(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973535
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】双極子位置特定で使用される多重楕円体頭部モデルを生成する方法及び非一時的なコンピュータ可読記憶媒体
(51)【国際特許分類】
A61B 5/05 20210101AFI20211118BHJP
【FI】
A61B5/05
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-41438(P2020-41438)
(22)【出願日】2020年3月11日
(65)【公開番号】特開2020-146463(P2020-146463A)
(43)【公開日】2020年9月17日
【審査請求日】2020年3月11日
(31)【優先権主張番号】16/353,549
(32)【優先日】2019年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ プラサド アガラ ベンカテッシャ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】シュリニジー シュリニヴァサ
【審査官】
藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−276996(JP,A)
【文献】
特開平07−227385(JP,A)
【文献】
特開平03−118040(JP,A)
【文献】
米国特許第5687724(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05
A61B 5/0515−5/0522
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータシステム上で実装される方法であって、
前記コンピュータシステムは、磁場センサ(MEGセンサ)の組に対して双極子位置特定で使用される多重楕円体頭部モデルを生成する方法を実行する命令を実行する、前記方法において、
前記MEGセンサの組の位置を呼び出すことと、
各MEGセンサについて、脳ボリュームにおける双極子位置特定のモデル化に適さないゴースト楕円体の生成を防ぐ1以上の制約に従って、対応する楕円体を計算することと
を有し、
前記計算された楕円体は、脳のボリュームにおいて双極子位置特定をモデル化するために使用され、
前記ゴースト楕円体は、前記脳のボリュームを完全に囲むが、中心が前記脳のボリュームの外にある楕円体、又は完全に前記脳のボリューム外にある楕円体である、方法。
【請求項2】
前記ゴースト楕円体が、前記脳のボリュームを完全に囲むが、中心が前記脳のボリュームの外にある楕円体である場合に、前記1以上の制約は、少なくとも50%が前記脳のボリュームと重なり合わないボリュームを有している楕円体の生成を防ぐ、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計算された楕円体の少なくとも1つは、前記脳の全表面に合う大域的な球体である、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1以上の制約は、前記楕円体の中心が前記脳のボリューム内にあるという制約を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1以上の制約は、前記楕円体の長軸が、前記脳のボリュームを完全に囲む最小球体の直径を超えないという制約を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記対応する楕円体を計算することは、前記MEGセンサに関連する前記脳の表面上点に楕円体を適合させることを有し、
前記1以上の制約は、少なくとも所定数の点が前記楕円体を適合させるために使用されるという制約を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの計算された楕円体について、前記1以上の制約は、
当該計算された楕円体の中心が、(a)対応するMEGセンサの位置と、(b)該MEGセンサに最も近い前記脳の表面上の点とを通る線上にあることと、
当該計算された楕円体が、前記MEGセンサに最も近い前記脳の表面上の前記点を含むことと、
当該計算された楕円体の長軸が、前記脳のボリュームを完全に囲む最小球体の直径よりも長くないことと
を求める、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの計算された楕円体について、前記1以上の制約は、
当該計算された楕円体の中心が、(a)対応するMEGセンサの位置と、(b)前記脳の全表面に合う大域的な球体の中心とを通る線上にあることと、
当該計算された楕円体が、前記MEGセンサに最も近い前記脳の表面上の点を含むことと、
当該計算された楕円体の半長軸が、前記点と前記大域的な球体の中心との間の距離よりも長くないことと
を求める、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの計算された楕円体は、前記1以上の制約を満足する計算された候補楕円体の一群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記計算された候補楕円体の一群は全て、中心が直線に沿って位置している、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記直線は、対応するMEGセンサの位置を通る、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記直線は、対応するMEGセンサに最も近い前記脳の表面の範囲を通る、
請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記直線は、対応するMEGセンサの位置、該対応するMEGセンサに最も近い前記脳の表面の範囲、及び前記脳のボリュームの位置の中の少なくとも2つの領域を通る、
請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記直線は、前記脳の表面の法線である、
請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記計算された候補楕円体の一群は全て、対応するMEGセンサの位置、該対応するMEGセンサに最も近い前記脳の表面の範囲、及び前記脳のボリュームの位置の中の少なくとも2つの領域によって定義されるエリア又はボリューム内に中心がある、
請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記計算された候補楕円体の一群は全て、前記脳のボリュームによって囲まれている前記一群の中の最大球体の直径、前記脳のボリュームを完全に囲む前記一群の中の最小球体の直径、及び前記脳のボリューム内に中心がある前記一群の中の最小球体の直径の中の1つである最大量を超えない長軸を有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記計算された候補楕円体の一群は全て、前記MEGセンサに対する前記脳の表面上の最近点を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項18】
磁場センサ(MEGセンサ)の組に対して双極子位置特定で使用される多重楕円体頭部モデルを生成するための実行可能なコンピュータプログラム命令を記憶している非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、
前記命令は、コンピュータシステムによって実行され、該コンピュータシステムに、
前記MEGセンサの組の位置を呼び出すことと、
各MEGセンサについて、脳ボリュームにおける双極子位置特定のモデル化に適さないゴースト楕円体の生成を防ぐ1以上の制約に従って、対応する楕円体を計算することと
を有する方法を実行させ、
前記計算された楕円体は、脳のボリュームにおいて双極子位置特定をモデル化するために使用され、
前記ゴースト楕円体は、前記脳のボリュームを完全に囲むが、中心が前記脳のボリュームの外にある楕円体、又は完全に前記脳のボリューム外にある楕円体である、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脳磁図(magnetoencephalography)(MEG)のための双極子位置特定(dipole localization)で使用されることがある多重球体(multi-sphere)頭部モデルを生成することに概して関係がある。
【背景技術】
【0002】
脳磁図(MEG)では、脳の電気活動により磁場が発生し、これは、脳の周りの異なった場所に位置する磁場センサ(MEGセンサ)によって捕捉される。それらの信号は、病状の診断、脳機能の測定、及び研究の実施といった様々な目的のために解析され得る。それらは、時間的な反応を検出するのに特に適している。1つの一般的なシナリオでは、対象は、様々なタイプの刺激を経験し、あるいは、様々なタイプの活動を行い、そして、その結果得られるMEG信号が、特定の応答又は特性について分析される。例えば、既知の刺激が対象に与えられる場合に、MEG信号は、刺激後に特定の時間遅延で特定の周波数の応答を観測され得る。その応答の有無が、病状の現れであり得る。対象の母集団にまたがって、例えば、病状があるグループとないグループとの間で、統計分析も実行され得る。
【0003】
多くのMEG用途で、人の頭部の多重球体モデル(別名、重畳(overlapping)球体モデル)を有することが有用である。多重球体モデルは、MEGセンサごとに1つの球体を含む。球体は、MEGセンサに最も関係のあるエリア内の脳表面の局所曲率に適合するように選択される。次いで、それらは双極子位置特定ステップで使用され得る。このステップは、多くのMEG処理パイプラインにとって一般的なステップである。しかし、多くの場合に、従来のアプローチを用いて生成された多重球体モデルは、ゴースト球体をもたらす。ゴースト球体では、球体のボリュームのかなりの割合が脳の外にある。ゴースト球体の使用は、多数の双極子が脳の外に位置する、物理的実体に適合しないモデルをもたらす。
【0004】
よって、MEG及び他の脳造影用途のための重畳球体モデルを生成するより良いアプローチが必要である。
【発明の概要】
【0005】
1つの態様において、本開示は、ゴースト球体を、ゴースト球体でない置換球体で置き換えることによって、磁場センサ(MEGセンサ)の組に対して双極子位置特定で使用される多重球体頭部モデルを補正する、コンピュータにより実装される方法を提供する。1タイプのゴースト球体は、脳ボリュームを完全に囲むが、球体の中心が脳ボリュームの外にあるほどに大きい。他のタイプのゴースト球体は、完全に脳ボリュームの外にある。ゴースト球体を補正する様々なアプローチが以下で記載される。
【0006】
他の態様は、上記のもののいずれかに関連しているコンポーネント、デバイス、システム、改良点、方法、プロセス、アプリケーション、コンピュータ可読媒体、及び他の技術を含む。以下は、球体を基本形状として使用するが、他の形状、例えば、楕円体も使用されてよい。
【0007】
本開示の実施形態は、添付の図面の例と併せ読まれる場合に、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲からより明らかとなる他の利点及び特徴を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】脳磁図(MEG)順モデルのフロー図(先行技術)である。
【
図4】多重球体頭部モデルにおいてゴースト球体を補正するフロー図である。
【
図6A】候補置換球体群を定義するために使用され得る種々の直線を示す。
【
図6B】候補置換球体の一群を定義するために使用され得るエリアを示す。
【
図7A】候補置換球体の一群を定義するために使用され得るボリュームを示す。
【
図7B】候補置換球体の一群を定義するために使用され得るボリュームを示す。
【
図8】候補置換球体の一群に対して最大直径を定義するために使用され得る種々の球体を示す。
【
図10】ゴースト球体の補正を制御するためのユーザインターフェイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面及び以下の記載は、単に実例として、好適な実施形態に関連している。以下の説明から、本明細書で開示される構造及び方法の代替の実施形態は、請求されているものの原理から逸脱することなく用いられ得る実現可能な代替案として容易に認識されることが留意されるべきである。
【0010】
図1(先行技術)は、脳磁図(MEG)順モデルのフロー図である。MEGでは、磁場センサが、脳の周りの異なった位置に位置付けられる。例えば、患者は、MEGセンサのアレイを備えた装置の内部に自身の頭部を位置付けてよく、あるいは、患者は、MEGセンサのアレイが収容されたヘッドギアを装着してもよい。脳の電気活動により磁場が生じ、異なった位置での磁場がMEGセンサによって測定される。
図1のプロセスは、所与のパターンの脳活動について各MEGセンサでの磁場を推定する順モデル(forward model)である。次いで、この順モデルは、逆問題を解くために使用され得る。逆問題では、各MEGセンサでの磁場の測定を鑑みて、測定された磁場を生成した電気的な脳活動を推定する。
【0011】
プロセスは、3つの主たるステップを有している。患者の頭部のモデルが生成される(110)。脳内の磁場の発生源のモデルが生成される(120)。発生源モデル120は、MEGセンサの夫々での磁場を推定(130)するために頭部モデル110に適用される。
【0012】
この例において、患者の頭部のMRIスライスが利用可能であるとする。頭部モデル110は、次のように生成され得る。最初に、MRIスライスは、患者の頭部の3次元ボリュームモデル、例えば、患者の頭部をボクセル112として表す3次元モデル、へとアセンブルされる。関連構造の表面モデル114が、3次元ボリュームモデルから生成される。表面モデル114は、頭部モデル、例えば、単一球体頭部モデル(Single Sphere head Model)(SSM)又は重畳球体頭部モデル(Overlapping Sphere head Model)(OSM)を生成(116)するために使用される。続く例では、頭部モデルは球体に基づくが、他の形状、例えば、楕円体も使用されてよい。
【0013】
図2Aは、単一球体頭部モデルを表し、
図2Bは、重畳球体頭部モデル(多重球体モデルとしても知られている。)を表す。両方の図において、MEGセンサ210は、脳220の周りに位置付けられている。SSM(
図2A)では、患者の脳は、表面モデルとの適合に基づく単一球体230によって表されている。OSM(
図2B)では、患者の脳は、夫々の対応するMEGセンサ210A〜Fにつき1つである複数の重なり合った球体240A〜Fによって表されている。球体240AはMEGセンサ210Aに対応し、球体240BはMEGセンサ210Bに対応し、以降同様である。球体240は、対応するMEGセンサ210の近くにある脳の表面の局所曲率に適合するように部分的に選択される。便宜上、SSMでの1つの球体230は、同じ球体が全てのMEGセンサ210に対して使用されることから、大域的球体(global sphere)と呼ばれることがあり、OSMでの球体240A〜Fの夫々は、局所的球体(local sphere)と呼ばれ得る。
図1に戻ると、SSM/OSM116は、脳内の発生源からMEGセンサへの磁場の伝播をモデル化するために使用される。
【0014】
脳内の発生源は、通常、双極子源としてモデル化される(120)。脳内のシナプス電気活動は、電流双極子としてモデル化され得る。モデルは、脳のボリュームにわたる双極子の分布122を含む。脳の特定の位置での双極子を鑑みて、且つ、脳ボリュームのモデル(例えば、OSM又はSSM)を鑑みて、夫々の双極子によって作られる磁場がシミュレーションされる(124)。各MEGセンサでの総磁場を推定するために、全ての双極子の寄与が統合される(130)。これは、リードフィールド行列(lead field matrix)と呼ばれる。
【0015】
OSMを生成すること(上記のステップ116)への従来のアプローチは、「ゴースト球体」である局所的球体をもたらすことがある。従来のアプローチでは、夫々の局所的球体240は、対応するMEGセンサ210に局所的に近い脳の表面の曲率に基づき生成される。しかし、脳の表面のサンプル点がまばらである場合に、又は点が過度にノイジーである場合に、又は脳の表面が普通でない局所的な湾曲を有している場合に、結果として現れる球体は、MEG処理の後半のステップでうまく機能しない可能性がある。
【0016】
図3A及び
図3Bは、2つのタイプのゴースト球体の例を示す。各図において、MEGセンサ310に最も近い脳の局所表面パッチ(local surface patch)314が、脳に対して外向き方向及び内向き方向を定義するために使用され得る。外向き方向は、局所表面パッチ314からMEGセンサ310に向かう方向であり、内向き方向は、MEGセンサ310から離れる局所表面パッチ314からの方向である。
【0017】
図3Aでは、中心342Aを有する球体340AがMEGセンサ310Aに対して生成されている。しかし、脳の表面モデルは、脳と比べて大きい球体340Aをもたらす。この例において、球体の中心342Aは、局所表面パッチ314Aの内側にある。すなわち、球体の中心342AとMEGセンサ310Aとは、局所表面パッチ314Aの両側に位置している。通常、これは、脳のボリュームが局所表面パッチの内側にあるので望ましい。しかし、球体は、球体の中心342Aが脳ボリュームから外れるほどに大きい直径を有している。これは、球体のボリュームの50%以上が脳ボリュームの外にあるので、問題となる可能性がある。その後のモデル化がこの重なり合わない領域に双極子を置く場合に、これは、物理的に存在しない多数の双極子である。
【0018】
図3Bでは、球体340Bは、局所表面パッチ314Bの外側にある中心342Bを有している。すなわち、球体の中心342BとMEGセンサ310Bとは両方とも、局所表面パッチ314Bの外側に位置している。これは、例えば、表面パッチ314Bのサンプル点によりパッチが局所的に凹面であることが示唆される場合に起こり得る。この例において、球体340Bは、通常、脳ボリュームと重なり合わない。
図3Aにあるように、これも、球体340Bに位置する双極子が脳ボリュームの外になるので、問題となる可能性がある。
【0019】
図4は、多重球体頭部モデルを補正するフロー図である。ゴースト球体であるOSMの球体が特定される(410)。これは、上記のゴースト球体の特徴を用いて達成され得る。球体の中心が脳ボリュームの外にある場合に、又は球体のかなりの部分が脳ボリュームから外れる場合に、それはゴースト球体と特定され得る。通常、ゴースト球体のかなりの部分が脳ボリュームから外れるので、ゴースト球体は、脳ボリュームにおける双極子位置特定のモデル化に適さない。結果として、ゴースト球体は、ゴースト球体でない他の球体によって置換され(412)、補正されたOSMが得られる。
【0020】
置換球体を生成する様々なアプローチが、以下で記載される。1つの補正アプローチでは、ゴースト球体は、単一球体モデルに対して生成された大域的球体によって置換される。これはハイブリッドアプローチをもたらす。一部のMEGセンサは、そのセンサに対して生成された局所的球体を使用し、残りのMEGセンサは、大域的球体を使用する。変形例において、大域的球体は、真のSSMアプローチで見られるように全てのMEGセンサに基づくのではなく、ゴースト球体を有するMEGセンサにのみ基づき生成され得る。
【0021】
他のアプローチでは、置換球体は、候補置換球体の一群から選択される。例えば、候補置換球体の一群は全て、中心が共通の直線に沿って位置し得る。直線は、MEGセンサと、該MEGセンサに最も近い脳表面上の点とによって定義されるか、あるいは、直線は、MEGセンサと、上記の大域的球体の中心とによって定義されるか、あるいは、直線は、MEGセンサと、脳ボリュームの中心とによって定義される。候補置換球体の一群はまた、直径を制限され得る。例えば、それらは全て、脳ボリュームを完全に囲む最小直径を超えない直径を有する。他の例として、候補置換球体の一群は全て、MEGセンサに最も近い脳表面上の点を通る。1つのアプローチでは、置換球体は、置換球体と脳表面との間の適合に基づき候補置換球体の一群から選択される。
【0022】
図5〜
図9には、いくつかの例が示されている。
図5は、次のように定義される一群の候補置換球体540を示す。直線548が、MEGセンサ510と、該MEGセンサに最も近い脳表面上の点514とによって定義される。置換球体540の中心は、点514の内側で直線548上にある。更には、置換球体540は、この表面点514を含むように制約される。球体の直径を増大させることで、候補置換球体540の一群が得られる。この例では、最大直径も、脳ボリュームを囲む最小球体によって制約される。
【0023】
通常、置換球体と脳表面との間の適合に基づき、候補球体の1つが置換球体として選択される。選択は、最適化問題として解かれ得る。候補球体群は、[0,最大直径]の範囲内にある球体直径の関数としてパラメータ化され得る。その場合に、問題は、コスト関数を最適化する球体直径を選択することである。コスト関数の例は、L1誤差やL2誤差に基づくか、又は固有値ソルバ(eigen-solvers)を使用する、局所曲率適合に基づく(いずれも、局所表面パッチの曲率に適合する分析的な及び近似クラスの球面フィッティング)。
【0024】
図5では、候補置換球体の中心は、直線548に沿ってあるように制約された。
図6Aに示されるように、他の直線が選択されてもよい。
図6Aは、次の点:MEGセンサの位置610、MEGセンサに対する最近表面点614、(
図2AのSSMからの)大域的球体の中心632、及び脳ボリュームの中心622を示す。異なる点の組により、他の直線が定義される。例えば、直線646は、MEGセンサ610及びSSM中心632を通り、直線647は、MEGセンサ610及び脳中心622を通り、直線648は、表面点614及びSSM中心632を通り、直線649は、表面点614及び脳中心622を通る。表面点614を通る直線は、直線をより容易にお互いから区別するように破線で示されている。他の候補置換球体群は、候補球体の中心がそれらの直線のいずれかの上にあることを求めることによって、定義され得る。他の直線、例えば、脳の表面の法線である直線も、使用されてよい。
【0025】
球体の中心のとり得る位置の軌跡は、直線ではなく、エリア又はボリュームであってもよい。例えば、
図6Bに示されるように、それは、頂点610−632−622を有する三角形であってよいが、点614の内側にある点のみを考慮する。とり得る中心点のその結果得られる軌跡は、台形650である。
図7は他の例を示し、この例では、MEGセンサの位置は、点ではなくエリア710によって定義され、最も近い表面パッチも、点ではなくエリア714によって定義される。とり得る中心点の軌跡は、エリア714を通るエリア710の投影によって定義され、これにより、3次元ボリューム746が定義される。
図7Aは、より制限的な投影746Aを示し、
図7Bは、より広い投影746Bを示す。ボリュームは、直線又はエリアから始まって、直線又はエリアから特定の距離内にあるボリュームを定義することによっても、定義され得る。
【0026】
関心領域は、それが直線、エリア又はボリュームであるかどうかにかかわらず、通常は、次のものの中の少なくとも2つによって定義される:(a)MEGセンサの位置(点、エリア、又はボリュームとして定義されるかどうかによらない。)、(b)MEGセンサに最も近い脳表面の領域(通常は点又は表面積である。)、及び(c)脳ボリュームの位置(例えば、SSM大域的球体の中心、又は脳ボリュームの質量中心若しくは重心)。
【0027】
候補置換球体群は、最大サイズよりも小さいように制約されてもよい。置換球体の最大直径は、置換球体がゴースト球体でないように選択され得る。
図8は、
図5と同じ状態を示すが、球体の中心が直線848に沿って位置し且つ球体が表面点814を含むと仮定して、異なる最大直径の球体を更に示す。球体840Aについて、最大直径は、脳ボリュームによって囲まれている最大球体によって定義される。球体840Bについて、それは、脳ボリュームを囲む最小球体によって定義される(
図5と同様)。球体840Cについて、それは、球体の中心842Cが脳ボリューム内にとどまることを求めることによって定義される。
【0028】
図5では、候補置換球体群はまた、MEGセンサに最も近い点である点514を含むように制約されている。すなわち、どの候補置換球体540も点514を通る。この制約の他のバリエーションも可能である。
図9において、候補置換球体940は、MEGセンサの位置910及び最も近い表面点914によって定義された直線948上に中心があるように制約されている。しかし、球体は、全てが表面点914を通ることを求められない。むしろ、夫々の球体940は、脳の表面の局所パッチに最も良く適合するように置かれる。よって、球体940は、点914からわずかに外れて移動されることがある。
【0029】
いくつかの実施では、ユーザインターフェイスが、補正プロセスを制御することをユーザに可能にする。
図10において、ユーザインターフェイスは、脳1020の外にあるゴースト球体1040を示す。ユーザは、補正が試みられるべきであるかどうかをプロンプトされる(1070)。ユーザは、その特定のゴースト球体について置換球体を計算すべきかどうかのユーザ指示を与えることによって、応答する。次いで、ユーザインターフェイスの次の画面は、計算された置換球体を示し、計算された置換球体でゴースト球体を置き換えるべきかどうかをユーザにプロンプトし得る。ユーザインターフェイスは、ユーザが状況を思い浮かべることができるように、脳に対する様々な球体を表示する。
【0030】
更なる他のアプローチでは、ゴースト球体を補正するのではなく、第1の位置でのゴースト球体の生成を防ぐ制約に従って、多重球体頭部モデルは生成される。例えば、球体の中心は、脳ボリューム内にあるように制約されてよい。球体の直径は、それらがある最大値、例えば、脳ボリュームを完全に囲む最小球体の直径、を超えないように、制約されてよい。候補置換球体群を定義するための上記の制約も、第1の位置でのゴースト球体の生成を防ぐように制約として使用されてよい。
【0031】
最後の例として、ゴースト球体は、フィッティングのためのデータ点が少なすぎることで生じることがある。これを回避するために、球体は、脳表面上の点の組に適合しながら、少なくとも所定数の点が球体を適合させるために使用されるという制約に従う。
【0032】
詳細な説明は多くの詳細を含むが、それらは、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではなく、単に、様々な例を説明しているものとして解釈されるべきである。当然ながら、本開示の範囲には、先に詳細に説明されていない他の実施形態が含まれている。例えば、楕円体又は他の形状が、球体の代わりに使用されてもよい。その場合に、多重楕円体頭部モデルが多重球体頭部モデルに代えて展開され、ゴースト球体の概念はゴースト楕円体によって置換される。当業者には明らかである様々な他の修正、変更、及び変形が、添付の特許請求の範囲で定義される趣旨及び範囲から逸脱することなしに、本明細書で開示される方法及び装置の配置、動作及び詳細に対して行われ得る。従って、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの法的均等物によって決定されるべきである。
【0033】
代替の実施形態は、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はそれらの組み合わせで実装される。実施は、プログラム可能なプロセッサによる実行のためにコンピュータ可読記憶デバイスで有形に具現されるコンピュータプログラム製品で実装可能であり、方法ステップは、入力データに作用して出力を生成することによって機能を実行する命令のプログラムをプログラム可能なプロセッサが実行することによって、実行可能である。実施形態は、有利なことには、データ記憶デバイス、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスからデータ及び命令を受信し、それらへデータ及び命令を送信するよう結合された少なくとも1つのプログラム可能なプロセッサを含むプログラム可能なコンピュータシステムで実行可能である1以上のコンピュータプログラムで実装可能である。夫々のコンピュータプログラムは、高度な手続き的な又はオブジェクト指向のプログラミング言語で、あるいは、必要に応じて、アセンブリ又はマシン言語で実装可能であり、いずれの場合にも、言語は、コンパイル済み又は解釈済みの言語であることができる。適切なプロセッサには、一例として、汎用のマイクロプロセッサ及び特別目的のマイクロプロセッサの両方が含まれる。一般に、プロセッサは、リードオンリーメモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)から命令及びデータを受け取る。一般に、コンピュータは、データファイルを記憶する1以上の大容量記憶デバイスを含み、そのようなデバイスには、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク、光学磁気ディスク、及び光ディスクがある。コンピュータプログラム命令及びデータを有形に具現するのに適した記憶デバイスには、一例として半導体メモリ、例えば、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイスや、磁気ディスク、例えば、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスクや、光学磁気ディスクや、CD−ROMディスクを含むあらゆる種類の不揮発性メモリが挙げられる。これらの挙げられたもののいずれもが、ASIC(Application-Specific Integrated Circuits)、FPGA、及び他の種類のハードウェアによって補われ、又は組み込まれることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
210,310,510,610,810,910 MEGセンサ
230 大域的球体
240 局所的球体
340,1040 ゴースト球体
514,614,814,914 脳表面上の点
540,840,940 候補置換球体
548,646〜649,848,948 直線
622 脳ボリュームの中心
632 大域的球体の中心
1020 脳
1070 プロンプト