(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6973565
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】逆浸透膜処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/10 20060101AFI20211118BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20211118BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20211118BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20211118BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
B01D61/10
B01D61/02 500
B01D61/04
B01D65/02 500
C02F1/44 C
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-93458(P2020-93458)
(22)【出願日】2020年5月28日
【審査請求日】2021年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩一
【審査官】
中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−115712(JP,A)
【文献】
特開平11−128919(JP,A)
【文献】
特公昭60−038167(JP,B2)
【文献】
特開昭50−075177(JP,A)
【文献】
特開平09−001141(JP,A)
【文献】
特開2010−005560(JP,A)
【文献】
特開昭60−019004(JP,A)
【文献】
特開2000−317457(JP,A)
【文献】
特開昭50−077310(JP,A)
【文献】
特開2011−125822(JP,A)
【文献】
特開昭54−051982(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/028315(WO,A1)
【文献】
米国特許第08617398(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−69/00
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア濃度が1〜10000mg/Lの半導体又は液晶製造工程排水であるpH9.5以上の被処理水をpH4〜8の範囲に調整して逆浸透膜装置に通水する逆浸透膜処理方法であって、12〜60時間に1回の頻度で、前記pH9.5以上の被処理水を該逆浸透膜装置の逆浸透膜の原水側に導入した後、この導入を停止した状態で2〜24時間接触させることを特徴とする逆浸透膜処理方法。
【請求項2】
前記逆浸透膜装置が並列に複数設置されており、少なくとも一つの逆浸透膜装置の逆浸透膜に前記pH9.5以上の被処理水を接触させている間、他の逆浸透膜装置にpH4〜8に調整した被処理水を通水して逆浸透膜処理する、請求項1の逆浸透膜処理方法。
【請求項3】
前記pH9.5以上の被処理水を前処理する工程を有する、請求項1又は2の逆浸透膜処理方法。
【請求項4】
前記前処理は活性炭処理である、請求項3の逆浸透膜処理方法。
【請求項5】
前記pH9.5以上の被処理水のTOC濃度が0.5mg/L以上である、請求項1〜4のいずれかの逆浸透膜処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被処理水を逆浸透膜装置(以下、RO装置ということがある。)で処理する逆浸透膜処理方法に関する。詳しくは、本発明は、pH9.5以上の高アルカリ性水をRO膜装置に間欠的に接触させる逆浸透膜処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜(RO膜)を用い、被処理水中の濁質や溶解性物質、イオン類を分離する逆浸透膜分離処理においては、被処理水中に含まれる微生物が装置配管内や膜面で増殖してスライムを形成し、透過水量(フラックス)低下等の障害を引き起こすことがある。
【0003】
このような微生物による透過膜の汚染を防止するために、被処理水に殺菌剤を常時又は間欠的に添加し、被処理水又は装置内を殺菌しながら膜分離する方法が知られている。一般的には、安価であり取り扱いも比較的容易な殺菌剤として、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系酸化剤を添加し、微生物を殺菌する方法が行われている。
【0004】
しかしながら、透過膜がポリアミド系高分子膜のような耐塩素性を持たない透過膜である場合、このような塩素系酸化剤を添加すると、透過膜は塩素系酸化剤由来の遊離塩素による酸化劣化をうけ、除去率が低下してしまうという問題があった。
【0005】
特開平1−104310号公報、特開平1−135506号公報には、このような透過膜の劣化を最小限にするために、遊離塩素による殺菌後、アンモニウムイオンを添加し、クロラミン(モノクロラミン、ジクロラミン)を生成させる方法、或いはクロラミンT、ジクロラミンT等の結合塩素化合物を添加する方法が示されている。
【0006】
特開2006−263510号公報には、膜分離装置への給水又は洗浄水に、塩素系酸化剤とスルファミン酸化合物とからなる結合塩素剤を存在させる膜分離方法が記載されている。
【0007】
特開2005−81269号公報には、有機物含有排水を逆浸透膜処理する方法において、フラックス低下を防止するために、有機物含有排水にアルカリを添加してpH9.5以上に調整した後、逆浸透膜処理し、その後pHを4〜8に調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−104310号公報
【特許文献2】特開平1−135506号公報
【特許文献3】特開2006−263510号公報
【特許文献4】特開2005−81269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
アンモニアを含有する被処理水をRO処理する場合、被処理水を高pHにすると、アンモニアはその大部分が非イオン性のNH
4として存在し、ROによって十分にアンモニアを除去することができない。そのため、高pHかつアンモニアを含有する被処理水をRO処理する場合は、酸を添加してpH4〜8程度にすると共に、膜ファウリングを防止するためにスライム抑制剤(スライム防止剤)を添加した後、RO装置に供給する。
【0010】
このようにスライム抑制剤を添加しても、TOC濃度が高く、バイオポテンシャルの高い被処理水にあっては、経時的にスライム発生等により膜ファウリングが進行するので、定期的に又は差圧上昇時に膜洗浄を行う必要がある。この洗浄としては、アルカリ剤を用いた定置洗浄(CIP洗浄)が行われることが多い。
【0011】
この定期的な膜洗浄の頻度を多くすると、洗浄薬剤コストが高くなる。洗浄頻度を少なくしたのでは、膜ファウリングが進行する。また、膜差圧上昇を検知して膜洗浄を行う場合には、差圧を検知して洗浄を行う機構や運転作業員が必要となる。
【0012】
以上のように、アンモニアを含有するTOC濃度が高い被処理水を中和し、スライム抑制剤を添加してRO処理する従来方法にあっては、洗浄薬剤コストが嵩む、定置洗浄設備が必要となる、あるいは作業人件費コストが嵩む等の課題があった。
【0013】
本発明は、被処理水を低コストで、かつスライムを抑制して効率よく処理することができる逆浸透膜処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の逆浸透膜処理方法は、被処理水をpH4〜8の範囲に調整して逆浸透膜装置に通水する逆浸透膜処理方法であって、間欠的にpH9.5以上のアルカリ水を該逆浸透膜装置の逆浸透膜に接触させることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様では、前記被処理水がpH9.5以上であって、前記アルカリ水として前記pH9.5以上の前記被処理水を用いる。
【0016】
本発明の一態様では、前記アルカリ水は、同じ施設内の異なる工程からの排水である。
【0017】
本発明の一態様では、前記逆浸透膜装置が並列に複数設置されており、少なくとも一つの逆浸透膜装置の逆浸透膜にpH9.5以上のアルカリ水を接触させている間、他の逆浸透膜装置にpH4〜8に調整した被処理水を通水して逆浸透膜処理する。
【0018】
本発明の一態様では、原水を前処理して前記被処理水及び/又はアルカリ水とする工程を有する。
【0019】
本発明の一態様では、前記前処理は活性炭処理である。
【0020】
本発明の一態様では、前記被処理水及び/又はアルカリ水のアンモニア濃度が1mg/L以上である。
【0021】
本発明の一態様では、前記被処理水のTOC濃度が0.5mg/L以上である。
【0022】
本発明の一態様では、前記pH9.5以上のアルカリ水と前記逆浸透膜とを接触させる工程を12時間〜1カ月に1回の頻度で行う。
【発明の効果】
【0023】
本発明の逆浸透膜処理方法では、高pHの被処理水や他工程からの排水を用いてRO膜の洗浄を行うため、洗浄頻度を多くしても、RO膜の洗浄薬剤コストがかからないので、洗浄コストが低い。また、洗浄頻度を多くすることにより、RO膜ファウリングを十分に抑制することができる。
【0024】
本発明の一態様では、高pHの被処理水をpH4〜8に調整した後、RO処理するので、被処理水がアンモニアを含有する場合でも、十分にアンモニアを除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一態様では、pH9.5以上の被処理水(原水)をpH4〜8、好ましくは5〜7に調整してから逆浸透膜装置(RO装置)に通水する。本発明では、被処理水がアンモニアを含むもの、特にアンモニア濃度が1mg/L以上とりわけ1〜10000mg/Lの高濃度である被処理水を処理する場合に好適である。アンモニアは弱塩基性であるため、このような濃度のアンモニア含有水は通常pH9.5以上となる。また、TOC濃度が0.5mg/L以上、特に2〜50mg/Lの被処理水を処理する場合に好適である。このような被処理水としては、半導体は液晶などの製造工程の洗浄排水などが例示されるが、これに限定されない。被処理水のpHの上限は特に制限されるものではないが、通常はpH12未満である。
【0027】
本発明では、被処理水を活性炭等によって前処理してもよい。被処理水を前処理として活性炭処理することにより、オゾン、過酸化物などを除去してRO膜の劣化を防止することができる。また、被処理水中の有機物(TOC成分)の一部を除去してRO膜のTOC負荷を低減する効果も奏される。なお、前処理手段は活性炭処理に限定されるものではなく、活性汚泥や浮遊担体法による生物処理、薬剤によるH
2O
2の還元処理、除濁フィルターや濾過装置或は除濁膜装置による除濁処理などの1又は2以上を採用してもよい。
【0028】
このように必要に応じて活性炭等によって前処理した被処理水に酸を添加してpH4〜8好ましくは5〜7に調整する。また、このpH調整の後(又は前もしくは同時)にスライム抑制剤を添加する。酸としては、硫酸、塩酸などを用いることができる。スライム抑制剤としては、前述の特許文献1〜3に記載のものが例示されるが、その他のものであってもよい。なお、RO膜が耐塩素性が低いものである場合には、塩素系酸化剤以外のスライム抑制剤を用いることが好ましい。
【0029】
pH調整及びスライム抑制剤添加された被処理水を、必要に応じフィルターに通水した後、RO装置に通水する。フィルターとしては、カートリッジフィルターやフィルターエレメントを用いた自動逆洗式フィルターなどを用いることができる。
【0030】
このように、高pHの被処理水をpH4〜8に調整した後、RO処理するので、被処理水がアンモニアを含有する場合でも、十分にアンモニアを除去することができる。
【0031】
RO装置への被処理水の通水を所定時間行った後、pH9.5以上の被処理水によってRO膜を洗浄する。この膜洗浄用のpH9.5以上の被処理水としては、原水を懸濁物質除去処理したものが好適であり、上記の前処理水特に活性炭処理水が好適である。膜洗浄に供する被処理水のpHの上限は特に制限されるものではないが、RO膜の劣化を防止するため12未満とすることが好ましい。このため、被処理水のpHが12を超える場合には、適宜酸などを添加してpH=9.5〜12の範囲とすることができる。
【0032】
RO膜の洗浄を行うには、RO装置の原水側にpH9.5以上の被処理水を導入した後、この導入を停止し、所定時間(例えば下限としては2時間とくに5時間が好ましく、上限としては24時間特に12時間が好ましい)その状態を維持するのが好ましい。膜洗浄用に導入した被処理水のpHが9.5以上であるため、この間に、膜面等に付着したスライムが溶解除去される。
【0033】
その後、好ましくはRO装置の透過水、pH4〜8に調整した原水或はその他の清浄水を用いてRO装置を洗浄(リンス)した後、RO装置へのpH4〜8の被処理水の通水(RO処理)を再開する。
【0034】
このpH9.5以上の被処理水による膜洗浄には、アルカリ薬剤を使用しないので、薬剤コストが実質的にかからない。(ただし、必要に応じ、少量のアルカリ薬剤を膜洗浄用のpH9.5以上の被処理水に添加してもよい。)そのため、膜洗浄を例えば12時間から1カ月、好ましくは12時間から1週間、とりわけ12時間から60時間に1回程度の高頻度で行っても、薬剤コストはゼロ又は著しく低いものとなる。また、この洗浄方法であれば、従来のアルカリ薬剤を用いた膜洗浄のような洗浄設備が不要であり、洗浄設備コストも著しく低いものとなる。洗浄作業のための人件費コストもゼロ又は著しく低いものとなる。更に、洗浄間隔を短くすることにより、膜の汚染が進行しない状況で洗浄を実施することが可能となるため、効果的に洗浄を行うことが可能となる。
【0035】
図1に、上記の洗浄方法が適用される水処理設備の一例を示す。
【0036】
原水は、活性炭塔1を経て反応槽2に導入され、酸添加されてpH4〜8に調整されると共に、スライム抑制剤が添加される。活性炭塔1は生物活性炭塔であってもよい。反応槽2内の水は、中継槽3、フィルター4及びポンプ(図示略)を経てRO装置5に通水され、処理水が得られる。濃縮水は、濃縮水排出ライン(図示略)によって排出される。活性炭塔1の流出水をRO装置5(この例では、フィルター4の前段側)に導入するために、バイパス配管6が設けられている。
【0037】
図1では、RO装置5が1基のみ設置されているが、複数基、例えば
図2のように、3基のRO装置5A,5B,5Cを並列に設置し、メリーゴーランド方式にて運転を行ってもよい。なお、各RO装置5A〜5Cの前後にバルブ7A〜7C、8A〜8Cが設けられている。
【0038】
メリーゴーランド方式の運転を行う場合、例えばまずRO装置5A,5BでRO処理工程を行い、RO装置5Cを洗浄工程とする。具体的には、バルブ7A,7B,8A,8Bを開とし、RO装置5A,5Bに反応槽2からの被処理水を通水する。また、バルブ7C,8Cを閉とし、RO装置5Cに活性炭塔流出水をフィルター4Cを経由して導入し、洗浄工程を行う。活性炭塔流出水をRO装置5Cに導入するに先立ち、まず、活性炭塔流出水をフィルター4Cに通水し、フィルター4Cの濾過洗浄排水排出配管(図示略)よりフィルター4C洗浄排水を排出する工程を設けることが好ましい。この工程を設けることで、フィルター4Cに付着した汚染物質がRO装置5Cを再汚染することを防止することができる。洗浄終了後は、反応槽2で酸を添加してpH4〜8に調整した原水で、RO装置5Cを洗浄(リンス)した後、RO処理工程に復帰する。なお、洗浄排水はRO装置5Cの洗浄排水排出配管(図示略)から系外に排出する。
【0039】
RO装置5Aで洗浄工程を行い、RO装置5B,5CでRO処理工程を行うときには、RO装置5Aに活性炭塔流出水を導入し、RO装置5B,5Cには反応槽2からの被処理水を通水する。RO装置5Bで洗浄工程を行い、RO装置5A,5CでRO処理工程を行うときには、RO装置5Bに活性炭塔流出水を導入し、RO装置5A,5Cには反応槽2からの被処理水を通水する。
【0040】
上記説明は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。
【0041】
例えば
図2では、RO装置が3基示されているが、2基又は4基以上であってもよい。また、
図2では1基のRO装置で洗浄工程を行い、他のRO装置でRO処理工程を行うものとしているが、多数のRO装置を並列設置した場合には、2以上のRO装置で洗浄工程を行い、他のRO装置でRO処理工程を行うようにしてもよい。
【0042】
また、
図1および
図2では、活性炭塔流出水を洗浄工程で用いるが、活性炭塔塔1で処理する前のpH9.5以上のアルカリ水を洗浄工程で用いても良い。ただし、濁質やTOC成分などはRO装置5の給水と同等以上の水質であることが好ましいので、pH調整以外はRO装置5の給水と同等の前処理を行うことが好ましい。
【0043】
また、
図2では活性炭塔が用いられているが、活性炭塔以外の前処理手段が設置されてもよい。
【0044】
本発明では、前記アルカリ水は、同じ施設内の異なる工程からの排水であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 活性炭塔
2 反応槽
3 中継槽
4,4A〜4C フィルター
5,5A〜5C RO装置
【要約】
【課題】高pHの被処理水を低コストで、かつスライムを抑制して効率よく処理することができる逆浸透膜処理方法を提供する。
【解決手段】被処理水をpH4〜8の範囲に調整して逆浸透膜装置に通水する逆浸透膜処理方法であって、間欠的にpH9.5以上のアルカリ水を該逆浸透膜装置の逆浸透膜に接触させることを特徴とする逆浸透膜処理方法。原水を活性炭などで前処理して前記被処理水としてもよい。前記被処理水がpH9.5以上の場合、前記アルカリ水としてこの被処理水を用いてもよい。
【選択図】
図2