形状が規定される。
【0004】
元来、IC用途においてもフォトマスクの表裏面ともに平坦度は重要視されており、例えば、特許文献1では、フォトマスクの被露光領域に求められる高平坦度を達成するための高平坦化技術に関して開示がある。
また、特許文献2では、外周の周縁部の基板把持領域の平坦度についての重要性につい開示されている。
一方、特許文献3では、EUVリソグラフィーのような最先端の反射露光方式では、裏面の平坦度についても保証領域が300nm以下に規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−318450号公報
【特許文献2】特開2005−043838号公報
【特許文献3】特開2012−505704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、透過型のフォトマスク基板においては、パターンが描かれる表面の平坦度が重要とされており、裏面の平坦度は表面の平坦度に比べて厳しく規定されない。そして、裏面の平坦度において重要とされる部分は、把持に使われる基板外周部に留まる。この点、特許文献1においても表面に関しての記載に留まり、裏面の記載は無い。
また、特許文献2では、より具体的に表面の外周把持部の記載があるが、裏面への言及は無い。これは、光リソグラフィーにおける基板裏面は非接触部分であり、また仮にパターンへの影響があったとしても、露光装置における光学補正、照明方法によってパターンへの影響を十分にキャンセルできると考えられるからである。
さらに、EUVリソグラフィーに用いられる反射型マスクにおいては、表面と同様に裏面の保証領域が高平坦に規定されており、特許文献3では、表裏面とも高平坦が必要との記載があるものの、平坦度が小さいほど好ましいとされ、その形状についての要求や記載は無い。
【0007】
一方、インプリントモールドにおいては、パターンを被転写側へ物理的に押印して接触させた後、それを引きはがすという工程上の特性があることから、フォトマスクとは異なり、裏面を広範に、かつ強固に固定する必要がある。固定方法としては、吸着または機械的な固定が考えられるが、吸着の場合は吸着するテーブル等と裏面の接触の必要性が、機械的固定の場合でも物理的に押印させることで、裏面のテーブル等との接触の必要性が往々にして生ずる。この際、基板の裏面とステージ等の接触する部材同士は、形状や押印時の応力によって変形を起こすが、基板の変形により表面のパターン面にも変形が生じる。この変形によって表面に形成されたパターンも変形し、平面方向でパターンの位置ずれを起こす。特に、中心対称性の低い裏面形状の場合には、パターンは非線形のズレを生じ、凹形状の裏面の場合には、吸着する度に変形の状態が変わることが考えられ、パターンの位置ズレの再現性が乏しくなる。いずれの場合も、事前または事後の補正や修正が難しくなる。
IC用途をはじめとする微細パターン形成においては、特にパターンの位置ずれの許容値が数nmレベルと厳しく、上記のような問題は、微細パターン転写において非常に重大な問題となりうる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、インプリントモールドに必要な形状の策定と、これに基づいたインプリントモールド用合成石英ガラス基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、インプリントモールド用として好適な合成石英ガラス基板の裏面形状を見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、
1. 縦の長さL1、横の長さL2(但し、L1≧L2)を有するインプリントモールド用合成石英ガラス基板であって、モールドパターンが形成される表面に対向する裏面における基板中心から半径R(但し、L2−2R≧10mm)の円で囲まれる円領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第4項の係数が、−(2R/100,000×1)μm以上であることを特徴とするインプリントモールド用合成石英ガラス基板、
2. 前記円領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数が、−(2R/100,000×1)μm〜(2R/100,000×1)μmである1のインプリントモールド用合成石英ガラス基板、
3. 前記円領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数の絶対値の総和が、4×(2R/100,000×1)μm以下である1または2のインプリントモールド用合成石英ガラス基板、
4. 前記円領域内に、段差部が形成された段差加工領域を有する1〜3のいずれかのインプリントモールド用合成石英ガラス基板、
5. 前記段差部が、非貫通穴または貫通穴である4のインプリントモールド用合成石英ガラス基板、
6. 前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第4項の係数が、−(2R/100,000×0.6)μm以上である4または5のインプリントモールド用合成石英ガラス基板、
7. 前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数が、−(2R/100,000×0.6)μm以上である4または5のインプリントモールド用合成石英ガラス基板、
8. 前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数の絶対値の総和が、4×(2R/100,000×0.6)μm以下である4または5のインプリントモールド用合成石英ガラス基板、
9. 前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域における半径R1の任意の円と、これと同心で半径R2の円(但し、R2−R1=10mm)で囲まれるリング状の領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第4項の係数が、−(2R/100,000×0.5)μm以上である4または5のインプリントモールド用合成石英ガラス基板、
10. 前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域における半径R1の任意の円と、これと同心で半径R2の円(但し、R2−R1=10mm)で囲まれるリング状の領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数が、−(2R/100,000×0.2)〜(2R/100,000×0.2)μmである4または5のインプリントモールド用合成石英ガラス基板、
11. 前記円領域から前記段差加工領域を除外した領域における半径R1の任意の円と、これと同心で半径R2の円(但し、R2−R1=10mm)で囲まれるリング状の領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数の絶対値の総和が、4×(2R/100,000×0.2)μm以下である4または5のインプリントモールド用合成石英ガラス基板
を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のインプリントモールド用合成石英ガラス基板によれば、インプリント時の基板変形量が低減でき、かつ変形挙動の高い再現性が得られるため、インプリントモールドパターンと転写パターンとの間の形状再現性およびプロセス安定性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明のインプリントモールド用合成石英ガラス基板の裏面を示す鳥瞰図である。
図2】段差部である非貫通穴や貫通穴が形成された基板裏面の鳥瞰図である。
図3】円領域から段差加工領域を除外した領域における半径R1の任意の円と、これと同心で半径R2の円で囲まれるリング状の領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
本発明に係る第1のインプリントモールド用合成石英ガラス基板は、その縦の長さがL1、横の長さがL2(但し、L1≧L2)であり、モールドパターンが形成される表面に対向する裏面における基板中心から半径R(但し、L2−2R≧10mm)の円で囲まれる円領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第4項の係数が、−(2R/100,000×1)μm以上であることを特徴とする。
【0014】
上記縦の長さL1および横の長さL2の関係は、より均一な変形形状を得るためにはL1=L2が好ましいが、液晶用基板など長方形の基板も多いことから、特にこれに制限されるものではない。L1としては、好ましくは30〜3,000mm、より好ましくは100〜2,000mmであり、L2としては、好ましくは100〜1,500mm、より好ましくは120〜1,400mmである。
【0015】
本発明では、裏面の平坦度およびZernike係数の解析に、Ultra Flat(Corning Tropel社製)等を用いる。
Zernike多項式は、下記数式で表され、第1項〜第8項の次数および内容は、表1のとおりである。
【0016】
【数1】
(式中、Bnmは、フリンジゼルニケ係数である。)
【0017】
【表1】
【0018】
本発明者らは、上記Zernike多項式で必要とする項の数について鋭意検討した結果、裏面形状を第8項までの多項式として近似することで、基板裏面を吸着してインプリントした場合の基板変形形状の安定化についての好適な条件を導出できることを見出した。
上記Zernike多項式において、第1項は定数項であり、第2項および第3項は、それぞれ基板裏面の吸着領域(合成石英ガラス基板の中心から半径Rの円で囲まれる円領域)のX方向、Y方向の面の傾きを示す。インプリント工程自体が、インプリントモールド側と被転写側の平行出しが必須であり、装置性能、プロセス精度および被転写側基板の平坦度などは複合的な要素のため、これらは総合で議論すべき事項として、本発明では基板形状としては考慮しないことにした。
【0019】
第4項は、中心対称性を示す項であり、パターンが形成される基板表面の線形の変形に対応するため、パターン形成前のパターンデザインまたはパターン形成後に基板に外力を加えて変形させるなどの倍率補正を行う上での指標となる。倍率補正には、機構やパターン形成時の補正等に上限があるので、絶対値の大きさを決めておく必要がある。
この第4項は、中心対称の形状に近似する項となり、凹凸形状の度合が係数によって表されるため、この中心対称形状を持つ裏面吸着機構においては、特に第4項の係数と基板の変形が基板表面の線形の相関になるため、係数からの倍率補正がパターン形成前後で容易である。
一般に、ICにおける基板の保証外領域は、端面から5mm以内であることが多く、その領域においては、保証内領域に比べて平坦度が悪い場合が多い。また、外周部は装置のワークホルダー等に設置または固定されていることもあり、吸着保持や押印時に応力がかかる。
したがって、パターン形状の変形に寄与する領域は、図1に示されるように、縦の長さL1および横の長さL2を有する合成石英ガラス基板1において、概ね上記保証外領域を除外した合成石英ガラス基板1の中心Oから半径Rの円で囲まれる円領域2と考える。
本発明では、上述のとおり、この円領域2について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第4項係数が、−(2R/100,000×1)μm以上であるが、好ましくは−(2R/100,000×0.5)μm〜0μmである。第4項係数をこの範囲とすることにより、基板吸着によるパターン形状の変形が、パターン形成前後で補正可能なパラメータのみとなるため、パターン位置精度が向上する。例えば、6インチの角型の合成石英ガラス基板の場合には、上記第4項は、−1.42μm以上、好ましくは−0.71〜0μmである。
【0020】
また、例えば、図2に示されるように、合成石英ガラス基板1において、上記円領域2内に、段差部として、非貫通穴2Aまたは貫通穴2B等を形成する段差加工が施された場合、円領域2から段差部(図2では、非貫通穴2Aおよび貫通穴2B)を除外した領域における、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第4項係数が、好ましくは−(2R/100,000×0.6)μm以上であり、より好ましくは−(2R/100,000×0.4)μm〜0μmである。このようにすることで、基板表面の変形量が安定し、かつ容易に補正可能な基板が提供可能となる。例えば、6インチの角型の合成石英ガラス基板の場合には、上記円領域から段差部を除外した領域における第4項係数が、好ましくは−0.86μm以上、より好ましくは−0.57〜0μmである。
【0021】
さらに、基板吸着の場合、裏面の中央凸部分から吸着が始まり、外周側へと吸着が進む。その際の変形量に大きく影響を与えるのは、より内側にある傾斜である。例えば、図3に示されるように、合成石英ガラス基板1において、円領域から段差加工領域を除外した領域における半径R1の任意の円とこれと同心の半径R2(但し、R2−R1=10mm)の円で囲まれるリング状の領域3では、この領域での傾斜について更に厳しく規定することが好ましい。
具体的にはリング状領域3について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第4項係数が、−(2R/100,000×0.5)μm以上であることが好ましく、−(2R/100,000×0.5)μm〜0μmであることがより好ましい。例えば、6インチの角型の合成石英ガラス基板の場合には、上記リング状領域における第4項係数が、好ましくは−0.71μm以上、より好ましくは−0.71〜0μmである。
【0022】
裏面平坦度は、各項の係数の大小に関連する観点から、半径R(但し、L2−2R≧10mm)の円で囲まれる円領域において、好ましくは(2R/100,000×2)μm以下、より好ましくは(2R/100,000×1)μm以下である。
【0023】
次に、第5項〜第8項は非対称成分のため、吸着やインプリント押印の際の非線形ひずみやねじれの原因となる項であり、いずれも小さい値であることが好ましい。
第5項〜第8項は、中心非対称の成分の項となっており、第4項の同心円状の対称性の高い形状を除いた非対称な成分をそれぞれ表している。これらの成分は各項毎にそれぞれ異なる形状を表しているが、単体の成分で見ても中心対称の等倍変形とは異なる非対称な変形を誘起し、単純な線形補正からズレが生じて補正が難しくなる。したがって、実際には、これらの成分が複合することによって、インプリントモールドでは補正不可能な複雑なひずみ、局所的な変形につながると考えられる。そのため、第5項〜第8項については、第4項の絶対値と同等かもしくは小さいことが好ましく、各項の係数が0であることが最良の形状である。
【0024】
この観点から、合成石英ガラス基板の中心から半径Rの円で囲まれる円領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数は、好ましくは−(2R/100,000×1)μm〜(2R/100,000×1)μmであり、より好ましくは−(2R/100,000×0.5)μm〜0μmである。例えば、6インチの角型の合成石英ガラス基板の場合には、好ましくは−1.42〜1.42μm、より好ましくは−0.71〜0μmである。
さらに、第5項〜第8項の係数の絶対値の総和は、好ましくは4×(2R/100,000×1)μm以下であり、より好ましくは4×(2R/100,000×0.5)μm〜0μmである。例えば、6インチの角型の合成石英ガラス基板の場合には、好ましくは5.68μm以下、より好ましくは2.84〜0μmである。
【0025】
また、上述した段差加工が施されている場合、円領域から段差加工領域を除外した領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数は、好ましくは−(2R/100,000×0.6)μm以上であり、より好ましくは−(2R/100,000×0.3)μm〜0μmである。例えば、6インチの角型の合成石英ガラス基板の場合には、好ましくは−0.86μm以上、より好ましくは−0.43〜0μmである。
さらに、第5項〜第8項の係数の絶対値の総和は、好ましくは4×(2R/100,000×0.6)μm以下であり、より好ましくは4×(2R/100,000×0.3)μm〜0μmである。例えば、6インチの角型の合成石英ガラス基板の場合には、好ましくは3.41μm以下、より好ましくは1.71〜0μmである。
【0026】
また、第4項と同じく、円領域から段差加工領域を除外した領域における任意の半径R1と、これと同心の半径R2(但し、R2−R1=10mm)の円で囲まれるリング状の領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行った場合の第5項〜第8項の係数は、好ましくは−(2R/100,000×0.2)〜(2R/100,000×0.2)μmであり、より好ましくは−(2R/100,000×0.1)〜(2R/100,000×0.1)μmである。例えば、6インチの角型の合成石英ガラス基板の場合には、好ましくは−0.28〜0.28μm、より好ましくは−0.14〜0.14μmである。
さらに、第5項〜第8項の係数の絶対値の総和は、好ましくは4×(2R/100,000×0.2)μm以下であり、より好ましくは4×(2R/100,000×0.1)μm〜0μmである。例えば、6インチの角型の合成石英ガラス基板の場合には、好ましくは1.14μm以下、より好ましくは0.57〜0μmである。
【0027】
なお、Zernike多項式はあくまで近似であるため、第1項〜第8項の多項式で表した場合は、実際のインプリントモールド用合成石英ガラスの裏面形状との差分が生ずる。一般に「残差」と呼ばれるこの差分については、さらに、第9項または第10項以降の高次の非対称、対称成分が含まれるため、ある一定以上の大きさとならないように制限しておくべきである。
【0028】
本発明で用いるインプリントモールド用原料基板は、特に限定されるものではなく、例えば、合成石英ガラスを所望の形状に成形、アニール処理をした後、所望の厚さにスライスし、平面の研削、必要に応じて外周の研磨を行った後、粗研磨、精密研磨を経て得られたものを用いることができる。
研磨工程は、両面研磨、片面研磨のいずれを用いても良いが、一般に両面研磨の方が基板の厚さバラツキや平坦度を高精度に仕上げるのに好適である。研磨工程は、粗研磨、精密研磨と呼ばれる複数の研磨工程があり、各研磨工程では用いられる研磨剤、研磨パッドおよび研磨レートを適宜変え、表面粗さ(Ra)、表面欠陥、形状を制御する。
【0029】
原料基板の表面粗さ(Ra)は、原料基板が被転写物へ直接接触する観点から、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.2nm以下である。
また、インプリントは、被転写物へ直接接触させて転写する特性上、欠陥も等倍で転写されるため、PSL標準粒子を用いた場合における検査感度150nmで検出される原料基板表面全面での欠陥数は、好ましくは10個以下、より好ましくは0個であることが要求される。
さらに、インプリント時の裏面吸着による基板全体の変形形状の安定性の観点から、同時に裏面形状に関して、中心対称性の高い略凸形状であることが好ましい。
【0030】
研磨剤としては、一般に炭化珪素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マンガン、コロイダルシリカ等が用いられるが、最終の精密研磨工程においては、コロイダルシリカ系の研磨剤を用いることが好ましい。砥粒の平均粒径は、好ましくは100nm以下、より好ましくは80nm以下である。
また、研磨パッドとしては、スウェード系、不織布系、発泡ポリウレタン系等の従来汎用されている各種研磨パッドから適宜選択すればよいが、粗さ、欠陥品質を両立させる観点から、スウェード系パッドが最も好ましい。
【0031】
裏面形状を中心対称性の高い略凸形状の原料基板とするためには、粗研磨から精密研磨工程までの各工程で研磨形状をモニタし、これを制御することが好ましい。具体的には、粗研磨工程では硬度の高い研磨布を用いるため、研磨定盤の形状が大きく影響する。上下の定盤の形状によって基板表裏面の形状が、凹凸、凸凹、凹凹、凸凸のような組み合わせで発生することとなるため、特に粗研磨工程では研磨定盤の形状は重要となる。
続く精密研磨の複数段の工程では、上述のように表面粗さや欠陥品質を向上させるために、比較的硬度の低い研磨布を用いる。そのため、研磨定盤の影響を受けにくくなるが、硬度の低い研磨布であるため、基板外周が多く研磨されることから、全体としてはやや凸型になる傾向がある。いずれにしても精密研磨工程では平坦度を崩さずに、表面粗さや表面欠陥といった、ごく表面の品質を向上させるという目的から、研磨による取り代は後段になるほど少なくなり、また形状変化も少なくなる。
【0032】
以上のことから裏面形状を中心対称性の高い略凸形状化するためには、例えば、粗研磨工程における定盤形状は、上定盤が凸化する形状であり、下定盤は平坦に近い形状か、やや凹化する形状が好ましい。このようにすることで、表面は平坦化しつつ、裏面を凸化することが可能となる。また、凸凹の程度の異なる定盤形状を組み合わせて、粗研磨工程中に複数回基板を反転させて研磨形状を調整することでも、表裏で異なる形状を作ることが可能となる。
粗研磨工程終了時の裏面形状と、精密研磨を行った後の形状の差分を考慮して、精密研磨終了時に好適な裏面形状となるように、粗研磨工程時の裏面全面の平坦度が、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下となるように形状を規定する。粗研磨後の最終的な形状の凸化が大きすぎると、上記Zernike多項式による解析を行った場合に第4項の負の値が大きくなるため、その後の精密研磨における必要な補正量が大きくなり、補正困難または補正不可能となる場合があるからである。
【0033】
なお、以上では、インプリントモールド用原料基板の主に裏面形状を規定したが、インプリントモールドでは、表面に形成された凹凸形状の接触、転写を行うことから、表面平坦度が転写後の凹凸形状精度に影響するため、IC用途等のフォトマスク向けと同様に、表面の平坦度も同時に達成されることが好ましい。
このようにして製造されたインプリントモールド用原料基板を洗浄後、蒸着装置またはスパッタ装置を用いてインプリントモールド用原料基板上に、Cr、Cu、Mo、Ni等の金属またはこれらの金属酸化物膜、金属窒化物膜を常法により積層する。積層する膜厚は、好ましくは200nm以下、より好ましくは10〜50nmである。
【0034】
次に、金属膜または金属酸化物膜の上へフォトレジストを塗布する。フォトレジストは、ポジ型、ネガ型のいずれでも構わないが、精度や環境面からポジ型レジストが好ましい。レジストは露光波長に応じて、電子線用、EUV用、ArF用、KrF用、I線用、g線用に対応するレジストが選ばれる。レジストの膜厚は、数nm〜数十μmが好ましい。
塗布方法は、スピンコート、スプレーコート、スリットコート等を用いることができるが、より均一に塗布するためにはスピンコートが好適である。
【0035】
続いて、露光機を用いる場合は、所望のパターンとアライメントマークを有するフォトマスクを、直接描画の場合は、所望のパターンデータがセットされる。露光機の場合、上述の金属膜または金属酸化物膜とレジスト膜とを積層したインプリントモールド用基板を露光機にセットし、フォトマスクのパターンを介して露光を行う。一般的にフォトマスクは被露光対象の全域をカバーするために、インプリントモールド用基板よりも大きい寸法のものを用いる。フォトマスクとインプリントモールド用基板の寸法は特別限定されないが、SEMIの規格に定められている5〜7インチ角、9インチ角のいずれかを選ぶことが好ましい。直接描画の場合は、電子線やレーザー光を用いて上述の金属膜または金属酸化物膜とレジスト膜とを積層したインプリントモールド用基板上の所望パターン形状箇所のみを狙って電子線、もしくはレーザーを直接照射することで、パターンを形成する。
レジスト種、レジスト膜厚に応じた露光量で露光した後、レジスト膜の現像を行い、純水でリンスして、乾燥させる。
【0036】
その後、クロムエッチング液、酸性水溶液、アルカリ水溶液等によるウェットエッチング、塩素、フッ素系のガスによるドライエッチング等により金属膜または金属酸化物膜、金属窒化物膜のエッチングを行って所望の金属または金属酸化物パターンを得た後、そのパターンに基づいてインプリントモールド用基板をエッチングすることで、凹凸を有するパターン形状部を有するインプリントモールド用合成石英ガラス基板が得られる。
インプリントモールド用基板のエッチングは、フッ酸やフッ化ナトリウムを含むエッチング水溶液へ浸漬してインプリントモールド用基板のエッチングを行う、いわゆるウェットエッチング法と、高周波をかけてプラズマ化したフッ素系ガスを用いてエッチングする、いわゆるドライエッチング法がある。いずれの方法でも金属または金属酸化物パターン部を残してガラスをエッチングすることで金属または金属酸化物パターン部が凸形状となる構造が得られる。
【0037】
次に、インプリントモールド用基板として外形加工を行う。外形加工は、インプリントモールド用合成石英ガラス基板の表面、裏面、端面、面取り部のいずれか、または複数個所を所望の形状に加工し、インプリントモールド用合成石英ガラス基板としての高精度の形状を形成することを目的とする。
外形加工の際には、段差部を有するインプリントモールド用合成石英ガラス基板の段差部上部にあるパターン形成部を保護する必要がある。パターン形成部を保護する保護膜としては、Cr、Cu、Mo、Ni等の金属、これらの金属の酸化物膜または窒化物の膜や、有機化合物系のフォトレジスト膜等が挙げられる。
【0038】
その後、保護膜によりパターン形成部が保護されたインプリントモールド用合成石英ガラス基板を、接着部材を介して基板加工用台座に固定させる。
接着部材としては、ワックスや、エポキシ系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、UV硬化樹脂等が挙げられる。基板加工用台座は、セラミクスやガラス、金属製の台座が用いられる。
インプリントモールド用合成石英ガラス基板を基板加工用台座に固定させた後に、パターン形成面の一部を含む、表面、裏面、端面、面取り部について外形加工を行う。
外形加工に用いられる部材は、所望形状がプログラムされたマシニングセンター等の自動加工機の主軸に、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素等を電着またはメタルボンドで固定した回転砥石工具を用いる。回転砥石工具の主軸回転数は、特に限定されるものではないが、加工精度、生産性の面から、100〜30,000rpmが好ましく、1,000〜15,000rpmがより好ましい。また、研削速度にも制限はないが、加工精度、生産性の面から、1〜10,000mm/minが好ましく、10〜1,000mm/minがより好ましい。
【0039】
なお、冷却または切粉の排除等のため、エマルジョン系、水溶性、油性系等の切削液を同伴して加工を行うことが好ましい。
外形加工では、基板サイズの変更や、端面の平坦度向上のための端面加工、表裏面と端面の間の面取り部加工や非貫通または貫通穴加工を行うことがあり、これらの加工においても上述の回転砥石工具と切削液を用いて加工を行うことができる。
こうして外形加工を行ったインプリントモールド用合成石英ガラス基板は、非鏡面であることが多いため、必要に応じて被加工部の強度向上、清浄度向上、残留応力低減等のため、鏡面研磨加工を行う。
鏡面加工方法としては、回転研磨パッドを一定圧力でインプリントモールド用基板に当接させながら、インプリントモールド用基板と回転研磨パッドが相対的に搖動するように、いずれか一方または双方を動かしながら研磨を行うことが好ましい。回転研磨パッドは研磨剤を含浸させたものを使うこともあるが、研磨砥粒スラリーを介在させた状態で加工を行うことが好ましい。回転研磨パッドの研磨加工部の材質としては、発泡ポリウレタン、酸化セリウム含浸ポリウレタン、酸化ジルコニウム含浸ポリウレタン、不織布、スウェード、ゴム、羊毛フェルト等の被加工物を加工除去できるものであれば種類は限定されない。
【0040】
研磨砥粒スラリーを介在させた状態で研磨加工を行う場合の研磨砥粒としては、例えば、シリカ、セリア、アランダム、ホワイトアランダム(WA)、FO、ジルコニア、SiC、ダイヤモンド、チタニア、ゲルマニア等が挙げられ、その粒度は10nm〜10μmが好ましく、これらの水スラリーを好適に用いることができる。
また、回転研磨パッドを被研磨基板側面に一定圧力で押し当てる方法としては、空気圧ピストン、ロードセル等の加圧機構を用いる方法が挙げられる。
【0041】
外形加工を行った基板は、必要に応じて洗浄を行う。この洗浄は、硫酸、フッ酸、硝酸、塩酸、シュウ酸、酢酸等の酸性水溶液、混酸水溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、界面活性剤のようなアルカリ性水溶液、キシレン、アセトン、アルコール等をはじめとする有機溶剤などを適宜用い、純水のリンスと合わせて行う。
洗浄後のインプリントモールド用合成石英ガラス基板は、目視検査、欠陥検査装置による検査を行う。150nm級欠陥の検査には、M1320、M3350、M6640等の装置(レーザーテック社製)を使用する。
このようにして得られるインプリントモールド用合成石英ガラス基板の平坦度は、インプリントパターンを高精度な形状転写をする観点から、表面のパターン形成領域については、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
インプリントモールド用原料基板として、6インチ(152mm)の角型の合成石英ガラス基板を用いて、基板表裏面のラッピング、研磨、洗浄工程を経て、裏面142mm角領域内の平坦度が1.121μmの基板を得た。
Ultra Flat(Corning Tropel社製)にて基板裏面の形状を測定し、合成石英ガラス基板の中心から半径60mmの円で囲まれる円領域において、Zernike解析を行ったところ、第4項の係数は−0.344μm、第5項〜第8項の係数は0.004〜0.042μm、絶対値の総和は0.073μmであり、非常に好適な裏面形状を持つ基板を得ることができた。
【0044】
[実施例2]
実施例1と同様の原料基板を用いて、表面へクロム膜、フォトレジストを成膜し、フォトマスクを用いて露光、現像を行い、基板中央に33×41mmの長方形領域のパターンを形成した。
次いで、フッ化アンモニウムを含むフッ酸水溶液を用いて非パターン形成領域のウェットエッチング加工を行い、30μm高さの長方形パターンを形成した。
エッチング後に、合成石英ガラス基板裏面の中心から半径32mmの円で囲まれる円領域について段差加工を行い、イソプロピルアルコール、熱濃硫酸、界面活性剤(PC302C、花王(株)製)と純水を用いて洗浄を行った後、Ultra Flat(Corning Tropel社製)にて基板裏面の形状を測定した。
計測の結果、裏面142mm角領域内の平坦度が1.041μmである基板を得た。また、裏面における上記円領域から段差加工領域を除外した半径60mmの円で囲まれる円領域において、Zernike解析を行ったところ、第4項の係数は−0.318μm、第5項〜第8項の係数は−0.011〜0.034μm、絶対値の総和は0.079μmであり、非常に好適な裏面形状を持った基板を得ることができた。
【0045】
[実施例3]
基板表面に26×33mmの長方形領域のパターンが形成された実施例1と同様の基板を、フッ化アンモニウムを含むフッ酸水溶液を用いて非パターン形成領域のウェットエッチング加工を行い、30μm高さの長方形パターンを形成した。
エッチング後に、合成石英ガラス基板裏面の中心から半径32mmの円で囲まれる円領域について段差加工を行い、イソプロピルアルコール、熱濃硫酸、界面活性剤(PC302C、花王(株)製)と純水を用いて洗浄を行った後、Ultra Flat(Corning Tropel社製)にて基板裏面の形状を測定した。
計測の結果、裏面142mm角領域内の平坦度が0.599μmである基板を得た。また、裏面における上記円領域から段差加工領域を除外した半径35mmの円と半径45mmの円で囲まれるリング状の領域について、Zernike多項式における第1項〜第8項で近似解析を行ったところ、第4項の係数は−0.282μm、第5項〜第8項の係数は−0.013〜0.034μm、絶対値の総和は0.057μmであった。
また、上記リング状の領域について5mmずつ外側にずらして第4項の係数および第5項〜第8項の係数と絶対値の総和を測定したところ、表2のような結果が得られた。
【0046】
【表2】
【0047】
第4項係数は、絶対値としては最大0.282と十分小さく、第5項〜第8項は−0.028〜0.034、絶対値の総和についても0.057〜0.084となり、好適な基板が得られた。
リング状領域60−70の第4項係数よりも、リング状領域35−45の第4項係数の方が絶対値が大きく、円領域から前記段差加工領域を除外した領域中でも中心に近い領域の傾斜が大きいことが伺える。
【符号の説明】
【0048】
1 インプリントモールド用合成石英ガラス基板
2 円領域
2A 非貫通穴
2B 貫通穴
3 リング状領域
L1 インプリントモールド用合成石英ガラス基板の縦の長さ
L2 インプリントモールド用合成石英ガラス基板の横の長さ
O 基板中心
R 半径
R1 円領域から段差加工領域を除外した領域における任意の円の半径
R2 半径R1の円と同心の円の半径(R2−R1=10mm)
図1
図2
図3