(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973915
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】油脂中のシリコーンオイル及び/又は乳化剤の低減方法及び油脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C11B 3/16 20060101AFI20211118BHJP
A23D 9/02 20060101ALI20211118BHJP
C11B 3/10 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
C11B3/16
A23D9/02
C11B3/10
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-155034(P2017-155034)
(22)【出願日】2017年8月10日
(65)【公開番号】特開2019-34981(P2019-34981A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 為朝
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】藤井 道貴
(72)【発明者】
【氏名】洪水 宏之
【審査官】
井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−525943(JP,A)
【文献】
実開昭53−011683(JP,U)
【文献】
特開2010−121088(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/145808(WO,A1)
【文献】
深町 輝昭,飲食品における精密フィルター,食品と科学,(1988), Vol.30, No.2,pp.96-99
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 1/00−15/00
C11C 1/00− 5/02
A23D 7/00− 9/06
B01D15/00−15/42
B01D29/00−29/48
B01D23/00−37/08
B01D39/00−41/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デプスフィルターで油脂をろ過し、油脂中のシリコーンオイルを低減する方法。
【請求項2】
活性炭を含むデプスフィルターで油脂をろ過し、油脂中のシリコーンオイル及び乳化剤を低減する方法。
【請求項3】
前記デプスフィルターが、シート状又はカートリッジ状である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性炭が、褐炭、泥炭、木材のいずれか1つを由来とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つの方法を用いた、油脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂中のシリコーンオイル及び/又は乳化剤の低減方法及び油脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トリアシルグリセロールを含む油脂は、動植物から採油・精製されて得られる。また、油脂や脂肪酸、脂肪酸エステル、グリセロール等を用いたエステル交換、あるいは直接エステル化反応を行い、精製されて得られる。これらの油脂は、食用あるいは飼料用、工業用として用いられているが、その際に、種々の機能を持たせるために乳化剤やシリコーンオイル等が添加される。
【0003】
これらの添加剤は、機能を達成するために適量配合される必要があるが、添加装置の不調により、一部製品に過剰に添加される場合もある。また、添加した製品をほかの用途(例えば、食用油を工業用途に転用)に用いる場合、添加物により機能的な不都合が発生する場合がある。
これらの問題を解決するためには、添加物を除く必要があるが、油脂に溶解する乳化剤は、親油性が高く、水洗で除去することは難しく、また、これらの添加物は沸点も高く、蒸留等では除去することは難しかった。油脂の脱色において用いられる白土等で、一部の乳化剤を除去することができるものの、脱色処理により、風味が油脂に付与されるため再度の脱臭が必要になるなどの課題があった。また、特許文献1には、精製後に活性炭によりろ過する工程が記載されているが、同工程では、シリコーンオイルも乳化剤も除去することはできない。そのため、無添加の油脂を多量に添加して希釈するか、廃棄するしかなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−61577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、シリコーンオイル及び/又は乳化剤を含む油脂から、シリコーンオイル及び/又は乳化剤を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の方法及び製造方法を提供する。
【0007】
[1]デプスフィルターで油脂をろ過し、油脂中のシリコーンオイルを低減する方法。
[2]活性炭を含むデプスフィルターで油脂をろ過し、油脂中のシリコーンオイル及び/又は乳化剤を低減する方法。
[3]前記デプスフィルターが、シート状又はカートリッジ状である[1]又は[2]の方法。
[4]前記活性炭が、褐炭、泥炭、木材のいずれか1つを由来とする[2]又は[3]の方法。
[5][1]〜[4]のいずれか一つの方法を用いた、油脂の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、シリコーンオイル及び/又は乳化剤を含む油脂から、シリコーンオイル及び/又は乳化剤を低減することができる方法を提供することができ、油脂からシリコーンオイル及び/又は乳化剤を低減する油脂の製造方法を提供することができる。油脂中に過剰に含まれるシリコーンオイル及び/又は乳化剤を低減することで、過剰に含まれるシリコーンオイル及び/又は乳化剤による不要な効果を低減することができる。また、シリコーンオイル及び/又は乳化剤を完全に除去することで、ほかの用途に用いることも容易にできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態において、A(数値)〜B(数値)は、A以上B以下を意味する。
【0010】
[油脂中のシリコーンオイル及び/又は乳化剤を低減する方法]
本発明の油脂中のシリコーンオイル及び/又は乳化剤を低減する方法は、デプスフィルターで油脂をろ過する処理を含む。
【0011】
(デプスフィルター)
一般的に、デプスフィルターは、吸着ろ過機能と分離ろ過機能で異物等を除去するのに用いられている。デプスフィルターにおける吸着ろ過機能は、例えば、フィルターがプラスの電位を持つことにより、マイナスの電位を持つ異物をフィルターに吸着することにより異物を除去するものである。デプスフィルターにおいては、材質として用いられるレジン等によって、電位が生じる。
【0012】
なお、デプスフィルターの材質(ろ材)として、セルロース、活性炭等も存在するが、セルロースや活性炭を単独で添加して、油脂をろ過してもシリコーンオイルや乳化剤はほとんど除去できない。したがって、本発明においては、油脂がデプスフィルターを通過する際に、デプスフィルターに電位差が生じ、油脂中のシリコーンオイルが吸着除去されるものと推察される。
【0013】
なお、本発明において、デプスフィルターを用いると、油中のシリコーンオイルが低減されるが、活性炭を含むデプスフィルターを用いると乳化剤を低減することができる。活性炭としては、石炭、褐炭、泥炭、木材、ヤシ殻などを由来として用いることができ、より好ましい活性炭としては褐炭、泥炭、木材由来のものである。なお、活性炭の賦活方法は特に限定するものではなく、通常行われている、熱処理、水蒸気処理、化学処理で賦活したものを用いることができる。
【0014】
本発明で用いるデプスフィルターは、市販されているものを用いることができ、レジン、セルロース、パーライト、ケイソウ土、活性炭等を材質(ろ材)として用いることができる。また、その形状は、シート状あるいはカートリッジ状のものを用いることができる。
【0015】
(油脂)
本発明において、デプスフィルターで処理する油脂はシリコーンオイル及び/又は乳化剤を含有するものである。
油脂の種類としては、特に限定されず、菜種油、大豆油、米油、サフラワー油、ぶどう油、ひまわり油、小麦はい芽油、とうもろこし油、綿実油、ごま油、落花生油、フラックス油、エゴマ油、オリーブ油、パーム油、ヤシ油等の植物油、これら2種以上を混合した調合植物油、又は、これらを分別したパームオレイン、パームステアリン、パームスーパーオレイン、パームミッドフラクション等の食用分別油、これらの水素添加油、エステル交換油等の他、中鎖脂肪酸トリグリセリドのような直接エステル化反応により製造された食用油を用いることができる。
【0016】
油脂中に含まれるシリコーンオイルとしては、食用油脂に用いられるものであれば、特に限定するものではない。例えば、シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサン構造を持ち、動粘度が25℃で100〜5000mm
2/sのものが使用される。シリコーンオイルの動粘度は、特に800〜2000mm
2/s、さらに900〜1100mm
2/sであることが好ましい。なお、ここでいう「動粘度」とは、JIS K 2283(2000)に準拠して測定される値を指すものとする。シリコーンオイルは、シリコーンオイル以外に微粒子シリカを含んでいてもよい。なお、一般的に食用油脂中のシリコーンオイル含有量は、油脂中に、0.1〜5ppm、より好適には1〜4ppm、さらに好適には2〜3ppm(質量割合)である。そのため、本発明を利用する過剰にシリコーンオイルを含有する油脂、あるいはシリコーンオイルを除去すべき油脂は、シリコーンオイルを0.05〜20ppm程度含有していることが想定される。
【0017】
油脂中に含まれる乳化剤としては、油脂に溶解できるものであればよく、食用油脂に添加される乳化剤が挙げられる。食用油脂に用いられる乳化剤として、モノグリセリド、ジグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。なお、一般的に食用油脂中の乳化剤は、油脂中に0.01〜10質量%含有されている。そのため、本発明を利用する過剰に乳化剤を含有する油脂、あるいは乳化剤を除去すべき油脂は、乳化剤を0.005〜20質量%含有していることが想定される。
【0018】
[油脂の製造方法]
本発明の油脂の製造方法は、前述の油脂中のシリコーンオイル及び/又は乳化剤を低減する方法を用いて、シリコーンオイル及び/又は乳化剤を含有する油脂から、シリコーンオイル及び/又は乳化剤を除去して油脂を製造するものである。したがって、シリコーンオイル及び/又は乳化剤を除去工程は、シリコーンオイル及び/又は乳化剤の添加工程の後に行われる。
【0019】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
(試験油脂A)
精製菜種油、精製コーン油、精製パームオレインを質量比65:15:20にブレンドし、混合油脂に対してデカグリセリンデカオレイン酸エステルを0.2質量%、シリコーンオイルを約3質量ppm添加し、試験油脂Aを製造した。
(試験油脂B)
精製大豆油と精製菜種油を質量比8:2にブレンドし、混合油脂に対してデカグリセリンデカオレイン酸エステルを0.15質量%、シリコーンオイルを約3質量ppm添加し、試験油脂Bを製造した。
(試験油脂C)
シリコーンオイルを含有する精製菜種油に対して抽出レシチンを1質量%添加し、試験油脂Cを製造した。
(試験油脂D)
精製菜種油に対してデカグリセリンデカオレイン酸エステルを0.3質量%、シリコーンオイルを約3質量ppm添加し、試験油脂Dを製造した。
(ポリグリセリン脂肪酸エステル量(以下、PGS分析値))
ゲル浸透クロマトグラフ法にて、油脂組成物中のポリグリセリン脂肪酸エステル量を分析した。
(Si分析値)
シリコーンオイルの増減を確認するために、ICP発光分光分析装置を用いて油脂組成物中のSi含有量を分析した。
(酸価)
レシチンの増減を把握するために、油脂の酸価(基準油脂分析試験法 2.3.1−2013 日本油化学会制定)を分析した。試験油脂Cに関して、酸価とレシチン量に相関関係があると考えられる。
【0021】
<実験1>
イートンフィルトレーション株式会社のデプスフィルター(シートタイプ)をろ過面が直径9cmの加圧ろ過機に設置し、試験油脂Aを通液させた。
【0022】
【表1】
【0023】
<実験2>
フィルテック株式会社のデプスフィルター(カートリッジタイプ) SS10KS16C−08(0.1μm)をハウジングにセットし、流量2.8L/min又は5.6L/minで試験油脂Bを通液させた。
【0024】
【表2】
<実験3>
フィルテック株式会社のデプスフィルター(シートタイプ)をろ過面が直径9cmの加圧ろ過機に設置し、試験油脂Aを通液させた。
【0025】
【表3】
【0026】
<実験4>
フィルテック株式会社のデプスフィルター(シートタイプ)をろ過面が直径9cmの加圧ろ過機に設置し、試験油脂Cを通液させた。
【0027】
【表4】
【0028】
<実験5>
FILTROX社のデプスフィルター(シートタイプ)をろ過面が直径9cmの加圧ろ過機に設置し、試験油脂Dを通液させた。
【0029】
【表5】
【0030】
<実験6>
FILTROX社のデプスフィルター(シートタイプ)をろ過面が直径9cmの加圧ろ過機に設置し、試験油脂Cを通液させた。
【0031】
【表6】
【0032】
実験1〜6の結果から、デプスフィルターを用いると油脂組成物中のシリコーンオイルが低減されていることが確認できた。また、実験2〜3、5の結果から、活性炭を含むデプスフィルターを用いるとシリコーンオイルだけでなく、ポリグリセリン脂肪酸エステルも低減されることが確認できた。