(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
積層体に含まれる複数の基板の少なくとも一つに生じている、予め設定された位置からの位置ずれに関する情報、および、前記積層体に含まれる複数の基板間の位置ずれに関する情報、の少なくとも一方を含む所定情報が入力される入力部と、
前記所定情報を用いて決定された制御値を用いて前記積層体に露光処理を施す露光部と、を有する露光装置。
前記決定部は、前記位置ずれに関する情報に基づいて、前記補正領域において位置合わせに用いるマークの個数、および、一度に露光するショット領域に含まれるダイの個数を決定する、請求項13に記載の露光装置。
前記位置ずれに関する情報は、前記複数の基板のうち露光装置で露光処理される基板の位置ずれに関する情報である、請求項12から15のいずれか1項に記載の露光装置。
積層体に含まれる複数の基板の少なくとも一つに生じている、予め設定された位置からの位置ずれに関する情報、および、前記積層体に含まれる複数の基板間の位置ずれに関する情報、の少なくとも一方を含む所定情報が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記所定情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記所定情報を、積層された前記複数の基板の少なくとも一つに露光処理をする露光装置に出力する出力部と、を有する制御装置。
積層体に含まれる複数の基板の少なくとも一つに生じている、予め設定された位置からの位置ずれに関する情報、および、前記積層体に含まれる複数の基板間の位置ずれに関する情報、の少なくとも一方を含む所定情報が入力されるステップと、
前記所定情報を用いて決定された制御値を用いて前記積層体に露光処理を施すステップと、を装置に実行させるプログラム。
積層体に含まれる複数の基板の少なくとも一つに生じている、予め設定された位置からの位置ずれに関する情報、および、前記積層体に含まれる複数の基板間の位置ずれに関する情報、の少なくとも一方を含む所定情報が入力される入力段階と、
前記所定情報を用いて決定された制御値を用いて前記積層体に露光処理を施す露光段階と、を有する積層体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、下記の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
図1は、積層型半導体装置を製造する製造システム10のブロック図である。製造システム10は、積層装置200、薄化装置300、露光装置400および制御装置500を備える。
【0014】
積層装置200は、複数の基板を位置合わせして積層することにより積層体を生成する。薄化装置300は、積層体の厚みを薄くする薄化処理をする。露光装置400は、積層される前の基板を露光して当該基板に素子を形成するとともに、積層体を露光して当該積層体に素子を形成する。ここで、基板とは、例えば、集積回路を配線するシリコンの結晶板や、半導体ウエハや、シリコンウエハであってもよいし、電子部品を組み込むプリント板などであってもよい。また、基板とは、単層であってもよいし多層であってもよい。また、回路パターン、集積回路、電子部品、光学要素などが形成されていてもよいし、搭載されていてもよい。
【0015】
制御装置500は、積層装置200、薄化装置300および露光装置400のそれぞれと有線または無線で個別に通信する。制御装置500は、積層装置200、薄化装置300および露光装置400の各々に指示を与えて動作を制御する。
【0016】
図2は、製造システム10で積層型半導体装置100(
図7参照)を製造する手順を示す流れ図である。積層型半導体装置100は、例えば、裏面照射型撮像素子などの電子部品である。積層型半導体装置100は、例えば、画素が配された画素基板と、増幅回路、画像処理回路、制御回路などの処理回路が配された処理基板とが積層された積層体をダイシングして得られたチップ部品(電子部品)である。なお積層型半導体装置100は、裏面照射型撮像素子に限られず、例えば、メモリ基板とロジック基板とを積層しダイシングして得られた演算処理素子等であってもよい。
【0017】
積層型半導体装置100の製造では、まず、前処理として、ステップS101において露光装置400を用いて複数の基板を個々に製造する。制御装置500は、露光装置400から必要な情報を取得し、露光装置400の動作を制御する制御信号を露光装置400に出力する。
【0018】
図3は、ステップS101で製造される画素基板110の模式的断面図である。画素基板110は、シリコンウエハ等の下地基板111、パッド112、平坦化層113、受光素子114、およびアライメントマーク115を有する。下地基板111上に、露光装置400を用いたフォトリソグラフィにより、パッド112、平坦化層113、受光素子114およびアライメントマーク115が形成される。
【0019】
受光素子114は、下地基板111の表面または表面近傍に形成され、平坦化層113に埋め込まれる。パッド112は、平坦化層113の表面に形成され、画素基板110に積層される他の基板に対して電気的な接続を形成する端子となる。
【0020】
また、平坦化層113の表面には、アライメントマーク115も配される。アライメントマーク115は、予め定められた位置に配され、画素基板110と他の基板とを位置合わせする場合の指標となる。アライメントマーク115は、平坦化層113とは異なる光学特性を有する材料、例えば配線材料等で形成してもよいし、平坦化層113の表面に立体構造物として形成してもよい。更に、また、パッド112、配線等の一部をアライメントマーク115として利用できるようにレイアウトしてもよい。
【0021】
図4は、ステップS101で製造される処理基板120の模式的断面図である。処理基板120は、シリコンウエハ等の下地基板121、パッド122、平坦化層123、およびアライメントマーク125を有する。下地基板121上に、露光装置400を用いたフォトリソグラフィにより、パッド122、平坦化層123、およびアライメントマーク125が形成される。
【0022】
処理基板120は、画素基板110に配された受光素子114が生成した信号を処理する処理回路を有する。処理基板120に形成される処理回路は、平坦化層123に埋め込まれる。一方、パッド122は、平坦化層123の表面に形成され、処理基板120に積層される他の基板に対して電気的な接続を形成する端子となる。
【0023】
平坦化層123の表面には、アライメントマーク125が形成される。アライメントマーク125は、画素基板110のアライメントマーク115に対応する位置に配され、処理基板120と画素基板110とを位置合わせする場合の指標となる。アライメントマーク125は、平坦化層123とは異なる光学特性を有する材料、例えば配線材料等で形成してもよい。また、アライメントマーク125は、平坦化層123の表面に立体構造物として形成してもよい。
【0024】
再び
図2を参照すると、ステップS102において、積層装置200は、画素基板110と処理基板120とを積層して積層体130を生成する。制御装置500は、積層装置200から必要な情報を取得し積層装置200の動作を制御する制御信号を積層装置200に出力する。積層装置200は、入力された制御信号に従って積層処理を実行する。
【0025】
図5は、ステップS102で画素基板110および処理基板120を積層して生成された積層体130の模式的断面図である。位置合わせの指標としてのアライメントマーク115、125が相互に一致するように画素基板110および処理基板120を位置合わせした後に積層することにより積層体130が生成される。
【0026】
これにより、画素基板110および処理基板120のパッド112、122が相互に電気的に結合される。また、パッド112、122が存在しない領域では平坦化層113、123が密着して、画素基板110および処理基板120が一体となって積層体130が形成される。
【0027】
ここで、画素基板110および処理基板120は、ステップS102で積層される前に、素子形成、薄化、アニール等の様々な処理を受けている。このため、画素基板110および処理基板120の各々には、残留応力による変形、撓み、反り、歪み等が生じている。
【0028】
再び
図2を参照すると、積層装置200は、ステップS102の積層前、積層中及び積層後(積層後ステップS103が施される前)の少なくとも1つにおいて、画素基板110、処理基板120及び積層体130の少なくとも1つを計測し計測値を取得する。積層装置200は、例えば、積層体130の積層前、積層中及び積層後の少なくとも1つにおいて、画素基板110、処理基板120及び積層体130の少なくとも1つの変形、撓み、反り、歪み等に関する計測値を取得する。
【0029】
この計測値には、上述した画素基板110、処理基板120の残留応力による変形、撓み、反り、歪みなどの推定に利用可能な情報、積層体130の変形、撓み、反り、歪みなどの推定に利用可能な情報などが含まれている。積層装置200は、画素基板110、処理基板120、積層体130の少なくとも1つの製造ロット番号等の符号と、上述した計測値とを関連付けて所定情報を生成する。所定情報は、後述する積層装置200の出力部232から制御装置500に出力される。なお、製造ロット番号とは、例えば、製品の製造時における生産単位毎に付与された番号、符号等である。製造ロット番号を用いることにより製品がどの生産単位(いつ、どの工場のどの生産ラインなど)であるかを特定することができる。製造ロット番号は、制御装置500から積層装置200へ送信されてもよいし、積層装置200により自動的にまたはユーザからの指示に基づいて生成されてもよい。または、製造ロット番号は、積層装置200による積層工程の前に画素基板110または処理基板120に付されたバーコードや二次元コードを積層装置200で読み取ることにより特定されてもよい。
【0030】
具体的には、例えば、ステップS101が施された後であって積層体130が積層される前において、画素基板110、処理基板120それぞれの変形、撓み、反り、歪み等が計測値として取得されてもよい。例えば、積層体130の積層中において、画素基板110、処理基板120のアライメントマーク115、125の位置、積層する過程での位置合わせ動作の記録等が計測値として取得されてもよい。また、例えば、後述するステップS103が施される前であって積層体130が積層された後において、積層体130の変形、撓み、反り、歪み等が計測値として取得されてもよい。これらの計測値には、積層体130の変形、撓み、反り、歪みの推定に利用可能な情報などが含まれているからである。
【0031】
再び
図2を参照すると、ステップS103において、薄化装置300は、積層体130の下地基板111を研磨して薄化する。制御装置500は、薄化装置300から必要な情報を取得し、また、薄化装置300の動作を制御する制御信号を薄化装置300に出力する。薄化装置300は、受信した制御信号に従って薄化処理を実行する。
【0032】
図6は、ステップS103で下地基板111が薄化された積層体130を示す模式的断面図である。ステップS103の薄化処理により受光素子114が、画素基板110側で積層体130の表面に接近して、受光素子114が、画素基板110の下地基板111側、すなわち裏面側から入射光を効率よく受光できる状態になる。
【0033】
再び
図2を参照すると、ステップS104において、露光装置400は、積層体130の表面にマイクロレンズ140等を形成する露光処理(後処理)を実行する。制御装置500は、露光装置400から必要な情報を取得し、上述した所定情報、及び、露光装置400の動作を制御する制御信号を露光装置400に出力する。露光装置400は、所定情報を用いて積層体130の変形、撓み、反り、歪み等の推定値を演算し、制御装置500が出力した制御信号と推定値とを用いて、露光処理(後処理)を実行する。これにより、露光装置400は、積層体130の変形等に応じた好適な制御を実現し得る。
【0034】
本実施形態において、制御装置500は、制御信号を露光装置400に出力し、所定情報を露光装置400に出力しなくてもよい。この場合、制御装置500は、所定情報を用いて積層体130の変形、撓み、反り、歪み等の推定値を演算し、推定値を用いて制御信号を生成する。露光装置400は制御装置500が出力した制御信号に基づいて露光処理(後処理)を実行する。この場合、制御装置500が出力した制御信号は、積層体130の変形等の推定値を用いて生成されているので、露光装置400は、積層体130の変形等に応じた好適な制御を実現し得る。
【0035】
図7は、画素基板110の裏面にマイクロレンズ140が形成された状態を示す模式的断面図である。積層体130は、マイクロレンズ140で集光された光が下地基板111を通じて受光素子114に入力される。これにより、画素基板110の配線層の間を通すことなく、入射光を受光素子114に効率よく入射させることができる。これにより、受光感度の高い裏面照射型撮像素子が形成される。なお、露光装置400による露光後のダイシング等の処理については詳細な説明を省略する。
【0036】
マイクロレンズ140は、露光装置400を用いたフォトリソグラフィで積層体130の表面にパターニングして形成された光学材料層を熱処理して形成される。ここで、マイクロレンズ140の各々は、受光素子114の各々と光学的に位置合わせされる。これにより、受光素子114各々の受光効率を向上できる。
【0037】
なお、露光装置400を用いた積層体130に対する後処理は、マイクロレンズ140の形成に限られない。例えば、裏面照射型撮像素子となる積層体130を製造する場合は、露光装置400を用いてトレンチ、遮光層等も形成する。
【0038】
このように、製造システム10の少なくとも積層装置200は、積層処理の前、積層処理の間、および積層処理後の少なくともひとつで、積層する基板および積層して生成された積層体の少なくともひとつの計測値を用いて生成した所定情報を出力する。また、製造システム10では、積層装置200により生成された所定情報は、積層装置200の外部の一例である制御装置500に出力される。
【0039】
図8は、
図2のステップS102の詳細な手順を示す流れ図であり、
図9は、積層装置200の一例を示すブロック図であり、
図10は、積層部240の一例を示す図である。
【0040】
図8のステップS201において、まず、積層する画素基板110および処理基板120は、積層装置200の積層部240に搬入される。
【0041】
ここで、
図9に示すように、積層装置200は、計測部210、駆動部220、積層部240および制御部230を有する。積層部240は、
図10に示すように、固定ステージ241、移動ステージ242、干渉計243、および顕微鏡244、245を備える。固定ステージ241は、積層部240の天井部に、
図10の下方に向かって固定される。移動ステージ242は、積層部240の床面上に、水平方向に移動可能に配される。
【0042】
図8のステップS202において、積層部240に搬入された画素基板110および処理基板120の各々に対し、後述する計測部210により、基板単体の撓み、反りが計測される。撓みとは、例えば、重力等の外力がある状態における物体(例えば画素基板、処理基板、積層体など)の変形をいう。反りとは、例えば、重力等の外力がない状態における物体の変形をいう。本実施例では、撓み、反りを計測する例について後述するが、上記の通り撓み、反り以外の変形等を計測してもよい。
【0043】
その後、画素基板110は、基板ホルダ190に保持された状態で、固定ステージ241に保持される。また、処理基板120は、基板ホルダ190に保持された状態で移動ステージ242に保持される。
【0044】
図11は、上記ステップS202で用いられる計測部210の一例である。検出部211は、計測対象となる、例えば画素基板110の中心を、その重力に抗して支持する治具215を有する。
【0045】
また、計測部210は、回転駆動部216と距離計217とを有する。回転駆動部216は、画素基板110の中央を回転軸として当該基板を回転させる。固定された距離計217は、回転する画素基板110の図中下面までの距離を、回転軸と平行な方向から計測する。これにより、計測した距離の変動に基づいて、画素基板110の撓み量Cを計測する。計測部210は、回転する画素基板110を対象にして距離を検出するので、画素基板110の周方向の撓みの分布を計測できる。
【0046】
計測部210は、撓み量Cから画素基板110の自重による変形の成分を減じることで、画素基板110の反り量を算出する。
【0047】
更に、計測部210は、
図11中に破線により示すように、画素基板110の径方向に異なる位置に配された複数の距離計217を有してもよい。計測部210は、画素基板110の異なる位置で複数の距離を検出することにより、撓みの分布を計測し、撓み量から画素基板110の自重による変形の成分を減じることで画素基板110の反り量を算出することができる。上述した撓み量及び反り量の少なくとも一方は所定情報の生成に用いられる計測値としてもよい。例えば、撓み量及び反り量の少なくとも一方と、製造ロット番号等の符号とを関連付けて所定情報を生成することができる。
【0048】
なお、計測部210は、処理基板120および積層体130も計測対象とすることができる。例えば、処理基板120又は積層体130の撓み量及び反り量の少なくとも一方と、製造ロット番号等の符号とを関連付けて所定情報を生成することができる。
【0049】
再び
図8を参照すると、ステップS203において、積層装置200は画素基板110および処理基板120の相対位置を計測する。
【0050】
積層部240の顕微鏡244は積層部240に対して固定されており、移動ステージ242を移動することにより、移動ステージ242に保持された処理基板120の複数のアライメントマーク125を観察する。よって、顕微鏡244によりアライメントマーク125の各々が観察されたときの移動ステージ242の移動量を干渉計243で検出することにより、処理基板120の複数のアライメントマーク125相互の相対位置を計測できる。
【0051】
また、顕微鏡245は移動ステージ242に対して固定されており、移動ステージ242を移動することにより、固定ステージ241に保持された画素基板110のアライメントマーク115を観察する。顕微鏡244によりアライメントマーク115の各々が観察されたときの移動ステージ242の移動量を干渉計243で検出することにより、画素基板110の複数のアライメントマーク115相互の相対位置を計測できる。
【0052】
ここで、処理基板120の複数のアライメントマーク125相互の相対位置、画素基板110の複数のアライメントマーク115相互の相対位置はそれぞれ、所定情報を生成するための計測値の一例となっている。この計測値には、処理基板120および画素基板110の残留応力による変形、撓み、反り、歪みなどの推定に利用可能な情報が含まれているからである。この場合には顕微鏡244、245が計測部210の一例となっている。
【0053】
画素基板110を保持した固定ステージ241、顕微鏡244、処理基板120を保持した移動ステージ242、顕微鏡245それぞれの相対位置は既知なので、各基板のアライメントマーク115、125の計測値を用いて、画素基板110および処理基板120の相対位置が算出される。
【0054】
なお、顕微鏡244、245がオートフォーカス機構を備えている場合は、オートフォーカス機構を距離計として利用することにより、処理基板120の厚さの分布または厚さ方向の変形も計測してもよい。当該計測による計測値も、所定情報を生成するのに用いられる計測値の一例となる。
【0055】
再び
図8を参照すると、ステップS204において、積層装置200は、ステップS203で算出した画素基板110および処理基板120の相対位置に基づいて、画素基板110および処理基板120を位置合わせする。画素基板110と処理基板120とを位置合わせするための移動ステージ242の移動量は、複数のアライメントマーク115、125の位置を統計処理、例えば、グローバルアライメント法またはエンハンストグローバルアライメント法を実行することにより算出できる。上記の積層する基板を相互に位置合わせする移動量の目標値も、所定情報を生成するための計測値の一例となっている。
【0056】
次に、ステップS205において、積層装置200は、積層部240の移動ステージ242を上昇させることにより、画素基板110および処理基板120に接合の起点を形成する。接合の起点は、積層する基板の一部を相互に接触させて形成する。このため、積層する基板の一方、例えば、移動ステージ242に保持された処理基板120を直接に保持する基板ホルダ190は、中央等が隆起した球面状の基板保持面を有する。
【0057】
ここで、画素基板110および処理基板120が積層される場合に互いに接する面が、鏡面研磨、プラズマ暴露等により予め活性化されている。これにより、移動ステージ242を固定ステージ241に接近させて画素基板110および処理基板120を接触させた場合、接触の当初、画素基板110および処理基板120は、基板ホルダ190の保持面が隆起した箇所に限って接触し、両者の間に接合の起点が形成される。
【0058】
次に、積層装置200は、積層する基板の一方、例えば、固定ステージ241に保持された画素基板110について、基板ホルダ190による保持を解除する。
【0059】
これにより、ステップS206において、画素基板110の一部と処理基板120の一部との間に接合の起点が形成された状態で一方の基板の拘束が解かれると、分子間力等の基板自体の吸着力により接合面積が接合の起点から拡大して、積層が自律的に進行する。やがて、基板全体が接合されて、一体化した画素基板110および処理基板120は積層体130となり、ステップS207において積層が完了する。
【0060】
上記ステップS205からS208において移動ステージ242の位置の変動や基板の接合の進行度合いなどを位置合わせ動作として計測し、所定情報を生成するための計測値としてもよい。これらに替えて、または、これらに加えて、ロードセルを用いて固定ステージ241等にかかる圧力を計測値として計測してもよい。
【0061】
ステップS208において、積層装置200は、形成された積層体130の保持を解除する。こうして、生成された積層体130は、単体で取り扱うことができる状態になる。ここで、ステップS209において、積層装置200は、ステップS202と同様に積層体130の反りを計測する。
【0062】
この場合に、さらに積層装置200、画素基板110および処理基板120の少なくとも一方を透過する波長帯域の照明光による照明の下で、積層体130のアライメントマーク115、125のずれを顕微鏡244で観察してもよい。これにより積層体130の接合の良否が観察される。積層体130のアライメントマーク115、125のずれが、所定情報を生成するための計測値として用いられてもよい。
【0063】
更に、ステップS210において、積層体130は積層装置200から搬出され、後の工程に搬送される。
【0064】
図9の制御部230の生成部231は、画素基板110、処理基板120、積層体130の少なくとも1つの製造ロット番号等の符号と、上述した計測値とを関連付けて所定情報を生成する。これにより、当該所定情報の基になった計測値が計測された積層体130等と、計測値とを紐づけることができるので、所定情報を製造システム10の後段(積層工程よりも後の工程)で利用できる。
【0065】
この符号は、計測部により計測された画素基板110、処理基板120、積層体130の少なくとも1つを識別または特定できる情報であることが好ましく、製造ロット番号に限定されるものではない。符号としては、例えば、個々の積層体130等(個々の画素基板110、個々の処理基板120又は個々の積層体130)を識別するための番号、積層体130等のシリアル番号、積層体130等を収容する容器に付けられた番号、積層体130等の製造ロット番号、積層体130等の製造日時、等の少なくとも1つを用いることができる。個々の積層体130等のそれぞれは異なる符号を有していてもよい。また、一群(所定個数)の積層体130等が同一の符号を有していてもよい。一群の積層体130等は類似の特性を有する場合が多いため、群毎に異なる符号を付した方が工程の管理が容易になるからである。
【0066】
生成部231は、例えば、ステップS202からS209で計測された、画素基板110、処理基板120、および積層体130の少なくとも1つの計測値を計測部210、および、計測部として機能する顕微鏡244等から取得して、所定情報を生成する。この場合に、生成部231は、積層部240が積層体130を積層する前の計測値、積層中の計測値および積層した後の計測値の少なくとも二つを組み合わせて所定情報を生成してもよい。積層する前の計測値、積層中の計測値及び積層した後の計測値のうち少なくとも二つを用いることにより積層状態を適切に評価できるからである。
【0067】
生成部231が生成する所定情報は、例えば、計測部210から取得した計測値の有効数字を予め定めた規格に合わせて変更した値、計測部210から出力された計測信号の物理量、例えば、電圧値、電流値、光強度等を、他の物理量、例えば数値等に変換した値を用いたものであってもよい。また、生成部231が生成する所定情報は、計測部210で計測された物理量を予め定められた関数を用いて処理して得られた値を用いたものであってもよい。更に、生成部231が生成する所定情報は、計測部210の計測値そのものを用いたものであってもよい。
【0068】
出力部232は、当該所定情報を制御装置500へ出力する。出力部232は、所定情報を、制御装置500を介さずに薄化装置300に出力し、薄化装置300が所定情報を露光装置400に出力してもよい。また、出力部232は、制御装置500、薄化装置300を介さずに、所定情報を露光装置400に出力してもよい。出力部232は、所定情報を、積層装置200に設けられた表示部等への文字列および記号による表示画像として表示してもよい。
また、出力部232は、制御装置500を介して、又は、制御装置500を介さずに所定情報を薄化装置300に出力してもよい。この場合、薄化装置300は、積層装置200から出力された所定情報を用いて好適な薄化処理を行うことができる。
【0069】
制御部230はさらに、通信網600に接続された入力部233を有する。これにより、入力部233に制御装置500からの指示が入力される。入力部233は、薄化装置300および露光装置400からの入力も受け付ける。
【0070】
なお、図示は省くが、製造システム10では、薄化装置300も、画素基板110、処理基板120または積層体130の厚みを薄くする薄化処理を実行する薄化処理部に加えて、薄化固有の計測部および制御部を有してもよい。また、薄化装置300の制御部は、生成部および出力部を含んでもよい。その場合、生成部は、薄化処理前の積層体130の計測値、薄化処理中の積層体130の計測値および薄化処理後の積層体130の計測値の少なくとも1つを用いて所定情報を生成する。また、生成部は、薄化処理前の積層体130の計測値、薄化処理中の積層体130の計測値および薄化処理後の積層体130の計測値のうち2つ以上を用いて所定情報を生成することも好ましい。
【0071】
これにより、薄化装置300でも、基板および積層体のいずれかの計測値を用いて所定情報を生成し、制御装置500に取得させることができる。また、薄化装置300は、積層装置200により計測された計測値を用いて生成された所定情報、又は、積層される前の基板を露光する露光処理前、露光処理中及び露光処理後の少なくとも1つにおいて計測された計測値を用いて生成された所定情報が供給され、供給された所定情報を用いて制御値を決定することができる。なお、所定情報は、積層装置200又は露光装置400から直接供給されてもよいし、制御装置500を介して供給されてもよい。
【0072】
なお、計測部210は、
図11に示すように計測対象の撓み、反りを計測するものに限られない。例えば、画素基板110と固定ステージ241との間隔に関する計測値を測定してもよい。一例として、固定ステージ241と画素基板110との間の静電容量を計測値として計測してもよい。この場合に、生成部231は、当該計測値を用いて、積層体130を形成する画素基板110と処理基板120との接触状態に関する所定情報を生成してもよい。他の例として、画素基板110と固定ステージ241との間隔に関する計測値として、画素基板110と処理基板120とを積層する過程で固定ステージ241から離れる画素基板110と固定ステージ241との間に流れ込む雰囲気、例えば大気の流量を計測値として計測してもよい。
【0073】
なお、画素基板110と固定ステージ241との間隔に関する計測値を、計測対象の異なる位置、例えば径方向に異なる位置で複数計測してもよい。この計測値を用いることで生成部231は、積層体130の接触状態の情報を含む所定情報を生成できる。
【0074】
上記のように、積層装置200では、さまざまな方法で、画素基板110、処理基板120および積層体130を計測できる。よって、生成部231は、適切な計測値を選んで、または、複数種類の計測値のうちから適切な複数種類の計測値を選んで所定情報を生成して、制御装置500に出力することにより、後段の薄化装置300および露光装置400の制御精度を向上させることができる。換言すれば、生成部231は、製造システム10における積層工程よりも後の工程で用いられる薄化装置300および露光装置400で利用しやすい所定情報を生成することが好ましい。更に、所定情報には、上述した符号が含まれるので、所定情報を用いて制御すべき画素基板110、処理基板120及び積層体130の少なくとも1つを特定することができる。
【0075】
なお、
図9で計測部210は積層装置200の内部に配置されているが、製造システム10における積層装置200の外部に配置することもできる。また、ひとつの製造システム10に、複数の計測部210を設けることもできる。
【0076】
図12は、制御装置500の構造を例示するブロック図である。制御装置500は、入力部510、記憶部520、出力部530を有する。
【0077】
入力部510には、積層装置200又は薄化装置300が出力した所定情報が入力される。記憶部520は、入力部510に入力された所定情報を記憶する。制御装置500が例えば積層装置200から所定情報を受け取って、例えば露光装置400に転送する役割を担うものである場合に、記憶部520はバッファメモリのような一時的な記憶部であってもよい。
【0078】
出力部530は、記憶部520に記憶された所定情報を積層装置200、薄化装置300および露光装置400の少なくともいずれかに出力する。この場合に、出力部530は当該所定情報を生成するのに用いられた計測値が計測された後に処理が行われる処理装置へ所定情報を出力する。
【0079】
出力部530は、特定の積層体130等における変形、撓み、反り、歪み等が大きいことを示す所定情報が入力部510に入力された場合に、警告等を外部に向かって出力してもよい。更に、制御装置500は、入力部510に入力された所定情報から、製造システム10の特定の積層装置200、薄化装置300および露光装置400のいずれかの処理装置を経由した積層体130で大きな変形、撓み、反り、歪み等が発生しているか否かを検出してもよい。特定の処理装置で大きな変形、撓み、反り、歪み等が発生している場合、出力部530は、当該処理装置へフィードバックしてもよい。
【0080】
なお、上記の制御装置500の機能はコンピュータにより実行されるプログラムとして実装されてもよい。当該プログラムは少なくとも、画素基板110、処理基板120および積層体130のうちの少なくともひとつの計測値と、画素基板110、処理基板120、積層体130の少なくとも1つを識別できる符号とを用いて所定情報を生成するステップと、当該所定情報を積層装置200、薄化装置300および露光装置400のいずれかに出力するステップとを制御装置500に実行させる。
【0081】
なお、変形例として、制御装置500は設定部540を有してもよい。積層装置200から入力部510に所定情報が入力されず、所定情報の生成に利用できる計測値が入力された場合、設定部540は、入力された計測値が生成された積層体130、画素基板110、処理基板120の少なくともいずれかひとつを識別する符号を設定し、計測値を当該符号に関連付けて所定情報を生成し、記憶部520に記憶させる。
【0082】
図13は、露光装置400のブロック図である。露光装置400は、入力部410、決定部420、露光部430、および出力部440を有する。
【0083】
入力部410は、積層体130、積層体130を構成する画素基板110および処理基板120のいずれかの計測値を用いて生成された所定情報が入力される。所定情報は、積層装置200または薄化装置300で生成される。所定情報は、制御装置500を通じて入力部410に入力されてもよいし、制御装置500を介さず入力部410に直接入力されてもよい。
【0084】
決定部420は、入力部410に入力された所定情報を用いて、計測値と、計測された画素基板110、処理基板120、積層体130の少なくとも1つを識別できる符号とを用いて計測された積層体130を特定し、特定された積層体130に対する露光処理に用いられる制御値を決定する。当該制御値の例は、露光部430による露光処理における、一度に露光する範囲に含まれるダイの個数に対応する値、アライメントマークの計測点数に対応する値、および、露光の有無に対応する値等である。
【0085】
露光部430は、決定部420が決定した制御値を用いて、積層体130に露光処理を施す。出力部440は、通信網600を通じて、積層装置200、薄化装置300および制御装置500に情報を出力する。
【0086】
図14は、露光装置400の動作を示す図である。露光装置400は、積層体130の面積よりも狭いショット領域131を、位置をずらしながら繰り返すことにより積層体130全体を露光する。当該露光により積層体130に形成されている受光素子に対応した位置にマイクロレンズを形成する。
【0087】
露光処理において、所定情報を用いて制御値を決定する例として、積層体130の部分的な変形、撓み、反り、歪み等を示す情報を含む所定情報を用いて、アライメントマークの計測点数を制御値として決定することが挙げられる。この場合に、決定部420は、符号に基づいて所定情報を用いて制御すべき積層体130を特定し、積層体130の部分的な変形、撓み、反り、歪み等を示す情報に基づいて、露光の位置を補正すべき領域である補正領域132(例えば
図14で一点鎖線で囲われた領域)を決定する。さらに、決定部420は、当該補正領域132において位置合わせに用いるアライメントマーク115、125の個数を決定する。例えば、特定の領域における変形、撓み、反り、歪み等が閾値よりも大きい場合には、計測すべきアライメントマークの個数を、他の領域よりも予め定められた数のぶん多くする。これにより、当該補正領域132における位置合わせ精度が部分的に高くなり、当該変形、撓み、反り、歪み等に対応した露光が行われる。
【0088】
積層体130の部分的な変形、撓み、反り、歪み等を示す情報を含む所定情報を用いてアライメントマークの計測点数を制御値として決定することに代えて、または、これに加えて、当該所定情報に基づいて、一度に露光するショット領域131に含まれるダイの個数を制御値として決定してもよい。この場合に、特定の領域における変形、撓み、反り、歪み等が閾値よりも大きい場合に、他の領域よりもダイの個数を予め定められた数のぶん少なくしてもよい。
【0089】
所定情報には、積層体130の全体的な変形、撓み、反り、歪み等を示す情報が含まれてもよい。この場合に、所定情報に積層体130の全体的な変形、撓み、反り、歪み等が閾値よりも大きいことを示す情報が含まれる場合に、決定部420は、積層体130の全体について、位置合わせに用いるアライメントマーク115、125の個数を多くしたり、一度に露光するショット領域131に含まれるダイの個数を小さくしてもよい。
【0090】
これに代えてまたはこれに加えて、所定情報に積層体130の全体的なまたは部分的な変形、撓み、反り、歪み等が閾値よりも大きいことを示す情報が含まれる場合に、決定部420は、積層体130の全体または当該部分に対して露光処理を行わないことを決定してもよい。さらに、これに代えてまたはこれに加えて、積層体130が形成されている受光素子に生じている、予め設定された位置からの位置ずれを示す情報を所定情報に含め、これを用いて、上記制御値を設定してもよい。
【0091】
こうして、製造システム10における積層体130の露光工程よりも前の工程で用いられる積層装置200で生成された所定情報に基づいて、露光装置400の決定部420が制御値を決定するので、露光部430は、積層体130の全体的または部分的な変形、撓み、反り、歪み等に対しても高い位置合わせ精度で露光できる。
【0092】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0093】
特許請求の範囲、明細書、および図面中で示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。