特許第6973530号(P6973530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000002
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000003
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000004
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000005
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000006
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000007
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000008
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000009
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000010
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000011
  • 特許6973530-波数ベクトルを使った体積表面生成器 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973530
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】波数ベクトルを使った体積表面生成器
(51)【国際特許分類】
   G06T 17/30 20060101AFI20211118BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20211118BHJP
   G09B 23/28 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   G06T17/30
   A61B5/055 390
   G09B23/28
【請求項の数】20
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-38288(P2020-38288)
(22)【出願日】2020年3月6日
(65)【公開番号】特開2020-144868(P2020-144868A)
(43)【公開日】2020年9月10日
【審査請求日】2020年3月6日
(31)【優先権主張番号】16/296,113
(32)【優先日】2019年3月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ プラサド アガラ ベンカテッシャ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】シュリニジー シュリニヴァサ
【審査官】 板垣 有紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−209531(JP,A)
【文献】 特開2016−135252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 11/00 − 19/20
A61B 5/00 − 5/398
G09B 23/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の頭部の三次元体積モデルから表面モデルを生成するための方法を実施するための命令を実行するコンピュータ・システム上で実装される方法であって:
前記三次元体積モデルに向けて複数の波数ベクトルを発射する段階であって、各波数ベクトルは波長によって特徴付けられ、捕捉方向にそって発射される、段階と;
各波数ベクトルが前記三次元体積モデルによって吸収される交差点を決定する段階と;
前記交差点から人の頭部の表面モデルを生成する段階とを含む、
コンピュータ実装される方法。
【請求項2】
前記三次元体積モデルが磁気共鳴撮像(MRI)データに基づく、請求項1のコンピュータ実装される方法。
【請求項3】
人の頭部の前記表面モデルが人の頭部の外面の表面モデル、人の頭蓋骨の表面モデルまたは人の脳の表面モデルである、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項4】
前記三次元体積モデルが三次元の点群を含む、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項5】
人の頭部の前記表面モデルに基づいてその人についての頭部マスクを生成する段階をさらに含む、
請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項6】
人の頭部の前記表面モデルに基づいてその人についての半現実的モデルを生成する段階をさらに含む、
請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項7】
前記波数ベクトルが波動バンドルに編成され、各波動バンドルは、同じ波長をもち同じ捕捉方向に沿って発射されるが互いに横方向にオフセットされている複数の波数ベクトルを含み、前記波動バンドルは、逆方向に伝搬する捕捉方向に沿って発射される波動バンドルの対を含む、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項8】
前記波動バンドルは矢状方向、冠状方向および体軸方向に沿って発射される波動バンドルを含む、請求項7記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項9】
前記波動バンドルが、矢状方向、冠状方向および体軸方向の間の主対角線方向に沿って発射される波動バンドルを含む、請求項8記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項10】
前記波数ベクトルが波動バンドルに編成され、各波動バンドルは、同じ波長をもち同じ捕捉方向に沿って共通の発射面から発射されるが互いに横方向にオフセットされている複数の波数ベクトルを含む、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項11】
各波数ベクトルが前記三次元体積モデルによって吸収される交差点を決定する段階が:
その波数ベクトルが、閾値より高い前記三次元体積モデル中の損失値に最初に遭遇するところを決定することを含む、
請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項12】
各波数ベクトルが前記三次元体積モデルによって吸収される交差点を決定する段階が:
前記三次元体積モデル中で前記波数ベクトルが遭遇する累積損失値を計算し;
該累積損失値に基づいて、各波数ベクトルが前記三次元体積モデルによって吸収される交差点を決定することを含む、
請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項13】
前記波数ベクトルが前記三次元体積モデルのサンプルと整列されている、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項14】
前記波数ベクトルが前記三次元体積モデルのサンプルと整列されておらず、各波数ベクトルが前記三次元体積モデルによって吸収される交差点を決定する段階が、前記三次元体積モデルのサンプルを補間することを含む、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項15】
前記交差点が波長より細かい精度で決定される、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項16】
前記交差点から前記表面モデルを生成する段階が:
前記交差点を、前記表面モデルとしての単一の点群に統合することを含む、
請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項17】
前記交差点を単一の点群に統合する段階が、点の数を少なくとも50パーセント減らす、請求項16記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項18】
各波数ベクトルが前記三次元体積モデルによって吸収される交差点を決定する段階が、異なる波数ベクトルについて並列に実行される、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項19】
前記波数ベクトルが波動バンドルに編成され、各波動バンドルは、同じ波長をもち同じ捕捉方向に沿って発射されるが互いに横方向にオフセットされている複数の波数ベクトルを含み、各波数ベクトルが前記三次元体積モデルによって吸収される交差点を決定する段階が、前記波動バンドル内の異なる波数ベクトルについて並列に実行される、請求項1記載のコンピュータ実装される方法。
【請求項20】
人の頭部の損失値の三次元体積モデルから表面モデルを生成するための実行可能なコンピュータ・プログラム命令を記憶している非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ・プログラム命令はコンピュータ・システムによって実行可能であり、前記コンピュータ・システムに:
前記三次元体積モデルに向けて一組の波数ベクトルを発射する段階であって、各波数ベクトルは波長によって特徴付けられ、捕捉方向にそって発射される、段階と;
各波数ベクトルの、前記三次元体積モデルの表面との交差点を決定する段階と;
前記交差点から人の頭部の表面モデルを生成する段階とを含む、
方法を実行させるものである、
記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概括的には表面モデルの生成に、たとえば脳磁図記録法(magnetoencephalography、MEG)または他の型の脳造影法で使用されうるような頭部の体積データから人の脳または頭蓋骨の表面モデルを生成することに関する。
【背景技術】
【0002】
脳磁図記録法(MEG)では、脳の電気活動が磁場を生じさせ、これが脳の周囲の種々の位置に配置された磁場センサーによって捕捉される。これらの信号は、医学的な状態を診断すること、脳機能を測定することおよび研究を実施することといった、さまざまな目的のために解析されることができる。MEGは特に時間的応答を検出するために好適である。ある一般的なシナリオでは、被験者は種々の型の刺激を受けるまたは種々の型の活動を実行し、結果として得られるMEG信号がある種の応答について吟味される。その応答の有無が、医学的状態の指標でありうる。被験者の人口集団を横断して、たとえばある医学的状態のある群とない群との間で、統計的解析が実行されることもできる。
【0003】
多くのMEG用途では、人の頭部の、たとえば頭部のもしくは頭蓋骨もしくは脳自身の外側表面の表面モデルをもつことが有用である。これらは、MEG処理パイプラインにおけるその後の使用のために頭部モデルを形成するために使用されることができる。しかしながら、多くの場合、表面モデルは初期には存在しない。むしろ、その代わりに頭部の三次元の体積モデルが存在しうる。一般的な例は、人の頭部の磁気共鳴撮像(MRI)スキャンであり、これは、積層されて頭部の三次元体積モデルを構築しうる。表面モデルは次いで、この三次元体積モデルから生成される。
【0004】
通常の手法は、三次元体積モデルをボクセルの集合として表現し、次いでボクセルを減らすために頂点クラスタリング(Vertex Clustering)および間引きを使うことに基づく。しかしながら、これは時間がかかることがある。特にテッセレーションおよびメッシュ生成段階がそうである。このプロセスは最近傍情報を使うので、このプロセスを並列化を使って高速化することは容易ではない。また、最終結果は曲がった面を正確に捕捉しないことがあり、局所的な特徴がひどく歪められることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、MEG用途のためのものを含め、三次元体積モデルから表面モデルを生成するための、よりよい手法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、人の頭部の三次元体積モデルから表面モデルを生成するためのコンピュータ実装される方法を提供することによって従来技術の限界を克服する。人の頭部は、損失値(すなわち吸収値)の三次元体積モデルとしてモデル化される。波数ベクトル(wave vectors)が体積モデルのほうに発射される。それぞれの波数ベクトルは、波長および捕捉方向(伝搬方向)によって特徴付けられる。発射された波数ベクトルは体積によって吸収され、波数ベクトルが吸収される点(交差点と称される)が決定される。人の頭部の表面モデルは、波数ベクトルからの交差点の集合から生成される。
【0007】
他の側面は、上記のいずれかに関係するコンポーネント、装置、改善、方法、プロセス、アプリケーション、コンピュータ可読媒体および他の技術を含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本特許が優先権主張を行っている米国特許出願US16/296113又は出願ファイルはカラーで仕上げられた少なくとも一つの図面を含む。カラー図面をもつこの特許または特許出願公開のコピーは、要求し、必要な手数料を支払えば、庁によって提供される。
【0009】
本開示の実施形態は、付属の図面における例との関連で参酌されるときの以下の詳細な説明および付属の請求項からより容易に明白になるであろう他の利点および特徴をもつ。
【0010】
図1】脳磁図記録法(MEG)順モデルのフロー図である(従来技術)。
【0011】
図2】波数ベクトルを発射することによって人の頭部の三次元体積モデルから表面モデルを生成するためのフロー図である。
【0012】
図3】波数ベクトルを示す図である。
【0013】
図4】三次元体積モデルに向けての、波動バンドルおよびその逆伝搬する波動バンドルの発射を示す図である。
【0014】
図5】異なる捕捉方向からの波動バンドルの発射を示す図である。
【0015】
図6A】波動バンドルの発射によって生成される脳表面モデルの例を示す図である。
図6B】波動バンドルの発射によって生成される脳表面モデルの例を示す図である。
図6C】波動バンドルの発射によって生成される脳表面モデルの例を示す図である。
図6D】波動バンドルの発射によって生成される脳表面モデルの例を示す図である。
【0016】
図7】A〜Cは、波動バンドルの発射によって生成される別の脳表面モデルの例を示す図である。
【0017】
図8】波動バンドルを調整するためのユーザー・インターフェースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面および以下の記述は単に例としての好ましい実施形態に関する。以下の議論から、本稿に開示される構造および方法の代替的な実施形態が、特許請求されるものの原理から外れることなく用いられうる有望な代替として容易に認識されるであろうことを注意しておくべきである。
【0019】
図1(従来技術)は、脳磁図記録法(MEG)順モデルのフロー図である。MEGでは、磁場センサーが脳のまわりの種々の位置に配置される。たとえば、患者がMEGセンサーのアレイをもつ設備内部に頭を位置させてもよく、あるいは患者がMEGセンサーのアレイを含むヘッドギアを装着してもよい。脳の電気活動は磁場を生じ、種々の位置での磁場がMEGセンサーによって測定される。図1のプロセスは、脳活動の所与のパターンについて各MEGセンサーにおける磁場を推定する順モデルである。この順モデルは、次いで、各MEGセンサーにおける磁場の測定値を与えられて、測定された磁場を生じた電気的な脳活動を推定するという逆問題を解くために使用されることができる。
【0020】
プロセスは三つの主要なステップをもつ。患者の頭部のモデルが生成される(110)。脳内の磁場の源のモデルが生成される(120)。源モデル120は、MEGセンサーのそれぞれにおける磁場を推定(130)するために頭部モデル110に適用される。
【0021】
この例では、患者の頭部のMRIスライスが利用可能であると想定する。頭部モデル110は次のように生成されうる。MRIスライスはまず患者の頭部の三次元体積モデル、たとえば患者の頭部をボクセルとして表現する三次元モデル112にまとめられる。関連する構造の表面モデル114は三次元体積モデルから生成される。以下の例では、患者の脳の表面モデルが生成されるが、同じ技法は患者の頭部または頭蓋骨の表面モデルを生成するために使われてもよい。のちにより詳細に論じる図2は、体積モデルが損失値(すなわち吸収値)の三次元分布であり、表面モデル114が三次元体積モデルにおいて波数ベクトルを発射することによって生成される例を示している。表面モデル114は頭部モデル、たとえば単一球面頭部モデル(single spherical head model、SSM)または重複球面頭部モデル(overlapping spherical head model、OSM)を生成116するために使われる。SSMでは、患者の脳が、表面モデル114へのフィットに基づいて単一の球によって表現される。OSMでは、患者の脳は、各MEGセンサーが一つの球に対応する、複数の重なり合う球によって表現される。球は、部分的には、MEGセンサーの近傍において脳の表面の局所的な曲率に一致するよう選ばれる。SSM/OSM 116は、脳内の源からMEGセンサーへの磁場の伝搬をモデル化するために使われる。
【0022】
脳内の源は典型的には双極子源としてモデル化120される。脳内のシナプス電気活動は電流双極子としてモデル化されうる。モデルは、脳の体積を通じた双極子の分布122を含む。脳のある位置における双極子を与えられ、脳体積のモデル(たとえばOSM、SSM、他の半現実的または現実的な頭部モデル)を与えられたら、各双極子によって生成される磁場がシミュレート124されてもよい。各MEGセンサーにおける全磁場を推定するために、すべての双極子の寄与が総合130される。これは時に、場導出行列(lead field matrix)と称される。
【0023】
図2は、波数ベクトルを発射することによって人の頭部の三次元体積モデルから表面モデルを生成するためのフロー図である。これは、図1におけるステップ114の例示的実装である。人の頭部の三次元体積モデルは前処理240されてもよい。前処理の例は、メジアン・フィルタリング、平均、高域通過フィルタリング、非等方拡散およびノイズ・フィルタリングを含む。異なる波長の波数ベクトルが異なる位置から、異なる伝搬方向(捕捉方向ともいう)をもって三次元体積モデルに向かって発射242される。三次元体積モデルは吸収値の分布である。各波数ベクトルが吸収される点が決定244される。これらの点は、交差点と称される。表面モデルはこれらの交差点から生成246される。
【0024】
図3は、波数ベクトル310を示す図である。波数ベクトルは原点O、捕捉方向s〔ベクトル〕および波長λによって定義される。波数ベクトルは、原点Oから捕捉方向sに沿って、体積モデル320によって吸収されるまで伝搬する。吸収点330は前記交差点である。交差点330の位置は原点Oから波長λ単位で測られる。
【0025】
図3に示されるプロセスは、患者の脳に向けた物理的な波の物理的な発射には関わらない。むしろ、「波数ベクトルが発射される」または「波数ベクトルが送信される」という言い方は、体積モデルに対して実行される数学的演算を記述する句である。患者の物理的な頭部または脳に向けて実際に波を発射または送信することはない。波長λはこのプロセスのサンプリング周期と同様である。より大きな波長を使うほど、計算するのは速いが空間分解能は低いプロセスになる。より短い波長を使うほど、空間分解能は高くなるが、より長い計算時間を必要とする。ある手法では、異なる波長の複数の波数ベクトルが使われる。たとえば、より長い波長の波数ベクトルが脳表面の近似的な位置を推定するために初期に発射され、のちに、推定された位置を洗練するために、だんだん短くなる波長の波数ベクトルが発射されてもよい。このようにして、脳表面の位置が、ボクセルより小さく、波長より小さい精度で決定されうる。
【0026】
さらに、図3では、交差点330は波数ベクトル310が脳体積320の境界に当たる位置として示されている。この図では、境界は非常によく定義されており、特定の位置で始まり、非吸収から完全吸収まで瞬時に遷移する。波数ベクトル310が体積320に向かって伝搬する際、境界に当たるまでは全く吸収されず、次いで、特定の点において完全に吸収される。しかしながら、実際の体積モデルは部分的に吸収性であることがある。体積モデルにおける損失値は、完全に非吸収または完全に吸収の二値だけではなく、アナログ値を取りうる。ある手法では、波数ベクトルが吸収されると考えられる点(すなわち交差点)は、波数ベクトルが体積モデル中である閾値より高い損失値に最初に遭遇するところである。別の手法では、交差点は、伝搬する際に波数ベクトルが遭遇する累積損失値によって決定される。累積損失値が何らかの閾値を超えるとき、波数ベクトルは吸収されたと考えられる。
【0027】
さらに、体積モデル320はボクセルの集合または不規則な間隔のサンプルもしくは波数ベクトルと整列していてもいなくてもよいサンプルの三次元の点群であってもよい。これらの場合、体積モデルのサンプルは、波数ベクトルに沿った損失および交差点の位置を決定するために補間されてもよい。
【0028】
図3は、単一の波長の単一の波数ベクトル310の、単一の原点からの、単一の捕捉方向に沿った発射を示している。表面モデルを生成するためには、異なる波長を使って、異なる原点から、異なる捕捉方向に沿って多くの波数ベクトルが発射される。
【0029】
ある手法では、波数ベクトルは波動バンドルに編成される。各波動バンドルは、同じ捕捉方向に沿って発射された同じ波長をもつ多数の波数ベクトルを含む。しかしながら、波数ベクトルは互いに横方向にオフセットされている。このように、みな平行に、ただし互いから横方向に離間されて発射される波数ベクトルのアレイがあってもよい。波動バンドル内の波数ベクトルは異なる点で体積モデルに交差し、よってある方向から見た脳の表面プロファイルを与える。同じ方向に、ただし異なる波長で発射される追加的な波動バンドルは、より高い精度および/または短縮された計算時間を提供できる。
【0030】
図4は、三次元体積モデル420へ向けての波動バンドル440およびその逆伝搬する波動バンドル442の発射を示す図である。波動バンドル440は、脳の前側表面を定義する交差点を生成する。波動バンドル442は脳の後側表面上の交差点を生成する。これは、前側および後側の表面の良好なサンプリングを提供できる。しかしながら、これら二つの波動バンドルは、脳の上、下または横をプロファイリングするには好適でない捕捉方向に沿って伝搬する。
【0031】
ある手法では、直方体450が脳体積モデル420を囲み、波動バンドルは直方体の異なる面から発射される。図4は、直方体450の前側および後側の面から発射される波動バンドルを示している。波動バンドルは、左右の面からおよび上下の面からも発射されてもよい。
【0032】
異なる方向に発射される波動バンドルは、集団的に、表面の完全な360度のビューを提供できる。ある手法では、波動バンドルの諸対が矢状方向、冠状方向および体軸方向に沿って発射される。各対の一方の波動バンドルはある方向に発射され、その対の他方の波動バンドルは逆に伝搬する方向に発射される。さらなる精度が所望される場合は、これらの主方向の間の対角線に沿って追加的な波動バンドルが発射されてもよい。
【0033】
図5は、種々の捕捉方向からの波動バンドルの発射を示す図である。明確にするため、逆伝搬する波動バンドルは示されていない。波動バンドル540は冠状方向に沿って(前後方向にまたは冠状面に垂直に)発射され、波動バンドル542は体軸方向に沿って(上下方向にまたは体軸面に垂直に)発射される。矢状方向(左右方向または矢状面に垂直な方向)は第三の主方向である(図5には示さず)。波動バンドルは、これらの方向に対する主対角線に沿っても発射されてもよい。図5では、波動バンドル550および552は、冠状方向および体軸方向への主対角線に沿って発射される。
【0034】
この手法の一つの利点は、波数ベクトルおよび波動バンドルが平行に発射されうるということである。各波数ベクトルが体積モデルによって吸収される交差点は他の波数ベクトルに依存しない。よって、異なる波数ベクトルおよび/または波動バンドルについて並列に決定ができる。
【0035】
異なる波動バンドルからの交差点の集合が、単一の点群に統合され、この点群が脳についての表面モデルとして使われる。交差点のすべてが必ずしも使用されなくてもよい。交差点の密なサンプリングがある領域では、点群内のサンプルの総数を減らすために、交差点は選別されたり、あるいは組み合わされたりしてもよい。サンプルの総数は、その後の処理のために要求される分解能に依存して調整されることができる。ある手法では、サンプルの数は少なくとも50パーセント、60パーセントまたはそれ以上、削減される。
【0036】
図6A〜6Dは、波動バンドルを発射することによって生成される脳表面モデルを示している。図6Aは、矢状方向に沿って発射される波動バンドルによって生成される交差点の群を示している。赤および青は、二つの逆伝搬する波動バンドルからの点を示す〔添付のモノクロ図面では赤は比較的明るい部分、青は黒っぽい部分として表わされている。審査等に必要であれば出願人はカラー図面を参考資料として提出する用意がある〕。図6Bは、冠状方向に沿って発射された波動バンドルからの交差点を示している。図6Cは、体軸方向の波動バンドルからの交差点を示している。図6Dは、図6A〜6Cの点群を組み合わせることによって生成される点群である、完全な表面モデルを示している。
【0037】
図7のA〜Cは、別の例を示している。図7のA〜Cは、図7のAのほぼ正面ビューから、図7のBの斜め前ビュー、図7のCの側面ビューへと回転する。この例では、表面モデルは、脳の脳溝および脳回の、より詳細な構造を捕捉している。
【0038】
もう一つの側面では波数ベクトルの集合の組成は調整可能である。たとえば、各波動バンドル内の波数ベクトルの数、波数ベクトルの間の横方向間隔(非一様な間隔を含む)、波長の数および波長の値、波動バンドルの数およびその捕捉方向がみな調整されうる。前処理(たとえばノイズ・フィルタリング)および後処理(たとえば単一球面頭部モデルまたは重複球面頭部モデルのフィッティング)も調整可能であってもよい。最終的な表面モデルにおける点の数または密度も調整されてもよい。
【0039】
ある手法では、ユーザーはユーザー・インターフェースを介して調整をする。図8は、例示的なユーザー・インターフェースを示す。スライダー810は、ユーザーが前処理の間のノイズ・フィルタリングの量を選択することを許容する。たとえば、ユーザー・インターフェースは、ノイズ削減のために使われるフィルタの型またはカーネル・サイズの選択を許容してもよい。メニュー820は、どの波動バンドルが発射されるかを決定する。ユーザー・インターフェースは、波動バンドルの数および波動バンドルの捕捉方向の選択をも許容してもよい。スライダー830は、波動バンドル毎の波数ベクトルの数、すなわち波数ベクトルの間の横方向オフセットまたは波数ベクトルの密度を決定する。実行ボタン840は、選択されたパラメータを使って上記プロセスを開始する。
【0040】
別の手法では、調整は、さまざまな波数ベクトルが発射される際に動的または適応的になされる。前記集合中の、後に発射される波数ベクトルのパラメータは、前記集合中の先に発射された波数ベクトルの交差点に基づいて調整されてもよい。たとえば、前に発射された波数ベクトルがある表面領域の疎なサンプリングにつながる場合、後の波数ベクトルは、その領域のサンプリングを埋めるように選択されてもよい。
【0041】
上記の詳細な説明は多くの個別的事項を含んでいるが、これらは本発明の範囲を制限するものではなく、単に種々の例を示すものと解釈されるべきである。本開示の範囲が上記で詳細に論じられていない他の実施形態を含むことを理解しておくべきである。たとえば、上記の技法は他の脳造影用途または体積モデルから表面モデルが生成される他の状況において使用されてもよい。付属の請求項において定義される精神および範囲から外れることなく、当業者に明白であろうさまざまな他の修正、変更および変形が、本稿に開示される方法および装置の構成、動作および詳細においてなされてもよい。よって、本発明の範囲は付属の請求項およびその法的な等価物によって決定されるべきである。
【0042】
代替的な実施形態が、コンピュータ・ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアおよび/またはそれらの組み合わせにおいて実装される。実装は、プログラム可能なプロセッサによる実行のためのコンピュータ可読記憶デバイス内に有体に具現されたコンピュータ・プログラム・プロダクトにおいて実装されることができる;方法ステップは、入力データに対して作用して出力を生成することによって機能を実行するよう命令のプログラムを実行するプログラム可能なプロセッサによって実行されることができる。実施形態は、有利には、プログラム可能なコンピュータ・システム上で実行可能な一つまたは複数のコンピュータ・プログラムにおいて実装されることができる。該プログラム可能なコンピュータ・システムは、データ記憶システムからデータおよび命令を受信し、データ記憶システムにデータおよび命令を送信するよう結合された少なくとも一つのプログラム可能なプロセッサと、少なくとも一つの入力装置と、少なくとも一つの出力装置とを含む。各コンピュータ・プログラムは、高レベルの手続き型またはオブジェクト指向プログラミング言語で、あるいは望むならアセンブリもしくは機械語で実装されることができる。いずれの場合でも、言語はコンパイルされるまたはインタープリットされる言語であることができる。好適なプロセッサは、例として、汎用および特殊目的のマイクロプロセッサの両方を含む。一般に、プロセッサは読み出し専用メモリおよび/またはランダムアクセスメモリから命令およびデータを受領する。一般に、コンピュータは、データ・ファイルを記憶するために一つまたは複数の大容量記憶デバイスを含む;そのような装置は、磁気ディスク、たとえば内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク;光磁気ディスク;および光ディスクを含む。コンピュータ・プログラム命令およびデータを有体に具現するのに好適な記憶デバイスは、あらゆる形の不揮発性メモリを含み、たとえば、EPROM、EEPROMおよびフラッシュメモリデバイスのような半導体メモリ・デバイス;内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスクのような磁気ディスク;光磁気ディスク;およびCD-ROMディスクを含む。上記のいずれも、ASIC(特定用途向け集積回路)、FPGAおよび他の形のハードウェアによって補足されることができ、あるいはその中に組み込まれることができる。
【符号の説明】
【0043】
110 頭部モデル
112 ボクセル体積データ
114 表面モデル
116 SSM/OSM
120 源モデル
122 双極子格子体積
124 物理的双極子をシミュレート
130 双極子の、MEGセンサーへの寄与

240 前処理
242 波数ベクトルを発射
244 交差点を決定
246 表面モデルを生成

810 ノイズ・レベル
820 方向性/視点数
830 波動バンドル密度
840 表面を抽出
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8