(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱硬化性樹脂組成物中の分子内にオキシラン環またはオキセタン環を2個以上含むエポキシ化合物の合計100重量部に対し、エポキシ硬化剤(C)を1〜380重量部含む、請求項1〜3の何れか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の熱硬化性樹脂組成物(以下「本発明の組成物」ともいう。)、該組成物の調製方法、硬化膜の形成方法、硬化膜付き基板および電子部品について詳細に説明する。
【0033】
1.熱硬化性樹脂組成物
本発明の組成物は、ポリエステルアミド酸(A)、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)、および、エポキシ硬化剤(C)を含有する。本発明の組成物は、前記成分のほか、添加剤を含有してもよく、有色、無色のどちらであってもよい。
このような本発明の組成物によれば、硬度、高透明性、ガラスやITOに対する密着性、およびシュウ酸を含むITOエッチング液への耐性にバランスよく優れる硬化膜を得ることができる。このため、本発明の組成物によれば、タッチパネル用の透明絶縁膜やオーバーコートを生産性よく作成することが可能である。従って、本発明の組成物は、これらの用途に好適に用いることができる。
【0034】
本発明の組成物は、ポリエステルアミド酸(A)、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)、および、エポキシ硬化剤(C)を含有することで初めて、前記効果に優れる、特に、ガラスおよびITO等に対する密着性に優れる硬化膜が得られる。
従来の、ポリエステルアミド酸からなる組成物や、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物およびエポキシ硬化剤からなる組成物では、これらの基板、特にITOに対する密着性、特に、ITOに対する密着性に優れる硬化膜は得られなかった。
従って、本発明の組成物は、従来の組成物からでは予期しえない効果を有する組成物であり、従来の、ポリエステルアミド酸からなる組成物や、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物およびエポキシ硬化剤からなる組成物の相乗効果を有する組成物である。
【0035】
1.1. ポリエステルアミド酸(A)
本発明で用いられるポリエステルアミド酸(A)は、特に制限されないが、エステル結合、アミド結合およびカルボキシル基を有する化合物であることが好ましく、具体的には、式(3)および(4)で示される構成単位を有する化合物であることがより好ましい。
このようなポリエステルアミド酸(A)を特定のエポキシ化合物およびエポキシ硬化剤と組み合わせて使用することで初めて、硬度、高透明性およびシュウ酸を含むITOエッチング液への耐性にバランスよく優れ、さらには、ガラスやITOに対する密着性に優れる硬化膜を形成可能な組成物が得られる。
ポリエステルアミド酸(A)は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0036】
【化2】
(R
1は独立に炭素数1〜30の4価の有機基であり、R
2は炭素数1〜40の2価の有機基であり、R
3は炭素数1〜20の2価の有機基である。)
【0037】
組成物中の他の成分との相溶性が良い化合物が得られ、高透明性の硬化膜が得られる等の点から、R
1は独立に、炭素数2〜25の4価の有機基であることが好ましく、炭素数2〜20の4価の有機基であることがより好ましく、式(5)で表される基であることがさらに好ましい。
【0038】
【化3】
(式(5)において、R
4は、−O−、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−R
5−または−COO−R
5−OCO−(R
5は独立に、炭素数1〜4のアルキル基である。)である。)
【0039】
組成物中の他の成分との相溶性が良い化合物が得られ、高透明性でガラスやITOへの密着性が良好な硬化膜が得られる等の点から、R
2は、炭素数2〜35の2価の有機基であることが好ましく、炭素数2〜30の2価の有機基であることがより好ましく、式(6)で表される基であることがさらに好ましい。
【0040】
【化4】
(式(6)において、R
6は、−O−、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−R
7−または−O−ph−R
8−ph−O−である(phはベンゼン環であり、R
8は、−O−、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−または−R
7−である。)。なお、R
7は独立に、炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0041】
高透明性の硬化膜が得られる等の点から、R
3は、炭素数2〜15の2価の有機基であることが好ましく、式(7)で表される基、−R
10−NR
11−R
12−(R
10およびR
12は独立に、炭素数1〜8のアルキレンであり、R
11は、水素または少なくとも1つの水素がヒドロキシルで置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキルである。)、炭素数2〜15のアルキレン、または、炭素数2〜15のアルキレンの少なくとも1つの水素がヒドロキシルで置換されていてもよく、−O−を有していてもよい基であることがより好ましく、炭素数2〜6の2価のアルキレンであることがさらに好ましい。
【0042】
【化5】
(式(7)において、R
9は、−O−、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−、−R
7−または−ph−R
8−ph−である(phはベンゼン環であり、R
8は、−O−、−CO−、−SO
2−、−C(CF
3)
2−または−R
7−である。)。なお、R
7は独立に、炭素数1〜4のアルキル基である。)
【0043】
ポリエステルアミド酸(A)は、テトラカルボン酸二無水物(a1)を含む成分、ジアミン(a2)を含む成分および多価ヒドロキシ化合物(a3)を含む成分を反応させることにより得られる化合物であることが好ましく、テトラカルボン酸二無水物(a1)を含む成分、ジアミン(a2)を含む成分、多価ヒドロキシ化合物(a3)を含む成分および1価アルコール(a4)を含む成分を反応させることにより得られる化合物であることも好ましい。
つまり、式(3)および(4)中、R
1は独立に、テトラカルボン酸二無水物残基であり、R
2はジアミン残基であり、R
3は多価ヒドロキシ化合物残基であることが好ましい。
なお、この反応の際には、反応溶媒(a5)等を用いてもよい。
前記テトラカルボン酸二無水物(a1)を含む成分には、テトラカルボン酸二無水物(a1)が含まれていればよく、この化合物以外の他の化合物が含まれていてもよい。このことは、前記の他の成分についても同様である。
これらの(a1)〜(a5)等はそれぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0044】
ポリエステルアミド酸(A)が分子末端に酸無水物基を有している場合には、必要により、1価アルコール(a4)を反応させた化合物であることが好ましい。1価アルコール(a4)を用いて得られるポリエステルアミド酸(A)は、エポキシ化合物(B)およびエポキシ硬化剤(C)との相溶性に優れる化合物になる傾向があるとともに、塗布性に優れる組成物が得られる傾向にある。
【0045】
1.1.1. テトラカルボン酸二無水物(a1)
テトラカルボン酸二無水物(a1)としては特に制限されないが、具体例として、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物およびエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(商品名;TMEG−100、新日本理化(株)製)等の芳香族テトラカルボン酸二無水物;シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物およびシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物等の脂環式テトラカルボン酸二無水物;ならびに、エタンテトラカルボン酸二無水物およびブタンテトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0046】
これらの中でも透明性の良好な化合物が得られる等の点から、3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'−ジフェニルエ−テルテトラカルボン酸二無水物、2,2−[ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物およびエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(商品名;TMEG−100、新日本理化(株)製)が好ましく、3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物および3,3',4,4'−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0047】
1.1.2. ジアミン(a2)
ジアミン(a2)としては特に制限されないが、具体例として、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル][3−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンおよび2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。
【0048】
これらの中でも透明性の良好な化合物が得られる等の点から、3,3'−ジアミノジフェニルスルホンおよびビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンが好ましく、3,3'−ジアミノジフェニルスルホンが特に好ましい。
【0049】
1.1.3. 多価ヒドロキシ化合物(a3)
多価ヒドロキシ化合物(a3)は、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物であれば特に制限されないが、具体例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量1,000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、分子量1,000以下のポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2−ヘプタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,2,7−ヘプタントリオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、3,6−オクタンジオール、1,2,8−オクタントリオール、1,2−ノナンジオール、1,9−ノナンジオール、1,2,9−ノナントリオール、1,2−デカンジオール、1,10−デカンジオール、1,2,10−デカントリオール、1,2−ドデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが挙げられる。
【0050】
これらの中でもエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオールおよび1,8−オクタンジオールが好ましく、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールが反応溶媒(a5)への溶解性が良好である等の点から特に好ましい。
【0051】
1.1.4. 1価アルコール(a4)
1価アルコール(a4)は、ヒドロキシ基を1つ有する化合物であれば特に制限されないが、具体例として、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、フェノール、ボルネオール、マルトール、リナロール、テルピネオール、ジメチルベンジルカルビノールおよび3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンが挙げられる。
【0052】
これらの中でもイソプロピルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、ヒドロキシエチルメタクリレート、プロピレングリコールモノエチルエーテルおよび3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンが好ましい。得られるポリエステルアミド酸(A)と、エポキシ化合物(B)およびエポキシ硬化剤(C)との相溶性や、得られる組成物のガラスやITO上への塗布性を考慮すると、1価のアルコール(a4)としては、ベンジルアルコールがより好ましい。
【0053】
1.1.5. 反応溶媒(a5)
反応溶媒(a5)としては特に制限されないが、具体例として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、N−メチル−2−ピロリドンおよびN,N−ジメチルアセトアミドが挙げられる。
【0054】
これらの中でも溶解性の点からプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、3−メトキシプロピオン酸メチルおよびN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
なお、反応溶媒(a5)としては、具体的にはこれらの溶媒が挙げられるが、これらの溶媒に、前記反応に用いる溶媒全量に対して30重量%以下の割合であれば、該溶媒以外の他の溶媒を混合した混合溶媒を用いることもできる。
【0055】
《ポリエステルアミド酸(A)の合成》
ポリエステルアミド酸(A)の合成方法は、特に制限されないが、テトラカルボン酸二無水物(a1)、ジアミン(a2)、多価ヒドロキシ化合物(a3)、および、必要により1価アルコール(a4)を必須成分として反応させる方法が好ましく、この反応を反応溶媒(a5)中で行うことがより好ましい。
【0056】
この反応の際の各成分の添加順序は、特にこだわらない。即ち、テトラカルボン酸二無水物(a1)、ジアミン(a2)および多価ヒドロキシ化合物(a3)を同時に反応溶媒(a5)に加えて反応させてもよいし、ジアミン(a2)および多価ヒドロキシ化合物(a3)を反応溶媒(a5)中に溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物(a1)を添加して反応させてもよいし、または、テトラカルボン酸二無水物(a1)とジアミン(a2)とを予め反応させた後、その反応生成物に多価ヒドロキシ化合物(a3)を添加して反応させてもよく、いずれの方法も用いることができる。
なお、1価アルコール(a4)は反応のどの時点で添加してもよい。
【0057】
また、前記反応の際には、得られるポリエステルアミド酸(A)の重量平均分子量を大きくするために、酸無水物基を3個以上有する化合物を添加して合成反応を行ってもよい。酸無水物基を3個以上有する化合物の具体例としては、スチレン−無水マレイン酸共重合体を挙げることができる。
【0058】
このようにして合成されたポリエステルアミド酸は前記式(3)および(4)で示される構成単位を含み、その末端は原料であるテトラカルボン酸二無水物、ジアミンまたは多価ヒドロキシ化合物それぞれに由来する、酸無水物基、アミノ基またはヒドロキシ基であるか、またはこれら化合物以外の成分由来の基(例えば、1価アルコール残基)である。
【0059】
前記反応の際の、テトラカルボン酸二無水物(a1)、ジアミン(a2)および多価ヒドロキシ化合物(a3)の使用量をそれぞれ、Xモル、YモルおよびZモルとした場合、X、YおよびZの間には、式(1)および式(2)の関係が成立することが好ましい。このような量で各成分を用いることで、下記溶媒(D)への溶解性が高いポリエステルアミド酸(A)が得られ、塗布性に優れる組成物が得られ、平坦性に優れる硬化膜を得ることができる。
0.2≦Z/Y≦8.0 ・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦1.5 ・・・(2)
【0060】
式(1)の関係は、好ましくは0.7≦Z/Y≦7.0であり、より好ましくは1.3≦Z/Y≦7.0である。また、式(2)の関係は、好ましくは0.3≦(Y+Z)/X≦1.2であり、より好ましくは0.4≦(Y+Z)/X≦1.0である。
【0061】
前記反応の際の1価アルコール(a4)の使用量をZ'モルとした場合、その使用量は特に制限されないが、好ましくは0.1≦Z'/X≦5.0であり、より好ましくは0.2≦Z'/X≦4.0である。
【0062】
反応溶媒(a5)は、テトラカルボン酸二無水物(a1)、ジアミン(a2)および多価ヒドロキシ化合物(a3)の合計100重量部に対し、100重量部以上使用すると、反応がスムーズに進行するため好ましい。
【0063】
前記反応は40〜200℃で、0.2〜20時間行うことが好ましい。
【0064】
《ポリエステルアミド酸(A)の物性、使用量等》
ポリエステルアミド酸(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量は、溶媒(D)に対する溶解性や、特にエポキシ化合物(B)と併用することで、透明性、ガラスやITOに対する密着性および耐薬品性のバランスがとれた硬化膜が得られる等の観点から、2,000〜30,000であることが好ましく、3,000〜30,000であることがより好ましい。
この重量平均分子量は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0065】
ポリエステルアミド酸(A)の粘度は、得られるポリエステルアミド酸(A)の取り扱い性、重量平均分子量を前記好ましい範囲に調節する等の点から、25℃において好ましくは5〜200mPa・s、より好ましくは10〜150mPa・s、さらに好ましくは15〜100mPa・sである。
【0066】
ポリエステルアミド酸(A)の含有量は、高透明で耐薬品性に優れる硬化膜が得られる等の点から、本発明の組成物の固形分(該組成物から溶剤を除いた残分)100重量%に対し、好ましくは1〜60重量%、より好ましくは5〜55重量%、さらに好ましくは5〜50重量%である。
【0067】
1.2. フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)
本発明に用いられるエポキシ化合物(B)は、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物であれば特に限定されない。このようなエポキシ化合物(B)は、分解温度が高く、耐熱安定性に優れるため、高透明性などの前記効果に加え、これらの効果を併せ持つ硬化膜を得ることができる。
エポキシ化合物(B)は、通常、分子内にオキシラン環またはオキセタン環を2個以上含むエポキシ化合物である。
エポキシ化合物(B)は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0068】
エポキシ化合物(B)のエポキシ当量は、耐薬品性に優れる硬化膜が得られる等の点から、好ましくは200〜550g/eqであり、より好ましくは220〜490g/eq、さらに好ましくは240〜480g/eqである。
エポキシ化合物(B)のエポキシ当量は、例えばJIS K7236に記載の方法で測定することができる。
【0069】
エポキシ化合物(B)の屈折率は、高透明性に優れる硬化膜が得られる等の点から、好ましくは1.50〜1.75であり、より好ましくは1.52〜1.73であり、さらに好ましくは1.54〜1.71である。
エポキシ化合物(B)の屈折率は、例えばJIS K7105やJIS K7142に記載の方法で測定することができる。
【0070】
エポキシ化合物(B)は、合成して得てもよく、市販品でもよい。
エポキシ化合物(B)の市販品としては、例えば、OGSOL PG−100(商品名、大阪ガスケミカル(株)製、屈折率1.64、エポキシ当量259g/eq)、OGSOL CG−500(商品名、大阪ガスケミカル(株)製、屈折率1.70、エポキシ当量311g/eq)、OGSOL EG−200(商品名、大阪ガスケミカル(株)製、屈折率1.62、エポキシ当量292g/eq)、OGSOL EG−250(商品名、大阪ガスケミカル(株)製、屈折率1.58、エポキシ当量417g/eq)、OGSOL EG−280(商品名、大阪ガスケミカル(株)製、屈折率1.56、エポキシ当量467g/eq)、OGSOL CG−400(屈折率1.53、エポキシ当量540g/eq)が挙げられる。
【0071】
エポキシ化合物(B)として、屈折率が1.60以上でエポキシ当量が280g/eq未満の化合物、例えば、OGSOL PG−100を使用する場合、エポキシ化合物(B)の組成物中の他の成分との溶解性等の観点から、屈折率が1.70以下でエポキシ当量が280g/eqを超えるエポキシ化合物(B)を併用することが好ましく、この場合、本発明の組成物に含まれる全エポキシ化合物(B)中、屈折率が1.60以上でエポキシ当量が280g/eq未満の化合物の含有量を70重量%以下にすることが好ましく、65重量%以下にするとより好ましく、60重量%以下にするとさらに好ましい。
【0072】
エポキシ化合物(B)として、屈折率が1.68以上でエポキシ当量が400g/eq以下の化合物、例えば、OGSOL CG−500を使用すると、本発明の組成物から得られる硬化膜は特に高硬度となる。一方で透明性が低下する傾向にあるため、屈折率1.68未満でエポキシ当量が200g/eq以上のエポキシ化合物(B)を併用することで、硬度、透明性にバランス良く優れる硬化膜が得られる。この際、本発明の組成物に含まれる全エポキシ化合物(B)中、屈折率が1.68以上でエポキシ当量が400g/eq以下の化合物の含有量を90重量%以下にすることが好ましく、80重量%以下にするとより好ましく、70重量%以下にするとさらに好ましい。
【0073】
エポキシ化合物(B)として、屈折率が1.60未満でエポキシ当量が300g/eq以上の化合物、例えば、OGSOL EG−280を使用する場合、本発明の組成物から得られる硬化膜は特にガラスやITOに対する密着性および透明性が良好となる。このため、本発明の樹脂組成物に含まれる全エポキシ化合物(B)中、屈折率が1.60未満でエポキシ当量が300g/eq以上の化合物の配合量を3重量%以上にすることが好ましく、5重量%以上にするとより好ましく、10重量%以上にするとさらに好ましい。
【0074】
エポキシ化合物(B)の含有量は、耐熱性、耐薬品性およびガラスやITOに対する密着性にバランスよく優れる硬化膜が得られる等の点から、本発明の組成物の固形分(該組成物から溶剤を除いた残分)100重量%に対し、好ましくは1〜90重量%、より好ましくは3〜80重量%、さらに好ましくは5〜70重量%であり、ポリエステルアミド酸(A)100重量部に対し、好ましくは10〜400重量部、より好ましくは20〜350重量部、さらに好ましくは30〜300重量部である。
【0075】
1.3. エポキシ硬化剤(C)
本発明の組成物には、エポキシ硬化剤(C)が配合され、このことにより、耐熱性および耐薬品性に優れる硬化膜が得られる。
エポキシ硬化剤(C)としては、ポリエステルアミド酸(A)とは異なる化合物であり、具体的には、酸無水物系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、ポリフェノール系硬化剤および触媒型硬化剤などが挙げられるが、耐着色性および耐熱性等の点から酸無水物系硬化剤が好ましい。
エポキシ硬化剤(C)は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0076】
酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸などの脂肪族ジカルボン酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;スチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。これらの中でも、溶媒(D)に対する溶解性に優れる化合物が得られ、耐熱性に優れる硬化膜が得られる等の点から、無水トリメリット酸が特に好ましい。
【0077】
エポキシ硬化剤(C)の含有量は、硬度、シュウ酸水溶液などの薬品に対する耐薬品性およびガラスやITOに対する密着性にバランスよく優れる硬化膜が得られる等の点から、本発明の組成物の固形分(該組成物から溶剤を除いた残分)100重量%に対し、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは0.2〜50重量%、さらに好ましくは0.3〜45重量%であり、本発明の組成物中の分子内にオキシラン環またはオキセタン環を2個以上含むエポキシ化合物の合計100重量部に対し、好ましくは1〜380重量部、より好ましくは3〜350重量部、さらに好ましくは5〜150重量部である。
なお、前記本発明の組成物中の分子内にオキシラン環またはオキセタン環を2個以上含むエポキシ化合物の合計としては、好ましくはエポキシ化合物(B)およびエポキシ化合物(e)の合計である。
【0078】
また、用いるエポキシ化合物(B)とエポキシ硬化剤(C)との比率は、耐熱性および耐薬品性に優れる硬化膜が得られる等の点から、用いるエポキシ化合物(B)中のエポキシ基量に対し、エポキシ硬化剤中の酸無水物基やカルボキシル基等のエポキシ基と反応し得る基の量が0.2〜2倍当量であることが好ましく、0.5〜1.5倍当量であると、得られる硬化膜の耐薬品性が一層向上するためさらに好ましい。なお、このとき、例えば、エポキシ化合物(B)として、エポキシ基を1つ有する化合物を1当量用い、エポキシ硬化剤(C)として、酸無水物基を1つ有する化合物を1当量用いる場合、エポキシ化合物(B)に対するエポキシ硬化剤(C)の量は、2倍当量であるとする。
【0079】
1.4. 溶媒(D)
本発明の組成物は、例えば、ポリエステルアミド酸(A)、エポキシ化合物(B)およびエポキシ硬化剤(C)を溶媒(D)に溶解して得ることができる。したがって、溶媒(D)は、ポリエステルアミド酸(A)、エポキシ化合物(B)およびエポキシ硬化剤(C)を溶解することができる溶媒であることが好ましい。また、単独ではポリエステルアミド酸(A)、エポキシ化合物(B)およびエポキシ硬化剤(C)を溶解しない溶媒であっても、他の溶媒と混合することによって、溶媒(D)として用いることが可能になる場合がある。
溶媒(D)は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0080】
溶媒(D)としては、例えば、乳酸エチル、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、シクロヘキサノン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチレングリコールモノビニルエーテル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、1−ビニル−2−ピロリドン、1−ブチル−2−ピロリドン、1−エチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1−アセチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、N−メチル−ε−カプロラクタム、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−ヘキサノラクトン、δ−ヘキサノラクトン、メチルエチルスルホキシド、ジメチルスルホキシドおよび出光興産(株)製エクアミド(商品名)が挙げられる。
【0081】
これらの中でも、ポリエステルアミド酸(A)、エポキシ化合物(B)およびエポキシ硬化剤(C)に対する溶解性の点で、本発明の組成物は、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシドおよび出光興産(株)製エクアミド(商品名)からなる群より選択される少なくとも1種を、溶媒(D)として含むことが好ましい。
【0082】
1.5. 添加剤
本発明の組成物は、目的とする特性に応じて、ポリエステルアミド酸(A)、エポキシ化合物(B)およびエポキシ硬化剤(C)以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、分子内にオキシラン環またはオキセタン環を2個以上含むエポキシ化合物(e)、ポリイミド樹脂、重合性モノマー(j)、帯電防止剤、カップリング剤(f)、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤(g)、界面活性剤(h)、エポキシ硬化促進剤(i)、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマーが挙げられる。また、所望の用途に応じて顔料または染料を含有してもよい。添加剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0083】
1.5.1. 分子内にオキシラン環またはオキセタン環を2個以上含むエポキシ化合物(e)
本発明において、エポキシ化合物(e)は、エポキシ化合物(B)以外のエポキシ化合物を指す。
エポキシ化合物(e)としては、オキシラン環を2つ以上有する化合物が好ましく用いられる。エポキシ化合物(e)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0084】
エポキシ化合物(e)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、オキシラン環を有するモノマーの重合体、オキシラン環を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0085】
オキシラン環を有するモノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、次の構造で示される化合物が挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートのことを指し、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルのことを指す。
【0087】
式(1)中、Rは独立に、炭素数1〜45のアルキル、炭素数4〜8のシクロアルキル、アリールおよびアリールアルキルから選択される基であり;炭素数1〜45のアルキルにおいて、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、隣接しない任意の−CH
2−は−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよく;アリールアルキルにおけるアルキルの炭素数は1〜10であり、該アルキルの隣接しない任意の−CH
2−は−O−で置き換えられてもよく;R
11およびR
12はそれぞれ独立に、炭素数1〜4のアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびフェニルから選択される基であり;X
1はオキシラニル、オキシラニレン、3,4−エポキシシクロヘキシル、オキセタニルおよびオキセタニレンのいずれか1つを有する基である。
【0088】
オキシラン環を有するモノマーと共重合を行う他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミドが挙げられる。
【0089】
オキシラン環を有するモノマーの重合体およびオキシラン環を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体の好ましい具体例としては、ポリグリシジルメタクリレート、メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体、ベンジルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体、n−ブチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートとグリシジルメタクリレートとの共重合体、スチレンとグリシジルメタクリレートとの共重合体が挙げられる。本発明の組成物がこれらのエポキシ化合物を含有すると、当該組成物から形成される硬化膜の耐熱性がさらに良好となるため好ましい。
【0090】
エポキシ化合物の具体例としては、「807」、「815」、「825」、「827」、「828」、「828EL」、「871」、「872」、「190P」、「191P」、「1001」、「1004」、「1004AF」、「1007」、「1256」、「157S70」、「1032H60」(以上商品名、三菱化学(株)製)、「アラルダイトCY177」、「アラルダイトCY184」(以上商品名、BASF社製)、「セロキサイド2021P」、「セロキサイド3000」、「セロキサイド8000」、「EHPE−3150」(以上商品名、(株)ダイセル製)、「TECHMORE VG3101L」(商品名、(株)プリンテック製)、「HP7200」、「HP7200H」、「HP7200HH」(以上商品名、DIC(株)製)、「NC−3000」、「NC−3000H」、「EPPN−501H」、「EOCN−102S」、「EOCN−103S」、「EOCN−104S」、「EPPN−501H」、「EPPN−501HY」、「EPPN−502H」、「EPPN−201−L」(以上商品名、日本化薬(株)製)、「TEP−G」(商品名、旭有機材工業(株)製)、「MA−DGIC」、「Me−DGIC」、「TG−G」(以上商品名、四国化成工業(株)製)、「TEPIC-VL」(商品名、日産化学工業(株)製)、「FLEP−10」、「FLEP−50」、「FLEP−60」、「FLEP−80」(以上商品名、東レチオコール(株)製)、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンが挙げられる。これらの中でも、商品名「アラルダイトCY184」、商品名「セロキサイド2021P」、商品名「TECHMORE VG3101L」、商品名「828」を含む組成物は、平坦性が特に良好な硬化膜を得ることができるため好ましい。
【0091】
本発明の組成物中のエポキシ化合物(e)の濃度は特に限定されないが、耐熱性、およびガラスやITOに対する密着性にバランスよく優れる硬化膜が得られる等の点から、本発明の組成物の固形分(該組成物から溶剤を除いた残分)中に0〜50重量%含まれていることが好ましく、0〜40重量%含まれていることがより好ましい。
【0092】
1.5.2. ポリイミド樹脂
ポリイミド樹脂としては、イミド基を有していれば特に限定されない。
ポリイミド樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0093】
ポリイミド樹脂は、例えば、酸二無水物とジアミンとを反応させて得られるアミド酸を、イミド化することで得られる。酸二無水物としては、例えば、ポリエステルアミド酸(A)の合成に用いることのできるテトラカルボン酸二無水物(a1)が挙げられる。ジアミンとしては、例えば、ポリエステルアミド酸(A)の合成に用いることのできるジアミン(a2)が挙げられる。
【0094】
本発明の組成物がポリイミド樹脂を含む場合、本発明の組成物中のポリイミド樹脂の濃度は特に限定されないが、耐熱性および耐薬品性がさらに良好である硬化膜が得られる等の点から、0.1〜20重量%が好ましく、0.1〜10重量%がさらに好ましい。
【0095】
1.5.3. 重合性モノマー(j)
重合性モノマー(j)としては、例えば、単官能重合性モノマー、二官能(メタ)アクリレート、三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
重合性モノマーは1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0096】
本発明の組成物が重合性モノマーを含む場合、本発明の組成物中の重合性モノマーの濃度は特に限定されないが、耐薬品性、表面硬度がさらに良好である硬化膜が得られる等の点から、本発明の組成物の固形分(該組成物から溶剤を除いた残分)中に10〜80重量%含まれていることが好ましく、20〜70重量%含まれていることがさらに好ましい。
【0097】
単官能重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールのエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシエチルオキセタン、p−ビニルフェニル−3−エチルオキセタ−3−イルメチルエーテル、2−フェニル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、2−トリフロロメチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、4−トリフロロメチル−2−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、クロルメチルスチレン、ビニルトルエン、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、α−クロルアクリル酸、ケイ皮酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、こはく酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、マレイン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、シクロヘキセン−3,4−ジカルボン酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]が挙げられる。
【0098】
二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0099】
三官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0100】
1.5.4. 帯電防止剤
帯電防止剤は、本発明の組成物の帯電を防止するために使用することができ、本発明の組成物が帯電防止剤を含む場合、本発明の組成物中、0.01〜1重量%の量で用いられることが好ましい。
帯電防止剤としては、公知の帯電防止剤を用いることができる。具体的には、酸化錫、酸化錫・酸化アンチモン複合酸化物、酸化錫・酸化インジウム複合酸化物などの金属酸化物;四級アンモニウム塩等が挙げられる。
帯電防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0101】
1.5.5. カップリング剤(f)
カップリング剤(f)としては、特に限定されるものではなく、ガラスやITOとの密着性を向上させる等の目的でシランカップリング剤などの公知のカップリング剤を用いることができる。本発明の組成物がカップリング剤(f)を含む場合、カップリング剤(f)は、本発明の組成物の固形分(該組成物から溶剤を除いた残分)100重量%に対し、10重量%以下になるように添加して用いられることが好ましい。
カップリング剤(f)は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0102】
シランカップリング剤としては、例えば、トリアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物が挙げられる。好ましくは、例えば、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−アミノエチル−γ−イミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−アミノエチル−γ−アミノプロピルトジエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0103】
これらの中でも、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナートプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0104】
1.5.6. 酸化防止剤(g)
本発明の組成物が酸化防止剤(g)を含有することで、該組成物から得られる硬化膜が高温または光に曝された場合の劣化を防止することができる。酸化防止剤(g)は、本発明の組成物が酸化防止剤(g)を含む場合、該酸化防止剤(g)を除く組成物の固形分(該組成物から溶剤を除いた残分)100重量部に対し、0.1〜3重量部添加して用いることが好ましい。
酸化防止剤(g)は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0105】
酸化防止剤(g)としては、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物などが挙げられる。具体的には、IRGAFOS XP40、IRGAFOS XP60、IRGANOX 1010、IRGANOX 1035、IRGANOX 1076、IRGANOX 1135、IRGANOX 1520L(以上商品名、BASF社製)等が挙げられる。
【0106】
1.5.7. 界面活性剤(h)
本発明の組成物が界面活性剤(h)を含有することで、下地基板への濡れ性、レベリング性や塗布性が向上した組成物を得ることができる。本発明の組成物が界面活性剤(h)を含む場合、界面活性剤(h)は、本発明の組成物100重量%に対し、0.01〜1重量%となる量で用いられることが好ましい。
界面活性剤(h)は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0107】
界面活性剤(h)としては、本発明の組成物の塗布性を向上できる等の点から、例えば、商品名「BYK−300」、「BYK−306」、「BYK−335」、「BYK−310」、「BYK−341」、「BYK−344」、「BYK−370」(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、「KP−112」、「KP−326」、「KP−341」(以上、信越化学工業(株)製)等のシリコン系界面活性剤;商品名「BYK−354」、「BYK−358」、「BYK−361」(ビックケミー・ジャパン(株)製)等のアクリル系界面活性剤;商品名「DFX−18」、「フタージェント250」、「フタージェント251」((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0108】
1.5.8. エポキシ硬化促進剤(i)
エポキシ硬化促進剤(i)としては、本発明の組成物の硬化温度を低下させること、あるいは硬化時間を短縮させることができる等の点から、「DBU」、「DBN」、「U−CAT」、「U−CAT SA1」、「U−CAT SA102」、「U−CAT SA506」、「U−CAT SA603」、「U−CAT SA810」、「U−CAT 5002」、「U−CAT 5003」、「U−CAT 18X」、「U−CAT SA841・851」、「U−CAT SA881」、「U−CAT 891」(以上商品名、サンアプロ(株)製)、「CP−001」、「NV−203−R4」(以上商品名、大阪ガスケミカル(株)製)等が挙げられる。
エポキシ硬化促進剤(i)はそれぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0109】
エポキシ硬化促進剤(i)の含有量は、エポキシ硬化剤(C)100重量%に対し、好ましくは10〜200重量%、より好ましくは20〜180重量%、さらに好ましくは30〜150重量%である。
【0110】
1.5.9. 顔料または染料
顔料としては、例えば、炭化珪素、アルミナ、マグネシア、シリカ、酸化亜鉛および黒鉛からなる群より選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。
染料としては、例えば、アゾ染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料が挙げられる。アゾ染料の例としては「VALIFAST BLACK 3810」、「VALIFAST BLACK 3820」、「VALIFAST RED 3304」、「VALIFAST RED 3320」、「OIL BLACK 860」(以上商品名、オリエント化学工業(株)製)が挙げられる。
顔料および染料はそれぞれ、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0111】
2. 熱硬化性樹脂組成物の調製方法
本発明の組成物は、ポリエステルアミド酸(A)、エポキシ化合物(B)およびエポキシ硬化剤(C)と、必要に応じて溶媒(D)やその他の添加剤などとを混合することによって調製することができる。
また、本発明の組成物は、ポリエステルアミド酸(A)の合成時に得られた反応液や混合液をそのまま、エポキシ化合物(B)、エポキシ硬化剤(C)、必要に応じて用いられる溶媒(D)やその他の添加剤などと混合することによって調製することもできる。
【0112】
3. 硬化膜の形成方法
本発明の硬化膜は、前記本発明の組成物から得られる膜であれば特に制限されない。本発明の硬化膜は、例えば、本発明の組成物を、基板上に塗布し、加熱することにより得ることができる。
以下、本発明の組成物について、塗布方法および硬化方法について説明する。
【0113】
3.1. 熱硬化性樹脂組成物の塗布方法
基板上への本発明の組成物の塗布は、スプレーコート法、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法、スリットコート法、バーコート法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法およびインクジェット印刷法など従来から公知の方法により行うことができる。
【0114】
例えば、本発明の組成物から、前記XおよびY電極が接触しないように設けられる透明絶縁膜を形成する場合、パターン形成が容易であるという点で、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法およびインクジェット印刷法などの印刷法が好ましい。
【0115】
また、例えば、本発明の組成物から、前記オーバーコートを形成する場合、全面印刷が容易であるという点で、スピンコート法、スリットコート法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、ディスペンサー法、スクリーン印刷法などの塗布法が好ましい。
【0116】
前記基板としては、特に限定されるものではなく公知の基板を用いることができるが、例えば、FR−1、FR−3、FR−4、CEM−3またはE668等の各種規格に適合する、ガラスエポキシ基板、ガラスコンポジット基板、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、グリーンエポキシ基板、BT(ビスマレイミドトリアジン)レジン基板;銅、黄銅、リン青銅、ベリリウム銅、アルミニウム、金、銀、ニッケル、スズ、クロムまたはステンレス等の金属からなる基板(これらの金属からなる層を表面に有する基板であってもよい);酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム(アルミナ)、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、ジルコニウムのケイ酸塩(ジルコン)、酸化マグネシウム(マグネシア)、チタン酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛(PT)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、硫化カドニウム、硫化モリブデン、酸化ベリリウム(ベリリア)、酸化ケイ素(シリカ)、炭化ケイ素(シリコンカーバイト)、窒化ケイ素(シリコンナイトライド)、窒化ホウ素(ボロンナイトライド)、酸化亜鉛、ムライト、フェライト、ステアタイト、ホルステライト、スピネルまたはスポジュメン等の無機物からなる基板(これらの無機物を含む層を表面に有する基板であってもよい);PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PCT(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、テフロン(登録商標)、熱可塑性エラストマーまたは液晶ポリマー等の樹脂からなる基板(これらの樹脂含む層を表面に有する基板であってもよい);シリコン、ゲルマニウムまたはガリウム砒素等の半導体基板;ガラス基板;酸化スズ、酸化亜鉛、ITOまたはATO(酸化アンチモンスズ)等の電極材料(配線)が表面に形成された基板;αGEL(アルファゲル)、βGEL(ベータゲル)、θGEL(シータゲル)またはγGEL(ガンマゲル)(以上、(株)タイカの登録商標)等のゲルシート;が挙げられる。
本発明の組成物は、好ましくはガラス基板、ITO基板や樹脂製フィルム基板上に塗布される。
【0117】
3.2. 熱硬化性樹脂組成物の硬化方法
前記本発明の組成物を塗布した後に、基板上に塗布された組成物を加熱することで硬化膜を得ることができる。このようにして硬化膜を形成する方法としては、好ましくは、本発明の組成物を塗布した後にホットプレートまたはオーブンなどで加熱することにより、溶媒を気化などさせて除去し(乾燥処理)、その後、さらに加熱する(硬化処理)方法が用いられる。
【0118】
乾燥処理の条件は、用いる組成物に含まれる各成分の種類および配合割合によって異なるが、通常、加熱温度は70〜120℃であり、加熱時間は、オーブンなら5〜15分間、ホットプレートなら1〜10分間である。このような乾燥処理により、基板上に形状を保持できる程度の塗膜を形成することができる。
【0119】
前記塗膜を形成した後、通常80〜300℃、好ましくは100〜250で硬化処理をする。このとき、オーブンを用いた場合では、通常10〜120分間、ホットプレートを用いた場合では、通常5〜30分間加熱処理することで硬化膜を得ることができる。
なお、硬化処理は、加熱処理に限定されず、紫外線、イオンビーム、電子線またはガンマ線照射などの処理でもよい。
【0120】
4. 硬化膜付き基板
本発明の硬化膜付き基板は、本発明の硬化膜を有すれば特に制限されないが、前記基板、特に、ガラス基板、ITO基板および樹脂製フィルム基板からなる群より選ばれる少なくとも1種類の基板上に上述の硬化膜を有することが好ましい。
このような硬化膜付き基板は、例えば、ガラス、ITO、PET、PEN等の基板上に、本発明の組成物を前記塗布法等によって全面または所定のパターン状(ライン状など)に塗布し、その後、前記で説明したような、乾燥処理および硬化処理を経ることで、形成することができる。
【0121】
5. 電子部品
本発明の電子部品は、上述の硬化膜または硬化膜付き基板を有する電子部品である。このような電子部品としては、カラーフィルター、LED発光素子および受光素子などの各種光学材料、タッチパネルなどが挙げられる。
【0122】
タッチパネルは、例えば、液晶表示装置または有機エレクトロルミネッセンス装置と位置検出装置とを組み合わせることで製造することができる。
ここで、位置検出装置としては、例えば、ITOなどの導電物質からなる配線(X電極)が形成された基板上に、該配線を覆うように本発明の硬化膜(透明絶縁膜)を形成し、次いで、X電極と直交するように、ITOなどの導電物質からなる配線(Y電極)を形成し、その後、基板全面を覆うように、本発明の硬化膜でオーバーコートを形成した装置が挙げられる。
【0123】
このような装置の製造の際に、本発明の組成物を用いることで、通常、印刷法等でパターン状に形成される前記硬化膜(透明絶縁膜)、および、通常、塗布法等で前面に形成される前記オーバーコートを1種類の組成物で形成することができる。従って、本発明の組成物を用いることで、電子部品の製造に際して、ラインの簡略化および歩留まりの向上が可能となる。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例で用いる、テトラカルボン酸二無水物(a1)、ジアミン(a2)、多価ヒドロキシ化合物(a3)、1価アルコール(a4)、反応溶媒(a5)、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)、エポキシ硬化剤(C)、溶媒(D)、エポキシ化合物(e)、カップリング剤(f)、エポキシ硬化促進剤(i)、酸化防止剤(g)、重合性モノマー(j)および界面活性剤(h)の名称ならびにその略号を示す。以下の記述にはこの略号を使用する。
【0125】
<テトラカルボン酸二無水物(a1)>
ODPA:3,3',4,4'−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
<ジアミン(a2)>
DDS:3,3'−ジアミノジフェニルスルホン
<多価ヒドロキシ化合物(a3)>
BDOH:1,4−ブタンジオール
<1価アルコール(a4)>
BzOH:ベンジルアルコール
<反応溶媒(a5)>
MPM:3−メトキシプロピオン酸メチル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
<スチレン−無水マレイン酸共重合体>
SMA1000:SMA1000(商品名、サートマー(株)製、スチレン成分/無水マレイン酸成分:50/50、重量平均分子量:5,500)
【0126】
<フルオレン骨格を有するエポキシ化合物(B)>
PG−100:OGSOL PG−100(商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
CG−500:OGSOL CG−500(商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
EG−200:OGSOL EG−200(商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
EG−250:OGSOL EG−250(商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
EG−280:OGSOL EG−280(商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
【0127】
<エポキシ硬化剤(C)>
TMA:無水トリメリット酸
【0128】
<溶媒(D)>
EDM:ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
MTM:トリエチレングリコールジメチルエーテル
MPM:3−メトキシプロピオン酸メチル
【0129】
<エポキシ化合物(e)>
VG:TECHMORE VG3101L(商品名、(株)プリンテック製)
BG:ブチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート共重合体(モル比20:80、重量平均分子量8万)
EHPE3150:EHPE3150(商品名、ダイセル化学工業(株)製)
SQ:特開2009−167390号公報に記載の方法で合成した式(1−1)で示される化合物
【化7】
157S70:157S70(商品名、三菱化学(株)製)
FLEP−60:FLEP−60(商品名、東レチオコール(株)製)
EPPN−501H:EPPN−501H(商品名、日本化薬(株)製)
【0130】
<カップリング剤(f)>
GMS:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0131】
<エポキシ硬化促進剤(i)>
CP−001:CP−001(商品名、大阪ガスケミカル(株)製)
U−CAT SA506:U−CAT SA506(商品名、サンアプロ(株)製)
【0132】
<酸化防止剤(g)>
I1010:IRGANOX 1010(商品名、BASF社製)
【0133】
<重合性モノマー(j)>
UV−1700B:UV−1700B(商品名、日本合成化学(株)製)
【0134】
<界面活性剤(h)>
BYK344:BYK−344(商品名、ビックケミー・ジャパン(株)製)
【0135】
まず、ポリエステルアミド酸溶液を以下に示すように合成した(合成例1〜3)。表1に、合成例1〜3についてまとめた。
【0136】
[合成例1]
温度計、撹拌羽根、原料投入仕込み口および窒素ガス導入口を備えた1000mlのセパラブルフラスコに、脱水精製したMPM446.96g、BDOH31.93g、BzOH25.54gおよびODPA183.20gを仕込み、乾燥窒素気流下130℃で3時間撹拌した。その後、反応液を25℃まで冷却し、DDS29.33gおよびMPM183.04gを投入し、20〜30℃で2時間撹拌した後、115℃で1時間撹拌した。その後、30℃以下に冷却することにより淡黄色透明なポリエステルアミド酸の30重量%溶液を得た。
【0137】
この溶液の回転粘度は28.1mPa・sであった。ここで回転粘度とはE型粘度計(商品名;VISCONIC END、(株)東京計器製)を使用して25℃で測定した粘度である(以下同じ)。
【0138】
また、得られたポリエステルアミド酸の重量平均分子量は、4,200であった。なお、ポリエステルアミド酸の重量平均分子量は以下のようにして測定した。
得られたポリエステルアミド酸を、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)でポリアミド酸の濃度が約1重量%になるように希釈し、GPC装置:日本分光(株)製、Chrom Nav (示差屈折率計 RI−2031 Plus)を用いて、前記希釈液を展開剤としてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。カラムは、昭和電工(株)製カラムGF−1G7B、GF−510HQおよびGF−310HQの3本をこの順序に接続して使用し、カラム温度40℃、流速0.5ml/minの条件で測定した(以下同じ)。
【0139】
[合成例2]
温度計および撹拌羽根を備えた500mlのフラスコを窒素置換し、DDS13.03gおよびBDOH14.19gを仕込んだ後、脱水精製したMPM280gを仕込み、室温で撹拌し、DDSおよびBDOHを溶解させた。その後、ODPA81.42gとBzOH11.35gとを投入した。オイルバスで130℃まで加温し、その温度で4時間攪拌した後、30℃以下まで冷却することにより淡黄色透明なエステル基含有ポリアミド酸の30重量%溶液を得た。
この溶液の回転粘度は19.8mPa・sであった。GPCで測定した重量平均分子量は4,400(ポリスチレン換算)であった。
【0140】
[合成例3]
温度計および撹拌羽根を備えた500mlのフラスコを窒素置換し、脱水精製したPGMEA224.0g、ODPAを16.96g、SMA1000を51.6g、BzOHを19.7gおよびBDOHを3.28g仕込んだ。次にオイルバスで130℃まで加温し、その温度で2時間攪拌した後、30℃以下まで冷却させ、次いで、DDSを4.52g投入した。室温で2時間撹拌した後、115℃まで加温し、その温度で1時間撹拌した後、30℃以下に冷却することにより淡黄色透明なエステル基含有ポリアミド酸の30重量%溶液を得た。
この溶液の回転粘度は35.3mPa・sであった。GPCで測定した重量平均分子量は24,000(ポリスチレン換算)であった。
【0141】
【表1】
【0142】
[実施例1]
撹拌羽根を備えた100mlの三つ口フラスコを窒素置換し、そのフラスコに、合成例2で得られたポリエステルアミド酸溶液を10g、EG−200を2.5g、EG−280を0.5g、TMAを0.3g、GMSを0.3gおよび脱水精製したMPMを19.2g仕込み、室温で1時間撹拌し、各成分を均一に溶解させた。次いで、BYK344を0.07g投入し、室温で1時間撹拌し、メンブランフィルター(0.2μm)で濾過して濾液(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0143】
[実施例2]
撹拌羽根を備えた100mlの三つ口フラスコを窒素置換し、そのフラスコに、合成例1で得られたポリエステルアミド酸溶液を10g、EG−200を6.0g、TMAを0.6g、GMSを0.48g、I1010を0.05gおよび脱水精製したMPMを12.4g仕込み、室温で1時間撹拌し、各成分を均一に溶解させた。次いで、BYK344を0.05g投入し、室温で1時間撹拌し、メンブランフィルター(0.2μm)で濾過して濾液(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0144】
[実施例3〜9、比較例5〜6]
実施例3〜9および比較例5〜6は、表2に示すとおりに各成分の種類および仕込み量を変更したこと以外は実施例2と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0145】
[実施例10]
撹拌羽根を備えた100mlの三つ口フラスコを窒素置換し、そのフラスコに、合成例1で得られたポリエステルアミド酸溶液を7.1g、EG−200を1.4g、TMAを4.8g、GMSを1.2g、I1010を0.035g、エポキシ化合物(e)としてEHPE3150を2.7gおよび脱水精製したMTMを32.5g仕込み、室温で1時間撹拌し、各成分を均一に溶解させた。次いで、BYK344を0.05g投入し、室温で1時間撹拌し、メンブランフィルター(0.2μm)で濾過して濾液(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0146】
[実施例11〜14]
実施例11〜14は、表2に示すとおりに各成分の種類および仕込み量を変更したこと以外は実施例10と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0147】
[実施例15]
撹拌羽根を備えた100mlの三つ口フラスコを窒素置換し、そのフラスコに、合成例1で得られたポリエステルアミド酸溶液を2.2g、EG−200を0.7g、TMAを0.2g、GMSを0.4g、UV−1700Bを5.5g、エポキシ化合物(e)としてFLEP−60を1.3gおよび脱水精製したMTMを19.2g仕込み、室温で1時間撹拌し、各成分を均一に溶解させた。次いで、BYK344を0.07g投入し、室温で1時間撹拌し、メンブランフィルター(0.2μm)で濾過して濾液(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0148】
[実施例16]
撹拌羽根を備えた100mlの三つ口フラスコを窒素置換し、そのフラスコに、合成例1で得られたポリエステルアミド酸溶液を3.8g、EG−200を2.3g、TMAを0.34g、GMSを0.18g、I1010を0.02g、U−CAT SA506を0.15gおよび脱水精製したMTMを13.0g仕込み、室温で1時間撹拌し、各成分を均一に溶解させた。次いで、BYK344を0.07g投入し、室温で1時間撹拌し、メンブランフィルター(0.2μm)で濾過して濾液(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0149】
[比較例1]
撹拌羽根を備えた100mlの三つ口フラスコを窒素置換し、そのフラスコに、合成例2で得られたポリエステルアミド酸溶液を10g、BGを3.0g、TMAを0.3g、GMSを0.3gおよび脱水精製したMPMを55.8g仕込み、室温で1時間撹拌し、各成分を均一に溶解させた。次いで、BYK344を0.07g投入し、室温で1時間撹拌し、メンブランフィルター(0.2μm)で濾過して濾液(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0150】
[比較例2]
表2に示すとおりに各成分の種類および仕込み量を変更したこと以外は比較例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0151】
[比較例3]
撹拌羽根を備えた100mlの三つ口フラスコを窒素置換し、そのフラスコに、合成例1で得られたポリエステルアミド酸溶液を10g、VGを6.0g、TMAを0.6g、GMSを0.48g、I1010を0.05g、脱水精製したMPMを18.7gおよびEDMを6.4g仕込み、室温で1時間撹拌し、各成分を均一に溶解させた。次いで、BYK344を0.05g投入し、室温で1時間撹拌し、メンブランフィルター(0.2μm)で濾過して濾液(熱硬化性樹脂組成物)を得た。
【0152】
[比較例4]
表2に示すとおりに各成分の種類および仕込み量を変更したこと以外は比較例3と同様にして熱硬化性樹脂組成物を調製した。
【0153】
【表2】
【0154】
前記で得られた熱硬化性樹脂組成物をガラス基板上およびITO基板上に、得られる硬化膜の厚みが表3に示す厚みになるようにスピンコートした後、ホットプレート上で80℃で5分乾燥して塗膜を形成した。その後、実施例1〜14および比較例1〜6についてはオーブンを用い、230℃で30分加熱して硬化膜を得、実施例15についてはUV照射装置((株)ジャテック製のJ−CURE1500(商品名))を用いて波長365nmにおける積算露光量が2,000mJ/cm
2になるように光を照射した後、オーブンを用い、120℃で30分加熱して硬化膜を得、実施例16についてはオーブンを用い、120℃で10分加熱して硬化膜を得た。このようにして得られた硬化膜について、透明性、密着性、表面硬度および耐薬品性の評価を実施した。これらの評価結果を表3に示す。
【0155】
[評価方法]
(i)透明性
得られた硬化膜付きガラス基板を用い、分光光度計V−670(日本電子(株)製)により硬化膜の透過率を波長400nmで測定した。
【0156】
(ii)密着性
得られた硬化膜付きガラス基板および硬化膜付きITO基板を、60℃の超純水に60分間浸漬させた後、テープ剥離による碁盤目試験(JIS−K−5400)を行い、残存数を数えることで、基板と硬化膜との密着性を評価した。残存数/100が、100/100である場合を○、99/100以下である場合を×とした。
【0157】
(iii)表面硬度
得られた硬化膜付きガラス基板を用い、JIS−K−5400に順じ、鉛筆硬度計で硬化膜表面の硬度を測定した。
【0158】
(iv)耐薬品性
得られた硬化膜付きガラス基板および硬化膜付きITO基板を、3.5%シュウ酸水溶液に40℃で6分間浸漬させた。そして、浸漬前後の硬化膜の膜厚変化を触針式膜厚計XP−200(AMBIOS TECHNOLOGY社製)を用いて測定し、膜厚変化が±3%未満である場合を○、±3%以上である場合を×とした。また、浸漬前後での透過率を(i)と同様に観察して、透過率の変化が±1%未満である場合を○、±1%以上である場合を×とした。
【0159】
【表3】
【0160】
比較例1〜6で得られた熱硬化性樹脂組成物から形成した硬化膜はITOに対する密着性が悪く、比較例5〜6の膜はガラスに対する密着性が悪く、比較例6の硬化膜はシュウ酸水溶液に対する耐性が劣るものであった。
一方、表3に示した結果から明らかなように、実施例1〜16で得られた熱硬化性樹脂組成物から形成した硬化膜は、ガラスおよびITOに対する密着性に優れ、さらに波長400nmにおける光線透過率が95%以上と透明性が高く、表面硬度がF以上であった。さらに、シュウ酸水溶液に対する耐性も良好であり、高透明性、硬度、ガラスおよびITOに対する密着性、ならびに、シュウ酸水溶液に対する耐性のバランスがとれているものであった。
以上のように、ポリエステルアミド酸、フルオレン骨格を有するエポキシ化合物およびエポキシ硬化剤を含む組成物から得られた硬化膜のみ、所望の全ての特性を満足させることができた。