(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリウレタン樹脂は、数平均分子量が1,800g/mol以上2,200g/mol以下のポリオール、炭素数4以上10以下のジオールを含む鎖延長剤、および第2イソシアネート系硬化剤を含む混合物を有機溶剤において共重合反応させて製造される、請求項7から9の何れか1項に記載の熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願明細書の全体にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0015】
本願明細書の全体にわたって、ある部材が他の部材「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、二つの部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0016】
本願明細書の全体にわたって、単位「重量%」とは、部材の総重量に対して部材に含まれる成分の重量比率を意味する。
【0017】
本願明細書の全体にわたって、単位「重量部」とは、各成分間の重量の比率を意味する。
【0018】
本願明細書の全体にわたって、用語「重合単位」とは、重合体内で単量体が反応した形態を意味し、具体的には、その単量体が重合反応を経てその重合体の骨格、例えば、主鎖または側鎖を形成している形態を意味する。
【0019】
本願明細書の全体にわたって、ある化合物の「重量平均分子量」および「数平均分子量」は、その化合物の分子量と分子量分布を用いて計算することができる。具体的には、1mlのガラス瓶にテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)と化合物を入れて化合物の濃度が1重量%のサンプル試料を準備し、標準試料(ポリスチレン)とサンプル試料をフィルタ(ポアの大きさが0.45mm)を介して濾過させた後、GPCインジェクタ(injector)に注入して、サンプル試料の溶離(elution)時間を標準試料のキャリブレーション(calibration)曲線と比較して化合物の分子量および分子量分布を得ることができる。この時、測定機器としてInfinity II 1260(Agilient社)を用いることができ、流速は1.00mL/min、カラム温度は40.0℃に設定することができる。
【0020】
以下では本明細書についてより詳しく説明する。
【0021】
本発明の一実施態様は、ポリウレタン樹脂、第1イソシアネート系硬化剤および有機溶剤を含むポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含み、破断時の引張強度が50MPa以上80MPa以下である熱可塑性ポリウレタンフィルムを提供する。
【0022】
本発明の一実施態様による前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、破断時の引張強度が50MPa以上80MPa以下であって、耐久性に優れるという長所がある。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、破断時の引張強度が50MPa以上80MPa以下、55MPa以上75MPa以下、60MPa以上70MPa以下、55MPa以上62.5MPa以下、または65MPa以上72.5MPa以下であってもよい。破断時の引張強度が前述した範囲を満たす前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、外力に対する衝撃吸収および耐久性に優れるという長所がある。
【0024】
また、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、100%の延伸率において引張強度が7.5MPa以下であってもよい。具体的には、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、100%の延伸率において引張強度が2.5MPa以上7.5MPa以下、または3MPa以上6MPa以下であってもよい。100%の延伸率において引張強度が前述した範囲を満たす前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは加工性に優れる。
【0025】
本発明の一実施態様によれば、前記第1イソシアネート系硬化剤の含量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して7.5重量部以上15重量部以下であってもよい。具体的には、前記第1イソシアネート系硬化剤の含量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、8重量部以上14重量部以下、または10重量部以上13重量部以下であってもよい。前記第1イソシアネート系硬化剤の含量を前述した範囲に調節することによって、破断時の引張強度が前述した範囲を満たす熱可塑性ポリウレタンフィルムを実現することができる。すなわち、前記ポリウレタン樹脂組成物内の第1イソシアネート系硬化剤の含量を前述した範囲に調節することによって、耐久性に優れた熱可塑性ポリウレタンフィルムを実現することができる。
【0026】
本発明の一実施態様によれば、前記第1イソシアネート系硬化剤は、2個以上6個以下のイソシアネート官能基を含むことができる。例えば、第1イソシアネート硬化剤は、Evonik社の2官能イソシアネート系硬化剤であるH12MDI、AsahiKASEI社の6官能イソシアネート系硬化剤であるMHG−80B、AsahiKASEI社の6官能イソシアネート系硬化剤であるMFA−100、およびAsahiKASEI社の3官能イソシアネート系硬化剤であるTKA−100のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0027】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂は、数平均分子量が1,800g/mol以上2,200g/mol以下のポリオール;炭素数4以上10以下のジオールを含む鎖延長剤;および第2イソシアネート系硬化剤を含む混合物の共重合体であってもよい。
【0028】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂は、ソフトセグメント(soft segment)およびハードセグメント(hard segment)を含むブロック共重合体(block copolymer)であってもよい。具体的には、前記ポリウレタン樹脂のソフトセグメントは前記ポリオールと第2イソシアネート系硬化剤に由来した重合単位を含むことができ、前記ポリウレタン樹脂のハードセグメントは前記鎖延長剤と第2イソシアネート系硬化剤に由来した重合単位を含むことができる。
【0029】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールの数平均分子量は、1,800g/mol以上2,200g/mol以下、1,950g/mol以上2,050g/mol以下、または1,900g/mol以上2,100g/mol以下であってもよい。前記ポリオールの数平均分子量が前述した範囲内である場合、耐久性に優れた熱可塑性ポリウレタンフィルムを実現することができる。また、前記ポリオールの数平均分子量を前述した範囲に調節することによって、熱可塑性ポリウレタンフィルムの伸び率が減少するのを抑制することができる。
【0030】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールは、2個のヒドロキシ基を含有するジオールを含むことができる。具体的には、前記ポリオールは、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルジオールおよびポリエーテルジオールのうち1種以上を含むことができる。
【0031】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールの含量は、前記混合物の重量に対して50重量%以上75重量%以下であってもよい。具体的には、前記ポリオールの含量は、前記混合物の重量に対して、55重量%以上72.5重量%以下、65重量%以上71重量%以下、または68重量%以上74.5重量%以下であってもよい。前記混合物内の前記ポリオールの含量を前述した範囲に調節することによって、破断時の引張強度の高い熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。また、前記ポリオールの含量を前述した範囲に調節することによって、前記ポリウレタン樹脂に含まれるハードセグメントの含量が過度に多くなるのを抑制して、熱可塑性ポリウレタンフィルムの加工性が低下するのを防止することができる。
【0032】
本発明の一実施態様によれば、前記鎖延長剤は、炭素数4以上10以下のジオール、または炭素数4以上6以下のジオールを含むことができる。前述した範囲の炭素数を有するジオールを含む鎖延長剤は、前記第2イソシアネート系硬化剤の鎖を効果的に延長させることができる。具体的には、前記鎖延長剤は、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10−デカンジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールのうち少なくとも一つを含むことができる。
【0033】
本発明の一実施態様によれば、前記鎖延長剤の含量は、前記混合物の重量に対して5重量%以上15重量%以下であってもよく、具体的には、5重量%以上8重量%以下、または6重量%以上7.5重量%以下であってもよい。前記混合物内の鎖延長剤の含量を前述した範囲に調節することによって、前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量を向上させることができ、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの耐久性が低下するのを抑制することができる。
【0034】
本発明の一実施態様によれば、前記第2イソシアネート系硬化剤は、2個以上6個以下のイソシアネート官能基を含むことができる。具体的には、前記第2イソシアネート系硬化剤は、2個のイソシアネート官能基を含むことができる。例えば、前記第2イソシアネート系硬化剤は、イソホロンジイソシアネート(IPDI;isophorone diisocyanate)、メチレンジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI;xylene diisocyanate)、ナフタレン−1,5−ジイソシアネートおよびシクロヘキサンジイソシアネート(cyclohexane diisocyanate)のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0035】
本発明の一実施態様によれば、前記第2イソシアネート系硬化剤の含量は、前記混合物の重量に対して20重量%以上37.5重量%以下であってもよい。具体的には、前記第2イソシアネート系硬化剤の含量は、前記混合物の重量に対して、20重量%以上27.5重量%以下、または21.5重量%以上25重量%以下であってもよい。前記第2イソシアネート系硬化剤の含量を前述した範囲に調節することによって、ポリウレタン樹脂の重合反応を安定的に行うことができ、破断時の引張強度の高い熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。
【0036】
本発明の一実施態様によれば、前記混合物は、触媒をさらに含むことができる。前記触媒としては当業界で用いられる触媒を特に制限されずに用いることができ、例えば、ジブチルスズジラウレート(dibutyl tin dilaurate;DBTDL)を用いることができる。また、前記触媒の含量は、前記混合物100重量部に対して、0.005重量部以上0.02重量部以下、または0.008重量部以上0.015重量部以下であってもよい。
【0037】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、40,000g/mol以上70,000g/mol以下であってもよい。前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量を調節することによって、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの引張強度および耐久性などの物性を容易に制御することができる。
【0038】
本発明の一実施態様によれば、前記有機溶剤は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)およびエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)のうち少なくとも一つを含むことができる。前記ポリウレタン樹脂の重合時に用いられる前述した種類の有機溶剤は毒性がほぼないものであって、前記有機溶剤を用いることによって使用者の人体および環境に有害な影響を及ぼすのを防止することができる。
【0039】
本発明の一実施態様によれば、前記有機溶剤の含量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して30重量部以上80重量部以下であってもよい。前記有機溶剤の含量を前述した範囲に調節することによって、前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量を制御することができ、前記ポリウレタン樹脂組成物のコーティング性を向上させることができる。
【0040】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量は、20%以上70%以下であってもよく、具体的には、30%以上60%以下、40%以上55%以下であってもよい。本明細書において、前記「固形分」とは溶液全体から溶剤を除いた溶質または固形物を意味し、具体的には、前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分とは前記有機溶剤を除いた前記ポリウレタン樹脂、第1イソシアネート系硬化剤および触媒などの添加剤を総称するものであってもよい。前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量が前述した範囲内である場合、前記ポリウレタン樹脂組成物を基材上に厚く塗布することができ、それにより、厚さの厚い熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。
【0041】
本発明の一実施態様によれば、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さは、10μm以上250μm以下であってもよい。具体的には、熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さは、20μm以上200μm以下、または30μm以上180μm以下であってもよい。すなわち、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、既存のポリウレタンフィルムに比べて厚さが厚い。
【0042】
本発明の他の実施態様は、ポリウレタン樹脂、第1イソシアネート系硬化剤および有機溶剤を含むポリウレタン樹脂組成物を製造するステップ、前記ポリウレタン樹脂組成物を基材フィルム上に塗布し熱処理してポリウレタン樹脂層を形成するステップ、および前記ポリウレタン樹脂層を追加硬化させるステップを含む熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法を提供する。
【0043】
本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法は、破断時の引張強度が高くて耐久性に優れた熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。具体的には、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法により製造された前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、破断時の引張強度が50MPa以上80MPa以下であってもよい。破断時の引張強度が前述した範囲を満たす前記熱可塑性ポリウレタンフィルムは、耐久性に優れるという長所がある。
【0044】
本発明の一実施態様によれば、前記第1イソシアネート系硬化剤の含量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して、7.5重量部以上15重量部以下、8重量部以上14重量部以下、または10重量部以上13重量部以下であってもよい。前記1イソシアネート系硬化剤の含量を前述した範囲に調節することによって、熱可塑性ポリウレタンフィルムの破断時の引張強度を効果的に増加させることができる。
【0045】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量は、20%以上70%以下、具体的には、30%以上60%以下、40%以上55%以下であってもよい。前記ポリウレタン樹脂組成物の固形分含量が前述した範囲内である場合、前記ポリウレタン樹脂組成物を基材上に厚く塗布することができ、それにより、厚さの厚い熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。
【0046】
本発明の一実施態様によれば、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法に用いられるポリウレタン樹脂は、数平均分子量が1,800g/mol以上2,200g/mol以下のポリオール;炭素数4以上10以下のジオールを含む鎖延長剤;および第2イソシアネート系硬化剤を含む混合物を有機溶剤において共重合反応させて製造することができる。
【0047】
また、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法で用いられるポリオール、鎖延長剤、第1イソシアネート系硬化剤、第2イソシアネート系硬化剤、有機溶剤および触媒などは、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムにおけるポリオール、鎖延長剤、第1イソシアネート系硬化剤、第2イソシアネート系硬化剤、有機溶剤および触媒などと同様のものであってもよい。
【0048】
本発明の一実施態様によれば、前記鎖延長剤として用いられるジオールを構成する炭素数は前記ポリオールを構成する炭素数より小さいため、前記混合物内で前記ジオールは前記ポリオールより流動性が高い。それにより、前記混合物内で、前記鎖延長剤と第2イソシアネート系硬化剤の反応が前記ポリオールと第2イソシアネート系硬化剤の反応より先に起こる。具体的には、鎖延長剤としてブタンジオールを用いる場合、ブタンジオールの2個のヒドロキシ基のうち1個のヒドロキシ基が前記第2イソシアネート系硬化剤のイソシアネート基と反応して結合し、前記ブタンジオールの未反応ヒドロキシ基が第2イソシアネート系硬化剤の新しいイソシアネート基と結合する過程が繰り返されるにつれて、長く延びた鎖構造を有する第2イソシアネート系硬化剤を形成することができる。その後、長く延びた鎖構造を有する第2イソシアネート系硬化剤と前記ポリオールが反応して、重量平均分子量が増加したポリウレタン樹脂を形成することができる。
【0049】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂を製造するための共重合反応は、50℃以上70℃以下の温度で行うことができる。前記共重合反応温度を前述した範囲に調節することによって、前記ポリウレタン樹脂を安定的に重合することができ、比較的に低い温度でポリウレタン樹脂を重合することができるため、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造費用および製造時間を減少させることができる。
【0050】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリオールの含量は、前記混合物の重量に対して、50重量%以上75重量%以下、55重量%以上72.5重量%以下、65重量%以上71重量%以下、または68重量%以上74.5重量%以下であってもよい。前記混合物内の前記ポリオールの含量を前述した範囲に調節することによって、ポリウレタン樹脂の重合反応を安定的に行うことができ、破断時の引張強度の高い熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。
【0051】
本発明の一実施態様によれば、前記鎖延長剤の含量は、前記混合物の重量に対して、5重量%以上15重量%以下、5重量%以上8重量%以下、または6重量%以上7.5重量%以下であってもよい。前記混合物内の鎖延長剤の含量を前述した範囲に調節することによって、前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量を向上させることができ、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの耐久性が低下するのを抑制することができる。
【0052】
本発明の一実施態様によれば、前記第2イソシアネート系硬化剤の含量は、前記混合物の重量に対して、20重量%以上37.5重量%以下、20重量%以上27.5重量%以下、または21.5重量%以上25重量%以下であってもよい。前記第2イソシアネート系硬化剤の含量を前述した範囲に調節することによって、ポリウレタン樹脂の重合反応を安定的に行うことができ、破断時の引張強度の高い熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。
【0053】
本発明の一実施態様によれば、前記混合物は、触媒をさらに含むことができる。前記触媒を介して、前記ポリウレタン樹脂の重合反応、前記ポリウレタン樹脂と前記第1イソシアネート系硬化剤の反応を促進させることができる。前記触媒の含量は、前記混合物100重量部に対して、0.005重量部以上0.02重量部以下、または0.008重量部以上0.015重量部以下であってもよい。前記触媒の含量を前述した範囲に調節することによって、ポリウレタン樹脂の重合反応を効果的に促進させることができ、比較的低い温度でポリウレタン樹脂を重合させることができる。
【0054】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂の重合反応は有機溶剤において行うことができる。熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造するために水溶性溶剤を用いる場合、ウレタン粒子を数十nm〜数百nmの直径を有するビーズ(bead)形態に加工して水溶性溶剤上に分散させなければならない。この時、ウレタン粒子を水溶性溶剤上で効果的に分散させるためには各種の界面活性剤およびモノマーなどの添加剤を用いなければならないため、熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造工程が複雑になり、製造時間および製造費用が増加するという問題がある。
【0055】
それに対し、本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂は、前記有機溶剤に溶解(dissolve)している状態であって、前記ポリウレタン樹脂組成物に追加の分散剤および界面活性剤などの分散安定系の添加剤を付加する必要がない。したがって、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造時間および製造費用を減少させることができる。
【0056】
本発明の一実施態様によれば、前記有機溶剤の含量は、前記ポリウレタン樹脂100重量部に対して30重量部以上80重量部以下であってもよい。前記有機溶剤の含量を前述した範囲に調節することによって、前記ポリウレタン樹脂組成物を熱処理するステップにおいて前記ポリウレタン樹脂組成物が急激に乾燥されて有機溶剤が膨らむ現象を抑制することができ、熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さが薄くなるのを防止することができる。
【0057】
本発明の一実施態様によれば、有機溶剤において前記混合物を反応させて、ポリウレタン樹脂および有機溶剤を含む組成物を製造することができ、前記組成物に第1イソシアネート系硬化剤を添加して、前記ポリウレタン樹脂組成物を製造することができる。すなわち、前記ポリウレタン樹脂組成物の有機溶剤は、前記ポリウレタン樹脂の製造時に用いられて残留する有機溶剤であってもよい。また、前記ポリウレタン樹脂組成物に追加の有機溶剤を添加することができる。
【0058】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、40,000g/mol以上70,000g/mol以下であってもよい。前記ポリオールの数平均分子量、前記鎖延長剤として用いられるジオールの炭素数、前記混合物内のポリオールの含量、鎖延長剤の含量、第2イソシアネート系硬化剤の含量などを調節して、前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量を制御することができる。前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量を調節することによって、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの引張強度および耐久性などの物性を容易に制御することができる。
【0059】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂組成物を基材フィルム上に塗布する方法は特に制限されず、例えば、バーコーティング(bar coating)、ブレードコーティング(blade coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)、スプレーコーティング(spray coating)、スピンコーティング(spin coating)およびグラビアコーティング(Gravure coating)のいずれか一つの方法を用いることができる。
【0060】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂組成物を前記基材フィルム上に20μm以上500μm以下の厚さに塗布することができる。前記基材フィルム上に塗布された前記ポリウレタン樹脂組成物を熱処理して、厚さが10μm以上250μm以下のポリウレタン樹脂層を形成することができる。前記ポリウレタン樹脂組成物を熱処理する過程で、前記ポリウレタン樹脂組成物に含まれた有機溶剤が揮発されることによって、製造されるポリウレタン樹脂層の厚さが減る。したがって、有機溶剤が揮発されることによって減少するポリウレタン樹脂層の厚さを考慮して、前記基材フィルム上に塗布される前記ポリウレタン樹脂組成物の厚さを調節することができる。
【0061】
本発明の一実施態様によれば、前記基材フィルム上に塗布された前記ポリウレタン樹脂組成物を100℃以上150℃以下の温度で熱処理して、熱可塑性ポリウレタン樹脂層を形成することができる。前述した温度範囲で前記ポリウレタン樹脂組成物を熱処理することによって、前記ポリウレタン樹脂組成物に含まれた有機溶剤を効果的に揮発させて半硬化したポリウレタン樹脂層を形成することができる。また、前記ポリウレタン樹脂組成物を前述した温度範囲で熱処理することによって、ポリウレタン樹脂層に黄変現象が発生するのを抑制することができる。
【0062】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂層を40℃以上80℃以下の温度で12時間以上48時間以下の時間の間追加硬化することができる。前記ポリウレタン樹脂組成物を熱処理して形成されたポリウレタン樹脂層は半硬化状態であって、それを追加硬化させて、最終的に硬化した熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造することができる。
【0063】
前記ポリウレタン樹脂層を追加硬化させる過程で、前記ポリウレタン樹脂層に含まれたポリウレタン樹脂と前記第1イソシアネート系硬化剤が反応するか、または残存する微量のポリオールおよび鎖延長剤、第1イソシアネート系硬化剤および第2イソシアネート系硬化剤が反応して、重量平均分子量が増加したポリウレタン樹脂を含む熱可塑性ポリウレタンフィルムを提供することができる。
【0064】
本発明の一実施態様によれば、前述した温度および時間の条件で前記ポリウレタン樹脂層を追加硬化させることによって、前記ポリウレタン樹脂と第1イソシアネート系硬化剤を効果的に反応させることができる。
【0065】
本発明の一実施態様によれば、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さは、10μm以上250μm以下であってもよい。具体的には、熱可塑性ポリウレタンフィルムの厚さは、20μm以上200μm以下、または30μm以上180μm以下であってもよい。
【0066】
本発明の一実施態様によれば、前記ポリウレタン樹脂層を追加硬化した後に基材フィルムを除去するステップをさらに含むことができる。すなわち、前記熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造方法を通じて、基材フィルム上に熱可塑性ポリウレタンフィルムが積層された積層体を製造することができ、前記基材フィルムを除去して破断時の引張強度の高い熱可塑性ポリウレタンフィルムを提供することができる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明することにする。但し、本発明に係る実施例は種々の他の形態に変形することができるものであって、本発明の範囲が下記に記述する実施例に限定されるものではない。本明細書の実施例は、当業界で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0068】
実施例1
ポリウレタン樹脂組成物の製造
ポリオールとして数平均分子量が2,050g/molのポリカーボネートジオール(polycarbonatediol;PCDL、Asahi kasei社)、鎖延長剤として1,4−ブタンジオール(1,4−butanediol;1,4BD、BASF社)、第1イソシアネート系硬化剤として2個のイソシアネート官能基を含むH12MDI(Evonik社)、第2イソシアネート系硬化剤としてイソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate;IPDI、Evonik社)、触媒としてジブチルスズジラウレート(dibutyl tin dilaurate;DBTDL)、有機溶剤としてメチルエチルケトンを準備した。その後、ポリオールの含量が約70.03重量%、鎖延長剤の含量が約6.64重量%、第2イソシアネート系硬化剤の含量が約23.33重量%の混合物を製造し、前記混合物100重量部と有機溶剤50重量部を混合して混合溶液を製造した。
【0069】
製造された混合溶液を反応器に装入し、55℃まで昇温して温度を維持しつつ、混合物100重量部に対して触媒0.005重量部を添加した。その後、57℃で25時間反応させて、重量平均分子量が約52,000g/molのポリウレタン樹脂を含む組成物を製造した。その後、製造されたポリウレタン樹脂100重量部に対して約10重量部の第1イソシアネート系硬化剤を組成物に添加して、ポリウレタン樹脂組成物を製造した。製造されたポリウレタン樹脂組成物の固形分含量は約46%であった。
【0070】
熱可塑性ポリウレタンフィルムの製造
製造されたポリウレタン樹脂組成物を基材フィルムであるポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)フィルム上に約200μmで塗布した。その後、ポリウレタン樹脂組成物を100℃で熱処理してポリウレタン樹脂層を形成し、ポリウレタン樹脂層を40℃で19時間追加硬化させて、95μmの厚さを有する熱可塑性ポリウレタンフィルムを最終的に製造した。
【0071】
実施例2〜実施例4
ポリウレタン樹脂組成物を製造するために、ポリオール、鎖延長剤、第1イソシアネート系硬化剤、第2イソシアネート系硬化剤および触媒を下記の表1のように用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法により熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造した。下記の表1において、TKA−100はAsahiKASEI社の3官能イソシアネート系硬化剤である。
【0072】
比較例1〜比較例7
ポリウレタン樹脂組成物を製造するために、ポリオール、鎖延長剤、第1イソシアネート系硬化剤、第2イソシアネート系硬化剤および触媒を下記の表1のように用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法により熱可塑性ポリウレタンフィルムを製造した。下記の表1において、MHG−80BはAsahiKASEI社の6官能イソシアネート系硬化剤である。
【0073】
【表1】
【0074】
熱可塑性ポリウレタンフィルムの引張強度の測定
熱可塑性ポリウレタンフィルムの引張強度を測定するために、実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例7で製造された熱可塑性ポリウレタンフィルムをASTM D−638規格に従って加工して試片を製作した。その後、Ultimate Tensile Machine(UTM)機械(Model 3343、INSTRON社)を用いて、前記試片の一端を固定させ、他端を300mm/minの速度で引っ張り、熱可塑性ポリウレタンフィルムが延伸する程度に応じた引張強度を測定した。
【0075】
実施例1〜実施例4および比較例1〜比較に7で製造された熱可塑性ポリウレタンフィルムの延伸率に応じた引張強度を下記の表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2を参照すれば、比較例1〜比較例7で製造された熱可塑性ポリウレタンフィルムは、破断時の引張強度が50MPa未満であるのを確認した。それに対し、本発明の実施例1〜実施例4で製造された熱可塑性ポリウレタンフィルムは、比較例1〜比較例7で製造された熱可塑性ポリウレタンフィルムと破断時の延伸率は類似するが、破断時の引張強度が50MPa以上80MPa以下を満たすのを確認した。すなわち、本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムは、耐久性および延伸特性に優れることが分かる。
【0078】
また、本発明の実施例1〜実施例4で製造された熱可塑性ポリウレタンフィルムは100%の延伸率において引張強度が7.5MPa以下を満たしており、加工が容易であるのを確認した。
【0079】
したがって、本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムは、破断時の引張強度が高くて耐久性に優れることが分かる。さらに、本発明の一実施態様による熱可塑性ポリウレタンフィルムは、加工が容易であることが分かる。