特許第6973665号(P6973665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973665脱気システム、液体の脱気方法、脱気ユニット、脱気モジュール、脱気システムの製造方法、及び天然資源の産生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973665
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】脱気システム、液体の脱気方法、脱気ユニット、脱気モジュール、脱気システムの製造方法、及び天然資源の産生方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20211118BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20211118BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   B01D19/00 H
   B01D63/02
   B01D61/00
【請求項の数】14
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-560854(P2020-560854)
(86)(22)【出願日】2019年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2019050650
(87)【国際公開番号】WO2020138096
(87)【国際公開日】20200702
【審査請求日】2020年10月29日
(31)【優先権主張番号】特願2018-246967(P2018-246967)
(32)【優先日】2018年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 航
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 克彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 賢治
(72)【発明者】
【氏名】大井 和美
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−253105(JP,A)
【文献】 特開昭61−222509(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/012293(WO,A1)
【文献】 特開平11−226368(JP,A)
【文献】 特開昭57−102201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00 − 19/04
61/00 − 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を脱気する複数の脱気ユニットと、
前記複数の脱気ユニットを並列に収容する円筒状の筐体と、を備え、
前記複数の脱気ユニットのそれぞれは、複数本の中空糸膜が円筒状に束ねられた中空糸膜束と、前記中空糸膜束が収容される筒体と、を備え、
前記筐体は、外部から前記液体が供給される入口と、外部に前記液体を排出する出口と、前記複数の脱気ユニットを介して前記筐体の内部空間を前記入口側の上流側領域と前記出口側の下流側領域とに分ける封止部と、を有し、
前記複数の脱気ユニットは、前記複数の脱気ユニットを流れる前記液体の流量の乖離が低減するように、前記筐体の中心軸線からの距離に応じて前記液体の圧力損失が異なるように構成されている、
脱気システム。
【請求項2】
前記中空糸膜の内側を吸引するために、前記中空糸膜の内側に連通されて前記筐体を貫通する吸引管を更に備える、
請求項1に記載の脱気システム。
【請求項3】
前記複数の脱気ユニットのうち、前記中心軸線に沿う方向から見て前記入口と重なる前記脱気ユニットは、前記中心軸線に沿う方向から見て前記入口と重ならない前記脱気ユニットよりも、前記液体の圧力損失が大きくなるように構成されている、
請求項1又は2に記載の脱気システム。
【請求項4】
前記筐体の内周面から前記中心軸線側に前記脱気ユニットの外径の0.7倍に相当する位置までの領域を外側領域とし、前記外側領域の内側の領域を内側領域とした場合、
前記内側領域において、前記複数の脱気ユニットは、内側脱気ユニットと、前記内側脱気ユニットよりも前記中心軸線から遠い外側脱気ユニットと、を有し、
前記内側脱気ユニットは、前記外側脱気ユニットよりも前記液体の圧力損失が大きくなるように構成されている、
請求項1〜3の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項5】
前記筐体の内周面から前記中心軸線側に前記脱気ユニットの外径の0.7倍に相当する位置までの領域を外側領域とし、前記外側領域の内側の領域を内側領域とし、全ての前記脱気ユニットが、前記内側領域に配置されている場合、
前記複数の脱気ユニットは、前記中心軸線に近づくほど前記液体の圧力損失が大きくなるように構成されている、
請求項1〜4の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項6】
前記筐体の内周面から前記中心軸線側に前記脱気ユニットの外径の0.7倍に相当する位置までの領域を外側領域とし、前記外側領域の内側の領域を内側領域とし、少なくとも一つの前記脱気ユニットが前記外側領域に配置されており、残りの前記脱気ユニットは、前記内側領域に配置されている場合、
前記内側領域に配置される前記脱気ユニットは、前記中心軸線に近づくほど前記液体の圧力損失が大きくなるように構成されている、
請求項1〜4の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項7】
前記外側領域に配置される前記脱気ユニットは、前記内側領域に配置される前記脱気ユニットのうち最も前記外側領域に近い前記脱気ユニットよりも、前記液体の圧力損失が大きくなるように構成されている、
請求項6に記載の脱気システム。
【請求項8】
前記脱気ユニットは、複数の脱気モジュールが連結されてなり、
前記複数の脱気モジュールのそれぞれは、液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、前記中空糸膜束を収容し、前記液体を排出するための排出口が形成された筒体と、を備え、
前記脱気ユニットは、前記複数の脱気モジュールの前記液体供給路を直列に接続し、前記複数の脱気モジュールの前記中空糸膜束に前記液体が並列に供給されるように、前記液体を通過させる開口が前記複数の脱気モジュールに対応する位置に形成された連結供給管を有する、
請求項1〜7の何れか一項に記載の脱気システム。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の脱気システムにおいて、前記入口から前記複数の脱気ユニットに液体を供給するとともに、前記複数の脱気ユニットのそれぞれの前記複数本の中空糸膜の内側を減圧することで、前記液体を脱気する、
液体の脱気方法。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか一項に記載の脱気システムに用いられる脱気ユニットであって、
複数本の中空糸膜が円筒状に束ねられた中空糸膜束と、
前記中空糸膜束が収容される筒体と、を備える、
脱気ユニット。
【請求項11】
請求項8に記載の脱気システムに用いられる脱気モジュールであって、
液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、
前記中空糸膜束を収容し、前記液体を排出するための排出口が形成された筒体と、を備える、
脱気モジュール。
【請求項12】
複数の脱気ユニットと、前記複数の脱気ユニットを収容し、外部から液体が供給される入口と、外部に前記液体を排出する出口と、を有する筐体と、吸引管と、を用意し、
前記複数の脱気ユニットを介して前記筐体の内部空間を前記入口側の上流側領域と前記出口側の下流側領域とに分ける封止部により、前記複数の脱気ユニットを前記筐体に固定し、
前記複数の脱気ユニットを流れる前記液体の流量の乖離が低減するように、前記筐体の中心軸線からの距離に応じて前記複数の脱気ユニットの前記液体の圧力損失を異ならせる、
脱気システムの製造方法。
【請求項13】
液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、前記中空糸膜束を収容し、前記液体を排出するための排出口が形成された筒体と、をそれぞれ有する複数の脱気モジュールと、前記液体を通過させる複数の開口が形成された連結供給管と、を用意し、
前記連結供給管を前記複数の脱気モジュールの前記液体供給路に挿入して、前記連結供給管により前記複数の脱気モジュールの前記液体供給路を直列に接続するとともに、前記複数の脱気モジュールの前記中空糸膜束に前記液体が並列に供給されるように、前記複数の開口を前記複数の脱気モジュールに対応する位置に配置することで、前記脱気ユニットを製造する、
請求項12に記載の脱気システムの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜8の何れか一項に記載の脱気システムにおいて、前記入口から前記複数の脱気ユニットに液体を供給するとともに、前記複数の脱気ユニットのそれぞれの前記複数本の中空糸膜の内側を減圧することで、前記液体を脱気する脱気工程と、前記脱気工程で脱気された前記液体を天然資源の採掘現場に圧入する圧入工程と、を備える、
天然資源の産生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、筐体に複数の脱気ユニットが並列して収容された脱気システム、この脱気システムを用いた液体の脱気方法、この脱気システムに用いられる脱気ユニット、この脱気システムに用いられる脱気モジュール、この脱気システムの製造方法、及び天然資源の産生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、中空糸膜を用いて液体を脱気する脱気ユニットが知られている。また、大型化又は大流量化に対応するために、筐体に複数の脱気ユニットを収容した脱気システムも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4593719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筐体に複数の脱気ユニットを並列して収容する場合、全ての脱気ユニットには同じ流量の液体が流れると思われていた。しかしながら、本発明者らが研究したところ、全ての脱気ユニットには、必ずしも同じ流量の液体が流れない場合があるとの知見を得た。つまり、筐体の中心軸線からの距離に応じて、脱気ユニットに流れる液体の流量が異なるとの知見を得た。脱気ユニットの脱気性能は、脱気ユニットを流れる液体の流量によって変わることから、各脱気ユニットに流れる液体の流量が異なるほど、脱気システム全体における脱気性能が低下すると推察される。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、複数の脱気ユニットを流れる液体の流量の乖離を低減することができる脱気システム、この脱気システムを用いた液体の脱気方法、この脱気システムに用いられる脱気ユニット、この脱気システムに用いられる脱気モジュール、この脱気システムの製造方法、及び天然資源の産生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る脱気システムは、液体を脱気する複数の脱気ユニットと、複数の脱気ユニットを並列に収容する円筒状の筐体と、を備え、複数の脱気ユニットのそれぞれは、複数本の中空糸膜が円筒状に束ねられた中空糸膜束と、中空糸膜束が収容される筒体と、を備え、筐体は、外部から液体が供給される入口と、外部に液体を排出する出口と、複数の脱気ユニットを介して筐体の内部空間を入口側の上流側領域と出口側の下流側領域とに分ける封止部と、を有し、複数の脱気ユニットは、筐体の中心軸線からの距離応じて液体の圧力損失が異なるように構成されている。
【0007】
この脱気システムでは、円筒状の筐体に複数の脱気ユニットが並列に収容されている。ここで、複数の脱気ユニットを流れる液体の圧力損失が同じである場合、筐体の中心軸線からの距離に応じて、脱気ユニットに流れる液体の流量が異なる。しかしながら、この脱気システムでは、複数の脱気ユニットが、筐体の中心軸線からの距離応じて液体の圧力損失が異なるように構成されている。この圧力損失の差が上記の流量の差を相殺するように働く。これにより、複数の脱気ユニットを流れる液体の流量の乖離を低減することができる。その結果、例えば、脱気システム全体における脱気性能を向上させることができる。
【0008】
中空糸膜の内側を吸引するために、中空糸膜の内側に連通されて筐体を貫通する吸引管を更に備えてもよい。この脱気システムでは、吸引管を備えることで、脱気ユニットにおいて液体を適切に脱気することができると共に、脱気した気体を筐体外部に適切に排出することができる。
【0009】
複数の脱気ユニットのうち、中心軸線に沿う方向から見て入口と重なる脱気ユニットは、中心軸線に沿う方向から見て入口と重ならない脱気ユニットよりも、液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい。中心軸線に沿う方向から見て入口と重なる脱気ユニットは、中心軸線に沿う方向から見て入口と重ならない脱気ユニットよりも、入口からの液体の供給圧力を強く受けるため、液体が流れ込みやすくなる。この脱気システムでは、中心軸線に沿う方向から見て入口と重なる脱気ユニットが中心軸線に沿う方向から見て入口と重ならない脱気ユニットよりも液体の圧力損失が大きくなるように構成されているため、この圧力損失の差が液体の供給圧力の差を相殺するように働く。その結果、これらの脱気ユニットを流れる液体の流量の乖離を低減することができる。
【0010】
ところで、上述したように、複数の脱気ユニットを流れる液体の圧力損失が同じである場合、筐体の中心軸線から離れるほど、脱気ユニットに流れる液体の流量が少なくなる傾向にある。しかしながら、本発明者らが研究したところ、筐体の内周面から中心軸線側に脱気ユニットの外径の0.7倍に相当する位置までの外側領域においては、上記の傾向が反転するとの知見が得られた。つまり、外側領域においては、筐体の中心軸線から離れるほど、脱気ユニットに流れる液体の流量が多くなる傾向にあるとの知見が得られた。これは、外側領域においては、筐体内を流れる液体が筐体の内周面に押し戻されることにより、脱気ユニットを流れる液体の流量が増加したものと推察される。
【0011】
このような知見から、筐体の内周面から中心軸線側に脱気ユニットの外径の0.7倍に相当する位置までの領域を外側領域とし、外側領域の内側の領域を内側領域とした場合、内側領域において、複数の脱気ユニットは、内側脱気ユニットと、内側脱気ユニットよりも中心軸線から遠い外側脱気ユニットと、を有し、内側脱気ユニットは、外側脱気ユニットよりも液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい。複数の脱気ユニットを流れる液体の圧力損失が同じである場合、内側領域では、筐体の中心軸線から離れるほど、脱気ユニットに流れる液体の流量が少なくなる傾向にある。この脱気システムでは、内側脱気ユニットが外側脱気ユニットよりも液体の圧力損失が大きくなるように構成されているため、この圧力損失の差が上記の流量の差を相殺するように働く。その結果、内側脱気ユニットと外側脱気ユニットとを流れる液体の流量の乖離を低減することができる。
【0012】
また、筐体の内周面から中心軸線側に脱気ユニットの外径の0.7倍に相当する位置までの領域を外側領域とし、外側領域の内側の領域を内側領域とし、全ての脱気ユニットが、内側領域に配置されている場合、複数の脱気ユニットは、中心軸線に近づくほど液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい。この脱気システムでは、全ての脱気ユニットが内側領域に配置されている場合に、複数の脱気ユニットが中心軸線に近づくほど液体の圧力損失が大きくなるように構成されているため、複数の脱気ユニットを流れる液体の流量の乖離を適切に低減することができる。
【0013】
一方、筐体の内周面から中心軸線側に脱気ユニットの外径の0.7倍に相当する位置までの領域を外側領域とし、外側領域の内側の領域を内側領域とし、少なくとも一つの脱気ユニットが外側領域に配置されており、残りの脱気ユニットは、内側領域に配置されている場合、内側領域に配置される脱気ユニットは、中心軸線に近づくほど液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい。この脱気システムでは、少なくとも一つの脱気ユニットが外側領域に配置されており、残りの脱気ユニットが内側領域に配置されている場合に、内側領域に配置される脱気ユニットが中心軸線から離れるほど液体の圧力損失が大きくなるように構成されているため、内側領域において、脱気ユニットを流れる液体の流量の乖離を適切に低減することができる。
【0014】
この場合、外側領域に配置される脱気ユニットは、内側領域に配置される脱気ユニットのうち最も外側領域に近い脱気ユニットよりも、液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい。この脱気システムでは、外側領域に配置される脱気ユニットは、内側領域に配置される脱気ユニットのうち最も外側領域に近い脱気ユニットよりも、液体の圧力損失が大きくなるように構成されているため、内側領域に配置される脱気ユニットと外側領域に配置される脱気ユニットとの間においても、液体の流量の乖離を適切に低減することができる。
【0015】
脱気ユニットは、複数の脱気モジュールが連結されてなり、複数の脱気モジュールのそれぞれは、液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、中空糸膜束を収容し、液体を排出するための排出口が形成された筒体と、を備え、脱気ユニットは、複数の脱気モジュールの液体供給路を直列に接続し、複数の脱気モジュールの中空糸膜束に液体が並列に供給されるように、液体を通過させる開口が複数の脱気モジュールに対応する位置に形成された連結供給管を有する。
【0016】
本発明の一側面に係る液体の脱気方法は、上記の何れかの脱気システムにおいて、入口から複数の脱気ユニットに液体を供給するとともに、複数の脱気ユニットのそれぞれの複数本の中空糸膜の内側を減圧することで、液体を脱気する。
【0017】
本発明の一側面に係る脱気ユニットは、上記の何れかの脱気システムに用いられる脱気ユニットであって、複数本の中空糸膜が円筒状に束ねられた中空糸膜束と、中空糸膜束が収容される筒体と、を備える。
【0018】
本発明の一側面に係る脱気モジュールは、上記の脱気システムに用いられる脱気モジュールであって、液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、中空糸膜束を収容し、液体を排出するための排出口が形成された筒体と、を備える。
【0019】
本発明の一側面に係る脱気システムの製造方法は、複数の脱気ユニットと、複数の脱気ユニットを収容し、外部から液体が供給される入口と、外部に液体を排出する出口と、を有する筐体と、吸引管と、を用意し、複数の脱気ユニットを介して筐体の内部空間を入口側の上流側領域と出口側の下流側領域とに分ける封止部により、複数の脱気ユニットを筐体に固定し、筐体の中心軸線からの距離応じて複数の脱気ユニットの液体の圧力損失を異ならせる。
【0020】
この場合、液体が供給される液体供給路の周囲に配される複数本の中空糸膜を有する中空糸膜束と、中空糸膜束を収容し、液体を排出するための排出口が形成された筒体と、をそれぞれ有する複数の脱気モジュールと、液体を通過させる複数の開口が形成された連結供給管と、を用意し、連結供給管を複数の脱気モジュールの液体供給路に挿入して、連結供給管により複数の脱気モジュールの液体供給路を直列に接続するとともに、複数の脱気モジュールの中空糸膜束に液体が並列に供給されるように、複数の開口を複数の脱気モジュールに対応する位置に配置することで、脱気ユニットを製造してもよい。
【0021】
本発明の一側面に係る天然資源の産生方法は、上記の何れかの脱気システムにおいて、入口から複数の脱気ユニットに液体を供給するとともに、複数の脱気ユニットのそれぞれの複数本の中空糸膜の内側を減圧することで、液体を脱気する脱気工程と、脱気工程で脱気された液体を天然資源の採掘現場に圧入する圧入工程と、を備える。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一側面によれば、複数の脱気ユニットを流れる液体の流量の乖離を低減することができる脱気システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態に係る脱気システムの概略断面図である。
図2図1に示すII−II線における概略断面図である。
図3】脱気ユニットの一例を説明するための脱気システムの概略断面図である。
図4】脱気ユニットの一例を説明するための脱気システムの概略断面図である。
図5図3又は図4に示すV−V線における概略断面図である。
図6】脱気ユニットの概略正面図である。
図7】脱気ユニットの概略断面図である。
図8】中空糸膜束の端部の概略断面図である。
図9】参考例の脱気システムの概略断面図である。
図10】各参考例の条件を示す表である。
図11】参考例1〜8における各列の脱気ユニットの流量を示すである。
図12】参考例1〜4における各列の脱気ユニットの流量を示すグラフである。
図13】参考例2及び5における各列の脱気ユニットの流量を示すグラフである。
図14】参考例6〜8における各列の脱気ユニットの流量を示すグラフである。
図15】筐体の外側領域及び内側領域を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて説明するにあたり、同一の要素、又は同一の機能を有する類似する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0025】
本実施形態の脱気システムは、液体を脱気するためのシステムである。脱気システムが脱気する液体としては、例えば、水が挙げられる。図1及び図2に示すように、本実施形態の脱気システム1は、複数の脱気ユニット2と、脱気ユニット2を収容する筐体3と、吸引管4(図3図5参照)と、を備える。
【0026】
[脱気ユニット]
脱気ユニット2は、例えば、図3に示す脱気ユニット2Aのように複数の脱気モジュール5が連結されて構成されていてもよく、図4に示す脱気ユニット2Bのように一つの脱気モジュール5により構成されていてもよい。なお、図3に示す脱気ユニット2A及び図4に示す脱気ユニット2Bは、脱気ユニット2の一例を示すものである。また、図3及び図4では、図面を見やすくするために、複数の脱気ユニット2のうち一つの脱気ユニット2のみを図示し、残りの脱気ユニット2の図示を省略している。
【0027】
図6及び図7に示すように、脱気モジュール5は、例えば、モジュール内管11と、中空糸膜束12と、モジュール容器(筒体)13と、を備える。
【0028】
モジュール内管11は、内周側に水等の液体が供給される液体供給路10を形成する管である。モジュール内管11は、例えば、直線状に延びる円管状に形成されている。モジュール内管11には、複数の内管開口11aが形成されている。内管開口11aは、モジュール内管11の液体供給路10に供給された液体を通過させるためのものである。内管開口11aの数、位置、大きさ等は特に限定されるものではない。
【0029】
中空糸膜束12は、モジュール内管11の周囲に配される複数本の中空糸膜14を有する。このため、液体供給路10は、中空糸膜束12の内周側に配置される。中空糸膜束12は、例えば、複数本の中空糸膜14が円筒状等の筒状に束ねられて構成される。中空糸膜14は、気体は透過するが液体は透過しない中空糸状の膜である。そして、中空糸膜束12は、中空糸膜14の内側が減圧されることで、モジュール内管11の内管開口11aから流れ出した液体を脱気する。
【0030】
中空糸膜14の素材、膜形状、膜形態等は、特に制限されない。中空糸膜14の素材としては、例えば、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)などのポリオレフィン系樹脂、ポリジメチルシロキサンその共重合体などのシリコン系樹脂、PTFE、フッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、が挙げられる。中空糸膜14の膜形状(側壁の形状)としては、例えば、多孔質膜、微多孔膜、多孔質を有さない均質膜(非多孔膜)、が挙げられる。中空糸膜14の膜形態としては、例えば、膜全体の化学的あるいは物理的構造が均質な対称膜(均質膜)、膜の化学的あるいは物理的構造が膜の部分によって異なる非対称膜(不均質膜)、が挙げられる。非対称膜(不均質膜)は、非多孔質の緻密層と多孔質とを有する膜である。この場合、緻密層は、膜の表層部分又は多孔質膜内部等、膜中のどこに形成されていてもよい。不均質膜には、化学構造の異なる複合膜、3層構造のような多層構造膜も含まれる。
【0031】
中空糸膜束12は、例えば、緯糸である複数本の中空糸膜14を経糸で織った織物(不図示)により形成することができる。この織物は、中空糸膜シートとも呼ばれ、複数本の中空糸膜14が簾状に織られている。この織物は、例えば、1インチ当たり30本〜90本の中空糸膜14で構成される。そして、この織物が、複数本の中空糸膜14がモジュール内管11(液体供給路10)の軸線方向に延びるようにモジュール内管11(液体供給路の周囲)に巻かれることで、円筒状の中空糸膜束12を構成することができる。
【0032】
モジュール容器13は、中空糸膜束12を収容する容器である。モジュール内管11とモジュール容器13との間の領域が、中空糸膜束12により液体を脱気する脱気領域Aとなる。モジュール容器13は、例えば、モジュール内管11(液体供給路10)の軸線方向に延びる円筒状に形成されており、その両端が開口している。モジュール容器13には、複数の排出口13aが形成されている。排出口13aは、脱気領域Aにおいて中空糸膜束12を通過した液体をモジュール容器13(脱気モジュール5)から排出するためのものである。排出口13aの数、位置、大きさ等は特に限定されるものではない。
【0033】
図8に示すように、中空糸膜束12の両側の端部12aは、封止部15によりモジュール内管11及びモジュール容器13に固定されている。
【0034】
封止部15は、例えば樹脂により形成されている。封止部15に用いる樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、紫外線硬化型樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。封止部15は、モジュール内管11とモジュール容器13との間の、中空糸膜14の内側以外の全領域に充填されている。つまり、封止部15は、中空糸膜14間、中空糸膜束12とモジュール内管11との間、中空糸膜14とモジュール容器13との間に充填されているが、中空糸膜14の内側には充填されていない。このため、中空糸膜14の内側は、封止部15から脱気モジュール5の両端側に開放されており、脱気モジュール5の両端側から、中空糸膜14の内側を吸引することが可能となっている。つまり、モジュール容器13の両端の開口は、中空糸膜14の内側を吸引して減圧させることを可能とするために、中空糸膜14の内側を開放又は露出させる吸気開口となっている。
【0035】
図3及び図5に示すように、複数の脱気モジュール5が連結されて構成される脱気ユニット2Aは、例えば、複数の脱気モジュール5の液体供給路10を直列に接続する連結供給管6Aを有する。連結供給管6Aは、複数の脱気モジュール5に接続される1本の長い管であり、その内周側に、複数の脱気モジュール5の液体供給路10を形成する。このため、複数の脱気モジュール5は、外観上、連結供給管6Aにより直列に接続されている。脱気ユニット2Aを構成する脱気モジュール5の数は、特に限定されるものではないが、以下では、一例として、4個の脱気モジュール5が連結されているものとして説明する。4個の脱気モジュール5を、連結供給管6Aにおける液体の流れ方向の順に、脱気モジュール5A、脱気モジュール5B、脱気モジュール5C、脱気モジュール5Dとよぶ。脱気モジュール5Aは、最も上流側に配置される脱気モジュール5であり、脱気モジュール5Dは、最も下流側に配置される脱気モジュール5である。脱気ユニット2Aは、例えば、連結供給管6Aにおいて液体が下方から上方に流れていくように、鉛直方向に立設されている。この場合、最も上流側に配置される脱気モジュール5Aは、最も下側に配置され、最も下流側に配置される脱気モジュール5Dは、最も上側に配置される。
【0036】
連結供給管6Aの上流端には、連結供給管6Aに液体が供給される供給口6aが形成されている。連結供給管6Aの下流端は、封止されている。複数の脱気モジュール5の液体供給路10を形成する連結供給管6Aの内周側は、上流側から下流側まで貫通されている。このため、連結供給管6A(各脱気モジュール5のモジュール内管11)の内周側に、液体の流れの抵抗となる部材は配置されていてもよいが、連結供給管6Aを封止して液体の流れを遮断する部材は配置されていない。そして、供給口6aから供給された液体は、連結供給管6Aにより、複数の脱気モジュール5の液体供給路10に直列的に供給される。
【0037】
連結供給管6Aには、複数の脱気モジュール5の中空糸膜束12に液体が並列に供給されるように、液体を通過させる開口6bが複数の脱気モジュール5に対応する位置に形成されている。このため、連結供給管6Aの供給口6aに供給された液体は、各脱気モジュール5に対応する位置に形成された開口6bから、各脱気モジュール5の脱気領域Aに供給される(流れ出す)。これにより、複数の脱気モジュール5の中空糸膜束12に液体が並列に供給される。
【0038】
各脱気モジュール5と連結供給管6Aとは、密接していてもよく、離間していてもよい。各脱気モジュール5と連結供給管6Aとが密接している場合は、各脱気モジュール5の内管開口11aと連結供給管6Aの開口6bとが、少なくとも一部において重なる位置に形成されていることで、連結供給管6Aから各脱気モジュール5の脱気領域Aに液体を供給することができる。一方、各脱気モジュール5と連結供給管6Aとが離間している場合は、その間の空間に液体が流れる流路が形成されるため、各脱気モジュール5の内管開口11aと連結供給管6Aの開口6bとの位置関係によらず、連結供給管6Aから各脱気モジュール5の脱気領域Aに液体を供給することができる。
【0039】
図4及び図5に示すように、一つの脱気モジュール5により構成される脱気ユニット2Bは、例えば、脱気モジュール5のモジュール内管11に挿通されて、その内周側に脱気モジュール5の液体供給路10を形成する連結供給管6Bを有する。
【0040】
連結供給管6Bの上流端には、連結供給管6Bに液体が供給される供給口6aが形成されている。連結供給管6Bの下流端は、封止されている。脱気モジュール5の液体供給路10を形成する連結供給管6Bの内周側は、上流側から下流側まで貫通されている。このため、連結供給管6B(脱気モジュール5のモジュール内管11)の内周側に、液体の流れの抵抗となる部材は配置されていてもよいが、連結供給管6Bを封止して液体の流れを遮断する部材は配置されていない。そして、供給口6aから供給された液体は、連結供給管6Bにより、脱気モジュール5の液体供給路10に供給される。
【0041】
連結供給管6Bには、脱気モジュール5の中空糸膜束12に液体が供給されるように、液体を通過させる開口6bが形成されている。このため、連結供給管6Bの供給口6aに供給された液体は、開口6bから脱気モジュール5の脱気領域Aに供給される(流れ出す)。これにより、脱気モジュール5の中空糸膜束12に液体が供給される。
【0042】
脱気モジュール5と連結供給管6Bとは、密接していてもよく、離間していてもよい。脱気モジュール5と連結供給管6Bとが密接している場合は、脱気モジュール5の内管開口11aと連結供給管6Bの開口6bとが、少なくとも一部において重なる位置に形成されていることで、連結供給管6Bから脱気モジュール5の脱気領域Aに液体を供給することができる。一方、脱気モジュール5と連結供給管6Bとが離間している場合は、その間の空間に液体が流れる流路が形成されるため、脱気モジュール5の内管開口11aと連結供給管6Bの開口6bとの位置関係によらず、連結供給管6Bから脱気モジュール5の脱気領域Aに液体を供給することができる。
【0043】
なお、特に区別して説明する場合を除き、連結供給管6A及び連結供給管6Bを纏めて連結供給管6という。また、脱気ユニット2Bにおいては、連結供給管6Bが設けられておらず、モジュール内管11が連結供給管6Bを兼ねる構成であってもよい。この場合、例えば、モジュール内管11の上流端に、モジュール内管11に液体が供給される供給口が形成され、モジュール内管11の下流端が、封止されている。
【0044】
[筐体]
図1図5に示すように、筐体3は、円筒状に形成されている。筐体3は、複数の脱気ユニット2が筐体3の中心軸線Lと平行に配置されるように、複数の脱気ユニット2を並列に収容している。
【0045】
入口3aは、例えば、筐体3の下端部に形成されている。入口3aは、各脱気ユニット2の供給口6aと連通されている。このため、入口3aから供給された液体は、各脱気ユニット2の供給口6aから各脱気ユニット2の液体供給路10に供給される。
【0046】
出口3bは、例えば、筐体3の上端部に形成されている。出口3bは、各脱気ユニット2の排出口13aと連通されている。このため、各脱気ユニット2の排出口13aから排出された液体は、筐体3の出口3bから排出される。
【0047】
筐体3には、筐体封止部(封止部)7と、脱気ユニット支持部8と、が設けられている。
【0048】
筐体封止部7は、連結供給管6(連結供給管6A又は連結供給管6B)の上流端部(下端部)を、筐体3の内周面に固定する。また、筐体封止部7は、複数の脱気ユニット2を介して、筐体3の内部空間を入口3a側の上流側領域Bと出口3b側の下流側領域Cとを仕切る。筐体封止部7としては、例えば、ステンレスなどの金属、繊維強化樹脂(FRP)、鉄などの金属をライニングした樹脂が用いられる。
【0049】
筐体封止部7は、連結供給管6と筐体3との間の、連結供給管6の内側以外の全領域に充填されている。つまり、筐体封止部7は、連結供給管6と筐体3との間に充填されているが、連結供給管6の内側には充填されていない。このため、連結供給管6の内側は、供給口6aから上流側領域Bに開放されている。そして、入口3aから上流側領域Bに供給された液体は、供給口6aからのみ連結供給管6の内側に供給され、更に、開口6b及び内管開口11aから脱気モジュール5の脱気領域Aに供給される。
【0050】
また、筐体封止部7は、連結供給管6を流れる液体の流れ方向において、全ての排出口13aよりも上流側に配置されている。このため、モジュール容器13の内側は、排出口13aから下流側領域Cに開放されている。そして、開口6b及び内管開口11aから脱気領域Aに供給された液体は、排出口13aからのみ下流側領域Cに排出され、更に出口3bから筐体3外に排出される。
【0051】
脱気ユニット支持部8は、脱気ユニット2の下流端部(上端部)と筐体3とに固定されて、脱気ユニット2の下流端部を支持する。脱気ユニット支持部8は、例えば、脱気ユニット2から筐体3に延びる棒状に形成されており、脱気ユニット2と筐体3との間を封止するものではない。このため、排出口13aから下流側領域Cに排出された液体は、脱気ユニット支持部8に阻止されることなく、出口3bから筐体3外に排出される。
【0052】
筐体3の内径は、特に限定されないが、例えば、400mm以上1800mm以下が好ましく、600mm以上1650mm以下がより好ましく、470mm以上800mm以下が更に好ましい。
【0053】
脱気ユニット2の直径は、特に限定されないが、例えば、114mm以上318mm以下が好ましく、125mm以上216mm以下がより好ましく、160mm以上170mm以下が更に好ましい。なお、脱気ユニット2の直径は、モジュール容器13の直径をいう。
【0054】
筐体3に収容される脱気ユニット2の数は、特に限定されないが、脱気システム1の設置性を確保しつつ大流量化を図ることができる観点から、例えば、50本以上200本以下が好ましく、76本以上180本以下がより好ましく、150本以上160本以下が更に好ましい。
【0055】
筐体3に供給する液体の流量は、特に限定されないが、脱気ユニット2の脱気効率を向上できる観点から、例えば、150m/h以上1200m/h以下が好ましく、200m/h以上1000m/h以下がより好ましく、450m/h以上960m/h以下が更に好ましい。
【0056】
筐体3における液体の理想滞留時間は、特に限定されないが、筐体3が大きくなり過ぎるのを抑制しつつ大流量化を図ることができる観点から、例えば、7秒以上35秒以下が好ましく、17秒以上28秒以下がより好ましく、20秒以上22秒以下が更に好ましい。なお、筐体3における液体の理想滞留時間は、筐体3の容積Vmを液体の流量Qm/hで割った値(V/Q)をいう。
【0057】
上流側領域Bにおける液体の理想滞留時間は、特に限定されないが、脱気システム1が大きくなり過ぎるのを抑制しつつ各脱気ユニット2に液体を適切に供給する観点から、例えば、3秒以上12秒以下が好ましく、4秒以上8秒以下がより好ましく、5秒以上6秒以下が更に好ましい。なお、上流側領域Bにおける液体の理想滞留時間とは、上流側領域Bの容積Vmを液体の流量Qm/hで割った値(V/Q)をいう。
【0058】
[吸引管]
吸引管4は、中空糸膜14の内側を吸引(真空引き)するために、中空糸膜14の内側に連通されている。また、吸引管4は、筐体3の外部に設けられた真空ポンプなどの吸引ポンプにより吸引するために、筐体3を貫通して、筐体3の外部まで延びている。上述したように、中空糸膜14の内側は、封止部15から脱気モジュール5の両端側に開放されている。このため、吸引管4は、中空糸膜14の内側が開放された脱気モジュール5の両端に接続されている。これにより、吸引管4を吸引することで、脱気モジュール5の両端側から、中空糸膜14の内側を吸引することが可能となっている。
【0059】
また、図3に示す脱気ユニット2Aでは、複数の脱気モジュール5は、外観上、連結供給管6により直列に接続されているため、連結供給管6に沿って互いに隣り合う脱気モジュール5間では、相手側の端面が対向して配置される。このため、この対向端面に、1つの吸引管4を接続してもよい。
【0060】
なお、吸引管4は、複数の脱気ユニット2のそれぞれに設けられていてもよく、複数の脱気ユニット2に一つ設けられていてもよい。また、図3に示す脱気ユニット2Aのように、一つの脱気ユニット2が複数の脱気モジュール5で構成されている場合、複数の脱気モジュール5のそれぞれに吸引管4が接続されていてもよく、複数の脱気モジュール5に一つの吸引管4が接続されていてもよい。また、図3に示す脱気ユニット2Aでは、複数の脱気モジュール5が、外観上、連結供給管6により直列に接続されているため、連結供給管6に沿って互いに隣り合う脱気モジュール5間では、相手側の端面が対向して配置される。このため、この対向端面に、1つの吸引管4を接続してもよい。
【0061】
[脱気方法]
次に、脱気システム1による液体の脱気方法について説明する。
【0062】
まず、筐体3の入口3aから筐体3の上流側領域Bに水等の液体を供給する。すると、上流側領域Bに供給された液体は、供給口6aから連結供給管6に供給され、連結供給管6の開口6b及び脱気モジュール5の内管開口11aを通って、脱気モジュール5の脱気領域Aに供給される。これにより、液体が、脱気モジュール5の中空糸膜束12に供給される。脱気領域Aでは、内管開口11aから供給された液体は、中空糸膜束12における複数本の中空糸膜14の間を通過した後、排出口13aから排出される。このとき、吸引管4を吸引して複数本の中空糸膜14の内側を減圧することで、複数本の中空糸膜14の間を通過する液体の溶存気体、気泡などが脱気される。そして、脱気された液体は、排出口13aから下流側領域Cに排出され、更に、出口3bから筐体3の外部に排出される。
【0063】
[流量の解析]
ここで、本発明者らは、図9に示すように、筐体23に39本の脱気ユニット22が並列して収容された参考例1〜8の脱気システム21について、各脱気ユニット22に流れる液体の流量を解析した。なお、図9では、脱気ユニット22の半分のみを示している。各脱気ユニット22は、図3に示す脱気ユニット2Aのように、4個の脱気モジュールが連結されて構成されるものとし、全ての脱気ユニット22は、同じものとした。
【0064】
脱気システム21では、複数の脱気ユニット22を、筐体23の中心軸線から筐体23の内周面側に向けて4列に配置した。具体的には、最も中心側に配置される脱気ユニット22を、1列目の脱気ユニット22Aとした。1列目の脱気ユニット22Aの外周側に配置される脱気ユニット22を、2列目の脱気ユニット22Bとした。2列目の脱気ユニット22Bの外周側に配置される脱気ユニット22を、3列目の脱気ユニット22Cとした。3列目の脱気ユニット22Cの外周側に配置されると共に最も外周側に配置される脱気ユニット22を、4列目の脱気ユニット22Dとした。1列目の脱気ユニット22Aは、筐体23の中心軸線上に配置された1本の脱気ユニット22で構成されている。2列目の脱気ユニット22Bは、1列目の脱気ユニット22Aを囲むように、6本の脱気ユニット22で構成されている。3列目の脱気ユニット22Cは、2列目の脱気ユニット22Bを囲むように、13本の脱気ユニット22で構成されている。4列目の脱気ユニット22Dは、3列目の脱気ユニット22Cを囲むように、19本の脱気ユニット22で構成されている。
【0065】
解析ソフトウェアには、ANSYS Fleunt Ver. 19.0を用いた。液体は、海水をモデルとして、密度を1025.5kg/m、粘度を0.001164Pa・sとした。中空糸膜束は、多孔質(圧力抵抗のある流路)をモデルとして、圧力係数を、1個の脱気モジュールの解析値から1.9×1010とした。圧力係数を求める解析では、DIC株式会社製のEF−040Pを用いた。
【0066】
(参考例1)
図9及び図10に示すように、参考例1の脱気システム21は、筐体23の内径を1645mmとし、脱気ユニット22の外径D1を163mmとし、複数の脱気ユニット22から筐体23の内周面までの距離D2を200mmとした。複数の脱気ユニット22から筐体23の内周面までの距離D2は、複数の脱気ユニット22の外接円から筐体23の内周面までの最短距離をいう。距離D2は、脱気ユニット22の外径D1の約1.23倍となる。換言すると、脱気ユニット22の外径D1に対する距離D2の比率(D2/D1)は、約1.23となる。また、筐体23の入口3aの直径を350mmとし、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て、1列目の脱気ユニット22Aの全てが入口3aと重なり、2列目の脱気ユニット22Bの一部が入口3aと重なり、3列目の脱気ユニット22C及び4列目の脱気ユニット22Dが全く入口3aと重ならないようにした。また、脱気システム21に供給する液体の総流量を663m/hとし、筐体23の上流側領域B(図1参照)における液体の理想滞留時間を5.1秒とした。
【0067】
(参考例2)
図9及び図10に示すように、参考例2の脱気システム21は、筐体23の内径を1607mmとし、脱気ユニット22の外径D1を163mmとし、複数の脱気ユニット22から筐体23の内周面までの距離D2を182mmとした。距離D2は、脱気ユニット22の外径D1の約1.12倍である。換言すると、脱気ユニット22の外径D1に対する距離D2の比率(D2/D1)は、約1.12となる。また、筐体23の入口3aの直径を350mmとし、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て、1列目の脱気ユニット22Aの全てが入口3aと重なり、2列目の脱気ユニット22Bの一部が入口3aと重なり、3列目の脱気ユニット22C及び4列目の脱気ユニット22Dが全く入口3aと重ならないようにした。また、脱気システム21に供給する液体の総流量を663m/hとし、筐体23の上流側領域Bにおける液体の理想滞留時間を4.7秒とした。
【0068】
(参考例3)
図9及び図10に示すように、参考例3の脱気システム21は、筐体23の内径を1405mmとし、脱気ユニット22の外径D1を163mmとし、複数の脱気ユニット22から筐体23の内周面までの距離D2を81mmとした。距離D2は、脱気ユニット22の外径D1の約0.50倍である。換言すると、脱気ユニット22の外径D1に対する距離D2の比率(D2/D1)は、約0.50となる。また、筐体23の入口3aの直径を350mmとし、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て、1列目の脱気ユニット22Aの全てが入口3aと重なり、2列目の脱気ユニット22Bの一部が入口3aと重なり、3列目の脱気ユニット22C及び4列目の脱気ユニット22Dが全く入口3aと重ならないようにした。また、脱気システム21に供給する液体の総流量を663m/hとし、筐体23の上流側領域Bにおける液体の理想滞留時間を3.7秒とした。
【0069】
(参考例4)
図9及び図10に示すように、参考例4の脱気システム21は、筐体23の内径を1270mmとし、脱気ユニット22の外径D1を163mmとし、複数の脱気ユニット22から筐体23の内周面までの距離D2を28.5mmとした。距離D2は、脱気ユニット22の外径D1の約0.17倍である。換言すると、脱気ユニット22の外径D1に対する距離D2の比率(D2/D1)は、約0.17となる。また、筐体23の入口3aの直径を350mmとし、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て、1列目の脱気ユニット22Aの全てが入口3aと重なり、2列目の脱気ユニット22Bの一部が入口3aと重なり、3列目の脱気ユニット22C及び4列目の脱気ユニット22Dが全く入口3aと重ならないようにした。また、脱気システム21に供給する液体の総流量を663m/hとし、筐体23の上流側領域Bにおける液体の理想滞留時間を3.0秒とした。
【0070】
(参考例5)
図9及び図10に示すように、参考例5の脱気システム21は、筐体23の内径を1645mmとし、脱気ユニット22の外径D1を163mmとし、複数の脱気ユニット22から筐体23の内周面までの距離D2を200mmとした。距離D2は、脱気ユニット22の外径D1の約1.23倍である。換言すると、脱気ユニット22の外径D1に対する距離D2の比率(D2/D1)は、約1.23となる。また、筐体23の入口3aの直径を420mmとし、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て、1列目の脱気ユニット22A及び2列目の脱気ユニット22Bの全てが入口3aと重なり、3列目の脱気ユニット22C及び4列目の脱気ユニット22Dが全く入口3aと重ならないようにした。また、脱気システム21に供給する液体の総流量を663m/hとし、筐体23の上流側領域Bにおける液体の理想滞留時間を5.1秒とした。
【0071】
(参考例6)
図9及び図10に示すように、参考例6の脱気システム21は、筐体23の内径を1645mmとし、脱気ユニット22の外径D1を163mmとし、複数の脱気ユニット22から筐体23の内周面までの距離D2を200mmとした。距離D2は、脱気ユニット22の外径D1の約1.23倍である。換言すると、脱気ユニット22の外径D1に対する距離D2の比率(D2/D1)は、約1.23となる。また、筐体23の入口3aの直径を350mmとし、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て、1列目の脱気ユニット22Aの全てが入口3aと重なり、2列目の脱気ユニット22Bの一部が入口3aと重なり、3列目の脱気ユニット22C及び4列目の脱気ユニット22Dが全く入口3aと重ならないようにした。また、脱気システム21に供給する液体の総流量を663m/hとし、筐体23の上流側領域Bにおける液体の理想滞留時間を3.4秒とした。参考例6の上流側領域Bの理想滞留時間は、参考例2の上流側領域Bの理想滞留時間の0.72倍である。換言すると、参考例2の上流側領域Bの理想滞留時間T2に対する参考例6の上流側領域Bの理想滞留時間T6の比率(T6/T2)は、0.72である。
【0072】
(参考例7)
図9及び図10に示すように、参考例7の脱気システム21は、筐体23の内径を1645mmとし、脱気ユニット22の外径D1を163mmとし、複数の脱気ユニット22から筐体23の内周面までの距離D2を200mmとした。距離D2は、脱気ユニット22の外径D1の約1.23倍である。換言すると、脱気ユニット22の外径D1に対する距離D2の比率(D2/D1)は、約1.23となる。また、筐体23の入口3aの直径を350mmとし、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て、1列目の脱気ユニット22Aの全てが入口3aと重なり、2列目の脱気ユニット22Bの一部が入口3aと重なり、3列目の脱気ユニット22C及び4列目の脱気ユニット22Dが全く入口3aと重ならないようにした。また、脱気システム21に供給する液体の総流量を663m/hとし、筐体23の上流側領域Bにおける液体の理想滞留時間を8.3秒とした。参考例7の上流側領域Bの理想滞留時間は、参考例2の上流側領域Bの理想滞留時間の1.77倍である。換言すると、参考例2の上流側領域Bの理想滞留時間T2に対する参考例7の上流側領域Bの理想滞留時間T7の比率(T7/T2)は、1.77である。
【0073】
(参考例8)
図9及び図10に示すように、参考例8の脱気システム21は、筐体23の内径を1645mmとし、脱気ユニット22の外径D1を163mmとし、複数の脱気ユニット22から筐体23の内周面までの距離D2を200mmとした。距離D2は、脱気ユニット22の外径D1の約1.23倍である。換言すると、脱気ユニット22の外径D1に対する距離D2の比率(D2/D1)は、約1.23となる。また、筐体23の入口3aの直径を350mmとし、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て、1列目の脱気ユニット22Aの全てが入口3aと重なり、2列目の脱気ユニット22Bの一部が入口3aと重なり、3列目の脱気ユニット22C及び4列目の脱気ユニット22Dが全く入口3aと重ならないようにした。また、脱気システム21に供給する液体の総流量を663m/hとし、筐体23の上流側領域Bにおける液体の理想滞留時間を11.5秒とした。参考例8の上流側領域Bの理想滞留時間は、参考例2の上流側領域Bの理想滞留時間の2.45倍である。換言すると、参考例2の上流側領域Bの理想滞留時間T2に対する参考例8の上流側領域Bの理想滞留時間T8の比率(T8/T2)は、2.45である。
【0074】
(解析結果及び考察)
参考例1〜8における各列の脱気ユニット22の流量を図11に示す。なお、2列目の脱気ユニット22Bの流量、3列目の脱気ユニット22Cの流量、及び4列目の脱気ユニット22Dの流量は、各列に配置される全ての脱気ユニット22の流量の平均値とした。
【0075】
(考察1)
図12は、参考例1〜4において、各列の脱気ユニット22の流量と、脱気ユニット22の外径D1に対する距離D2の比率(D2/D1)と、の関係を示したグラフである。図12に示すように、全体的には、筐体23の中心軸線に近づくほど脱気ユニット22の流量が大きくなり、筐体23の中心軸線から離れるほど脱気ユニット22の流量が小さくなる傾向がある。
【0076】
このため、筐体23の中心軸線に近づくほど脱気ユニット22を流れる液体の圧力損失が大きくなるようにすることで、各脱気ユニット22を流れる液体の流量の乖離を低減することができると推察される。
【0077】
一方で、参考例3及び4では、3列目の脱気ユニット22Cの流量と4列目の脱気ユニット22Dの流量との大小関係が反転している。つまり、参考例3及び4では、3列目の脱気ユニット22Cの流量よりも4列目の脱気ユニット22Dの流量の方が大きくなっている。参考例1〜4における各列の脱気ユニット22の流量を結んだ線を見ると、脱気ユニット22の外径D1に対する距離D2の比率(D2/D1)が0.7を境に、3列目の脱気ユニット22Cの流量と4列目の脱気ユニット22Dの流量との大小関係が反転していることが分かる。
【0078】
この結果から、筐体23の中心軸線から離れるほど、脱気ユニット22に流れる液体の流量が少なくなる傾向にあるが、筐体23の内周面から中心軸線側に脱気ユニット22の外径D1の0.7倍又は0.5倍に相当する位置までの外側領域においては、上記の傾向が反転するとの知見が得られた。つまり、外側領域では、内側領域よりも脱気ユニット22に流れる液体の流量が多くなる傾向にあるとの知見が得られた。また、外側領域においては、筐体23の中心軸線から離れるほど(筐体23の内周面に近づくほど)、脱気ユニット22に流れる液体の流量が多くなる傾向にあるとの知見が得られた。これは、外側領域においては、筐体23内を流れる液体が筐体23の内周面に押し戻されることにより、脱気ユニット22を流れる液体の流量が増加したものと推察される。
【0079】
このため、外側領域16に配置される脱気ユニット2では、内側領域17に配置される脱気ユニット2のうち最も外側領域16に近い脱気ユニット2よりも液体の圧力損失が大きくなるようにすることで、各脱気ユニット22を流れる液体の流量の乖離を低減することができると推察される。また、外側領域においては、筐体23の中心軸線から離れるほど脱気ユニット22を流れる液体の圧力損失が大きくなるようにすることで、各脱気ユニット22を流れる液体の流量の乖離を低減することができると推察される。
【0080】
(考察2)
図13は、参考例2及び5において、各列と脱気ユニット22の流量との関係を示したグラフである。図10に示すように、参考例2と参考例5とでは、筐体23の中心軸線に沿う方向から見た、脱気ユニット22と入口3aとの重なり具合が異なる。しかしながら、図13に示すように、参考例2及び参考例5の何れも、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て入口3aと重なる脱気ユニット22は、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て入口3aと重ならない脱気ユニット22よりも、流量が大きくなるという傾向は変わらない。
【0081】
この結果から、筐体23の中心軸線に沿う方向から見た、脱気ユニット22と入口3aとの重なり具合の違いによらず、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て入口3aと重なる脱気ユニット22は、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て入口3aと重ならない脱気ユニット22よりも、流量が大きくなるとの知見が得られた。
【0082】
このため、筐体23の中心軸線に沿う方向から見た脱気ユニット22と入口3aとの重なり具合の違いによらず、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て入口3aと重なる脱気ユニット22は、筐体23の中心軸線に沿う方向から見て入口3aと重ならない脱気ユニット22よりも、液体の圧力損失が大きくなるようにすることで、各脱気ユニット22を流れる液体の流量の乖離を低減することができると推察される。
【0083】
(考察3)
図14は、参考例6〜8において、各列の脱気ユニット22の流量と、筐体23の上流側領域Bの理想滞留時間と、の関係を示したグラフである。図14に示すように、参考例6〜8においては、筐体23の上流側領域Bの理想滞留時間が異なる。しかしながら、参考例6〜8の何れも、筐体23の中心軸線に近づくほど、脱気ユニット22に流れる液体の流量が大きくなる傾向は変わらない。
【0084】
この結果から、筐体23の上流側領域Bの理想滞留時間の違いによらず、筐体23の中心軸線に近づくほど、脱気ユニット22に流れる液体の流量が大きくなりとの知見が得られた。
【0085】
このため、筐体23の上流側領域Bの理想滞留時間の違いによらず、筐体23の中心軸線に近づくほど、脱気ユニット22に流れる液体の圧力損失を大きくすることで、各脱気ユニット22を流れる液体の流量の乖離を低減することができると推察される。
【0086】
[各脱気ユニットの圧力損失]
上記の参考例の解析結果及び考察に鑑み、本実施形態では、複数の脱気ユニット2を、筐体3の中心軸線Lからの距離応じて液体の圧力損失が異なるように構成することで、各脱気ユニット22を流れる液体の流量の乖離を低減して、脱気システム1全体の脱気性能を向上させるものとした。
【0087】
具体的に説明すると、複数の脱気ユニット2のうち、中心軸線Lに沿う方向から見て入口3aと重なる脱気ユニット2は、中心軸線Lに沿う方向から見て入口3aと重ならない脱気ユニット2よりも、液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい(参考例2,5、及び図13参照)。なお、本明細書において、圧力損失は、脱気ユニット2を流れる液体の圧力損失をいう。
【0088】
ここで、図15に示すように、筐体3の内周面3cから中心軸線L側に所定距離Dとなる位置までの領域を外側領域16とし、外側領域16の内側の領域を内側領域17とする。この所定距離Dは、複数の脱気ユニット2の圧力損失が同じである場合に、脱気ユニット2の流量の大小関係が反転する距離である。この所定距離としては、上記の考察1から、脱気ユニット2の外径D1の0.7倍としてもよく、脱気ユニット2の外径D1の0.5倍としてもよい。
【0089】
この場合、複数の脱気ユニット2は、内側領域17において、任意の一つの脱気ユニット2である内側脱気ユニットと、内側脱気ユニットよりも中心軸線Lから遠い脱気ユニット2である外側脱気ユニットと、を有し、内側脱気ユニットは、外側脱気ユニットよりも、液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい(参考例1〜4、及び図12参照)。例えば、全ての脱気モジュールが内側領域17に配置されており、1列目の脱気ユニット2Aを内側脱気モジュールとした場合、2列目の脱気ユニット2B、3列目の脱気ユニット2C、及び4列目の脱気ユニット2Dの何れか一つが、外側脱気モジュールとなる。内側領域17においては、複数の脱気ユニット2のうち、何れか2つの脱気ユニット2の圧力損失が上記の関係を満たしていれば良い。例えば、筐体3の半径方向に隣り合う脱気ユニット2の圧力損失が同じ(実質的に同じ)であってもよい。圧力損失が同じとは、製造誤差等により当該圧力損失が例えば30%程度異なる場合も含むという意味である。
【0090】
また、全ての脱気ユニット2が内側領域17に配置されている場合、複数の脱気ユニット2は、中心軸線Lに近づくほど液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい。
【0091】
一方、少なくとも一つの脱気ユニット2が外側領域16に配置されており、残りの脱気ユニット2が、内側領域17に配置されている場合、内側領域17に配置される脱気ユニット2は、中心軸線Lに近づくほど液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい。この場合、外側領域16に配置される脱気ユニット2は、内側領域17に配置される脱気ユニット2のうち最も外側領域16に近い脱気ユニット2よりも、液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい。また、外側領域16に配置される脱気ユニット2は、筐体23の中心軸線Lから離れるほど液体の圧力損失が大きくなるように構成されていてもよい。
【0092】
脱気ユニット2を流れる液体の圧力損失は、例えば、供給口6a(図3及び図4参照)の液体の圧力と脱気ユニット2の排出口13a(図3及び図4参照)の液体の圧力とを圧力計などによって計測し、その差分を計算することにより求めることができる。
【0093】
ここで、各脱気ユニット2における液体の圧力損失は、例えば、[1]液体供給路10(連結供給管6)における液体の圧力損失と、[2]連結供給管6の開口6bにおける液体の圧力損失と、[3]モジュール内管11の内管開口11aにおける液体の圧力損失と、[4]中空糸膜束12における液体の圧力損失と、[5]モジュール容器13の排出口13aにおける液体の圧力損失と、の総和となる。このため、例えば、これらの一部又は全てを調整することで、つまり、これらの少なくとも一つを調整することで、各脱気ユニット2における液体の圧力損失を調整することができる。
【0094】
[1]例えば、連結供給管6の内径を小さくすることで、液体供給路10における液体の圧力損失を大きくすることができる。この場合、例えば、連結供給管6として、上流側から下流側に向けて内径がテーパ状に狭くなるもの、又は、上流側から下流側に向けて内径が段階的に狭くなるものを用いることで、連結供給管6の内径を小さくしてもよい。
【0095】
[2]例えば、連結供給管6の開口6bの総面積を小さくすること、連結供給管6の開口6bの数を少なくすること、又は、連結供給管6の開口6bの大きさを小さくすることで、連結供給管6の開口6bにおける液体の圧力損失を大きくすることができる。
【0096】
[3]例えば、脱気モジュール5の内管開口11aの総面積を小さくすること、脱気モジュール5の内管開口11aの数を少なくすること、又は、脱気モジュール5の内管開口11aの大きさを小さくすることで、モジュール内管11の内管開口11aにおける液体の圧力損失を大きくすることができる。
【0097】
[4]例えば、脱気モジュール5における複数本の中空糸膜14の密度を高くすることで、中空糸膜束12の液体の圧力損失を大きくすることができる。詳しく説明すると、複数本の中空糸膜14の密度を高くすると、複数本の中空糸膜14の間の隙間が狭められて、中空糸膜束12に対する液体の通過抵抗が大きくなる。これにより、中空糸膜束12の液体の圧力損失が大きくなる。
【0098】
また、例えば、脱気モジュール5における中空糸膜束12の厚さを厚くすることで、中空糸膜束12の液体の圧力損失を大きくすることができる。詳しく説明すると、中空糸膜束12の厚さを厚くすると、中空糸膜束12に対する液体の通過抵抗が大きくなる。これにより、中空糸膜束12の液体の圧力損失が大きくなる。
【0099】
また、中空糸膜束12が、緯糸である複数本の中空糸膜14を縦糸で織った織物が、モジュール内管11(液体供給路10の周囲)に巻かれてなる場合、例えば、脱気モジュール5における織物の巻き圧を高くすることで、中空糸膜束12の液体の圧力損失を大きくすることができる。詳しく説明すると、巻物の巻き圧を高くすると、複数本の中空糸膜14の間の隙間が狭められて、中空糸膜束12に対する液体の通過抵抗が大きくなる。これにより、中空糸膜束12の液体の圧力損失が大きくなる。この場合、織物は、複数本の中空糸膜14がモジュール内管11(液体供給路10)の軸線方向に延びるように、モジュール内管11(液体供給路10の周囲)に巻かれてもよい。
【0100】
同様に、中空糸膜束12が、緯糸である複数本の中空糸膜14を縦糸で織った織物が、複数本の中空糸膜14がモジュール内管11(液体供給路10)の軸線方向に延びるようにモジュール内管11(液体供給路10の周囲)に巻かれてなる場合、例えば、脱気モジュール5における縦糸のピッチを長くすることで、中空糸膜束12の液体の圧力損失を大きくすることができる。詳しく説明すると、織物をモジュール内管11に巻くと、内周側の隣り合う中空糸膜14の間に、外周側の中空糸膜14が入り込もうとする。この場合、脱気モジュール5における縦糸のピッチが短いと、外周側の中空糸膜14は、内周側の縦糸によって支持される間隔が狭くなるため、内周側の隣り合う中空糸膜14の間に入り込みにくくなる。その結果、中空糸膜14の密度が低くなる。これにより、中空糸膜束12の液体の圧力損失が小さくなる。一方、脱気モジュール5における縦糸のピッチが長いと、外周側の中空糸膜14は、内周側の縦糸によって支持される間隔が長くなるため、内周側の隣り合う中空糸膜14の間に入り込みやすくなる。その結果、中空糸膜14の密度が高くなる。これにより、中空糸膜束12の液体の圧力損失が大きくなる。
【0101】
また、例えば、脱気モジュール5における中空糸膜14の外径を大きくすることで、中空糸膜束12の液体の圧力損失を大きくすることができる。詳しく説明すると、例えば、中空糸膜14の数が同じである場合、中空糸膜14の外径を大きくすると、中空糸膜14間の隙間が狭められて、中空糸膜束12に対する液体の通過抵抗が大きくなる。これにより、中空糸膜束12の液体の圧力損失が大きくなる。
【0102】
また、例えば、脱気モジュール5における中空糸膜14の親水性を高くすることで、中空糸膜束12の液体の圧力損失を大きくすることができる。詳しく説明すると、中空糸膜14の親水性が高くなると、中空糸膜14に対する液体の接触抵抗が大きくなる。これにより、中空糸膜束12の液体の圧力損失が大きくなる。
【0103】
[5]例えば、脱気モジュール5の排出口13aの総面積を小さくすること、脱気モジュール5の排出口13aの数を少なくすること、又は、脱気モジュール5の排出口13aの大きさを小さくすることで、モジュール容器13の排出口13aにおける液体の圧力損失を大きくすることができる。
【0104】
以上説明したように、本実施形態に係る脱気システム1では、円筒状の筐体3に複数の脱気ユニット2が並列に収容されている。ここで、複数の脱気ユニット2を流れる液体の圧力損失が同じである場合、筐体3の中心軸線Lからの距離に応じて、脱気ユニット2に流れる液体の流量が異なる。しかしながら、この脱気システム1では、複数の脱気ユニット2が、筐体3の中心軸線Lからの距離応じて液体の圧力損失が異なるように構成されている。この圧力損失の差が上記の流量の差を相殺するように働く。これにより、複数の脱気ユニット2を流れる液体の流量の乖離を低減することができる。その結果、例えば、脱気システム1全体における脱気性能を向上させることができる。
【0105】
また、吸引管4を備えることで、脱気ユニット2において液体を適切に脱気することができると共に、脱気した気体を筐体3外部に適切に排出することができる。
【0106】
中心軸線Lに沿う方向から見て入口3aと重なる脱気ユニット2は、中心軸線Lに沿う方向から見て入口3aと重ならない脱気ユニット2よりも、入口3aからの液体の供給圧力を強く受けるため、液体が流れ込みやすくなる。そこで、中心軸線Lに沿う方向から見て入口3aと重なる脱気ユニット2が中心軸線Lに沿う方向から見て入口3aと重ならない脱気ユニット2よりも液体の圧力損失が大きくなるように構成されることで、この圧力損失の差が液体の供給圧力の差を相殺するように働く。これにより、これらの脱気ユニット2を流れる液体の流量の乖離を低減することができる。
【0107】
ところで、上述したように、複数の脱気ユニット2を流れる液体の圧力損失が同じである場合、筐体3の中心軸線Lから離れるほど、脱気ユニット2に流れる液体の流量が少なくなる傾向にある。しかしながら、筐体3の内周面から中心軸線側に所定距離Dとなる位置までの外側領域においては、上記の傾向が反転する。
【0108】
そこで、内側脱気ユニットが外側脱気ユニットよりも液体の圧力損失が大きくなるように構成されることで、この圧力損失の差が上記の流量の差を相殺するように働く。これにより、内側脱気ユニットと外側脱気ユニットとを流れる液体の流量の乖離を低減することができる。
【0109】
また、全ての脱気ユニット2が内側領域17に配置されている場合に、複数の脱気ユニット2が中心軸線Lに近づくほど液体の圧力損失が大きくなるように構成されることで、複数の脱気ユニット2を流れる液体の流量の乖離を適切に低減することができる。
【0110】
一方、少なくとも一つの脱気ユニット2が外側領域16に配置されており、残りの脱気ユニット2が内側領域17に配置されている場合に、内側領域17に配置される脱気ユニット2が中心軸線Lに近づくほど液体の圧力損失が大きくなるように構成されることで、内側領域17において、脱気ユニット2を流れる液体の流量の乖離を適切に低減することができる。
【0111】
この場合、外側領域16に配置される脱気ユニット2が、内側領域17に配置される脱気ユニット2のうち最も外側領域16に近い脱気ユニット2よりも、液体の圧力損失が大きくなるように構成されることで、内側領域17に配置される脱気ユニット2と外側領域16に配置される脱気ユニット2との間においても、液体の流量の乖離を適切に低減することができる。
【0112】
[脱気システムの製造方法]
次に、脱気システム1の製造方法について説明する。
【0113】
図3に示す脱気ユニット2Aのように、一つの脱気ユニット2が複数の脱気モジュール5で構成されている場合、まず、複数の脱気モジュール5と、連結供給管6と、を用意する。次に、連結供給管6を複数の脱気モジュール5の液体供給路10に挿入する。そして、連結供給管6により複数の脱気モジュール5の液体供給路10を直列に接続する。また、複数の脱気モジュール5の中空糸膜束12に液体が並列に供給されるように、連結供給管6の複数の開口6bを複数の脱気モジュール5に対応する位置に配置する。これにより、一つの脱気ユニット2ができる。なお、図4に示す脱気ユニット2Bのように、一つの脱気ユニット2が一つの脱気モジュール5により構成されている場合は、このような手順は不要である。
【0114】
複数の脱気ユニット2と、複数の脱気ユニット2を収容し、外部から液体が供給される入口3aと、外部に液体を排出する出口3bと、を有する筐体3と、吸引管4と、を用意する。次に、複数の脱気ユニット2を介して筐体3の内部空間を入口3a側の上流側領域Bと出口3b側の下流側領域Cとに分ける筐体封止部7により、複数の脱気ユニット2を筐体3に固定する。また、吸引管4が筐体3を貫通して中空糸膜14の内側が開放された脱気モジュール5の両端に接続されるように、吸引管4を設置する。そして、筐体3の中心軸線Lからの距離応じて複数の脱気ユニット2の液体の圧力損失を異ならせる。このような液体の圧力損失の設定は、上述した様々な手法により行うことができる。
【0115】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、脱気ユニットの構成について具体的に説明したが、脱気ユニットとしては、様々な構成のものを用いることができる。また、上記実施形態では、各脱気モジュールがモジュール内管を備えるものとして説明したが、このようなモジュール内管を備えなくてもよい。この場合、例えば、各脱気モジュールの中空糸膜束(織物)が、連結供給管に直接的に巻き付けられる。
【0116】
また、本発明の脱気システムの使用方法及び利用方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、ジェット・ボーリング法、インサイチュリーチング法(ISL)、水攻法などの天然資源を産生するための技術分野に用いることができる。具体的には、次のような天然資源の産生方法に用いてもよい。すなわち、この天然資源の産生方法は、本発明の脱気システムにおいて、入口から複数の脱気ユニットに液体を供給するとともに、複数の脱気モジュールのそれぞれの複数本の中空糸膜の内側を減圧することで、液体を脱気する工程と、脱気工程で脱気された液体を天然資源の採掘現場に圧入する圧入工程と、を備える。ここで、天然資源としては、例えば、銅、ウラン等の金属鉱物や、原油、天然ガス、シェールオイル、シェールガス等の燃料鉱物が挙げられる。液体としては、例えば、水が挙げられる。なお、天然資源が燃料鉱物である場合は、液体としては、例えば、海水、随伴水、フラクチャリング流体が挙げられる。随伴水は、天然資源を産生する際に生成される水である。本発明に使用する脱気ユニットは、あらかじめ、複数の脱気モジュールを連結して製造してから使用場所に移送することもできるし、また、個々に搬送した脱気モジュールを本発明の脱気システムの使用場所で連結して製造することもできる。万が一、いずれかの脱気モジュール又は脱気ユニットに不具合が生じた場合には、該当する脱気モジュール又は脱気ユニットのみを交換すればよく、製造する際の移送時の取り扱い性や、使用中のメンテンナンス性に優れる。このため、例えば、天然資源の採掘現場での使用にも好適である。
【符号の説明】
【0117】
1…脱気システム、2,2A,2B,2C,2D…脱気ユニット、3…筐体、3a…入口、3b…出口、3c…内周面、4…吸引管、5,5A,5B,5C,5D…脱気モジュール、6,6A,6B…連結供給管、6a…供給口、6b…開口、7…筐体封止部(封止部)、8…脱気ユニット支持部、10…液体供給路、11…モジュール内管、11a…内管開口、12…中空糸膜束、12a…端部、13…モジュール容器(筒体)、13a…排出口、14…中空糸膜、15…封止部、16…外側領域、17…内側領域、21…脱気システム、22,22A,22B,22C,22D…脱気ユニット、23…筐体、A…脱気領域、B…上流側領域、C…下流側領域、L…中心軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15