(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
雪上、氷上、又は水上を滑走するための滑走用具を製造する方法であって、雪面、氷面、又は水面に接する滑走面を、砥粒を含有するスラリー状研磨用組成物を用いて研磨して、前記滑走面の表面粗さRaを0.12μm以下とする研磨工程を備える滑走用具の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。また、以下の実施形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0009】
本発明に係る滑走用具の一実施形態である雪上スキー板は、雪上を滑走するための滑走用具である。本実施形態の雪上スキー板は、
図1、2に示すように、細長い略板状の芯材10と、芯材10の底面側に配されたソール12と、ソール12の幅方向両側部に配されたエッジ14、14と、を備えている。芯材10は、例えば木材又は繊維強化樹脂で構成されている。ソール12は、ポリエチレン(例えば高分子量の高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリアセタール、ポリメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂で構成されている。エッジ14は、例えば金属で構成されている。
【0010】
ソール12の露出面は雪上スキー板の底面を構成し、この底面が滑走時に雪面と接する滑走面1をなす。滑走面1は、平滑性と撥水性を付与するために平滑に研磨されており、表面粗さRaは1.0μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下)とされている。滑走面1の表面粗さRaは、触針式やレーザー式の測定機を用いて測定することができる。
従来の雪上スキー板の滑走面の表面粗さRaは通常1.5μm以上であるので、本実施形態の雪上スキー板の滑走面1は、従来の雪上スキー板と比べて平滑性と撥水性が極めて優れている。そのため、滑走時の滑走面1と雪面との間の摩擦抵抗が顕著に低くなるので、本実施形態の雪上スキー板は極めて優れた滑走性を有する。
【0011】
滑走面1を研磨する方法は、表面粗さRaを1.0μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下)とすることができる研磨方法であれば特に限定されるものではないが、砥粒を含有するスラリー状研磨用組成物を用いて研磨する方法が好適である。例えば、研磨布と滑走面1との間にスラリー状研磨用組成物を介在させた状態で、研磨布を滑走面1に押圧しつつ研磨布と滑走面1を相対移動させて摩擦すると、滑走面1を研磨することができる。なお、表面粗さRaを1.0μm以下とすることができるならば、スラリー状研磨用組成物の代わりに、砥粒を含有するコンパウンド状研磨用組成物を用いて滑走面1を研磨してもよい。
【0012】
従来の雪上スキー板の滑走面は、固定砥粒を有する研磨器具(例えば砥石、ヤスリ)で研磨されているため、その表面粗さRaは2.5μm程度である。その滑走面の平滑性をさらに改善するために、パラフィン系ワックス等の固形ワックスを塗布した後に、スクレーピング、ブラシ等で表面粗さRaを整え1.5〜2.0μm程度にする方法が知られているが、雪上スキー板の滑走面をそれ以上に平滑化する研磨方法は従来は実現性がなかった。しかしながら、上記のようなスラリー状研磨用組成物を用いる研磨方法であれば、滑走面1の表面粗さRaを1.0μm以下とすることができる。
【0013】
また、従来は、雪上スキー板の滑走面の表面粗さRaを1.0μm以下とすることによって、滑走面の表面粗さRaが1.5μm程度である場合と比べて滑走時の滑走面と雪面との間の摩擦抵抗が顕著に低くなるとは考えられていなかった。本発明者らは、雪上スキー板の滑走面1の表面粗さRaを1.0μm以下とすることによって、滑走時の滑走面1と雪面との間の摩擦抵抗が従来と比べて顕著に低くなることを見出した。
【0014】
なお、本実施形態においては、滑走用具の一例として雪上スキー板を示して本発明を説明したが、雪上スキー板の種類は特に限定されるものではない。例えば、ノルディックスキー競技用の雪上スキー板でもよいし、アルペンスキー競技用の雪上スキー板でもよい。ノルディックスキー競技用の雪上スキー板においても、ジャンプ競技用の雪上スキー板でもよいし、距離競技用の雪上スキー板でもよい。
【0015】
また、本発明に係る滑走用具は、雪上スキー板に限定されるものではない。例えば、雪上を滑走するための滑走用具の雪上スキー板以外の例としては、スノーボード、チェアスキー、橇、スノーモービル等があげられる。スノーモービルは、操舵を行うための部材として車輪の代わりに橇様の部材を備えているので、その橇様の部材に対して本発明を適用することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る滑走用具で滑走する雪面の雪質は特に限定されるものではなく、例えば新雪、しまり雪、ざらめ雪、人工雪の雪面を滑走することができる。
また、本発明に係る滑走用具で滑走する雪面の雪温は特に限定されるものではないが、例えば0℃以下の雪温の雪面で、本発明に係る滑走用具を好ましく使用することができる。
また、本発明に係る滑走用具を使用する際の外気温は特に限定されるものではないが、例えば3℃以下の外気温下で、本発明に係る滑走用具を好ましく使用することができる。
また、本発明に係る滑走用具で滑走する雪面の湿度は特に限定されるものではない。
【0017】
さらに、本発明は、雪上を滑走するための滑走用具に限らず、氷上又は水上を滑走するための滑走用具に適用することができる。氷上又は水上を滑走するための滑走用具の場合であっても、滑走面の表面粗さRaを1.0μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下)とすれば、雪上を滑走するための滑走用具と同様に前述の効果が得られる。
【0018】
氷上を滑走するための滑走用具の例としては、アイススケート靴、橇、カーリング用ストーン等があげられる。滑走用具が例えばアイススケート靴の場合であれば、氷面と接する金属製のブレードの滑走面の表面粗さRaを1.0μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下)とすればよい。
【0019】
アイススケート靴の種類は特に限定されるものではなく、例えば、アイスホッケー用のアイススケート靴でもよいし、スピードスケート用のアイススケート靴でもよいし、フィギュアスケート用のアイススケート靴でもよい。また、橇の種類も特に限定されるものではなく、例えば、ボブスレー用の橇でもよいし、リュージュ用の橇でもよいし、スケルトン用の橇でもよい。
【0020】
水上を滑走するための滑走用具の例としては、水上スキー板、サーフボード、船(ボート)、筏、水上機等があげられる。滑走用具が例えば船の場合であれば、水面と接する船底の外表面が滑走面となるから、船底の外表面の表面粗さRaを1.0μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下)とすればよい。船の種類は特に限定されるものではなく、例えば、ヨット、カヌー、客船、貨物船、水中翼船でもよい。
【0021】
水上機の種類も特に限定されるものではなく、例えば、水面上に浮いて滑走が可能な船型の機体構造を有し、水上にて離着水できるように設計された飛行艇でもよいし、浮舟(フロート)のような艤装を備えることによって、水上にて離着水できるように設計されたフロート水上機でもよい。滑走用具が例えば飛行艇の場合であれば、水面と接する飛行艇の底部の外表面が滑走面となるから、飛行艇の底部の外表面の表面粗さRaを1.0μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下)とすればよい。また、滑走用具が例えばフロート水上機の場合であれば、水面と接する浮舟の底部の外表面が滑走面となるから、浮舟の底部の外表面の表面粗さRaを1.0μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下)とすればよい。
【0022】
上記のように、滑走面1の表面粗さRaを1.0μm以下とすれば、滑走時の滑走面1と雪面との間の摩擦抵抗が顕著に低くなるので、雪上スキー板は極めて優れた滑走性を有することとなるが、表面粗さRaを1.0μm以下とした滑走面1に潤滑剤の被膜16を被覆すると(
図2を参照)、滑走面1の撥水性がさらに高まって、滑走時の滑走面1と雪面との間の摩擦抵抗がさらに低くなるので、雪上スキー板の滑走性がさらに向上することとなる。
【0023】
滑走面1に潤滑剤の被膜16を被覆する場合は、砥粒を含有するスラリー状研磨用組成物を用いて滑走面1を研磨して、滑走面1の表面粗さRaを1.0μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下)とする研磨工程の後に、研磨した滑走面1に潤滑剤の被膜16を被覆する被覆工程を行えばよい。潤滑剤の被膜16についても、その表面を平滑に形成することが好ましいことは勿論である。被膜16の表面を平滑に形成する場合には、被膜16の表面を研磨することにより、その表面粗さRaを1.0μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下)としてもよい。潤滑剤の被膜16の厚さは特に限定されない。なお、研磨後の滑走面1の表面粗さRaが1.0μm超過であっても、被膜16の表面の表面粗さRaを1.0μm以下(好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下)とすれば、前述と同様の効果が奏される場合がある。
【0024】
滑走面1に潤滑剤の被膜16を被覆する方法は特に限定されるものではなく、ロールコート法、スプレー噴霧法、刷毛塗り法等の一般的な方法を問題なく採用することができる。また、潤滑剤の種類は特に限定されるものではなく、石油系潤滑剤(例えば、パラフィン系のホットワックス)、鉱物系潤滑剤、フッ素系潤滑剤等の一般的な潤滑剤を用いることができる。潤滑剤の性状に関しても、固体状、グリース状、液体状など特に限定されない。
【0025】
ここで、滑走面1の研磨に使用可能なスラリー状研磨用組成物について説明する。スラリー状研磨用組成物は、砥粒と液状媒体を含有し、砥粒が液状媒体中に分散してスラリー状をなしている。このスラリー状研磨用組成物は、所望により添加剤を含有していてもよい。
【0026】
砥粒の種類は特に限定されるものではなく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ジルコン、酸化チタン、酸化マンガン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化チタン、窒化ケイ素、ホウ化チタン、ホウ化タングステン等があげられる。
【0027】
砥粒の平均二次粒子径は、15μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましく、1μm以下が特に好ましく、0.5μm以下がより一層好ましく、0.3μm以下が最も好ましい。砥粒の平均二次粒子径が小さい方が、研磨後の滑走面1に付いている傷が少なく、表面粗さRaが優れたものとなり、より平滑になる傾向がある。なお、砥粒の平均二次粒子径は、例えば動的光散乱法、レーザー回折法、レーザー散乱法、細孔電気抵抗法等により測定することができる。
【0028】
スラリー状研磨用組成物中の砥粒の濃度は、45質量%以下が好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。砥粒の濃度が低いほど、分散性がよくコスト低減ができる。また、スラリー状研磨用組成物中の砥粒の濃度は、2質量%以上が好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。砥粒の濃度が高いほど、研磨速度が上昇する。
【0029】
添加剤の種類は特に限定されるものではなく、例えば、pH調整剤、エッチング剤、酸化剤、水溶性高分子、防食剤、キレート剤、分散助剤、防腐剤、防黴剤等の添加剤を、所望によりスラリー状研磨用組成物に添加してもよい。添加剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
液状媒体は、砥粒、添加剤等の各成分を分散又は溶解するための分散媒又は溶媒である。液状媒体の種類は特に限定されるものではなく、水、有機溶剤(例えば油脂、アルコール、エーテル)等があげられる。液状媒体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよいが、水を含有することが好ましい。
なお、コンパウンド状研磨用組成物は、スラリー状研磨用組成物に比べて液状媒体の濃度が低く半固体状(グリース状)をなしている点を除いて、スラリー状研磨用組成物とほぼ同様であり、使用される砥粒、液状媒体、添加剤の種類はスラリー状研磨用組成物と同様であるので、その説明は省略する。
【0031】
次に、滑走面1の研磨に使用可能な研磨布について説明する。研磨布の材質は特に限定されるものではなく、布、不織布、スウェード、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、多孔質フッ素樹脂等があげられる。また、砥粒を含む研磨布、砥粒を含まない研磨布のいずれも用いることができる。さらに、研磨布の研磨面には、スラリー状研磨用組成物が溜まるような溝が設けられていてもよい。さらに、ウール、ナイロン等の繊維で構成された植毛布、織布(植毛布、織布の例としてはカーペットがあげられる)も、研磨布として用いることができる。なお、研磨布の代わりに、ナイロン等の繊維を用いたブラシや、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を用いたスポンジ等を用いて滑走面1の研磨を行ってもよい。
【0032】
また、滑走面1の研磨は、研磨布を保持し動かして研磨を行う機能を有する研磨装置を用いて行ってもよいが、研磨布を取り付けたハンドポリッシャを研磨作業者が手作業で動かして行ってもよいし、研磨布を把持した研磨作業者が研磨布を手作業で動かして行ってもよい。あるいは、滑走面1を固定し、研磨布を取り付けたハンドポリッシャをロボットアーム等により移動させて、滑走面1の研磨を行ってもよい。
【0033】
〔実施例〕
以下に実施例及び比較例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。ポリエチレン製の略四角柱状試験片(CXC(central cross country ski association)のワックステストツールNordic Torpedo、寸法43mm×43mm×300mm、質量489g)の一側面を、種々の表面粗さRaに研磨した。実施例1及び実施例2の試験片については、スラリー状研磨用組成物と研磨布を用いて鏡面研磨を行った。実施例1及び実施例2の試験片の被研磨面の表面粗さRaは0.04μmであった。
参考例1及び
参考例2の試験片については、スラリー状研磨用組成物と研磨布を用いて粗研磨を行った。
参考例1及び
参考例2の試験片の被研磨面の表面粗さRaは0.41μmであった。
【0034】
比較例1及び比較例2の試験片については、スラリー状研磨用組成物と研磨布を用いて研磨を行った。比較例1及び比較例2の試験片の被研磨面の表面粗さRaは1.68μmであった。比較例3及び比較例4の試験片については、サンドペーパー(WA#320)を用いて粗研磨を行った。比較例3及び比較例4の試験片の一側面の表面粗さRaは2.31μmであった。
なお、試験片の表面粗さRaは、株式会社キーエンス製のレーザ顕微鏡 形状測定レーザマイクロスコープVK−X200を用いて測定した。倍率は1000倍であり、測定エリアサイズは284μm×213μmである。
【0035】
実施例1及び実施例2の試験片の研磨に用いたスラリー状研磨用組成物は、平均二次粒子径80nmのシリカ20質量%と純水80質量%とからなる(pH=10)。実施例1及び実施例2の試験片の研磨に用いた研磨布の材質はスウェードである。
参考例1及び
参考例2の試験片の研磨に用いたスラリー状研磨用組成物は、平均二次粒子径3.0μmのアルミナ18質量%と純水82質量%とからなる(pH=3)。
参考例1及び
参考例2の試験片の研磨に用いた研磨布の材質は不織布である。比較例1及び比較例2の試験片の研磨に用いたスラリー状研磨用組成物は、平均二次粒子径59.0μmのアルミナ20質量%と純水80質量%とからなる(pH=6)。比較例1及び比較例2の試験片の研磨に用いた研磨布の材質は不織布である。実施例1
、2、参考例1、2及び比較例1、2の試験片の研磨条件は以下の通りである。
【0036】
研磨装置:ラップマスター社製の研磨装置 モデル36PL−3R
研磨荷重:19.6kPa(200gf/cm
2)
定盤の回転速度:30min
−1
研磨時間:20分間
研磨用組成物の供給速度:50mL/分
【0037】
実施例2、
参考例2及び比較例2、4の試験片の被研磨面には、潤滑剤を塗布して潤滑剤の被膜を被覆した。潤滑剤としては、株式会社ガリウム製の液体フッ素ワックス Dr.FCG MaxFluorを用いた。なお、この潤滑剤を塗布後の表面粗さRa(潤滑剤の被膜の表面粗さRa)は、塗布前の値(被研磨面の表面粗さRa)と同じであった。実施例1、
参考例1及び比較例1、3の試験片の被研磨面には、潤滑剤の被膜を被覆しなかった。
【0038】
このようにして製造した実施例1
、2、参考例1、2及び比較例1〜4の試験片について、雪上を滑走する際の滑走性の評価を行った。実施例1、
参考例1及び比較例1、3の試験片については、被研磨面を雪面に接する滑走面とした。実施例2、
参考例2及び比較例2、4の試験片については、潤滑剤の被膜を被覆した被研磨面を、雪面に接する滑走面とした。
【0039】
そして、滑走面を下方に向けつつ試験片を傾斜した雪面上に静置し、雪面に沿って下方に滑走する試験片の滑走性を評価した。傾斜した雪面は、高低差80cm、長さ15mの斜面である。その傾斜角度は、上方部分は大きく(最大10°)、下方部分は緩やか(ほぼ0°)である。
【0040】
滑走性の評価は、以下の2つの条件で行った。条件1は、外気温が−2℃、湿度が70%、雪温が−4〜−2℃、雪質がしまり雪(結晶粒径5mm)というものである。また、条件2は、外気温が10℃、湿度が55%、雪温が−2℃、雪質がしまり雪というものである。条件2は条件1よりも雪の含水率が高いので、条件1よりも滑走しにくい雪質である。
【0041】
まず、条件1の場合の滑走性の評価方法について、詳細に説明する。条件1は滑走しやすい雪質であるので、雪面に沿って下方に滑走する試験片の滑走速度(単位はm/s)と動摩擦係数を随時測定した。試験片にはGPSセンサが取り付けられているため、滑走中の試験片の位置情報をGPSセンサによって200ミリ秒ごとに取得し、その位置情報の変化から、試験片の滑走速度と動摩擦係数を算出した。
【0042】
そして、滑走速度をx軸、動摩擦係数をy軸としたxy座標に、滑走速度と動摩擦係数の各測定データをプロットして近似直線を求め、近似直線の傾きΔμ/Δvを求めた。また、試験片の最高速度も求めた。滑走試験は1つの試験片につき6回行い、6回の滑走試験の全てのデータを用いて傾きΔμ/Δv及び最高速度を求め、これらの値により試験片の滑走性を評価した。
【0043】
次に、条件2の場合の滑走性の評価方法について、詳細に説明する。条件2は滑走しにくい雪質であるので、条件1の場合とは異なり、長い距離を滑走することはなかった。そこで、試験片を傾斜した雪面上に静置し、滑走し始めてから停止するまでの滑走距離によって滑走性を評価した。
【0045】
結果を表1にまとめて示す。条件2の場合の結果から分かるように、滑走面の表面粗さRaが1.0μm以下である実施例1
、2及び参考例1、2は、滑走面の表面粗さRaが1.68μmである比較例1、2や、滑走面の表面粗さRaが2.31μmである比較例3、4よりも滑走距離が優れていた。特に、滑走面の表面粗さRaが0.04μmである実施例1、2は、滑走距離が極めて優れていた。これらの結果から、実施例1
、2及び参考例1、2は優れた滑走性を発現することが分かる。
なお、条件1の場合の結果から分かるように、滑走面に潤滑剤の被膜を被覆した方が、
潤滑剤の被膜を被覆しない方よりも最高速度が大きく、実施例1、2から滑走距離も大きくなる傾向が見られた。
【0046】
次に、実施例1
、2、参考例1、2及び比較例1〜4とは異なる条件で滑走性を評価した実施例5
、参考例3、4及び比較例5、6について説明する。実施例1
、2、参考例1、2及び比較例1〜4の場合と同様に、ポリエチレン製の略四角柱状試験片の一側面を、種々の表面粗さRaに研磨した。実施例5
、参考例3、4及び比較例5の試験片については、スラリー状研磨用組成物と研磨布を用いて研磨を行った後に、潤滑剤の塗布及びスクレーピングとブラシ処理を行った。比較例6の試験片については、サンドペーパー(WA#320)を用いて粗研磨を行った後に、潤滑剤の塗布及びスクレーピングとブラシ処理を行った。
【0047】
実施例5の試験片の研磨に用いたスラリー状研磨用組成物は、平均二次粒子径80nmのシリカ20質量%と純水80質量%とからなる(pH=10)。実施例5の試験片の研磨に用いた研磨布の材質はスウェードである。
参考例3の試験片の研磨に用いたスラリー状研磨用組成物は、平均二次粒子径3.0μmのアルミナ20質量%と純水80質量%とからなる(pH=6)。
参考例3の試験片の研磨に用いた研磨布の材質は不織布である。
参考例4の試験片の研磨に用いたスラリー状研磨用組成物は、平均二次粒子径12.0μmのアルミナ20質量%と純水80質量%とからなる(pH=6)。
参考例4の試験片の研磨に用いた研磨布の材質は不織布である。比較例5の試験片の研磨に用いたスラリー状研磨用組成物は、平均二次粒子径59.0μmのアルミナ20質量%と純水80質量%とからなる(pH=6)。比較例5の試験片の研磨に用いた研磨布の材質は不織布である。実施例5
、参考例3、4及び比較例5の試験片の研磨条件は、実施例1
、2、参考例1、2及び比較例1〜4の場合と同一である。
【0048】
実施例5
、参考例3、4及び比較例5、6の試験片の被研磨面には、潤滑剤を塗布して潤滑剤の被膜を被覆した。潤滑剤としては、株式会社ガリウム製のワックスであるEXTRA BASE WAX及びHYBRID HF VIOLETを用いた。詳述すると、まずEXTRA BASE WAXをホットアイロンで塗布した後に、余分なワックスをスクレーピング及びブラシで除去し、さらにその上からHYBRID HF VIOLETをホットアイロンで塗布した後に、余分なワックスをスクレーピング及びブラシで除去した。
【0049】
潤滑剤の被覆後の被研磨面の表面粗さRa(潤滑剤の被膜の表面粗さRa)は、表2に記載した通りである。なお、試験片の表面粗さRaの測定方法は、実施例1
、2、参考例1、2及び比較例1〜4の場合と同様である。
このようにして製造した実施例5
、参考例3、4及び比較例5、6の試験片について、雪上を滑走する際の滑走性の評価を行った。各試験片については、潤滑剤の被膜を被覆した被研磨面を、雪面に接する滑走面とした。
【0050】
そして、滑走面を下方に向けつつ試験片を傾斜した雪面上に静置し、雪面に沿って下方に滑走する試験片の滑走性を評価した。傾斜した雪面は、高低差200cm、長さ30mの斜面であり、その傾斜角度は4°である。
滑走性の評価は、以下の2つの条件で行った。条件3は、外気温が−2.5℃、湿度が70%、雪温が−4℃、雪質が人工雪というものである。条件4は、外気温が0℃、湿度が61%、雪温が−3℃、雪質が新雪しまり雪というものである。
【0051】
条件3及び条件4の場合の滑走性の評価は、以下のようにして行った。すなわち、光電管を用いた赤外線計測器により、長さ30mの傾斜した雪面を滑走するために要した時間を測定し、この滑走時間により滑走性を評価した。
【0053】
結果を表2にまとめて示す。この結果から分かるように、滑走面の表面粗さRaが1.0μm以下である実施例5
及び参考例3、4は、滑走面の表面粗さRaが1.44μmである比較例5や、滑走面の表面粗さRaが2.52μmである比較例6よりも滑走性が優れていた。