特許第6973413号(P6973413)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973413
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年11月24日
(54)【発明の名称】シール部材付きウインドウガラス
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/00 20060101AFI20211111BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20211111BHJP
   B60J 10/70 20160101ALI20211111BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20211111BHJP
【FI】
   B60J1/00 H
   B60J1/02 111N
   B60J10/70
   C03C27/12 Z
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-559106(P2018-559106)
(86)(22)【出願日】2017年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2017045814
(87)【国際公開番号】WO2018123777
(87)【国際公開日】20180705
【審査請求日】2020年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-250706(P2016-250706)
(32)【優先日】2016年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】矢島 敏己
(72)【発明者】
【氏名】信岡 淳
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−070414(JP,A)
【文献】 特開2007−314370(JP,A)
【文献】 特表2016−530190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00− 1/20
B60J 10/70
C03C 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口部に取付けられるシール部材付きウインドウガラスであって、
車外側ガラス板と、車内側ガラス板と、前記車外側ガラス板と前記車内側ガラス板との間に挟持された中間膜とを有する合わせガラスと、
前記合わせガラスの周縁部の少なくとも一部に配置されたシール部材と
を備え、
前記車内側ガラス板の板厚は、前記車外側ガラス板の板厚よりも薄く、かつ1.0mm以下であり、
前記車外側ガラス板は、車内側の表面の周縁部に遮蔽層を有し、
前記合わせガラスの外周縁の少なくとも一部の範囲内で、前記外周縁に直交する断面において、前記車内側ガラス板の端部は、前記車外側ガラス板の端部よりも面内方向内側の位置にあり、
前記シール部材は、前記合わせガラスの上辺に配置され、車幅方向に延設される長尺部材であり、
前記シール部材は、前記合わせガラスの車内側に突出するように形成された本体部と、前記遮蔽層を介して前記車外側ガラス板と接着される第1の固定部と、前記第1の固定部から前記車内側ガラス板とは反対方向に突出するように形成されたリップ部と、を有する
ことを特徴とする、シール部材付きウインドウガラス。
【請求項2】
前記遮蔽層と前記第1の固定部とは、接着層を介して接着される
ことを特徴とする、請求項1に記載のシール部材付きウインドウガラス。
【請求項3】
前記リップ部は、弾性部材からなる
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のシール部材付きウインドウガラス。
【請求項4】
前記車内側ガラス板は、車内側の表面において車両の内装材と接し、
前記外周縁から面内方向内側に、順に、前記車外側ガラス板の端部、前記第1の固定部の前記面内方向内側の端部、前記車内側ガラス板の端部、前記内装材の前記面内方向内側の端部、前記遮蔽層の前記面内方向内側の端部、が配置される
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシール部材付きウインドウガラス。
【請求項5】
前記シール部材は、前記車内側ガラス板の車内側の面の周縁部に接着される第2の固定部を有する
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のシール部材付きウインドウガラス。
【請求項6】
前記第2の固定部と前記車内側ガラス板とが接着される領域の面積は、前記遮蔽層上で前記車外側ガラス板と前記第1の固定部とが接着される領域の面積よりも小さい
ことを特徴とする、請求項に記載のシール部材付きウインドウガラス。
【請求項7】
前記第2の固定部の面内方向内側の端部が前記車内側ガラス板の端部よりも面内方向内側に位置するように配置されている
ことを特徴とする、請求項5または6に記載のシール部材付きウインドウガラス。
【請求項8】
前記車内側ガラス板は、車内側の表面において車両の内装材と接し、
前記外周縁から面内方向内側に、順に、前記車外側ガラス板の端部、前記車内側ガラス板の端部、前記第2の固定部の前記面内方向内側の端部、前記内装材の前記面内方向内側の端部、前記遮蔽層の前記面内方向内側の端部、が配置される
ことを特徴とする、請求項またはに記載のシール部材付きウインドウガラス。
【請求項9】
前記車外側ガラス板の板厚が、2.2mm以下である
ことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のシール部材付きウインドウガラス。
【請求項10】
前記車内側ガラス板は化学強化処理されている
ことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のシール部材付きウインドウガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材付きウインドウガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車両の窓ガラスに、第1ガラス板と第2ガラス板を中間膜を介して貼り合わせた合わせガラスが用いられてきた。例えば、特許文献1は、板厚の異なる2枚のガラス板を用いた合わせガラスを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−197288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、窓の剛性を維持しながら車両を軽量化する観点から、車両の窓ガラスに用いられる合わせガラスとして、板厚の大きい第1ガラス板と、板厚の小さい第2ガラス板から構成される異厚合わせガラスが求められている。
【0005】
しかし、特許文献1に開示される合わせガラスにおいて、第2ガラス板は板厚が小さく、剛性が低い。そのため、特許文献1に開示される合わせガラスの第2ガラス板の表面を車内側の面として、該表面にシール部材を配置して、該合わせガラスを車両に取り付けた場合、車両の振動などによる外力がシール部材を介して第2ガラス板に加わると、その外力に対する応力によって第2ガラス板が容易に破損する恐れがあるという問題がある。
【0006】
本発明は、車両の振動などによる外力が加わっても、車内側ガラス板が破損しにくい、シール部材付きウインドウガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るシール部材付きウインドウガラスは、
車両の開口部に取付けられるシール部材付きウインドウガラスであって、
車外側ガラス板と、車内側ガラス板と、前記車外側ガラス板と前記車内側ガラス板との間に挟持された中間膜とを有する合わせガラスと、
前記合わせガラスの周縁部の少なくとも一部に配置されたシール部材と
を備え、
前記車内側ガラス板の板厚は、前記車外側ガラス板の板厚よりも薄く、かつ1.0mm以下であり、
前記車外側ガラス板は、車内側の表面の周縁部に遮蔽層を有し、
前記合わせガラスの外周縁の少なくとも一部の範囲内で、前記外周縁に直交する断面において、前記車内側ガラス板の端部は、前記車外側ガラス板の端部よりも面内方向内側の位置にあり、
前記シール部材は、前記合わせガラスの上辺に配置され、車幅方向に延設される長尺部材であり、
前記シール部材は、前記合わせガラスの車内側に突出するように形成された本体部と、前記遮蔽層を介して前記車外側ガラス板と接着される第1の固定部と、前記第1の固定部から前記車内側ガラス板とは反対方向に突出するように形成されたリップ部と、を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の振動などによる外力が加わった場合でも、車内側ガラス板が破損しにくいシール部材付きウインドウガラスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラスの正面図である。
図2図2は、図1に示すシール部材付きウインドウガラスの、A−A’線に沿って切断して得られる断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラスを車体に取り付けたときの上辺部の要部断面図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラスの正面図である。
図5図5は、図4に示すシール部材付きウインドウガラスの、A−A’線に沿って切断して得られる断面図である。
図6図6は、本発明の第2の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラスを車体に取り付けたときの上辺部の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載される構成要素は例示に過ぎず、本発明の技術範囲を実施の形態のみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス100の一例を示す正面図である。
図2は、図1に示す第1の実施形態のシール部材付きウインドウガラス100の、外周縁に直交する方向に(図1のA−A’線に沿って)切断して得られる断面図である。図2に示すように、第1の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス100は、車外側ガラス板11および車内側ガラス板12と、車外側ガラス板11と車内側ガラス板12との間に挟持された中間膜13とを有する合わせガラス10と、合わせガラス10の周縁部の少なくとも一部に配置されたシール部材20とを備える。
【0012】
本実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス100は、自動車の開口部に取り付けられ、例えば、ウインドシールド、リヤガラス、サイドガラスまたはルーフガラスとして用いられる。
【0013】
中間膜13として、ポリビニルブチラール(PVB)からなる膜が用いられる。特に耐水性が要求される場合は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく用いられる。さらに、アクリル系光重合型プレポリマー、アクリル系触媒重合型プレポリマー、アクリル酸エステル・酢酸ビニルの光重合型プレポリマー、ポリビニルクロライド等も使用可能である。
【0014】
車内側ガラス板12の板厚は、車外側ガラス板11の板厚よりも薄い。車内側ガラス板12の板厚は、好ましくは、0.2mm以上1.0mm以下であり、より好ましくは0.3mm以上0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.4mm以上0.7mm以下である。車内側ガラス板12の板厚を1.0mm以下とすることにより、合わせガラス10を軽量化できる。また、車内側ガラス板12の板厚を0.2mm以上とすることにより、必要な曲げ剛性を確保することができ、車内側ガラス板12の運搬時に作業者は車内側ガラス板12の取り扱いが容易である。
【0015】
なお、車内側ガラス板12は、化学強化ガラスであってもよい。車内側ガラス板12を強化することにより、板厚が薄くても、圧縮応力層が適正に形成され、合わせガラス10の必要な強度が確保される。
【0016】
車外側ガラス板11の板厚は、好ましくは、1.5mm以上2.2mm以下であり、より好ましくは1.7mm以上2.0mm以下である。車外側ガラス板11の板厚を2.2mm以下とすることにより、合わせガラス10を軽量化できる。また、車外側ガラス板11の板厚を1.5mm以上とすることにより、合わせガラス10の必要な曲げ剛性を確保できる。
【0017】
車外側ガラス板11の車内側の面の周縁部には、黒色などの暗色で不透明な遮蔽層14(暗色セラミック層)が全周にわたって帯状に形成されている。遮蔽層14は、合わせガラス10を車体に接着し保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能を有する。遮蔽層14は、車外側ガラス板11の車内側の面の周縁部に、黒色顔料を含有する溶融性ガラスフリットで形成されたセラミックカラー(黒セラミック)ペーストをスクリーン印刷し、加熱によりセラミックカラーペーストをガラス板に焼付け、その後、徐冷する或いは急冷して強化する工法により形成されるが、その他の公知の工法で形成されてもよい。なお、遮蔽層14は、車内側ガラス板12の車外側の面の周縁部、及び/または車内側の面の周縁部にも設けられてもよい。
【0018】
図2に示すように、合わせガラス10の外周縁の少なくとも一部の範囲内で、外周縁に直交する方向に(図1のA−A’線に沿って)切断して得られる断面において、車内側ガラス板12の端部は、車外側ガラス板11の端部よりも面内方向内側の位置にある。このような構造は、車外側ガラス板11と、主面の面積が車外側ガラス板11より小さい車内側ガラス板12とを積層して得られる。
【0019】
合わせガラス10は、車外側ガラス板11の周縁部の少なくとも一部にシール部材20を備える。シール部材20は、合わせガラス10において車幅方向に延設される長尺部材である。なお、図1は、合わせガラス10の上辺にシール部材20が配置される構成を図示するが、本発明はこれに限定されず、合わせガラス10の側辺や下辺にシール部材20が配置されてもよい。
【0020】
図2において、シール部材20は、合わせガラス10の車内側に突出するように形成された本体部21と、遮蔽層14上で車外側ガラス板11に接着される第1の固定部22と、第1の固定部22から車内側ガラス板12とは反対方向に突出するように形成されたリップ部23と、を含む。
【0021】
遮蔽層14と第1の固定部22とは、両方の接着面にプライマー(不図示)が塗布され、接着層(不図示)を介して接着される。接着層は、両面テープや、接着剤であってよい。接着層が両面テープである場合、両面テープは公知のものであってよい。接着層が接着剤である場合、接着剤は特に限定されず、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などを用いることができる。
【0022】
図3は、第1の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス100を車体に取り付けたときの上辺部の要部断面図である。図3に示すように、第1の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス100は、車外側ガラス板11の遮蔽層14上において、車内側ガラス板12の端部とシール部材20との間に設けられた接着部材33を介して、車両のボデーフランジ31の合わせガラス10の車内側の面と対向する部位と接着され、かつ、リップ部23とボデーフランジ31とが当接する。これにより、シール部材付きウインドウガラス100が車体に取り付けられる。
【0023】
接着部材33の材料は特に限定されず、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などを用いることができる。接着部材33が車外側ガラス板11の遮蔽層14上とボデーフランジ31との間に設けられることにより、車外から水分が侵入しにくくなるため、好ましい。なお、図3では、接着部材33はシール部材20と接するように設けられているが、接着部材33はシール部材20と接していなくてもよい。また、接着部材33は車内側ガラス板12と接していてもよい。
【0024】
リップ部23は弾性部材からなり、ボデーフランジ31の合わせガラス10の端面と対向する面(対向面)に当接し、本体部21とボデーフランジ31の対向面との間で付勢されている。
【0025】
本体部21は、ボデーフランジ31と僅かな距離だけ離間することが好ましい。本体部21がボデーフランジ31と僅かな距離だけ離間する場合、車両の振動などによりシール部材付きウインドウガラス100が振動しても、本体部21とボデーフランジ31との接触による雑音が発生せず、好ましい。また、シール部材付きウインドウガラス100に車内側に押し込む外力がかかった場合、シール部材付きウインドウガラス100が車内側に押し込まれる距離は、本体部21とボデーフランジ31との離間距離以内に限定されるため、好ましい。
【0026】
車内側からの意匠性を高めるため、車両の内装材32は、ボデーフランジ31を覆うように設けられる。内装材32の面内方向内側の端部54は、車内側ガラス板12の車内側の面に当接する。
【0027】
第1の実施形態によれば、シール部材付きウインドウガラス100を車体に取り付けた場合、図3に示す断面において、合わせガラス10の外周縁から面内方向内側に、車外側ガラス板11の端部51、第1の固定部22の面内方向内側の端部52、車内側ガラス板12の端部53、内装材32の面内方向内側の端部54、遮蔽層14の面内方向内側の端部55、がこの順に配置される。
【0028】
シール部材20は、第1の固定部22の面内方向内側の端部52が車内側ガラス板12の端部53よりも車外側ガラス板11の端部51側に位置するように配置されている。これにより、シール部材20を車外側ガラス板11の車内側の面の周縁部に形成される遮蔽層14上に設けることができる。
【0029】
また、内装材32は、車内側ガラス板12の端部53が、内装材32の面内方向内側の端部54よりも車外側ガラス板11の端部51側に位置するように配置されている。これにより、車内側ガラス板12の端部53が車内側に露出しないため、外観上好ましい。
【0030】
さらに、内装材32は、内装材32の面内方向内側の端部54が、遮蔽層14の面内方向内側の端部55よりも車外側ガラス板11の端部51側に位置するように配置されている。これにより、車外から内装材32と車内側ガラス12とが当接する箇所が見えないため、外観上好ましい。
【0031】
第1の実施形態に係る合わせガラス10においては、車内側ガラス板12の板厚は1.0mm以下であるため、車内側ガラス板12の剛性は低い。剛性の低い車内側ガラス板12の車内側の面にシール部材20を配置して合わせガラス10を車体に取り付けた場合、車両の振動などによる外力が車内側ガラス板12に加わると、外力に対する応力により車内側ガラス板12が変形する恐れがある。車内側ガラス板12が応力により変形すると、変形に起因した張力が外力に加算されるため、車内側ガラス板12が破損しやすくなるという懸念がある。また、車内側ガラス板12の変形により合わせガラスに中間膜13が剥離するような方向の力が発生すると、合わせガラス10の周縁部に気泡が発生する恐れがある。
【0032】
しかし、板厚が大きく、剛性の高い車外側ガラス板11の車内側の面の周縁部に形成された遮蔽層14上にシール部材20を設けると、車両の振動などによる外力が車外側ガラス板11に加わった場合は、車外側ガラス板11は、剛性が高いため、破損しにくい。さらに、剛性の低い車内側ガラス板12には外力による応力がかからないため、車内側ガラス板12も破損しにくい。さらに、車内側ガラス板12が外力による応力で変形することがないため、中間膜13が剥離するような方向の力が発生せず、合わせガラス10の周縁部に気泡が発生する恐れがない。
【0033】
本発明の第1の実施形態に係るシール材付きウインドウガラス100においては、車両の振動などによる外力が加わっても、車内側ガラス板12が破損しにくい。
【0034】
[第2実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス101の一例を示す正面図である。
図5は、図4に示す第2の実施形態のシール部材付きウインドウガラス101の、外周縁に直交する方向に(図4のA−A’線に沿って)切断して得られる断面図である。図5に示すように、第2の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス101は、車外側ガラス板11および車内側ガラス板12と、車外側ガラス板11と車内側ガラス板12との間に挟持された中間膜13とを有する合わせガラス10と、合わせガラス10の周縁部の少なくとも一部に配置されたシール部材70とを備える。
【0035】
図5において、シール部材70は、合わせガラス10の車内側に突出するように形成された本体部71と、遮蔽層14上で車外側ガラス板11に接着される第1の固定部72と、第1の固定部72から車内側ガラス板12とは反対方向に突出するように形成されたリップ部73と、を含む。第2の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス101は、車内側ガラス板12の車内側の面の周縁部に接着される第2の固定部74を有する点で、第1の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス100と異なっている。なお、その他の構成要素については、第1の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス100と同様であるので、対応する構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0036】
遮蔽層14と第1の固定部72とは、両方の接着面にプライマー(不図示)が塗布され、接着層(不図示)を介して接着される。接着層は、両面テープや、接着剤であってよい。接着層が両面テープである場合、両面テープは公知のものであってよい。接着層が接着剤である場合、接着剤は特に限定されず、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などを用いることができる。
【0037】
第2の固定部74は、車内側ガラス板12の車内側の面の周縁部に接着される。車内側ガラス板12と第2の固定部74とは、両方の接着面にプライマー(不図示)が塗布され、接着層(不図示)を介して接着される。接着層は、両面テープや、接着剤であってよい。接着層が両面テープである場合、両面テープは公知のものであってよい。接着層が接着剤である場合、接着剤は特に限定されず、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤などを用いることができる。
【0038】
図6は、第2の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス101を車体に取り付けたときの上辺部の要部断面図である。図6に示すように、第2の実施形態に係るシール部材付きウインドウガラス101は、車内側ガラス板12の車内側の面上に設けられた接着部材33を介して、車両のボデーフランジ31の合わせガラス10の車内側の面と対向する部位と接着され、かつ、リップ部73とボデーフランジ31とが当接する。これにより、シール部材付きウインドウガラス101が車体に取り付けられる。
【0039】
図6に示すように、接着部材33が車内側ガラス板12の車内側の面とボデーフランジ31との間に設けられることにより、車外から水分が侵入しにくくなるため、好ましい。なお、図6では、接着部材33はシール部材70と接するように設けられているが、接着部材33はシール部材70と接していなくてもよい。
【0040】
リップ部73は弾性部材からなり、ボデーフランジ31の合わせガラス10の端面と対向する面(対向面)に当接し、本体部21とボデーフランジ31の対向面との間で付勢されている。
【0041】
本体部71は、ボデーフランジ31と僅かな距離だけ離間することが好ましい。本体部71がボデーフランジ31と僅かな距離だけ離間する場合、車両の振動などによりシール部材付きウインドウガラス101が振動しても、本体部71とボデーフランジ31との接触による雑音が発生せず、好ましい。また、シール部材付きウインドウガラス101に車内側に押し込む外力がかかった場合、シール部材付きウインドウガラス101が、車内側に押し込まれる距離は、本体部71とボデーフランジ31との離間距離以内に限定されるため、好ましい。
【0042】
車内側からの意匠性を高めるため、車両の内装材32は、ボデーフランジ31を覆うように設けられる。内装材32の面内方向内側の端部74は、車内側ガラス板12の車内側の面に当接する。
【0043】
第2の実施形態によれば、シール部材付きウインドウガラス101を車体に取り付けた場合、図6に示す断面において、合わせガラス10の外周縁から面内方向内側に、車外側ガラス板11の端部91、車内側ガラス板12の端部93、第2の固定部74の面内方向内側の端部96、内装材32の面内方向内側の端部74、遮蔽層14の面内方向内側の端部95、がこの順に配置される。
【0044】
シール部材70は、第2の固定部74の面内方向内側の端部96が車内側ガラス板12の端部93よりも面内方向内側に位置するように配置されている。これにより、車内側ガラス板12と中間膜13の端部が露出せず、好ましい。
【0045】
また、内装材32は、第2の固定部74の面内方向内側の端部96が、内装材32の面内方向内側の端部94よりも車外側ガラス板11の端部91側に位置するように配置されている。これにより、第2の固定部74の面内方向内側の端部96が車内側に露出しないため、外観上好ましい。
【0046】
さらに、内装材32は、内装材32の面内方向内側の端部94が、遮蔽層14の面内方向内側の端部95よりも車外側ガラス板11の端部91側に位置するように配置されている。これにより、車外から内装材32と車内側ガラス12とが当接する箇所が見えないため、外観上好ましい。
【0047】
第2の実施形態において、第2の固定部74と車内側ガラス板12とが接着される領域の面積は、第1の固定部72と遮蔽層14上で車外側ガラス板11とが接着される領域の面積よりも小さいことが好ましい。第2の固定部74と車内側ガラス板12とが接着される領域の面積が第1の固定部72と遮蔽層14上で車外側ガラス板11と接着される領域の面積よりも小さい場合、車両の振動などによる外力は、主として車外側ガラス板11にかかり、車内側ガラス板12にはほとんどかからない。
【0048】
第2の固定部74は、第1の固定部72の面内方向内側の端部96から、車内側ガラス板12の端部93を覆うように設けられてもよい。第2の固定部74が、第1の固定部72の面内方向内側の端部96から車内側ガラス板12の端部93を覆うように設けられると、車内側ガラス12の端部と中間膜13の端部とが外部に露出しない。これにより、外部から水分が合わせガラス10とボデーフランジ31の間に侵入しても、水分が中間膜13の端部と接しにくく、車内側ガラス板12が破損しにくくなり、好ましい。
【0049】
本発明の第2の実施形態に係るシール材付きウインドウガラス101においては、車両の振動などによる外力が加わっても、車内側ガラス板12が破損しにくい。
【0050】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細は、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るシール部材付きウインドウガラスは自動車の開口部に好適に用いられるが、線路上を走行する列車、機関車、電車、道路上を走行する乗用車、輸送車など、あらゆる車両に適用可能である。さらに、本発明に係るシール部材付きウインドウガラスは車両に限定されず、航空機、船舶などの輸送機関にも適用可能である。
【0052】
本国際特許出願は、2016年12月26日に出願した日本国特許出願第2016−250706号に基づきその優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2016−250706号の全内容を参照によりここに援用する。
【符号の説明】
【0053】
100、101 シール部材付きウインドウガラス
10 合わせガラス
11 車外側ガラス板
12 車内側ガラス板
13 中間膜
14 遮蔽層
20 シール部材
21、71 本体部
22、72 第1の固定部
23、73 リップ部
74 第2の固定部
31 ボデーフランジ
32 内装材
33 接着部材
51、91 車外側ガラス板の端部
52 第1の固定部の面内方向内側の端部
53、93 車内側ガラス板の端部
54、94 内装材の面内方向内側の端部
55、95 遮蔽層の面内方向内側の端部
96 第2の固定部の面内方向内側の端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6