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特許6973368ウェーハの平坦度の評価方法及び評価装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973368
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】ウェーハの平坦度の評価方法及び評価装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20211111BHJP
【FI】
   H01L21/66 J
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-239636(P2018-239636)
(22)【出願日】2018年12月21日
(65)【公開番号】特開2020-102526(P2020-102526A)
(43)【公開日】2020年7月2日
【審査請求日】2020年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 淳一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 三千登
【審査官】 西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−254741(JP,A)
【文献】 特開2004−200600(JP,A)
【文献】 特開2017−111147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/64−21/66
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦度を評価する評価対象のウェーハの表面を、複数のデータグリッドに区切るステップと、前記データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップと、該測定結果に基づいて、前記ウェーハの平坦度を算出するステップとを有するウェーハの平坦度の評価方法であって、
前記データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、
前記ウェーハの中央領域では、該中央領域に含まれる前記データグリッドのうち一部の前記データグリッドで測定するとともに、一部の前記データグリッドでは測定しないものとし、
前記中央領域の外側の外周領域では、測定するデータグリッドを前記中央領域において測定する密度よりも高い密度とすることを特徴とするウェーハの平坦度の評価方法。
【請求項2】
前記データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、前記外周領域に含まれる前記データグリッドの全てにおいて測定することを特徴とする請求項1に記載のウェーハの平坦度の評価方法。
【請求項3】
前記データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、前記中央領域に含まれる前記データグリッドの50%以上において測定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のウェーハの平坦度の評価方法。
【請求項4】
前記中央領域の直径を、前記ウェーハの直径の50%以下とすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項の記載のウェーハの平坦度の評価方法。
【請求項5】
前記データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、前記中央領域において、前記測定を行うデータグリッドと隣り合うデータグリッドでは前記測定を行わないものとすることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のウェーハの平坦度の評価方法。
【請求項6】
平坦度を評価する評価対象のウェーハの表面を、複数のデータグリッドに区切る手段と、前記データグリッド内のウェーハ形状を測定する手段と、該測定結果に基づいて、前記ウェーハの平坦度を算出する手段とを具備するウェーハの平坦度の評価装置であって、
前記ウェーハの中央領域では、該中央領域に含まれる前記データグリッドのうち一部の前記データグリッドで測定するとともに、一部の前記データグリッドでは測定しないように設定されたものであり、
前記中央領域の外側の外周領域では、測定するデータグリッドを前記中央領域において測定する密度よりも高い密度となるように設定されたものであることを特徴とするウェーハの平坦度の評価装置。
【請求項7】
前記外周領域に含まれる前記データグリッドの全てにおいて前記ウェーハ形状を測定するものであることを特徴とする請求項6に記載のウェーハの平坦度の評価装置。
【請求項8】
前記中央領域に含まれる前記データグリッドの50%以上において前記ウェーハ形状を測定するものであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のウェーハの平坦度の評価装置。
【請求項9】
前記中央領域の直径を前記ウェーハの直径の50%以下として設定されたものであることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項の記載のウェーハの平坦度の評価装置。
【請求項10】
前記中央領域において、前記測定を行うデータグリッドと隣り合うデータグリッドでは前記測定を行わないものであることを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載のウェーハの平坦度の評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの平坦度の評価方法及び評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハなどのウェーハの平坦度評価装置は光干渉方式や静電容量方式等が存在している。平坦度測定は定められた領域範囲のデータのPV値(peak to valley値)を出力するものである。
【0003】
ウェーハの平坦度評価方法として、例えば、特許文献1には、ウェーハ表面と裏面形状を計測して、ウェーハの表面をサイトに区切り、評価するサイトの位置に応じて平坦度の算出方法を選択することが開示されている。また、特許文献2には、ウェーハ面内で所定の間隔をおいてウェーハ形状を測定し、そのウェーハ形状より基準線または基準面を算出するための領域をウェーハ面内に設定して評価することが開示されている。
【0004】
半導体デバイスのパターン寸法の微細化により、光リソグラフィ技術は、EUV(極端紫外線、Extreme ultraviolet)世代を迎えている。半導体ウェーハの平坦度測定はEUV世代を迎え、高精度で測定をする為にデータグリッドが小さくなってきている。データグリッドを小さくするとウェーハ全面測定をする際にこれまでより多くの時間を要することになる。測定スループットの低下により、ウェーハ平坦度を測定するために必要な装置数が増え、測定機間差の問題や検査コスト上昇等の問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−200600号公報
【特許文献2】国際公開第WO2002/041380号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、ウェーハの平坦度評価装置は、定められた領域範囲のデータのPV値を出力する物である。その際、データグリッドは一辺が200μmから500μm程度で実施されていた。これまで、露光装置に合わせてグローバルフラットネスしか測定していなかった物が、サイトフラットネスを測定するようになり、最近ではESFQR等の測定定義を変えてウェーハの平坦度保証を対応してきた。そのときのウェーハ面上でのデータは、従来、ウェーハの中心や外周の位置に関係なく、同じデータ密度により測定、演算がなされていた。データグリッドが500μm程度やそれよりやや小さくなる程度ならば、従来の基準では測定分解能に問題がなかった。また、そのようなデータグリッドが500μm程度の大きさであれば、全データグリッドの測定を行っても、測定スループットが極端に落ちることがなかったため、ウェーハ内でデータ密度を変えずに平坦度測定を行っていた。
【0007】
しかしながら、高精度の平坦度測定を考えると、データグリッドの面積が大きいと微妙な変化が平均化されて見えなくなってしまう。そのため、高精度化には、例えば、データグリッドの一辺を200μm程度以下にすることが必要になる。データグリッドが小さくなることによって1枚のウェーハ測定におけるデータ数が多くなり、測定スループットが低下してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、高精度のウェーハの平坦度の評価を行うことができるとともに、測定スループット低下が抑制されたウェーハの平坦度の評価方法及び評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、平坦度を評価する評価対象のウェーハの表面を、複数のデータグリッドに区切るステップと、前記データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップと、該測定結果に基づいて、前記ウェーハの平坦度を算出するステップとを有するウェーハの平坦度の評価方法であって、前記データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、前記ウェーハの中央領域では、該中央領域に含まれる前記データグリッドのうち一部の前記データグリッドで測定するとともに、一部の前記データグリッドでは測定しないものとし、前記中央領域の外側の外周領域では、測定するデータグリッドを前記中央領域において測定する密度よりも高い密度とすることを特徴とするウェーハの平坦度の評価方法を提供する。
【0010】
このようなウェーハの平坦度の評価方法は、ウェーハの中央領域では測定を行うデータグリッド数を減らし(間引き)、ウェーハの外周領域では中央領域よりも測定を行うデータグリッドの密度を上げることにより、高精度の平坦度測定を行うことができるとともに、測定スループット低下を抑制することができる。
【0011】
このとき、前記データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、前記外周領域に含まれる前記データグリッドの全てにおいて測定することが好ましい。
【0012】
このように、ウェーハ外周領域では、データグリッドの全てにおいて測定を行うことにより、より高精度の平坦度測定を行うことができる。
【0013】
また、前記データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、前記中央領域に含まれる前記データグリッドの50%以上において測定することが好ましい。
【0014】
このように、ウェーハ中央領域では、全データグリッドの半数以上のデータグリッドにおいて測定を行うことにより、より高精度の平坦度測定を行うことができる。
【0015】
また、前記中央領域の直径を、前記ウェーハの直径の50%以下とすることが好ましい。
【0016】
このように、ウェーハ中央領域の直径をウェーハ自体の直径の50%以下とすることにより、平坦度測定の精度をより高く保持することができる。
【0017】
また、前記データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、前記中央領域において、前記測定を行うデータグリッドと隣り合うデータグリッドでは前記測定を行わないものとすることができる。
【0018】
本発明のウェーハの平坦度の評価方法では、このように、中央領域において、測定を行うデータグリッドと隣り合うデータグリッドでは測定を行わないものとすることにより、高精度の平坦度測定と測定スループット低下の抑制をより効果的に両立することができる。
【0019】
また、本発明は、平坦度を評価する評価対象のウェーハの表面を、複数のデータグリッドに区切る手段と、前記データグリッド内のウェーハ形状を測定する手段と、該測定結果に基づいて、前記ウェーハの平坦度を算出する手段とを具備するウェーハの平坦度の評価装置であって、前記ウェーハの中央領域では、該中央領域に含まれる前記データグリッドのうち一部の前記データグリッドで測定するとともに、一部の前記データグリッドでは測定しないように設定されたものであり、前記中央領域の外側の外周領域では、測定するデータグリッドを前記中央領域において測定する密度よりも高い密度となるように設定されたものであることを特徴とするウェーハの平坦度の評価装置を提供する。
【0020】
このようなウェーハの平坦度の評価装置は、ウェーハの中央領域における測定を行うデータグリッド数を減らしたものであるとともにウェーハの外周領域では中央領域よりも測定を行うデータグリッドの密度が高いものであることにより、高精度の平坦度測定を行うことができるとともに、測定スループット低下を抑制することができる。
【0021】
このとき、前記外周領域に含まれる前記データグリッドの全てにおいて前記ウェーハ形状を測定するものであることが好ましい。
【0022】
このように、外周領域のデータグリッドの全てにおいてウェーハ形状を測定するものであることにより、より高精度の平坦度測定を行うことができる。
【0023】
また、前記中央領域に含まれる前記データグリッドの50%以上において前記ウェーハ形状を測定するものであることが好ましい。
【0024】
このように、中央領域のデータグリッドの半数以上において測定するものであることにより、より高精度の平坦度測定を行うことができる。
【0025】
また、前記中央領域の直径を前記ウェーハの直径の50%以下として設定されたものであることが好ましい。
【0026】
このような設定がされたものであれば、平坦度測定の精度をより高く保持することができる。
【0027】
また、前記中央領域において、前記測定を行うデータグリッドと隣り合うデータグリッドでは前記測定を行わないものであることが好ましい。
【0028】
本発明のウェーハの平坦度の評価装置では、このように、中央領域では測定を行うデータグリッドと隣り合うデータグリッドでは測定を行わないものとすることにより、高精度の平坦度測定と測定スループット低下の抑制をより効果的に両立することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のウェーハの平坦度の評価方法は、ウェーハの中央領域におけるウェーハ形状測定を行うデータグリッド数を減らし(間引き)、ウェーハの外周領域では中央領域よりもウェーハ形状測定を行うデータグリッドの密度を上げることにより、高精度の平坦度測定を行うことができるとともに、測定スループット低下を抑制することができる。また、本発明のウェーハの平坦度の評価装置は、ウェーハの中央領域におけるウェーハ形状測定を行うデータグリッド数を減らしたものであるとともにウェーハの外周領域では中央領域よりもウェーハ形状測定を行うデータグリッドの密度が高いものであることにより、高精度の平坦度測定を行うことができるとともに、測定スループット低下を抑制することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ウェーハ表面をデータグリッドに区切った様子を概念的に示し、本発明のウェーハの平坦度の評価方法で測定を行うグリッドを概念的に示した説明図である。
図2】ウェーハ表面をデータグリッドに区切った様子を概念的に示し、従来のウェーハの平坦度の評価方法で測定を行うグリッドを概念的に示した説明図である。
図3】実験例における、同一ウェーハについてのSFQR(max)値を示したグラフである。
図4】実験例における、測定時間の比較を示したグラフである。
図5】実施例1及び比較例1における、同一ウェーハのGBIRの比較を示したグラフである。
図6】実施例1及び比較例1における、同一ウェーハのSFQR(max)の比較を示したグラフである。
図7】実施例1及び比較例1における、同一ウェーハのESFQR(max)の比較を示したグラフである。
図8】実施例1及び比較例1における、測定時間の比較を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上記のように、高精度平坦度測定を考えると、データグリッドの面積が大きいと微妙な変化が平均化されて見えなくなってしまい、高精度化には、データグリッドを例えば200μm以下にすることが必要になる。しかしながら、データグリッドが小さくなることによって1枚のウェーハ測定におけるデータ数が多くなり、測定スループットが低下してしまう。一方、現在のウェーハ加工プロセスから、ウェーハの平坦度が重要になるウェーハ上の領域は、ウェーハ外周領域である。そこで、本発明者らは、ウェーハ面内でのデータ密度をウェーハ面内の位置によって変えて、データ数を下げることで測定スループット低下を抑制することに想到し、本発明を完成させた。
【0032】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
本発明のウェーハの平坦度の評価方法は、平坦度を評価する評価対象のウェーハの表面を、複数のデータグリッドに区切るステップと、データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップと、該測定結果に基づいて、ウェーハの平坦度を算出するステップとを有しており、データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、ウェーハの中央領域では、該中央領域に含まれるデータグリッドのうち一部のデータグリッドで測定するとともに、一部のデータグリッドでは測定しないものとし、中央領域の外側の外周領域では、測定するデータグリッドを中央領域において測定する密度よりも高い密度とする。
【0034】
このような測定条件により、ウェーハの中央領域(ウェーハ中心部)ではデータ密度を粗とし、ウェーハの外周領域(ウェーハ外周部)ではデータ密度を密として演算用データを採取した後、ウェーハの平坦度を算出するステップでは、現行と同じ平坦度パラメータ(GBIR、SFQR(max)、ESFQR(max)等)を演算処理することができる。
【0035】
このようなウェーハ平坦度評価方法は、例えば、以下のようなウェーハの平坦度の評価装置によって行うことができる。すなわち、このウェーハの平坦度の評価装置は、平坦度を評価する評価対象のウェーハの表面を複数のデータグリッドに区切る手段と、データグリッド内のウェーハ形状を測定する手段と、該測定結果に基づいて、ウェーハの平坦度を算出する手段とを具備し、ウェーハの中央領域では、該中央領域に含まれるデータグリッドのうち一部のデータグリッドで測定するとともに、一部のデータグリッドでは測定しないように設定されたものであり、中央領域の外側の外周領域では、測定するデータグリッドを前記中央領域において測定する密度よりも高い密度となるように設定されたものである。
【0036】
ウェーハの平坦度の評価装置において、ウェーハ中心領域を任意に設定できて中心領域の間引き率(所定の範囲内のデータグリッド数に対する測定を行わないデータグリッド数の割合)を任意に設定できる機能を有することが好ましい。また、ウェーハの平坦度の評価装置は、その機能下で平坦度パラメータの演算処理ができる手段を用いることができる。
【0037】
図1に、ウェーハ表面をデータグリッドに区切った様子を概念的に示した。わかりやすさのため、図1に示したグリッドは、実際のウェーハに対するグリッドの大きさより格段に大きいものを示した概念上のものである。実際にはウェーハは例えば直径300mm、グリッドサイズは例えば200μm×200μmである。また、図1は、本発明のウェーハの平坦度の評価方法で測定を行うデータグリッドを網掛けしたグリッドとして概念的に示した説明図である。データグリッドの大きさは適宜設定することができるが、本発明の効果が大きいのは、一辺が200μm以下のデータグリッドとした場合である。
【0038】
図2には、従来のウェーハの平坦度の評価方法で測定を行うグリッドを概念的に示した。従来、図2の網掛け部に示したように、全データグリッドの測定を行って、平坦度評価に用いていた。本発明は、データグリッドの微細化により測定スループットが低下するのに対し、ウェーハ中央領域のデータ数を減らしてスループット低下を抑制した平坦度評価方法である。従来、ウェーハ測定時のデータグリッドは500μm×500μm程度であり、その時のウェーハ面上でのデータはウェーハの中心や外周の位置に関係なく、同じデータ密度により測定、演算がなされていた。データグリッドが500μm程度やそれよりやや小さくなる程度ならば、従来の基準では測定分解能に問題がなかった。また、そのようなデータグリッドが500μm程度の大きさであれば、全データグリッドの測定を行っても、測定スループットが極端に落ちることがなかったため、ウェーハ内でデータ密度を変えずに平坦度評価を行っていた。
【0039】
本発明のウェーハの平坦度評価では、図1の破線で示したウェーハ中央領域において、図1に網掛けグリッドとして示したように、該中央領域に含まれるデータグリッドのうち一部のデータグリッドで測定するとともに、一部のデータグリッドでは測定しないものとする。その一方で、中央領域の外側の外周領域では、測定するデータグリッドの密度を中央領域において測定する密度よりも高くする。すなわち、ウェーハ全面を同じ密度のデータで測定するのではない。ウェーハ中央領域では、グリッドの全データを用いるのではなく、一部のグリッドのデータを間引いて、平坦度測定をする方法である。ウェーハ上の所定の部分におけるデータ密度は、ウェーハの表面のうち当該所定の部分におけるデータグリッドの数に対して、測定するデータグリッドの数として定義される。測定するデータグリッドと測定しないデータグリッドは、偏らせないように均一に分布させることが好ましい。特に、後述するように、隣り合ったデータグリッドについて、一つ飛ばしでデータを間引くことが好ましい。
【0040】
上記のように、平坦度測定でウェーハ形状が重要になるのはウェーハ外周部である。そのため、本発明では、ウェーハ面内のデータグリッドをウェーハ中央領域とウェーハ外周領域で密度を変える(データの間引き)。これにより、データ測定・処理時間を短くすることができる。
【0041】
上記のように、図1の破線で示した内部の領域がウェーハの中央領域である。ウェーハ中央領域は、中央領域の直径を、ウェーハの直径の50%以下とすることが好ましい。ウェーハの中央領域の直径がウェーハの直径の50%であるとき、「ウェーハ直径1/2の面積」と称することがある。図1には、中央領域の直径をウェーハの直径の50%とした状態を示している。
【0042】
このようなウェーハの平坦度の評価方法は、ウェーハの中央領域において測定するデータグリッド数を減らし(間引き)、ウェーハの外周領域では中央領域よりも測定するデータグリッドの密度を上げることにより、高精度の平坦度測定を行うことができるとともに、測定スループット低下を抑制することができる。
【0043】
また、データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、外周領域に含まれるデータグリッドの全てにおいて測定することが好ましい。現在のウェーハ加工プロセスから、ウェーハの平坦度が重要になるウェーハ上の領域は、ウェーハ外周領域であるといえる。従って、外周領域に含まれるデータグリッドの全てにおいて測定することにより、より高精度の平坦度測定を行うことができる。
【0044】
また、データグリッド内のウェーハ形状を測定するステップにおいて、中央領域に含まれるデータグリッドの50%以上(グリッドの半数以上)において測定することが好ましい。これにより、より高精度の平坦度測定を行うことができる。
【0045】
特に、中央領域において、測定を行うデータグリッドと隣り合うデータグリッドでは測定を行わないものとすることができる。この場合は、隣り合ったデータグリッドについて、一つ飛ばしでデータを間引いて、平坦度測定をする方法ということになる。本発明のウェーハの平坦度の評価方法では、このように、中央領域では測定を行うデータグリッドと隣り合うデータグリッドでは測定を行わないものとすることにより、高精度の平坦度測定と測定スループット低下の抑制をより効果的に両立することができる。
【0046】
中央領域において、測定を行うデータグリッドと隣り合うデータグリッドでは測定を行わないものとすることが好ましいが、他の間引き方法とすることもできる。例えば、縦・横方向でデータグリッドを一つ置きに飛ばす他に、二つ置きに飛ばすこと(この場合中央領域のデータ密度がより密になる)や、測定しないデータグリッドを二つ連続させること(この場合中央領域のデータ密度がより粗になる)ができる。
【0047】
以下の実験により、ウェーハ中心部の面積とデータの間引き率によって平坦度パラメータのSFQR(max)が変化しない測定条件を調査した。
【0048】
[実験例]
以下のように、同一ウェーハで中心部領域の範囲と間引き率を変更して平坦度測定を実施した。
【0049】
(実験例1)
本発明の測定データ密度として、ウェーハ外周領域では全データグリッドについて測定し、ウェーハ中央領域ではグリッドを間引きした。なお、データグリッドサイズを200μm×200μmとした。また、ウェーハ中央領域として、以下のように設定した。いずれもウェーハの中心がウェーハ中央領域の中心である。
直径×1/4面積:ウェーハ中央領域の直径がウェーハ直径の1/4である。
直径×1/2面積:ウェーハ中央領域の直径がウェーハ直径の1/2である。
直径×3/4面積:ウェーハ中央領域の直径がウェーハ直径の3/4である。
また、これらのウェーハ中央領域の各設定において、ウェーハ中央領域における間引き率を30%、50%、80%とした。測定するデータグリッドと測定しないデータグリッドは、ウェーハ中央領域の範囲内で偏らないように設定した。測定するデータグリッドと測定しないデータグリッドは、縦・横方向で一つ置きに飛ばすか、二つ置きに飛ばすかで行った。間引き率50%は一つ飛ばしとして行った。
【0050】
(実験例2)
図2で概念を示したように、ウェーハ全面で間引き率0%とした。すなわち、この実験例は従来法である。このとき、ウェーハ中央領域はウェーハ全面であるとも言える。
【0051】
実験例1、2の各実験例において、平坦度測定を実施し、SFQR(max)値の比較を行った。また、各実験例の測定時間を測定して、実験例2(従来法)を基準として短縮した測定時間で比較した。測定時間1未満は従来法より短縮、1より大は遅延である。
【0052】
表1に各実験例におけるSFQR(max)値を示した。また、対応するグラフを図3に示した。
【表1】
【0053】
表2に各実験例における測定時間を示した。また、対応するグラフを図4に示した。
【表2】
【0054】
表1及び図3、並びに、表2及び図4から分かるように、SFQR(max)が変わらないウェーハ中心領域と間引き率は、ウェーハ中心領域が直径の1/2面積であり、ウェーハ中心領域の間引き率が50%である。その時の1枚測定時間短縮は13%であった。
【0055】
高精度化を狙う平坦度評価装置でデータグリッドを200μm以下にした物で、平坦度測定方式をウェーハ全面同一データグリッドで行うものに変えてウェーハ中心領域のデータ密度を間引くことにより、測定・演算時間をウェーハ1枚当たり13%低減することができる。測定値はデータ間引きにより大きく変化はしないことがわかった。
【0056】
このように、測定スループットを改善することにより装置設置面積を小さくすることができ、装置台数を減らすことが可能になり、検査コストを低減できる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1、比較例1)
本発明の方法によるウェーハの平坦度測定と、従来の方法によるウェーハの平坦度測定を、同一ウェーハで行った。また、GBIR、SFQR(max)、ESFQR(max)について数値の比較を行った。その際、ウェーハ1枚当たりの測定時間を確認した。
【0059】
比較テスト条件は以下の通りである。
装置 : フィゾー干渉方式 平坦度測定機
測定ウェーハ : 直径300mm P品、主表面<110>
データグリッド : 200μm□
測定条件:
比較例1:ウェーハ全面を同一データ密度で測定する
実施例1:ウェーハ中央領域と外周領域で異なるデータ密度で測定する。
(ウェーハ中央領域:直径150mm、データ密度:50%間引き)
【0060】
実施例1と比較例1のGBIRの比較を図5に、SFQR(max)の比較を図6に、ESFQR(max)の比較を図7に示した。また、実施例1と比較例1の測定時間比の比較を図8に示した。
【0061】
同一ウェーハを従来方式で測定して算出した平坦度(比較例1)と本発明の方式で測定して算出した平坦度(実施例1)を比較したが、GBIR値、SFQR(max)値、ESFQR(max)値のいずれにもほとんど違いは見られず、ウェーハ中央領域のデータグリッドを間引いても問題が無いことが確認された。また、スループットもデータを間引くことで13%短縮することができた。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8