(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記構成単位aと前記構成単位bとの合計が、50モル%以上100モル%以下である、請求項1に記載の汚泥脱水剤。
架橋剤を含有し、前記カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記架橋剤の添加量が、0.001モル%以上1モル%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の汚泥脱水剤。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の汚泥脱水剤、及び前記汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水方法を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの双方又はいずれか一方を意味する。「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリロイル」との表記についても同様である。
【0011】
[汚泥脱水剤]
本発明の汚泥脱水剤は、構成単位aと、構成単位bと、を有するカチオン性ポリマーを含有する。
【0012】
≪カチオン性ポリマー≫
本明細書において、「カチオン性ポリマー」とは、ポリマーを構成する単量体単位(モノマーユニット)の合計100モル%に対して、カチオン性単量体単位と非イオン性単量体単位とのモル量の合計が92モル%以上のポリマーをいう。カチオン性ポリマーにおいて、ポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、カチオン性単量体単位のモル量は、50モル%以上が好ましい。カチオン性ポリマーにおいて、ポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、カチオン性単量体単位と非イオン性単量体単位とのモル量の合計は、92モル%以上であり、95モル%以上が好ましく、97モル%以上がより好ましく、100モル%であってもよい。カチオン性単量体単位と非イオン性単量体単位とのモル量の合計が上記下限値以上であると、負に帯電した汚泥粒子に対する荷電中和力が高く、ポリマーが汚泥粒子を強固に吸着するため、脱水性能をより高めやすい。
また、カチオン性ポリマーにおいては、ポリマーを構成する単量体単位の合計100モル%に対して、アニオン性単量体単位のモル量は8モル%以下であり、5モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、0モル%であってもよい。アニオン性単量体単位のモル量が上記上限値以下であると、脱水性能をより高めやすい。
なお、本明細書において、カチオン性ポリマーの重合時の単量体の配合組成比を、カチオン性ポリマーの構成単位の組成比とみなす。
【0013】
本実施形態のカチオン性ポリマーは、1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃における固有粘度が0.5〜4.5dL/gである。カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃における固有粘度は、1.0〜4.0dL/gが好ましく、1.5〜3.5dL/gがより好ましい。カチオン性ポリマーの1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃における固有粘度が上記数値範囲内であると、汚泥脱水剤の濾水性を高め、脱水性能をより高めやすい。
【0014】
固有粘度は、ポリマー鎖の広がりや収縮の程度の指標となるポリマー物性である。固有粘度は、分子量の指標ともなり、ポリマーの分子量が大きいほど、固有粘度が高い傾向にある。ただし、固有粘度は、ポリマーを構成する単量体単位である単量体の構造や重合条件等による影響も受けるため、常に分子量と直接的な相関関係を示すものではない。
【0015】
固有粘度は[η]で表され、下記式(I)に示すハギンス(Huggins)の式を用いて算出された値とする。
η
SP/C=[η]+k’[η]2C ・・・(I)
式(I)中、η
SP:比粘度(=η
rel−1)、k’:Huggins定数、C:ポリマー溶液濃度、η
rel:相対粘度を表す。
Huggins定数k’は、ポリマーの種類や溶媒の種類によって定まる定数である。Huggins定数k’は、縦軸をη
SP/C、横軸をCとしたグラフにプロットした際の傾きとして求めることができる。具体的には、異なる濃度のカチオン性ポリマーの溶液を調製し、各濃度の溶液に対して比粘度η
SPを求めて、η
SP/C対Cの関係をプロットし、Cを0に外挿した切片の値が固有粘度[η]である。
比粘度η
SPは、後述の実施例に示すような方法により求められる。
【0016】
<カチオン性単量体>
本実施形態のカチオン性ポリマーは、構成単位aと、構成単位bと、を有するポリマーである。
構成単位a及び構成単位bは、カチオン性単量体から誘導される構成単位である。本明細書において、「カチオン性単量体」とは、カチオン性の官能基を有し、かつ、アニオン性の官能基を有さない、カチオン性の単量体をいう。カチオン性の官能基としては、例えば、アミノ基等の官能基が挙げられる。
なお、単量体内においてカチオン性を示さない官能基は、カチオン性の官能基には該当しない。例えば、後述する非イオン性単量体であるアクリルアミドに関して、アミド基に含まれるアミノ基は、カチオン性を示さないため、カチオン性の官能基には該当しない。
【0017】
(構成単位a)
構成単位aは、下記式(a1)で表される第一級アミン塩から誘導された構成単位である。すなわち、構成単位aは、下記式(a2)で表される単量体単位である。
【0020】
式(a1)及び式(a2)中、R
1は、水素原子又はメチル基であり、好ましくは、メチル基である。
Aは、酸素原子又は−NR
9−であり、R
9は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくは、酸素原子である。Bは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、好ましくは、エチレン基である。
X
−は、陰イオンであり、好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、1/2(SO
42−)、HSO
4−又はCH
3SO
4−である。なお、X
−が1/2(SO
42−)の場合、式(a1)における陽イオン部分2つが、又は式(a1)における陽イオン部分1つと式(b1)における陽イオン部分1つとが、2価の陰イオンである(SO
42−)と結合して2量体(ダイマー)を形成する。
【0021】
式(a1)で表される化合物としては、例えば、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノエチルメタクリレート、3−アミノプロピルアクリレート、3−アミノプロピルメタクリレート等の無機酸や有機酸の塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
式(a1)で表される化合物としては、重合性や汚泥脱水性能等の観点から、2−アミノエチルアクリレートの無機酸の塩、2−アミノエチルメタクリレートの無機酸の塩が好ましく、2−アミノエチルアクリレート塩酸塩、2−アミノエチルアクリレート硫酸塩、2−アミノエチルメタクリレート塩酸塩、2−アミノエチルメタクリレート硫酸塩がより好ましく、2−アミノエチルメタクリレート塩酸塩がさらに好ましい。
【0022】
カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、構成単位aは、10モル%以上100モル%未満が好ましく、10モル%以上80モル%以下がより好ましく、10モル%以上50モル%以下がさらに好ましい。構成単位aが上記数値範囲内であると、汚泥脱水剤の脱水性能をより高めやすい。
【0023】
(構成単位b)
本実施形態のカチオン性ポリマーは、構成単位bを有することが好ましい。カチオン性ポリマーは、構成単位bを有することで、汚泥脱水剤の脱水性能をより高めやすい。
構成単位bは、下記式(b1)で表される第四級アンモニウム塩から誘導された構成単位である。すなわち、構成単位bは、下記式(b2)で表される単量体単位である。
【0026】
式(b1)及び式(b2)中、R
1は、水素原子又はメチル基である。R
2及びR
4は、それぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基である。R
3は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又はベンジル基であり、好ましくは、炭素数1〜3のアルキル基である。
Aは、酸素原子又は−NR
9−であり、R
9は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、好ましくは、酸素原子である。Bは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、好ましくは、エチレン基である。
X
−は、陰イオンであり、好ましくは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、1/2(SO
42−)、HSO
4−又はCH
3SO
4−である。なお、X
−が1/2(SO
42−)の場合、式(b1)における陽イオン部分2つが、又は式(b1)における陽イオン部分1つと式(a1)における陽イオン部分1つとが、2価の陰イオンである(SO
42−)と結合して2量体(ダイマー)を形成する。
【0027】
式(b1)で表される化合物としては、例えば、2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(アクリロイルオキシ)エチルジメチルアミンの塩、2−(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルアミンの塩、2−(アクリロイルオキシ)エチルジメチルベンジルアンモニウム塩、2−(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
式(b1)で表される化合物としては、重合性や汚泥脱水性能等の観点から、2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩が好ましく、2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩酸塩、2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム硫酸塩、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩酸塩、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム硫酸塩がより好ましく、2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩酸塩、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウム塩酸塩がさらに好ましい。
【0028】
カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、構成単位bは、0モル%超60モル%以下が好ましく、10モル%以上60モル%以下がより好ましく、20モル%以上60モル%以下がさらに好ましく、20モル%以上55モル%以下がさらに好ましい。構成単位bが上記数値範囲内であると、汚泥脱水剤の脱水性能をより高めやすい。
【0029】
カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、構成単位aと構成単位bとの合計は、50モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましい。構成単位aと構成単位bとの合計が上記下限値以上であると、汚泥脱水剤の脱水性能をより高めやすい。構成単位aと構成単位bとの合計の上限値は、例えば、90モル%が好ましい。
なお、構成単位aと構成単位bとの合計は、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、100モル%以下であるものとする。
【0030】
<非イオン性単量体>
(構成単位c)
本実施形態のカチオン性ポリマーは、非イオン性単量体から誘導された構成単位cを有していてもよい。カチオン性ポリマーは、構成単位cを有することで、汚泥脱水剤の脱水性能をより高めやすい。本明細書において、「非イオン性単量体」とは、カチオン性の官能基及びアニオン性の官能基を有さない、電気的に中性(非イオン性)の単量体をいう。
非イオン性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド類;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル系化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非イオン性単量体の中でも、水溶性に優れ、カチオン性ポリマー中の単量体組成比の調整が容易であり、良好な汚泥脱水性能が得られやすいこと等から、アミド類が好ましく、(メタ)アクリルアミドがより好ましく、アクリルアミドがさらに好ましい。
【0031】
カチオン性ポリマーが構成単位cを有する場合、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、構成単位cは、0モル%超50モル%以下が好ましく、1モル%以上50モル%以下がより好ましく、5モル%以上50モル%以下がさらに好ましく、10モル%以上40モル%以下が特に好ましい。構成単位cが上記数値範囲内であると、汚泥脱水剤の脱水性能をより高めやすい。
【0032】
カチオン性ポリマーが構成単位cを有する場合、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、構成単位aと構成単位bと構成単位cとの合計は、92モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、97モル%以上がさらに好ましく、100モル%であってもよい。構成単位aと構成単位bと構成単位cとの合計が上記下限値以上であると、汚泥脱水剤の脱水性能をより高めやすい。
なお、構成単位aと構成単位bと構成単位cとの合計は、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、100モル%以下であるものとする。
【0033】
<アニオン性単量体>
本実施形態のカチオン性ポリマーは、アニオン性単量体から誘導された構成単位を有していてもよい。本明細書において、「アニオン性単量体」とは、アニオン性の官能基を有し、かつ、カチオン性の官能基を有さない、アニオン性の単量体をいう。アニオン性の官能基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。
なお、単量体内においてアニオン性を示さない官能基は、アニオン性の官能基には該当しない。
アニオン性単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
本実施形態のカチオン性ポリマーにおいて、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%中、アニオン性単量体から誘導された構成単位は8モル%以下であり、5モル%以下が好ましく、3モル%以下がより好ましく、0モル%であってもよい。アニオン性単量体から誘導された構成単位が上記上限値以上であると、荷電中和力が落ち、脱水性能が低下しやすい。
なお、カチオン性単量体から誘導される構成単位と非イオン性単量体から誘導される構成単位とアニオン性単量体から誘導される構成単位との合計は、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%に対して、100モル%以下であるものとする。
【0035】
<その他の単量体>
本実施形態のカチオン性ポリマーは、式(a1)及び式(b1)で表される化合物以外の他のカチオン性単量体から誘導された構成単位を有していてもよい。他のカチオン性単量体から誘導された構成単位としては、例えば、第二級アミン塩から誘導された構成単位、第三級アミン塩から誘導された構成単位等が挙げられる。
【0036】
本実施形態のカチオン性ポリマーは、カチオン性単量体単位の架橋重合体、又は、カチオン性単量体単位と非イオン性単量体単位との架橋共重合体であることが好ましい。また、前記架橋共重合体においては、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体単位の合計100モル%中、カチオン性単量体から誘導された構成単位の総量が60モル%以上であることが好ましく、70〜95モル%がより好ましく、75〜90モル%がさらに好ましい。
このようなカチオン性単量体から誘導された構成単位を有する架橋重合体であると、1モル/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃における固有粘度が0.5〜4.5dL/gであるカチオン性ポリマーが得られやすい。
このようなカチオン性ポリマーは、架橋していることにより収縮しにくくなり、濾水性がよく、脱水ケーキの含水率をより低下できる。加えて、第一級アミン塩から誘導された構成単位aを有することで、汚泥物質との吸着力がより高められるものと考えられる。
【0037】
汚泥脱水剤に含まれるカチオン性ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、2種のポリマーである場合は、各ポリマーを混合した1剤型としてもよく、あるいはまた、各ポリマーを別個の液剤等とし、使用時に併用する2剤型としてもよい。
【0038】
汚泥脱水剤に含まれるカチオン性ポリマーの含有量は、汚泥脱水剤100質量%に対して、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。汚泥脱水剤に含まれるカチオン性ポリマーの含有量が上記下限値以上であると、凝集フロックの機械的強度が上がり、脱水ケーキの含水率をより低下しやすい。加えて、汚泥脱水剤に含まれるカチオン性ポリマーの含有量が上記下限値以上であると、汚泥に添加する汚泥脱水剤の添加量を低減できる。汚泥脱水剤に含まれるカチオン性ポリマーの含有量の上限値は特に限定されないが、汚泥脱水剤100質量%に対して、例えば、60質量%、55質量%、又は45質量%であってよい。すなわち、汚泥脱水剤に含まれるカチオン性ポリマーの含有量は、汚泥脱水剤100質量%に対して、30質量%以上60質量%以下が好ましく、35質量%以上60質量%以下がより好ましく、40質量%以上60質量%以下がさらに好ましい。あるいは、汚泥脱水剤に含まれるカチオン性ポリマーの含有量は、汚泥脱水剤100質量%に対して、30質量%以上55質量%以下が好ましく、35質量%以上55質量%以下がより好ましく、40質量%以上55質量%以下がさらに好ましい。あるいは、汚泥脱水剤に含まれるカチオン性ポリマーの含有量は、汚泥脱水剤100質量%に対して、30質量%以上45質量%以下が好ましく、35質量%以上45質量%以下がより好ましく、40質量%以上45質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
汚泥脱水剤は、本発明の効果を損なわない範囲内において、カチオン性ポリマー以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、スルファミン酸、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム等の添加剤や、溶媒等が挙げられる。
添加剤の含有量は、汚泥脱水剤の総質量に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、0質量%が最も好ましい。
また、本発明の汚泥脱水剤は、後述する乳化重合法によって得られるW/Oエマルション型ポリマーの形態であってもよい。
【0040】
[汚泥脱水剤の製造方法]
汚泥脱水剤は、カチオン性ポリマーを上述した溶媒に分散することで得られる。
以下、カチオン性ポリマーの製造方法について説明する。
【0041】
≪カチオン性ポリマーの製造方法≫
カチオン性ポリマーは、その構成単位となる単量体を、重合開始剤、及び架橋剤を用いて重合することにより製造できる。
【0042】
<重合開始剤>
カチオン性ポリマーの重合に用いる重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化ベンゾイル等の有機化酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノバレリン酸、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
重合開始剤の添加量は、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の組成等に応じて、適宜調整できる。重合開始剤の添加量は、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計質量100質量部に対して、0.01〜0.5質量部が好ましい。
【0044】
<架橋剤>
本実施形態のカチオン性ポリマーは、重合の際に、架橋剤を用いて製造される。
架橋剤としては、例えば、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルアミン、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの架橋剤のうち、得られるカチオン性ポリマーの固有粘度を所定の数値範囲内に調整しやすいことから、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートが好ましく、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、トリアリルアミン、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレートがより好ましく、N,N’−メチレンビスアクリルアミドがさらに好ましい。
なお、本実施形態のカチオン性ポリマーの構成単位となる単量体には、架橋剤は含まない。
【0045】
架橋剤の添加量は、カチオン性ポリマーの所望の固有粘度に応じて、適宜調整できる。架橋剤の添加量は、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、0.001〜1モル%が好ましく、0.001〜0.1モル%がより好ましく、0.002〜0.1モル%がさらに好ましい。架橋剤の添加量が上記下限値以上であると、汚泥脱水剤の脱水性能をさらに高めやすい。架橋剤の添加量が上記上限値以下であると、汚泥脱水剤の濾水性をより高めやすい。
【0046】
(重合方法)
重合方法の態様としては、例えば、乳化重合法、水溶液重合法、懸濁重合法等が挙げられる。これらの重合方法のうち、製造容易性や、製造したカチオン性ポリマーの汚泥脱水剤としての取り扱い容易性や汚泥への溶解性等の観点から、カチオン性ポリマーがW/Oエマルション型で得られる乳化重合法が好ましい。
乳化重合法は、公知の方法を用いることができる。乳化重合法は、例えば、油性溶媒と界面活性剤とを含む油相を調製し、その油相中に、カチオン性ポリマーの構成単位となる単量体の水溶液を添加して撹拌混合し、乳化させて重合を行う。重合開始剤は、水溶性の場合は前記単量体の水溶液に混合しておけばよく、また、油溶性の場合は乳化後に添加すればよい。
前記油性溶媒としては、例えば、灯油、軽油等の鉱物油及びこれらの精製品であるノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン油等を使用することができる。また、これらと同等の性状を有する合成油、植物油、動物油又はこれらの混合物を使用することもできる。
前記界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ペンタオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。
【0047】
上記のようにして得られたW/Oエマルション型ポリマーは、水及び所定濃度の硝酸ナトリウム水溶液で希釈して、固有粘度の測定に用いるポリマー溶液試料とすることができる。このように、W/Oエマルション型ポリマーは、重合後のカチオン性ポリマーの精製等の後処理を要しないため、ポリマー製造の操作を簡略化することができる。
なお、W/Oエマルション型ポリマーは、前記油性溶媒を含む状態で得られるが、固有粘度の測定に用いるポリマー溶液試料は、多量の水及び硝酸ナトリウム水溶液で希釈して調製されるため、前記油性溶媒の存在を無視することができる。したがって、W/Oエマルション型ポリマーの固有粘度も、硝酸ナトリウム水溶液を溶媒として測定したカチオン性ポリマーの固有粘度とみなすことができる。
【0048】
製造したカチオン性ポリマーを乾燥や粉砕等の後処理を経て固体状にした後に、固有粘度の測定のために、カチオン性ポリマーを溶解して溶液を調製することは、操作が煩雑となる。加えて、後処理時の加熱や粉砕時のシェアー等によって、カチオン性ポリマーの剛直性が変化し、所望の固有粘度を有するカチオン性ポリマーを安定的に得られない場合もある。このため、汚泥に対して液状で添加使用される汚泥脱水剤の実用上の観点からも、カチオン性ポリマーは、水で希釈することにより、素早く、簡便に、汚泥脱水剤として調製できる、W/Oエマルション型であることが好ましい。
【0049】
[汚泥脱水方法]
本発明の汚泥脱水方法(すなわち、本発明の汚泥脱水剤の使用方法)は、汚泥に、前記汚泥脱水剤を添加して、前記汚泥を脱水する方法である。
汚泥脱水方法の適用対象である汚泥としては、例えば、下水の余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、食品工場や化学工場等の余剰汚泥や凝沈混合汚泥、し尿処理場等の混合汚泥等が挙げられる。
本発明の汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水方法によれば、種々の汚泥について、脱水処理を安定的かつ効率的に行うことができる。
【0050】
例えば、汚泥中の浮遊物質(SS:Suspended Solids)の含有量が0.4〜4.0質量%程度である場合、汚泥脱水剤の添加量は20〜1600mg/Lが好ましく、30〜1200mg/Lがより好ましく、50〜800mg/Lがさらに好ましい。
なお、ここで言うSSの含有量は、下記実施例に記載の分析方法により求められた値である。
【0051】
汚泥への汚泥脱水剤の添加方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、汚泥脱水剤を、前記汚泥脱水剤中のカチオン性ポリマーが所定の濃度となるように水等の溶媒で希釈した後、汚泥に添加することができる。
汚泥脱水剤を添加する際の添加液におけるカチオン性ポリマーの濃度は、汚泥に対してカチオン性ポリマーを均一に分散させる等の観点から、0.01〜1.0質量%が好ましく、0.03〜0.6質量%がより好ましく、0.05〜0.4質量%がさらに好ましい。
【0052】
汚泥脱水剤を添加した汚泥は、例えば、凝集反応槽にて撹拌羽根により、所定の撹拌条件(例えば、180rpmで30秒間等)で撹拌することにより、凝集フロックを形成させることができる。
そして、前記凝集フロックを脱水機で脱水処理し、固液分離することにより、脱水ケーキが得られる。
前記脱水機としては、特に限定されないが、例えば、ベルトプレス濾過機、スクリュープレス脱水機、多重円板型脱水機、遠心脱水機等が挙げられる。
【0053】
前記脱水ケーキは、埋め立て廃棄処分、あるいはまた、園芸用土やセメント原料として再利用される。
前記脱水ケーキは、運搬や処分、再利用加工等において取り扱いやすいものとする観点から、塊状のケーキ形状が崩壊せず、かつ、含水分ができる限り少ないことが好ましい。本発明の汚泥脱水方法によれば、このような取扱い性が良好な脱水ケーキを得ることができる。
【0054】
本発明の汚泥脱水方法は、本発明の汚泥脱水剤を用いることにより、フロック形成力が上がり、重力ろ過性を高められる。このため、種々の汚泥に対して、安定的かつ効率的に脱水処理を行うことができる。
本発明の汚泥脱水方法は、本発明の汚泥脱水剤以外に、本発明のカチオン性ポリマーと異なるポリマーを含む他の汚泥脱水剤を併用してもよい。併用する他の汚泥脱水剤におけるポリマーとしては、例えば、カチオン性官能基を有するポリマー又はアニオン性ポリマーが挙げられる。前記カチオン性官能基を有するポリマーには、カチオン性ポリマーのみならず、両性ポリマーも含まれる。
前記他の汚泥脱水剤も、本発明の汚泥脱水剤の添加と同様の添加方法で添加されることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
カチオン性ポリマーとして各種のポリマーを準備し、それらのポリマーを用いた汚泥脱水剤試料の評価試験を行った。
【0056】
[ポリマーの準備]
下記実施例及び比較例の汚泥脱水剤試料に用いる各種のポリマーを、以下に示す各合成例又は市販品により準備した。
各種のポリマーにおけるそれぞれの構成単量体は、以下のように略称する。
・DAM1:2−アミノエチルメタクリレート塩酸塩;分子量165.6。
・DAA4:2−(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド;分子量193.7。
・DAM4:2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド;分子量207.7。
・AAM:アクリルアミド;分子量71.1。
・AA:アクリル酸;分子量72.1。
【0057】
(合成例1)
撹拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を付した1L4ツ口セパラブルフラスコに、ノルマルパラフィン301g、ペンタオキシエチレンオレイルアルコールエーテル40g、及びソルビタンモノオレート12gを仕込み、撹拌混合し、油相混合物を調製した。
次いで、DAA4の80質量%水溶液を208g、DAM1を162g、AAMを67g、架橋剤としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド(MBA)を0.018g、及び水を210g含有する混合水溶液を前記油相混合物に添加して、ホモジナイザー撹拌により乳化させた。これを、撹拌下、50℃に調整し、窒素ガスを30分間バブリングした。窒素ガス気流下、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩の4質量%トルエン溶液を1.0g加え、45〜55℃で8時間重合させ、W/Oエマルション型ポリマー(ポリマー1)を得た。
【0058】
(合成例2〜9)
合成例1において、合成原料として用いる構成単量体、架橋剤及び重合開始剤を下記表1の各合成例に示すものに変更し、それ以外は合成例1と同様にして、各W/Oエマルション型ポリマー(ポリマー2〜9)を得た。
【0059】
【表1】
【0060】
(ポリマー10〜11)
市販のW/Oエマルション型ポリマーとして、栗田工業株式会社製「クリフィックス(登録商標)」シリーズを用いた。構成単量体の組成は、それぞれ、下記表2に示すとおりである(ポリマー10〜11)。
【0061】
<固有粘度>
各ポリマーについて、以下の(i)〜(v)の手順に従って、固有粘度を求めた。
(i)キャノンフェンスケ粘度計(株式会社草野化学製No.75)5本をガラス器具用中性洗剤に1日以上浸漬後、水で十分洗浄し、乾燥させた。
(ii)W/Oエマルション型ポリマーを水で希釈し、ポリマー濃度0.2質量%の水溶液を調製した。
(iii)(ii)で調製したポリマー濃度0.2質量%の水溶液50mLに2モル/L硝酸ナトリウム水溶液50mLを加え、マグネティックスターラーにて500rpmで20分間撹拌し、ポリマー濃度0.1質量%の1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を得た。これを1モル/L硝酸ナトリウム水溶液で希釈して、0.02、0.04、0.06、0.08、0.1質量%の5段階のポリマー濃度のポリマー溶液試料を調製した。なお、ポリマー未添加の1モル/L硝酸ナトリウム水溶液をブランク液とした。
(iv)温度30℃(±0.02℃内)に調整した恒温水槽内に、(i)で準備した粘度計5本を垂直に取り付けた。各粘度計にホールピペットにてブランク液10mLを入れた後、温度を一定にするために約30分間静置した。その後、スポイト栓を用いて液を吸い上げ、自然落下させて、標線を通過する時間をストップウォッチで1/100秒単位まで測定した。この測定を、各粘度計について5回繰り返し、平均値をブランク値(t
0)とした。
(v)(iii)で調製した5段階のポリマー濃度のポリマー溶液試料各10mLを、ブランク液の測定を行った粘度計5本に入れ、温度を一定にするために約30分間静置した。その後、ブランク液の測定と同様の操作を3回繰り返し、濃度ごとの通過時間の平均値を測定値(t)とした。
ブランク値t
0、測定値t、及びポリマー溶液試料の濃度[質量/体積%](=C[g/dL])から、下記式(II)及び(III)に示す関係式より、相対粘度η
rel、比粘度η
SP及び還元粘度η
SP/C[dL/g]を求めた。
η
rel=t/t
0 ・・・(II)
η
SP=(t−t
0)/t
0=η
rel−1 ・・・(III)
これらの値から、上述したハギンスの式に基づく固有粘度の求め方に従って、各ポリマーの固有粘度[η]を求めた。
【0062】
各ポリマーの固有粘度[η]を下記表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
[汚泥]
汚泥脱水剤試料の評価試験で用いた汚泥の詳細を下記表3に示す。表3に示す汚泥の性状を表す各項目の略称及び分析方法(下水道試験法に準拠)は、以下のとおりである。
【0065】
(1−1)SS(Suspended Solids)
汚泥100mLを秤量した後、3000rpmで10分間遠心分離して上澄み液を除去した。沈殿物を水洗しながら秤量済みのルツボに流し込み、105〜110℃の範囲内の温度で15時間乾燥させた後、秤量し、乾燥後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
乾燥前の汚泥100mLの質量に対する前記残留物の質量の割合を、汚泥100mL中の浮遊物質(SS:Suspended Solids)の含有量[質量%]とした。
【0066】
(1−2)VSS(Volatile Suspended Solids)
前記(1−1)において前記ルツボ内の残留物(SS)の質量を求めた後、前記残留物(SS)がルツボに入った状態で、600±25℃の範囲内の温度で2時間強熱し、放冷後に秤量し、強熱後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
強熱前の前記ルツボ内の残留物(SS)と強熱後の前記ルツボ内の残留物との質量の差分は、汚泥100mL中の揮発性浮遊物質(VSS:Volatile Suspended Solids)の質量である。SSの質量に対する強熱後の前記残留物(VSS)の質量の割合を、VSSの含有率[質量%/SS]として求めた。
【0067】
(1−3)TS(Total Solids)
汚泥100mLを秤量して、秤量済みのルツボに入れ、105〜110℃の範囲内の温度で15時間乾燥させた後、秤量し、乾燥後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
乾燥前の汚泥100mLの質量に対する前記残留物の質量の割合を、汚泥100mL中の蒸発残留物(TS:Total Solids;全固形分)の含有率[質量%]として求めた。
【0068】
(1−4)VTS(Volatile Total Solids)
前記(1−3)において前記ルツボ内の残留物(TS)の質量を求めた後、前記残留物(TS)がルツボに入った状態で、600±25℃の範囲内の温度で2時間強熱し、放冷後に秤量し、強熱後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
強熱前の前記ルツボ内の残留物(TS)と強熱後の前記ルツボ内の残留物との質量の差分は、汚泥100mL中の揮発性浮遊物質(VTS:Volatile Total Solids)の質量である。TSの質量に対する強熱後の前記残留物(VTS)の質量の割合を、VTSの含有率[質量%/TS]として求めた。
【0069】
(1−5)繊維分
汚泥100mLを100メッシュ(目開き149μm)のふるいでろ過し、ふるい上の残留物を水洗しながら秤量済みのルツボに流し込み、105〜110℃の範囲内の温度で15時間乾燥させた後に秤量し、乾燥後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
その後、前記残留物がルツボに入った状態で、600±25℃の範囲内の温度で2時間強熱し、放冷後に秤量し、強熱後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
強熱前の前記ルツボ内の残留物と強熱後の前記ルツボ内の残留物との質量の差分は、汚泥100mL中の粒径約149μm以上の揮発性浮遊物質の質量であり、主に揮発性の繊維分の質量である。SSの質量に対する強熱後の前記残留物(粒径約149μm以上の揮発性浮遊物質)の質量の割合を、繊維分の含有率[質量%/SS]として求めた。
【0070】
(1−6)pH
JIS Z 8802:2011に準拠して、ガラス電極法の操作に基づいて、pHを測定した。なお、pHの校正には、市販のフタル酸塩、中性リン酸塩及び炭酸塩の各pH標準液を用いた。
【0071】
(1−7)電気伝導率
JIS K 0102:2016に準拠して、電気伝導率を測定した。
【0072】
【表3】
【0073】
[汚泥脱水剤試料の評価試験]
上記において準備したポリマーを用いた汚泥脱水剤試料について、各種汚泥に対する汚泥脱水の評価試験を行った。下記の評価方法により、汚泥脱水剤試料の汚泥脱水性能を評価した。
【0074】
(実施例1)
合成例1で得られたW/Oエマルション型ポリマーを水で希釈し、ポリマー濃度0.2質量%の水溶液を調製し、これを汚泥脱水剤試料1(汚泥脱水剤)とした。
汚泥A 200mLを300mLビーカーに採取し、汚泥脱水剤試料1をポリマーの添加濃度400mg/Lとなるように添加し、180rpmで30秒間撹拌して、凝集フロックを形成させ、処理汚泥を得た。
【0075】
(実施例2〜21及び比較例1〜12)
実施例1において、汚泥、汚泥脱水剤及びその添加濃度を下記表4に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、汚泥に汚泥脱水剤を添加し、凝集フロックを形成させ、処理汚泥を得た。
【0076】
<評価方法>
上記実施例及び比較例における処理汚泥について、以下に示す各項目の評価を行った。これらの評価結果を下記表4にまとめて示す。
【0077】
(2−1)フロック径
上記ビーカー内の凝集フロックのうち、前記ビーカーの上方から観察できる任意の約100個を対象として、各凝集フロックの最大径をメジャーで測定し、これらの平均値をフロック径とした。
フロック径は、汚泥脱水剤のフロック形成力の指標である。フロック径が大きいほど、粗大な凝集フロックが形成されたと評価することができ、汚泥脱水剤のフロック形成力が高いと言える。ただし、フロック径が大きすぎる場合、後述するケーキ含水率が高くなる傾向にある。フロック径は4.5mm以上であることが好ましい。
【0078】
(2−2)20秒ろ過量
200mLメスシリンダー上に、ブフナーロート(内径80mm、孔径約1mm)を設置し、次いで、前記ブフナーロートのろ過面の上側に、直径50mmのポリ塩化ビニル製の筒を設置した。処理汚泥を前記筒内に一気に注ぎ、注ぎ始めてから20秒後までのろ液をメスシリンダーで採取し、前記メスシリンダーの目盛から読み取ったろ液の量を、20秒ろ過量とした。
20秒ろ過量は、重力ろ過性の指標である。20秒ろ過量が多いほど、重力ろ過性に優れる凝集フロックが形成されたと評価することができる。ただし、20秒ろ過量が多くても、後述するSSリーク量が多ければ、処理汚泥が良好な状態で脱水処理されているとは言えず、汚泥脱水剤の汚泥脱水性能の評価においては、20秒ろ過量及びSSリーク量を併せて判断する必要がある。すなわち、20秒ろ過量が多く、かつ、SSリーク量が少ない場合に、汚泥脱水剤は、濾水性に優れるといえる。
【0079】
(2−3)SSリーク量
前記(2−2)で20秒ろ過量を測定後、さらに、40秒後に、前記メスシリンダーを別のメスシリンダーに替えて、処理汚泥を注ぎ始めてから60秒後以降に前記ブフナーロートの孔を通過して採取された液の量を、前記別のメスシリンダーの目盛から読み取った。この読み取った液量をSSリーク量とした。
ここで言うSSリーク量とは、処理汚泥中で、粗大な凝集フロックが形成されていない、又は、崩壊した微小なフロック等の浮遊物質(SS)の量の目安となる数値である。
SSリーク量が少ないほど、強固で粗大な凝集フロックが形成されたと評価することができる。
【0080】
(2−4)ケーキ含水率
前記(2−3)でSSリーク量を測定後、前記ブフナーロート上に残った凝集フロックを、ポリ塩化ビニル製カラム(内径30mm、高さ17.5mm)に詰めた。前記カラムを外し、底面が約30mmの略円形の塊状の凝集フロックを、上面から0.1MPaで60秒間圧搾し、脱水ケーキを得た。
前記脱水ケーキの質量、及び、前記脱水ケーキを105℃で15時間乾燥させた後の脱水ケーキの質量を測定した。前記脱水ケーキの乾燥前と乾燥後の質量の差分を、脱水ケーキの含水量とみなした。乾燥前の前記脱水ケーキの質量に対する前記含水量の割合を、ケーキ含水率[質量%]として求めた。
表3の汚泥A及び汚泥Bにおいては、ケーキ含水率が83質量%未満であれば、従来の汚泥処理剤による脱水処理で得られた脱水ケーキに比べて取扱い性が良好な脱水ケーキが得られたと評価することができる。また、脱水ケーキの廃棄処理等における取扱い性等の観点から、ケーキ含水率は低い方が好ましい。例えば、ケーキ含水率が85質量%から83質量%に低減すると、発生する汚泥の量を12質量%低減できる。このため、ケーキ含水率を低減できると、廃棄物の量を大きく削減できる。
表3の汚泥Cにおいては、ケーキ含水率が75.5質量%未満であれば、従来の汚泥処理剤による脱水処理で得られた脱水ケーキに比べて取扱い性が良好な脱水ケーキが得られたと評価することができる。
なお、比較例1、2、6、9及び10については、SSリーク量が多すぎ、ケーキ含水率を求めるのに十分な脱水ケーキを得ることは困難であった(表4に「測定不可」と記した)。
【0081】
【表4】
【0082】
表4に示した結果から分かるように、固有粘度が所定範囲内であるカチオン性ポリマーを含有する本発明の汚泥脱水剤によれば、処理汚泥におけるフロック径、20秒ろ過量、SSリーク量及びケーキ含水率がいずれも良好であった。すなわち、本発明の汚泥脱水剤は、汚泥脱水性能により優れていることが確認された。