(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒートシール層(A)中のポリ乳酸系樹脂(a1)とポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)との含有量比が、(a1)/(a2)で表される質量比で、75/25〜25/75である請求項1に記載の積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の積層フィルムは、ヒートシール層(A)と、当該ヒートシール層(A)と直接積層される樹脂層(B)とを有し、ヒートシール層(A)がポリ乳酸系樹脂(a1)とポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)とを含有し、樹脂層(B)が、ポリ乳酸系樹脂(b1)及びポリブチレンサクシネート系樹脂(b2)の少なくとも一種を主たる樹脂成分として含有する積層フィルムである。
【0013】
[ヒートシール層(A)]
本発明に使用するヒートシール層(A)は、ポリ乳酸系樹脂(a1)と、ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)とを樹脂成分として含有する。ヒートシール層として、当該樹脂を含有することで、各種被着体に対して、好適なヒートシール性と易開封性とを実現できる。
【0014】
ヒートシール層(A)に使用するポリ乳酸系樹脂(a1)としては、例えば、ポリ乳酸(ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸))、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、D−乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ジカルボン酸およびジオールをエステル反応させて得られたポリエステル成分を乳酸成分と共重合させた重合体等が挙げられる。なかでも、成膜安定性や入手容易性等の観点からポリ乳酸が好ましく、主たる構造単位がL−乳酸であるポリ乳酸が寄り好ましい。これら重合体は、単独で使用しても併用して使用してもよい。
【0015】
上記ヒドロキシカルボン酸、ジオール、ジカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカプロン酸類、カプロラクトン、ブチロラクトン、ラクチド、グリコリド等の環状ラクトン類などのヒドロキシカルボン酸;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
前記ポリ乳酸系樹脂(a1)は、押出成形時に良好な流動性を実現しやすいことからメルトフローレート(190℃、21.18N)が、好ましくは0.5〜30g/10min、より好ましくは2〜25g/10minである。かかるメルトフローレートの範囲であると、押出成形が容易であり、また、共押出多層化するときに、隣接層との流動性も良好でより外観に優れた積層フィルムを得やすくなる。
【0017】
また、ポリ乳酸系樹脂(a1)の密度は1.20〜1.26g/cm
3であることが好ましく、1.23〜1.25g/cm
3であることがより好ましい。
【0018】
ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)としては、例えば、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体(PBSA)が挙げられる。前記ポリ(ブチレンサクシネート)は、1,4−ブタンジオールとコハク酸の重縮合物であり、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体は、1,4−ブタンジオールとコハク酸に加えて、アジピン酸を加えた重縮合物である。かかるポリ(ブチレンサクシネート及びポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体は、分子量を上げるために、乳酸または多官能イソシアネート化合物によって高分子量化することができ、適当な分子量に調整できる。
【0019】
ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)のメルトフローレート(190℃、21.18N)は、0.5〜25g/10min程度がフィルム押出成形性の点から好ましく、さらに好ましくは1〜20g/10minである。
【0020】
また、ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)の密度は1.20〜1.29g/cm
3であることが好ましく、1.21〜1.27g/cm
3であることがより好ましい。
【0021】
ヒートシール層(A)中のポリ乳酸系樹脂(a1)と、ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)との含有量比は、(a1)/(a2)で表される質量比で、75/25〜25/75であることが好ましく、70/30〜30/70であることがより好ましい。当該範囲とすることで、透明性が向上し、剛性と耐衝撃性とのバランスが良好になり、冷凍・低温保存下での低温落下衝撃性が上昇する。それによりラミネート印刷加工性も良好となる。さらにシール面のすべり性も良好となり、高温下での耐ブロッキング適性も向上する。
【0022】
ヒートシール層(A)中のポリ乳酸系樹脂(a1)と、ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)との含有量は、両者の合計が、ヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的に樹脂成分がこれら樹脂のみからなるものであってもよい。これら含有量とすることで、各種材料への好適なヒートシール性や易開封性、耐衝撃性等を得やすくなる。
【0023】
ヒートシール層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の樹脂を含有してもよい。当該他の樹脂としては、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂を好ましく例示できる。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体等が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレン等が挙げられる。
【0024】
また、上記ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等を使用できる。
【0025】
また、ポリエステル系樹脂としては、ポリエステルの構成モノマーである、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のほう後続ジカルボン酸を含むものであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が知られている。又これらの芳香族ポリエステル系樹脂の他方の構成モノマーであるジオール成分としては、特に制限はない。通常、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールが使われることが多いが、Tgを低下させず結晶性を低下させるために、シクロヘキサンジメタノールのような脂肪族ジオールを使用した、芳香族脂肪族ポリエステル樹脂(PETG)も、よく使用できる。
【0026】
上記ポリ乳酸系樹脂(a1)及びポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)以外の他の樹脂を使用する場合には、その含有量がヒートシール層に含まれる樹脂成分中の20質量%以下で使用することが好ましく、10質量%以下で使用することがより好ましい。
【0027】
これら他の樹脂を使用する場合には、ヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。
【0028】
ヒートシール層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等を例示できる。
【0029】
[樹脂層(B)]
本発明に使用する樹脂層(B)は、積層フィルムのヒートシール層(A)と直接積層される層である。当該樹脂層(B)としては、ポリ乳酸系樹脂(b1)及びポリブチレンサクシネート系樹脂(b2)を主たる樹脂成分として含有する。当該樹脂層(B)を使用することで環境対応が可能な材料を使用しつつヒートシール層(A)と好適に積層でき、得られる積層フィルムの良好な剥離性を実現できる。ポリ乳酸系樹脂(b1)及びポリブチレンサクシネート系樹脂(b2)は、各々単独で使用しても併用してもよい。いずれかを単独で使用する場合には、得られる積層フィルムの物性調整が容易であるため好ましい。
【0030】
ポリ乳酸系樹脂(b1)としては、上記ヒートシール層(A)におけるポリ乳酸系樹脂(a1)と同様のものを使用でき、好ましく使用できる種類、メルトフローレートや密度の好ましい範囲等も同様である。
【0031】
ポリブチレンサクシネート系樹脂(b2)としては、上記ヒートシール層(A)におけるポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)と同様のものを使用でき、好ましく使用できる種類、メルトフローレートや密度の好ましい範囲等も同様である。
【0032】
樹脂層(B)中のポリ乳酸系樹脂(b1)及びポリブチレンサクシネート系樹脂(b2)の含有量としては、その総量が、樹脂層(B)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的にこれら樹脂のみであることも好ましい。
【0033】
樹脂層(B)中には、上記以外の他の樹脂を含有してもよく、当該他の樹脂としては、上記ヒートシール層(A)にて例示したポリオレフィン系樹脂や、当該ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂として例示したものを使用できる。
【0034】
上記樹脂層(B)中に、オレフィン系樹脂以外の他の樹脂を使用する場合には、その含有量が樹脂層(B)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下で使用することが好ましく、10質量%以下で使用することがより好ましい。
【0035】
樹脂層(B)中には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等を例示できる。
【0036】
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、上記のヒートシール層(A)と樹脂層(B)とを有し、ヒートシール層(A)と樹脂層(B)とが直接積層された積層フィルムである。本発明の積層フィルムは、当該構成とすることで、環境対応材料をはじめとする各種材料の包装材に対して、好適なヒートシール性と易開封性とを実現できる。また、各層を生分解性樹脂や植物由来の原料を使用したバイオマス樹脂から構成できることから、積層フィルム自体の環境対応性も高い。さらに、被着体との界面にて剥離する界面剥離による易開封性を実現できることから、剥離した際の剥離面の外観を良好な外観とできる。
【0037】
本発明の積層フィルムにおいては、ヒートシール層(A)が積層フィルムの一方の表層を構成する。ヒートシール層(A)とは他方の表層は、樹脂層(B)であってもよいが、ヒートシール層の厚みを好適に調整しつつ、製造時の安定性や好適な成膜性を得やすい場合があることから、表層を構成する他の樹脂層(C)を積層することも好ましい。
【0038】
当該樹脂層(C)としては、上記樹脂層(B)と同様のものを好ましく使用でき、樹脂層(B)と全く同一の樹脂配合であっても、異なる樹脂配合であってもよい。同一の樹脂配合とすれば製造が容易であるため好ましい。また、異なる樹脂配合とすることで積層フィルムの物性調整も可能となる。
【0039】
さらに、樹脂層(C)と樹脂層(B)との間に他の樹脂層(D)を設けてもよく、特に本発明においてはヒートシール層(A)以外の層の全厚に占める割合が高いので、共押出法を用いる際のヒートシール層(A)との厚み調整を容易にするために、四層構成にすることも、均質性に優れる多層フィルムを得やすいため好ましい。樹脂層(D)を設ける場合にも、樹脂層(D)が、上記樹脂層(B)や樹脂層(C)と好ましい樹脂や配合を使用した層とすればよく、樹脂層(D)の樹脂組成物は、樹脂層(B)や樹脂層(C)と、全く同一の混合物であっても、それぞれの樹脂の配合や、MFR、密度が異なる混合物を使用してもよい。
【0040】
具体的な好ましい層構成の例としては、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(C)、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(C)、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(D)/樹脂層(C)等が例示できる。
【0041】
本発明の積層フィルムの厚さ(全厚)としては、包装材料の軽量化の観点と、易開封性の点より、20〜70μmであることが好ましく、なかでも20〜50μmの範囲であることがより好ましい。
【0042】
ヒートシール層(A)の厚さはフィルム全厚の8〜90%の範囲であることが好ましく、10〜70%の範囲であることがより好ましい。積層フィルムをヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(C)の三層構成とする場合には、フィルム全厚に対する樹脂層(B)の厚さを10〜92%、樹脂層(C)の厚さを10〜40%とすることが好ましく、樹脂層(B)の厚さを20〜60%、樹脂層(C)の厚さを10〜30%とすることがより好ましい。積層フィルムをヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(D)/樹脂層(C)の四層構成とする場合には、フィルム全厚に対する樹脂層(B)の厚さを10〜30%、樹脂層(C)の厚さを20〜60%、樹脂層(D)の厚さを10〜35%とすることが好ましく、樹脂層(B)の厚さを10〜25%、樹脂層(C)の厚さを25〜55%、樹脂層(D)の厚さを10〜30%とすることがより好ましい。
【0043】
具体的な厚みとしては、ヒートシール層(A)は好ましくは2〜30μm、より好ましくは3〜20μmである。
【0044】
本発明の積層フィルムは、各層を生分解性樹脂や植物由来原料を使用したバイオマス樹脂から構成できるため優れた環境対応性を実現できる。特に優れた環境対応性を有することから、積層フィルムの樹脂成分中の生分解性樹脂と植物由来の原料を使用したバイオマス樹脂の総量が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、樹脂成分が実質的にこれら樹脂のみからなるものも特に好ましい。また、樹脂層(B)、樹脂層(C)及び樹脂層(D)の樹脂成分としてポリ乳酸系樹脂を主たる樹脂成分とした場合には、積層フィルム自体を生分解性とできるため好ましい。また、各層の樹脂成分として、バイオマス樹脂を使用した場合には、比較的安価に環境対応性を付与できる。
【0045】
[積層フィルムの製造方法]
本発明の積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、各層に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態でヒートシール層(A)/樹脂層(B)、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(C)、または、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)/樹脂層(D)/樹脂層(C)、を積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出する方法が挙げられる。共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた積層フィルムが得られるので好ましい。融点とTgとの差が大きい樹脂を積層するような場合は、共押出加工時にフィルム外観が劣化したり、均一な層構成形成が困難になったりする場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
【0046】
さらに、ヒートシール層(A)とは他方の表面に印刷やラミネート等を行なう場合には、印刷インキや接着剤との接着性等を向上させるため、ヒートシール層(A)とは他方の表面に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0047】
[ラミネートフィルム]
本発明の積層フィルムは、各種包装容器の蓋材等に好適に使用できることから、ヒートシール層(A)とは他方の表面にラミネート基材を積層してラミネートフィルムとすることも好ましい。ラミネート基材としては、特に限定されるものではないが、一般に破断しない強度の確保、ヒ−トシール時の耐熱性確保、および印刷の意匠性向上等が図られることから、延伸基材フィルムであることが好ましい。延伸基材フィルムとしては、2軸延伸ポリエステルフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム等を使用できるが、破断強度、透明性等の点で2軸延伸ポリエステルフィルム及び2軸延伸ナイロンフィルムがより好ましい。なお、前記基材フィルムとしては、必要性に応じて、易裂け性処理や帯電防止処理が施されていてもよい。
【0048】
ラミネートフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、前記積層フィルムのベース層(A)層の上にラミネート基材をラミネートする方法が挙げられる。本発明の前記積層フィルムにラミネート基材をラミネートする方法としては、例えば、ドライラミネート法、熱ラミネート法、多層押出コーティング法等が挙げられるが、これらのなかでも、ドライラミネート法がより好ましい。また、ドライラミネート法で、前記積層フィルムとラミネート基材とをラミネートする際に用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。また、本発明の共押出積層フィルムと基材とをラミネートする前に、前記表面層の表面にコロナ放電処理を施すと、基材との密着性が向上するため好ましい。
【0049】
[包装体]
本発明の積層フィルム及びラミネートフィルムは、各種の包装用材料として好適に用いることができる。特に、乳製品、ヨーグルト、ゼリー、豆腐、漬物容器、キムチ容器、お菓子容器、米飯容器、インスタントラーメン容器等に好適に用いることができ、開口部を有する包装容器の蓋材として特に好適に使用できる。
【0050】
開口部を有する包装容器としては、ポリ乳酸系重合体、ポリオレフィン系重合体、紙/ポリブチレンサクシネート系重合体、紙/ポリオレフィン系重合体、ポリエチレンテレフタレート等の各種包装容器を使用できる。本発明の積層フィルムは、これら各種材料の包装容器に対して好適なヒートシール性と易開封性とを実現できる。
【実施例】
【0051】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
【0052】
(実施例1)
ヒートシール層(A)及び樹脂層(B)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂混合物を調整した。各層を形成する樹脂混合物を2台の押出機に各々溶融して供給し、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが20μm/30μmとなるように、フィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:230℃)にそれぞれ供給して共押出して、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、全厚が50μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):ポリブチレンサクシネート系樹脂(PTTMCC Biochem社製「FD92PB」、密度:1.24g/cm
3、融点84℃、MFR:4g/10分(190℃、21.18N);以下、「PBSA(1)」という。)50質量部、ポリ乳酸系樹脂(Nature Works社製「4043D」、密度:1.24g/cm
3、MFR:6g/10分(190℃、21.18N);以下、「PLA(1)」という。)50質量部の樹脂混合物。
樹脂層(B):PBSA(1)100質量部。
【0053】
(実施例2)
ヒートシール層(A)、樹脂層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが10μm/20μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):PBSA(1)25質量部、PLA(1)75質量部の樹脂混合物。
樹脂層(B):PLA(1)100質量部。
【0054】
(実施例3)
ヒートシール層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが15μm/15μmとなるようにした以外は、実施例2と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):ポリブチレンサクシネート系共重合体(PTTMCC Biochem社製「FZ91PB」、密度:1.26g/cm
3、融点115℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N);以下、「PBS(1)」という。)50質量部、PLA(1)50質量部の樹脂混合物。
【0055】
(実施例4)
ヒートシール層(A)、樹脂層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが10μm/20μmとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):PBS(1)70質量部、PLA(1)30質量部の樹脂混合物。
樹脂層(B):PBSA(1)50質量部、PLA(1)50質量部。
【0056】
(比較例1)
ヒートシール層(A)、樹脂層(B)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、ヒートシール層(A)/樹脂層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが6μm/24μmとなるようにした以外は、実施例2と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):直鎖状低密度密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製「UBEポリエチレン 2040」、密度:0.920g/cm
3、融点110℃、MFR:4g/10分(190℃、21.18N);以下、「PE(1)」という。)100質量部。
【0057】
(比較例2)
PBSA(1)を用いて、フィルム厚さが30μmの単層フィルムを得た。
【0058】
(比較例3)
PLA(1)を用いて、フィルム厚さが30μmの単層フィルムを得た。
【0059】
(比較例4)
PE(1)を用いて、フィルム厚さが30μmの単層フィルムを得た。
【0060】
上記実施例及び比較例で得られたフィルムにつき、以下の評価を行った。得られた結果を下表に示した。
【0061】
(ラミネートフィルムの作製)
上記の実施例及び比較例で得られた多層フィルムの基材層(B)側表面又は単層フィルム表面に二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)をドライラミネーションで貼り合わせて、ラミネートフィルムを得た。この際、ドライラミネーション用接着剤としては、DIC株式会社製の2液硬化型接着剤(ポリエステル系接着剤「LX63F」及び硬化剤「KP90」)を使用した。
【0062】
(透明性の評価)
JIS K7105に準拠し、日本電色工業社製、ヘイズメータ NDH5000で上記の実施例及び比較例で得られたフィルムのヘイズを測定し、透明性を評価した。
○:20%以下。
×:20%以上。
【0063】
(剛性の評価)
上記の実施例及び比較例で得られたフィルムの下記にて測定される1%割線モジュラスを剛性(硬さ)として、下記基準にて評価した。1%割線モジュラスの測定は、長手方向がフィルムの流れ方向(縦方向)となるように、縦300mm×横25.4mm(標線間隔200mm)で切り出したフィルムを試験片として用い、ASTM D−882に準拠して引張速度20mm/minの条件で行った。
○:350MPa以下。
×:350MPa以上。
【0064】
(各種シートへのヒートシール性(易剥離性)評価)
実施例、比較例で作成した上記ラミネートフィルムの作製にて得られたラミネートフィルムとA−PETシート(厚さ500μm)またはPLAシート(Nature Works社製「4043D」厚さ300μm)を80〜130℃の10℃刻みの各温度でヒートシールを実施した(0.2MPa、1.2秒)。シールサンプルを15mmの短冊状に切り出し、試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で180°剥離を行い、ヒートシール強度を測定し、以下の基準にて評価した。
◎:全ての温度でのヒートシール強度が5N/15mm以上。
○:ヒートシール強度が5N/15mm以上となった温度が半数以上(3〜5)。(表中の温度は、5N/15mm以上となった最低温度)
△:ヒートシール強度が5N/15mm以上となった温度が半数未満(1〜2)。
×:全ての温度で、ヒートシール強度が5N/15mm以下又はシール面で剥がれず、フィルムの破断発生。
【0065】
(各種容器へのヒートシール性(易開封性)評価)
上記で得られたラミネートフィルムを蓋材として(ヒートシール層(A)とAPET,PLA製外径70mm、深さ50mm、幅5mmのフランジ部を有する丸カップ容器及び、PBS樹脂(25μm)で被覆された紙からなる外径70mm、深さ50mm、幅5mmのフランジ部を有する丸カップ紙容器のフランジ部に、シール温度150℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1.5秒の条件でヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを23℃で自然冷却後、ヒートシール部を15mm幅の短冊状に切り出して試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で90°剥離を行い、ヒートシール強度を測定した。
上記で測定したヒートシール強度の結果から、下記の基準で紙容器でのヒートシール性を評価した。
○:ヒートシール強度が4〜30N/15mmのもの。
×:ヒートシール強度が4N/15mm未満又はシール面で剥がれず、フィルムの破断発生するもの。
【0066】
(耐ブロッキング性の評価)
実施例、比較例で作成したフィルムのA−4版10枚に400gの荷重を40度1ヶ月保存。その後付着したフィルム同士の強度を15mm幅の短冊状に切り出して試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で90°剥離を行い、ブロッキング強度を測定した。
○:100g/15mm以下のもの。
×:100g/15mm以上のもの。
【0067】
(成膜性の評価)
実施例、比較例で作成したフィルム作成時に、ゲル、穴の発生状況を確認した。
○:穴の発生が1個/m
2以下。
×:穴の発生が1個/m
2以下。
【0068】
(耐衝撃性評価)
実施例及び比較例にて得られたフィルムを0℃下に調整した恒温室内で4時間静置した試験片を準備した。各試験片にて、テスター産業製BU−302型フィルムインパクトテスターを用いて、振り子の先端に1.5インチのヘッドを取り付け、フィルムインパクト法による衝撃強度を測定した。
○:衝撃強度が0.10(J)以上
×:衝撃強度が0.10(J)未満
【0069】
(容器での剥離外観の評価)
○:蓋材の剥離に要する力が一定で、円滑な剥離が容易で、剥離界面が透明できれいである。
×:蓋材の剥離に要する力が一定せず、剥離に円滑さを欠く。または剥離界面が荒れていて、きれいでない。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
上記表から明らかなとおり、実施例1〜6の本発明の積層フィルムは、生分解性樹脂を使用しつつ、各種のシートや容器に対しても広範な温度領域で好適なヒートシール性と易開封性とを有し、包装用途に好適な剛性や成膜性、耐衝撃性等を有するものであった。