(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の変性炭化水素樹脂について詳細に説明する。
【0015】
本発明の変性炭化水素樹脂は、1,3−ペンタジエン単量体単位20質量%〜70質量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位10質量%〜40質量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位5質量%〜30質量%、脂環式ジオレフィン単量体単位0質量%〜1質量%、及び芳香族モノオレフィン単量体単位0質量%〜40質量%を含む炭化水素樹脂を水添してなる樹脂に、不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物に由来するカルボキシル基または酸無水物基が導入されてなるものであり、オレフィンの水添率が0.1%〜80%の範囲内である。
【0016】
本発明の変性炭化水素樹脂は、炭化水素樹脂を水添した樹脂を、さらに酸変性したものである。以下、酸変性前であって水添前の炭化水素樹脂(以下、単に、変性前樹脂と称する場合がある。)、および、この変性前樹脂を水添した樹脂を、さらに酸変性した変性炭化水素樹脂について詳細に説明する。
【0017】
1.変性前樹脂
変性前樹脂は、酸変性前であって水添前の原料樹脂であり、1,3−ペンタジエン単量体単位20質量%〜70質量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位10質量%〜40質量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位5質量%〜30質量%、脂環式ジオレフィン単量体単位0質量%〜1質量%、及び芳香族モノオレフィン単量体単位0質量%〜40質量%を含むものである。
【0018】
なお、上記単量体単位の含有割合は、変性炭化水素樹脂においても同様であり、当該含有割合の好適範囲も変性前樹脂と同様である。
【0019】
1,3−ペンタジエン単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、20質量%〜70質量%の範囲内であればよく、25質量%〜65質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも30質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、特に35質量%〜55質量%の範囲内であることが好ましい。変性前樹脂中の1,3−ペンタジエンが少なすぎると、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、耐熱劣化性に劣るものとなる。一方、変性前樹脂中の1,3−ペンタジエンが多すぎると、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなる。
【0020】
ここで、オープンタイムは、粘着剤や接着剤を被着材に塗布してから貼り合わせるまでの貼り合せ可能時間であり、粘着または接着前に、粘着剤または接着剤が固まらずに接着性を保てる時間である。一般的に、作業性等の観点から、オープンタイムは長いほうが好ましい。
【0021】
なお、1,3−ペンタジエンにおけるシス/トランス異性体比は任意の比でよく、特に限定されない。
【0022】
炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合を1つと非芳香族性の環構造とを有する炭素数が4〜6の炭化水素化合物である。炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンの具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロブテン、メチルシクロペンテンを挙げることができる。
【0023】
炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、10質量%〜40質量%の範囲内であればよく、15質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも19質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましく、特に23質量%〜40質量%の範囲内であることが好ましい。変性前樹脂中の炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンが少なすぎると、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなる。一方、変性前樹脂中の炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンが多すぎると、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、耐熱劣化性に劣るものとなる。
【0024】
なお、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィンにおいて、これに該当する各化合物の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくともシクロペンテンが含まれることが好ましく、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン中にシクロペンテンの占める割合が50質量%以上であることがより好ましい。
【0025】
炭素数4〜8の非環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合1つを有し、環構造を有さない炭素数が4〜8の鎖状炭化水素化合物である。炭素数4〜8の非環式モノオレフィンの具体例としては、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン(2−メチルプロペン)などのブテン類;1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテンなどのペンテン類;1−ヘキセン、2−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテンなどのヘキセン類;1−ヘプテン、2−ヘプテン、2−メチル−1−ヘキセンなどのヘプテン類;1−オクテン、2−オクテン、2−メチル−1−ヘプテン、ジイソブチレン(2,4,4−トリメチル−1−ペンテン及び2,4,4−トリメチル−2−ペンテン)などのオクテン類を挙げることができる。
【0026】
炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、5質量%〜30質量%の範囲内であればよく、5質量%〜29質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも5量%〜28質量%の範囲内であることが好ましく、特に5質量%〜27質量%の範囲内であることが好ましい。変性前樹脂中の炭素数4〜8の非環式モノオレフィンが少なすぎると、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなる。一方、変性前樹脂中の炭素数4〜8の非環式モノオレフィンが多すぎると、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、耐熱劣化性に劣るものとなる。
【0027】
なお、炭素数4〜8の非環式モノオレフィンにおいて、これに該当する各化合物(異性体を含む)の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくとも2−メチル−2−ブテン、イソブチレン及びジイソブチレンからなる群から選択される少なくとも一種が含まれることが好ましく、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン中に2−メチル−2−ブテン、イソブチレン及びジイソブチレンの合計量が占める割合が50質量%以上であることがより好ましい。
【0028】
変性前樹脂は、脂環式ジオレフィンをその原料に含んでいてもよい。脂環式ジオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合を2つ以上と非芳香族性の環構造とを有する炭化水素化合物である。脂環式ジオレフィンの具体例としては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのシクロペンタジエンの多量体、メチルシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンの多量体を挙げることができる。
【0029】
脂環式ジオレフィン単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、0質量%〜1質量%の範囲内であればよく、0質量%〜0.8質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0質量%〜0.6質量%の範囲内であることが好ましく、特に0質量%〜0.4質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、低臭気なものとすることができるからである。また、変性前樹脂中の脂環式ジオレフィンが多すぎると、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、オープンタイムが短く、接着力が低く、塗工容易性に劣るものとなる。
【0030】
変性前樹脂は、芳香族モノオレフィンをその原料に含んでいてもよい。芳香族モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合1つを有する芳香族化合物である。芳香族モノオレフィンの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、クマロンなどが挙げられる。
【0031】
芳香族モノオレフィン単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、0質量%〜40質量%の範囲内であればよく、0質量%〜38質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0質量%〜36質量%の範囲内であることが好ましく、特に0質量%〜34質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲内であることにより、低臭気で、色調に優れるものとすることができるからである。
【0032】
なお、芳香族モノオレフィンにおいて、これに該当する各化合物(異性体を含む)の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくともスチレンが含まれることが好ましく、芳香族モノオレフィン中にスチレンが占める割合が50質量%以上であることがより好ましい。
【0033】
変性前樹脂は、1,3−ペンタジエン単量体単位、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン単量体単位、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン単量体単位、脂環式ジオレフィン単量体単位、及び芳香族モノオレフィン単量体単位以外に、本発明の効果が得られる範囲で、その他の単量体単位を含んでいてもよい。
【0034】
このようなその他の単量体単位を構成するために用いられるその他の単量体は、前述した単量体以外で1,3−ペンタジエンなどと付加共重合され得る付加重合性を有する化合物であれば、特に限定されない。上記その他の単量体には、例えば、1,3−ブタジエン、1,2−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエンなどの1,3−ペンタジエン以外の炭素数4〜6の不飽和炭化水素;シクロヘプテンなどの炭素数7以上の脂環式モノオレフィン;エチレン、プロピレン、ノネンなどの炭素数4〜8以外の非環式モノオレフィン等が包含される。
【0035】
上記その他の単量体単位の変性前樹脂中の含有量としては、本発明の効果が得られる範囲であればよく、具体的には、通常、0質量%〜30質量%の範囲内であり、0質量%〜25質量%の範囲内であることが好ましく、0質量%〜20質量%の範囲内であることがより好ましい。上記含有量が多すぎると、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合、オープンタイムが短くなり、接着力が低下する場合があるからである。
【0036】
変性前樹脂を製造する方法は、上記した単量体単位を構成可能な単量体を有する重合性成分(単量体混合物A)を、好適には付加重合する限りにおいて、特に限定されない。例えば、フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒を用いた付加重合によって、変性前樹脂を得ることができる。
【0037】
変性前樹脂を製造するために好適に用いられる方法としては、例えば、次に述べる、ハロゲン化アルミニウム(A)と、3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B1)及び炭素−炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B2)からなる群より選ばれるハロゲン化炭化水素(B)とを組み合わせて、重合触媒とし、1,3−ペンタジエン20質量%〜70質量%、炭素数4〜6の脂環式モノオレフィン10質量%〜40質量%、炭素数4〜8の非環式モノオレフィン5質量%〜30質量%、脂環式ジオレフィン0質量%〜1質量%、及び芳香族モノオレフィン0質量%〜40質量%を含む単量体混合物Aを重合する重合工程を有する方法を挙げることができる。
【0038】
ハロゲン化アルミニウム(A)の具体例としては、塩化アルミニウム(AlCl
3)、臭化アルミニウム(AlBr
3)などを挙げることができる。なかでも汎用性などの観点から、塩化アルミニウムが好適に用いられる。
【0039】
ハロゲン化アルミニウム(A)の使用量は、特に限定されないが、重合性成分(単量体混合物A)100質量部に対し、好ましくは0.05質量部〜10質量部の範囲内、より好ましくは0.1質量部〜5質量部の範囲内である。
【0040】
ハロゲン化炭化水素(B)を、ハロゲン化アルミニウム(A)と併用することにより、重合触媒の活性が極めて良好なものとなる。
【0041】
3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B1)の具体例としては、t−ブチルクロライド、t−ブチルブロマイド、2−クロロ−2−メチルブタン、トリフェニルメチルクロライドを挙げることができる。これらのなかでも、活性と取り扱いやすさとのバランスに優れる点で、t−ブチルクロライドが特に好適に用いられる。
【0042】
炭素−炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素(B2)における不飽和結合としては、炭素−炭素二重結合および炭素−炭素三重結合が挙げられ、芳香族環などにおける炭素−炭素共役二重結合も含むものである。このような化合物の具体例としては、ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、(1−クロロエチル)ベンゼン、アリルクロライド、3−クロロ−1−プロピン、3−クロロ−1−ブテン、3−クロロ−1−ブチン、ケイ皮クロライドが挙げられる。これらのなかでも、活性と取り扱いやすさとのバランスに優れる点で、ベンジルクロライドが好適に用いられる。
【0043】
なお、ハロゲン化炭化水素(B)は、1種類で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
ハロゲン化炭化水素(B)の使用量は、ハロゲン化アルミニウム(A)に対するモル比で、好ましくは0.05〜50の範囲内、より好ましくは0.1〜10の範囲内である。
【0045】
重合反応を行うに当たり、単量体混合物や重合触媒のそれぞれの成分を重合反応器に添加する順序は特に限定されず、任意の順で添加すればよいが、重合反応を良好に制御して、より色相に優れる変性炭化水素樹脂を得る観点からは、単量体混合物と重合触媒の成分の一部とを重合反応器に添加して、重合反応を開始した後に、重合触媒の残部を重合反応器に添加することが好ましい。
【0046】
変性前樹脂の製造に当たっては、まず、ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとを混合することが好ましい。ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとを接触処理することによって、ゲルの生成を防止でき、かつ色相の優れた変性前樹脂が得られるためである。
【0047】
ハロゲン化アルミニウム(A)と混合する脂環式モノオレフィンの量は、ハロゲン化アルミニウム(A)の量の少なくとも5倍(質量比)が好ましい。脂環式モノオレフィンの量が過少であると、ゲル生成防止、色相改良の効果が不十分となるおそれがある。脂環式モノオレフィンとハロゲン化アルミニウム(A)との質量比は好ましくは5:1〜120:1、より好ましくは10:1〜100:1、さらに好ましくは15:1〜80:1である。この割合より脂環式モノオレフィンを過度に多く使用すると触媒活性が低下し、重合が十分に進行しなくなるおそれがある。
【0048】
ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとを混合するに際し、投入順序は特に制限されず、脂環式モノオレフィン中にハロゲン化アルミニウム(A)を投入してもよいし、逆に、ハロゲン化アルミニウム(A)中に脂環式モノオレフィンを投入してもよい。混合は通常、発熱をともなうので、適当な希釈剤を用いることもできる。希釈剤としては後述する溶媒を用いることができる。
【0049】
上記のようにして、ハロゲン化アルミニウム(A)と脂環式モノオレフィンとの混合物Mを調製した後、少なくとも1,3−ペンタジエンおよび非環式モノオレフィンを含む混合物aと、混合物Mとを混合することが好ましい。前記混合物aには脂環式ジオレフィンが含まれていてもよい。
【0050】
混合物aの調製方法は特に限定されず、それぞれ純粋な化合物を混合して目的の混合物aを得てもよいし、例えばナフサ分解物の留分などに由来する、目的の単量体を含む混合物を用いて、目的の混合物aを得てもよい。例えば、混合物aに1,3−ペンタジエンなどを配合するためには、イソプレンおよびシクロペンタジエン(その多量体を含む)を抽出した後のC5留分を好適に用いることができる。
【0051】
混合物aと混合物Mと共に、ハロゲン化炭化水素(B)をさらに混合することが好ましい。これら3者の投入順序は特に制限されない。
【0052】
重合反応をより良好に制御する観点からは、重合反応系に溶媒を添加して、重合反応を行うことが好ましい。溶媒の種類は、重合反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、飽和脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素が好適である。溶媒として用いられる飽和脂肪族炭化水素としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、2,2,4−トリメチルペンタンなどの炭素数5〜10の鎖状飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの炭素数5〜10の範囲内の環状飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。溶媒として用いられる芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素数6〜10の範囲内の芳香族炭化水素が挙げられる。溶媒は1種を単独で使用してもよいし、2種以上の混合溶媒として用いてもよい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、重合性成分(単量体混合物A)100質量部に対して、10質量部〜1,000質量部の範囲内であることが好ましく、50質量部〜500質量部の範囲内であることがより好ましい。なお、例えば、C5留分に由来するシクロペンタンとシクロペンテンとの混合物のような、付加重合性成分と非付加重合性成分との混合物を重合反応系に添加して、付加重合性成分は単量体混合物の成分として用い、非付加重合性成分は溶媒として用いるようにすることもできる。
【0053】
重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、−20℃〜100℃の範囲内であることが好ましく、10℃〜70℃の範囲内であることが好ましい。重合温度が低すぎると、重合活性が低下して生産性が劣る可能性があり、重合温度が高すぎると、得られる変性前樹脂の色相に劣るおそれがある。重合反応を行う際の圧力は、大気圧下でも加圧下でもよい。重合反応時間は、適宜選択できるが、通常10分間〜12時間、好ましくは30分間〜6時間の範囲内で選択される。
【0054】
重合反応は、所望の重合転化率が得られた時点で、メタノール、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などの重合停止剤を重合反応系に添加することにより停止することができる。
【0055】
上記変性前樹脂の製造方法は、上記重合工程を少なくとも有するが、必要に応じて、その他の工程を有していてもよい。
【0056】
その他の工程としては、例えば、重合工程後に、重合工程において重合停止剤を添加して、重合触媒を不活性化した際に生成する、溶媒に不溶な触媒残渣を濾過などにより除去する触媒残渣除去工程や、重合工程による重合反応停止後、未反応の単量体と溶媒を除去し、さらに水蒸気蒸留などにより低分子量のオリゴマー成分を除去し、冷却することにより、固体状の変性前樹脂を得る回収工程等を挙げることができる。
【0057】
また、その他の工程として、触媒残渣除去工程後、かつ、回収工程前に、溶媒に不溶な触媒残渣を除去した後の触媒残渣除去混合物を吸着剤と接触させて、吸着剤処理混合物を得る接触処理工程を有していてもよい。上記接触処理工程を有することにより、変性前樹脂、および変性前樹脂を水添した樹脂をさらに酸変性した変性炭化水素樹脂を、低臭気なものとすることができるからである。
【0058】
なお、上記その他の工程は、後述する変性炭化水素樹脂の製造方法における水添工程後または酸変性工程後に行ってもよい。
【0059】
上記接触処理工程において用いる吸着剤は特に限定されず、化学吸着剤であってもよいし、物理吸着剤であってもよい。
【0060】
上記化学吸着剤の例としては、塩基性炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛などの亜鉛系吸着剤;酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、リン酸ジルコニウムなどのジルコニウム系吸着剤;二酸化マンガンなどのマンガン系吸着剤;塩化コバルトなどのコバルト系吸着剤;塩化銅、酸化銅などの銅系吸着剤;ポリアミン化合物などのアミン系吸着剤などが挙げられる。
【0061】
上記物理吸着剤の例としては、ケイ酸アルミニウムナトリウムなどの含水アルミノケイ酸塩鉱物群で総称されるゼオライト系吸着剤、二酸化ケイ素、酸化マグネシウム、シリカゲル、シリカ・アルミナ、アルミニウムシリケート、活性アルミナ、酸性白土、活性白土、ドーソナイト類化合物、ハイドロタルサイト類化合物などが挙げられる。
【0062】
吸着剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、2種以上の吸着剤を併用する場合は、2種以上の化学吸着剤を併用してもよいし、2種以上の物理吸着剤を併用してもよいし、1種以上の化学吸着剤と1種以上の物理吸着剤とを併用してもよく、例えば、物理吸着剤に化学吸着剤を担持させてもよい。
【0063】
特に低臭気性に優れた変性前樹脂および変性炭化水素樹脂を得る観点からは、これらの吸着剤のなかでも、化学吸着剤を用いることが好ましく、亜鉛系吸着剤を用いることがより好ましく、塩基性炭酸亜鉛を用いることが特に好ましい。
【0064】
上記接触処理工程において触媒残渣除去混合物に吸着剤に接触させる方法は、特に限定されない。例えば、適宜選択される容器に触媒残渣除去混合物と吸着剤とを共存させて、必要に応じて撹拌して、接触させるバッチ処理法や、予め充填塔中に吸着剤を充填しておき、これに触媒残渣除去混合物を流通して接触させる連続処理法が挙げられる。
【0065】
触媒残渣除去混合物と吸着剤とをバッチ処理法で接触させる場合の吸着剤の使用量は、特に限定されないが、触媒残渣除去混合物に含まれる変性前樹脂100質量部に対して、通常0.01質量部〜5.0質量部の範囲内であり、好ましくは0.03質量部〜3.0質量部の範囲内であり、より好ましくは0.05質量部〜2.0質量部の範囲内である。
【0066】
触媒残渣除去混合物と吸着剤とを接触させる際の温度は、特に限定されないが、通常10℃〜70℃の範囲内で選択される。また、処理時間も、特に限定されないが、通常0.1時間〜2時間の範囲内で選択される。
【0067】
触媒残渣除去混合物と吸着剤とをバッチ処理法で接触させた場合、必要に応じて、ろ過などにより触媒残渣除去混合物から吸着剤を除去することができる。また、吸着剤が残存していても変性前樹脂および変性炭化水素樹脂の使用に問題がない場合には、触媒残渣除去混合物から吸着剤を除去せずに次の工程に供してもよい。
【0068】
2.変性炭化水素樹脂
本発明の変性炭化水素樹脂は、上記変性前樹脂を水添した樹脂を、さらに酸変性した変性炭化水素樹脂である。
【0069】
変性炭化水素樹脂は、オレフィンの水添率(以下、単に水添率と称する場合がある。)が0.1%〜80%の範囲内である。
【0070】
ここで、オレフィンの水添率とは、変性前樹脂の全非芳香族性炭素−炭素二重結合のうち、水素化された割合をいう。
【0071】
本発明において、上記水添率は、0.1%〜80%の範囲内であればよいが、1%〜70%の範囲内であることが好ましく、なかでも5%〜60%の範囲内であることが好ましく、特に10%〜50%の範囲内であることが好ましい。水添率が上述の範囲内であることにより、低臭気で、熱劣化等による色相の変化が少ないものとすることができるからである。また、水添率が高すぎると、変性前樹脂を水添した樹脂に不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物を反応させて酸変性させることが困難となり、変性炭化水素樹脂中に未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物が多く残存するおそれがある。
【0072】
なお、上記変性前樹脂中の炭素−炭素二重結合としては、非芳香族性炭素−炭素二重結合(主に主鎖の炭素−炭素二重結合)の他、芳香族性炭素−炭素二重結合(芳香環内の炭素−炭素二重結合)が存在するが、芳香族性炭素−炭素二重結合は出来るだけ水素化されていないのが好ましく、全芳香族性炭素−炭素二重結合のうち、水素化された割合としては、通常、10%以下、好ましくは7%以下、より好ましくは0%である。
【0073】
また、オレフィンの水添率は、変性前樹脂および変性炭化水素樹脂が有するオレフィン量の差から求めることができる。ここで、各樹脂が有するオレフィン量については、
1H−NMRスペクトル測定により求めることができる。
1H−NMRスペクトル測定は、溶媒に重クロロホルムを用い、NMR測定装置としては、JMN−AL seriesAL400、JEOL社製を用いて行うことができる。
【0074】
変性炭化水素樹脂は、不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物に由来するカルボキシル基または酸無水物基を有する。
【0075】
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの炭素数8以下のエチレン性不飽和カルボン酸、及び3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸のような共役ジエンと炭素数8以下のα,β−不飽和ジカルボン酸とのディールス・アルダー付加物が挙げられる。
【0076】
不飽和ジカルボン酸無水物の例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの炭素数8以下のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物、及び3,6−エンドメチレン−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸のような共役ジエンと炭素数8以下のα,β−不飽和ジカルボン酸無水物とのディールス・アルダー付加物などが挙げられる。
【0077】
反応の容易さ、経済性などの面では、炭素数8以下のα,β−不飽和脂肪族ジカルボン酸無水物が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0078】
変性炭化水素樹脂は、これらの不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物に由来するカルボキシル基および酸無水物基を一種または二種以上有することができる。
【0079】
変性炭化水素樹脂の酸価は、0.5〜20KOHmg/gであることが好ましく、なかでも1〜17KOHmg/gであることが好ましく、1.5〜15KOHmg/gであることがより好ましい。酸価が上記範囲内であることにより、低臭気で、熱劣化等による色相の変化が少ないものとすることができるからである。また、酸価が低すぎたり、酸価が高すぎたりすると、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合に、接着力が低下する場合がある。
【0080】
本発明における酸価は、例えば、変性炭化水素樹脂についてJIS K 0070に従い測定する値である。
【0081】
変性炭化水素樹脂は、上記変性前樹脂を水添した樹脂を、不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物で変性したものであり、変性炭化水素樹脂には、未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸が含まれ得る。変性炭化水素樹脂中の未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の含有量は、3000ppm以下であることが好ましく、2000ppm以下であることがより好ましく、1000ppm以下であることがさらに好ましい。上記含有量が上記範囲内であることにより、臭気を低減することができるからである。
【0082】
ここで、未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の含有量とは、変性炭化水素樹脂を製造する際に酸変性剤として用いた不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物のうち、上記変性前樹脂を水添した樹脂と反応せずに遊離状態で変性炭化水素樹脂中に含まれる不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の量をいう。
【0083】
未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の含有量は、変性炭化水素樹脂をトルエン等の溶媒に溶解した後、水と混合し、水に抽出された不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸の量を液体クロマトグラフィで定量することにより測定することができる。
【0084】
変性炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000〜4,000の範囲内であることが好ましく、なかでも1,500〜3,800の範囲内であることが好ましく、特に1,800〜3,600の範囲内であることがより好ましい。重量平均分子量(Mw)が上述の範囲内であることにより、優れた熱安定性を得ることができるからである。また、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、ベースポリマーとの相溶性が良好となり、オープンタイムが長く、接着力および塗工容易性に優れる粘着剤および接着剤を得ることができる。
【0085】
変性炭化水素樹脂のZ平均分子量(Mz)は、1,500〜10,000の範囲内であることが好ましく、なかでも2,500〜9,000の範囲内であることが好ましく、特に3,900〜8,000の範囲内であることが好ましい。Z平均分子量(Mz)が上述の範囲内であることにより、優れた熱安定性を得ることができるからである。また、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、ベースポリマーとの相溶性が良好となり、オープンタイムが長く、接着力および塗工容易性に優れる粘着剤および接着剤を得ることができる。
【0086】
なお、本発明において、変性炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。重量平均分子量およびZ平均分子量の測定は、より具体的には、測定装置として、東ソー社製「HLC−8320GPC」を使用し、カラムは東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ」を3本連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃、1.0mL/minの流量で測定することができる。
【0087】
変性炭化水素樹脂の重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)は、1.5〜2.5の範囲内であることが好ましく、なかでも1.6〜2.4の範囲内であることが好ましく、特に1.65〜2.35の範囲内であることがより好ましい。上記比が上述の範囲内であることにより、優れた熱安定性を得ることができるからである。また、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、ベースポリマーとの相溶性が良好となり、オープンタイムが長く、接着力および塗工容易性に優れる粘着剤および接着剤を得ることができる。
【0088】
変性炭化水素樹脂の50質量%トルエン溶液のガードナー色数は、5以下であることが好ましく、なかでも4以下であることが好ましい。この値が大きすぎる炭化水素樹脂は、色相に劣る。
【0089】
本発明における上記ガードナー色数の測定方法としては、変性炭化水素樹脂について50質量%トルエン溶液を調製し、当該溶液のガードナー色数をJIS K 0071−2に従い測定する方法とすることができる。
【0090】
変性炭化水素樹脂の軟化点は、30℃以上であることが好ましく、なかでも50℃〜125℃の範囲内であることが好ましく、60℃〜115℃の範囲内であることがより好ましい。上記軟化点が上述の範囲内であることにより、優れた熱安定性を得ることができるからである。また、変性炭化水素樹脂を例えば粘着剤や接着剤に用いる場合には、ベースポリマーとの相溶性が良好となり、オープンタイムが長く、接着力および塗工容易性に優れる粘着剤および接着剤を得ることができる。
【0091】
本発明における軟化点は、例えば、変性炭化水素樹脂についてJIS K 6863に従い測定する値とすることができる。
【0092】
変性炭化水素樹脂の製造方法としては、変性前樹脂を水添する水添工程と、上記水添工程で得られた樹脂に不飽和カルボン酸または不飽和ジカルボン酸無水物を反応させることにより酸変性させる変性工程とを有する方法を用いることができる。
【0093】
水添工程において、変性前樹脂の水添は、水素化触媒の存在下に、変性前樹脂を水素と接触させることにより行うことができる。
【0094】
用いる水素化触媒としては、特開昭58−43412号公報、特開昭60−26024号公報、特開昭64−24826号公報、特開平1−138257号公報、特開平7−41550号公報等に記載されているものを使用することができ、均一系触媒でも不均一系触媒でもよい。
【0095】
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の組み合わせ等の遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒系;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
【0096】
不均一系触媒としては、Ni、Pd等の水素添加触媒金属を担体に担持させたもの等が挙げられる。担体としては、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、ケイソウ土等が挙げられる。中でも、シリカに担持したNi触媒が好ましい。
【0097】
水素化反応は、変性前樹脂に対し直接行ってもよく、又は、変性前樹脂を有機溶媒に溶解し、有機溶媒中で行ってもよい。操作容易性の観点から、変性前樹脂に対し直接行うのが好ましい。変性前樹脂の溶解に用いる有機溶媒としては、触媒に不活性なものであれば格別な限定はないが、生成する水素添加物の溶解性に優れていることから、通常は炭化水素系溶媒が用いられる。
【0098】
炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、デカリン等の脂環族炭化水素類;等を挙げることができ、これらの中でも、環状の芳香族炭化水素類や脂環族炭化水素類が好ましい。これらの有機溶媒は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、有機溶媒については、変性前樹脂の重合に用いた溶媒を用いてもよい。
【0099】
水素化触媒の存在下に、変性前樹脂を水素と接触させる方法は、特に限定されない。例えば、適宜選択される容器に変性前樹脂と水素化触媒とを共存させて、必要に応じて撹拌して、水素と接触させるバッチ処理法や、予め充填塔中に水素化触媒を充填しておき、これに変性前樹脂を流通しながら、水素と接触させる連続処理法が挙げられる。
【0100】
水素化反応は、常法に従って行うことができる。水素化触媒の種類や反応温度等の反応条件を適宜調整することにより、変性前樹脂の水素化の割合を調整することができる。
【0101】
水素化触媒として均一系触媒を用いると、変性前樹脂の水素化の割合を高めることができ、当該均一系触媒としては、ルテニウム均一系触媒が好ましい。反応温度は、100℃〜200℃の範囲内が好ましく、130℃〜195℃の範囲内がより好ましい。
【0102】
水素化触媒として不均一系触媒を用いると、変性前樹脂の水素化の割合を抑えることができ、当該不均一系触媒としては、ニッケル不均一系触媒が好ましい。反応温度は、150℃〜300℃の範囲内が好ましく、180℃〜260℃の範囲内がより好ましい。
【0103】
水素圧は、絶対圧力で、通常0.01MPa〜10MPaの範囲内、好ましくは0.05MPa〜6MPaの範囲内、さらに好ましくは0.1MPa〜5MPaの範囲内である。
【0104】
また、水素量は、通常、理論上必要な水素量以上であればよいが、目的の水添率の樹脂を得るために理論上必要な水素量の1倍〜20倍の範囲内とすることができる。
【0105】
水素化反応終了後においては、必要に応じて反応液から、遠心分離やろ過等により水素化触媒を除去する。遠心方法やろ過方法は、用いた触媒が除去できる条件であれば、特に限定されない。ろ過による除去は、簡便かつ効率的であるので好ましい。ろ過する場合、加圧ろ過しても、吸引ろ過してもよく、また、効率の点から、ケイソウ土、パーライト等のろ過助剤を用いることが好ましい。また、必要に応じて、水やアルコール等の触媒不活性化剤を利用したり、活性白土やアルミナ等の吸着剤を添加することができる。
【0106】
変性工程では、変性前樹脂を水添して得られた樹脂を、不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸無水物で処理することにより、カルボキシル基又は酸無水物基を上記樹脂に導入し、変性炭化水素樹脂を製造する。すなわち、上記水添工程により得られた樹脂に不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸無水物を反応(酸変性反応)させて酸変性させ、所望の変性炭化水素樹脂を得る。
【0107】
酸変性反応に酸変性剤として用いられる不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の量は、得られる樹脂の色相を考慮して、変性前樹脂100質量部に対して、通常、0.01〜10質量部、好ましくは0.05〜5質量部である。酸変性剤として用いられる不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物は、単独でまたは二種以上を組合せて用いることができる。
【0108】
上記の酸変性反応の反応温度は、通常、50〜300℃の範囲内とすることができる。反応温度が低すぎると反応効率に劣り、変性炭化水素樹脂中の未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の含有量が増加するおそれがある。また、反応時間は、通常、5分〜20時間の範囲内とすることができる。反応時間が短すぎると反応効率に劣り、変性炭化水素樹脂中の未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の含有量が増加するおそれがある。
【0109】
また、必要に応じて希釈剤、ゲル化防止剤および反応促進剤などを存在せしめてもよい。
【0110】
なお、変性炭化水素樹脂にかかるオレフィンの水添率、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)、ガードナー色数、軟化点、酸価、ならびに未反応の不飽和カルボン酸および不飽和ジカルボン酸無水物の含有量等は、上記の通りの配合及び製造方法に従って変性炭化水素樹脂を調製することで容易に所望の範囲に調整することができる。
【0111】
3.その他の成分
本発明の変性炭化水素樹脂には、例えば抗酸化剤、香料、吸着剤を配合して用いることができる。変性炭化水素樹脂に、抗酸化剤、香料、吸着剤を配合することにより、臭気をさらに低減することができるからである。
【0112】
また、本発明の変性炭化水素樹脂には、必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、ワックスなどの各種配合剤を配合してもよい。
【0113】
以下、抗酸化剤、香料および吸着剤について説明する。
【0114】
(1)抗酸化剤
抗酸化剤としては、配合することで変性炭化水素樹脂に由来する臭気を低減可能なものであればよく、公知の抗酸化剤を使用できる。なかでも、抗酸化剤は、2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基を有する化合物であることが好ましい。抗酸化剤として上述の化合物を配合することで、臭気を低く抑えることができるからである。
【0115】
ここで「2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基」とは下記一般式(1)で表わされる基をいう。
【0117】
式(1)中、R
1〜R
4は任意のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。R
5は水素または置換基をもっていてもよい炭素数1〜8のアルキル基もしくはアルコキシ基である。R
1〜R
4は、互いに同一であっても相違してもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などが挙げられるが、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましい。R
5の具体例としては、水素およびメチル基、オクチル基などが挙げられるが、水素が好ましい。上記式で表わされる2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基を有する化合物としては、分子量約400〜4,000を有するものが知られており、その一部は市販されている。
【0118】
上記ピペリジル基含有化合物の具体例としては、下記の化合物が挙げられる(〔 〕内は商品名〔いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製〕である)。
(i)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート〔チヌビン770〕
(ii)ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕〔チマソルブ944〕
(iii)ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート〔チヌビン765〕
(iv)2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)〔チヌビン144〕
(v)コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン重縮合物〔チヌビン622〕
(vi)N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2、4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物〔チマソルブ119〕
(vii)ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート〔チヌビン123〕。
【0119】
上記の中では、熱時の色相安定化の効果が顕著であることから、(i)および(ii)が好ましい。
【0120】
抗酸化剤の配合量は、本発明の効果が得られる範囲であればよく、例えば、変性炭化水素樹脂100質量部に対して、0.05質量部〜5質量部の範囲内とすることができ、なかでも0.08質量部〜1質量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.1質量部〜0.5質量部の範囲内であることが好ましい。また、抗酸化剤が、2,2,6,6−テトラアルキル−4−ピペリジル基を有する化合物である場合、上記ピペリジル基含有化合物の配合量は、変性炭化水素樹脂100gに対して、ピペリジル基の数が、1.5×10
−4〜2.0×10
−3個とすることでき、好ましくは3.0×10
−4〜2.0×10
−2個である。上記配合量が上述の範囲内であることにより、臭気を低く抑えることができるからである。
【0121】
変性炭化水素樹脂に抗酸化剤を配合する方法としては、例えば、加熱溶融された状態の変性炭化水素樹脂に抗酸化剤を混合する方法を用いることができる。
【0122】
(2)香料
香料としては、配合することで変性炭化水素樹脂に由来する臭気を低減可能なものであればよく、様々な香料を用いることができる。なかでも、香料は、常圧下の沸点が200℃以上である単体香料もしくはそれら単体香料の二種以上からなる調合香料であることが好ましい。香料として上述の香料を配合することで、変性炭化水素樹脂に由来する臭気をマスキングすることができるからである。
【0123】
上記単体香料の沸点としては、常圧下で200℃以上であればよく、220℃以上であることが好ましい。沸点が上記範囲であることにより、単体香料は、常温でまたは加工温度で、蒸発揮散したり、分解変質が少ないものとなる。したがって、変性炭化水素樹脂に配合した場合に、長期保存時でも、持続的に臭気を抑えることができる。
【0124】
変性炭化水素樹脂の臭気をマスキングする上で適切な単体香料は、グリーン系、バニラ系、バルサム系、ウッディ系、ムスク系、アンバー系、フルーツ系、フローラル系のいずれかの単体香調を有するものであり、なかでもグリーン系、バニラ系、バルサム系、ウッディ系、ムスク系、アンバー系およびフルーツ系の単体香調を有するものが特に好ましい。単体香料の二種以上からなる調合香料は、これらの単体香調の2種以上を含む混合香調を有するものとすることができる。
【0125】
好ましく使用できる具体的な単体香料としては、グリーン系香調のものとして、シス−3−ヘキセニルサリシレート、トリプラール、ヘリオナール、および、4−メチル−3−デセノール、9−デセノール、1−ウンデセノール、シス−6−ノネノールなどの「一つの不飽和結合を含む炭素数9〜11の主鎖を有するアルコール」;バニラ系香調のものとして、バニリン、エチルバニリン、へリオトロピン;バルサム系香調のものとして、ケイ皮酸ベンジル、イソオイゲノール;ウッディ系香調のものとして、α−ヨノン、β−ヨノン、メチルヨノン、アセチルセドレン、サンタロール;ムスク系香調のものとして、ガラクソリド、エチレンブラシレート;アンバー系香調のものとして、イソ・イー・スーパー、アンブロキサン;フルーツ系香調のものとして、メチル−p−トリルグリシド酸エチル、メチルアンスラニレート、酢酸オルト−tert−ブチルシクロヘキシル、および、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトンなどの「5〜6員環構造を有する炭素数9〜11のラクトン化合物」;フローラル系香調のものとして、ゲラニオール、シトロネロール、フェニルエチルアルコール、メチルジヒドロジャスモネート、ベンジルベンゾエート;その他、上記に分類し難い香調、複合香調などを有するものとして、オイゲノール、インドール、フェニルエチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、シトロネリルニトリル、リリーアルデヒド、リラール、α−ダマスコン、β−ダマスコンなどが挙げられる。
【0126】
なかでも、上記単体香料が、4−メチル−3−デセノール、9−デセノール、1−ウンデセノール、シス−6−ノネノールなどの「一つの不飽和結合を含む炭素数9〜11の主鎖を有するアルコール」、γ−ノナラクトン、γ−デカラクトン、δ−デカラクトン、γ−ウンデカラクトンなどの「5〜6員環構造を有する炭素数9〜11のラクトン化合物」であることが好ましい。
【0127】
香料の配合量は、本発明の効果が得られる範囲であればよく、例えば、変性炭化水素樹脂に対する質量割合で、5ppm〜1000ppmの範囲内とすることができ、なかでも10ppm〜500ppmの範囲内であることが好ましく、特に20ppm〜200ppmの範囲内であることが好ましい。上記配合量が上述の範囲内であることにより、効果的に臭気を低減することができるからである。
【0128】
変性炭化水素樹脂に香料を配合する方法としては、例えば、炭化水素樹脂を溶融して所定量の香料を添加し、十分に攪拌混合する方法を用いることができる。
【0129】
(3)吸着剤
吸着剤としては、配合することで変性炭化水素樹脂に由来する臭気を低減可能なものであればよい。このような吸着剤としては、上記「1.炭化水素樹脂」の項に記載の吸着剤と同様とすることができる。
【0130】
吸着剤の配合量としては、本発明の効果が得られる範囲であればよく、例えば、変性炭化水素樹脂100質量部に対して、0.05質量部〜5質量部の範囲内とすることができ、なかでも0.08質量部〜1質量部の範囲内であることが好ましく、特に、0.1質量部〜0.5質量部の範囲内であることが好ましい。上記配合量が上述の範囲内であることにより、臭気を低く抑えることができるからである。
【0131】
変性炭化水素樹脂に吸着剤を配合する方法としては、変性炭化水素樹脂に吸着剤を添加して混合する方法を用いることができる。また、変性炭化水素樹脂の製造に用いられる変性前樹脂の製造方法が接触処理工程を有する場合には、変性前樹脂の製造時に接触させた吸着剤を除去しないことにより、吸着剤が配合された変性炭化水素樹脂を得ることもできる。
【0132】
4.用途
本発明の変性炭化水素樹脂は、低臭気で、色調に優れ、耐熱色相安定性に優れるものであることから、その特性を活かして、従来の変性炭化水素樹脂を適用しうる各種の用途に適用することができる。例えば、粘着付与剤、バインダー樹脂、相溶化剤、粘接着剤改質剤、路面区画線表示材料改質剤、道路舗装材料改質剤、ゴム成型物改質剤、インキ改質剤、塗料改質剤、樹脂改質剤などに適用することができる。なかでも、粘着付与剤や路面区画線表示材料改質剤としての使用が好適である。
【0133】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0134】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の部および%は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0135】
各種の測定については、以下の方法に従って行った。
【0136】
〔重量平均分子量、Z平均分子量および分子量分布〕
試料となる変性炭化水素樹脂について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析し、標準ポリスチレン換算値の重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)を求め、分子量分布はMz/Mwの比で示した。なお、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析は、測定装置として、東ソー社製「HLC−8320GPC」を使用し、カラムは東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ」を3本連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃、1.0mL/minの流量で測定した。
【0137】
〔50質量%トルエン溶液のガードナー色数〕
試料となる変性炭化水素樹脂について、50質量%トルエン溶液を調製し、当該溶液のガードナー色数をJIS K 0071−2に従い測定した。値が小さいものほど、色調に優れる。
【0138】
〔耐熱色相安定性〕
試料となる変性炭化水素樹脂を、200℃のオーブン中に3時間静置し、その後放冷した後に、ガードナー色数をJIS K 0071−2に従い測定した。値が小さいものほど、耐熱色相安定性に優れる。
【0139】
〔軟化点(℃)〕
試料となる変性炭化水素樹脂について、JIS K 6863に従い測定した。
【0140】
〔オレフィン水添率(%)〕
試料となる変性前樹脂および変性炭化水素樹脂について、
1H−NMRスペクトル測定により各々のオレフィン量を求め、変性前後のオレフィン量の差に基づいてオレフィン水添率(%)を算出した。なお、
1H−NMRスペクトル測定では、溶媒に重クロロホルムを用い、NMR測定装置としてJMN−AL seriesAL400(JEOL社製)を用いた。
【0141】
〔酸価〕
試料となる変性炭化水素樹脂について、JIS K 0070に従って測定した。
【0142】
〔未反応の無水マレイン酸の含有量〕
試料となる変性炭化水素樹脂をトルエンに溶解させた後、水でマレイン酸として抽出して、水相をイオンクロマトグラフィで測定した。
【0143】
〔臭気評価試験〕
試料である変性炭化水素樹脂についての官能試験は、臭気対策研究協会発行の臭気の嗅覚測定法における臭気強度表示法に従って行った。具体的には、まず、1粒の大きさを約10mm×5mm×5mmとした変性炭化水素樹脂10gを120mLの耐熱性容器に入れて、アルミ箔でフタをした。そして、この変性炭化水素樹脂の入った耐熱性容器を、オーブンに入れて、温度160℃、30分間の条件で加熱し、加熱後の臭気の確認を行った。臭気の確認は、石油樹脂の臭気に慣れていない(すなわち、普段の生活において、石油樹脂の臭気に触れることのない)6人のパネルにより行った。本試験においては、嗅覚疲労を防ぐため、6人のパネルを3人ずつの2班に分けて、1班ずつ臭気を嗅ぐという方法を採用した。また、臭気を嗅ぐサンプルの順番は、無作為とした。
0:無臭
1:やっと認知できる臭い(検知閾値濃度)
2:何の臭いであるか判る弱い臭い(認知閾値濃度)
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
なお、官能試験の結果は、6人のパネルの判定値のうち、最大値と最小値をそれぞれ除き、残りの4人の判定値を平均することにより求めた。官能試験の値は、小さいほうが好ましい。
【0144】
〔実施例1〕
重合反応器にシクロペンタン35.3部及びシクロペンテン25.0部の混合物を重合反応器に仕込み、60℃に昇温した後、塩化アルミニウム0.9部を添加した(混合物M1)。引き続き、1,3−ペンタジエン35.3部、イソブチレン6.9部、スチレン29.2部、C4−C6不飽和炭化水素0.5部、及びC4−C6飽和炭化水素8.4部からなる混合物a1と、t−ブチルクロライド0.6部とを、それぞれ、別のラインを通して、60分間に亘り温度(60℃)を維持して、上記混合物M1を含む重合反応器に連続的に添加しながら重合を行った。その後、水酸化ナトリウム水溶液を重合反応器に添加して、重合反応を停止した。なお、重合反応時の重合反応器中の成分の種類及び量を表1にまとめて示した。重合停止により生成した沈殿物をろ過により除去し、変性前樹脂および未反応単量体等を含む重合体溶液を得た。
【0145】
また、重合体溶液の一部を取り出し、これを蒸留釜に仕込み、窒素雰囲気下で加熱し、重合溶媒と未反応単量体を除去し、変性前樹脂とした。
【0146】
また、多管式熱交換型水素添加反応装置に、原料として重合体溶液を供給し、変性前樹脂を水素添加した。水素添加反応は、水素化触媒としてニッケルシリカ触媒(日揮触媒化成株式会社製、N108F)を使用し、水素圧1.2MPa、反応温度200℃、反応管内の滞留時間30分間、目的の水添率の樹脂を得るために理論上必要な水素量の1.7倍の条件で行った。
【0147】
変性前樹脂が水添された樹脂を含む重合体溶液を蒸留釜に仕込み、窒素雰囲気下で加熱し、重合溶媒と未反応単量体を除去した。次いで、200℃以上で、飽和水蒸気を吹き込みながら、低分子量のオリゴマー成分を留去した。
【0148】
次に、溶融状態の樹脂100部に対して、無水マレイン酸3.1部を添加し、230℃で1時間付加反応させた後、酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、商品名:イルガノックス1010)0.2部を添加し、混合した。その後、蒸留釜から溶融樹脂を取り出し、室温まで放冷して、実施例1の変性炭化水素樹脂を得た。
【0149】
得られた実施例1の変性炭化水素樹脂について、重量平均分子量、Z平均分子量、分子量分布、ガードナー色数、軟化点、酸価および未反応無水マレイン酸量を測定し、オレフィン水添率を求め、さらに臭気評価試験を行った。これらの測定結果は、下記表1にまとめて示した。
【0150】
〔実施例2〜4,比較例1〜5〕
重合反応器に添加する成分の種類および量、重合温度、ならびに水添条件を下記表1に示すとおりにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4及び比較例1〜5の変性炭化水素樹脂をそれぞれ得た。なお、実施例1に記載のないジイソブチレン、ジシクロペンタジエン、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、C9飽和炭化水素、トルエン、キシレン、三フッ化ホウ素、及びベンジルクロライドは、1,3−ペンタジエン等と共にt−ブチルクロライドと混合し、重合に供した。
【0151】
得られた実施例2〜4及び比較例1〜5の変性炭化水素樹脂については、実施例1と同様の測定を行った。これらの測定結果は、下記表1にまとめて示した。
【0152】
【表1】
【0153】
表1から以下のことが分かる。
【0154】
比較例1の変性炭化水素樹脂は、水添されていないため、色調に劣り、臭気評価が低かった。比較例2の変性炭化水素樹脂は、オレフィンの水添率が高く、酸変性されなかったため、未反応の無水マレイン酸が多く残留したとともに、特定の組成を有さないため、臭気評価が低かった。比較例3、4の変性炭化水素樹脂は、特定の組成を有さないため、臭気評価が低く、色調に劣っていた。比較例5の変性炭化水素樹脂は、オレフィンの水添率が高く、未反応の無水マレイン酸が多く残留したため、臭気評価が低かった。
【0155】
一方、実施例1〜4の変性炭化水素樹脂は、特定の組成を有する炭化水素樹脂を水添した樹脂をさらに酸変性したものであり、オレフィンの水添率が所定の範囲内であることから、低臭気で、色調に優れ、耐熱色相安定性にも優れていた。