(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒートシール層(A)中のポリ乳酸系樹脂(a1)とポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)との含有量比が、(a1)/(a2)で表される質量比で、75/25〜25/75である請求項1に記載の積層フィルム。
前記ヒートシール層(A)と前記基材層(B)との間に中間層(C)を有し、前記中間層(C)が酸変性オレフィン系樹脂又はエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを含有する請求項1又は2に記載の積層フィルム。
前記ヒートシール層(A)が、被着体に被着した際に、ヒートシール層(A)/被着体層間での開封性を有する易開封性ヒートシール層である請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の積層フィルムは、ヒートシール層(A)及び基材層(B)を有し、一方の表層がヒートシール層(A)表面であり、他方の表層が基材層(B)表面である積層フィルムであり、ヒートシール層(A)が、ポリ乳酸系樹脂(a1)及びポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)を含有する。
【0011】
[ヒートシール層(A)]
本発明に使用するヒートシール層(A)は、ポリ乳酸系樹脂(a1)と、ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)とを樹脂成分として含有する。ヒートシール層として、当該樹脂を含有することで、各種被着体に対して、好適なヒートシール性と易開封性とを実現できる。
【0012】
ヒートシール層(A)に使用するポリ乳酸系樹脂(a1)としては、例えば、ポリ乳酸(ポリ(D−乳酸)、ポリ(L−乳酸))、D−乳酸とL−乳酸の共重合体、D−乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、L−乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との共重合体、ジカルボン酸およびジオールをエステル反応させて得られたポリエステル成分を乳酸成分と共重合させた重合体等が挙げられる。なかでも、成膜安定性や入手容易性等の観点からポリ乳酸が好ましく、主たる構造単位がL−乳酸であるポリ乳酸が寄り好ましい。これら重合体は、単独で使用しても併用して使用してもよい。
【0013】
上記ヒドロキシカルボン酸、ジオール、ジカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカプロン酸類、カプロラクトン、ブチロラクトン、ラクチド、グリコリド等の環状ラクトン類などのヒドロキシカルボン酸;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族ジオール;テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0014】
前記ポリ乳酸系樹脂(a1)は、押出成形時に良好な流動性を実現しやすいことからメルトフローレート(190℃、21.18N)が、好ましくは0.5〜20g/10min、より好ましくは2〜10g/10minである。かかるメルトフローレートの範囲であると、押出成形が容易であり、また、共押出多層化するときに、隣接層との流動性も良好でより外観に優れた積層フィルムを得やすくなる。
【0015】
また、ポリ乳酸系樹脂(a1)の密度は1.20〜1.26g/cm
3であることが好ましく、1.23〜1.25g/cm
3であることがより好ましい。
【0016】
ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)としては、例えば、ポリ(ブチレンサクシネート)(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体(PBSA)が挙げられる。前記ポリ(ブチレンサクシネート)は、1,4−ブタンジオールとコハク酸の重縮合物であり、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体は、1,4−ブタンジオールとコハク酸に加えて、アジピン酸を加えた重縮合物である。かかるポリ(ブチレンサクシネート及びポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)共重合体は、分子量を上げるために、乳酸または多官能イソシアネート化合物によって高分子量化することができ、適当な分子量に調整できる。
【0017】
ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)のメルトフローレート(190℃、21.18 N)は、0.5〜30g/10min程度がフィルム押出成形性の点から好ましく、さらに好ましくは2〜24g/10minである。
【0018】
また、ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)の密度は1.20〜1.29g/cm
3であることが好ましく、1.21〜1.27g/cm
3であることがより好ましい。
【0019】
ヒートシール層(A)中のポリ乳酸系樹脂(a1)と、ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)との含有量比は、(a1)/(a2)で表される質量比で、75/25〜25/75であることが好ましく、60/40〜30/70であることがより好ましい。当該範囲とすることで、透明性が向上し、剛性と耐衝撃性とのバランスが良好になり、冷凍・低温保存下での低温落下衝撃性が上昇する。それによりラミネート印刷加工性も良好となる。さらにシール面のすべり性も良好となり、高温下での耐ブロッキング適性も向上する。
【0020】
ヒートシール層(A)中のポリ乳酸系樹脂(a1)と、ポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)との含有量は、両者の合計が、ヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的に樹脂成分がこれら樹脂のみからなるものであってもよい。これら含有量とすることで、各種材料への好適なヒートシール性や易開封性、耐衝撃性等を得やすくなる。
【0021】
ヒートシール層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の他の樹脂を含有してもよい。当該他の樹脂としては、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂も好ましく例示できる。エチレン系樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタアクリル酸共重合体等が挙げられる。また、プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレン等が挙げられる。
【0022】
また、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等を使用できる。
【0023】
また、ポリエステル系樹脂としては、ポリエステルの構成モノマーである、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を含むものであり、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が知られている。又これらの芳香族ポリエステル系樹脂の他方の構成モノマーであるジオール成分としては、特に制限はない。通常、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールが使われることが多いが、Tgを低下させず結晶性を低下させるために、シクロヘキサンジメタノールのような脂肪族ジオールを使用した、芳香族脂肪族ポリエステル樹脂(PETG)も使用できる。
【0024】
上記ポリ乳酸系樹脂(a1)及びポリブチレンサクシネート系樹脂(a2)以外の他の樹脂を使用する場合には、その含有量がヒートシール層に含まれる樹脂成分中の20質量%以下で使用することが好ましく、10質量%以下で使用することがより好ましい。
【0025】
これら他の樹脂を使用する場合には、ヒートシール層(A)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下とすることがより好ましい。
【0026】
ヒートシール層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等を例示できる。
【0027】
[基材層(B)]
本発明に使用する基材層(B)は、積層フィルムのヒートシール層(A)とは他方の表層を形成する層である。当該基材層(B)としては、フィルムの好適な成膜性や耐衝撃性等を得やすいことから、ポリオレフィン系樹脂を主たる樹脂成分として含有することが好ましい。当該ポリオレフィン系樹脂としては、上記ヒートシール層(A)にて例示した、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂を好ましく使用できる。また、これらエチレン系樹脂やプロピレン系樹脂として、植物由来の原料から製造されるバイオポリエチレンやバイオポリプロピレン等の植物由来樹脂を使用することで、環境負荷低減に有益であるため好ましい。
【0028】
基材層(B)中のポリオレフィン系樹脂の含有量としては、基材層(B)に含まれる樹脂成分中の80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、実質的にポリオレフィン系樹脂のみであることも好ましい。当該含有量とすることで、好適な成膜性や耐衝撃性等を得やすくなる。
【0029】
基材層(B)に使用するポリオレフィン系樹脂としてエチレン系樹脂のメルトフローレート(190℃)は0.5〜20g/10min程度がフィルム押出成形性の点から好ましく、さらに好ましくは2〜10g/10minである。
【0030】
また、ポリエチレン系樹脂の密度は0.88〜0.96g/cm
3であることが好ましく、0.89〜0.95g/cm
3であることがより好ましい。
【0031】
基材層(B)に使用するポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(210℃)は0.5〜20g/10min程度がフィルム押出成形性の点から好ましく、さらに好ましくは2〜10g/10minである。
【0032】
また、ポリプロピレン系樹脂の密度は0.89〜0.91g/cm
3であることが好ましく、0.89〜0.90g/cm
3であることがより好ましい。
【0033】
基材層(B)中には、上記以外の他の樹脂を含有してもよく、当該他の樹脂としては、上記ヒートシール層(A)にてポリオレフィン系樹脂以外の樹脂として例示したものを使用できる。
【0034】
上記基材層(B)中に、オレフィン系樹脂以外の他の樹脂を使用する場合には、その含有量が基材層(B)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下で使用することが好ましく、10質量%以下で使用することがより好ましい。
【0035】
中間層(B)中には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等を例示できる。
【0036】
[中間層(C)]
本発明の積層フィルムにおいては、上記ヒートシール層(A)と、基材層(B)との間に、層間密着性の向上や耐衝撃性等のフィルム特性の向上等を目的に、中間層(C)を設けることも好ましい。当該中間層(C)に使用する樹脂としては、ヒートシール層(A)と基材層(B)との層間密着性を得やすいことから、酸変性オレフィン系樹脂またはエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムを好ましく使用できる。
【0037】
前記酸変性オレフィン系樹脂は、オレフィン系重合体に無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト共重合した重合体である。酸変性量は他の層との接着性を得やすいことから、2質量%以上であることが好ましい。酸変性オレフィン系樹脂に使用するオレフィン系重合体としては、エチレンとプロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等のαオレフィンとの共重合体等が好ましく使用できる。
【0038】
前記エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムは、低結晶性若しくは非晶性の共重合体ゴム(エラストマー)であり、主成分である50〜90質量%のエチレンと、共重合モノマーであるα−オレフィンとのランダム共重合体である。α−オレフィンとしては、炭素数が3〜10のプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が使用でき、具体的なエチレン−α−オレフィン共重合体ゴムとしては、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム(EPR)、エチレン−ブテンランダム共重合体(EBR)、エチレン−オクテンランダム共重合体等が挙げられる。なかでも、エチレン−ブテンランダム共重合体ゴムを好ましく用いることができる。
【0039】
エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムの密度は0.88〜0.93g/cm
3であることが好ましく、0.88〜0.91g/cm
3であることがより好ましい。
【0040】
また、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムのメルトフローレート(190℃、21.18N)は、0.5〜20g/10分であることが好ましく、2〜15g/10minであることがより好ましい。
【0041】
中間層(C)中の酸変性オレフィン系樹脂又はエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムの含有量は、中間層(C)に含まれる樹脂成分中の70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。また、中間層(C)に含まれる樹脂成分が実質的に酸変性オレフィン系樹脂又はエチレン酢酸ビニル共重合樹脂又はエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムのみであることも好ましい。なお、酸変性オレフィン系樹脂及びエチレン−α−オレフィン系重合体ゴムを併用する場合には、両者の合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0042】
中間層(C)中には、他の層との層間密着性を向上させるために、粘着付与樹脂を併用することも好ましい。粘着付与樹脂としては、天然樹脂や合成樹脂からなる常温で粘着性を有する樹脂が挙げられ、例えば、天然樹脂ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、グリセルネステルロジン、ペンタエリスリトール等のロジン系樹脂;テルペン、芳香族テルペン、テルペンフェノール、水素添加テルペン等のテルペン系樹脂;脂肪族石油樹脂、芳香族系石油樹脂、水素脂環式系石油樹脂;常温で液状のポリブタジエン、常温で液状のポリイソプレン、常温で液状のポリイソブチレン等が挙げられる。
【0043】
粘着付与樹脂を使用する場合には、粘着付与樹脂の含有量が、中間層(C)に含まれる樹脂成分中の30質量%以下であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
【0044】
中間層(C)中には、上記以外にもヒートシール層(A)や基材層(B)にて例示したようなオレフィン系樹脂や、オレフィン系樹脂以外の樹脂等を適宜併用してもよい。上記以外のこれら他の樹脂を使用する場合には、当該他の樹脂成分の含有量が中間層(C)に含まれる樹脂成分中の20質量%以下で使用することが好ましく、10質量%以下で使用することがより好ましい。
【0045】
中間層(C)中には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を配合してもよい。当該添加剤としては、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、顔料等を例示できる。
【0046】
[積層フィルム]
本発明の積層フィルムは、上記のヒートシール層(A)と基材層(B)とを有する積層フィルムであり、一方の表層がヒートシール層(A)表面であり、他方の表層が基材層(B)表面である。本発明の積層フィルムは、当該構成とすることで、各種材料の包装材に対して、好適なシール性と易開封性とを実現できる。
【0047】
本発明の積層フィルムにおいて基材層(B)は単一の層からなるものであっても、2層以上の多層構成からなるものであってよい。特に本発明においては基材層(B)の全厚に占める割合が高いので、共押出法を用いる際のヒートシール層(A)との厚み調整を容易にするために、2層以上の多層構成にすることも、均質性に優れる多層フィルムを得やすいため好ましい。基材層(B)を多層構成とする場合には基材層(B)の各層が、上記好ましい樹脂や配合を使用した層とすればよく、基材層(B)の各層を構成する樹脂組成物は、全く同一の混合物であっても、それぞれの樹脂の配合や、MFR、密度が異なる異なる混合物を使用してもよい。
【0048】
本発明の積層フィルムの厚さ(全厚)としては、包装材料の軽量化の観点と、易開封性の点より、10〜70μmであることが好ましく、なかでも20〜60μmの範囲であることがより好ましい。
【0049】
各層の厚さは、ヒートシール層(A)の厚さはフィルム全厚の5〜30%の範囲であることが好ましく、8〜25%の範囲であることがより好ましい。中間層(C)を設ける場合には、基材層(B)の厚さはフィルムの総厚の25〜55%であることが好ましく、30〜50%であることがより好ましい。中間層(C)の厚さがフィルムの総厚保の5〜30%であることが好ましく、8〜25%であることがより好ましい。各層の厚みを当該範囲とすることで、ヒートシール強度が安定し、適度な易開封性を得やすくなる。
【0050】
具体的な好ましい厚みとしては、ヒートシール層(A)は好ましくは2〜15μm、より好ましくは3〜12μmである。基材層(B)は好ましくは15〜55μm、より好ましくは18〜50μmである。中間層(C)は好ましくは2〜15μm、より好ましくは2〜13μmである。
【0051】
[積層フィルムの製造方法]
本発明の易開封性積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、各層に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィードブロック法等の方法により溶融状態でヒートシール層(A)/基材層(B)、または、ヒートシール層(A)/中間層(C)/基材層(B)を積層した後、インフレーションやTダイ・チルロール法等によりフィルム状に成形する共押出する方法が挙げられる。共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォーマンスにも優れた積層フィルムが得られるので好ましい。融点とTgとの差が大きい樹脂を積層するような場合は、共押出加工時にフィルム外観が劣化したり、均一な層構成形成が困難になったりする場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロール法が好ましい。
【0052】
さらに、基材層(B)表面に印刷やラミネート等を行なう場合には、印刷インキや接着剤との接着性等を向上させるため、基材層(B)に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0053】
[ラミネートフィルム]
本発明の積層フィルムは、各種包装容器の蓋材等に好適に使用できることから、基材層(A)上にラミネート基材を積層してラミネートフィルムとすることも好ましい。ラミネート基材としては、特に限定されるものではないが、一般に破断しない強度の確保、ヒ−トシール時の耐熱性確保、および印刷の意匠性向上等が図られることから、延伸基材フィルムであることが好ましい。延伸基材フィルムとしては、2軸延伸ポリエステルフィルム、2軸延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリプロピレンフィルム等を使用できるが、破断強度、透明性等の点で2軸延伸ポリエステルフィルム及び2軸延伸ナイロンフィルムがより好ましい。なお、前記基材フィルムとしては、必要性に応じて、易裂け性処理や帯電防止処理が施されていてもよい。
【0054】
ラミネートフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、前記積層フィルムのベース層(A)層の上にラミネート基材をラミネートする方法が挙げられる。本発明の前記積層フィルムにラミネート基材をラミネートする方法としては、例えば、ドライラミネート法、熱ラミネート法、多層押出コーティング法等が挙げられるが、これらのなかでも、ドライラミネート法がより好ましい。また、ドライラミネート法で、前記積層フィルムとラミネート基材とをラミネートする際に用いる接着剤としては、例えば、ポリエーテル−ポリウレタン系接着剤、ポリエステル−ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。また、本発明の共押出積層フィルムと基材とをラミネートする前に、前記表面層の表面にコロナ放電処理を施すと、基材との密着性が向上するため好ましい。
【0055】
[包装体]
本発明の積層フィルム及びラミネートフィルムは、各種の包装用材料として好適に用いることができる。特に、乳製品、ヨーグルト、ゼリー、豆腐、漬物容器、キムチ容器、お菓子容器、米飯容器、インスタントラーメン容器等に好適に用いることができ、開口部を有する包装容器の蓋材として特に好適に使用できる。
【0056】
開口部を有する包装容器としては、ポリ乳酸系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、紙/ポリブチレンサクシネート系樹脂、紙/ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の各種包装容器を使用できる。本発明の積層フィルムは、これら各種材料の包装容器に対して好適なヒートシール性と易開封性とを実現できる。
【実施例】
【0057】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。
【0058】
(調製例1)
酢酸ビニル由来成分含有率30%、MFR3.0g/10minのエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(以下、EVA(1)と略記する。)と環式脂肪族系石油樹脂(荒川化学製アルコンP−100。以下、石油樹脂(1)と略記する。)を、EVA(1)/石油樹脂(1)(質量比)=85/15で用い、これらの合計に対してエルカ酸アミド(ブロッキング防止剤)と平均粒径3μmの合成ゼオライトを、エルカ酸アミドが2000ppm、合成ゼオライトが5000ppmとなるように混合し、口径40mmの単軸押出機にて溶融混練後、ペレット化して、接着性樹脂層用のEVA系樹脂組成物のペレットを得た。
【0059】
(実施例1)
ヒートシール層(A)及び基材層(B)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂混合物を調整した。各層を形成する樹脂混合物を2台の押出機に各々溶融して供給し、ヒートシール層(A)/基材層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが10μm/40μmとなるように、フィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:230℃)にそれぞれ供給して共押出して、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、全厚が50μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):ポリブチレンサクシネート系樹脂(PTTMCC Biochem社製「FD92PB」、密度:1.24g/cm
3、融点84℃、MFR:4g/10分(190℃、21.18N);以下、「PBSA(1)」という。)50質量部、ポリ乳酸系樹脂(Nature Works社製「4043D」、密度:1.24g/cm
3、MFR:6g/10分(190℃、21.18N);以下、「PLA(1)」という。)50質量部の樹脂混合物。
基材層(B):直鎖状低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン株式会社製「UBEポリエチレン 2040」、密度:0.920g/cm
3、融点110℃、MFR:4g/10分(190℃、21.18N);以下、「PE(1)」という。)100質量部。
【0060】
(実施例2)
ヒートシール層(A)、基材層(B)及び中間層(C)の各層を形成する樹脂成分として、各々下記の樹脂を使用して、各層を形成する樹脂混合物を調整した。各層を形成する樹脂混合物を3台の押出機に各々溶融して供給し、ヒートシール層(A)/中間層(C)/基材層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが3μm/5μm/22μmとなるように、フィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:230℃)にそれぞれ供給して共押出して、40℃の水冷金属冷却ロールで冷却し、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):PBSA(1)25質量部、PLA(1)75質量部の樹脂混合物。
基材層(B):PE(1)100質量部。
中間層(C):酸変性オレフィン共重合体(三井化学株式会社製「SF730」、密度0.902g/cm
3、MFR:2.7g/10分(190℃、21.18N);以下、「接着性樹脂(1)」という。)100質量部。
【0061】
(実施例3)
ヒートシール層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、ヒートシール層(A)/中間層(C)/基材層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが4μm/5μm/21μmとなるようにした以外は、実施例2と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):PBSA(1)50質量部、PLA(1)50質量部の樹脂混合物。
【0062】
(実施例4)
ヒートシール層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、ヒートシール層(A)/中間層(C)/基材層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが5μm/5μm/20μmとなるようにした以外は、実施例2と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):ポリブチレンサクシネート系共重合体(PTTMCC Biochem社製「FZ91PB」、密度:1.26g/cm
3、融点115℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N);以下、「PBS(1)」という。)50質量部、PLA(1)50質量部の樹脂混合物。
【0063】
(実施例5)
基材層(B)、中間層(C)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、ヒートシール層(A)/中間層(C)/基材層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが5μm/5μm/20μmとなるようにした以外は、実施例3と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
基材層(B):直鎖状低密度密度バイオポリエチレン(BRASCEM社製「バイオポリエチレン SLH218」、密度:0.920g/cm
3、融点110℃、MFR:4g/10分(190℃、21.18N);以下、「PE(2)」という。)100質量部。
中間層(C):前記(調整例1)にて調整したEVA系樹脂組成物100質量部。
【0064】
(実施例6)
ヒートシール層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、ヒートシール層(A)/中間層(C)/基材層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが5μm/6μm/19μmとなるようにした以外は、実施例2と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):PBS(1)70質量部、PLA(1)30質量部の樹脂混合物。
【0065】
(比較例1)
ヒートシール層(A)を形成する樹脂成分として、下記の樹脂を使用し、ヒートシール層(A)/中間層(C)/基材層(B)にて形成される積層フィルムの各層の厚さが3μm/3μm/24μmとなるようにした以外は、実施例2と同様にして、全厚が30μmの積層フィルムを成形した。
ヒートシール層(A):PLA(1)100質量部。
【0066】
(比較例2)
PBSA(1)を用いて、フィルム厚さが30μmの単層フィルムを得た。
【0067】
(比較例3)
PLA(1)を用いて、フィルム厚さが30μmの単層フィルムを得た。
【0068】
(比較例4)
PE(1)を用いて、フィルム厚さが30μmの単層フィルムを得た。
【0069】
上記実施例及び比較例で得られたフィルムにつき、以下の評価を行った。得られた結果を下表に示した。
【0070】
(ラミネートフィルムの作製)
上記の実施例及び比較例で得られた多層フィルムの基材層(B)側表面又は単層フィルム表面に二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)をドライラミネーションで貼り合わせて、ラミネートフィルムを得た。この際、ドライラミネーション用接着剤としては、DIC株式会社製の2液硬化型接着剤(ポリエステル系接着剤「LX63F」及び硬化剤「KP90」)を使用した。
【0071】
(透明性の評価)
JIS K7105に準拠し、日本電色工業社製、ヘイズメータ NDH5000で上記の実施例及び比較例で得られたフィルムのヘイズを測定し、透明性を評価した。
○:20%以下。
×:20%以上。
【0072】
(剛性の評価)
上記の実施例及び比較例で得られたフィルムの下記にて測定される1%割線モジュラスを剛性(硬さ)として、下記基準にて評価した。1%割線モジュラスの測定は、長手方向がフィルムの流れ方向(縦方向)となるように、縦300mm×横25.4mm(標線間隔200mm)で切り出したフィルムを試験片として用い、ASTM D−882に準拠して引張速度20mm/minの条件で行った。
○:350MPa以下。
×:350MPa以上。
【0073】
(各種シートへのヒートシール性(易剥離性)評価)
実施例、比較例で作成した上記ラミネートフィルムの作製にて得られたラミネートフィルムとA−PETシート(厚さ500μm)またはPLAシート(Nature Works社製「4043D」厚さ300μm)を80〜130℃の10℃刻みの各温度でヒートシールを実施した(0.2MPa、1.2秒)。シールサンプルを15mmの短冊状に切り出し、試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で180°剥離を行い、ヒートシール強度を測定し、以下の基準にて評価した。
◎:全ての温度でのヒートシール強度が5N/15mm以上。
○:ヒートシール強度が5N/15mm以上となった温度が半数以上(3〜5)。(表中の温度は、5N/15mm以上となった最低温度)
△:ヒートシール強度が5N/15mm以上となった温度が半数未満(1〜2)。
×:全ての温度で、ヒートシール強度が5N/15mm以下又はシール面で剥がれず、フィルムの破断発生。
【0074】
(各種容器へのヒートシール性(易開封性)評価)
上記で得られたラミネートフィルムを蓋材として(ヒートシール層(A)とAPET,PLA製外径70mm、深さ50mm、幅5mmのフランジ部を有する丸カップ容器及び、PBS樹脂(25μm)で被覆された紙からなる外径70mm、深さ50mm、幅5mmのフランジ部を有する丸カップ紙容器のフランジ部に、シール温度150℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1.5秒の条件でヒートシールした。次いで、ヒートシールしたサンプルを23℃で自然冷却後、ヒートシール部を15mm幅の短冊状に切り出して試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で90°剥離を行い、ヒートシール強度を測定した。
上記で測定したヒートシール強度の結果から、下記の基準で紙容器でのヒートシール性を評価した。
○:ヒートシール強度が4〜30N/15mmのもの。
×:ヒートシール強度が4N/15mm未満又はシール面で剥がれず、フィルムの破断発生するもの。
【0075】
(耐ブロッキング性の評価)
実施例、比較例で作成したフィルムのA−4版10枚に400gの荷重を40度1ヶ月保存。その後付着したフィルム同士の強度を15mm幅の短冊状に切り出して試験片とし、この試験片を23℃、50%RHの恒温室において引張試験機(株式会社エー・アンド・ディー製)を用いて、300mm/分の速度で90°剥離を行い、ブロッキング強度を測定した。
○:100g/15mm以下のもの。
×:100g/15mm以上のもの。
【0076】
(成膜性の評価)
実施例、比較例で作成したフィルム作成時に、ゲル、穴の発生状況を確認した。
○:穴の発生が1個/m
2以下。
×:穴の発生が1個/m
2以下。
【0077】
(耐衝撃性評価)
実施例及び比較例にて得られたフィルムを0℃下に調整した恒温室内で4時間静置した試験片を準備した。各試験片にて、テスター産業製BU−302型フィルムインパクトテスターを用いて、振り子の先端に1.5インチのヘッドを取り付け、フィルムインパクト法による衝撃強度を測定した。
○:衝撃強度が0.10(J)以上
×:衝撃強度が0.10(J)未満
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
上記表から明らかなとおり、実施例1〜6の本発明の積層フィルムは、各種のシートや容器に対しても広範な温度領域で好適なヒートシール性と易開封性とを有し、包装用途に好適な剛性や成膜性、耐衝撃性等を有するものであった。