【文献】
XIANYU,Haiqing et al.,High performance dual frequency liquid crystal compounds and mixture for opration at elevated temper,Liquid Crystals,V0l.37/No.12,2010年,pages1493-1499
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の液晶組成物、液晶素子、センサ、
液晶レンズ、光通信機器
及びアンテナ
並びに化合物を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0026】
本発明に係る液晶組成物は、一般式(i)で表わされる化合物と、一般式(ii)で表わされる化合物とを含有する。以下、一般式(i)及び一般式(ii)で表わされる化合物について順に説明する。一般式(i)で表される化合物は、Δεが高く、また、Δnが比較的高く、更に良好な相溶性を有する。これにより、常温下において安定な液晶組成物を提供できる。
【0027】
本発明における一般式(i)で表わされる液晶化合物は、以下の通りである。
【0029】
上記一般式(i)中、R
i1は、炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH
2−は、それぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、また、R
i1中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立してフッ素原子に置換されていてもよい。
【0030】
R
i1は、直鎖状の基又は分岐状の基であり、直鎖状の基であることが好ましい。また、R
i1は、好ましくは、炭素原子数2〜11のアルキル基を表し、より好ましくは、炭素原子数3〜9のアルキル基を表し、さらに好ましくは、炭素原子数4〜7のアルキル基を表す。
【0031】
本明細書におけるアルキル基は、特に制限されることは無く、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基及び2−エチルヘキシル基等を含み、直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0032】
上記一般式(i)のR
i1中に存在する、メチレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−で置換されてもよい。具体的には、R
i1は、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基が更に好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜3のアルケニル基が更に好ましい。
【0033】
液晶組成物全体の信頼性を重視する場合には、R
i1はアルキル基であることが好ましく、液晶組成物全体の粘性の低下を重視する場合には、R
i1はアルケニル基であることが好ましい。
【0034】
本明細書におけるアルケニル基は、式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)
【0036】
本明細書におけるアルケニルオキシ基は、式(R6)から式(R10)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)
【0038】
本明細書におけるアルコキシ基は、特に制限されることは無く、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、及びヘキソキシ基を含み、直鎖状のアルコキシ基であることが好ましい。
【0039】
R
i1が結合する環構造がフェニル基(芳香族)である場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び炭素原子数4〜5のアルケニル基が好ましく、それが結合する環構造がシクロヘキサン、ピラン及びジオキサンなどの飽和した環構造の場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び直鎖状の炭素原子数2〜5のアルケニル基が好ましい。ネマチック相を安定化させるためには炭素原子及び存在する場合酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0040】
上記一般式(i)中、A
i1、A
i2及びA
i3は、その環構造中の1個又は2個以上の水素原子が、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜6のアルキル基に置換されてもよい、二価の環式基を表わす。当該環式基としては、基(a)〜(c)のいずれかであり、式(a)又は(b)であることがより好ましい。また、基(a)、基(b)及び基(c)中の水素原子はそれぞれ独立してハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0041】
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−は−O−に置き換えられてもよい。)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)及び
(c) ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置換されていてもよい。)
A
i1、A
i2及びA
i3の具体例としては、以下の式(a1)〜(a26)で表わされる二価の環式基が挙げられる。
【0046】
(上記式中、*は、炭素原子又は他の原子と結合する結合手を表わす。)
上記二価の環式基のうち、(a1)〜(a3)、(a5)〜(a6)、(a9)〜(a10)、(a12)〜(a25)が好ましく、(a1)〜(a3)、(a5)〜(a6)、(a12)〜(a25)がより好ましく、(a1)〜(a3)、(a12)〜(a26)がさらに好ましい。
Δnを向上させる観点からは、(a5)〜(a6)、(a9)〜(a10)、(a12)〜(a26)が好ましく、
(a5)〜(a6)、(a12)〜(a26)が好ましい。更にΔεを向上させる観点からは、A
i1、A
i2及びA
i3の少なくとも1つ以上が(a12)、(a14)、(a16)、(a17)、(a18)、(a19)、(a21)、(a23)、(a24)、(a25)又は(a26)を有することが好ましい。
【0047】
また、A
i1が複数存在する場合は、それらは同一でもよく、異なっていてもよい。
【0048】
上記一般式(i)中、Z
i1及びZ
i2は、それぞれ独立して、−OCH
2−、−CH
2O−、−C
2H
4−、−C
4H
8−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2CF
2−、−C≡C−又は単結合を表すが、少なくとも一つのZ
i1あるいはZ
i2は−C≡C−を表す。
【0049】
Z
i1及びZ
i2が上記条件であると、メソゲンを構成する環構造間の連結基が、分子の直線性を確保しやすい。
【0050】
また、上記一般式(i)中、Z
i2及びm
i1個のZ
i1のうち少なくとも一つが−C≡C−を表すことから、一般式(i)で表わされる化合物は、その構造内に少なくとも1つの−C≡C−を有する。
【0051】
Z
i1及びZ
i2は、それぞれ独立して、単結合、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−が好ましい。Z
i1及びZ
i2は、それぞれ独立して、液晶組成物の安定性を重視する場合には単結合が好ましく、Δnを重視する場合には−C≡C−が好ましい。
【0052】
また、Z
i1が複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよい。
【0053】
m
i1は、1又は2を表わし、1が好ましい。m
i1が1又は2であると、一般式(i)で表わされる化合物は、3環〜4環の液晶化合物に相当し、他の液晶化合物と高い相溶性を示す。
【0054】
本発明における一般式(i)で表わされる化合物の一分子中の環構造である、A
i1、A
i2及びA
i3は、合計でフッ素原子を1〜5個有することが好ましく、1〜4個有することがより好ましい。
【0055】
本発明における一般式(i)で表わされる化合物一分子中の環構造である、A
i1、A
i2及びA
i3は合計で、ハロゲン原子(フッ素原子以外)を0〜3個有することが好ましく、0〜2個有することがより好ましい。
【0056】
本発明における一般式(i)で表わされる化合物一分子中の環構造である、A
i1、A
i2及びA
i3は合計で、ハロゲン原子(フッ素原子を含む)を1〜5個有することが好ましく、1〜4個有することがより好ましい。
【0057】
本発明における一般式(i)で表わされる化合物は、A
i3に結合するシアノ基を有するが、該シアノ基以外に、一分子中の環構造であるA
i1、A
i2及びA
i3はシアノ基を合計で1〜3個有していてもよい。
【0058】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)で表される化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上組み合わせて使用してもよい。組み合わせ可能な化合物の種類に特に制限は無いが、誘電率異方性、常温における溶解性、転移温度、複屈折率などの所望の性能に応じて適宜組み合わせて使用する。使用する液晶化合物の種類は、例えば本発明の一つの実施形態としては1種類である。あるいは本発明の別の実施形態では2種類であり、3種類であり、4種類であり、5種類であり、6種類であり、7種類であり、8種類であり、9種類であり、10種類以上である。
【0059】
本発明の液晶組成物の総量に対しての一般式(i)で表される化合物の好ましい含有量の下限値(質量%)は、1%であり、2%であり、5%であり、8%であり、10%であり、13%であり、15%であり、18%であり、20%であり、22%であり、25%であり、30%であり、40%であり、50%であり、55%であり、60%であり、65%であり、70%である。又、析出等の問題を防ぐ観点から、好ましい含有量の上限値は85%であり、80%であり、75%であり、70%であり、65%であり、55%であり、45%であり、35%であり、30%であり、28%であり、25%であり、23%であり、20%であり、18%であり、15%である。
【0060】
本発明の一般式(i)で表わされる化合物の好ましい形態の一つは、上記一般式(i)中、R
i1が、炭素原子数1〜8を有し、かつ直鎖状の、アルキル基、アルコキシ基、炭素原子数2〜8を有し、かつ直鎖状の、アルケニル基、又はアルケニルオキシ基であり、A
i1、A
i2及びA
i3は、上記式(a1)〜(a3)、(a19)又は(a24)であり、Z
i1及びZ
i2は、それぞれ独立して、単結合、−COO−、又は−C≡C−であり、かつZ
i1又はZ
i2のいずれかが−C≡C−であり、m
i1は、1を表わす化合物である。また、一般式(i)で表される化合物の好ましい含有量は、液晶組成物全体(100質量%)に対して、5〜85質量%であることが好ましく、10〜83質量%であることがより好ましく、13〜80質量%であることが特に好ましい。
【0061】
上記一般式(i)で表わされる化合物は、以下の一般式(i−1)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0063】
(上記一般式(i−1)中、R
i1、A
i1、Z
i1、Z
i2及びm
i1は、上記一般式(i)中のR
i1、A
i1、Z
i1、Z
i2及びm
i1とそれぞれ同じ意味を表し、
X
i1〜X
i6はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表すが、X
i1とX
i2がともにフッ素原子を表すことはなく、X
i3とX
i4がともにフッ素原子を表すことはない。)
上記一般式(i−1)中、R
i1、A
i1、Z
i1、Z
i2及びm
i1は、上記一般式(i)中のR
i1、A
i1、Z
i1、Z
i2及びm
i1と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0064】
X
i1〜X
i6において、X
i1とX
i2がともにフッ素原子を表すことはなく、X
i3とX
i4がともにフッ素原子を表すことはないため、一般式(i)で表わされる液晶化合物の誘電率異方性(Δε)が0以上を示しやすくなる。
【0065】
正の誘電率異方性の値を大きくする観点から、X
i2、X
i4、X
i5及びX
i6の少なくとも1つ以上がフッ素原子を表すことが好ましい。また、環構造のラテラル位にフッ素原子等のハロゲン原子を導入すると、相溶性が向上するため好ましい。一般式(i−1)で表わされる化合物を使用することで、常温保存安定性を確保しやすくなる。
【0066】
本発明における一般式(i−1)で表わされる化合物の一分子中の環構造である、m
i1個のA
i1及び2つのベンゼン環は、合計でフッ素原子を1〜5個有することが好ましく、1〜4個有することがより好ましい。
【0067】
本発明における一般式(i−1)で表わされる化合物一分子中の環構造である、m
i1個のA
i1は合計で、ハロゲン原子(フッ素原子以外)を0〜3個有することが好ましく、0〜2個有することがより好ましい。
【0068】
本発明における一般式(i−1)で表わされる化合物一分子中の環構造である、m
i1個のA
i1及び2つのベンゼン環は合計で、ハロゲン原子(フッ素原子を含む)を1〜5個有することが好ましく、1〜4個有することがより好ましい。
【0069】
本発明における一般式(i−1)で表わされる化合物一分子中の環構造である、m
i1個のA
i1は合計で、シアノ基を0〜3個有することが好ましく、0〜2個有することがより好ましい。
【0070】
上記一般式(i)及び一般式(i−1)で表わされる化合物の好ましい形態としては、以下の一般式(i−1−a)〜(i−1−d)で表わされる化合物が挙げられる。
【0072】
上記一般式(i−1−a)〜(i−1−d)中、R
i11は、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基を表し、環X及び環Yは、それぞれ独立して、上記式(a1)〜(a26)で表わされる二価の環式基を表し、X
i1、X
i2、X
i3、X
i4、X
i5及びX
i6は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表す。
【0073】
上記一般式(i−1−a)〜(i−1−d)中、環X及び環Yは、それぞれ独立して、上記(a1)〜(a3)、(a19)又は(a24)がより好ましい。
【0074】
上記一般式(i−1−a)〜(i−1−d)中、R
i1は、信頼性の観点から、炭素原子数1〜8のアルキル基が好ましい。上記化合物のうち、(i−1−a)、(i−1−b)、(i−1−c)が好ましい。
【0075】
また、上記一般式(i)及び一般式(i−1)で表わされる化合物の好ましい形態としては、以下の一般式(i−1−1)で表わされる化合物が挙げられる。一般式(i−1−1)で表される化合物は、比較的高いΔnと、良好な相溶性とを有する。これにより、常温下において安定な液晶組成物を得ることができる。
【0077】
(上記一般式(i−1−1)中、R
i1、X
i1〜X
i6及びA
i1は、上記一般式(i)又は一般式(i−1)中の、R
i1、X
i1〜X
i6及びA
i1とそれぞれ同じ意味を表し、
X
i7、X
i8及びX
i9はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表すが、X
i7とX
i8がともにフッ素原子を表すことはなく、
Z
i12は、単結合又は−C≡C−を表わし、
Z
i13は、単結合又は−C≡C−を表わすが、少なくとも一つのZ
i2あるいはZ
i3は−C≡C−を表わし、
m
i2は、0又は1を表す。)
上記一般式(i−1−1)中、R
i1、X
i1〜X
i6及びA
i1は、上記一般式(i)又は一般式(i−1)中のR
i1、X
i1〜X
i6及びA
i1及びZ
i1と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0078】
上記一般式(i−1−1)中、X
i7とX
i8がともにフッ素原子を表すことはないことにより、一般式(i−1−1)で表わされる液晶化合物の誘電率異方性(Δε)が0以上を示しやすくなる。
【0079】
液晶組成物の安定性の観点から、Z
i12及びZ
i13のうち一方が−C≡C−を表し、他方が単結合を表すことが好ましい。
【0080】
本発明に係る一般式(i−1−1)で表わされる化合物において、X
i1〜X
i7の少なくとも1つがフッ素原子であることが好ましい。すなわち、本発明における一般式(i−1−1)で表わされる化合物の一分子中において、ベンゼン環には、電子吸引基であるフッ素原を合計1又は2以上有する。これにより、一般式(i−1−1)で表わされる化合物は、より正の誘電率異方性を示しやすくなり、環構造のラテラル位にフッ素原子等のハロゲン原子を導入すると、相溶性が向上するため好ましい。一般式(i−1−1)で表わされる化合物を使用することで、常温保存安定性を確保しやすくなる。
【0081】
また、本発明における一般式(i−1−1)で表わされる化合物一分子中の環構造である、A
i1及び3つのベンゼン環は合計で、ハロゲン原子(フッ素原子を含む)を1〜5個有することが好ましく、1〜4個有することがより好ましい。
【0082】
本発明に係る一般式(i)の具体的な構造としては、以下の一般式(i.1)〜(i.26)で表わされる3環又は4環の液晶化合物が好ましい。液晶組成物の相溶性をより向上させる観点からは3環の化合物がより好ましい。本発明に係る液晶組成物において、当該一般式(i.1)〜(i.26)で表される化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0087】
上記一般式(i.1)〜(i.26)中、R
i1は、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルケニル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、又は炭素原子数1〜6のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。
【0088】
上記一般式(i.1)〜(i.26)で表される化合物の中でも、(i.8)〜(i.23)が好ましい。
【0089】
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(i.1)〜(i.26)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(i)の好ましい含有量を適用することができる。
【0090】
また、上記一般式(i)及び一般式(i−1)で表わされる化合物の好ましい形態としては、以下の一般式(i−1−1a)で表わされる化合物が挙げられる。一般式(i−1−1a)で表される化合物は、トラン構造を備え、且つ、環構造の末端にシアノ基、さらにはX
i4にフッ素原子を有するため、Δεが向上する。
【0092】
(上記一般式(i−1−1a)中、R
i1、A
i1、Z
i1及びX
i1〜X
i3、X
i5及びX
i6は、上記一般式(i−1)中のR
i1、A
i1、Z
i1、X
i1〜X
i3、X
i5及びX
i6とそれぞれ同じ意味を表し、
m
i2は、0又は1を表わし、
Z
ia1及びZ
ia2はそれぞれ独立して、単結合又は−C≡C−を表わすが、少なくとも一方は−C≡C−を表わし、
X
i7〜X
i9はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表すが、X
i7とX
i8がともにフッ素原子を表すことはなく、
一般式(i−1−1a)において、X
i2、X
i5、X
i6、X
i8及びX
i9の少なくとも1つはフッ素原子を表す。)
上記一般式(i−1−1a)中、R
i1、A
i1、Z
i1及びX
i1〜X
i3、X
i5及びX
i6は、上記一般式(i)又は一般式(i−1)中の、R
i1、A
i1、Z
i1及びX
i1〜X
i3、X
i5及びX
i6と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0093】
液晶組成物の安定性の観点から、Z
ia1及びZ
ia2のうち一方が−C≡C−を表し、他方が単結合を表すことが好ましい。
【0094】
本発明における一般式(i−1−1a)で表わされる化合物一分子中の環構造である、Ai1及び3つのベンゼン環は合計で、ハロゲン原子(フッ素原子を含む)を1〜5個有することが好ましく、1〜4個有することがより好ましい。
【0095】
本発明に係る一般式(i)及び一般式(i−1−1a)の具体的な構造としては、以下の一般式(i.27)〜(i.44)で表わされる3環又は4環の液晶化合物が好ましい。液晶組成物の相溶性をより向上させる観点からは3環の化合物がより好ましい。本発明に係る液晶組成物において、当該一般式(i.27)〜(i.44)で表される化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0099】
上記一般式(i.27)〜(i.44)中、R
i1は、一般式(i)中のR
i1と同じ意味を表すが、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルケニル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、又は炭素原子数1〜6のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。
【0100】
上記一般式(i.27)〜(i.44)で表される化合物の中でも、(i.27)〜(i.34)が好ましい。
【0101】
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(i.27)〜(i.44)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(i)の好ましい含有量を適用することができる。
【0102】
一般式(i−1−1a)で表される化合物は、公知の方法で製造することができるが、例えば以下の方法で製造できる。
【0104】
(式中、R
i1、A
i1、Z
i1、X
i1〜X
i3及びX
i5〜X
i9は一般式(i−1−1a)中のR
i1、A
i1、Z
i1、X
i1〜X
i3及びX
i5〜X
i9とそれぞれ同じ意味を表す。)
一般式(I−1)で表される化合物を一般式(I−2)で表される化合物と反応させることにより一般式(I−3)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えばパラジウム触媒、銅触媒及び塩基を用いた薗頭カップリング反応が挙げられる。パラジウム触媒の具体例としては上記のものが挙げられる。銅触媒の具体例としてはヨウ化銅(I)が挙げられる。塩基の具体例としてはトリエチルアミン等が挙げられる。
【0105】
一般式(I−3)で表される化合物を例えばsecブチルリチウム及びヨウ素と反応させることにより一般式(I−4)で表される化合物を得ることができる。
【0106】
一般式(I−4)で表される化合物を例えばビス(ピナコラト)ジボロンと反応させることにより一般式(I−5)で表される化合物を得ることができる。
【0107】
一般式(I−6)で表される化合物を一般式(I−5)で表される化合物と反応させることにより一般式(i−1−1a)で表される化合物を得ることができる。反応方法としては例えば金属触媒及び塩基存在下、クロスカップリングさせる方法が挙げられる。金属触媒の具体例としては[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド、酢酸パラジウム(II)、ジクロロビス[ジ−tert−ブチル(p−ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が挙げられる。金属触媒として酢酸パラジウム(II)を使用する場合、トリフェニルホスフィン、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,4’,6’−トリイソプロピルビフェニル等の配位子を添加してもよい。塩基の具体例としては炭酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸セシウム等が挙げられる。
【0108】
本発明に係る液晶組成物は、一般式(ii)で表わされる化合物の1種又は2種以上を含む。該一般式(ii)で表される化合物は、以下の通りである。
【0110】
一般式(ii)で表される化合物は、高いΔnを有する。上述の一般式(i)で表される化合物との相溶性に優れ、一般式(i)で表される化合物と一般式(ii)で表される化合物を組み合わせることで、高いΔnと高いΔεを両立できる液晶組成物を提供できる。
【0111】
上記一般式(ii)中、R
ii1及びR
ii2は、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表わし、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH
2−は、それぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、また、R
ii1及びR
ii2中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、それぞれ独立してフッ素原子に置換されていてもよいが、R
ii1及びR
ii2がともにフッ素原子、塩素原子及びシアノ基から選ばれる置換基を表すことはない。
【0112】
一般式(ii)中、R
ii1は、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基又は炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシ基、炭素原子数2〜5のアルケニル基又は炭素原子数2〜5のアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜5のアルケニル基が更に好ましく、炭素原子数2〜5のアルキル基又は炭素原子数2〜3のアルケニル基が更に好ましい。
【0113】
R
ii1は、信頼性を重視する場合にはアルキル基であることが好ましく、粘性の低下を重視する場合にはアルケニル基であることが好ましい。
【0114】
また、R
ii1が結合する環構造がフェニル基(芳香族)である場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び炭素原子数4〜5のアルケニル基が好ましく、R
ii1が結合する環構造がシクロヘキサン、ピラン及びジオキサンなどの飽和した環構造の場合には、直鎖状の炭素原子数1〜5のアルキル基、直鎖状の炭素原子数1〜4のアルコキシ基及び直鎖状の炭素原子数2〜5のアルケニル基が好ましい。R
ii1は、ネマチック相を安定化させるためには炭素原子及び存在する場合酸素原子の合計が5以下であることが好ましく、直鎖状であることが好ましい。
【0115】
ここで、アルケニル基としては、上述の式(R1)から式(R5)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。
【0116】
R
ii2は、一般式(ii)で表される化合物が、Δεが正のいわゆるp型化合物である場合には、フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基であることが好ましく、フッ素原子又はシアノ基が好ましい。
【0117】
一般式(ii)で表される化合物が、Δεがほぼ0のいわゆるノンポーラ型化合物である場合には、R
ii2は、R
ii1と同じ意味を表すが、R
ii2とR
ii1は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0118】
上記一般式(ii)中、Z
ii1、Z
ii2及びZ
ii3は、それぞれ独立して、単結合、−OCH
2−、−CH
2O−、−C
2H
4−、−C
4H
8−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2CF
2−又は−C≡C−を表わす。
【0119】
ここで、Z
ii1〜Z
ii3は、単結合であることが好ましい。
【0120】
上記一般式(ii)中、A
ii1、A
ii2、A
ii3、A
ii4、A
ii5及びA
ii6は、それぞれ独立して、以下の基(a)〜基(c)からなる群より選ばれる基を表わす。
【0121】
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−は−O−に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置換されていてもよい。)
上記の基(a)、基(b)及び基(c)は中の1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立してハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0122】
A
ii1〜A
ii6は、それぞれ独立して、Δnを高くすることが求められる場合には芳香族であることが好ましく、応答速度を改善するためには脂肪族であることが好ましく、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すことが好ましく、下記の構造:
【0124】
(Rは炭素原子数1〜6のアルキル基を表す)
を表すことがより好ましく、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基及びテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基であることが特に好ましく、これらの1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基及びテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中の水素原子はそれぞれ独立して1個又は2個以上の水素原子がフッ素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基により置換されていてもよい。
【0125】
A
ii2は以下の基(d)〜基(f):
【0127】
(X
iid1、X
iid2、X
iie1、X
iie2、X
iif1及びX
iif2はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表わす。)
からなる群より選ばれる基を表わすことが、Δn向上の観点から好ましい。また、基(f)を表すことが、他の液晶化合物との相溶性の観点から好ましい。
【0128】
また、他の液晶組成物との相溶性を高めるために、A
ii1〜A
ii6の少なくとも一つが炭素原子数1〜6のアルキル基により置換された1,4−フェニレン基を表すことが好ましく、エチレン基で置換された1,4−フェニレン基を表すことがより好ましい。
【0129】
上記一般式(ii)中、m
ii1、m
ii2及びm
ii3は、それぞれ独立して、0又は1を表すが、m
ii1+m
ii2+m
ii3は、0又は1を表わす。
【0130】
ここで、m
ii1は、液晶組成物への溶解性を重視する場合には0が好ましく、Δn及びTniを重視する場合には1が好ましい。
【0131】
また、m
ii1+m
ii2+m
ii3は、0であることが好ましい。
【0132】
本発明における一般式(ii)で表わされる化合物の一分子中の環構造である、
Aii1〜Aii6は、合計でフッ素原子を1〜5個有することが好ましく、1〜4個有することがより好ましい。
【0133】
本発明における一般式(ii)で表わされる化合物一分子中の環構造である、
Aii1〜Aii6は合計で、ハロゲン原子(フッ素原子以外)を0〜3個有することが好ましく、0〜2個有することがより好ましい。
【0134】
本発明における一般式(ii)で表わされる化合物一分子中の環構造である、
Aii1〜Aii6は合計で、ハロゲン原子(フッ素原子を含む)を1〜5個有することが好ましく、1〜4個有することがより好ましい。
【0135】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(ii)で表される化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上組み合わせて使用してもよい。組み合わせ可能な化合物の種類に特に制限は無いが、誘電率異方性、常温における溶解性、転移温度、複屈折率などの所望の性能に応じて適宜組み合わせて使用する。使用する液晶化合物の種類は、例えば本発明の一つの実施形態としては1種類である。あるいは本発明の別の実施形態では2種類であり、3種類であり、4種類であり、5種類であり、6種類であり、7種類であり、8種類であり、9種類であり、10種類以上である。
【0136】
本発明の液晶組成物の総量に対しての一般式(ii)で表される化合物の好ましい含有量の下限値(質量%)は、1%であり、2%であり、5%であり、8%であり、10%であり、13%であり、15%であり、18%であり、20%であり、22%であり、25%であり、30%であり、40%であり、50%であり、55%であり、60%であり、65%であり、70%である。又、析出等の問題を防ぐ観点から、、好ましい含有量の上限値は70%であり、65%であり、55%であり、45%であり、35%であり、30%であり、28%であり、25%であり、23%であり、20%であり、18%であり、15%である。
【0137】
上記一般式(ii)で表わされる化合物は、以下の一般式(ii−1)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0139】
(上記一般式(ii−1)中、R
ii1、R
ii2、Z
ii1、Z
ii2、Z
ii3、A
ii1、A
ii4、A
ii6、m
ii1、m
ii2及びm
ii3は、上記一般式(ii)中のR
ii1、R
ii2、Z
ii1、Z
ii2、Z
ii3、A
ii1、A
ii4、A
ii6、m
ii1、m
ii2及びm
ii3とそれぞれ同じ意味を表し、
A
ii2は以下の基(d)〜基(f):
【0141】
(X
iid1、X
iid2、X
iie1、X
iie2、X
iif1及びX
iif2はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表わす。)
からなる群より選ばれる基を表わし、
X
ii1、X
ii2、X
ii3及びX
ii4はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
上記一般式(ii−1)中、R
ii1、R
ii2、Z
ii1、Z
ii2、Z
ii3、A
ii1、A
ii4、A
ii6、m
ii1、m
ii2及びm
ii3は、上記一般式(ii)中のR
ii1、R
ii2、Z
ii1、Z
ii2、Z
ii3、A
ii1、A
ii4、A
ii6、m
ii1、m
ii2及びm
ii3と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0142】
X
iid1、X
iid2、X
iie1、X
iie2、X
iif1及びX
iif2はそれぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表わすが、Δε向上の観点からは少なくとも1個がフッ素原子であることが好ましく、ともにフッ素原子であることが好ましい。
【0143】
X
ii1、X
ii2、X
ii3、X
ii4は、Δε向上の観点からは少なくとも1個がフッ素原子であることが好ましい。X
ii1、X
ii2、X
ii3、X
ii4のうちフッ素原子の合計数は0〜3であることが好ましく、0〜2であることがより好ましい。
【0144】
また、X
ii1、X
ii2、X
ii3、X
ii4は、相溶性の観点からは炭素原子数1〜6のアルキル基であることが好ましく、エチル基であることがより好ましい。
【0145】
X
ii1とX
ii2が結合する環構造、及びX
ii3とX
ii4が結合する環構造は、それぞれ以下の構造であることが好ましい。
【0147】
(Etはエチル基を表す。)
本発明に係る一般式(ii)の具体的な構造としては、以下の一般式(ii.1)〜(ii.38)で表わされる3環又は4環の化合物が好ましい。液晶組成物の相溶性をより向上させる観点からは3環の化合物がより好ましい。本発明に係る液晶組成物において、当該一般式(ii.1)〜(ii.38)で表される化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0151】
上記一般式(ii.1)〜一般式(ii.38)中、R
ii1及びR
ii2は、それぞれ独立して一般式(ii)におけるR
ii1及びR
ii2と同じ意味を表すが、R
ii1は炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルケニル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、又は炭素原子数1〜6のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。また、R
ii2は炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルケニル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数1〜6のアルケニルオキシ基、フッ素原子又は塩素原子を表すことが好ましい。
【0152】
上記一般式(ii.1)〜一般式(ii.38)で表される化合物の中でも、一般式(ii−1)、(ii−10)〜(ii−11)、(ii−25)〜(ii−29)が好ましい。
【0153】
また、上記一般式(ii)及び一般式(ii−1)で表わされる化合物の好ましい形態としては、以下の一般式(ii−1a)で表わされる化合物が挙げられる。一般式(ii−1a)で表される化合物は、トラン構造を備え、且つ、1分子中にフッ素原子、塩素原子又はシアノ原子で表わされる電子吸引基を2個以上有するため、Δεが向上する。
【0155】
(上記一般式(ii−1a)中、R
ii1、X
iid1及びX
iid2は一般式(ii−1)中の、R
ii1、X
iid1及びX
iid2と同じ意味を表し、
R
iia2はフッ素原子、塩素原子、シアノ基又は炭素原子数1〜12のアルキル基を表わし、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH
2−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又はOCO−によって置換されていてもよく、また、R
ii1中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子に置換されていてもよいが、R
ii1及びR
iia2がともにフッ素原子、塩素原子及びシアノ基から選ばれる置換基を表すことはなく、
X
iia1及びX
iia2はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、
X
iia3、X
iia4及びX
iia5はそれぞれ独立して水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表すが、X
iia3、X
iia4及びX
iia5の少なくとも1つはフッ素原子又は塩素原子を表す。)
上記一般式(ii−1a)中、R
ii1、X
iid1及びX
iid2は、上記一般式(ii)又は一般式(ii−1)中の、R
ii1、X
iid1及びX
iid2と同一であるため、ここでの説明は省略する。
【0156】
一般式(ii−1a)において、溶解性を向上させる観点からは、X
iia1及びX
iia2の少なくともいずれか一つが炭素原子数1〜6のアルキル基を表すことが好ましく、エチル基を表すことがより好ましい。
【0157】
また、一般式(ii−1a)において、Δεをより向上させる観点からは、X
iia3及びX
iia4の少なくともいずれか一つ以上がフッ素原子又は塩素原子を表すことが好ましい。
【0158】
また、一般式(ii−1a)において、R
iia2が塩素原子又はシアノ基を表す場合、X
iia3はフッ素原子を表すことが好ましい。
【0159】
本発明における一般式(ii−1a)で表わされる化合物一分子中の環構造である、3つのベンゼン環は合計で、ハロゲン原子(フッ素原子を含む)を1〜5個有することが好ましく、1〜4個有することがより好ましい。
【0160】
本発明に係る一般式(ii)及び一般式(ii−1a)の具体的な構造としては、以下の一般式(ii−41)〜(ii−52)で表わされる液晶化合物が好ましい。本発明に係る液晶組成物において、当該一般式(ii−41)〜(ii−54)で表される化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0162】
上記一般式(ii−41)〜一般式(ii−54)中、R
ii1及びR
ii2は、それぞれ独立して一般式(ii)におけるR
ii1及びR
ii2と同じ意味を表すが、R
ii1は炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルケニル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、又は炭素原子数1〜6のアルケニルオキシ基を表すことが好ましい。また、Etはエチル基を表す。
【0163】
なお、本発明に係る液晶組成物において、液晶組成物全体に対する上記一般式(ii−41)〜一般式(ii−54)の化合物のそれぞれの含有量は、一般式(ii)の好ましい含有量を適用することができる。
【0164】
一般式(ii−1a)で表される化合物は、公知の方法で製造することができるが、例えば以下の方法で製造できる。
【0166】
(式中、R
ii1、R
iia2、X
iia1〜X
iia5、X
iid1及びX
iid2は一般式(ii−1a)中のR
ii1、R
iia2、X
iia1〜X
iia5、X
iid1及びX
iid2とそれぞれ同じ意味を表す。)
一般式(II−1)で表される化合物を一般式(II−2)で表される化合物と反応させることにより一般式(II−3)で表される化合物を得ることができる。
【0167】
一般式(II−3)で表される化合物を一般式(II−4)で表される化合物と反応させることにより一般式(ii−1a)で表される化合物を得ることができる。
【0168】
上記一般式(ii)及び一般式(ii−1)で表わされる化合物の好ましい具体的な形態として、下記構造式(ii−1.1)〜(ii−1.96)で表される化合物が挙げられる。
【0173】
式中、Xは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。
【0175】
式中、Xは、それぞれ独立して水素原子、フッ素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。
【0177】
上記構造式(ii−1.1)〜(ii−1.96)で表される化合物の中でも、(ii−1.2)〜(ii−1.8)、(ii−1.12)〜(ii−1.18)、(ii−1.22)〜(ii−1.28)、(ii−1.32)〜(ii−1.38)、(ii−1.41)〜(ii−1.96)が好ましい。
【0178】
本発明の液晶組成物において、一般式(ii)で表される化合物の含有量が少ないとその効果が小さいため、組成物中の好ましい含有量の下限値は、1質量%であり、2質量%であり、5質量%であり、7質量%であり、9質量%であり、10質量%であり、12質量%であり、15質量%であり、17質量%であり、20質量%、25質量%、30質量%である。また、析出等の問題を防ぐ観点から、好ましい含有量の上限値は、50質量%であり、40質量%であり、30質量%であり、25質量%であり、20質量%であり、18質量%であり、15質量%であり、13質量%であり、10質量%である。
【0179】
以上が、本発明に係る液晶組成物の必須成分である一般式(i)及び一般式(ii)で表わされる化合物に関する説明である。本発明に係る液晶組成物は、任意成分として、一般式(1a)〜(1c)で表される化合物、一般式(2a)〜(2c)で表される化合物及び一般式(iii)で表わされる化合物からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。以下、本発明に係る液晶組成物の任意成分について説明する。
【0180】
本発明に係る液晶組成物は、以下の一般式(1a)、一般式(1b)及び一般式(1c)から選択される化合物の1種又は2種以上をさらに含有することが好ましい。
【0182】
上記一般式(1a)〜(1c)中、
R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は炭素原子数2〜10のアルキニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は、−O−又は−S−に置換されてもよく、またこれらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
M
11、M
12、M
13、M
14、M
15及びM
16は、それぞれ独立して、下記の基(a)、基(b)、又は基(d)のいずれか1種を表わし、
(a) トランス−1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は−O−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は相互に隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい)、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、又は3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、並びに
(d) 1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、
上記の基(a)、基(b)又は基(d)に含まれる1個又は2個以上の水素原子は、それぞれシアノ基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基で置換されていてもよく、
L
11、L
12、L
13、L
14、L
15及びL
16は、それぞれ独立して、単結合、−COO−、−OCO−、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−、−N=N−、−CF
2O−又は−C≡C−を表し、
p、q、sは、それぞれ独立して、0、1又は2を表し、
M
12、M
14、M
16、L
11、L
13及び/又L
15がそれぞれ複数存在する場合は、それらは同一でもよく異なっていてもよく、
X
11、X
12、X
13、X
14、X
15、X
16及びX
17は、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表し、
Y
11、Y
12及びY
13は、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、シアノ基(−CN)、チオシアナト基(−SCN)、シアナト基(−OCN)、−C≡C−CN、トリフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ジフルオロメトキシ基、炭素原子数1〜10のアルキル基、炭素原子数2〜10のアルケニル基又は炭素原子数2〜10のアルキニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は、−O−又は−S−に置換されてもよく、また、これらの基中に存在する1個又は2個以上の水素原子は、フッ素原子又は塩素原子に置換されてもよく、
但し、上記(1a)、(1b)及び(1c)で表される化合物から、上記一般式(i)で表される化合物を除く。
【0183】
本発明に係る液晶組成物は、一般式(1a)〜(1c)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種又は2種以上を含有することが好ましく、2種〜8種含有することが特に好ましい。本発明に係る液晶組成物において、一般式(1a)〜一般式(1c)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の液晶化合物の含有量(液晶組成物全体を100質量%)の下限値は、1質量%であることが好ましく、3質量%であることがより好ましく、5質量%であることがさらに好ましい。また、本発明に係る液晶組成物において、一般式(1a)〜一般式(1c)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の液晶化合物の含有量(液晶組成物全体を100質量%)の上限値は、60質量%が好ましく、50質量%が好ましく、40質量%が好ましく、30質量%が更に好ましい。
【0184】
本発明に係る液晶組成物は、一般式(1a)又は(1b)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種又は2種以上を含有することがより好ましく、一般式(1a)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種又は2種以上を含有することがより好ましい。
【0185】
本発明の液晶組成物の総量に対しての式(1a)で表される化合物の好ましい含有量(質量%)の下限値は、1%であり、2%であり、3%であり、5%であり、8%であり、10%であり、13%であり、15%であり、18%であり、20%であり、25%であり、30%、35%である。また、析出等の問題を防ぐ観点から、好ましい含有量の上限値は35%であり、30%であり、25%であり、20であり、15%であり、10%であり、5%であり、3%である。
【0186】
一般式(1a)の化合物の好ましい形態としては、以下の一般式(1a.1)〜一般式(1a.59)で表される各化合物が好ましい。
【0197】
上記一般式(1a.1)〜(1a.59)中、R
11aは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルケニルオキシ基を表す。
【0198】
R
11cは、水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルコキシル基、炭素数2〜12のアルケニルオキシ基を表し、
X
11a〜
X11d、
X11g及び
X11hは、それぞれ独立して、水素原子又はフッ素原子を表わし、
Z
11a、Z
11b、Z
11c及びZ
11dは、それぞれ独立して、−OCH
2−、−CH
2O−、−C
2H
4−、−C
4H
8−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CF
2O−、−OCF
2−、−CF
2CF
2−、−C≡C−又は単結合を表わす。
【0199】
上記一般式(1a.1)〜(1a.59)で表される化合物中でも、(1a.1)〜(1a.24)、(1a.26)、(1a.35)〜(1a.54)が好ましい。
【0200】
上記一般式(1a)の化合物の具体例としては、例えば、以下の構造式(1a.11.1)〜(1a.48.5)で表される化合物が挙げられる。
【0207】
上記構造式(1a.11.1)〜(1a.48.5)で表される化合物の中でも、(1a.11.2)〜(1a.11.5)、(1a.18.2)〜(1a.18.5)、(1a.24.12)〜(1a.24.15)、(1a.28.2)〜(1a.28.5)、(1a.28.7)〜(1a.28.10)、(1a.35.3)、(1a.36.3)、(1a.47.3)、(1a.48.3)が好ましい。
【0208】
また、一般式(1a)の好ましい形態としては、一般式(1a−1)で表される化合物が好ましい。一般式(1a−1)で表される化合物を用いることにより、高Δnを実現しつつ、広い温度範囲の液晶相を有し、粘性が小さく、低温での溶解性が良好で、比抵抗や電圧保持率が高く、熱や光に対して安定な組成物を得ることができる。
【0210】
(式中、Y
11、X
11及びX
12は一般式(1a)中のY
11、X
11及びX
12とそれぞれ同じ意味を表し、
R
1a1は炭素原子数2〜12のアルキニル基を表し、該アルキニル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH
2−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、また、R
1a1中に存在する1個又は2個以上の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子に置換されていてもよく、
X
13〜X
15はそれぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表すが、X
11とX
13がともにフッ素原子を表すことはなく、X
14とX
15がともにフッ素原子を表すことはなく、
A
1a1は一般式(1a)中のM
11と同じ意味を表し、
Z
1a1は一般式(1a)中のL
11と同じ意味を表し、
m
1a1は0又は1を表す。)
式(1a−1)で表される化合物としては、1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0211】
本発明の液晶組成物の総量に対して一般式(1a−1)で表される化合物の含有量(質量%)の下限値は、1質量%が好ましく、2%が好ましく、5%が好ましく、7%が好ましく、9%が好ましく、10%が好ましく、12%が好ましく、15%が好ましく、17%が好ましく、20%が好ましい。又、析出等の問題を防ぐ観点から、上限値としては、50%が好ましく、40%が好ましく、30%が好ましく、25%が好ましく、20%が好ましく、18%が好ましく、15%が好ましく、13%が好ましく、10%が好ましい。
【0212】
一般式(1a−1)中、R
1a1は、炭素原子数1〜8のアルキニル基が好ましく、式(R11)から式(R15)のいずれかで表される基から選ばれることが好ましい。(各式中の黒点は環構造中の炭素原子を表す。)
【0214】
特に(R13)及び(R14)が好ましい。
【0215】
一般式(1a−1)において、
Y11は一般式(1a−1)で表される化合物がΔεが正のいわゆるp型化合物である場合には、フッ素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基又はトリフルオロメトキシ基であることが好ましく、Δεを向上させる観点からは、フッ素原子又はシアノ基が好ましい。
【0216】
一般式(1a−1)で表される化合物が、Δεがほぼ0のいわゆるノンポーラー型化合物である場合には、Y
11は炭素原子数1〜10のアルキル基,炭素原子数2〜10のアルケニル基又は炭素原子数2〜10のアルキニル基を表し、これらの基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は、−O−又は−S−に置換されてもよい基を表すことが好ましい。
【0217】
A
1a1はΔnを大きくすることが求められる場合には芳香族であることが好ましく、応答速度を改善するためには脂肪族であることが好ましく、それぞれ独立してトランス−1,4−シクロへキシレン基、1,4−フェニレン基、2−フルオロ−1,4−フェニレン基、3−フルオロ−1,4−フェニレン基、3,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキセニレン基、1,4−ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、ピペリジン−1,4−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すことが好ましく、下記の構造を表すことがより好ましく、
【0219】
トランス−1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基を表すことがより好ましい。
【0220】
Z
1a1は単結合であることが好ましい。
【0221】
m
1a1は液晶組成物への溶解性を重視する場合には0が好ましく、Δn及びTniを重視する場合には1が好ましい。
【0222】
X
11〜X
14はすべてが水素原子であるか、又は、1個がフッ素原子で残りが水素原子であることが好ましく、X
14がフッ素原子であり、残りが水素原子であることが好ましい。
【0223】
一般式(1a−1)で表される化合物は、以下の一般式(1a−11)〜一般式(1a−34)で表される各化合物が好ましい。
【0228】
本発明に係る液晶組成物は、以下の一般式(2a)〜(2c)で表される化合物を1種又は2種以上さらに含有することが好ましい。
【0230】
上記一般式(2a)〜(2c)中、
R
2a及びR
2bは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、これらは直鎖状であってもメチル又はエチル分岐を有していてもよく、3〜6員環の環状構造を有していてもよく、基内に存在する任意の−CH
2−は、−O−、−S−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−又は−C≡C−により置換されていてもよく、基内に存在する任意の水素原子はフッ素原子又はトリフルオロメトキシ基により置換されていてもよく、
環A、環B、環C及び環Dは、それぞれ独立して、トランス−1,4−シクロへキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい、1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基又はピリジン−2,5−ジイル基を表し、
L
2a、L
2b及びL
2cは、それぞれ独立した連結基であって、単結合、エチレン基(−CH
2CH
2−)、1,2−プロピレン基(−CH(CH
3)CH
2−及び−CH
2CH(CH
3)−)、1,4−ブチレン基、−COO−、−OCO−、−OCF
2−、−CF
2O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−C≡C−又は−CH=N−N=CH−を表す。
【0231】
本発明に係る液晶組成物は、一般式(2a)〜(2c)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種を含有することが好ましく、2種〜8種含有することが特に好ましい。本発明に係る液晶組成物において、一般式(2a)〜一般式(2c)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の液晶化合物の含有量(液晶組成物全体を100質量%)の下限値は、0質量%であることが好ましく、3質量%であることがより好ましく、5質量%であることがさらに好ましい。本発明に係る液晶組成物において、一般式(2a)〜一般式(2c)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の液晶化合物の含有量(液晶組成物全体を100質量%)の上限値は、50質量%が好ましく、45質量%が好ましく、38質量%が好ましく、25質量%が更に好ましい。
【0232】
本発明に係る液晶組成物は、一般式(2a)又は(2b)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種又は2種以上を含有することがより好ましく、一般式(2a)で表される化合物からなる群から選ばれる化合物を1種又は2種以上を含有することがさらに好ましい。
【0233】
本発明の液晶組成物の総量に対しての式(2a)で表される化合物の好ましい含有量(質量%)の下限値は、0%であり、0.5%であり、1%であり、1.5%であり、2%であり、2.5%であり、3%である。また、析出等の問題を防ぐ観点から、好ましい含有量の上限値は45%であり、35%であり、25%であり、15%であり、10%であり、8%であり、5%である。
【0234】
上記一般式(2a)〜(2c)の化合物の好ましい形態としては、以下の一般式(2a−1)〜(2a−28)の化合物が挙げられる。
【0240】
上記一般式(2a−1)〜(2a−29)中、R
2a及びR
2bは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、炭素原子数2〜8のアルケニルオキシ基又は炭素原子数1〜8のチオアルコキシ基を表わし、環E、環F、環G及び環Hは、それぞれ独立して、上述した式(a1)〜(a25)のいずれか1つを表す。
【0241】
上記一般式(2a−1)〜(2a−29)の化合物の中でも、(2a−1)〜(2a−3)、(2a−5)、(2a−8)〜(2a−10)、(2a−12)が好ましい。
【0242】
本発明に係る一般式(2a)の化合物の具体例としては、例えば、以下の構造式(2a−5.1)〜(2a−5.13)及び(2a−12.1)〜(2a−12.8)で表される化合物が挙げられる。
【0248】
上記構造式(2a−5.1)〜(2a−5.13)及び(2a−12.1)〜(2a−12.8)で表される化合物の中でも、(2a−5.2)〜(2a−5.5)、(2a−5.11)〜(2a−5.13)、(2a−12.1)〜(2a−12.4)が好ましい。
【0249】
本発明に係る液晶組成物は、一般式(iii)で表わされる化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物をさらに含むことが好ましい。
【0251】
上記一般式(iii)中、
R
iii1は、炭素原子数1〜40の直鎖又は分岐の、アルキル基又はハロゲン化アルキル基を表し、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、又は−C≡C−で置換されてもよく、
m
iii1は、0、1又は2の整数を表し、
A
iii1〜A
iii3は、それぞれ独立して、下記の基(a)〜基(c)のいずれか1種を表わし、
(a) 1,4−シクロへキシレン基(この基中に存在する1個のメチレン基又は相互に隣接していない2個以上のメチレン基は、−O−又は−S−に置き換えられてもよい)、
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は相互に隣接していない2個以上の−CH=は、−N=に置き換えられてもよい)、
(c) ナフタレン−2,6−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基又はデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基(ナフタレン−2,6−ジイル基又は1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は、−N=に置き換えられてもよい。)
上記基(a)〜基(c)中の水素原子はそれぞれ独立してフッ素原子、塩素原子、又は炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基に置換されていてもよく、
Z
iii1及びZ
iii2は、それぞれ独立して、単結合、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C(R
iiia)=N−N=C(R
iiib)−を表し、この際、R
iiia及びR
iiibは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜10の直鎖若しくは分岐のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を表し、
m
iii1が2のときに複数存在するA
iii1及びZ
iii1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0252】
上記一般式(iii)中、R
iii1は、炭素原子数1〜11の直鎖状のアルキル基又はハロゲン化アルキル基を表すことが好ましく、これらの基中に存在する、メチレン基又は第二級炭素原子を1つ含むハロゲン化アルキレン基は、酸素原子が直接隣接しないように、−O−、−CH=CH−、又は−C≡C−で置換されてもよい。
【0253】
上記一般式(iii)中、A
iii1〜A
iii3は、それぞれ独立して、フッ素原子、塩素原子、又は炭素原子数1〜10の直鎖状のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基に置換されていてもよい、トランス−1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。また、A
iii1〜A
iii3としては、上記一般式(i)のA
i1について例示した式(a1)〜(a25)で表される二価の環式基が同様に挙げられ、具体的には、A
iii1〜A
iii3は、それぞれ独立して、上記式(a1)〜(a3)、(a5)〜(a6)、(a9)〜(a10)、(a12)〜(a25)が好ましく、(a1)〜(a3)、(a12)〜(a25)がより好ましく、(a1)〜(a3)、(a12)〜(a18)がさらに好ましい。
【0254】
上記一般式(iii)中、Z
iii1及びZ
iii2は、それぞれ独立して、単結合、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、又は−C(R
iiia)=N−N=C(R
iiib)−を表すことが好ましい。
【0255】
ここで、R
iiia及びR
iiibは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、又は、炭素原子数1〜10の直鎖状のアルキル基若しくはハロゲン化アルキル基を表すことが好ましい。
【0256】
上記一般式(iii)中、Z
iii1及びZ
iii2は、それぞれ独立して、単結合又は−C≡C−がより好ましい。また、一般式(iii)で表わされる化合物1分子中には、少なくとも1つの−C≡C−を有することがより好ましい。すなわち、上記一般式(iii)中、Z
iii2及び0以上2以下存在するZ
iii1のうち少なくとも1つが−C≡C−を表わすことが好ましい。
【0257】
上記一般式(iii)中、m
iii1は、0、1又は2の整数を表すことが好ましい。m
iii1が2のときに複数存在するA
iii1及びZ
iii1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0258】
本発明に係る液晶組成物は、(iii)で表される化合物を少なくとも1種を含有することが好ましく、2種〜8種含有することが特に好ましい。
本発明の液晶組成物の総量に対しての一般式(iii)で表される化合物の好ましい含有量(質量%)の下限値は、1.7質量%であり、2質量%であり、4質量%であり、4.3質量%であり、5質量%であり、5.7質量%であり、6質量%である。また、析出等の問題を防ぐ観点から、好ましい含有量の上限値は、23質量%であり、20質量%であり、18質量%であり、14質量%であり、13質量%であり、10質量%であり、8質量%であり、5質量%である。また、本発明の液晶組成物において、一般式(iii)で表される化合物の好ましい含有量は2〜20質量%であり、より好ましくは4〜15質量%であり、特に好ましくは6〜12質量%である。
【0259】
上記一般式(iii)の具体的な構造としては、以下の一般式(iii.1)〜(iii.6)で表わされる化合物が挙げられる。
【0261】
上記一般式(iii.1)〜(iii.7)中、R
35は、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基、又は炭素原子数2〜8のアルケニル基を表し、R
36は、炭素原子数1〜8のアルキル基、又は炭素原子数2〜8のアルケニル基を表し、X
iii1〜X
iii6は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、又は塩素原子を表わす。
【0262】
より具体的には、一般式(iii.1)〜(iii.7)で表される化合物は、下記の構造式(iii.a)〜(iii.e)で表される化合物であることが好ましい。
【0264】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(ii)で表わされる化合物の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して10〜85%であることが好ましく、13〜80%であることが好ましく、15〜70%であることが好ましい。
【0265】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(iii)で表わされる化合物の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して13〜88%であることが好ましく、16〜85%であることが好ましく、18〜73%であることが好ましい。
【0266】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(ii)で表わされる化合物及び一般式(1a)の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して13〜88%であることが好ましく、16〜85%であることが好ましく、18〜73%であることが好ましい。
【0267】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(ii)で表わされる化合物及び一般式(2a)の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して13〜88%であることが好ましく、16〜85%であることが好ましく、18〜73%であることが好ましい。
【0268】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(ii)で表わされる化合物及び一般式(2b)の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して13〜88%であることが好ましく、16〜85%であることが好ましく、18〜73%であることが好ましい。
【0269】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(ii)で表わされる化合物及び一般式(2c)の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して13〜88%であることが好ましく、16〜85%であることが好ましく、18〜73%であることが好ましい。
【0270】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(iii)で表わされる化合物及び一般式(1a)の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して30〜93%であることが好ましく、35〜88%であることが好ましく、40〜85%であることが好ましい。
【0271】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(iii)で表わされる化合物及び一般式(2a)の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して30〜93%であることが好ましく、35〜88%であることが好ましく、40〜85%であることが好ましい。
【0272】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(iii)で表わされる化合物及び一般式(2b)の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して30〜93%であることが好ましく、35〜88%であることが好ましく、40〜85%であることが好ましい。
【0273】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(iii)で表わされる化合物及び一般式(2c)の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して30〜93%であることが好ましく、35〜88%であることが好ましく、40〜85%であることが好ましい。
【0274】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(ii)で表わされる化合物、一般式(1a)で表わされる化合物及び一般式(2a)で表わされる化合物の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して30〜89%であることが好ましく35〜93%であることが好ましく、40〜85%であることが好ましい。
【0275】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(ii)で表わされる化合物、一般式(1a)で表わされる化合物、一般式(2a)〜(2b)で表わされる化合物の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して30〜93%であることが好ましく、35〜88%であることが好ましく、40〜85%であることが好ましい。
【0276】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(ii)で表わされる化合物、一般式(1a)で表わされる化合物、一般式(2a)〜(2c)で表わされる化合物の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して30〜93%であることが好ましく、35〜88%であることが好ましく、40〜85%であることが好ましい。
【0277】
本発明に係る液晶組成物において、一般式(i)〜(iii)で表わされる化合物、一般式(1a)で表わされる化合物、一般式(2a)〜(2c)で表わされる化合物の総量(質量%)は、液晶組成物全体に対して33〜96%であることが好ましく、38〜91%であることが好ましく、43〜88%であることが好ましい。
【0278】
本発明に係る液晶組成物は、上記の液晶化合物以外、公知の安定剤、公知の重合性液晶化合物又は重合化合物などの添加剤を使用態様に応じて適宜含んでもよい。
【0279】
上記安定剤としては、例えば、ヒドロキノン類、ヒドロキノンモノアルキルエーテル類、第三ブチルカテコール類、ピロガロール類、チオフェノール類、ニトロ化合物類、β−ナフチルアミン類、β−ナフトール類、ニトロソ化合物、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類等が挙げられる。安定剤を使用する場合の添加量は、液晶組成物に対して0.005〜1質量%の範囲が好ましく、0.02〜0.5質量%が更に好ましく、0.03〜0.1質量%が特に好ましい。
【0280】
液晶組成物の液晶相上限温度(T
NI)は、液晶組成物がネマチック相から等方相へ相転移する温度であり、T
NIが高いほど高温でもネマチック相を維持することができるため、駆動温度範囲を広く取ることができる。T
NIは120℃以上であることが好ましく、120〜200℃であることが好ましく、130〜180℃であることが好ましい。
【0281】
本発明に係る液晶組成物は、25℃、589.0nmにおけるΔn(屈折率異方性)が0.3以上であることが好ましく、0.3〜0.60であることが好ましく、0.33〜0.55であることが好ましく、0.35〜0.50であることが好ましい。可視光領域のΔnは、数十GHz帯のΔεと相関し、Δnが高いほどGHz帯の誘電率の変化を大きくすることができる。従って、液晶組成物の、589.0nmにおけるΔnが0.3以上であれば、GHz帯の誘電率の変化を大きくすることができるため、アンテナ用の液晶組成物として好適となる。
【0282】
ここで、位相差Reと、液晶層の厚さd(セルギャップ)と、Δnと、の間には、式:Δn=Re/dの関係が成り立ち、本明細書においては、位相差測定装置から、Δnを求める。より具体的には、ポリイミド配向膜付きのガラスセルに、本発明の液晶組成物のサンプルを注入し、測定温度25℃、589nmにおける面内のリタデーション(位相差Re)を位相差フィルム・光学材料検査装置RETS−100(大塚電子株式会社製)で測定する。尚、ガラス基板間のセルギャップ3.0μm、ポリイミド配向膜のラビング方向が平行のガラスセルを使用する。
【0283】
なお、アッベ屈折計で、液晶組成物のne、noを測定し、Δnを算出してもよい。
【0284】
本発明に係る液晶組成物の25℃、1kHzにおけるΔε(誘電率異方性)は、12以上であることが好ましく、12〜30であることが好ましく、13〜25であることが好ましく、14〜20であることが好ましい。
【0285】
以下、本発明に係る液晶組成物を用いた液晶素子、より具体的には、液晶素子、センサ、液晶レンズ、光通信機器、アンテナについて説明する。
【0286】
本発明に係る液晶素子は、上述の液晶組成物を用いたことを特徴とし、好ましくはアクティブマトリクス方式又はパッシブマトリクス方式で駆動する。
【0287】
また、本発明に係る液晶素子は、上述の液晶組成物の液晶分子の配向方向を可逆的に変えることにより誘電率を可逆的にスイッチングする液晶素子であることが好ましい。
【0288】
本発明に係るセンサは、上述の液晶組成物を用いたことを特徴とし、例えば、その態様として、電磁波、可視光または赤外光を利用する測距センサ、温度変化を利用する赤外線センサ、コレステリック液晶のピッチ変化による反射光波長変化を利用する温度センサ、反射光波長変化を利用する圧力センサ、組成変化による反射光波長変化を利用する紫外線センサ、電圧、電流による温度変化を利用する電気センサ、放射線粒子の飛跡に伴った温度変化を利用する放射線センサ、超音波の機械的振動による液晶分子配列変化を利用する超音波センサ、温度変化による反射光波長変化または電界による液晶分子配列変化を利用する電磁界センサ等が挙げられる。
測距センサとしては、光源を用いるLiDAR(Light Detection And Ranging)用であることが好ましい。
LiDARとしては、人工衛星用、航空機用、無人航空機(ドローン)用、自動車用、鉄道用、船舶用が好ましい。
自動車用としては、自動運転自動車用が特に好ましい。
光源はLED又はレーザであることが好ましく、レーザであることが好ましい。
LiDARに用いられる光は赤外光であることが好ましく、波長は800〜2000nmであることが好ましい。
特に、905nmまたは1550nmの波長の赤外レーザが好ましい。
用いる光検出器のコストや全天候における感度を重視する場合は905nmの赤外レーザが好ましく、人間の視覚に関する安全性を重視する場合には1550nmの赤外レーザが好ましい。
本発明に係る液晶組成物は、高いΔnを示すことから、可視光、赤外光および電磁波領域での位相変調力が大きく、検出感度に優れたセンサを提供できる。
【0289】
本発明に係る液晶レンズは、上述の液晶組成物を用いたことを特徴とし、例えば、その態様の一つとして、第1の透明電極層と、第2の透明電極層と、前記第1の透明電極層及び前記第2の透明電極層の間に設けられた上述の液晶組成物を含む液晶層と、前記第2の透明電極層及び前記液晶層の間に設けられた絶縁層と、前記絶縁層及び前記液晶層の間に設けられた高抵抗層とを有する。本発明に係る液晶レンズは、例えば、2D、3Dの切り替えレンズ、カメラの焦点調節用のレンズなどとして利用される。
【0290】
本発明に係る光通信機器は、上述の液晶組成物を用いたことを特徴とし、例えば、その態様の一つとして、反射層(電極)の上に、複数の画素の各々を構成する液晶が2次元状に配置された液晶層を有する構成のLCOS(Liquid crystal on silicon)が挙げられる。本発明に係る光通信機器は、例えば、空間位相変調器として利用される。
【0291】
本発明に係るアンテナは、上述の液晶組成物を用いたことを特徴とする。
本発明に係るアンテナは、より具体的には、複数のスロットを備えた第1基板と、前記第1基板と対向し、給電部が設けられた第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられた第1誘電体層と、前記複数のスロットに対応して配置される複数のパッチ電極と、前記パッチ電極が設けられた第3基板と、前記第1基板と前記第3基板との間に設けられた液晶層と、を備え、前記液晶層が、上述の液晶組成物を含有する。
【0292】
一般式(i)及び(ii)で表わされる液晶化合物を含有する液晶層を利用することにより、大きな誘電率異方性Δε、高い屈折率異方性Δnを有し、かつネマチック液晶温度範囲が広く、常温において安定であり、更に熱等の外部刺激に対して高い信頼性を有するアンテナを提供できる。これにより、マイクロ波又はミリ波の電磁波に対してより大きな位相制御を可能とするアンテナを提供できる。
【0293】
以下、図を用いて本発明に係るアンテナについて説明する。
【0294】
図1に示すように、アンテナユニット1が4つ連結されたアンテナ組立体11が車両(自動車)2のルーフ部に取り付けられている。アンテナユニット1は、平面型アンテナであり、ルーフ部に取り付けられていることから、通信衛星方向に対してアンテナユニット1が常に向けられている。これにより、双方で送受信が可能な衛星通信を行うことができる。
【0295】
なお、本明細書における「アンテナ」とは、アンテナユニット1又はアンテナユニット1を複数連結したアンテナ組立体11を含む。
【0296】
本発明に係るアンテナは、衛星通信に使用されるKa帯周波数又はK帯周波数もしくはKu帯周波数において動作することが好ましい。
【0297】
次にアンテナユニット1の構成要素の実施形態の一例を
図2に示す。
図2は、
図1で示すアンテナユニット1の分解図である。具体的には、アンテナユニット1は、アンテナ本体10と、アンテナ本体10を制御する制御板4と、アンテナ本体10及び制御板4とを収容可能な凹部を備えたケース3と、ケース3を封止する上蓋5とを有する構成である。
【0298】
制御板4には、送信機及び/又は受信機が設けられている。送信機は、音声又は画像等のデータといった信号源からの情報を、情報源符号化処理により、例えば、音声符号化又は画像符号化等され、伝送路符号化処理で誤り訂正符号した後、変調されて電波として伝送する機構を有する。一方、受信機は、到来電波を変調して、伝送路復号処理により誤り訂正した後、情報源復号処理により、例えば音声復号又は画像復号を経て、音声又は画像等のデータといった情報へ変換する機構を有する。また、制御板4は、公知のマイクロコンピュータであるCPU、RAM、ROM等により構成されており、アンテナ本体1、送信機及び/又は受信機の各部の動作を統轄的に制御する。制御板4が備えるCPU又はROMには予め格納された各種プログラムをRAMに読み出して実行することにより、所定の処理が実行される。制御板4は、各種の設定情報又は制御プログラムを記憶する記憶部、アンテナ本体1内の液晶層に印加する電圧量及び電圧方向に関する各種演算、電波の送信に関する各種演算、並びに/又は電波の受信における各種演算を実行する演算部、受信又は送信電波の検出あるいは液晶層への印加電圧の検出を行う検出部等の機能を備えている。
【0299】
図2では、円盤型のアンテナ本体1を収容可能なケース3の一例として、6角柱型のケース3及び上蓋5を記載しているが、アンテナ本体1の形状に応じてケース3及び上蓋5を、円柱状、八角柱状、三角柱状など公知の形状に適宜変更できる。
【0300】
アンテナ本体10の構成を説明するために、
図3〜10を用いて以下説明する。
図3は、アンテナ本体10の構成要素を分解した概略図である。
【0301】
図3に示すように、アンテナ本体10は、スロットアレイ部6と、パッチアレイ部7とを備えている。そして、スロットアレイ部6には、円板状の導体P面上にスロット(切り欠き部)8が複数形成されており、スロットアレイ部6の中心部の内部に給電部12が設けられている。また、パッチアレイ部7には、一例として長さLであり幅Wである方形のパッチ9が円板体Qに複数形成されている。そして、アンテナ本体10は、スロット8が複数形成された円板状の導体Pであるスロットアレイ部6と、パッチが複数形成された円板状のパッチアレイ部7とを有し、かつ当該円板状の導体Pの表面上に形成されたそれぞれのスロット8対して、パッチ9が対峙して配置されるよう、パッチアレイ部7とスロットアレイ部6とが貼り合わされた構造を有する。
【0302】
スロットアレイ部6は、円板状の導体
P面上に空いた切り欠き部(以下、スロット8)を放射素子(又は入射素子)として用いるアンテナ部である。そして、スロットアレイ部6は、スロット8と円板状の導体
Pの中心部に設けられた給電部12とを有する。一般的には、スロットアレイ部6は、伝送線路の先端で直接励振する、あるいはスロット背面に設けた空洞を介して励振する機構を有する。そして、スロットアレイ部6は、地板を利用したアンテナ又はマイクロストリップ線路等からスロットを介したパッチアンテナへの給電等に用いることができる。
図3では、スロットアレイ部6の一例として、ラジアルラインスロットアレイの形態を記載しているが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。
【0303】
図3におけるスロットアレイ部6の上面図を
図4に示す。以下、
図4を用いてスロットアレイ部6を説明する。スロットアレイ部6は、その中心部に設けられた同軸線により給電する構造を備えている。そのため、
図4に示すスロットアレイ部6の中心部には給電部12が設けられている。また、スロットアレイ部6は、円板状の導体Pの表面上に、一組のスロット8(以下、「スロットペア」と称する。)が複数形成されている。スロットペア8は、2つの長方形状の切り欠き部が“ハ”の字に配置された構造を備えている。より詳細には、2つの直方体状のスロット8が直交するように配置されており、スロットペア8の一方のスロットが他方のスロットに対して1/4波長離間して配置されている。これによりアンテナの方位角によって異なる回転方向を持つ円偏波を送受信できる。
【0304】
なお、本明細書では、2つのスロット8をスロットペア8と称し、1つのスロット8を単にスロット8と称し、スロット及びスロットペアの総称をスロット(ペア)8と称する。
【0305】
スロットペア8は、円板状の導体基板Pの中心部から放射方向外方に向かってらせん状に複数形成されている。そして、スロットペア8は、らせんに沿って隣接するスロットペア8間の距離がいずれも一定となるよう円盤型の基板表面に形成されている。これにより、スロットアレイ部6の正面で位相が揃って電磁界が強め合うことができ、正面にペンシルビームを形成することができる。
【0306】
なお、
図3及び4では、スロット8の形状の一例を直方体の形状として示しているが、本発明におけるスロット8の形状は、直方体に限定されず、円形、楕円形、多角形など公知の形状を採用できる。また、
図3及び4では、スロット8の一例として、スロットペアの態様を示しているが、本発明におけるスロット8は、スロットペアに限定されることはない。さらには、円板状の導体基板Pの表面におけるスロット8の配置をらせん状の例を示しているが、スロット8の配置はらせん状に限定されることはなく、スロット8を例えば後述の
図8に示すような同心円状に配置してもよい。
【0307】
本発明における給電部12は、電磁波を受信する及び/又は電磁波を放射する機能を有する。そして、本発明における給電部12は、放射素子又は入射素子であるパッチ9で電波を捕らえて発生した高周波電力を受信機に伝送する部分、あるいは高周波電力を供給するため放射素子と給電線とを接続する部分であれば、特に制限されることはなく、公知の給電部及び給電線を利用することができる。
図3及び
図4では、同軸給電部を一例として示している。
【0308】
パッチアレイ部7は、
図3に示すように、長さL、幅Wの方形状のパッチ9を複数有する円板体Qと、スロットアレイ部6との間に充填された液晶層(図示せず)と、を備えている。本実施形態におけるパッチアレイ部7は、いわゆるマイクロストリップアンテナの構成であり、長さLが1/2波長の整数倍に一致する周波数で共振する共振器である。
【0309】
なお、
図3では、パッチ9の一例として、長さL、幅Wの方形状のパッチ9を示しているが、パッチ9の形状は、四角形に限定されることはなく、円状のパッチ9であってもよい。
図5に本発明の他の実施形態として、円状のパッチ9の実施形態を示す。
【0310】
図5は、本発明におけるアンテナ本体10の上面図であり、より詳細には、アンテナ本体10をパッチアレイ部7から見た場合であって、パッチ9、給電部12、スロットペア8を円板体Qの主面に対して垂直投影した図である。そのため、パッチ9、給電部12、及びスロットペア8を破線で表示している。また、パッチ9の形状が円状である場合、一般的には、TM
11モードと呼ばれる電磁界分布で動作させることができる。
図5に示す通り、パッチ9の投影体と、スロットペア8の投影体とが重なっていることから、円板状の導体Pの表面上に形成されたそれぞれのスロット8に対して、円板体Qに設けられたパッチ9が対峙して配置される状態が理解できる。このようにそれぞれのスロット8に対して、それぞれのパッチ9が対応して配置される構成を利用することで、電磁結合給電方式によりスロット8からパッチ9へ給電する、あるいは、パッチ9からスロット8へ到来電波を伝播することができる。そのため、電波の送信及び/又は受信が可能なアンテナを提供することができる。
【0311】
一般には、同軸線等の一般的な伝送線路又は平面型伝送線路を用いてパッチアレイ部7の放射素子(例えば、パッチ9)を給電する方法は、直結給電方式及び電磁結合給電方式の2種類に大別される。そのため、本発明における給電方式としては、伝送線路を直接、パッチ9(放射素子)に接続することで放射素子を励振する方法である直結給電方式と、伝送線路とパッチ電極(放射素子)とを直接接続することなく、終端開放又は短絡とした給電線路の周囲に生じる電磁界によりパッチ電極(放射素子)を励振する方法である電磁結合給電方式との2つが挙げられる。本発明では、電磁結合給電方式の態様を示している。
【0312】
本実施形態では、(同軸)給電部12による給電線路は終端開放であるため、当該給電線路の終端が節に一致する電流定在波が生じる。これにより、当該給電線路((同軸)給電部12)を取り巻くような磁界が発生し、この磁界がスロット8へ入射することによりスロット(ペア)8が励振される。そして、スロット(ペア)8の励振により生じた磁界がパッチ9に入射することによってパッチ9が励振される。励振強度が最大になるのはスロット8に入射する磁界が最大のときであるため、給電線路((同軸)給電部12)から発生する磁界が最大となる位置(電流定在波の腹)にスロット(ペア)8を形成することが好ましい。
【0313】
本発明に係るアンテナの好適な態様は、
ラジアルラインスロットアレイと、パッチアンテナアレイとを組み合わせた構成である。
【0314】
次に、
図5に示すアンテナ本体10の断面図である
図6を用いて、アンテナ本体10の実施形態を説明する。
図6は、アンテナの構成を示す概略図であることはいうまでもない。
【0315】
図6に示すように、アンテナ本体10は、円板状の第2基板14と、複数のスロット(ペア)8が中心部から放射方向外方に向かって形成された、円板状の第1基板13(円板状の導体Pに対応する。スロットアレイ基板とも称する)と、第2基板14及び第1基板13の間に設けられた第1誘電体層17と、円板状の第1基板13及び円板状の第2基板14の中心部に設けられた給電部12と、円板状の第3基板15(円板体Qに対応する。パッチ基板とも称する。)と、第3基板15に取り付けられたパッチ9(放射素子又は入射素子)と、第3基板15及び第1基板13の間に設けられた液晶層16とを有する。また、給電部12は給電線12aを介して、制御基板に設けられた送信機及び/又は受信機と電気的に接続されている。そして、それぞれのスロットペア8に対してそれぞれのパッチ9が対応している。
【0316】
ここでいう「(それぞれ)スロットペア8に対して(それぞれ)パッチ9が対応している」とは、上述した
図5の説明の通り、第2基板14の主面に対してパッチ9を垂直投影した投影面がスロット(ペア)8と重なることをいう。換言すると、第3基板15の主面に対してスロット(ペア)8を垂直投影した投影面がパッチ9と重なることをいう。
【0317】
また、第1基板13、第2基板14、及び第3基板15は、同一の面積を有する円板体であることが好ましい。
【0318】
図6において、(同軸)給電部12により給電された電波(矢印)が円筒波になって第1誘電体層17内を放射方向外方へ伝播する間に、スロット(ペア)8から液晶層16へと伝送される様子を記している。そして、スロット(ペア)8は、
図4に示したように、いわゆる“ハ”の字型の直交する2つのスロットを1/4波長ずらして配置されていると、円偏波を発生することができる。上述したように、電磁結合給電方式により、スロット(ペア)8が励振されることによってスロット(ペア)8から生じた磁界が、パッチ9に入射してパッチ9が励振される。その結果、パッチ9は指向性の高い電波を放射することができる。
【0319】
一方、到来電波を受信する場合は、送受可逆の定理により、上記とは逆にパッチ9が到来電波を受信した後、当該パッチ9の直下に設けられたスロット(ペア)8を介して給電部12に到来電波が伝播される。
【0320】
円偏波は、直線偏波とは異なり、時間経過とともに電界方向が回転する電波であり、GPS又はETCで使用される右旋円偏波と、衛星ラジオ放送等で使用される左旋円偏波とに分類され、本発明に係るアンテナは、いずれの偏波であっても受信することができる。
【0321】
パッチ9と第1基板13との間の液晶層16に電圧を印加することにより液晶層16の液晶分子の配向方向を変えることができる。その結果、液晶層16の誘電率が変わるためスロット(ペア)8の静電容量が変化し、結果的にはスロット(ペア)8のリアクタンス、及び共振周波数を制御することができる。換言すると、液晶層16の誘電率を制御することにより、スロット8のリアクタンス、及び共振周波数を調節できるため、スロット(ペア)8及びパッチ9の励振の調節による各パッチ9への給電を制御することができる。これにより、液晶層16を介する放射電波の調節が可能となる。そのため、例えば、TFTなど液晶層16に印加する電圧を調節する印加電圧調節手段を設けてもよい。また、液晶層16の液晶分子の配向方向を変えることにより屈折率が変化し、その結果として液晶層16を透過する電磁波の位相がずれて、その総合的な結果としてフェーズドアレイ制御が可能となる。
【0322】
第1基板13及び第2基板14の材料は、銅などの導体であれば特に制限されることはない。また、第3基板15の材料は特に制限されることはなく、使用態様に応じて、ガラス基板、アクリル基板、セラミック(アルミナ)、シリコン、ガラスクロステフロン(登録商標)(PTFE)等の公知の材料を使用することができる。第1誘電体層17の材料は、所望の比誘電率に応じて適宜公知の材料を選択することができ、真空であってもよい。さらに、パッチ9の材料は、銅、銀などの導体であれば特に制限されることはない。
【0323】
次に、
図7を用いて、アンテナ本体10の他の実施形態を説明する。
図7において示す実施形態は、アンテナ本体10のスロットアレイ部6の部分が
図6で示す実施形態とは異なる態様である。
【0324】
図7において、アンテナ本体10は、一方の表面に複数のスロット(ペア)8が形成された、中空体の第1基板13と、当該中空体の第1基板13の内部に収容された、円板状の第2基板14、第1誘電体層17、及び給電部12と、円板状の第3基板15と、第3基板15に取り付けられたパッチ9と、第3基板15及び第1基板13の間に設けられた液晶層16とを有し、給電部12は、複数のスロット(ペア)8が形成されていない他方の第1基板13の表面と第2基板14との間に設けられ、かつ第1基板13及び円板状の第2基板14の中心部に設けられている。また、給電部12は給電線12aを介して、制御基板に設けられた送信機及び/又は受信機と電気的に接続されている。そして、それぞれのスロットペア8に対してそれぞれのパッチ9が対応している。また、
図7において、中空体の第1基板13の両側面部は、中空体の外方に突出しており、具体的には、水平方向に対して45°の傾斜面を有する。
【0325】
図7において示すように、(同軸)給電部12により給電された電波(矢印)が円筒波になって第1誘電体層17内を放射方向外方へ伝播する。そして、伝播した円筒波が中空体の第1基板13の両側面部で反射されることにより、第2基板14を回り込んだ円筒波が、円板状の第1基板13の外周から中心に向かう進行波(矢印)に変換されて第1誘電体層17内を伝播する。その際、スロット(ペア)8から液晶層16へ進行波が伝送される。これにより、
図6で示した実施形態と同様にパッチ9が励振されて、指向性の高い電波を放射することができる。
【0326】
一方、到来電波を受信する場合も同様に、パッチ9が到来電波を受信した後、当該パッチ9の直下に設けられたスロット(ペア)8を介して給電部12に到来電波が伝播する。
【0327】
次に、
図8〜
図10を用いて、アンテナ本体10の別の実施形態について説明する。上述した
図5〜
図7のアンテナ本体10の実施形態では、第1基板13と第3基板15との間に液晶層16が一様に設けられたアンテナ本体10の構成について説明した。一方、
図8〜
図10の実施形態では、パッチ9とスロット8とそれぞれ配置された空間内(以下、密封領域20)に液晶層16が充填されたアンテナ本体10の構成について説明する。
【0328】
図8は、本発明に係るアンテナ本体10の実施形態の一例を示す上面図である。より詳細には、
図8は、アンテナ本体10をパッチアレイ部7から見た場合であって、パッチ9、給電部12、スロット8を円板体Qの主面に対して垂直投影した図である。そのため、
図5と同様に、パッチ9、給電部12、及びスロット8を破線で表示している。
図8では、方形状のパッチ9と、1つの直方体状のスロット8とが密封領域20にそれぞれ対応して配置されている。また、
図8に示す通り、パッチ9の投影体と、スロット8の投影体とが重なっていることから、パッチ9の直下にスロット8が形成されている。これにより、
図8で示すアンテナ本体10の実施形態は、電磁結合給電方式によりスロット8からパッチ9へ給電する、あるいはパッチ9からスロット8へ到来電波を伝播することができる。そのため、電波の送信及び/又は受信が可能なアンテナを提供することができる。
【0329】
また、
図8で示すように、本実施形態において、パッチ9及びスロット8は、円板体Qの中心から円板体Qの外周方向に向かって、同心円状に配置されている。そのため、同軸モード給電により、円錐ビームが出るため、円板体Qの正面で位相が揃って電磁界が強め合うことができる。
【0330】
次に、
図8に示すアンテナ本体10の断面図である
図9を用いて、アンテナ本体10の実施形態を説明する。なお、
図9は、アンテナの構成を示す概略図であることは言うまでもない。
【0331】
図9に示すように、アンテナ本体10は、円板状の第2基板14と、複数のスロット8が中心部から放射方向外方に向かって同心軸状に形成された、円板状の第1基板13と、第2基板14側の第1基板13表面に設けられたバッファー層22と、バッファー層22と第2基板14との間に設けられた第1誘電体層17と、円板状の第1基板13及び円板状の第2基板14の中心部に設けられ、かつ第1誘電体層17と接触するよう設けられた給電部12と、円板状の第3基板15と、第3基板15に取り付けられたパッチ9(放射素子又は入射素子)と、第3基板15及び第1基板13の間のシール壁24によって隔離され、かつパッチ9が設けられた複数の密封領域20内をパッチ9と接触するように充填された液晶層16と、を有する。また、給電部12は給電線12aを介して、制御基板に設けられた送信機及び/又は受信機と電気的に接続されている。そして、それぞれのスロット8に対してそれぞれのパッチ9が対応しており、各密封領域20内には、少なくとも1つのパッチ9と、少なくとも1つのスロット8と、液晶層16とが存在しており、複数の密封領域20のそれぞれはシール壁21,23,24を介して隔離されている。
【0332】
図9には示されていないが、必要により各密封領域20内に液晶層16の電圧を制御するTFT(薄膜トランジスタ)を例えば、第1基板13上に設けてもよい。これにより、液晶層16の電圧の印加をアクティブ方式で制御することができる。また、必要により、各密封領域20内に液晶層16を構成する液晶分子の配向方向を固定するために配向膜を設けてもよい。上記配向膜としては、液晶分子の垂直方向へ配向を容易にするホメオトロピック配向膜又は液晶分子の水平方向へ配向を容易にするホモジニアス配向膜を第1基板13と液晶層16との間に設けてもよい。例えば、ポリイミド配向膜、光配向膜等が挙げられる。
【0333】
次に、
図8に示すアンテナ本体10のB−B線で切断した断面図である
図10を用いて、本実施形態における密封領域20を説明する。なお、
図10は、密封領域20を示す概略図であることは言うまでもない。
【0334】
図10に示すように、密封領域20は、シール壁24と、バッファー層22及び第1基板13と第3基板15とによって、上下四方囲まれた密封空間であり、内部には少なくとも1つのパッチ9と、少なくとも1つのスロット8とが対峙するよう同一の密封空間内に設けられ、かつ液晶層16が充填されている。
【0335】
本実施形態において、シール壁24は、公知の絶縁体などから形成されていてもよい。また、バッファー層22は、公知の誘電体材料などから形成されていてもよい。
【0336】
図10には示していないが、必要により密封領域20内に液晶層16の電圧を制御するTFT(薄膜トランジスタ)を、例えば、第1基板13上に設けてもよい。これにより、液晶層16の電圧の印加をアクティブ方式で制御することができる。当該アクティブ方式よる駆動方法についてより詳細に説明すると、例えば、パッチ9を共通電極とし、かつ第1基板13を画素電極として、第1基板13上に形成されたTFTによりパッチ9と第1基板13との間の電圧を制御して液晶層16の液晶分子の配向を制御する方法、あるいは第1基板13を画素電極とし、かつ第1基板13上に電極層及びTFTを形成して、パッチ9と第1基板13との間の電圧を制御して液晶層16の液晶分子の配向を制御する方法、さらには第1基板13上に櫛歯電極及びTFTを設けて、当該TFTにより液晶層16の液晶分子の配向を制御する方法等が挙げられる。なお、液晶層16の電圧の印加をアクティブ方式で制御する方法は上記方法に限定されることはない。
【0337】
また、この際、各密封領域20内に液晶層16を構成する液晶分子の配向方向を固定するために配向膜を設けてもよい。上記配向膜としては、液晶分子の垂直方向へ配向を容易にするホメオトロピック配向膜又は液晶分子の水平方向へ配向を容易にするホモジニアス配向膜を第1基板13と液晶層16との間に設けてもよい。
【0338】
液晶層16を同調させるために、パッチ9と第1基板13との間の液晶層16に印加する電圧を変調してもよい。例えば上述したように、液晶層16への印加電圧がアクティブ方式を用いて制御されることにより、スロット8の静電容量が変化し、結果的にはスロット8のリアクタンス、及び共振周波数を制御することができる。スロット8の共振周波数は、線路を伝播する電波から放射されるエネルギーに対して相関関係を有する。そのため、スロット8の共振周波数を調整することにより、スロット8が給電部12からの円筒波エネルギーと実質的に結合しないようにする、あるいは円筒波エネルギーと結合し、自由空間に放射する。このような、スロット8のリアクタンス及び共振周波数の制御は、複数形成されている密封領域20のそれぞれで行うことができる。換言すると、液晶層16の誘電率を制御することにより、各密封領域20内のパッチ9への給電をTFTにより制御することができる。そのため、電波を送信するパッチ9と電波を送信しないパッチとを制御することができるため、液晶層16を介する放射電波の送信及び受信の調節が可能となる。
【実施例】
【0339】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)式(I−1)で表される化合物の製造
【0340】
【化78】
【0341】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I−1−1)で表される化合物33.7g、ヨウ化銅(I)0.5g、トリエチルアミン67mL、N,N−ジメチルホルムアミド202mL、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.9gを加えた。80℃で、式(I−1−2)で表される化合物20.0gをN,N−ジメチルホルムアミド20mLに溶解させた溶液を滴下し、6時間加熱撹拌した。冷却し、反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を5%塩酸、水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I−1−3)で表される化合物20.6gを得た。
【0342】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I−1−3)で表される化合物18.6g、テトラヒドロフラン186mLを加えた。−70℃で、secブチルリチウム(1.05M)/シクロヘキサン・ヘキサン溶液84.4mLを滴下し、1時間撹拌した。−65℃でヨウ素22.5gをテトラヒドロフラン68mLに溶解させた溶液を滴下し、2時間撹拌した。徐々に室温まで昇温した。水及び亜硫酸水素ナトリウム水溶液を滴下し、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン)及び再結晶(メタノール)により精製を行うことによって、式(I−1−4)で表される化合物13.9gを得た。
【0343】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I−1−4)で表される化合物12.9g、ビス(ピナコラト)ジボロン10.4g、酢酸カリウム10.1g、ジメチルスルホキシド104mLを加えた。85℃で、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物0.5gを加え、5時間加熱撹拌した。冷却し、反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ、トルエン)により精製を行うことによって、式(I−1−5)で表される化合物12.8gを得た。
【0344】
窒素雰囲気下、反応容器に式(I−1−6)で表される化合物3.5g、炭酸カリウム3.4g、トルエン28mL、エタノール14mL、水14mL、ジクロロビス[ジ−t−ブチル(p−ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)0.2gを加えた。加熱還流させながら、式(I−1−5)で表される化合物6.1gをトルエン12mL及びエタノール6mLに溶解させた溶液を滴下し、5時間加熱還流させた。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を水及び食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)及び再結晶(ヘキサン)により精製を行うことによって、式(I−1)で表される化合物5.0gを得た。
相転移温度:C 79 N 134 I
1H−NMR(400MHz,CHLOROFORM−D)δ7.47−7.33(m,5H),7.29−7.26(d,2H),7.19(d,J=8.2Hz,2H),2.64(t,J=7.8Hz,2H),1.65−1.57(m,2H),1.36(td,J=14.9,7.3Hz,2H),0.94(t,J=7.3Hz,3H)
MS(EI):m/z=389
(実施例2)式(I−2)で表される化合物の製造
【0345】
【化79】
【0346】
実施例1において、式(I−1−6)で表される化合物を式(I−2−2)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I−2)で表される化合物を製造した。
相転移温度:C 76 N 183 I
MS(EI):m/z=371
(実施例3)式(I−3)で表される化合物の製造
【0347】
【化80】
【0348】
実施例1において、式(I−1−2)で表される化合物を式(I−3−2)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(I−3)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=425
(実施例4)式(II−1)で表される化合物の製造
【0349】
【化81】
【0350】
窒素雰囲気下、反応容器に式(II−1−1)で表される化合物10.0g、ジクロロメタン100mLを加えた。室温で、ペルオキシ一硫酸カリウム[KHSO
5(>約45%)]125gを水200mLに溶解させた溶液を滴下し、室温で15時間撹拌した。反応液を分液処理し、有機層を5%塩酸、水及び食塩水で順次洗浄した。溶媒を留去した後、酢酸200mLに溶解させた。室温で、式(II−1−2)で表される化合物6.6gを加え、15時間撹拌した。析出物を濾過し、酢酸及び水で順次洗浄した。乾燥させることによって、式(II−1−3)で表される化合物13.2gを得た。
【0351】
International Journal of Molecular Sciences誌、2013年、14巻、12号、23257−23273頁に記載の方法によって式(II−1−4)で表される化合物を製造した。窒素雰囲気下、反応容器に式(II−1−3)で表される化合物13.2g、ヨウ化銅(I)0.2g、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド ジクロロメタン付加物0.2g、トリエチルアミン26mL、N,N−ジメチルホルムアミド78mLを加えた。50℃で加熱しながら、式(II−1−4)で表される化合物6.7gをN,N−ジメチルホルムアミド14mLに溶解させた溶液を滴下し、8時間加熱撹拌した。反応液を水に注ぎ、トルエンで抽出した。有機層を5%塩酸、食塩水で順次洗浄した後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン/ヘキサン)、活性炭処理及び再結晶(アセトン/ヘキサン)により精製を行うことによって、式(II−1)で表される化合物10.2gを得た。
MS(EI):m/z=398
(実施例5)式(II−2)で表される化合物の製造
【0352】
【化82】
【0353】
実施例4において、式(II−1−1)で表される化合物を式(II−2−1)で表される化合物に、式(II−1−2)で表される化合物を式(II−2−2)で表される化合物に、式(II−1−4)で表される化合物を式(II−2−4)で表される化合物に置き換えた以外は同様の方法によって、式(II−2)で表される化合物を製造した。
MS(EI):m/z=402
実施例に記載のネマチック液晶組成物を製作し、各種物性値を測定した。以下の実施例及び比較例の組成物は各化合物を表中の割合で含有し、含有量は「質量%」で記載した。実施例において化合物の記載について以下の略号を用いる。
(環構造)
【0354】
【化83】
【0355】
以下の実施例において、特に断りがない限り、トランス体を表す。
(側鎖構造及び連結構造)
【0356】
【表1】
【0357】
(物性値とその評価方法)
<上限温度(T
NI(℃))>
T
NI(℃):組成物がネマチック相から等方相へ転移する温度
<屈折率異方性(Δn)>
Δn:液晶組成物の25℃、589nmにおける屈折率異方性
・屈折率異方性の評価方法
ポリイミド配向膜付きのガラスセルに液晶組成物を注入し、測定温度25℃、589nmにおける面内のリタデーション(位相差)を位相差フィルム・光学材料検査装置RETS−100(大塚電子株式会社製)で測定した。尚、ガラス基板間のセルギャップ3.0μm、ポリイミド配向膜のラビング方向が平行のガラスセルを使用した。また、位相差=液晶層の厚さ(セルギャップ)×Δnの式から、液晶組成物のΔnを算出した。
<誘電率異方性(Δε)>
Δε:液晶組成物の25℃における誘電率異方性
(実施例6〜15)
表2、表3に示した液晶化合物を調製し、ネマチック液晶組成物を製作して、上記の評価方法により各種物性値を測定した。
(比較例1〜4)
表4、表5に示した液晶化合物を調製し、ネマチック液晶組成物を製作して、上記の評価方法により各種物性値を測定した。
【0358】
【表2】
【0359】
【表3】
【0360】
【表4】
【0361】
【表5】
【0362】
可視光領域のΔnは、数十GHz帯のΔεと相関し、Δnが高いほどGHz帯の誘電率の変化を大きくすることができるため、表2〜表5に示す評価結果から、実施例6〜15の液晶組成物は、アンテナ用の液晶として好ましいことが確認された。また、表2〜表5に示す評価結果から、実施例6〜15は、比較例3〜4に比べ、Δnが高く、また比較例1〜2に比べ、Tniが高く、Δεが高いことがわかった。また、Tniについては、実施例6〜15は、比較例3〜4に比べ、同程度あるいは高い数値を示し、比較例1〜2に比べ、高いことがわかった。
【0363】
比較例1〜4の液晶組成物は、Δnが低いか、若しくは、Δεが低い値となり、電波の大きな位相制御が可能でないか、若しくは、実用に耐えうるΔεを有していないため、アンテナ用の液晶としては使用し難いことが確認された。
【0364】
(実施例16〜18)
更に、実施例6〜15と同様に種々の液晶組成物を調
製し、評価を行ったところ同様の効果が得られることが確認できた。結果を表6に示す。
【0365】
【表6】
本発明は、マイクロ波又はミリ波の電磁波に対してより大きな位相制御を可能とする液晶材料において、高いΔnを有し、且つ、高いΔεを有する、ネマチック液晶組成物、及び、これを用いた液晶素子、センサ、液晶レンズ、光通信機器又はアンテナを提供する。具体的には、本発明は、一般式(i)で表される化合物の1種又は2種以上と、一般式(ii)で表わされる化合物の1種又は2種以上と、を含有する液晶組成物であり、高いΔnを有し、且つ、高いΔεを有する。