特許第6973620号(P6973620)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973620
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】研磨液、研磨液セット及び研磨方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20211118BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20211118BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20211118BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20211118BHJP
【FI】
   C09K3/14 550M
   C09G1/02
   H01L21/304 622D
   B24B37/00 H
   C09K3/14 550D
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-507311(P2020-507311)
(86)(22)【出願日】2018年9月25日
(86)【国際出願番号】JP2018035456
(87)【国際公開番号】WO2019181013
(87)【国際公開日】20190926
【審査請求日】2020年6月16日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/011464
(32)【優先日】2018年3月22日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/028105
(32)【優先日】2018年7月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】岩野 友洋
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−044046(JP,A)
【文献】 特開2015−137297(JP,A)
【文献】 特開2007−318072(JP,A)
【文献】 特開2012−186339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒と、ヒドロキシ酸と、ポリオールと、液状媒体と、を含有し、
前記砥粒のゼータ電位が正であり、
前記ヒドロキシ酸が、1個のカルボキシル基と1個の水酸基とを有する化合物を含む、研磨液。
【請求項2】
砥粒と、ヒドロキシ酸と、ポリオールと、液状媒体と、を含有し、
前記砥粒のゼータ電位が正であり、
前記ヒドロキシ酸が1個のカルボキシル基と1〜3個の水酸基とを有し、
前記ポリオールの含有量が0.05〜5.0質量%である、研磨液。
【請求項3】
前記ヒドロキシ酸が、1個のカルボキシル基と1個の水酸基とを有する化合物を含む、請求項に記載の研磨液。
【請求項4】
前記ヒドロキシ酸が、1個のカルボキシル基と2個の水酸基とを有する化合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項5】
前記ポリオールがポリエーテルポリオールを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項6】
前記ヒドロキシ酸の含有量が0.01〜1.0質量%である、請求項1〜のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項7】
酸化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の研磨液。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の研磨液の構成成分が第1の液と第2の液とに分けて保存され、前記第1の液が、前記砥粒と、液状媒体と、を含み、前記第2の液が、前記ヒドロキシ酸と、前記ポリオールと、液状媒体と、を含む、研磨液セット。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項10】
請求項8に記載の研磨液セットにおける前記第1の液と前記第2の液とを混合して得られる研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項11】
絶縁材料及び窒化珪素を有する基体の研磨方法であって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の研磨液を用いて前記絶縁材料を前記窒化珪素に対して選択的に研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項12】
絶縁材料及び窒化珪素を有する基体の研磨方法であって、
請求項8に記載の研磨液セットにおける前記第1の液と前記第2の液とを混合して得られる研磨液を用いて前記絶縁材料を前記窒化珪素に対して選択的に研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項13】
絶縁材料及びポリシリコンを有する基体の研磨方法であって、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の研磨液を用いて前記絶縁材料を前記ポリシリコンに対して選択的に研磨する工程を備える、研磨方法。
【請求項14】
絶縁材料及びポリシリコンを有する基体の研磨方法であって、
請求項8に記載の研磨液セットにおける前記第1の液と前記第2の液とを混合して得られる研磨液を用いて前記絶縁材料を前記ポリシリコンに対して選択的に研磨する工程を備える、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨液、研磨液セット及び研磨方法に関する。特に、本発明は、半導体素子の製造技術である基体表面の平坦化工程において用いることが可能な研磨液、研磨液セット及び研磨方法に関する。更に詳しくは、本発明は、シャロートレンチ分離(シャロー・トレンチ・アイソレーション。以下「STI」という。)絶縁材料、プリメタル絶縁材料、層間絶縁材料等の平坦化工程において用いることが可能な研磨液、研磨液セット及び研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体素子の製造工程では、高密度化及び微細化のための加工技術の重要性がますます高まっている。加工技術の一つであるCMP(ケミカル・メカニカル・ポリッシング:化学機械研磨)技術は、半導体素子の製造工程において、STIの形成、プリメタル絶縁材料又は層間絶縁材料の平坦化、プラグ又は埋め込み金属配線の形成等に必須の技術となっている。
【0003】
最も多用されている研磨液としては、例えば、砥粒として、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ(酸化珪素)粒子を含むシリカ系研磨液が挙げられる。シリカ系研磨液は、汎用性が高いことが特徴であり、砥粒含有量、pH、添加剤等を適切に選択することで、絶縁材料及び導電材料を問わず幅広い種類の材料を研磨できる。
【0004】
一方で、主に酸化珪素等の絶縁材料を対象とした研磨液として、セリウム化合物粒子を砥粒として含む研磨液の需要も拡大している。例えば、セリア(酸化セリウム)粒子を砥粒として含むセリア系研磨液は、シリカ系研磨液よりも低い砥粒含有量でも高速に酸化珪素を研磨できる(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−106994号公報
【特許文献2】特開平08−022970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、砥粒を含有する研磨液を一定期間保管した際に、砥粒同士が凝集する等して砥粒の状態が変化すると、当該研磨液を用いて得られる研磨速度が低下する場合がある。そのため、砥粒を含有する研磨液に対しては、砥粒の分散安定性を向上させることが求められる。
【0007】
本発明は、前記課題を解決しようとするものであり、優れた砥粒の分散安定性を有する研磨液を提供することを目的とする。本発明は、前記研磨液を得るための研磨液セットを提供することを目的とする。本発明は、前記研磨液又は前記研磨液セットを用いた研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、ポリオールを含有する研磨液を用いることにより絶縁材料の研磨速度等の研磨特性を向上させることができるものの、研磨液中において砥粒が凝集する場合があることを見出した。これに対し、本発明者は、正のゼータ電位を有する砥粒(陽イオン性砥粒)と、特定のヒドロキシ酸と、ポリオールと、を併用することにより、ポリオールを含有する研磨液において砥粒の分散安定性を向上させることができることを見出した。
【0009】
本発明に係る研磨液は、砥粒と、ヒドロキシ酸と、ポリオールと、液状媒体と、を含有し、前記砥粒のゼータ電位が正であり、前記ヒドロキシ酸が1個のカルボキシル基と1〜3個の水酸基とを有する。
【0010】
本発明に係る研磨液は、優れた砥粒の分散安定性を有する。このような研磨液によれば、研磨液を一定期間保管する場合であっても、研磨速度が低下することを抑制することができる。
【0011】
前記ヒドロキシ酸は、1個のカルボキシル基と1個の水酸基とを有する化合物を含んでいてもよく、1個のカルボキシル基と2個の水酸基とを有する化合物を含んでいてもよい。
【0012】
前記ポリオールは、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。
【0013】
前記ヒドロキシ酸の含有量は、0.01〜1.0質量%であることが好ましい。
【0014】
前記ポリオールの含有量は、0.05〜5.0質量%であることが好ましい。
【0015】
本発明の一側面は、酸化珪素を含む被研磨面の研磨への前記研磨液の使用に関する。すなわち、本発明に係る研磨液は、酸化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用されることが好ましい。
【0016】
本発明に係る研磨液セットは、前記研磨液の構成成分が第1の液と第2の液とに分けて保存され、前記第1の液が、前記砥粒と、液状媒体と、を含み、前記第2の液が、前記ヒドロキシ酸と、前記ポリオールと、液状媒体と、を含む。本発明に係る研磨液セットによれば、本発明に係る研磨液と同様の前記効果を得ることができる。
【0017】
本発明に係る研磨方法は、前記研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備えていてもよく、前記研磨液セットにおける前記第1の液と前記第2の液とを混合して得られる研磨液を用いて被研磨面を研磨する工程を備えていてもよい。これらの研磨方法によれば、前記研磨液又は前記研磨液セットを用いることにより、本発明に係る研磨液と同様の前記効果を得ることができる。
【0018】
本発明に係る研磨方法の一態様は、絶縁材料及び窒化珪素を有する基体の研磨方法であって、前記研磨液を用いて絶縁材料を窒化珪素に対して選択的に研磨する工程を備えていてもよく、前記研磨液セットにおける前記第1の液と前記第2の液とを混合して得られる研磨液を用いて絶縁材料を窒化珪素に対して選択的に研磨する工程を備えていてもよい。これらの研磨方法によれば、前記研磨液又は前記研磨液セットを用いることにより、絶縁材料を窒化珪素に対して選択的に研磨する場合において、本発明に係る研磨液と同様の前記効果を得ることができる。
【0019】
本発明に係る研磨方法の他の態様は、絶縁材料及びポリシリコンを有する基体の研磨方法であって、前記研磨液を用いて絶縁材料をポリシリコンに対して選択的に研磨する工程を備えていてもよく、前記研磨液セットにおける前記第1の液と前記第2の液とを混合して得られる研磨液を用いて絶縁材料をポリシリコンに対して選択的に研磨する工程を備えていてもよい。これらの研磨方法によれば、前記研磨液又は前記研磨液セットを用いることにより、絶縁材料をポリシリコンに対して選択的に研磨する場合において、本発明に係る研磨液と同様の前記効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、優れた砥粒の分散安定性を有する研磨液を提供することができる。本発明によれば、前記研磨液を得るための研磨液セットを提供することができる。本発明によれば、前記研磨液又は前記研磨液セットを用いた研磨方法を提供することができる。
【0021】
本発明によれば、基体表面の平坦化工程への研磨液又は研磨液セットの使用を提供することができる。本発明によれば、STI絶縁材料、プリメタル絶縁材料又は層間絶縁材料の平坦化工程への研磨液又は研磨液セットの使用を提供することができる。本発明によれば、絶縁材料をストッパ材料に対して選択的に研磨する研磨工程への研磨液又は研磨液セットの使用を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る研磨液、研磨液セット、及び、これらを用いた研磨方法について詳細に説明する。
【0023】
<定義>
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0024】
本明細書において、「研磨液」(polishing liquid、abrasive)とは、研磨時に被研磨面に触れる組成物として定義される。「研磨液」という語句自体は、研磨液に含有される成分を何ら限定しない。後述するように、本実施形態に係る研磨液は砥粒(abrasive grain)を含有する。砥粒は、「研磨粒子」(abrasive particle)ともいわれるが、本明細書では「砥粒」という。砥粒は、一般的には固体粒子であって、研磨時に、砥粒が有する機械的作用、及び、砥粒(主に砥粒の表面)の化学的作用によって、除去対象物が除去(remove)されると考えられるが、これに限定されない。
【0025】
<研磨液>
本実施形態に係る研磨液は、例えばCMP用研磨液である。本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、ヒドロキシ酸と、ポリオールと、液状媒体と、を含有し、前記砥粒のゼータ電位が正であり、前記ヒドロキシ酸が1個のカルボキシル基と1〜3個の水酸基とを有する。本実施形態に係る研磨液は、優れた砥粒の分散安定性を有する。本実施形態に係る研磨液によれば、研磨液を一定期間(例えば168時間以上)保管する場合であっても、研磨速度が低下することを抑制することができる。また、本実施形態に係る研磨液によれば、研磨液の調製直後から高い研磨速度を得つつ、研磨液を一定期間(例えば168時間以上)保管する場合であっても、研磨速度が低下することを抑制することができる。
【0026】
優れた砥粒の分散安定性が得られる効果が奏される要因は必ずしも明らかではないが、本発明者は以下のように推測している。
すなわち、ヒドロキシ酸のカルボキシル基からプロトン(H)が解離することにより生成するCOOは、正のゼータ電位を有する砥粒に吸着できる。2個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシ酸を用いる場合、砥粒に吸着したCOOを介して砥粒同士が結合しやすいことから砥粒が凝集しやすい。これに対し、ポリオールを含有する研磨液においてヒドロキシ酸のカルボキシル基の数を1個に留めることで、COOを介して砥粒同士が結合しにくくなり、砥粒の凝集を抑制しやすい。
また、ヒドロキシ酸同士は、水酸基を介して結合することができる。そのため、ヒドロキシ酸の水酸基の数が多いと、砥粒に吸着したヒドロキシ酸の水酸基を介して砥粒が凝集しやすい。これに対し、ポリオールを含有する研磨液においてヒドロキシ酸の水酸基の数を1〜3個に留めることで、ヒドロキシ酸の水酸基を介して砥粒同士が結合しにくくなり、砥粒の凝集を抑制しやすい。
これらの作用により、本実施形態に係る研磨液では、優れた砥粒の分散安定性を達成することができる。
【0027】
(砥粒)
本実施形態に係る研磨液は、陽イオン性砥粒として、研磨液中において正のゼータ電位を有する砥粒を含有する。砥粒は、絶縁材料を高い研磨速度で研磨する観点から、セリア、シリカ、アルミナ、ジルコニア、イットリア及び4価金属元素の水酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、セリアを含むことがより好ましい。砥粒は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0028】
「4価金属元素の水酸化物」とは、4価の金属(M4+)と、少なくとも1つの水酸化物イオン(OH)とを含む化合物である。4価金属元素の水酸化物は、水酸化物イオン以外の陰イオン(例えば、硝酸イオンNO及び硫酸イオンSO2−)を含んでいてもよい。例えば、4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素に結合した陰イオン(例えば、硝酸イオンNO及び硫酸イオンSO2−)を含んでいてもよい。4価金属元素の水酸化物は、4価金属元素の塩(金属塩)と、アルカリ源(塩基)とを反応させることにより作製できる。
【0029】
4価金属元素の水酸化物は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、セリウム水酸化物(4価セリウムの水酸化物)を含むことが好ましい。セリウム水酸化物は、セリウム塩と、アルカリ源(塩基)とを反応させることにより作製できる。セリウム水酸化物は、セリウム塩とアルカリ液(例えばアルカリ水溶液)とを混合することにより作製されることが好ましい。これにより、粒径が極めて細かい粒子を得ることができ、優れた研磨傷の低減効果を得やすい。セリウム水酸化物は、セリウム塩溶液(例えばセリウム塩水溶液)とアルカリ液とを混合することにより得ることができる。セリウム塩としては、Ce(NO、Ce(SO、Ce(NH(NO、Ce(NH(SO等が挙げられる。
【0030】
セリウム水酸化物の製造条件等に応じて、4価セリウム(Ce4+)、1〜3個の水酸化物イオン(OH)及び1〜3個の陰イオン(Xc−)からなるCe(OH)(式中、a+b×c=4である)を含む粒子が生成すると考えられる(なお、このような粒子もセリウム水酸化物である)。Ce(OH)では、電子吸引性の陰イオン(Xc−)が作用して水酸化物イオンの反応性が向上しており、Ce(OH)の存在量が増加するに伴い研磨速度が向上すると考えられる。陰イオン(Xc−)としては、例えば、NO及びSO2−が挙げられる。セリウム水酸化物を含む粒子は、Ce(OH)だけでなく、Ce(OH)、CeO等も含み得ると考えられる。
【0031】
セリウム水酸化物を含む粒子がCe(OH)を含むことは、粒子を純水でよく洗浄した後に、FT−IR ATR法(Fourier transform Infra Red Spectrometer Attenuated Total Reflection法、フーリエ変換赤外分光光度計全反射測定法)で、陰イオン(Xc−)に該当するピークを検出する方法により確認できる。XPS法(X−ray Photoelectron Spectroscopy、X線光電子分光法)により、陰イオン(Xc−)の存在を確認することもできる。
【0032】
砥粒がセリアを含む場合、セリアの含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、砥粒全体(研磨液に含まれる砥粒全体。以下同様)を基準として、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、80質量%以上が極めて好ましく、90質量%以上が非常に好ましく、95質量%以上がより一層好ましく、98質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましい。砥粒が後述の複合粒子を含まない態様においてこれらの数値範囲が満たされていてよい。
【0033】
研磨液、又は、後述する研磨液セットにおけるスラリ中の砥粒の平均粒径の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、16nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、30nm以上が更に好ましく、40nm以上が特に好ましく、50nm以上が極めて好ましく、100nm以上が非常に好ましく、120nm以上がより一層好ましく、150nm以上がより好ましく、200nm以上が更に好ましく、250nm以上が特に好ましく、300nm以上が極めて好ましい。砥粒の平均粒径の上限は、被研磨面に傷がつくことを更に抑制する観点から、1050nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましく、800nm以下が更に好ましく、600nm以下が特に好ましく、500nm以下が極めて好ましく、400nm以下が非常に好ましい。これらの観点から、砥粒の平均粒径は、16〜1050nmであることがより好ましく、20〜1000nmであることが更に好ましい。
【0034】
砥粒の「平均粒径」とは、砥粒の平均二次粒径を意味する。例えば、砥粒の平均粒径は、体積平均粒径であり、研磨液、又は、後述する研磨液セットにおけるスラリについて、光回折散乱式粒度分布計(例えば、マイクロトラック・ベル株式会社製の商品名:マイクロトラックMT3300EXII)を用いて測定することができる。
【0035】
研磨液中における砥粒のゼータ電位(表面電位)は、優れた砥粒の分散安定性を得る観点から、正である(ゼータ電位が0mVを超える)。砥粒のゼータ電位の下限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、10mV以上が好ましく、20mV以上がより好ましく、25mV以上が更に好ましく、30mV以上が特に好ましく、40mV以上が極めて好ましく、50mV以上が非常に好ましい。砥粒のゼータ電位の上限は、特に限定されないが、200mV以下が好ましい。これらの観点から、砥粒のゼータ電位は、10〜200mVがより好ましい。
【0036】
砥粒のゼータ電位は、例えば、動的光散乱式ゼータ電位測定装置(例えば、ベックマン・コールター株式会社製、商品名:DelsaNano C)を用いて測定することができる。砥粒のゼータ電位は、添加剤を用いて調整できる。例えば、セリアを含有する砥粒にモノカルボン酸(例えば酢酸)を接触させることにより、正のゼータ電位を有する砥粒を得ることができる。また、セリアを含有する砥粒に、リン酸二水素アンモニウム、カルボキシル基を有する材料(例えばポリアクリル酸)等を接触させることにより、負のゼータ電位を有する砥粒を得ることができる。
【0037】
砥粒の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、研磨液の全質量を基準として、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上が更に好ましく、0.03質量%以上が特に好ましく、0.04質量%以上が極めて好ましく、0.05質量%以上が非常に好ましく、0.1質量%以上がより一層好ましく、0.15質量%以上がより好ましい。砥粒の含有量の上限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、5質量%以下が特に好ましく、4質量%以下が極めて好ましく、3質量%以下が非常に好ましく、1質量%以下がより一層好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下が更に好ましく、0.2質量%以下が特に好ましい。これらの観点から、砥粒の含有量は、研磨液の全質量を基準として0.005〜20質量%であることがより好ましい。
【0038】
砥粒は、互いに接触した複数の粒子から構成される複合粒子を含んでいてよい。例えば、砥粒は、第1の粒子と、当該第1の粒子に接触した第2の粒子と、を含む複合粒子を含んでいてよく、複合粒子と遊離粒子(例えば、第1の粒子と接触していない第2の粒子)とを含んでいてよい。
【0039】
砥粒は、複合粒子を含む態様として、第1の粒子と、当該第1の粒子に接触した第2の粒子と、を含み、第1の粒子がセリアを含有し、第2の粒子がセリウム化合物を含有する態様であることが好ましい。このような砥粒を用いることにより、優れた砥粒の分散安定性を得やすい。このような効果が得られる理由としては、例えば、下記の理由が挙げられる。但し、理由は下記に限定されない。
【0040】
すなわち、第2の粒子が第1の粒子に接触することによって粒子の表面に凹凸が生じることにより、複合粒子同士が接触した際の接触面積が減少する。その効果、複合粒子の過度の凝集が抑制されることにより分散安定性が向上しやすい。そして、第1の粒子がセリアを含有すると共に第2の粒子がセリウム化合物を含有することによって当該現象が生じやすくなり、分散安定性が更に向上しやすい。
【0041】
第2の粒子のセリウム化合物としては、セリウム水酸化物、セリア等が挙げられる。第2の粒子のセリウム化合物としては、セリアとは異なる化合物を用いることができる。セリウム化合物は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、セリウム水酸化物を含むことが好ましい。
【0042】
第2の粒子の粒径は、第1の粒子の粒径よりも小さいことが好ましい。第1の粒子及び第2の粒子の粒径の大小関係は、複合粒子のSEM画像等から判別することができる。一般的に、粒径が小さい粒子では、粒径が大きい粒子に比べて単位質量当たりの表面積が大きいことから反応活性が高い。そのため、第1の粒子の粒径よりも小さい粒径を有する第2の粒子の反応活性が高いことから、第2の粒子が第1の粒子と接触した際に第2の粒子が速やかに第1の粒子と相互作用して第1の粒子を容易に覆うことができる。
【0043】
第1の粒子の粒径の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、15nm以上が好ましく、25nm以上がより好ましく、35nm以上が更に好ましく、40nm以上が特に好ましく、50nm以上が極めて好ましく、80nm以上が非常に好ましく、100nm以上がより一層好ましい。第1の粒子の粒径の上限は、砥粒の分散性が向上する観点、及び、被研磨面に傷がつくことが抑制されやすい観点から、1000nm以下が好ましく、800nm以下がより好ましく、600nm以下が更に好ましく、400nm以下が特に好ましく、300nm以下が極めて好ましく、200nm以下が非常に好ましく、150nm以下がより一層好ましい。前記観点から、第1の粒子の粒径は、15〜1000nmであることがより好ましい。第1の粒子の平均粒径(平均二次粒径)が上述の範囲であってもよい。
【0044】
第2の粒子の粒径の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、1nm以上が好ましく、2nm以上がより好ましく、3nm以上が更に好ましい。第2の粒子の粒径の上限は、砥粒の分散性が向上する観点、及び、被研磨面に傷がつくことが抑制されやすい観点から、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、25nm以下が更に好ましく、20nm以下が特に好ましく、15nm以下が極めて好ましく、10nm以下が非常に好ましい。前記観点から、第2の粒子の粒径は、1〜50nmであることがより好ましい。第2の粒子の平均粒径(平均二次粒径)が上述の範囲であってもよい。
【0045】
第1の粒子は、負のゼータ電位を有することができる。第2の粒子は、正のゼータ電位を有することができる。
【0046】
第1の粒子及び第2の粒子を含む複合粒子は、ホモジナイザー、ナノマイザー、ボールミル、ビーズミル、超音波処理機等を用いて第1の粒子と第2の粒子とを接触させること、互いに相反する電荷を有する第1の粒子と第2の粒子とを接触させること、粒子の含有量が少ない状態で第1の粒子と第2の粒子とを接触させることなどにより得ることができる。
【0047】
第1の粒子におけるセリアの含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、第1の粒子の全体(研磨液に含まれる第1の粒子の全体。以下同様)を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。第1の粒子は、実質的にセリアからなる態様(実質的に第1の粒子の100質量%がセリアである態様)であってもよい。
【0048】
第2の粒子におけるセリウム化合物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、第2の粒子の全体(研磨液に含まれる第2の粒子の全体。以下同様)を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。第2の粒子は、実質的にセリウム化合物からなる態様(実質的に第2の粒子の100質量%がセリウム化合物である態様)であってもよい。
【0049】
研磨液に特定の波長の光を透過させた際に分光光度計によって得られる下記式の吸光度の値により第2の粒子の含有量を推定することができる。すなわち、粒子が特定の波長の光を吸収する場合、当該粒子を含む領域の光透過率が減少する。光透過率は、粒子による吸収だけでなく、散乱によっても減少するが、第2の粒子では、散乱の影響が小さい。そのため、本実施形態では、下記式によって算出される吸光度の値により第2の粒子の含有量を推定することができる。
吸光度 =−LOG10(光透過率[%]/100)
【0050】
複合粒子を含む砥粒における第1の粒子の含有量は、砥粒全体を基準として下記の範囲が好ましい。第1の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、75質量%以上が極めて好ましく、80質量%以上が非常に好ましく、85質量%以上がより一層好ましく、90質量%以上がより好ましい。第1の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が更に好ましい。前記観点から、第1の粒子の含有量は、50〜95質量%であることがより好ましい。
【0051】
複合粒子を含む砥粒における第2の粒子の含有量は、砥粒全体を基準として下記の範囲が好ましい。第2の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましい。第2の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、50質量%未満がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましく、25質量%以下が極めて好ましく、20質量%以下が非常に好ましく、15質量%以下がより一層好ましく、10質量%以下がより好ましい。前記観点から、第2の粒子の含有量は、5〜50質量%であることがより好ましい。
【0052】
複合粒子を含む砥粒におけるセリアの含有量は、砥粒全体を基準として下記の範囲が好ましい。セリアの含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、75質量%以上が極めて好ましく、80質量%以上が非常に好ましく、85質量%以上がより一層好ましく、90質量%以上がより好ましい。セリアの含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が更に好ましい。前記観点から、セリアの含有量は、50〜95質量%であることがより好ましい。
【0053】
複合粒子を含む砥粒におけるセリウム水酸化物の含有量は、砥粒全体を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム水酸化物の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましい。セリウム水酸化物の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、50質量%未満がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましく、25質量%以下が極めて好ましく、20質量%以下が非常に好ましく、15質量%以下がより一層好ましく、10質量%以下がより好ましい。前記観点から、セリウム水酸化物の含有量は、5〜50質量%であることがより好ましい。
【0054】
第1の粒子の含有量は、第1の粒子及び第2の粒子の合計量を基準として下記の範囲が好ましい。第1の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、50質量%以上が好ましく、50質量%を超えることがより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましく、75質量%以上が極めて好ましく、80質量%以上が非常に好ましく、85質量%以上がより一層好ましく、90質量%以上がより好ましい。第1の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、95質量%以下が好ましく、93質量%以下がより好ましく、91質量%以下が更に好ましい。前記観点から、第1の粒子の含有量は、50〜95質量%であることがより好ましい。
【0055】
第2の粒子の含有量は、第1の粒子及び第2の粒子の合計量を基準として下記の範囲が好ましい。第2の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、9質量%以上が更に好ましい。第2の粒子の含有量の上限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、50質量%未満がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、30質量%以下が特に好ましく、25質量%以下が極めて好ましく、20質量%以下が非常に好ましく、15質量%以下がより一層好ましく、10質量%以下がより好ましい。前記観点から、第2の粒子の含有量は、5〜50質量%であることがより好ましい。
【0056】
研磨液における第1の粒子の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。第1の粒子の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が特に好ましく、0.08質量%以上が極めて好ましく、0.1質量%以上が非常に好ましく、0.15質量%以上がより一層好ましい。第1の粒子の含有量の上限は、研磨液の保存安定性を高くする観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が極めて好ましく、0.2質量%以下が非常に好ましい。前記観点から、第1の粒子の含有量は、0.005〜5質量%であることがより好ましい。
【0057】
研磨液における第2の粒子の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。第2の粒子の含有量の下限は、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に向上して絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.012質量%以上が特に好ましく、0.015質量%以上が極めて好ましく、0.016質量%以上が非常に好ましい。第2の粒子の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易になると共に、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に良好となり、砥粒の特性を有効に活用しやすい観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましく、0.05質量%以下が非常に好ましく、0.04質量%以下がより一層好ましく、0.035質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が更に好ましく、0.025質量%以下が特に好ましく、0.03質量%以下が極めて好ましい。前記観点から、第2の粒子の含有量は、0.005〜5質量%であることがより好ましい。
【0058】
複合粒子を含む砥粒を含有する研磨液におけるセリアの含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。セリアの含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.05質量%以上が特に好ましく、0.08質量%以上が極めて好ましく、0.1質量%以上が非常に好ましく、0.15質量%以上がより一層好ましい。セリアの含有量の上限は、研磨液の保存安定性を高くする観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が極めて好ましく、0.2質量%以下が非常に好ましい。前記観点から、セリアの含有量は、0.005〜5質量%であることがより好ましい。
【0059】
複合粒子を含む砥粒を含有する研磨液におけるセリウム水酸化物の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。セリウム水酸化物の含有量の下限は、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に向上して絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、0.005質量%以上が好ましく、0.008質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましく、0.012質量%以上が特に好ましく、0.015質量%以上が極めて好ましく、0.016質量%以上が非常に好まししい。セリウム水酸化物の含有量の上限は、砥粒の凝集を避けることが容易になると共に、砥粒と被研磨面との化学的な相互作用が更に良好となり、砥粒の特性を有効に活用しやすい観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましく、0.05質量%以下が非常に好ましく、0.04質量%以下がより一層好ましく、0.035質量%以下がより好ましく、0.03質量%以下が更に好ましく、0.025質量%以下が特に好ましく、0.03質量%以下が極めて好ましい。前記観点から、セリウム水酸化物の含有量は、0.005〜5質量%であることがより好ましい。
【0060】
複合粒子を含む砥粒を含有する研磨液における砥粒の含有量は、研磨液の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。砥粒の含有量の下限は、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましく、0.12質量%以上が特に好ましく、0.16質量%以上が極めて好ましく、0.18質量%以上が非常に好ましい。砥粒の含有量の上限は、研磨液の保存安定性を高くする観点から、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましく、0.1質量%以下が極めて好ましく、0.2質量%以下が非常に好ましい。前記観点から、砥粒の含有量は、0.01〜10質量%であることがより好ましい。
【0061】
(添加剤)
本実施形態に係る研磨液は、添加剤を含有する。ここで、「添加剤」とは、砥粒及び液状媒体以外に研磨液が含有する物質を指す。添加剤を用いることにより、例えば、研磨速度、研磨選択性等の研磨特性;砥粒の分散安定性、保存安定性等の研磨液特性などを調整することができる。
【0062】
[ヒドロキシ酸]
本実施形態に係る研磨液は、必須の添加剤として、1個のカルボキシル基と1〜3個の水酸基とを有するヒドロキシ酸(以下、「特定ヒドロキシ酸」という。)を含有する。前記特定ヒドロキシ酸において、カルボキシル基の数は1個であり、水酸基の数は1〜3個である。なお、「水酸基」に、カルボキシル基中の「−OH」は含まない。「水酸基」は、アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基のいずれであってもよい。前記特定ヒドロキシ酸は、フェノール性水酸基を有していなくてよい。前記特定ヒドロキシ酸は、1個のカルボキシル基と1〜3個のアルコール性水酸基とを有していてよい。
【0063】
前記特定ヒドロキシ酸は、1個のカルボキシル基と1個の水酸基とを有する化合物を含んでいてもよく、1個のカルボキシル基と2個の水酸基とを有する化合物を含んでいてもよく、1個のカルボキシル基と3個の水酸基とを有する化合物を含んでいてもよい。前記特定ヒドロキシ酸は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。前記特定ヒドロキシ酸における水酸基の数は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、1〜2個が好ましく、2個がより好ましい。
【0064】
前記特定ヒドロキシ酸としては、グリコール酸、グリセリン酸、乳酸(例えばDL−乳酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、N−[2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシン、ビシン、トリシン、チロシン、セリン、トレオニン等が挙げられる。前記特定ヒドロキシ酸は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、乳酸(例えばDL−乳酸)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、及び、N−[2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]グリシンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0065】
前記特定ヒドロキシ酸は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、脂肪族ヒドロキシ酸を含むことが好ましい。前記特定ヒドロキシ酸は、窒素原子を含むヒドロキシ酸を含んでいてもよく、窒素原子を含まないヒドロキシ酸を含んでいてもよい。前記特定ヒドロキシ酸は、アミノ基を有していてよく、アミノ基を有していなくてもよい。前記特定ヒドロキシ酸は、アミノ酸を含んでいてよく、アミノ酸を含んでいなくてもよい。
【0066】
前記特定ヒドロキシ酸の水酸基価の上限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、1500以下が好ましく、1300以下がより好ましく、1100以下が更に好ましく、1000以下が特に好ましく、900以下が極めて好ましい。前記特定ヒドロキシ酸の水酸基価の下限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、50以上が好ましく、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましく、500以上が特に好ましく、600以上が極めて好ましく、650以上が非常に好ましい。これらの観点から、前記特定ヒドロキシ酸の水酸基価は、50〜1500がより好ましい。なお、「水酸基価」とは、当該ヒドロキシ酸に含まれる水酸基数の大小の指標となる数値であり、下記式(1)から算出されるものとする。
水酸基価=56110×水酸基数/分子量 …(1)
【0067】
前記特定ヒドロキシ酸の含有量の下限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上が更に好ましく、0.08質量%以上が特に好ましく、0.1質量%以上が極めて好ましい。前記特定ヒドロキシ酸の含有量の上限は、絶縁材料の適度な研磨速度を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として、1.0質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましく、0.4質量%以下が特に好ましく、0.3質量%以下が極めて好ましく、0.2質量%以下が非常に好ましい。これらの観点から、前記特定ヒドロキシ酸の含有量は、研磨液の全質量を基準として0.01〜1.0質量%がより好ましい。
【0068】
前記特定ヒドロキシ酸の含有量の下限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、砥粒100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上が更に好ましく、40質量部以上が特に好ましく、40質量部を超えることが極めて好ましく、50質量部以上が非常に好ましく、55質量部以上がより一層好ましい。前記特定ヒドロキシ酸の含有量の上限は、絶縁材料の適度な研磨速度を得やすい観点から、砥粒100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、100質量部未満がより好ましく、80質量部以下が更に好ましく、70質量部以下が特に好ましく、65質量部以下が極めて好ましく、60質量部以下が非常に好ましい。これらの観点から、前記特定ヒドロキシ酸の含有量は、砥粒100質量部に対して10〜100質量部がより好ましい。
【0069】
本実施形態に係る研磨液は、前記特定ヒドロキシ酸以外のヒドロキシ酸を含有してもよい。このようなヒドロキシ酸としては、2個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシ酸、4個以上の水酸基を有するヒドロキシ酸等が挙げられる。具体例としては、グルクロン酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0070】
本実施形態に係る研磨液における前記特定ヒドロキシ酸の含有量の下限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、研磨液に含まれるヒドロキシ酸の全質量を基準として、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましく、97質量%以上が極めて好ましく、99質量%以上が非常に好ましい。
【0071】
[ポリオール]
本実施形態に係る研磨液は、必須の添加剤として、ポリオール(ヒドロキシ酸に該当する化合物を除く)を含有する。ポリオールとは、分子中に2個以上の水酸基を有している化合物である。
【0072】
ポリオールとしては、ポリグリセリン、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコール(ポリエチレングリコール等)、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンソルビトールエーテル(ポリオキシプロピレンソルビトールエーテル等)、エチレンジアミンのポリオキシアルキレン縮合物(エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン等)、2,2−ビス(4−ポリオキシアルキレン−オキシフェニル)プロパン、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシアルキレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシアルキレンメチルグルコシド等が挙げられる。
【0073】
ポリオールは、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、ポリグリセリン、ポリアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレンソルビトールエーテル、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレントリメチロールプロパンエーテル(ポリオキシエチレントリメチロールプロパンエーテル等)、及び、ポリオキシアルキレンペンタエリスリトールエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましく、ポリオキシアルキレントリメチロールプロパンエーテルを含むことがより好ましい。ポリオールは、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、芳香族基を有しないポリオールを含むことが好ましい。
【0074】
ポリオールとしては、被研磨面に保護層を形成して研磨速度を緩やかに調整することが容易であることから、凹部の過研磨が容易に抑制され、研磨後のウエハを平坦に仕上げることが容易である観点から、ポリエーテルポリオール(ポリエーテル構造を有するポリオール)が好ましい。
【0075】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシアルキレン構造を有することが好ましい。これにより、被研磨面に保護層を形成して研磨速度を緩やかに調整することが更に容易であることから、凹部の過研磨が更に容易に抑制され、研磨後のウエハを平坦に仕上げることが更に容易である。ポリオキシアルキレン構造におけるオキシアルキレン基(構造単位)の炭素数は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、1以上が好ましく、2以上がより好ましい。ポリオキシアルキレン構造におけるオキシアルキレン基(構造単位)の炭素数は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、5以下が好ましく、4以下がより好ましく、3以下が更に好ましい。これらの観点から、前記炭素数は、1〜5が好ましい。ポリオキシアルキレン鎖は、単独重合鎖であってもよく、共重合鎖であってもよい。共重合鎖は、ブロック重合鎖であってもよく、ランダム重合鎖であってもよい。
【0076】
ポリオールは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
ポリオールの分子量の下限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上が更に好ましく、330以上が特に好ましく、350以上が極めて好ましい。ポリオールの分子量の上限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、5000以下が好ましく、4000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましく、1000以下が特に好ましく、800以下が極めて好ましく、500以下が非常に好ましく、400以下がより一層好ましい。これらの観点から、ポリオールの分子量は、100〜5000がより好ましい。
【0078】
ポリオールの含有量の下限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点、及び、平坦性を更に向上させる観点から、研磨液の全質量を基準として、0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上が更に好ましく、0.3質量%以上が特に好ましく、0.4質量%以上が極めて好ましく、0.5質量%以上が非常に好ましい。ポリオールの含有量の上限は、絶縁材料の適度な研磨速度を得やすい観点から、研磨液の全質量を基準として、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以下が特に好ましい。これらの観点から、ポリオールの含有量は、研磨液の全質量を基準として0.05〜5.0質量%がより好ましい。
【0079】
[任意の添加剤]
本実施形態に係る研磨液は、任意の添加剤(前記ヒドロキシ酸に該当する化合物、及び、ポリオールに該当する化合物を除く)を更に含有していてもよい。任意の添加剤としては、アミノ酸、水溶性高分子、酸化剤(例えば過酸化水素)等が挙げられる。これらの添加剤のそれぞれは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
アミノ酸は、研磨液のpHを安定化させる効果、優れた砥粒の分散安定性を得やすい効果、及び、絶縁材料の研磨速度を更に向上させる効果がある。アミノ酸としては、アルギニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、プロリン、トリプトファン、グリシン、α−アラニン、β−アラニン、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、ロイシン、バリン、イソロイシン、グリシルグリシン、グリシルアラニン等が挙げられる。
【0081】
水溶性高分子は、平坦性、面内均一性、窒化珪素に対する酸化珪素の研磨選択性(酸化珪素の研磨速度/窒化珪素の研磨速度)、ポリシリコンに対する酸化珪素の研磨選択性(酸化珪素の研磨速度/ポリシリコンの研磨速度)等の研磨特性を調整する効果がある。ここで、「水溶性高分子」とは、水100gに対して0.1g以上溶解する高分子として定義する。
【0082】
水溶性高分子としては、特に制限はなく、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸共重合体塩等のポリアクリル酸系ポリマ;ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸塩等のポリメタクリル酸系ポリマ;ポリアクリルアミド;ポリジメチルアクリルアミド;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、寒天、カードラン、デキストリン、シクロデキストリン、プルラン等の多糖類;ポリビニルピロリドン、ポリアクロレイン等のビニル系ポリマなどが挙げられる。水溶性高分子は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
アミノ酸又は酸化剤を使用する場合、その含有量は、砥粒の沈降を抑制しつつ添加剤の添加効果が得られる観点から、研磨液の全質量を基準として0.0001〜10質量%が好ましい。
【0084】
水溶性高分子を使用する場合、水溶性高分子の含有量の下限は、砥粒の沈降を抑制しつつ水溶性高分子の添加効果が得られる観点から、研磨液の全質量を基準として、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、0.01質量%以上が更に好ましい。水溶性高分子の含有量の上限は、砥粒の沈降を抑制しつつ水溶性高分子の添加効果が得られる観点から、研磨液の全質量を基準として、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0085】
(液状媒体)
本実施形態に係る研磨液における液状媒体としては、特に制限はないが、脱イオン水、超純水等の水が好ましい。液状媒体の含有量は、他の構成成分の含有量を除いた研磨液の残部でよく、特に限定されない。
【0086】
(研磨液の特性)
本実施形態に係る研磨液のpHの下限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、2.0以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましく、3.2以上が特に好ましく、3.5以上が極めて好ましく、4.0以上が非常に好ましい。pHの上限は、優れた砥粒の分散安定性を得やすい観点から、7.0以下が好ましく、6.5以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましく、5.0以下が特に好ましい。これらの観点から、研磨液のpHは、2.0〜7.0がより好ましい。pHは、3.0未満であってよく、2.8以下であってよく、2.5以下であってよい。研磨液のpHは、液温25℃におけるpHと定義する。
【0087】
研磨液のpHは、無機酸、有機酸等の酸成分;アンモニア、水酸化ナトリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、イミダゾール、アルカノールアミン等のアルカリ成分などによって調整できる。pHを安定化させるため、緩衝剤を添加してもよい。緩衝液(緩衝剤を含む液)として緩衝剤を添加してもよい。このような緩衝液としては、酢酸塩緩衝液、フタル酸塩緩衝液等が挙げられる。
【0088】
本実施形態に係る研磨液のpHは、pHメータ(例えば、東亜ディーケーケー株式会社製の型番PHL−40)で測定することができる。具体的には例えば、フタル酸塩pH緩衝液(pH:4.01)及び中性リン酸塩pH緩衝液(pH:6.86)を標準緩衝液として用いてpHメータを2点校正した後、pHメータの電極を研磨液に入れ、2分以上経過して安定した後の値を測定する。標準緩衝液及び研磨液の液温は、共に25℃とする。
【0089】
本実施形態に係る研磨液は、砥粒と、前記特定ヒドロキシ酸と、ポリオールと、液状媒体と、を少なくとも含む一液式研磨液として保存してもよく、スラリ(第1の液)と添加液(第2の液)とを混合して前記研磨液となるように前記研磨液の構成成分をスラリと添加液とに分けた複数液式(例えば二液式)の研磨液セットとして保存してもよい。スラリは、例えば、砥粒と、液状媒体とを少なくとも含む。添加液は、例えば、ヒドロキシ酸と、ポリオールと、液状媒体とを少なくとも含む。前記特定ヒドロキシ酸、ポリオール、任意の添加剤、及び、緩衝剤は、スラリ及び添加液のうち添加液に含まれることが好ましい。なお、前記研磨液の構成成分は、三液以上に分けた研磨液セットとして保存してもよい。
【0090】
前記研磨液セットにおいては、研磨直前又は研磨時に、スラリ及び添加液が混合されて研磨液が作製される。また、一液式研磨液は、液状媒体の含有量を減じた研磨液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。複数液式の研磨液セットは、液状媒体の含有量を減じたスラリ用貯蔵液及び添加液用貯蔵液として保存されると共に、研磨時に液状媒体で希釈して用いられてもよい。
【0091】
一液式研磨液の場合、研磨定盤上への研磨液の供給方法としては、研磨液を直接送液して供給する方法;研磨液用貯蔵液及び液状媒体を別々の配管で送液し、これらを合流及び混合させて供給する方法;あらかじめ研磨液用貯蔵液及び液状媒体を混合しておき供給する方法等を用いることができる。
【0092】
スラリと添加液とに分けた複数液式の研磨液セットとして保存する場合、これらの液の配合を任意に変えることにより研磨速度を調整することができる。研磨液セットを用いて研磨する場合、研磨定盤上への研磨液の供給方法としては、下記に示す方法がある。例えば、スラリと添加液とを別々の配管で送液し、これらの配管を合流及び混合させて供給する方法;スラリ用貯蔵液、添加液用貯蔵液及び液状媒体を別々の配管で送液し、これらを合流及び混合させて供給する方法;あらかじめスラリ及び添加液を混合しておき供給する方法;あらかじめスラリ用貯蔵液、添加液用貯蔵液及び液状媒体を混合しておき供給する方法等を用いることができる。また、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とをそれぞれ研磨定盤上へ供給する方法を用いることもできる。この場合、研磨定盤上においてスラリ及び添加液が混合されて得られる研磨液を用いて被研磨面が研磨される。
【0093】
本実施形態に係る研磨液セットは、前記必須成分を少なくとも含有する研磨液と、酸化剤(例えば過酸化水素)等の任意成分を少なくとも含む添加液とに分けた態様であってもよい。この場合、研磨液及び添加液が混合されて得られた混合液(当該混合液も「研磨液」に相当する)を用いて研磨が行われる。また、本実施形態に係る研磨液セットは、三液以上に分けた研磨液セットとして、少なくとも前記必須成分の一部を含有する液と、少なくとも前記必須成分の残部を含有する液と、少なくとも任意成分を含む添加液とに分けた態様であってもよい。研磨液セットを構成する各液は、液状媒体の含有量を減じた貯蔵液として保存されてもよい。
【0094】
<研磨方法>
本実施形態に係る研磨方法(基体の研磨方法等)は、前記一液式研磨液を用いて被研磨面(基体の被研磨面等)を研磨する研磨工程を備えていてもよく、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて被研磨面(基体の被研磨面等)を研磨する研磨工程を備えていてもよい。
【0095】
本実施形態に係る研磨方法は、絶縁材料及び窒化珪素を有する基体の研磨方法であってもよく、例えば、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて、絶縁材料を窒化珪素に対して選択的に研磨する研磨工程を備えていてもよい。この場合、基体は、例えば、絶縁材料を含む部材と、窒化珪素を含む部材とを有していてもよい。
【0096】
また、本実施形態に係る研磨方法は、絶縁材料及びポリシリコンを有する基体の研磨方法であってもよく、例えば、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて、絶縁材料をポリシリコンに対して選択的に研磨する研磨工程を備えていてもよい。この場合、基体は、例えば、絶縁材料を含む部材と、ポリシリコンを含む部材とを有していてもよい。
【0097】
本実施形態に係る研磨方法は、ストッパ材料を含む第1部材と、絶縁材料を含むと共に第1部材上に配置された第2部材と、を有する基体の研磨方法であってよい。研磨工程は、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて、第1部材が露出するまで第2部材を研磨する工程を有していてよい。研磨工程は、第1部材が露出した後に、前記一液式研磨液、又は、前記研磨液セットにおけるスラリと添加液とを混合して得られる研磨液を用いて、第1部材及び第2部材を研磨する工程を有していてよい。
【0098】
「材料Aを材料Bに対して選択的に研磨する」とは、同一研磨条件において、材料Aの研磨速度が、材料Bの研磨速度よりも高いことをいう。より具体的には、例えば、材料Bの研磨速度に対する材料Aの研磨速度の研磨速度比が80以上で材料Aを研磨することをいう。
【0099】
研磨工程では、例えば、被研磨材料を有する基体の当該被研磨材料を研磨定盤の研磨パッド(研磨布)に押圧した状態で、前記研磨液を被研磨材料と研磨パッドとの間に供給し、基体と研磨定盤とを相対的に動かして被研磨材料の被研磨面を研磨する。研磨工程では、例えば、被研磨材料の少なくとも一部を研磨により除去する。
【0100】
研磨対象である基体としては、被研磨基板等が挙げられる。被研磨基板としては、例えば、半導体素子製造に係る基板(例えば、STIパターン、ゲートパターン、配線パターン等が形成された半導体基板)上に被研磨材料が形成された基体が挙げられる。被研磨材料としては、酸化珪素等の絶縁材料(ストッパ材料に該当する材料を除く);ポリシリコン、窒化珪素等のストッパ材料などが挙げられる。被研磨材料は、単一の材料であってもよく、複数の材料であってもよい。複数の材料が被研磨面に露出している場合、それらを被研磨材料と見なすことができる。被研磨材料は、膜状(被研磨膜)であってもよく、酸化珪素膜、ポリシリコン膜、窒化珪素膜等であってもよい。
【0101】
このような基板上に形成された被研磨材料(例えば、酸化珪素等の絶縁材料)を前記研磨液で研磨し、余分な部分を除去することによって、被研磨材料の表面の凹凸を解消し、被研磨材料の表面全体にわたって平滑な面を得ることができる。本実施形態に係る研磨液は、酸化珪素を含む被研磨面を研磨するために使用されることが好ましい。
【0102】
本実施形態では、少なくとも表面に酸化珪素を含む絶縁材料と、絶縁材料の下層に配置されたストッパ(研磨停止層)と、ストッパの下に配置された基板(半導体基板等)とを有する基体における絶縁材料を研磨することができる。ストッパを構成するストッパ材料は、絶縁材料よりも研磨速度が低い材料であり、ポリシリコン、窒化珪素等が好ましい。このような基体では、ストッパが露出したときに研磨を停止させることにより、絶縁材料が過剰に研磨されることを防止できるため、絶縁材料の研磨後の平坦性を向上させることができる。
【0103】
本実施形態に係る研磨液により研磨される被研磨材料の作製方法としては、低圧CVD法、準常圧CVD法、プラズマCVD法等のCVD法;回転する基板に液体原料を塗布する回転塗布法などが挙げられる。
【0104】
以下、基体(例えば、半導体基板上に形成された絶縁材料を有する基体)の研磨方法を一例に挙げて、本実施形態に係る研磨方法を説明する。本実施形態に係る研磨方法において、研磨装置としては、被研磨面を有する基体を保持可能なホルダーと、研磨パッドを貼り付け可能な研磨定盤とを有する一般的な研磨装置を使用できる。ホルダー及び研磨定盤のそれぞれには、回転数が変更可能なモータ等が取り付けてある。研磨装置としては、例えば、APPLIED MATERIALS社製の研磨装置:Reflexionを使用できる。
【0105】
研磨パッドとしては、一般的な不織布、発泡体、非発泡体等が使用できる。研磨パッドの材質としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリエステル、アクリル−エステル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ4−メチルペンテン、セルロース、セルロースエステル、ポリアミド(例えば、ナイロン(商標名)及びアラミド)、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリシロキサン共重合体、オキシラン化合物、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂等の樹脂が使用できる。研磨パッドの材質としては、特に、研磨速度及び平坦性に更に優れる観点から、発泡ポリウレタン及び非発泡ポリウレタンからなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。研磨パッドには、研磨液がたまるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0106】
研磨条件に制限はないが、研磨定盤の回転速度の上限は、基体が飛び出さないように200min−1以下が好ましく、基体にかける研磨圧力(加工荷重)の上限は、研磨傷が発生することを充分に抑制する観点から、15psi(103kPa)以下が好ましい。研磨している間、ポンプ等で連続的に研磨液を研磨パッドに供給することが好ましい。この供給量に制限はないが、研磨パッドの表面が常に研磨液で覆われていることが好ましい。
【0107】
研磨終了後の基体は、流水中でよく洗浄して、基体に付着した粒子を除去することが好ましい。洗浄には、純水以外に希フッ酸又はアンモニア水を併用してもよく、洗浄効率を高めるためにブラシを併用してもよい。また、洗浄後は、スピンドライヤ等を用いて、基体に付着した水滴を払い落としてから基体を乾燥させることが好ましい。
【0108】
本実施形態に係る研磨液、研磨液セット及び研磨方法は、STIの形成に好適に使用できる。STIを形成するためには、ストッパ材料(例えば、窒化珪素及びポリシリコン)に対する絶縁材料(例えば酸化珪素)の研磨速度比の下限は、80以上であることが好ましい。前記研磨速度比が80未満であると、ストッパ材料の研磨速度に対する絶縁材料の研磨速度の大きさが小さく、STIを形成する際に所定の位置で研磨を停止しにくくなる傾向がある。一方、前記研磨速度比が80以上であれば、研磨の停止が容易になり、STIの形成に更に好適である。絶縁材料(例えば酸化珪素)の研磨速度の下限は、70nm/min以上が好ましく、100nm/min以上がより好ましく、150nm/min以上が更に好ましく、180nm/min以上が特に好ましく、200nm/min以上が極めて好ましい。ストッパ材料(例えば、窒化珪素及びポリシリコン)の研磨速度の上限は、10nm/min以下が好ましく、7nm/min以下がより好ましく、5nm/min以下が更に好ましい。
【0109】
本実施形態に係る研磨液、研磨液セット及び研磨方法は、プリメタル絶縁材料の研磨にも使用できる。プリメタル絶縁材料としては、酸化珪素の他、例えば、リン−シリケートガラス又はボロン−リン−シリケートガラスが使用され、さらに、シリコンオキシフロリド、フッ化アモルファスカーボン等も使用できる。
【0110】
本実施形態に係る研磨液、研磨液セット及び研磨方法は、酸化珪素等の絶縁材料以外の材料にも適用できる。このような材料としては、Hf系、Ti系、Ta系酸化物等の高誘電率材料;シリコン、アモルファスシリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、有機半導体等の半導体材料;GeSbTe等の相変化材料;ITO等の無機導電材料;ポリイミド系、ポリベンゾオキサゾール系、アクリル系、エポキシ系、フェノール系等のポリマ樹脂材料などが挙げられる。
【0111】
本実施形態に係る研磨液、研磨液セット及び研磨方法は、膜状の研磨対象だけでなく、ガラス、シリコン、SiC、SiGe、Ge、GaN、GaP、GaAs、サファイヤ、プラスチック等から構成される各種基板にも適用できる。
【0112】
本実施形態に係る研磨液、研磨液セット及び研磨方法は、半導体素子の製造だけでなく、TFT、有機EL等の画像表示装置;フォトマスク、レンズ、プリズム、光ファイバー、単結晶シンチレータ等の光学部品;光スイッチング素子、光導波路等の光学素子;固体レーザ、青色レーザLED等の発光素子;磁気ディスク、磁気ヘッド等の磁気記憶装置などの製造に用いることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0114】
{実施例1〜5及び比較例1〜4}
<セリア粉末の作製>
市販の炭酸セリウム水和物40kgをアルミナ製容器に入れ、830℃、空気中で2時間焼成することにより黄白色の粉末を20kg得た。この粉末の相同定をX線回折法により行い、セリア粉末が得られたことを確認した。得られたセリア粉末20kgを、ジェットミルを用いて乾式粉砕し、セリア粒子を含むセリア粉末を得た。
【0115】
<CMP用研磨液の調製>
上記で作製したセリア粉末(セリア粒子)と、脱イオン水とを混合した後、表1又は表2に記載のポリオール(日本乳化剤株式会社製、商品名:TMP−60、ポリオキシエチレントリメチロールプロパンエーテル)及びヒドロキシ酸を添加した。そして、攪拌しながら超音波分散を行い、CMP用研磨液の全質量を基準として、セリア粒子0.18質量%、ポリオール0.50質量%、及び、ヒドロキシ酸0.10質量%を含有するCMP用研磨液を得た。超音波分散は、超音波周波数400kHz、分散時間30分で行った。
【0116】
{実施例6}
<セリアスラリの準備>
セリア粒子(第1の粒子)と、和光純薬工業株式会社製の商品名:リン酸二水素アンモニウム(分子量:97.99)とを混合して、セリア粒子を5.0質量%(固形分含量)含有するセリアスラリ(pH:7)を調製した。リン酸二水素アンモニウムの配合量は、セリア粒子の全量を基準として1質量%に調整した。
【0117】
マイクロトラック・ベル株式会社製の商品名:マイクロトラックMT3300EXII内にセリアスラリを適量投入し、セリア粒子の平均粒径を測定した。表示された平均粒径値を平均粒径(平均二次粒径)として得た。セリアスラリにおけるセリア粒子の平均粒径は350nmであった。
【0118】
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のセリアスラリを投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。セリアスラリにおけるセリア粒子のゼータ電位は−55mVであった。
【0119】
<セリウム水酸化物スラリの準備>
(セリウム水酸化物の合成)
480gのCe(NH(NO50質量%水溶液(日本化学産業株式会社製、商品名:CAN50液)を7450gの純水と混合して溶液を得た。次いで、この溶液を撹拌しながら、750gのイミダゾール水溶液(10質量%水溶液、1.47mol/L)を5mL/minの混合速度で滴下して、セリウム水酸化物を含む沈殿物を得た。セリウム水酸化物の合成は、温度20℃、撹拌速度500min−1で行った。撹拌は、羽根部全長5cmの3枚羽根ピッチパドルを用いて行った。
【0120】
得られた沈殿物(セリウム水酸化物を含む沈殿物)を遠心分離(4000min−1、5分間)した後にデカンテーションで液相を除去することによって固液分離を施した。固液分離により得られた粒子10gと、水990gと、を混合した後、超音波洗浄機を用いて粒子を水に分散させて、セリウム水酸化物粒子(第2の粒子)を含有するセリウム水酸化物スラリ(粒子の含有量:1.0質量%)を調製した。
【0121】
(平均粒径の測定)
ベックマン・コールター株式会社製、商品名:N5を用いてセリウム水酸化物スラリにおけるセリウム水酸化物粒子の平均粒径(平均二次粒径)を測定したところ、10nmであった。測定法は次のとおりである。まず、1.0質量%のセリウム水酸化物粒子を含む測定サンプル(セリウム水酸化物スラリ。水分散液)を1cm角のセルに約1mL入れた後、N5内にセルを設置した。N5のソフトの測定サンプル情報の屈折率を1.333、粘度を0.887mPa・sに設定し、25℃において測定を行い、Unimodal Size Meanとして表示される値を読み取った。
【0122】
(ゼータ電位の測定)
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のセリウム水酸化物スラリを投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。セリウム水酸化物スラリにおけるセリウム水酸化物粒子のゼータ電位は+50mVであった。
【0123】
(セリウム水酸化物粒子の構造分析)
セリウム水酸化物スラリを適量採取し、真空乾燥してセリウム水酸化物粒子を単離した後に純水で充分に洗浄して試料を得た。得られた試料について、FT−IR ATR法による測定を行ったところ、水酸化物イオン(OH)に基づくピークの他に、硝酸イオン(NO)に基づくピークが観測された。また、同試料について、窒素に対するXPS(N−XPS)測定を行ったところ、NHに基づくピークは観測されず、硝酸イオンに基づくピークが観測された。これらの結果より、セリウム水酸化物粒子は、セリウム元素に結合した硝酸イオンを有する粒子を少なくとも一部含有することが確認された。また、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを有する粒子がセリウム水酸化物粒子の少なくとも一部に含有されることから、セリウム水酸化物粒子がセリウム水酸化物を含有することが確認された。これらの結果より、セリウムの水酸化物が、セリウム元素に結合した水酸化物イオンを含むことが確認された。
【0124】
<CMP用研磨液の調製>
2枚羽根の撹拌羽根を用いて300rpmの回転数で撹拌しながら、前記セリウム水酸化物スラリ32gと、脱イオン水1904gとを混合して混合液を得た。続いて、前記混合液を撹拌しながら前記セリアスラリ64gを前記混合液に混合した後、株式会社エスエヌディ製の超音波洗浄機(装置名:US−105)を用いて超音波を照射しながら撹拌した。続いて、ポリオール(日本乳化剤株式会社製、商品名:TMP−60、ポリオキシエチレントリメチロールプロパンエーテル)と、ヒドロキシ酸と、脱イオン水とを混合した。これにより、CMP用研磨液の全質量を基準として、砥粒0.18質量%、ポリオール0.50質量%、及び、ヒドロキシ酸0.10質量%を含有するCMP用研磨液を得た。CMP用研磨液は、砥粒として、セリア粒子と、当該セリア粒子に接触したセリウム水酸化物粒子と、を含む複合粒子に加えて、セリア粒子に接触していないセリウム水酸化物粒子(遊離粒子)を含有しており、セリア粒子とセリウム水酸化物粒子との質量比は10:1(セリア:セリウム水酸化物)であった。
【0125】
(砥粒のゼータ電位)
ベックマン・コールター株式会社製の商品名:DelsaNano C内に適量のCMP用研磨液を投入し、25℃において測定を2回行った。表示されたゼータ電位の平均値をゼータ電位として得た。結果を表1及び表2に示す。
【0126】
(CMP用研磨液のpH)
CMP用研磨液のpHを下記の条件で評価した。結果を表1及び表2に示す。
[pH]
測定温度:25℃
測定装置:東亜ディーケーケー株式会社製、型番PHL−40
測定方法:標準緩衝液(フタル酸塩pH緩衝液、pH:4.01(25℃);中性リン酸塩pH緩衝液、pH:6.86(25℃))を用いて2点校正した後、電極をCMP用研磨液に入れ、2分以上経過して安定した後のpHを前記測定装置により測定した。
【0127】
<分散安定性の評価>
分散安定性(粒径安定性)の評価として、CMP用研磨液の保管前後におけるCMP用研磨液中の砥粒の粒径(MV:体積平均粒径)を測定し粒径変化率を算出した。粒径変化率は下記式に基づき算出した。調製直後のCMP用研磨液を25℃で168時間保管した。レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製、商品名:マイクロトラックMT3300EXII)を用いて保管前後の粒径を測定した。結果を表1及び表2に示す。
粒径変化率(%)=|保管後の粒径(nm)−保管前の粒径(nm)|/保管前の粒径(nm)×100
【0128】
研磨評価として、保管前後のそれぞれのCMP用研磨液を用いて酸化珪素膜を下記の条件で研磨して研磨速度を算出し研磨速度の変化率を算出した。研磨速度の変化率は下記式に基づき算出した。調製直後のCMP用研磨液を25℃で168時間保管した。結果を表1及び表2に示す。
研磨速度の変化率(%)=|保管後の研磨速度(nm/min)−保管前の研磨速度(nm/min)|/保管前の研磨速度(nm/min)×100
[研磨]
研磨装置(APPLIED MATERIALS社製、商品名:Reflexion)における基体取り付け用の吸着パッドを貼り付けたホルダーに、酸化珪素膜が形成されたφ200mmシリコンウエハをセットした。多孔質ウレタン樹脂製パッドを貼り付けた定盤上に、酸化珪素膜がパッドに対向するようにホルダーを載せた。CMP用研磨液を供給量200mL/minでパッド上に供給しながら、研磨荷重20kPaで基体をパッドに押し当てた。このとき、定盤を78min−1、ホルダーを98min−1で1min回転させて研磨を行った。研磨後のウエハを純水でよく洗浄し乾燥させた。光干渉式膜厚測定装置を用いて酸化珪素膜の研磨前後の膜厚変化を測定して研磨速度を求めた。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
表1及び表2に示されるように、正のゼータ電位を有する砥粒と、特定のヒドロキシ酸と、ポリオールと、を併用することにより、ポリオールを含有する研磨液において砥粒の分散安定性を向上させることができることが確認される。