(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分子状酸素による気相接触酸化により不飽和アルデヒド及び/又は不飽和カルボン酸を製造可能な触媒成分と、平均繊維径が1〜300nmであるセルロースナノファイバーを含有する触媒成形体。
前記触媒成形体の質量をM1[g]、前記セルロースナノファイバーの質量をM2[g]としたとき、下記式(III)により算出されるセルロースナノファイバー含有率が0.1〜5質量%である、請求項1に記載の触媒成形体。
セルロースナノファイバー含有率[質量%]=(M2/M1)×100 (III)
前記触媒成分が下記式(I)で表される組成を有し、プロピレン、イソブチレン、第一級ブチルアルコール、第三級ブチルアルコールまたはメチル第三級ブチルエーテルを分子状酸素により気相接触酸化する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒成形体。
Moa1Bib1Fec1Ad1E1e1G1f1J1g1Sih1(NH4)i1Oj1 (I)
(式(I)中、Mo、Bi、Fe、Si、NH4及びOは、それぞれモリブデン、ビスマス、鉄、ケイ素、アンモニウム根及び酸素を表し、Aは、コバルト及びニッケルからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、E1は、クロム、鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、銀、バリウム、スズ、タリウム、タンタル及び亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、G1は、リン、ホウ素、硫黄、セレン、テルル、セリウム、タングステン、アンチモン及びチタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、J1は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、i1及びj1は各成分のモル比率を表し、a1=12のときb1=0.01〜3、c1=0.01〜5、d1=0.01〜12、e1=0〜8、f1=0〜5、g1=0.001〜2、h1=0〜20、i1=0〜30であり、j1は前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の触媒成形体は平均繊維径が1〜300nmであるセルロースナノファイバーを含有する。また本発明の触媒成形体は、分子状酸素による気相接触酸化により不飽和アルデヒド及び/又は不飽和カルボン酸を製造可能な触媒成分、特にプロピレン、イソブチレン、第一級ブチルアルコール、第三級ブチルアルコールまたはメチル第三級ブチルエーテルを分子状酸素により気相接触酸化して、それぞれに対応する不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒成分、または(メタ)アクロレインを分子状酸素により気相接触酸化して不飽和カルボン酸を製造する際に用いられる触媒成分を含む。
本発明の触媒成形体は、特定繊維径のセルロースナノファイバーを含有することで、高い目的生成物の収率と高い機械的強度を両立できる。これにより、工業プロセスの長期連続運転において、触媒の粉化や割れが少ないため、差圧上昇が抑えられ、長期にわたり高収率を維持できる。従って触媒寿命も長く、触媒の交換頻度を減らすことができる。
なお、触媒成形体の機械的強度は、例えば以下の方法により測定される落下粉化率によって評価できる。長手方向が鉛直になるように設置され、下側開口部がステンレス製の板で閉止された内径27.5mm、長さ6mのステンレス製円筒の上側開口部から、触媒成形体100gを落下させて円筒内に充填する。下側開口部を開いて回収した触媒成形体のうち、目開き1mmのふるいを通過しないものの質量をαgとして、落下粉化率を下記式にて算出する。落下粉化率は小さいほど機械的強度が高く、大きいほど機械的強度が低い。
落下粉化率(%)={(100−α)/100}×100
【0013】
[セルロースナノファイバー]
本発明で使用するセルロースナノファイバーは、平均繊維径が1〜300nmである。平均繊維径の下限は2nm以上が好ましく、3nm以上がより好ましい。また平均繊維径の上限は100nm以下が好ましく、50nm以下がより好ましい。なおセルロースナノファイバーとは、平均アスペクト比が100以上である繊維状のセルロースを示す。平均アスペクト比は100〜10000であることが好ましく、100〜2000であることがより好ましい。平均アスペクト比は、セルロースナノファイバーの平均繊維長と平均繊維径の比(平均繊維長/平均繊維径)を意味する。
【0014】
本発明において、セルロースナノファイバーの平均繊維径及び平均繊維長は、乾燥状態のセルロースナノファイバーについて求めた値とする。本発明における乾燥状態のセルロースナノファイバーの平均繊維径及び平均繊維長は、走査電子顕微鏡あるいは透過型電子顕微鏡(電子染色あり)により測定できる。例えば、セルロースナノファイバーの含有量が0.05〜0.1質量%の分散液をSiウェーハなどの基板上にキャストして乾燥させた後、走査電子顕微鏡で観察する。観察視野内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し20〜100本の繊維が交差するよう、試料および倍率等を調節して、画像を取得する。画像を得た後、1枚の画像当たり縦横2本の無作為な軸を引き、各軸に交錯する繊維から任意の20本について繊維径と繊維長の値を読み取っていく。このようにして、3枚の重複しない表面部分の画像を走査電子顕微鏡で撮影し、各々2本の軸に交錯する20本の繊維の繊維径と繊維長の値を読み取る。従って、20本×2軸×3枚の計120本の繊維の繊維径と繊維長の情報を得る。得られた繊維径の算術平均から平均繊維径を算出し、繊維長の算術平均から平均繊維長を算出することができる。なお、枝分かれしている繊維については、枝分かれしている部分の長さが50nm以上であれば、その部分を1本の繊維として繊維径の算出に組み込む。このとき、その繊維の最も長い部分の長さを繊維長とする。
本発明における平均アスペクト比は、走査電子顕微鏡あるいは透過型電子顕微鏡(電子染色あり)と同等の値を得られる手法であれば、上記以外の手法で算出してもよい。なお本発明において、乾燥状態とは、自然乾燥や凍結減圧乾燥といった従来公知の方法によって液体を除去し、セルロースナノファイバーの含液率が1質量%以下となった状態である。
【0015】
本発明で使用するセルロースナノファイバーは、特に限定されず、市販品や、公知の製造方法により製造したものを用いることができる。一般的には、セルロース繊維含有材料をリファイナー、高圧ホモジナイザー、媒体攪拌ミル、石臼、グラインダー等により磨砕や叩解を行うことによって解繊または微細化して製造される。また、例えば特開2005−42283号公報に記載の方法等の公知の方法で製造することもできる。また、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))を利用して製造することもできる。さらに、市販品を利用することも可能である。セルロース繊維含有材料は、植物(例えば木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、農作物残廃物、布、パルプ、再生パルプ、古紙)、動物(例えばホヤ類)、藻類、微生物(例えば酢酸菌(アセトバクター))、微生物産生物等を起源とするものが知れているが、本発明ではそのいずれも使用できる。好ましくは植物または微生物由来のセルロースナノファイバーであり、より好ましくは植物由来のセルロースナノファイバーである。
【0016】
本発明で使用するセルロースナノファイバーは、例えば特開2013−181167号公報や特開2010−216021号公報記載のような、何らかの化学修飾を施したいわゆる変性セルロースナノファイバーを用いてもよく、例えば特開2011−056456号公報記載の方法で製造された、いわゆる未変性セルロースナノファイバーや、未変性セルロースナノファイバー市販品を用いてもよい。未変性セルロースナノファイバーの市販品としては、例えばスギノマシン株式会社のバイオナノファイバー「BiNFi−s」シリーズ、ダイセルファインケム株式会社の「セリッシュ」シリーズ及び中越パルプの「CNF」シリーズが挙げられる。これらのセルロースナノファイバーは、単独で用いることもでき、また2種類以上を混合して用いることもできる。
【0017】
[不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒]
本発明に係る不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒は、下記式(I)で表される組成を有することが、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸収率の観点から好ましい。なお、各元素のモル比率は、触媒成分をアンモニア水に溶解した成分をICP発光分析法で分析することによって求めた値とする。また、アンモニウム根のモル比率は、触媒成分をケルダール法で分析することによって求めた値とする。
Mo
a1Bi
b1Fe
c1A
d1E1
e1G1
f1J1
g1Si
h1(NH
4)
i1O
j1 (I)
式(I)中、Mo、Bi、Fe、Si、NH
4及びOは、それぞれモリブデン、ビスマス、鉄、ケイ素、アンモニウム根及び酸素を表し、Aは、コバルト及びニッケルからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、E1は、クロム、鉛、マンガン、カルシウム、マグネシウム、ニオブ、銀、バリウム、スズ、タリウム、タンタル及び亜鉛からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、G1は、リン、ホウ素、硫黄、セレン、テルル、セリウム、タングステン、アンチモン及びチタンからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表し、J1は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を表す。a1、b1、c1、d1、e1、f1、g1、h1、i1及びj1は各成分のモル比率を表し、a1=12のときb1=0.01〜3、c1=0.01〜5、d1=0.01〜12、e1=0〜8、f1=0〜5、g1=0.001〜2、h1=0〜20、i1=0〜30であり、j1は前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。
各成分のモル比率は、b1=0.05〜2、c1=0.1〜4、d1=0.1〜10、e1=0〜5、f1=0〜3、g1=0.01〜1、h1=0〜10、i1=0〜20がより好ましい。
なお、本発明において「アンモニウム根」とは、アンモニウムイオン(NH
4+)になり得るアンモニア(NH
3)、およびアンモニウム塩などのアンモニウム含有化合物に含まれるアンモニウムの総称である。
【0018】
[不飽和カルボン酸製造用触媒]
本発明に係る不飽和カルボン酸製造用触媒は、下記式(II)で表される組成を有することが、不飽和カルボン酸収率の観点から好ましい。
P
a2Mo
b2V
c2Cu
d2E2
e2G2
f2J2
g2(NH
4)
h2O
i2 (II)
前記式(II)中、P、Mo、V、Cu、NH
4及びOは、それぞれリン、モリブデン、バナジウム、銅、アンモニウム根及び酸素を表す。E2は、アンチモン、ビスマス、砒素、ゲルマニウム、ジルコニウム、テルル、銀、セレン、ケイ素、タングステン及びホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。G2は、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、タンタル、コバルト、ニッケル、マンガン、バリウム、チタン、スズ、タリウム、鉛、ニオブ、インジウム、硫黄、パラジウム、ガリウム、セリウム及びランタンからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。J2は、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種類の元素を表す。a2、b2、c2、d2、e2、f2、g2、h2及びi2は各成分のモル比率を表し、b2=12のとき、a2=0.1〜3、c2=0.01〜3、d2=0.01〜2、e2は0〜3、f2=0〜3、g2=0.01〜3、h2=0〜30であり、i2は前記各成分の価数を満足するのに必要な酸素のモル比率である。
各成分のモル比率は、a2=0.5〜2、c2=0.05〜2、d2=0.05〜1.5、e2=0.01〜2、f2=0〜2、g2=0.05〜2、h2=0〜20がより好ましい。
【0019】
[触媒成形体]
触媒成形体におけるセルロースナノファイバーの含有量は、前記触媒成形体の質量をM1[g]、前記セルロースナノファイバーの質量をM2[g]としたとき、下記式(III)により算出されるセルロースナノファイバー含有率が0.1〜5質量%であることが好ましい。なお、M1およびM2は仕込み量から算出される質量とする。例えば、M1はセルロースナノファイバーを含む触媒成形体の合計の質量であり、後述する触媒乾燥体、バインダーおよびその他の固形分の合計から算出される。
セルロースナノファイバー含有率[質量%]=(M2/M1)×100 (III)
セルロースナノファイバー含有率の値を0.1質量%以上とすることで、触媒成形体の機械的強度をより高めることができる。
またセルロースナノファイバー含有率の値が5質量%以下であることにより、反応器に十分な量の触媒成分を充填することができるため、連続運転において長期にわたり高収率を維持できる。従って触媒寿命も長く、触媒の交換頻度を減らすことができる。セルロースナノファイバー含有率の下限は0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましい。またセルロースナノファイバー含有率の上限は4質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
【0020】
また触媒成形体は、セルロースナノファイバー以外にバインダーを更に含有することが好ましい。触媒成形体がセルロースナノファイバーとバインダーの両方を含有することにより、後述する成形工程において成形性が向上し、所望する形状の成形体を安定して得ることができる。バインダーの質量をM3[g]としたとき、下記式(IV)により算出されるバインダー含有率が0.05〜10質量%であることが好ましく、下限は0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また上限は8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
バインダー含有率[質量%]=(M3/M1)×100 (IV)
【0021】
バインダーとしては、触媒乾燥体または焼成後の触媒を接着する機能を有するものであれば特に限定されず、水溶性バインダーまたは非水溶性バインダーを用いることができる。
水溶性バインダーとしては、例えばポリビニルアルコール等の水溶性高分子化合物、水溶性αグルカン誘導体、水溶性βグルカン誘導体等の有機バインダー、及び水溶性ケイ酸化合物、無機酸のアンモニウム塩等の無機バインダーを挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明においてαグルカン誘導体とは、グルコースから構成される多糖類のうちグルコースがα型の構造で結合したものを示す。水溶性αグルカン誘導体としては、具体的には、アミロース、グリコーゲン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン等を挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。また本発明においてβグルカン誘導体とは、グルコースから構成される多糖類のうちグルコースがβ型の構造で結合したものを示す。水溶性βグルカン誘導体としては、具体的には、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、スクレログルカン等が挙げられる。
【0023】
また水溶性ケイ酸化合物としては、具体的には、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム、アルキルシリケート等を挙げることができる。無機酸のアンモニウム塩としては、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、亜塩化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、次亜硫酸アンモニウム、塩素酸塩アンモニウム等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0024】
非水溶性バインダーとしては、例えば非水溶性αグルカン誘導体、非水溶性βグルカン誘導体等の有機バインダー、及び非水溶性無機化合物、非水溶性の不活性担体等の無機バインダーを挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
非水溶性αグルカン誘導体としては、具体的にはアミロペクチン等が挙げられる。また非水溶性βグルカン誘導体としては、具体的にはエチルセルロース、結晶性セルロース、カードラン、パラミロン等が挙げられる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0025】
また非水溶性無機化合物としては、具体的には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリコンカーバイド、チタニア、マグネシア、グラファイト、ケイソウ土等が挙げられる。また、非水溶性の不活性担体としては、具体的には、セラミックボール、ステンレス鋼、及びガラス繊維、セラミックファイバー、炭素繊維等の無機ファイバー等を挙げることができる。これらは一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0026】
触媒成形体の機械的強度の観点から、バインダーは水溶性であることが好ましく、水溶性有機バインダーであることがより好ましく、水溶性βグルカン誘導体であることが特に好ましい。なお本発明において水溶性とは、20℃の水100gに5g以上溶解する性質のことを示す。
【0027】
[触媒成形体の製造方法]
本発明の触媒成形体はセルロースナノファイバーを含有させる点を除けば、公知の触媒の製造方法に準じて製造することができる。
なお、セルロースナノファイバーを触媒成形体に含有させる方法は特に限定されず、例えば後述する触媒原料液調製工程において、触媒原料液にセルロースナノファイバーを添加する方法、後述する成形工程において触媒乾燥体にセルロースナノファイバーを添加し成形する方法、及びこれらの方法を併用する方法等が挙げられる。
【0028】
(触媒原料液調製工程)
本発明において、触媒成分を調製する方法は特に限定されず、成分の著しい偏在を伴わない限り、従来からよく知られている沈殿法、酸化物混合法等の種々の方法を用いることができる。例えば、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒の製造においては、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒の触媒成分の原料化合物を、適宜選択した溶媒に溶解または懸濁させ、少なくともモリブデン及びビスマスを含む溶液またはスラリー(以下、触媒原料液とも示す)を調製することが好ましい。また、不飽和カルボン酸製造用触媒の製造においては、不飽和カルボン酸製造用触媒の触媒成分の原料化合物を、適宜選択した溶媒に溶解または懸濁させ、少なくともモリブデン及びリンを含む触媒原料液を調製することが好ましい。
【0029】
触媒原料液の調製に用いられる原料化合物は特に限定されず、触媒の各構成元素の酸化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、酢酸塩等の有機酸塩、アンモニウム塩、ハロゲン化物、オキソ酸、オキソ酸塩、アルカリ金属塩等を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。モリブデンの原料化合物としては、例えば、三酸化モリブデン等の酸化モリブデン類、パラモリブデン酸アンモニウムやジモリブデン酸アンモニウム等のモリブデン酸アンモニウム類、モリブデン酸、塩化モリブデン等が挙げられる。ビスマスの原料化合物としては、硝酸ビスマス、酸化ビスマス、酢酸ビスマス、水酸化ビスマス等が挙げられる。リンの原料化合物としては、例えば、リン酸、五酸化リン、リン酸アンモニウム等のリン酸塩等が挙げられる。バナジウムの原料化合物としては、例えば、バナジン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウム、五酸化バナジウム、塩化バナジウム、蓚酸バナジル等が挙げられる。原料化合物は、触媒成分を構成する各元素に対して1種のみを用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、アセトン等が挙げられるが、水を用いることが好ましい。
【0030】
(乾燥工程)
乾燥工程では、前記触媒原料液調製工程で得られた触媒原料液を乾燥し、触媒乾燥体を得る。触媒原料液を乾燥する方法は特に限定されず、例えば、スプレー乾燥機を用いて乾燥する方法、スラリードライヤーを用いて乾燥する方法、ドラムドライヤーを用いて乾燥する方法、蒸発乾固する方法等が適用できる。これらの中では、乾燥と同時に粒子が得られること、得られる粒子の形状が整った球形であることから、スプレー乾燥機を用いて乾燥する方法が好ましい。乾燥条件は乾燥方法により異なるが、スプレー乾燥機を用いる場合、乾燥機入口温度は100〜500℃が好ましく、下限は200℃以上がより好ましく、220℃以上が更に好ましい。また上限は400℃以下がより好ましく、370℃以下が更に好ましい。乾燥機出口温度は100〜200℃が好ましく、下限は105℃以上がより好ましい。乾燥は、得られる触媒乾燥体の水分含有率が0.1〜4.5質量%となるように行うことが好ましい。なおこれらの条件は、所望する触媒の形状や大きさにより適宣選択することができる。
スプレー乾燥機を用いる場合、得られる触媒乾燥体の平均粒子径が1〜250μmであることが好ましい。平均粒子径が1μm以上であることにより、目的生成物の生成に好ましい径の細孔が形成され、高い収率で目的生成物が得られる。また、平均粒子径が250μm以下であることにより、単位体積当たりの触媒乾燥体粒子間の接触点の数が維持でき、十分な触媒の機械的強度が得られる。触媒乾燥体の平均粒子径の下限は5μm以上、上限は150μm以下がより好ましい。なお、平均粒子径は体積平均粒子径を意味し、レーザー式粒度分布測定装置により測定した値とする。
また、噴霧された液滴と熱風との接触方式は、並流、向流、並向流(混合流)のいずれでもよく、いずれの場合でも好適に乾燥することができる。
【0031】
(成形工程)
成形工程では、前記乾燥工程で得られた触媒乾燥体を成形し、触媒成形体を得る。触媒乾燥体がセルロースナノファイバーを含む場合はそのまま成形してもよく、セルロースナノファイバーを追加添加してから成形してもよい。触媒乾燥体がセルロースナノファイバーを含まない場合は、セルロースナノファイバーを添加して成形し、触媒成形体を得る。なお、成形は後述する焼成工程の後に、セルロースナノファイバーを添加してから行っても良い。
乾燥工程で得られた触媒乾燥体は触媒性能を示し、これを成形したものを触媒成形体として用いることができるが、焼成を行うことで触媒としての性能が向上するため好ましい。本発明では焼成後のものを含めて触媒成形体と総称する。
成形方法は特に限定されず、例えば、公知の押出成形、打錠成形、担持成形、転動造粒等の方法が挙げられる。中でも触媒の生産性の観点から打錠成形、押出成形が好ましく、触媒成形体中に目的生成物の製造に有利な細孔が形成される観点から、押出成形がより好ましい。触媒成形体の形状は特に限定されず、例えば、球状、円柱状、リング状(円筒状)、星型状等の形状が挙げられ、中でも機械的強度の高い球状、円柱状、リング状が好ましい。
本発明の触媒成形体は、セルロースナノファイバー以外にバインダーを更に含有させることにより、成形性が向上し、所望する形状の成形体を安定して得ることができる。
【0032】
(焼成工程)
前記乾燥工程で得られた触媒乾燥体、または前記成形工程で得られた触媒成形体を焼成することが、目的生成物の収率の観点から好ましい。焼成温度は通常200〜600℃であり、下限は300℃以上、上限は500℃以下が好ましい。焼成条件は特に限定されないが、焼成は通常、酸素、空気または窒素流通下で行われる。焼成時間は目的とする触媒によって適宜設定されるが、0.5〜40時間が好ましく、1〜40時間がより好ましい。
【0033】
[不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造方法]
本発明に係る不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸の製造方法は、本発明に係る不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒を含有する触媒成形体の存在下で、プロピレン、イソブチレン、第一級ブチルアルコール、第三級ブチルアルコールまたはメチル第三級ブチルエーテルを分子状酸素により気相接触酸化する。これらの方法によれば、高い収率で不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸を製造することができる。
製造される不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸は、プロピレン、イソブチレン、第一級ブチルアルコール、第三級ブチルアルコールまたはメチル第三級ブチルエーテルにそれぞれ対応したものである。たとえばプロピレンに対応する不飽和アルデヒドはアクロレインであり、プロピレンに対応する不飽和カルボン酸はアクリル酸である。イソブチレン、第一級ブチルアルコール、第三級ブチルアルコールおよびメチル第三級ブチルエーテルに対応する不飽和アルデヒドはメタクロレインであり、イソブチレン、第一級ブチルアルコール、第三級ブチルアルコールおよびメチル第三級ブチルエーテルに対応する不飽和カルボン酸はメタクリル酸である。
目的生成物の収率の観点から、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸は、それぞれメタクロレイン及びメタクリル酸であることが好ましい。
【0034】
以下、代表例として本発明に係る方法により製造された触媒成形体の存在下、イソブチレンを分子状酸素により気相接触酸化してメタクロレイン及びメタクリル酸を製造する方法について説明する。
前記方法では、イソブチレンを及び分子状酸素を含む原料ガスと、本発明に係る触媒成形体とを接触させることでメタクロレイン及びメタクリル酸を製造する。この反応では固定床型反応器を使用することができる。反応管内に触媒成形体を充填し、該反応器へ原料ガスを供給することにより反応を行うことができる。触媒成形体層は1層でもよく、活性の異なる複数の触媒成形体をそれぞれ複数の層に分けて充填してもよい。また、活性を制御するために触媒成形体を不活性担体により希釈し充填してもよい。
原料ガス中のイソブチレンの濃度は特に限定されないが、1〜20容量%が好ましく、下限は3容量%以上、上限は10容量%以下がより好ましい。
【0035】
原料ガス中の分子状酸素の濃度は、イソブチレン1モルに対して0.1〜5モルが好ましく、下限は0.5モル以上、上限は3モル以下がより好ましい。なお、分子状酸素源としては、経済性の観点から空気が好ましい。必要であれば、空気に純酸素を加えて分子状酸素を富化した気体を用いてもよい。
原料ガスは、イソブチレン及び分子状酸素を、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈したものであってもよい。さらに、原料ガスに水蒸気を加えてもよい。
原料ガスと触媒成形体との接触時間は、0.5〜10秒が好ましく、下限は1秒以上、上限は6秒以下がより好ましい。反応圧力は、0.1〜1MPa(G)が好ましい。ただし、(G)はゲージ圧であることを意味する。反応温度は200〜420℃が好ましく、下限は250℃以上、上限は400℃以下がより好ましい。
【0036】
[不飽和カルボン酸の製造方法]
本発明に係る不飽和カルボン酸の製造方法は、本発明に係る不飽和カルボン酸製造用触媒を含有する触媒成形体の存在下で、(メタ)アクロレインを分子状酸素により気相接触酸化する。これらの方法によれば、高い収率で不飽和カルボン酸を製造することができる。
製造される不飽和カルボン酸は、(メタ)アクロレインのアルデヒド基がカルボキシル基に変化した不飽和カルボン酸であり、具体的には(メタ)アクリル酸が得られる。
なお、「(メタ)アクロレイン」はアクロレイン及びメタクロレインを示し、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びメタクリル酸を示す。目的生成物の収率の観点から、(メタ)アクロレイン及び(メタ)アクリル酸は、それぞれメタクロレイン及びメタクリル酸であることが好ましい。
【0037】
以下、代表例として、本発明に係る方法により製造された触媒成形体の存在下、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造する方法について説明する。
前記方法では、メタクロレイン及び分子状酸素を含む原料ガスと、本発明に係る触媒成形体とを接触させることでメタクリル酸を製造する。この反応では固定床型反応器を使用することができる。反応管内に触媒成形体を充填し、該反応器へ原料ガスを供給することにより反応を行うことができる。触媒成形体層は1層でもよく、活性の異なる複数の触媒成形体をそれぞれ複数の層に分けて充填してもよい。また、活性を制御するために触媒成形体を不活性担体により希釈し充填してもよい。
【0038】
原料ガス中のメタクロレインの濃度は特に限定されないが、1〜20容量%が好ましく、下限は3容量%以上、上限は10容量%以下がより好ましい。原料であるメタクロレインは、低級飽和アルデヒド等の本反応に実質的な影響を与えない不純物を少量含んでいてもよい。
原料ガス中の分子状酸素の濃度は、メタクロレイン1モルに対して0.4〜4モルが好ましく、下限は0.5モル以上、上限は3モル以下がより好ましい。なお、分子状酸素源としては、経済性の観点から空気が好ましい。必要であれば、空気に純酸素を加えて分子状酸素を富化した気体を用いてもよい。
原料ガスは、メタクロレイン及び分子状酸素を、窒素、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈したものであってもよい。さらに、原料ガスに水蒸気を加えてもよい。水蒸気の存在下で反応を行うことにより、メタクリル酸をより高い収率で得ることができる。原料ガス中の水蒸気の濃度は、0.1〜50容量%が好ましく、下限は1容量%以上、上限は40容量%以下がより好ましい。
原料ガスとメタクリル酸製造用触媒との接触時間は、1.5〜15秒が好ましい。反応圧力は、0.1〜1MPa(G)が好ましい。ただし、(G)はゲージ圧であることを意味する。反応温度は200〜450℃が好ましく、下限は250℃以上、上限は400℃以下がより好ましい。
【0039】
[不飽和カルボン酸エステルの製造方法]
本発明に係る不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、本発明に係る方法により製造された不飽和カルボン酸をエステル化する。すなわち、本発明に係る不飽和カルボン酸エステルの製造方法は、本発明に係る方法により不飽和カルボン酸を製造する工程と、該不飽和カルボン酸をエステル化する工程とを含む。これらの方法によれば、プロピレン、イソブチレン、第一級ブチルアルコール、第三級ブチルアルコールまたはメチル第三級ブチルエーテルの気相接触酸化、または(メタ)アクロレインの気相接触酸化により得られる不飽和カルボン酸を用いて、不飽和カルボン酸エステルを得ることができる。
不飽和カルボン酸と反応させるアルコールとしては特に限定されず、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。得られる不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。反応は、スルホン酸型カチオン交換樹脂等の酸性触媒の存在下で行うことができる。反応温度は50〜200℃が好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「部」は「質量部」を示す。
【0041】
(落下粉化率)
触媒成形体の機械的強度の指標である落下粉化率は以下の方法により測定した。長手方向が鉛直になるように設置され、下側開口部がステンレス製の板で閉止された内径27.5mm、長さ6mのステンレス製円筒の上側開口部から、触媒成形体100gを落下させて円筒内に充填した。下側開口部を開いて回収した触媒成形体のうち、目開き1mmのふるいを通過しないものの質量をαgとして、落下粉化率を下記式にて算出した。落下粉化率は小さいほど機械的強度が高く、大きいほど機械的強度が低い。なお、表1における落下粉化率は、同一条件で触媒成形体を10回製造し、各触媒成形体に対して測定された落下粉化率の平均値である。
落下粉化率(%)={(100−α)/100}×100
【0042】
(原料ガス及び生成物の分析)
原料ガスおよび生成物の分析は、ガスクロマトグラフィーを用いて行った。実施例1〜3、比較例1〜3において、メタクロレイン及びメタクリル酸の合計収率は次式により算出した。
メタクロレイン及びメタクリル酸の合計収率(%)=(B+C)/A×100
ここで、Aは供給したイソブチレンのモル数、Bは生成したメタクロレインのモル数、Cは生成したメタクリル酸のモル数である。
なお、実施例1〜3、比較例1〜3では原料がイソブチレンの場合のみ示しているが、第三級ブチルアルコールを原料として用いた場合においても、反応器の入口部分で速やかにイソブチレンに脱水され、イソブチレンを原料として用いた場合と同様の結果が得られる。
また、実施例4、比較例4〜6において、生成するメタクリル酸の収率は、以下のように定義される。
メタクリル酸の収率(%)=(E/D)×100
ここで、Dは供給したメタクロレインのモル数、Eは生成したメタクリル酸のモル数である。
【0043】
(平均繊維径)
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、走査電子顕微鏡による解析結果から算出した。具体的にはセルロースナノファイバーの含有量が0.05質量%となるように純水に分散させた分散液をウェーハ上にキャストして乾燥させたものを走査電子顕微鏡により観察した。観察視野内に縦横任意の画像幅の軸を想定し、その軸に対し20〜100本の繊維が交差するよう、試料および倍率を調節して、画像を取得した。画像を得た後、1枚の画像当たり縦横2本の無作為な軸を引き、各軸に交錯する繊維から任意の20本について繊維径の値を読み取った。このようにして、3枚の重複しない表面部分の画像を走査電子顕微鏡で撮影し、各々2本の軸に交錯する繊維の繊維径の値を読み取り、120本の繊維の繊維径の情報を得た。得られた繊維径の算術平均から平均繊維径を有効数字2桁にて算出した。
【0044】
(触媒成分の組成比)
各元素のモル比率は、触媒成分をアンモニア水に溶解した成分をICP発光分析法で分析することによって求めた。またアンモニウム根のモル比率は、触媒成分をケルダール法で分析することによって求めた。
【0045】
(セルロースナノファイバー含有量)
触媒成形体におけるセルロースナノファイバーの含有量は、下記式(III)により算出した。
セルロースナノファイバー含有率[質量%]=(M2/M1)×100 (III)
前記式(III)において、触媒成形体の質量M1は、触媒乾燥体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびセルロースナノファイバーの仕込み量の合計とした。またセルロースナノファイバーの質量M2は、セルロースナノファイバーの仕込み量とした。
【0046】
[実施例1]
純水1000部にパラモリブデン酸アンモニウム500部、パラタングステン酸アンモニウム12.4部、硝酸カリウム2.3部、三酸化アンチモン27.5部及び三酸化ビスマス66.0部を加え加熱攪拌した(A液)。別に純水1000部に硝酸第二鉄114.4部、硝酸コバルト274.7部及び硝酸亜鉛35.1部を順次加え溶解した(B液)。A液にB液を加えて得られた触媒原料液を、並流式スプレー乾燥機を用いて、乾燥機入口温度250℃、スラリー噴霧用回転円盤13,000rpmの条件で乾燥して、平均粒子径46μmの触媒乾燥体を得た。なお、該触媒乾燥体の酸素を除く触媒の組成は、Mo
12W
0.2Bi
1.2Fe
1.2Sb
0.8Co
4.0Zn
0.5K
0.1(NH
4)
12.3であった。
前記触媒乾燥体100部に対して、ヒドロキシプロピルメチルセルロース4部と、平均繊維径40nmであるセルロースナノファイバー1部を純水45部に分散させた分散液とを、双腕型のシグマブレードを備えたバッチ式の混練機で粘土状になるまで混練し、混合物を得た。
得られた混合物を、プランジャー式押出機を用いて押出成形し、外径5mm、内径2mm、長さ5.5mmのリング状に成形し、次いで、熱風乾燥機で、90℃で12時間乾燥することにより触媒成形体を得た。該触媒成形体の落下粉化率の測定結果を表1に示す。
続いて触媒成形体を反応管に充填し、空気流通下に450℃で3時間焼成した。次いで、イソブチレン5容量%、酸素12容量%、水蒸気10容量%および窒素73容量%の原料ガスを用い、常圧下、反応温度340℃、接触時間3.6秒で通じてイソブチレンの気相接触酸化反応を行った。生成物を捕集し、ガスクロマトグラフィーで分析することでメタクロレイン及びメタクリル酸の合計収率を求めた。結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2]
実施例1において、純水に分散させたセルロースナノファイバーの量を0.5部とした以外は、実施例1と同様にして触媒成形体を製造して落下粉化率を測定し、続いて該触媒成形体の焼成及び反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0048】
[実施例3]
実施例1において、純水に分散させたセルロースナノファイバーの量を0.25部とした以外は、実施例1と同様にして触媒成形体を製造して落下粉化率を測定し、続いて該触媒成形体の焼成及び反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0049】
[比較例1]
実施例1において、触媒乾燥体にセルロースナノファイバー分散液を混合せず、代わりに純水45部を混合したこと以外は、実施例1と同様にして触媒成形体を製造して落下粉化率を測定し、続いて該触媒成形体の焼成及び反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0050】
[比較例2]
実施例1において、触媒成形体にセルロースナノファイバー分散液を混合せず、代わりに純水45部及び平均粒子径50μmの結晶性セルロース1部を混合したこと以外は、実施例1と同様にして触媒成形体を製造して落下粉化率を測定し、続いて該触媒成形体の焼成及び反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
[比較例3]
実施例1において、触媒成形体にセルロースナノファイバー分散液を混合せず、代わりに純水45部及び平均粒子径50μmの結晶性セルロース5.0部を混合したこと以外は、実施例1と同様にして触媒成形体を製造して落下粉化率を測定し、続いて該触媒成形体の焼成及び反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
[実施例4]
純水4000部に三酸化モリブデン1000部、メタバナジン酸アンモニウム34部、85質量%リン酸水溶液80部及び硝酸銅7部を溶解し、これを攪拌しながら95℃に昇温し、液温を95℃に保ちつつ3時間攪拌した。90℃まで冷却後、回転翼攪拌機を用いて攪拌しながら、重炭酸セシウム124部を純水200部に溶解した溶液を添加して15分間攪拌した。次いで、炭酸アンモニウム92部を純水200部に溶解した溶液を添加し、更に20分間攪拌した。以上のようにして得られた触媒原料液を、並流式スプレー乾燥機を用いて、乾燥機入口温度300℃、スラリー噴霧用回転円盤18,000rpmの条件で乾燥して、平均粒子径25μmの触媒乾燥体を得た。なお、該触媒乾燥体の酸素を除く触媒の組成は、P
1.2Mo
12V
0.5Cu
0.05Cs
1.1(NH
4)
3.8である。
前記触媒乾燥体100部に対して、ヒドロキシプロピルセルメチルロース4部と、平均繊維径20nmであるセルロースナノファイバー0.5部を純水30部に分散させた分散液とを、双腕型のシグマブレードを備えたバッチ式の混練機で粘土状になるまで混練し、混合物を得た。
得られた混合物を、プランジャー式押出機を用いて押出成形し、外径6mm、長さ5mmの円柱状に成形し、次いで、熱風乾燥機で、90℃で12時間焼成することにより触媒成形体を得た。該触媒成形体の落下粉化率の測定結果を表2に示す。
続いて触媒成形体を反応管に充填し、空気流通下に380℃で10時間焼成した。次いでメタクロレイン5容量%、酸素10容量%、水蒸気30容量%、窒素55容量%の原料ガスを用い、常圧下、反応温度305℃、接触時間7.1秒で通じてメタクロレインの気相接触酸化反応を行った。生成物を捕集し、ガスクロマトグラフィーで分析することでメタクリル酸の収率を求めた。結果を表2に示す。
【0053】
[比較例4]
実施例4において、触媒乾燥体にセルロースナノファイバー分散液を混合せず、代わりに純水30部を混合したこと以外は、実施例4と同様にして触媒成形体を製造して落下粉化率を測定し、続いて該触媒成形体の焼成及び反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0054】
[比較例5]
実施例4において、触媒乾燥体にセルロースナノファイバー分散液を混合せず、代わりに純水45部及び平均粒子径50μmの結晶性セルロース1部を混合したこと以外は、実施例4と同様にして触媒成形体を製造して落下粉化率を測定し、続いて該触媒成形体の焼成及び反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0055】
[比較例6]
実施例1において、触媒成形体にセルロースナノファイバー分散液を混合せず、代わりに純水45部及び平均粒子径50μmの結晶性セルロース8部を混合したこと以外は、実施例1と同様にして触媒成形体を製造して落下粉化率を測定し、続いて該触媒成形体の焼成及び反応評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
表1に示されるように、式(I)に含まれるMo
12W
0.2Bi
1.2Fe
1.2Sb
0.8Co
4.0Zn
0.5K
0.1(NH
4)
12.3の組成比を有する触媒成分を用いた場合、触媒成形体が平均繊維径1〜300nmであるセルロースナノファイバーを含有する実施例1〜3は、落下粉化率が低く機械的強度の高い触媒成形体が得られ、メタクロレイン及びメタクリル酸の合計収率も高かった。一方、触媒成形体がセルロースナノファイバーを含有しない比較例1および2は、実施例1〜3と同程度のメタクロレイン及びメタクリル酸の合計収率だが、落下粉化率が高く機械的強度が低かった。そこで比較例3に示すように、セルロースナノファイバー以外のバインダーにより実施例1と同程度の機械的強度とすると、メタクロレイン及びメタクリル酸の合計収率が著しく低下した。
実施例1〜3の触媒成形体は、メタクロレイン及びメタクリル酸の収率が高く、かつ機械的強度も高いため、連続運転において触媒の粉化や割れが少ないため、差圧上昇が抑えられ、長期にわたり高収率を維持できる。従って触媒寿命も長く、触媒の交換頻度を減らすことができる。
【0059】
同様に、式(II)に含まれるP
1.2Mo
12V
0.5Cu
0.05Cs
1.1(NH
4)
3.81の組成比を有する触媒成分を用いた場合、触媒成形体が平均繊維径1〜300nmであるセルロースナノファイバーを含有する実施例4は、落下粉化率が低く機械的強度の高い触媒成形体が得られ、メタクリル酸収率も高かった。一方、触媒成形体がセルロースナノファイバーを含有しない比較例4は、落下粉化率が高く機械的強度が低く、メタクリル酸収率もやや低かった。また比較例5は、実施例4と同程度のメタクリル酸収率だが、落下粉化率が高く機械的強度が低かった。そこで比較例6に示すように、セルロースナノファイバー以外のバインダーにより実施例4と同程度の機械的強度とすると、メタクリル酸の収率が低下した。
実施例4の触媒成形体は、メタクリル酸の収率が高く、かつ機械的強度も高いため、連続運転において触媒の粉化や割れが少ないため、差圧上昇が抑えられ、長期にわたり高収率を維持できる。従って触媒寿命も長く、触媒の交換頻度を減らすことができる。
なお、本実施例で得られたメタクリル酸をエステル化することで、メタクリル酸エステルを得ることができる。