(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る複合ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図1に示すように、複合ケーブル1は、1本以上の単純線2と複数の同軸線3とを撚り合わせたケーブルコア4の周囲に、バインドテープ5、シールド層6、シース7を順次設けて構成されている。本実施の形態に係る複合ケーブル1は、例えば内視鏡に用いられるものであり、その外径は少なくとも3.00mm以下、より好ましくは2.00mm以下と非常に細径である。ここでは、複合ケーブル1の外径を1.27mmとした。
【0011】
単純線2は、導体21を絶縁体22で被覆して構成された絶縁電線である。耐屈曲性及び耐捻回性を向上させるため、導体21としては、複数本の素線を撚り合わせた撚線導体が用いられる。導体21に用いる素線としては、導電性が高くかつ機械的強度が高いものを用いることが望ましく、例えば、銀メッキ銅合金線からなるものを用いることができる。絶縁体22としては、安定して薄肉に成形可能なPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素樹脂からなるものを用いるこができる。
【0012】
複合ケーブル1では、少なくとも2つの異なる外径を有する複数本の単純線2を備えている。単純線2は、外径が第2所定外径より小さい小径単純線2aと、外径が第2所定外径以上の大径単純線2bと、を含んでいる。本実施の形態では、外径がそれぞれ異なる4本の単純線2を含んでおり、各単純線2の外径は、それぞれ、0.14mm、0.20mm、0.23mm、0.30mmである。ここでは、外径が0.25mmより小さい3本の単純線2を小径単純線2aとし、外径が0.25mm以上の1本の単純線2を大径単純線2bとする。外径が大きい大径単純線2bは、例えば電源供給に用いられるものである。
【0013】
同軸線3は、導体31の周囲に、絶縁体32、外部導体33、及びジャケット34を順次設けて構成されている。耐屈曲性及び耐捻回性を向上させるため、導体21としては、複数本の素線を撚り合わせた撚線導体が用いられる。導体21に用いる素線としては、導電性が高くかつ機械的強度が高いものを用いることが望ましく、例えば、銀メッキ銅合金線からなるものを用いることができる。絶縁体32としては、安定して薄肉に成形可能なPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素樹脂からなるものを用いるこができる。
【0014】
外部導体33としては、絶縁体32の周囲に素線を螺旋状に巻き付けた横巻きシールドが用いられる。横巻きシールドは、屈曲や捻回に対する耐性が高く、また細径であっても容易に実現可能であることから、同軸線3の外部導体33として好適である。外部導体33に用いる素線としては、例えば銀メッキ銅合金線を用いることができる。ジャケット34としては、絶縁体32と同様に、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素樹脂からなるものを用いるこができる。
【0015】
複合ケーブル1では、少なくとも2つの異なる外径を有する複数本の同軸線3を備えている。同軸線3は、外径が第1所定外径より小さい小径同軸線3aと、外径が第1所定外径以上の大径同軸線3bと、を含んでいる。本実施の形態では、外径が異なる3対(6本)の同軸線3を含んでおり、各対の同軸線3の外径は、それぞれ、0.20mm、0.23mm、0.26mmである。ここでは、外径が0.25mmより小さい2対(4本)の単純線2を小径同軸線3aとし、外径が0.25mm以上の1対(2本)の同軸線3を大径同軸線3bとする。
【0016】
本実施の形態では、一対の大径同軸線3bは、外径が等しく、撮像素子からの画像信号を差動伝送するために用いられる差動伝送用同軸線からなる。なお、本実施の形態では、大径同軸線3bが差動伝送用同軸線のみからなるが、大径同軸線3bは、差動伝送用でない同軸線3を含んでいても良い。また、本実施の形態では小径同軸線3aを2対(4本)備えているが、小径同軸線3aの本数はこれに限定されず、また小径同軸線3aは対となっていなくてもよい。
【0017】
このように本実施の形態では、ケーブルコア4が、3本の小径単純線2aと1本の大径単純線2bとを含む4本の単純線2と、4本の小径同軸線3aと2本の大径同軸線3bとを含む6本の同軸線3と、を含み、合計10本の電線を含んでいる。ただし、ケーブルコア4を構成する単純線2や同軸線3の本数、単純線2に含まれる小径単純線2aと大径単純線2bの本数、及び同軸線3に含まれる小径同軸線3aと大径同軸線3bの本数については、これに限定されない。小径同軸線3aは、差動伝送に用いられるものではなく、例えば制御信号等の外部ノイズに弱い信号を伝送するために用いられる。
【0018】
また、本実施の形態では、小径単純線2aと大径単純線2bとを区別する境界値(第2所定外径)と、小径同軸線3aと大径同軸線3bとを区別する境界値(第1所定外径)とを同じ値にしたが、異なる値に設定することもできる。これら境界値は、複合ケーブル1全体の外径や単純線2や同軸線3の強度(引張強度)を考慮し、複合ケーブル1を繰り返し屈曲あるいは捻回した際に、十分な耐性が得られる(断線等の不具合が生じにくい)値に適宜設定するとよい。
【0019】
ここで、外径が小さい小径単純線2a及び小径同軸線3aは、引張強度が小さいために、そのまま撚り合わせてケーブルコア4を構成すると、複合ケーブル1を繰り返し屈曲あるいは捻回した際に、断線等の不具合が生じやすい。そこで、本実施の形態では、小径単純線2a及び小径同軸線3aについては、互いに撚り合わせて集合体8とする。小径単純線2aや小径同軸線3aを撚り合わせて集合体8とすることによって、屈曲時や捻回時に作用する引張の応力が集合体8を構成する各電線に分散されるため、耐屈曲性及び耐捻回性を高めることが可能になる。
【0020】
集合体8は、小径単純線2a同士を撚り合わせて構成されてもよいし、小径同軸線3a同士を撚り合わせて構成されてもよいし、あるいは小径単純線2aと小径同軸線3aとを撚り合わせて構成されてもよい。本実施の形態では、小径単純線2aの中でも外径が小さい2本の小径単純線2a(外径0.14mm、0.20mm)と、小径同軸線3aの中でも外径が大きい一対の小径同軸線3a(外径0.23mm)とを撚り合わせて第1集合体8aを構成した。また、小径単純線2aの中でも外径が大きい1本の小径単純線2a(外径0.23mm)と、小径同軸線3aの中でも外径が小さい一対の小径同軸線3a(外径0.20mm)とを撚り合わせて第2集合体8bを構成した。外径が小さいものと大きいものをバランスよく組み合わせることで、耐屈曲性及び耐捻回性をより高めることができる。
【0021】
ここでは2つの集合体8を構成したが、集合体8の数はこれに限定されず、1つ以上の集合体8が含まれていればよい。集合体8の数や、各集合体8に含まれる電線数については、小径単純線2a及び小径同軸線3aの外径(引張強度)を考慮し、かつ、複合ケーブル1全体の形状が円形状となるように、適宜設定するとよい。
【0022】
大径単純線2b及び大径同軸線3bについては、集合体8に含めると集合体8が大型化し、複合ケーブル1全体の外径が大きくなってしまうおそれがある。また、集合体8の撚りに加えてケーブルコア4の撚りが加えられることになるため、差動伝送用同軸線として用いられる一対の大径同軸線3bを集合体8に含めると、対間で物理長の差が生じやすくなり、遅延時間差(スキュー)が大きくなってしまうおそれが生じる。そのため、複合ケーブル1を細径に維持し、かつ、差動伝送用同軸線として用いられる一対の大径同軸線3bのスキューを抑制するために、大径単純線2b及び大径同軸線3bについては、集合体8に含めずそのまま撚り合わせてケーブルコア4を構成する。
【0023】
本実施の形態では、ケーブルコア4は、1本の大径単純線2bと、一対の大径同軸線3bと、2つの集合体8とを撚り合わせて構成されている。なお、全ての単純線2が小径単純線2aである場合、大径単純線2bは省略可能である。すなわち、ケーブルコア4は、少なくとも、1本以上の大径同軸線3bと、1つ以上の集合体8とを撚り合わせて構成されていればよい。
【0024】
差動伝送用同軸線として用いられる一対の大径同軸線3bのスキューを抑制するために、一対の大径同軸線3bは、ケーブル周方向に隣接して配置されていることが望ましい。また、屈曲や捻回による位置ずれを抑制し、一対の大径同軸線3bのスキューをより抑制するために、一対の大径同軸線3bはケーブルコア4の最外層に配置されることがより望ましく、一対の大径同軸線3bがバインドテープ5に接触していることがより望ましい。
【0025】
また、本実施の形態では、大径単純線2bが電源供給に用いられるため、大径単純線2bからのノイズが一対の大径同軸線3bに影響を及ぼさないように、大径単純線2bと一対の大径同軸線3bとをなるべく離間させることが望まれる。
【0026】
そこで、本実施の形態では、大径単純線2bと、一対の大径同軸線3bとを、ケーブル周方向において、集合体8を介して隣り合うように配置するようにした。ケーブル周方向に隣り合う2つの集合体8の一方の間には、大径単純線2bが配置され、他方の間には、一対の大径同軸線3bが周方向に隣接して配置される。これにより、大径単純線2bからのノイズが一対の大径同軸線3bに影響を及ぼしてしまうことを抑制可能になる。
【0027】
また、集合体8の撚り方向と、ケーブルコア4の撚り方向とは、同じ方向とされることが望ましい。これは、集合体8の撚り方向とケーブルコア4の撚り方向とが逆方向であると、例えば、集合体8の撚りがほどけつつも、ケーブルコア4の撚りが締まるといった状況が発生し、集合体8を構成する電線(小径単純線2aまたは小径同軸線3a)の逃げ場がなくなって座屈が生じ、その結果耐屈曲性及び耐捻回性が低下するおそれがあるためである。すなわち、集合体8の撚り方向と、ケーブルコア4の撚り方向とを同じ方向とすることで、さらなる耐屈曲性及び耐捻回性の向上を図れる。
【0028】
バインドテープ5は、ケーブルコア4の撚りが緩まないように保持するための部材である。バインドテープ5は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の樹脂テープからなり、その幅方向の一部が重なるように、ケーブルコアの周囲に螺旋状に巻き付けられている。
【0029】
シールド層6は、屈曲や捻回に対する耐性が高い横巻きシールドが用いられる。シールド層6は、バインドテープ5の周囲に素線を螺旋状に巻き付けて構成される。シールド層6に用いる素線としては、例えば銀メッキ銅合金線を用いることができる。
【0030】
シース7は、ケーブルコア4やシールド層6を保護するためのものであり、PFA等のフッ素樹脂からなるものを用いるこができる。
【0031】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る複合ケーブル1では、小径同軸線3aは、当該小径同軸線3a同士、あるいは単純線2(小径単純線2a)と撚り合わされて集合体8とされ、ケーブルコア4は、少なくとも、1本以上の大径同軸線3bと、1つ以上の集合体8とを撚り合わせて構成されている。
【0032】
外径が小さく引張強度が小さい小径同軸線3aを集合体8とすることで、屈曲時や捻回時の引張による応力を分散して、耐屈曲性及び耐捻回性を向上できる。さらに、大径同軸線3bを集合体8に含めずそのまま撚り合わせてケーブルコア4を構成することで、複合ケーブル1を細径に維持し、また大径同軸線3bを差動伝送に用いる場合であっても、物理長を揃えてスキューを抑制しやすくなる。
【0033】
(他の実施の形態)
図2は、本発明の他の実施の形態に係る複合ケーブル1aの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。複合ケーブル1aは、2本の小径単純線2aと2本の大径単純線2bとを含む4本の単純線2と、1対(2本)の小径同軸線3aと2対(4本)の大径同軸線3bとを含む6本の同軸線3を備えている。2対の大径同軸線3bは、それぞれが画像信号の伝送に用いられるものであり、差動伝送用同軸線である。複合ケーブル1aは、例えば2つの撮像素子を備えた内視鏡等に適用される。
【0034】
複合ケーブル1aでは、2本の小径単純線2aと1対の小径同軸線3aとが撚り合わされて集合体8が形成されている。また、複合ケーブル1aでは、ケーブル中心にアラミド繊維等からなる介在9が配置されており、この介在9の周囲に、集合体8と、2本の大径単純線2bと、2対の大径同軸線3bとが螺旋状に撚り合わされてケーブルコア4が形成されている。ケーブル中心は屈曲時に最も応力が集中するため、ケーブル中心に電線を配置すると当該電線に断線等の不具合が生じやすい。このような不具合を抑制し耐屈曲性及び耐捻回性を向上するために、複合ケーブル1aでは、ケーブル中心に介在9を配置している。
【0035】
差動伝送用同軸線の対間スキューを抑制するため、差動伝送用同軸線を構成する各対の大径同軸線3bは、ケーブルコア4の最外周に周方向に隣接するように配置されており、バインドテープ5に接触している。
【0036】
複合ケーブル1aのように、集合体8の数は1つでもよく、また差動伝送用同軸線を構成する大径同軸線3bは2対以上であってもよい。複合ケーブル1aのように、大径単純線2bや大径同軸線3bの本数が多い場合には、ケーブル中心に隙間ができてしまう場合があるが、ケーブル中心に電線を配置すると当該電線に屈曲時の応力が集中して耐屈曲性及び耐捻回性が低下してしまうおそれがあるため、このような場合には、ケーブル中心の隙間を埋めるように介在9を設けるとよい。
【0037】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0038】
[1]導体(21)を絶縁体(22)で被覆してなる1本以上の単純線(2)と、導体(31)の周囲に、絶縁体(32)、外部導体(33)、及びジャケット(34)を順次設けてなる複数本の同軸線(3)と、前記1本以上の単純線(2)と前記複数本の同軸線(3)とを撚り合わせたケーブルコア(4)の周囲を一括して覆うように設けられたシース(7)と、を備え、前記複数本の同軸線(3)は、少なくとも2つの異なる外径を有しており、外径が第1所定外径より小さい前記同軸線(3)である小径同軸線(3a)は、当該小径同軸線(3a)同士、あるいは前記単純線(2)と撚り合わされて1つ以上の集合体(8)とされ、前記ケーブルコア(4)は、少なくとも、外径が前記第1所定外径以上の前記同軸線(3)である1本以上の大径同軸線(3b)と、1つ以上の前記集合体(8)とを撚り合わせて構成されている、複合ケーブル(1)。
【0039】
[2]前記大径同軸線(3b)は、外径が等しい一対の差動伝送用同軸線を含む、[1]に記載の複合ケーブル(1)。
【0040】
[3]前記一対の差動伝送用同軸線は、ケーブル周方向に隣接して配置されている、[2]に記載の複合ケーブル(1)。
【0041】
[4]前記ケーブルコア(4)の周囲に巻き付けられたバインドテープ(5)を備え、前記一対の差動伝送用同軸線は、前記バインドテープ(5)に接触している、[2]または[3]に記載の複合ケーブル(1)。
【0042】
[5]少なくとも2つの異なる外径を有する複数本の前記単純線(2)を備え、外径が第2所定外径より小さい小径単純線(2a)は、当該小径単純線(2a)同士、あるいは前記小径同軸線(3a)と撚り合されて前記集合体(8)とされ、前記ケーブルコア(4)は、少なくとも、外径が前記第2所定外径以上の前記単純線(2)である1本以上の大径単純線(2b)と、1本以上の前記大径同軸線(3b)と、1つ以上の前記集合体(8)とを撚り合わせて構成されている、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の複合ケーブル(1)。
【0043】
[6]前記集合体(8)を複数備え、前記大径単純線(2b)と、前記大径同軸線(3b)とは、ケーブル周方向において、少なくとも1つの前記集合体(8)を介して隣り合うように配置されている、[5]に記載の複合ケーブル(1)。
【0044】
[7]前記集合体(8)の撚り方向と、前記ケーブルコア(4)の撚り方向とが、同じ方向である、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の複合ケーブル(1)。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。