(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973745
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】PZT薄膜積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/08 20060101AFI20211118BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20211118BHJP
H01L 41/04 20060101ALI20211118BHJP
H01L 41/187 20060101ALI20211118BHJP
H01L 41/316 20130101ALI20211118BHJP
H01L 41/319 20130101ALI20211118BHJP
H01L 27/11507 20170101ALI20211118BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20211118BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20211118BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20211118BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
C23C14/08 K
C23C14/34 A
H01L41/04
H01L41/187
H01L41/316
H01L41/319
H01L27/11507
H01L41/113
H01L41/09
H01L21/316 Y
B81C1/00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-175006(P2017-175006)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-52326(P2019-52326A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】露木 達朗
(72)【発明者】
【氏名】神保 武人
【審査官】
▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/137198(WO,A1)
【文献】
特開平09−008239(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/085924(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00ー14/58
H01L 41/04
H01L 41/187
H01L 41/316
H01L 41/319
H01L 27/11507
H01L 41/113
H01L 41/09
H01L 21/316
B81C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PZT薄膜積層体を製造する方法であって、
半導体基体上に、金属チタン又はチタン酸化物からなる白金密着層を介して設けられた白金電極層と、当該白金電極層上に設けられたLaNiO3からなるバッファ層とを有する基板を用意し、
ランタン・ニッケル合金をドープしたPZTターゲットを用い、500℃未満の温度下において、前記LaNiO3からなるバッファ層上にスパッタリングによってPZT薄膜層を形成する工程を有するPZT薄膜積層体の製造方法。
【請求項2】
前記PZTターゲットにおける前記ニッケルを含有する金属のドープ量が、PZT100atm%に対して0.1atm%以上5atm%以下である請求項1記載のPZT薄膜積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いたPZT薄膜積層体を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
優れた圧電性,強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O
3)即ちPZTからなる薄膜は、その強誘電性を生かし、不揮発性メモリ(FeRAM)用途として使用されている。
【0003】
さらには近年、MEMS技術との融合により、PZT薄膜からなるMEMS圧電素子が実用化されつつある。主要デバイスとして、インクジェットヘッド(アクチュエータ)や角速度センサ,ジャイロセンサなど応用が広がっている。
【0004】
このようなPZT薄膜は、圧電定数及び絶縁耐圧が共に大きいことが望まれるが、近年、スパッタリングによってPZT薄膜を形成する場合に、下地層である白金電極層とPZT薄膜との間にペロブスカイト構造を有する例えばLaNiO
3からなるバッファ層(シード層)を形成することによって、500℃未満でPZT薄膜を形成することができ、これにより圧電定数及び絶縁耐圧を向上させることができることが知られている。
【0005】
ところで、PZT薄膜は、その配向方向により物理定数が異なることが知られており、特に正方晶系においては、分極軸に平行なc軸(001)配向を得ることで高い圧電性・強誘電性を示す。
【0006】
しかし、白金電極層とPZT薄膜との間にLaNiO
3からなるバッファ層を形成した後、500℃未満でスパッタリングによってPZT薄膜を形成した場合に、結晶の面方位が本来の(001)配向からずれて、変化する結晶部分が発生するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2015/137198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、500℃未満の温度下でLaNiO
3からなるバッファ層上にスパッタリングによってPZT薄膜層を形成する際に、PZT薄膜層において本来の(001)配向に対して面方位の異なる結晶部分の発生を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明は、PZT薄膜積層体を製造する方法であって、半導体基体上に、金属チタン又はチタン酸化物からなる白金密着層を介して設けられた白金電極層と、当該白金電極層上に設けられたLaNiO
3からなるバッファ層とを有する基板を用意し、ニッケルを含有する金属をドープしたPZTターゲットを用い、500℃未満の温度下において、前記LaNiO
3からなるバッファ層上にスパッタリングによってPZT薄膜層を形成する工程を有するPZT薄膜積層体の製造方法である。
本発明は、前記ニッケルを含有する金属が、ニッケル又はランタン・ニッケル合金であるPZT薄膜積層体の製造方法である。
本発明は、前記PZTターゲットにおける前記ニッケルを含有する金属のドープ量が、PZT100atm%に対して0.1atm%以上5atm%以下であるPZT薄膜積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、500℃未満の温度下においてLaNiO
3からなるバッファ層上にスパッタリングによってPZT薄膜層を形成する際に、ニッケルを含有する金属をドープしたPZTターゲットを用いることにより、PZTの粒成長を抑制することができるため、PZT薄膜層において本来の(001)配向に対して面方位の異なる結晶部分の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)(b):本発明によって製造されるPZT薄膜積層体の例の概略構成を示す断面図
【
図2】比較例1のPZT薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)写真
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
図1(a)(b)は、本発明によって製造されるPZT薄膜積層体の例の概略構成を示す断面図である。
【0013】
図1(a)に示すように、本例のPZT薄膜積層体1は、半導体基体であるSi基板10上に形成された酸化珪素(SiO
2)層3上に、金属チタン(Ti)又はチタン酸化物(TiO
X)からなる白金(Pt)密着層4と、白金(Pt)からなる白金電極層5と、バッファ層(シード層)6と、PZT薄膜層7とが、この順序で形成されているものである。
【0014】
なお、白金電極層5は、デバイスが構成された場合に下部電極層として機能するもので、その場合には、
図1(b)に示すように、PZT薄膜層7上に上部電極層8が設けられる。
【0015】
本例のPZT薄膜積層体1を製造するには、Si基板10上に、SiO
2層3と、金属チタン又はTiO
x層からなる白金密着層4と、白金電極層5がこの順序で形成された基板を用意する。
【0016】
そして、この基板の白金電極層5の表面に、スパッタリングによってLaNiO
3からなるバッファ層6を形成する。
このバッファ層6は、RFスパッタリング法によって形成することができる。
【0017】
この場合、スパッタリングターゲットとしてLaNiO
3ターゲットを用い、スパッタガスである例えばアルゴンガス中において、高周波電力(例えば13.56MHz)を印加してスパッタリングを行う。
【0018】
スパッタリングの際の基板温度は、500℃より低い温度に設定することが好ましい。
例えば、435℃以上485℃以下に設定することが好ましい。
【0019】
なお、LaNiO
3からなるバッファ層6の厚さは、100nm以下に設定することが好ましい。
LaNiO
3からなるバッファ層6の厚さが100nmを超えると、ペロブスカイト単相構造の膜を形成することができない場合がある。
【0020】
さらに、PZT薄膜層7は、RFスパッタリング法によって形成することができる。
本発明では、スパッタリングターゲットとして、ニッケル(Ni)を含有する金属をドープしたPZTターゲットを用いる。
【0021】
ここで、ニッケル(Ni)を含有する金属としては、ニッケル又はランタン・ニッケル合金(LaNi
5)があげられる。
すなわち、本発明では、ニッケルをドープしたPZTターゲット又はランタン・ニッケル合金をドープしたPZTターゲットを用いることができる。
【0022】
本発明の場合、PZTターゲットにおけるニッケルを含有する金属のドープ量は特に限定されることはないが、PZT100atm%に対して0.1atm%以上5atm%以下に設定することが好ましく、より好ましくはPZT100atm%に対して0.5atm%以上5atm%以下、さらに好ましくはPZT100atm%に対して0.5atm%以上1atm%以下である。
【0023】
PZTターゲットにおけるニッケルを含有する金属のドープ量がPZT100atm%に対して0.1atm%未満であると、本発明の効果を十分に発揮することができず、5atm%を超えると、ペロブスカイト単相構造の膜を形成することができない場合がある。
【0024】
成膜条件としては、スパッタガスである例えばアルゴンガス中において、高周波電力(例えば13.56MHz)を印加してスパッタリングを行う。
【0025】
スパッタリングの際の基板温度は、500℃より低い温度に設定することが好ましい。
例えば、430℃以上485℃以下に設定することが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の実施例を比較例とともに説明する。
〔実施例1〕
<LaNiO
3からなるバッファ層の形成>
直径8インチのSi基板上に、厚さ100nmのSiO
2層と、白金密着層である厚さ35nmのTiO
x層と、白金電極層である厚さ100nmのPt層がこの順序で形成された評価用基板を用いた。
【0027】
この評価用基板を用い、RFマグネトロンスパッタリング法により、Pt層の表面に、膜厚100nmのLaNiO
3層からなるバッファ層を形成した。
この場合、スパッタリングターゲットとしてLaNiO
3ターゲットを用い、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いて圧力0.1Paとした。
また、スパッタリングの際の基板温度は485℃となるように制御した。
【0028】
<PZT薄膜層の形成>
RFマグネトロンスパッタリング法により、上記評価用基板のLaNiO
3からなるバッファ層の表面に、膜厚2μmのPZT薄膜層を形成した。
この場合、スパッタリングターゲットとして、ニッケルのドープ量がPZT100atm%に対して0.5atm%であるPZTターゲットを用いた。
成膜条件は、スパッタガスとしてアルゴンガスを用い、圧力0.1Paとした。
また、スパッタリングの際の基板温度は485℃となるように制御した。
【0029】
〔実施例2〕
スパッタリングターゲットとして、ランタン・ニッケル合金(LaNi
5)のドープ量がPZT100atm%に対して0.5atm%のPZTターゲットを用いた以外は実施例1と同一の条件でPZT薄膜層を形成した。
【0030】
〔比較例1〕
スパッタリングターゲットとして、金属をドープしないPZTターゲットを用いた以外は実施例1と同一の条件でPZT薄膜層を形成した。
【0031】
〔比較例2〕
スパッタリングターゲットとして、ランタン(La)のドープ量がPZT100atm%に対して0.5atm%のPZTターゲットを用いた以外は実施例1と同一の条件でPZT薄膜層を形成した。
【0032】
[評価結果]
<PZT薄膜層の結晶配向性>
実施例1、2及び比較例1、2によって形成されたPZT薄膜層に対し、光学顕微鏡及び透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて結晶の配向状態を観察した。その結果を
図2及び表1に示す。
【0033】
図2のTEM画像に示すように、金属をドープしないPZTターゲットを用いた比較例1の場合は、隣接する領域Aから領域Bにわたって、ある境界面を境に、結晶の面方位が本来の(001)配向からずれて、変化していることが見てとれる。
これに対し、実施例1、2及び比較例2によって形成されたPZT薄膜層は、このような結晶の配向のずれは観察されなかった。
【0034】
<PZT薄膜層の圧電特性の評価>
実施例1、2及び比較例1、2によって形成したPZT薄膜上に、上部電極層としてPtを用いたMIM(metal-insulator-metal)構造を形成し、圧電特性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0035】
表1に示すように、金属をドープしたPZTターゲットを用いた実施例1、2及び比較例2と、金属をドープしないPZTターゲットを用いた比較例1との間において、顕著な圧電定数の差は見られなかった。
【0036】
<PZT薄膜層の絶縁耐圧の評価>
実施例1、2及び比較例1、2によって形成したPZT薄膜上に、上部電極層としてPtを用いたMIM構造を形成し、超高抵抗/超低電流測定用電位計(ケースレー社製 6514型)を用いてI−V測定を行うことにより、絶縁耐圧を測定した。その結果を表1に示す。
【0037】
表1に示すように、ニッケルをドープしたPZTターゲットを用いた実施例1、ランタン・ニッケル合金をドープしたPZTターゲットを用いた実施例2については、金属をドープしないPZTターゲットを用いた比較例1と比べて絶縁耐圧の値が若干低下したが、実用上問題のない範囲であった。
【0038】
これに対し、ランタンをドープしたPZTターゲットを用いた比較例2については、金属をドープしないPZTターゲットを用いた比較例1と比べて絶縁耐圧の値が大幅に低下した。
【0039】
【表1】
【0040】
以上より、本発明によれば、良好な圧電定数及び絶縁耐圧を維持しつつ、PZT薄膜層において本来の(001)配向に対して面方位の異なる結晶部分の発生を防止しうることを確認できた。
【符号の説明】
【0041】
1…PZT薄膜積層体
3…SiO
2層
4…白金密着層
5…白金電極層
6…LaNiO
3からなるバッファ層
7…PZT薄膜層
10…Si基板(半導体基体)