(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記所定の条件は、前記内部圧力が前記外部圧力より大きく、且つ、前記差圧が0.5〜2.5Paとなる条件であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の給排気制御装置。
前記ウェーハ処理装置は、前記処理チャンバにおいてウェーハ上にエピタキシャル層を成長させるエピタキシャル成長装置であることを特徴とする請求項6に記載のウェーハ処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
FI、ロードロック、移送チャンバ及び処理チャンバで構成されたウェーハ処理装置において、ウェーハの清浄度を大きくするために外部(クリーンルーム)からウェーハ処理装置内に流入するパーティクルレベルを低くする必要がある。例えばFIにおいては、給気側にフィルターを設置することで給気側からのパーティクルを除去することが考えられる。
【0007】
また、本発明者らの鋭意研究の結果、FI内外の圧力差や、瞬間的な圧力変動によりFI内のウェーハに付着するパーティクルが増加することが明らかになった。具体的には、FI内の圧力(内部圧力)がFI外(クリーンルームやFIの排気口)の圧力(外部圧力)より低くなると、FIの内部と外部とを隔てるパネル間のつなぎ目部分における隙間や排気口からFI内にパーティクルが流入して、FI内のパーティクルレベルが悪化する。そのため、例えば、ブロワーなどによって給気量を制御することで、FIの内部圧力が外部圧力より大きくなるようにそれらの差圧を制御する必要がある。
【0008】
ところが、FIの外部圧力又はFI上流の給気量が大きく変動すると、給気ブロワーの風量制御だけでは差圧を一定に保つことができないという問題があった。この問題に対処するため、排気口に開度調整が可能なパネルを設けて、給気ブロワーの制御だけでは差圧を一定に保てない場合には、このパネル開度(排気口開度)を手動で変更して内部圧力を調整することが考えられる。しかし、排気口開度を変更するためには、ウェーハ処理装置の稼働を停止してFIの扉を開放する必要があるので、ウェーハ処理装置の稼働率が低下するという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、FIの外部圧力が大きく変動したとしても、ウェーハ処理装置の稼働率を低下させずに、FIの内部圧力と外部圧力の差圧を一定範囲内に制御できる装置又は方法を提供することを目的とする。また、FI内のパーティクルレベルを低減できる装置又は方法を提供することも本発明の目的とする。
【0010】
本発明者は、上記問題を解決するため、種々の試験を行い、鋭意検討を重ねた結果、FI内外の差圧とウェーハへの付着パーティクルとに関係があることを確認した。さらに、この差圧を一定範囲内に制御することで付着パーティクルが低減することを見出した。また、FIの給気ファンの風量制御に加え、FI排気口の開度を自動調整する機能を設けることでFIの外部圧力又はFIの上流の給気量の急激な変動時にも差圧を一定範囲内に保てることを確認し、以下に示す本発明を完成させた。
【0011】
本発明の給排気制御装置は、
ファクトリーインターフェースと、
前記ファクトリーインターフェースに接続されたロードロックと、
前記ロードロックに接続された移送チャンバと、
前記移送チャンバに接続された処理チャンバとを備えて、格納容器に格納されたウェーハを前記ファクトリーインターフェース、前記ロードロック、前記移送チャンバを介して前記処理チャンバに搬送して、前記処理チャンバにおいて前記ウェーハの処理を行うウェーハ処理装置に適用され、
前記ファクトリーインターフェースの給気側に配置されて、状態に応じて前記ファクトリーインターフェースの給気量が変化する給気調整部材と、
前記給気調整部材の状態を制御する給気制御部と、
前記ファクトリーインターフェースの排気側に配置されて、状態に応じて前記ファクトリーインターフェースの排気量が変化する排気調整部材と、
前記排気調整部材の状態を制御する排気制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の給排気制御装置によれば、FIの給気側に給気量を調整するための給気調整部材が設けられ、排気側に排気量を調整するための排気調整部材が設けられるので、これら両方の状態を制御することで、FIの外部圧力が大きく変動したとしても、FIの内部圧力と外部圧力の差圧を一定範囲内に制御できる。また、給気調整部材及び排気調整部材の状態は手動で調整するのではなく、給気制御部及び排気制御部により制御されるので、ウェーハ処理装置の稼働を停止させずにその制御が可能となる。
【0013】
また、本発明の給排気制御装置は、前記ファクトリーインターフェースの外部圧力を検出する外部圧力検出部と、
前記ファクトリーインターフェースの内部圧力を検出する内部圧力検出部とをさらに備え、
前記給気制御部及び前記排気制御部は、前記内部圧力と前記外部圧力の差圧が所定の条件を満たすように前記給気調整部材及び前記排気調整部材の状態を制御してもよい。
【0014】
このように差圧を制御することで、FI内のパーティクルレベルが大きく変動するのを抑制できる。
【0015】
また、本発明の給排気制御装置において、前記給気調整部材は送風機であり、
前記給気制御部は、前記送風機の風量を制御する風量制御部であり、
前記排気調整部材は、前記ファクトリーインターフェースの排気口の開度を調整する開度調整部材であり、
前記排気制御部は、前記開度調整部材の開度を制御する開度制御部であるとしてもよい。
【0016】
このように、給気側の送風機の風量と、排気側の開度調整部材の開度とを制御することで、FIの内部圧力を容易に制御できる。
【0017】
また、本発明の給排気制御装置において、前記風量制御部は、前記差圧が前記所定の条件を満たすように前記送風機の風量を制御し、
前記開度制御部は、前記外部圧力が大きいほど前記開度調整部材の開度を小さくしてもよい。
【0018】
これによれば、外部圧力が大きいほど開度調整部材の開度を小さくするので、外部圧力が大きくなるに伴い排気量を抑えて内部圧力を大きくできる。これにより、外部圧力が大きく変動したとしても、内部圧力と外部圧力の差圧が所定の条件から外れてしまうのを抑制できる。
【0019】
また、前記所定の条件は、前記内部圧力が前記外部圧力より大きく、且つ、前記差圧が0.5〜2.5Paとなる条件とすることができる。差圧が0.5Paより小さいと、FI内のパーティクルレベルが悪化する。差圧を2.5Paより大きくしても、ほとんどパーティクル改善効果が変わらない。また、差圧を2.5Paより大きい値に一定に制御するのは難しい。このように、内部圧力が外部圧力より大きく、且つ、差圧が0.5〜2.5Paとなるよう制御することで、FI内のパーティクルレベルを低減できるとともに、差圧制御が容易となる。
【0020】
本発明のウェーハ処理装置は、
上記本発明の給排気制御装置を有したファクトリーインターフェースと、
前記ファクトリーインターフェースに接続されたロードロックと、
前記ロードロックに接続された移送チャンバと、
前記移送チャンバに接続された処理チャンバとを備えて、格納容器に格納されたウェーハを前記ファクトリーインターフェース、前記ロードロック、前記移送チャンバを介して前記処理チャンバに搬送して、前記処理チャンバにおいて前記ウェーハの処理を行うことを特徴とする。
【0021】
本発明のウェーハ処理装置によれば、上記給排気制御装置を備えているので、外部圧力が変動したとしても、FIの内部圧力を外部圧力の変動に追従でき、内部圧力と外部圧力の差圧を一定範囲内に制御できる。これにより、FI内のパーティクルレベルの変動を抑制でき、ひいてはウェーハに付着するパーティクルを低減できる。
【0022】
本発明のウェーハ処理装置は、前記処理チャンバにおいてウェーハ上にエピタキシャル層を成長させるエピタキシャル成長装置とすることができる。これによれば、付着パーティクルが少ない高清浄度のエピタキシャルウェーハを得ることができる。
【0023】
本発明のウェーハ処理方法は上記本発明のウェーハ処理装置を用いてウェーハの処理を行うことを特徴とする。これによって、ウェーハに付着するパーティクルを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、ウェーハ処理装置として、半導体ウェーハ(以下、ウェーハという)上にエピタキシャル層を気相成長させる枚葉式のエピタキシャル成長装置の概略平面図を示している。先ず
図1のエピタキシャル成長装置1の構成を説明する。エピタキシャル成長装置1は、ファクトリーインターフェースとして構成された装置2(以下、FI装置という)と、ロードロック3、4と、移送チャンバ5と、処理チャンバ6、7と、FI装置2の一部を構成するロードポート8、9及びロボット10、11(以下、FIロボットという)と、移送チャンバ5内に設けられたロボット12(以下、搬送ロボットという)とを備えている。エピタキシャル成長装置1はクリーンルームに配置される。
【0029】
FI装置2は、FIロボット10、11によって、ロードポート8、9に置かれた格納容器25(
図2参照)から処理前のウェーハWをピックアップして、ピックアップしたウェーハWをロードロック3、4まで搬送し、又は処理後のウェーハWを、ロードロック3、4から格納容器25まで搬送する部分である。FI装置2は、格納容器25からのウェーハWが最初に搬送される部分である。FI装置2の詳細は後述する。
【0030】
ロードロック3、4は、処理チャンバ6、7に対してウェーハWを出し入れする際にウェーハWを一時的に保管する室である。ロードロック3、4は、FI装置2と移送チャンバ5の間においてそれらFI装置2、移送チャンバ5にゲートバルブ(図示外)を介して接続されている。ロードロック3、4の、FI装置2及び移送チャンバ5との接続部分にはそれぞれウェーハWの出入りが可能な開口が形成されている。ゲートバルブは各開口を開閉するように設けられる。ロードロック3、4は、給気及び排気の機構を備えており、この機構により、ロードロック3、4の室内環境(真空度、清浄度など)を調整できるように構成されている。
【0031】
移送チャンバ5は、処理前のウェーハWを、ロードロック3、4から処理チャンバ6、7に搬送し、又は処理後のウェーハWを処理チャンバ6、7からロードロック3、4に搬送するためのチャンバである。移送チャンバ5は、ロードロック3、4と処理チャンバ6、7の間においてそれらロードロック3、4、処理チャンバ6、7にゲートバルブ(図示外)を介して接続されている。移送チャンバ5の、ロードロック3、4及び処理チャンバ6、7との接続部分にはそれぞれウェーハWの出入りが可能な開口が形成されている。ゲートバルブは各開口を開閉するように設けられる。
【0032】
搬送ロボット12は、ブレード12aを有し、ブレード12aにウェーハWを載せて、ロードロック3、4から処理チャンバ6、7に搬送し、又は処理チャンバ6、7からロードロック3、4に搬送する。
【0033】
処理チャンバ6、7は、ウェーハWが一枚ずつ投入されて、投入されたウェーハWの主表面上にシリコン単結晶膜などの薄膜を気相成長させる処理を行うチャンバである。処理チャンバ6、7は、移送チャンバ5にゲートバルブ(図示外)を介して接続されている。処理チャンバ6、7の、移送チャンバ5との接続部分にはウェーハWの出入りが可能な開口が形成されている。ゲートバルブはこの開口を開閉するように設けられる。
【0034】
次に、エピタキシャル成長装置1を用いたエピタキシャルウェーハの製造方法を説明する。複数枚のウェーハW(例えばシリコン単結晶ウェーハ)を格納したFOSB(Front Opening Shipping Box)又はFOUP(Front Opening Unified Pod)等の格納容器25(
図2参照)をロードポート8、9にセットした後、FIロボット10、11が格納容器25からウェーハWをピックアップし、FI装置2からロードロック3、4に搬送する。次に、ロードロック3、4のゲートバルブを閉じて、ロードロック3、4内の給気及び排気を制御して、ロードロック3、4の室内環境を処理チャンバ6、7に応じた環境となるように調整する。
【0035】
次に、ロードロック3、4と移送チャンバ5との間のゲートバルブを開けて、搬送ロボット12がウェーハWをロードロック3、4から処理チャンバ6、7に搬送する。その後、処理チャンバ6、7においてウェーハWの主表面上にシリコン単結晶膜等の薄膜を気相成長させて、エピタキシャルウェーハを得る。その後、処理後のウェーハW(エピタキシャルウェーハ)を、処理チャンバ6、7に投入するときと逆の手順で格納容器25に格納する。
【0036】
次に、FI装置2の詳細を説明する。
図1、
図2に示すように、FI装置2は、2つのロードポート8、9と、2つのFIロボット10、11と、本体部13と、給気ダクト14と、給気ブロワー15と、FI装置コントローラ16と、ブロワーコントローラ17と、フィルター18と、第1圧力計19と、第2圧力計20と、排気側調整パネル21と、パネル開度コントローラ22とを備えている。
【0037】
ロードポート8、9は、上面に格納容器25が置かれて、エピタキシャル成長装置1に対してウェーハWを出し入れするインターフェース部として機能する。ロードポート8、9は本体部13に接続されており、格納容器25と本体部13内の空間との間でウェーハWの出入りが可能となっている。2つのロードポート8、9は水平方向に並置された形態で本体部13に接続されている。
【0038】
本体部13は内側にウェーハWが通過可能な空間を形成している。本体部13は、内側の空間の周囲を取り囲む壁部を有する。この壁部は、本体部13の内側の空間と外側の空間(クリーンルームの空間)とを隔てるように、複数枚のパネルを繋ぎ合わせた形態にて設けられる。また、本体部13は、天井面に給気口13aを有し、床面に排気口13bを有する。また、本体部13は、各ロードロック3、4にゲートバルブ(図示外)を介して接続されている。本体部13の、各ロードロック3、4との接続部分にはウェーハWの出入りが可能な開口が形成されている。ゲートバルブはこの開口を開閉するように設けられる。
【0039】
FIロボット10、11は、本体部13内の空間において水平方向に並列配置された形態で設けられる。各FIロボット10、11はウェーハWが載せられるブレード10a、11aを有している(
図1も参照)。第1のFIロボット10は、第1のロードポート8と第1のロードロック3の間に設けられて(
図1参照)、第1のロードポート8に置かれた第1格納容器25から第1のロードロック3に処理前のウェーハWを搬送し、又は第1のロードロック3から第1格納容器25に処理後のウェーハWを搬送する。第2のFIロボット11は、第2のロードポート9と第2のロードロック4の間に設けられて(
図1参照)、第2のロードポート9に置かれた第2格納容器25から第2のロードロック4に処理前のウェーハWを搬送し、又は第2のロードロック4から第2格納容器25に処理後のウェーハWを搬送する。
【0040】
給気ダクト14は、本体部13の給気口13aを介して本体部13内の空間に連通するように本体部13に接続されており、本体部13内に導入する気体(空気、窒素、水素等)を流通させる管である。給気ダクト14は、本体部13内に鉛直下向きに気体を導入、つまりダウンフローの気体を導入するように設けられる。
【0041】
給気ブロワー15は、給気ダクト14内に設けられて、本体部13内に強制的に気体を送り込む送風機である。給気ブロワー15の回転数が大きいほど、本体部13内に送り込まれる気体の流量が大きくなる。
【0042】
FI装置コントローラ16は、FI装置2の各部の制御を行う制御部であって、具体的には例えばFIロボット10、11の動作を制御する。FI装置コントローラ16は例えば本体部13の給気口13a付近に設けられるが、別の位置に設けられてもよい。
【0043】
ブロワーコントローラ17は、給気ブロワー15の回転数を制御する部分であって、給気ブロワー15を回転させるモータ及びそのモータの回転数を制御する制御部を含んで構成される。ブロワーコントローラ17は給気ブロワー15付近に設けられている。
【0044】
フィルター18は、本体部13の給気口13aを覆うように設けられて、給気口13aから本体部13内の空間に導入される気体中の異物(パーティクル等)を除去する。
【0045】
第1圧力計19は本体部13の外部空間であるクリーンルーム空間の圧力を検出する装置(センサ)である。第1圧力計19はブロワーコントローラ17に電気的に接続されており、第1圧力計19の検出値がブロワーコントローラ17に入力されるようになっている。
【0046】
第2圧力計20は本体部13の内部空間の圧力を検出する装置(センサ)である。第2圧力計20はブロワーコントローラ17に電気的に接続されており、第2圧力計20の検出値がブロワーコントローラ17に入力されるようになっている。
【0047】
排気側調整パネル21は、本体部13の床面を構成して、外部に連通した排気口13bを形成するパネルである。排気側調整パネル21は、排気口13bの開度を変更する機構を有している。具体的には、排気側調整パネル21は、例えば複数箇所に貫通部21cを有した第1のパネル21aと、複数箇所に貫通部21dを有した第2のパネル21bとが重ね合わさるように構成される。第1のパネル21aは位置が変化しない固定パネルである。第2のパネル21bは、第2のパネル21bの貫通部21dと第1のパネル21aの貫通部21cとの重複部分13bの大きさを変更するように、第1のパネル21aの面内方向に移動可能に設けられた可変パネルである。第2のパネル21bの位置に応じて、上記重複部分13bの大きさが変化する。この重複部分13bが排気口となる。排気側調整パネル21の開度(重複部分13b)が大きいほど、本体部13から外部に排気される気体の流量が大きくなる。このように、排気側調整パネル21は、排気の流量を調整可能なダンパーとして機能する。
【0048】
パネル開度コントローラ22は、排気側調整パネル21の開度を制御する。具体的には、パネル開度コントローラ22は、第2のパネル21bの位置を変化させるモータ等の駆動部とその駆動部を制御する制御部とを備えて構成される。パネル開度コントローラ22は排気側調整パネル21付近に設けられている。また、パネル開度コントローラ22は、通信線23を介してブロワーコントローラ17に電気的に接続されており、通信線23を介してブロワーコントローラ17との間で通信が可能となっている。
【0049】
次に、ブロワーコントローラ17及びパネル開度コントローラ22による給排気の制御について説明する。ブロワーコントローラ17及びパネル開度コントローラ22は、常時、本体部13の内部圧力が外部圧力より大きく、且つ、それらの差圧が所定範囲となるように給気ブロワー15の風量及び排気側調整パネル21の開度を制御する。この所定範囲は0.5Pa〜2.5Paとするのが望ましい。差圧が0.5Paより小さいと、微小な圧力変動時等により、外部からのパーティクルが、本体部13のパネル間のつなぎ目部分における隙間100(
図2参照)や排気口13bを介して本体部13内に流入し、本体部13内のパーティクルレベルが悪化する。差圧を2.5Paより大きくしても、本体部13内でのパーティクルレベルはほぼ一定となり改善効果が得られない。また、差圧を2.5Paより大きい値に一定に制御するのは難しい。
【0050】
ブロワーコントローラ17及びパネル開度コントローラ22は、例えば以下のように給気ブロワー15の風量及び排気側調整パネル21の開度を制御する。すなわち、ブロワーコントローラ17は、第2圧力計20の検出値である内部圧力と、第1圧力計19の検出値である外部圧力とをそれぞれ取得する。ブロワーコントローラ17は、取得した内部圧力と外部圧力の差圧を算出する。そして、ブロワーコントローラ17は、内部圧力が外部圧力より大きく、且つ、それらの差圧ΔPが0.5Pa〜2.5Paとなる条件を満たしているか否かを判断する。ブロワーコントローラ17は、この条件を満たしている場合には、給気ブロワー15の風量を維持する。ブロワーコントローラ17は、この条件を満たしていない場合には、給気ブロワー15の風量(回転数)を変更する。この際、差圧ΔPが上限値ΔPmax(=2.5Pa)より大きい場合には、給気ブロワー15の風量(回転数)を小さくする。どの程度小さくするかは、差圧ΔPと上限値ΔPmaxとのズレ量にかかわらず風量の変更量を一定としてもよいし、ズレ量が大きいほど大きい変更量としてもよい。
【0051】
一方、ブロワーコントローラ17は、差圧ΔPが下限値ΔPmin(=0.5Pa)より小さい場合には、給気ブロワー15の風量(回転数)を大きくする。どの程度大きくするかは、差圧ΔPと下限値ΔPminとのズレ量にかかわらず風量の変更量を一定としてもよいし、ズレ量が大きいほど大きい変更量としてもよい。
【0052】
ブロワーコントローラ17は、給気ブロワー15の風量を変更した場合には、再度、圧力計19、20の検出値を取得して、これらの差圧ΔPが0.5Pa〜2.5Paを満たしているかを判断する。満たしている場合には、給気ブロワー15の風量を維持し、満たしていない場合には上記と同様に再度、給気ブロワー15の風量を変更する。このように、ブロワーコントローラ17は、内部圧力が外部圧力より大きく、且つ、それらの差圧ΔPが0.5Pa〜2.5Paとなる条件を満たすまで、給気ブロワー15の風量を調整する。
【0053】
上記のブロワーコントローラ17による制御は、第1圧力計19が検出する外部圧力が大きいほど、給気ブロワー15の回転数を大きくして、内部圧力を上げるようにすることと同義である。
【0054】
パネル開度コントローラ22は、例えば、通信線23を介してブロワーコントローラ17から第1圧力計19が検出する外部圧力を取得する。そして、パネル開度コントローラ22は、取得した外部圧力に応じて排気側調整パネル21の開度を変化させる。具体的には、パネル開度コントローラ22は、例えば、外部圧力が所定値以下の場合には排気側調整パネル21の開度を全開(100%)とし、外部圧力が所定値より大きい場合には、外部圧力が大きくなるにしたがって段階的又は連続的に排気側調整パネル21の開度を小さくする。このように、パネル開度コントローラ22は、第2圧力計20の検出値(内部圧力)にかかわらず、第1圧力計19の検出値(外部圧力)のみに基づいて排気側調整パネル21の開度を制御する。
【0055】
外部圧力に応じて排気側調整パネル21の開度を変化させることで、外部圧力が大きく変動したとしても、給気ブロワー15の風量制御によって差圧を常時、所定範囲に制御できる。
【0056】
なお、本体部13の内部圧力が外部圧力より大きく、且つ、それらの差圧が所定範囲に制御できるのであれば、上記制御に限定されるものではない。例えば、ブロワーコントローラ17は、第2圧力計20の検出値(内部圧力)にかかわらず、第1圧力計19の検出値(外部圧力)のみに基づいて給気ブロワー15の風量を制御し、パネル開度コントローラ22は内部圧力と外部圧力の差圧に基づいて排気側調整パネル21の開度を制御してもよい。
【0057】
また例えば以下のように制御してもよい。すなわち、給気ブロワー15に加えて又は代えて、給気ダクト14の流路面積を変更可能なダンパー24(
図2参照)と、このダンパー24の開度を制御するダンパーコントローラとを設ける。そして、給気ブロワー15の制御に加えて又は代えて、ダンパーコントローラが、ダンパー24の開度を、内部圧力と外部圧力の差圧又は外部圧力に応じて変化させる。この場合、外部圧力が大きいほど、ダンパー24の開度を大きくして内部圧力を大きくする。
【0058】
また、排気側では、排気側調整パネル21に加えて又は代えて、排気ブロワーと、これを制御するブロワーコントローラとを設けてもよい。ブロワーコントローラは、排気ブロワーの回転数(排気量)を、内部圧力と外部圧力の差圧又は外部圧力に応じて変化させる。この場合、外部圧力が大きいほど、排気ブロワーの回転数(排気量)を小さくして内部圧力を大きくする。なお、給気ブロワー15と、排気ブロワーの少なくとも一方は設けるようにするとよい。
【0059】
また、ブロワーコントローラ17は、給気ブロワー15の制御だけでは差圧を所定範囲に制御できない場合にパネル開度コントローラ22に通知する。パネル開度コントローラ22は、この通知が有ったときに、排気側調整パネル21の開度を外部圧力に応じて変更し、この通知が無いときには、外部圧力にかかわらず排気側調整パネル21の開度を維持するようにしてもよい。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、給気ブロワー15と排気側調整パネル21の両方を自動制御するので、FI装置2の外部圧力やFI装置2の上流の給気量が急激に変動したとしても、その変動に内部圧力を追従させることができ、FI装置2の内外の差圧を所定範囲に制御しやすくできる。これによって、FI装置2内のパーティクルレベルの変動を抑制できる。また、この所定範囲を0.5Pa〜2.5Paとすることで、FI装置2内のパーティクルレベルを低減でき、ひいてはウェーハWに付着するパーティクルを低減できる。これによって、付着パーティクルを低減した清浄度の高いエピタキシャルウェーハを得ることができる。
【0061】
また、給気ブロワー15及び排気側調整パネル21の制御は、コントローラ17、22によって自動で行われるので、エピタキシャル成長装置1の稼働を停止することなく給気及び排気を制御できる。これにより、エピタキシャル成長装置1の稼働率の低下を抑制できる。
【0062】
さらに、FI装置2内にはダウンフローの気流が流れるので、この気流により、ウェーハWの主表面に付着したパーティクルを除去できる。
【実施例】
【0063】
本発明の効果を確認するため、以下に示すようにFI装置内の気中パーティクルをパーティクルカウンターで測定し、有効性を検証した。
【0064】
(実施例)
図1のウェーハ処理装置1、
図2のFI装置2を用いた。実施例では、FI装置2の内部圧力と外部圧力の差圧が所定範囲(0.5Pa〜2.5Pa)になるように、ブロワーコントローラ17により給気ブロワー15の風量制御を行った。加えて、パネル開度コントローラ22により、外部圧力に応じて排気側調整パネル21(排気口)の開度を自動制御した。そして、FI装置2内のパーティクルレベルを評価するため、気中パーティクルカウンターを準備し、FI装置2の排気下部からFI装置2の本体部13内の気中パーティクルレベルを測定した。
【0065】
(比較例)
比較例では、
図1、
図2のFI装置2に代えて
図3のFI装置30を備えたウェーハ処理装置を用いた。
図3において、
図2のFI装置2と同様の構成には同じ符号を付している。FI装置30では、排気側調整パネル31が手動調整用のパネルとして構成されている。つまりFI装置30は、排気側調整パネル31の開度を制御するコントローラを備えていない。
【0066】
比較例では、FI装置30の内部圧力と外部圧力の差圧が所定範囲(0.5Pa〜2.5Pa)になるように、ブロワーコントローラ17により給気ブロワー15の風量制御を行った。このとき、比較例1では、排気側調整パネル31(排気口)の開度を手動調整して全開(100%)に固定した。比較例2では、排気側調整パネル31(排気口)の開度を手動調整して50%の開度に固定した。
【0067】
そして、FI装置30内のパーティクルレベルを評価するため、気中パーティクルカウンターを準備し、FI装置30の排気下部からFI装置30の本体部13内の気中パーティクルレベルを測定した。
【0068】
(実施例と比較例の測定結果)
表1に実施例で実施した水準とFI装置2内の気中パーティクル測定結果を示す。表2に比較例で実施した水準とFI装置30内の気中パーティクル測定結果を示す。また、
図4に、実施例、比較例における、FI外部圧力とFI差圧との関係を示す。
図5に、実施例、比較例における、FI差圧と気中パーティクルのカウント数との関係を示す。なお、表1、表2、
図5において、気中パーティクルの単位は「cfm」は、cubic feet/min、すなわち1立方フィートの中で1分間当たりにカウントされたパーティクルの数を表す。また、表1、表2、
図4、
図5において、正の値の差圧はFI内部圧力がFI外部圧力より大きいことを示し、負の値の差圧はFI内部圧力がFI外部圧力より小さいことを示している。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
表2、
図4に示す結果から、比較例ではいずれの排気口開度でも本調査範囲のFI外部圧力全ての領域で差圧0.5〜2.5Paを満たす条件が得られなかった。具体的には、比較例1では、FI外部圧力が13Pa以上の領域で、給気ブロワー15の回転数をほぼ100%にしたとしても、差圧は負の値になってしまい、0.5Pa以上に制御できなかった。比較例2では、FI外部圧力が16Pa以上の領域で、給気ブロワー15の回転数をほぼ100%にしたとしても、差圧は負の値になってしまい、0.5Pa以上に制御できなかった。
【0072】
また、表2、
図5に示すように、差圧が0.5Pa以上のときには、気中パーティクルのカウント数が10より小さい値であるのに対し、差圧が0.5Paより小さいときには、気中パーティクルのカウント数が10以上となって、パーティクルレベルが悪化した。特に、比較例1ではFI外部圧力が13Pa以上の領域で負の差圧を示し、比較例2ではFI外部圧力が16Pa以上の領域で負の差圧を示しており、これら負の差圧における気中パーティクルのカウント数は20以上となっている。
【0073】
これに対して、表1に示す結果から、実施例ではFI外部圧力に応じて排気口開度の自動調整を行ったため、本調査範囲のFI外部圧力全ての領域で差圧0.5〜2.5Paを満たすことができ、いずれのFI外部圧力でも気中パーティクルのカウント数を10より小さい値に抑えることができた(
図4、
図5も参照)。
【0074】
また、表1、表2に示すように、実施例、比較例のいずれにおいても、差圧が1.5Pa以上の場合には、気中パーティクルのカウント数が5以下となった。このことから、差圧を1.5Pa〜2.5Paに制御するのがより好ましいといえる。
【0075】
さらに、実施例、比較例のいずれにおいても、差圧が2.0Pa以上の場合には、気中パーティクルのカウント数が3以下となった。このことから、差圧を2.0Pa〜2.5Paに制御するのがより好ましいといえる。
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであったとしても本発明の技術的範囲に包含される。
【0077】
例えば上記実施形態では、ウェーハ処理装置としてエピタキシャル成長装置の例を示したが、処理チャンバにおいてエピタキシャル成長以外の処理(例えばエッチング)を行うウェーハ処理装置のFI装置に本発明を適用してもよい。