(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973632
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】秘密集約総和システム、秘密計算装置、秘密集約総和方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G09C 1/00 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
G09C1/00 650Z
G09C1/00 660D
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-516336(P2020-516336)
(86)(22)【出願日】2019年4月22日
(86)【国際出願番号】JP2019016985
(87)【国際公開番号】WO2019208484
(87)【国際公開日】20191031
【審査請求日】2020年10月14日
(31)【優先権主張番号】特願2018-84114(P2018-84114)
(32)【優先日】2018年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 大
【審査官】
行田 悦資
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−164144(JP,A)
【文献】
特開2012−154968(JP,A)
【文献】
濱田浩気ほか,秘密計算上の関係代数演算アルゴリズムの改良,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2013年02月28日,第112巻,第466号,p.77−82
【文献】
濱田浩気ほか,実用的な速度で統計分析が可能な秘密計算システムMEVAL,コンピュータセキュリティシンポジウム2013論文集,日本,一般社団法人情報処理学会,2013年10月14日,第2013巻,第4号,p.777−784,情報処理学会シンポジウムシリーズ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の秘密計算装置を含む秘密集約総和システムであって、
mは2以上の整数であり、[v]:=[v0], …, [vm-1]はキー属性とバリュー属性とからなるテーブルを上記キー属性の値に基づいてソートしたときの所望のバリュー属性v:=v0, …,vm-1を秘密分散したシェアであり、[e]:=[e0], …, [em-1]は上記テーブルを上記キー属性の値に基づいてグループ分けしたときに各グループの最後の要素が真、その他の要素が偽であるフラグe:=e0, …, em-1を秘密分散したシェアであり、{{σ}}は上記テーブルを上記キー属性の値に基づいてグループ分けしたときに各グループの最後の要素が先頭から順に並ぶように移動する置換σを秘密分散したシェアであり、gは上記グループの最大数であり、
上記秘密計算装置は、
上記シェア[v]を用いて、0以上m-1以下の各整数iについてv'iにv0からviまでの総和を設定して、復元するとベクトルv':=v'0, …, v'm-1となるシェア[v']を生成するプレフィックスサム部と、
上記シェア[v']と上記シェア[e]とを用いて、0以上m-1以下の各整数iについて[ei]が真ならば[ti]に[v'i]を設定し、[ei]が偽ならば[ti]に[v'm-1]を設定して、復元するとベクトルt:=t0, …, tm-1となるシェア[t]を生成するフラグ適用部と、
上記シェア[t]と上記シェア{{σ}}とを用いて、復元すると上記ベクトルtを上記置換σでソートしたソート済みベクトルσ(t)となるシェア[σ(t)]を生成するソート部と、
上記シェア[σ(t)]を用いて、1以上min(g,m)-1以下の各整数iについて[si]:=[σ(t)i-σ(t)i-1]を設定し、かつ、[s0]:=[σ(t)0]を設定して、復元するとグループ毎のバリュー属性vの総和を表すベクトルs:=s0, …, smin(g,m)-1となるシェア[s]を生成する総和計算部と、
を含む秘密集約総和システム。
【請求項2】
請求項1に記載の秘密集約総和システムであって、
Fは任意の環であり、nkは1以上の整数であり、[k0], …, [knk-1]はキー属性k0, …, knk-1∈Fmを秘密分散したシェアであり、[v"]は上記テーブルを上記キー属性の値に基づいてソートする前の所望のバリュー属性v"∈Fmを秘密分散したシェアであり、
上記秘密計算装置は、
上記シェア[k0], …, [knk-1]を用いて、復元すると上記キー属性k0, …, knk-1をビット分解して結合したビット列b:=b0, …, bm-1となるシェア{b}から、復元すると上記ビット列bを昇順に安定ソートする置換σ0となるシェア{{σ0}}を生成するグループソート生成部と、
上記シェア{b}と上記シェア{{σ0}}とを用いて、復元すると上記ビット列bを上記置換σ0でソートしたソート済みビット列b':=b'0, …, b'm-1となるシェア{b'}を生成するビット列ソート部と、
上記シェア{b'}を用いて、0以上m-2以下の各整数iについて{ei}:={b'i≠b'i+1}を設定し、かつ、{em-1}:={1}を設定して、復元すると上記フラグe:=e0, …, em-1となる上記シェア{e}を生成するフラグ生成部と、
上記シェア{e}を用いて、復元すると上記フラグeの否定¬eを昇順に安定ソートする上記置換σとなる上記シェア{{σ}}を生成するキー集約ソート生成部と、
上記シェア[v"]と上記シェア{{σ0}}とを用いて、復元すると上記バリュー属性v"を上記置換σ0でソートした上記バリュー属性vとなるシェア[v]を生成するバリューソート部と、
をさらに含む秘密集約総和システム。
【請求項3】
mは2以上の整数であり、[v]:=[v0], …, [vm-1]はキー属性とバリュー属性とからなるテーブルを上記キー属性の値に基づいてソートしたときの所望のバリュー属性v:=v0, …,vm-1を秘密分散したシェアであり、[e]:=[e0], …, [em-1]は上記テーブルを上記キー属性の値に基づいてグループ分けしたときに各グループの最後の要素が真、その他の要素が偽であるフラグe:=e0, …, em-1を秘密分散したシェアであり、{{σ}}は上記テーブルを上記キー属性の値に基づいてグループ分けしたときに各グループの最後の要素が先頭から順に並ぶように移動する置換σを秘密分散したシェアであり、gは上記グループの最大数であり、
上記シェア[v]を用いて、0以上m-1以下の各整数iについてv'iにv0からviまでの総和を設定して、復元するとベクトルv':=v'0, …, v'm-1となるシェア[v']を生成するプレフィックスサム部と、
上記シェア[v']と上記シェア[e]とを用いて、0以上m-1以下の各整数iについて[ei]が真ならば[ti]に[v'i]を設定し、[ei]が偽ならば[ti]に[v'm-1]を設定して、復元するとベクトルt:=t0, …, tm-1となるシェア[t]を生成するフラグ適用部と、
上記シェア[t]と上記シェア{{σ}}とを用いて、復元すると上記ベクトルtを上記置換σでソートしたソート済みベクトルσ(t)となるシェア[σ(t)]を生成するソート部と、
上記シェア[σ(t)]を用いて、1以上min(g,m)-1以下の各整数iについて[si]:=[σ(t)i-σ(t)i-1]を設定し、かつ、[s0]:=[σ(t)0]を設定して、復元するとグループ毎のバリュー属性vの総和を表すベクトルs:=s0, …, smin(g,m)-1となるシェア[s]を生成する総和計算部と、
を含む秘密計算装置。
【請求項4】
複数の秘密計算装置を含む秘密集約総和システムが実行する秘密集約総和方法であって、
mは2以上の整数であり、[v]:=[v0], …, [vm-1]はキー属性とバリュー属性とからなるテーブルを上記キー属性の値に基づいてソートしたときの所望のバリュー属性v:=v0, …,vm-1を秘密分散したシェアであり、[e]:=[e0], …, [em-1]は上記テーブルを上記キー属性の値に基づいてグループ分けしたときに各グループの最後の要素が真、その他の要素が偽であるフラグe:=e0, …, em-1を秘密分散したシェアであり、{{σ}}は上記テーブルを上記キー属性の値に基づいてグループ分けしたときに各グループの最後の要素が先頭から順に並ぶように移動する置換σを秘密分散したシェアであり、gは上記グループの最大数であり、
上記秘密計算装置のプレフィックスサム部が、上記シェア[v]を用いて、0以上m-1以下の各整数iについてv'iにv0からviまでの総和を設定して、復元するとベクトルv':=v'0, …, v'm-1となるシェア[v']を生成し、
上記秘密計算装置のフラグ適用部が、上記シェア[v']と上記シェア[e]とを用いて、0以上m-1以下の各整数iについて[ei]が真ならば[ti]に[v'i]を設定し、[ei]が偽ならば[ti]に[v'm-1]を設定して、復元するとベクトルt:=t0, …, tm-1となるシェア[t]を生成し、
上記秘密計算装置のソート部が、上記シェア[t]と上記シェア{{σ}}とを用いて、復元すると上記ベクトルtを上記置換σでソートしたソート済みベクトルσ(t)となるシェア[σ(t)]を生成し、
上記秘密計算装置の総和計算部が、上記シェア[σ(t)]を用いて、1以上min(g,m)-1以下の各整数iについて[si]:=[σ(t)i-σ(t)i-1]を設定し、かつ、[s0]:=[σ(t)0]を設定して、復元するとグループ毎のバリュー属性vの総和を表すベクトルs:=s0, …, smin(g,m)-1となるシェア[s]を生成する、
秘密集約総和方法。
【請求項5】
請求項3に記載の秘密計算装置としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は秘密計算技術に関し、特に、秘匿性を保ったまま集約関数を計算する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
集約関数は、テーブルにキー属性とバリュー属性があるときに、キー属性の値に基づいてグループ分けした統計値を得る演算である。集約関数は、group-by演算とも呼ばれる。キー属性は、テーブルのレコードをグループ分けするために用いる属性であり、例えば、役職や性別などが挙げられる。バリュー属性は、統計値を計算するために用いる属性であり、例えば、給料や身長などが挙げられる。group-by演算は、例えば、キー属性が性別のときに、男女別の平均身長を求める演算などである。キー属性は複数の属性による複合キーであってもよく、例えば、キー属性が性別と年齢のときに、10代男性の平均身長、20代男性の平均身長、・・・を得るような演算であってもよい。非特許文献1には、group-by演算を秘密計算で行う方法が記載されている。
【0003】
集約総和は、集約関数の一つであり、テーブルをキー属性の値に基づいてグループ分けしたときに、グループごとに所望のバリュー属性の総和を集計する演算である。集約総和は、group-by総和とも呼ばれる。group-by総和は、例えば、キー属性が性別と年齢のときに、10代男性の給料総額、20代男性の給料総額、・・・を得るような演算である。
【0004】
group-by総和を用いれば、グループごとに乗算の和を求めるgroup-by積和や、グループごとに二乗の和を求めるgroup-by二乗和も計算することができる。group-by積和であれば、各レコードのバリュー属性に乗算を施した結果に対してgroup-by総和を求めればよい。また、group-by二乗和であれば、同様に、各レコードのバリュー属性に二乗を施した結果に対してgroup-by総和を求めればよい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】五十嵐大,千田浩司,濱田浩気,高橋克巳,“軽量検証可能3パーティ秘匿関数計算の効率化及びこれを用いたセキュアなデータベース処理”,2011年暗号と情報セキュリティシンポジウム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の秘密計算技術では、group-by総和を求めるために、nを計算主体の数としてlog(n)の通信回数が必要となり、効率が悪かった。
【0007】
この発明の目的は、上記のような技術的課題に鑑みて、秘匿性を保ったままgroup-by総和を効率的に求めることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明の一態様の秘密集約総和システムは、複数の秘密計算装置を含む秘密集約総和システムであって、mは2以上の整数であり、[v]:=[v
0], …, [v
m-1]はキー属性とバリュー属性とからなるテーブルをキー属性の値に基づいてソートしたときの所望のバリュー属性v:=v
0, …, v
m-1を秘密分散したシェアであり、[e]:=[e
0], …, [e
m-1]はテーブルをキー属性の値に基づいてグループ分けしたときに各グループの最後の要素が真、その他の要素が偽であるフラグe:=e
0, …, e
m-1を秘密分散したシェアであり、{{σ}}はテーブルをキー属性の値に基づいてグループ分けしたときに各グループの最後の要素が先頭から順に並ぶように移動する置換σを秘密分散したシェアであり、gはグループの最大数であり、秘密計算装置は、シェア[v]を用いて、0以上m-1以下の各整数iについてv'
iにv
0からv
iまでの総和を設定して、復元するとベクトルv':=v'
0, …, v'
m-1となるシェア[v']を生成するプレフィックスサム部と、シェア[v']とシェア[e]とを用いて、0以上m-1以下の各整数iについて[e
i]が真ならば[t
i]に[v'
i]を設定し、[e
i]が偽ならば[t
i]に[v'
m-1]を設定して、復元するとベクトルt:=t
0, …, t
m-1となるシェア[t]を生成するフラグ適用部と、シェア[t]とシェア{{σ}}とを用いて、復元するとベクトルtを置換σでソートしたソート済みベクトルσ(t)となるシェア[σ(t)]を生成するソート部と、シェア[σ(t)]を用いて、1以上min(g,m)-1以下の各整数iについて[s
i]:=[σ(t)
i-σ(t)
i-1]を設定し、かつ、[s
0]:=[σ(t)
0]を設定して、復元するとグループ毎のバリュー属性vの総和を表すベクトルs:=s
0, …, s
min(g,m)-1となるシェア[s]を生成する総和計算部と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
この発明の秘密集約総和技術によれば、秘匿性を保ったままgroup-by総和をO(1)の通信回数で効率的に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、秘密集約総和システムの機能構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、秘密計算装置の機能構成を例示する図である。
【
図3】
図3は、秘密集約総和方法の処理手続きを例示する図である。
【
図4】
図4は、変形例の秘密計算装置の機能構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、図面中において同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【0012】
[x]∈[F]は、ある値xが任意の環F上の秘密分散等により秘匿されていることを表す。{b}∈{B}は、1ビットのある値bが1ビットを表せる環B上の秘密分散等により秘匿されていることを表す。{{s}}∈{{S
m}}は、m個の要素の置換の集合S
mに属するある置換sが秘密分散等により秘匿されていることを表す。以下、秘密分散された値を「シェア」とも呼ぶ。
【0013】
実施形態中で用いる秘密計算におけるソート処理(安定ソートを含む)は、例えば、下記参考文献1に記載されたソートを用いることができる。置換sのシェア{{s}}については下記参考文献1に記載されたハイブリッド置換{{π}}を用いればよい。
【0014】
〔参考文献1〕五十嵐大,濱田浩気,菊池亮,千田浩司,“超高速秘密計算ソートの設計と実装: 秘密計算がスクリプト言語に並ぶ日”,CSS2017
<実施形態>
図1を参照して、実施形態の秘密集約総和システム100の構成例を説明する。秘密集約総和システム100は、N(≧2)台の秘密計算装置1
1, …, 1
Nを含む。本形態では、秘密計算装置1
1, …, 1
Nはそれぞれ通信網9へ接続される。通信網9は、接続される各装置が相互に通信可能なように構成された回線交換方式もしくはパケット交換方式の通信網であり、例えばインターネットやLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを用いることができる。なお、各装置は必ずしも通信網9を介してオンラインで通信可能である必要はない。例えば、秘密計算装置1
1, …, 1
Nへ入力する情報を磁気テープやUSBメモリなどの可搬型記録媒体に記憶し、その可搬型記録媒体から秘密計算装置1
1, …, 1
Nへオフラインで入力するように構成してもよい。
【0015】
図2を参照して、秘密集約総和システム100に含まれる秘密計算装置1
n(n=1, …, N)の構成例を説明する。秘密計算装置1
nは、例えば、
図2に示すように、入力部10、プレフィックスサム部11、フラグ変換部12、フラグ適用部13、ソート部14、総和計算部15、および出力部16を含む。この秘密計算装置1
n(1≦n≦N)が他の秘密計算装置1
n'(n'=1, …, N、ただしn≠n')と協調しながら後述する各ステップの処理を行うことにより実施形態の秘密集約総和方法が実現される。
【0016】
秘密計算装置1
nは、例えば、中央演算処理装置(CPU: Central Processing Unit)、主記憶装置(RAM: Random Access Memory)などを有する公知又は専用のコンピュータに特別なプログラムが読み込まれて構成された特別な装置である。秘密計算装置1
nは、例えば、中央演算処理装置の制御のもとで各処理を実行する。秘密計算装置1
nに入力されたデータや各処理で得られたデータは、例えば、主記憶装置に格納され、主記憶装置に格納されたデータは必要に応じて中央演算処理装置へ読み出されて他の処理に利用される。秘密計算装置1
nの各処理部は、少なくとも一部が集積回路等のハードウェアによって構成されていてもよい。
【0017】
図3を参照して、実施形態の秘密集約総和システム100が実行する秘密集約総和方法の処理手続きを説明する。
【0018】
ステップS10において、各秘密計算装置1
nの入力部10は、キー属性でソート済みのバリュー属性v∈F
mを秘密分散により秘匿したシェア[v]∈[F]
mと、フラグe∈B
mを秘密分散により秘匿したシェア{e}∈{B}
mと、置換σを秘密分散により秘匿したシェア{{σ}}∈{{S
m}}と、最大グループ数gとを入力として受け取る。ただし、mは2以上の整数である。入力部10は、バリュー属性vのシェア[v]をプレフィックスサム部11へ、フラグeのシェア{e}をフラグ変換部12へ、置換σのシェア{{σ}}をソート部14へ出力する。
【0019】
フラグeは、グループの境界を表すフラグである。例えば、フラグeは、テーブルをキー属性で安定ソートしたときに同じキー属性の値をもつレコードを同じグループとして、各グループの最後の要素(すなわち、グループの境界の直前の要素)に該当する値が真(例えば1)となり、その他の要素に該当する値が偽(例えば0)となるフラグである。なお、安定ソートとは、ソート演算のうち、同じ値の要素が存在した場合に、同じ値の要素同士の順序を保存する演算である。例えば、社員番号順でソートされたテーブルに対して性別で安定ソートすると、各性別の中で社員番号順が保たれているソート結果が得られる。以下、{e}∈{B}
mの各要素は、{e
i}∈{B}(i=0, …, m-1)で参照することもある。
【0020】
置換σは、各グループのキー属性の値を先頭から1つずつ並べる置換である。例えば、置換σは、テーブルをキー属性で安定ソートしたときに同じキー属性の値をもつレコードを同じグループとして、各グループの最後の要素が先頭から順に並び、続いて他の要素が順に並ぶように移動する置換である。置換σのシェア{{σ}}は上記参考文献1に記載されたハイブリッド置換{{π}}を用いて構成すればよい。
【0021】
最大グループ数gは、キー属性が取り得る値の組み合わせの数、すなわち、キー属性が取り得る値の種類の数である。
【0022】
ステップS11において、各秘密計算装置1
nのプレフィックスサム部11は、バリュー属性vのシェア[v]を用いて、[v']:=prefix-sum([v])を計算し、復元するとベクトルv':=v'
0, …, v'
m-1∈Fとなるシェア[v']∈[F]
mを生成する。prefix-sumは、mを入力ベクトルvの長さとして、0以上m-1以下の各整数iについて、出力ベクトルv'のi番目の要素v'
iには入力ベクトルvの0番目の要素v
0からi番目の要素v
iまでの値の総和を設定する演算である。プレフィックスサム部11は、ベクトルv'のシェア[v']をフラグ適用部13へ出力する。
【0023】
ステップS12において、各秘密計算装置1
nのフラグ変換部12は、フラグeのシェア{e}∈{B}
mを任意の環F上の秘密分散によるシェア[e]∈[F]
mに変換する。フラグ変換部12は、フラグeのシェア[e]をフラグ適用部13へ出力する。
【0024】
ステップS13において、各秘密計算装置1
nのフラグ適用部13は、ベクトルv'のシェア[v']とフラグeのシェア[e]とを用いて、0以上m-1以下の各整数iについて[t
i]:=[e
i?v'
i:v'
m-1]を設定し、復元するとベクトルt:=t
0, …, t
m-1∈Fとなるシェア[t]∈[F]
mを生成する。ここで、「?」は条件演算子(または三項演算子)である。すなわち、[e
i]が真(例えば、[e
i]=[1])のときは[t
i]:=[v'
i]を設定し、[e
i]が偽(例えば、[e
i]=[0])のときは[t
i]:=[v'
m-1]を設定する。ベクトルtは、テーブルをキー属性で安定ソートしたときに同じキー属性の値をもつレコードを同じグループとして、各グループの最後の要素にはその要素以前のバリュー属性の値の総和が設定され、その他の要素にはテーブル全体のバリュー属性の値の総和が設定されたベクトルとなる。フラグ適用部13は、ベクトルtのシェア[t]をソート部14へ出力する。
【0025】
ステップS14において、各秘密計算装置1
nのソート部14は、ベクトルtのシェア[t]と置換σのシェア{{σ}}とを用いて、復元するとベクトルtを置換σでソートしたソート済みベクトルσ(t)となるシェア[σ(t)]∈[F]
mを生成する。以下、[σ(t)]∈[F]
mの各要素は、[σ(t)
i]∈[F](i=0, …, m-1)で参照することもある。ソート部14は、ソート済みベクトルσ(t)のシェア[σ(t)]を総和計算部15へ出力する。
【0026】
ステップS15において、各秘密計算装置1
nの総和計算部15は、ソート済みベクトルσ(t)のシェア[σ(t)]を用いて、1以上min(g,m)-1以下の各整数iについて[s
i]:=[σ(t)
i-σ(t)
i-1]を設定し、かつ、[s
0]:=[σ(t)
0]を設定して、復元するとグループ毎のバリュー属性vの総和s:=s
0, …, s
min(g,m)-1∈Fとなるシェア[s]∈[F]
min(g,m)を生成する。ソート済みベクトルσ(t)のi番目の要素σ(t)
iは、0番目からi番目までの各グループに属するバリュー属性vの値の総和が設定されているため、ベクトルsのi番目の要素s
iには、i番目のグループに属するバリュー属性vの値の総和が設定されることになる。総和計算部15は、総和sのシェア[s]を出力部16へ出力する。
【0027】
ステップS16において、各秘密計算装置1
nの出力部16は、総和sのシェア[s]を出力する。
【0028】
<変形例>
上記の実施形態では、入力部10へバリュー属性vのシェア[v]とフラグeのシェア{e}と置換σのシェア{{σ}}とが入力される構成を説明した。変形例では、入力部10へテーブルを秘密分散等により秘匿したシェアが入力され、バリュー属性vのシェア[v]とフラグeのシェア{e}と置換σのシェア{{σ}}とを求めてから、上記の実施形態で説明した手順に従ってgroup-by総和を計算する構成を説明する。
【0029】
変形例の秘密計算装置2
n(n=1, …, N)は、例えば、
図4に示すように、実施形態の秘密計算装置1
n(n=1, …, N)が備える各処理部に加えて、ビット分解部21、グループソート生成部22、ビット列ソート部23、フラグ生成部24、キー集約ソート生成部25、およびバリューソート部26を含む。以下、実施形態の秘密集約総和システム100と異なる点についてのみ説明する。
【0030】
各秘密計算装置2
nの入力部10は、n
k個のキー属性k
0, …, k
nk-1∈F
mそれぞれを秘密分散により秘匿したシェア[k
0], …, [k
nk-1]∈[F]
mと、n
a個のバリュー属性v
0, …, v
na-1∈F
mそれぞれを秘密分散により秘匿したシェア[v
0], …, [v
na-1]∈[F]
mとを入力として受け取る。ただし、n
k, n
aは1以上の整数である。以下、[k
j]∈[F]
m(j=0, …, n
k-1)の各要素は、[k
j,i]∈[F](i=0, …, m-1)で参照することもある。入力部10は、キー属性k
0, …, k
nk-1のシェア[k
0], …, [k
nk-1]をビット分解部21へ出力する。
【0031】
各秘密計算装置2
nのビット分解部21は、キー属性k
0, …, k
nk-1のシェア[k
0], …, [k
nk-1]をビット分解して結合し、復元するとキー属性k
0, …, k
nk-1のビット表現を結合したビット列b:=b
0, …, b
m-1∈B
λとなるシェア{b}∈{B}
λを得る。ただし、λはビット列bのビット長であり、各b
i(i=0, …, m-1)のビット長の総和である。言い替えると、{b
i}は、キー属性k
0, …, k
nk-1のシェア[k
0], …, [k
nk-1]それぞれのi番目の要素[k
0,i], …, [k
nk-1,i]のビット表現を結合したビット列である。ビット分解部21は、ビット列bのシェア{b}をグループソート生成部22へ出力する。
【0032】
各秘密計算装置2
nのグループソート生成部22は、ビット列bのシェア{b}を用いて、復元するとビット列bを昇順で安定ソートするための置換σ
0となるシェア{{σ
0}}∈{{S
m}}を生成する。ビット列bはキー属性k
0, …, k
nk-1のビット表現を結合したものであるため、置換σ
0はキー属性k
0, …, k
nk-1の値が等しいレコードを連続するように並び替えてグループ分けする操作であるとも言える。グループソート生成部22は、ビット列bのシェア{b}と置換σ
0のシェア{{σ
0}}とをビット列ソート部23へ出力する。また、グループソート生成部22は、置換σ
0のシェア{{σ
0}}をバリューソート部26へ出力する。
【0033】
各秘密計算装置2
nのビット列ソート部23は、ビット列bのシェア{b}と置換σ
0のシェア{{σ
0}}とを用いて、復元するとビット列bを置換σ
0でソートしたソート済みビット列b':=b'
0, …, b'
m-1∈B
λとなるシェア{b'}∈{B}
λを得る。ビット列ソート部23は、ソート済みビット列b'のシェア{b'}をフラグ生成部24へ出力する。
【0034】
各秘密計算装置2
nのフラグ生成部24は、ソート済みビット列b'のシェア{b'}を用いて、0以上m-2以下の各整数iについて{e
i}:={b'
i≠b'
i+1}を設定し、かつ、{e
m-1}:={1}を設定して、復元するとフラグe:=e
0, …, e
m-1∈B
mとなるシェア{e}∈{B}
mを生成する。フラグe
iはソート済みビット列b'のi番目の要素b'
iがi+1番目の要素b'
i+1と異なる場合に真が設定されるため、各グループの最後の要素(すなわち、グループ間の境界の直前の要素)を示すフラグとなる。フラグ生成部24は、フラグeのシェア{e}をキー集約ソート生成部25へ出力する。また、フラグ生成部24は、フラグeのシェア{e}をフラグ変換部12へ出力する。
【0035】
各秘密計算装置2
nのキー集約ソート生成部25は、まず、フラグeのシェア{e}を用いて、復元するとフラグeの否定¬eであるフラグe'となるシェア{e'}∈{B}
mを生成する。すなわち、0以上m-1以下の各整数iについて{e'
i}:={¬e
i}を設定する。次に、キー集約ソート生成部25は、フラグe'のシェア{e'}を用いて、復元するとフラグe'を昇順に安定ソートするための置換σとなるシェア{{σ}}∈{{S
m}}を生成する。キー集約ソート生成部25は、置換σのシェア{{σ}}をバリューソート部26へ出力する。また、キー集約ソート生成部25は、置換σのシェア{{σ}}をソート部14へ出力する。
【0036】
各秘密計算装置2
nのバリューソート部26は、バリュー属性v
0, …, v
na-1のシェア[v
0], …, [v
na-1]と置換σ
0のシェア{{σ
0}}とを用いて、復元するとバリュー属性v
0, …,v
na-1を置換σ
0でソートしたソート済みバリュー属性v"
0, …, v"
na-1となるシェア[v"
0], …, [v"
na-1]を生成する。バリューソート部26は、ソート済みバリュー属性v"
0, …, v"
na-1のシェア[v"
0], …, [v"
na-1]のうち、グループ毎の総和を計算したいものをバリュー属性vのシェア[v]としてプレフィックスサム部11へ出力する。
【0037】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計の変更等があっても、この発明に含まれることはいうまでもない。実施の形態において説明した各種の処理は、記載の順に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。
【0038】
[プログラム、記録媒体]
上記実施形態で説明した各装置における各種の処理機能をコンピュータによって実現する場合、各装置が有すべき機能の処理内容はプログラムによって記述される。そして、このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記各装置における各種の処理機能がコンピュータ上で実現される。
【0039】
この処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリ等どのようなものでもよい。
【0040】
また、このプログラムの流通は、例えば、そのプログラムを記録したDVD、CD-ROM等の可搬型記録媒体を販売、譲渡、貸与等することによって行う。さらに、このプログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することにより、このプログラムを流通させる構成としてもよい。
【0041】
このようなプログラムを実行するコンピュータは、例えば、まず、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、一旦、自己の記憶装置に格納する。そして、処理の実行時、このコンピュータは、自己の記憶装置に格納されたプログラムを読み取り、読み取ったプログラムに従った処理を実行する。また、このプログラムの別の実行形態として、コンピュータが可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することとしてもよく、さらに、このコンピュータにサーバコンピュータからプログラムが転送されるたびに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することとしてもよい。また、サーバコンピュータから、このコンピュータへのプログラムの転送は行わず、その実行指示と結果取得のみによって処理機能を実現する、いわゆるASP(Application Service Provider)型のサービスによって、上述の処理を実行する構成としてもよい。なお、本形態におけるプログラムには、電子計算機による処理の用に供する情報であってプログラムに準ずるもの(コンピュータに対する直接の指令ではないがコンピュータの処理を規定する性質を有するデータ等)を含むものとする。
【0042】
また、この形態では、コンピュータ上で所定のプログラムを実行させることにより、本装置を構成することとしたが、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェア的に実現することとしてもよい。