特許第6974432号(P6974432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許69744321−ヒドロキシメチル−1,2,2,6−テトラメチル−シクロヘキサン及びその誘導体、並びにそれらのアロマケミカルとしての使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974432
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】1−ヒドロキシメチル−1,2,2,6−テトラメチル−シクロヘキサン及びその誘導体、並びにそれらのアロマケミカルとしての使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 31/135 20060101AFI20211118BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20211118BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20211118BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20211118BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20211118BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 29/14 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 29/40 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 33/14 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 45/00 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 45/29 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 45/67 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 47/32 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 49/21 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 67/14 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 67/46 20060101ALI20211118BHJP
   C07C 69/003 20060101ALI20211118BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20211118BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C07C31/135
   A23L27/20 E
   A61K8/35
   A61K8/37
   A61K47/08
   A61K47/14
   A61Q11/00
   A61Q13/00 101
   A61Q19/10
   C07C29/14
   C07C29/40
   C07C33/14
   C07C45/00
   C07C45/29
   C07C45/67
   C07C47/32
   C07C49/21
   C07C67/14
   C07C67/46
   C07C69/003 BCSP
   C11B9/00 M
   C11B9/00 Z
   C11D3/50
【請求項の数】15
【全頁数】47
(21)【出願番号】特願2019-505384(P2019-505384)
(86)(22)【出願日】2017年8月3日
(65)【公表番号】特表2019-531266(P2019-531266A)
(43)【公表日】2019年10月31日
(86)【国際出願番号】EP2017069637
(87)【国際公開番号】WO2018024820
(87)【国際公開日】20180208
【審査請求日】2020年7月31日
(31)【優先権主張番号】201621026655
(32)【優先日】2016年8月4日
(33)【優先権主張国】IN
(31)【優先権主張番号】16188975.3
(32)【優先日】2016年9月15日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒックマン,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】リューデナウアー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ペルツァー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】スワミナサン,ヴィジャイ,ナラヤナン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンデールカー,シュリラング
(72)【発明者】
【氏名】ガップト,ニティン
(72)【発明者】
【氏名】アルデカー,サダナンド
(72)【発明者】
【氏名】カダム,ミレーン
【審査官】 阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平1−238551(JP,A)
【文献】 特表2014−518212(JP,A)
【文献】 特開平4−330033(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/148743(WO,A1)
【文献】 JOURNAL OF THE CHEMICAL SOCIETY, CHEMICAL COMMUNICATIONS,1982年,Vol. 10,pp. 564 - 566,http://dx.doi.org/10.1039/C39820000564
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 31/135
A23L 27/20
A61K 8/35
A61K 8/37
A61K 47/08
A61K 47/14
A61Q 11/00
A61Q 13/00
A61Q 19/10
C07C 29/14
C07C 29/40
C07C 33/14
C07C 45/00
C07C 45/29
C07C 45/67
C07C 47/32
C07C 49/21
C07C 67/14
C07C 67/46
C07C 69/003
C11B 9/00
C11D 3/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)の化合物
【化1】
[式中、RはC〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。]。
【請求項2】
(B)の化合物
【化2】
[式中、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択され、
はC〜Cアルキルから選択される。]。
【請求項3】
(C)の化合物
【化3】
[式中、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択され、ただし、Rがメチルである場合は除外される。]。
【請求項4】
以下から選択される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【化4】
【請求項5】
式(A)の化合物
【化5】
[式中、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。]
を合成するための方法であって、
i)式(D)の化合物
【化6】
を提供すること、及び
iia)式(D)の化合物を、ヒドリド化合物から選択される還元剤と反応させ、又は触媒的水素化により反応させて、式(A.a)の化合物
【化7】
を得ること、若しくは
iib)式(D)の化合物を、金属C〜Cアルキル化合物及び金属〜Cアルケニル化合物から選択される求核剤と反応させて、式(A.b)の化合物
【化8】
[式中、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択される。]
を得ること
を含む方法。
【請求項6】
式(B.a)の化合物
【化9】
[式中、RはC〜Cアルキルから選択される。]
を合成するための方法であって、
iiia)請求項5に記載の方法で得られた式(A.a)の化合物
【化10】
を、ケテン、飽和及び不飽和モノカルボン酸、飽和及び不飽和モノカルボン酸のハロゲン化物、飽和及び不飽和モノカルボン酸の無水物、及び飽和及び不飽和モノカルボン酸のC〜Cアルキルエステルから選択される化合物と反応させて、式(B.a)の化合物を得ること
を含む、方法。
【請求項7】
工程iib)において、求核剤が少なくとも1つのリガンドRを含む金属C〜Cアルキル化合物及び金属〜Cアルケニル化合物から選択される、式(A.b)の化合物を合成するための請求項5に記載の方法。
【請求項8】
式(C)の化合物
【化11】
[式中、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択される。]
を合成するための方法であって、
iiib)請求項5又は7に記載の方法で得られた式(A.b)の化合物
【化12】
[式中、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択される。]
を酸化試薬と反応させて式(C)の化合物を得ること
を含む、方法。
【請求項9】
工程i)が以下の工程を含む、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法:
ia)式(D.a)の化合物
【化13】
を提供すること、
ib)式(D.a)の化合物をホルムアルデヒドとのアルドール縮合反応に付し、式(D.b)の化合物
【化14】
を得ること、
ic)式(D.b)の化合物を水素化反応に付し、式(D.c)の化合物
【化15】
を得ること、
id)式(D.c)の化合物をアセチル化反応に付し、式(D.d)の化合物
【化16】
を得ること、
ie)式(D.d)の化合物を環化反応に付し、式(D)の化合物を得ること。
【請求項10】
式(A)の化合物
【化17】
[式中、RはC〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。]、
又は式(B)の化合物
【化18】
[式中、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択され、
はC〜Cアルキルから選択される。]、
又は式(C)の化合物
【化19】
[式中、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択される。]、
又は式(A.1)の化合物、
【化20】
又は式(D)の化合物
【化21】
のアロマケミカルとしての使用。
【請求項11】
以下を含む着香味料組成物:
a)請求項10に定義される式(A)の化合物の少なくとも1種、又は請求項10に定義される式(B)の化合物の少なくとも1種、又は請求項10に定義される式(C)の化合物の少なくとも1種、又は請求項10に定義される式(A.1)の化合物、又は式(D)の化合
【化22】
及び
b)任意で、成分a)の化合物と異なる少なくとも1種の別のアロマケミカル、及び
c)任意で、少なくとも1種の希釈剤
であって、ただし、前記組成物は少なくとも1種の成分b)又はc)を含む、着香味料組成物。
【請求項12】
官能的に(organoleptically)有効な量の、請求項10に定義される式(A)の化合物の少なくとも1種、又は請求項10に定義される式(B)の化合物の少なくとも1種、又は請求項10に定義される式(C)の化合物の少なくとも1種、又は請求項10に定義される式(A.1)の化合物、又は請求項10若しくは11に定義される式(D)の化合物を含み、及び/又は官能的に有効な量の、請求項11に定義される少なくとも1種の着香味料組成物を含む、香気付けられた(perfumed)又は芳香付けられた(aromatized)製品。
【請求項13】
前記製品は、香水、洗剤及びクリーナー、化粧用組成物、ボディケア組成物、衛生用品、口腔及び歯科衛生用製品、香気ディスペンサー、香料、薬学的組成物並びに作物保護組成物から選択される、請求項12に記載の香気付けられた又は芳香付けられた製品。
【請求項14】
官能的に有効な量の、請求項10に定義される式(A)の化合物の少なくとも1種、又は請求項10に定義される式(B)の化合物の少なくとも1種、又は請求項10に定義される式(C)の化合物の少なくとも1種、又は請求項10に定義される式(A.1)の化合物、又は請求項10若しくは11に定義される式(D)の化合物に製品を接触させる、製品の香り又は風味を付与及び/又は増強するための方法。
【請求項15】
以下から選択される化合物のアロマケミカルとしての使用:
−ユーカリプトール、フラワリー、アース様(earth-like)の芳香を有する式(A.1)の化合物、
【化23】
−ウッディ、スイートパウダリー、フレッシュ、フリージアの芳香を有する式(B.1)の化合物、
【化24】
−ウッディ、シダー、オークモスの芳香を有する式(A.3)の化合物、
【化25】
−わら、干し草、アース様、僅かにウッディの芳香を有する式(C.1)の化合物、
【化26】
−アンブラ(ambra)、ナフタレンの芳香を有する式(A.2)の化合物、
【化27】
−アース様、セダーウッド、パウダリー、ドライの芳香を有する式(C.3)の化合物、
【化28】
−ドライフルーツ、ダマスコン、ローズ様、ラビッジ(lovage)の芳香を有する式(C.2)の化合物、
【化29】
−ユーカリプトール、カンファー(campher)、シトラス、スプルースニードル(spruce needle)の芳香を有する式(D)の化合物。
【化30】
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
多数の既存のアロマケミカル(香料及び着香味料)があるにもかかわらず、極めて多様な適用分野に望まれる多数の特性を満たすことができるようにするために、常に新たな成分が必要とされている。これらの特性には、第一に、官能特性が含まれる。即ち化合物は有利な匂い(嗅覚)特性又は味覚特性を有するべきである。しかしながら、さらに、アロマケミカルはまた、追加のポジティブな二次的特性、例えば、効率的な合成方法、他の香料との相乗効果の結果、より優れた感覚プロファイルを与える可能性、特定の適用条件下での高い安定性、高い拡張性(extendibility)、高い持続力等、を有すべきである。
【0002】
特許文献1には、(S)-3,7-ジメチルオクト-6-エナール及びホルムアルデヒドから出発し、(S)-3,7-ジメチル-2‐メチレンオクト-6-エナール、(3S)-2,3,7-トリメチルオクト-6-エナール及び(S)-2,3,7-トリメチルオクタ-1,6‐ジエニルアセタートを介する、(1R,6S)-1,2,2,6-テトラメチルシクロヘキサンカルバルデヒドについてのミリモルスケールでの合成経路が開示されている(WO 2012/174064の実施例59a〜59dを参照)。この文献には、1,2,2,6-テトラメチル-シクロヘキサンカルバルデヒドの誘導体は記載されていない。その文献にはまた、当該アルデヒド又はその誘導体のアロマケミカルとしての使用については言及されていない。
【0003】
非特許文献1は、α-メチルゲラン酸の環化反応に関する。
【0004】
特許文献2は、アロマケミカルとして使用され得る脂環式アルデヒドの合成に関する。
【0005】
非特許文献2は、ヒンダードケトンからヒンダードエポキシド及びオレフィンへの(C-C)結合経路(connective (C-C) route)に関する。
【0006】
特許文献3は、(3S)-3,7-ジメチル-2-メチレン-6-オクテン-1-アールの香料としての合成に関し、そこでは(3S)-N,N-ジエチル-3,7-ジメチル-1,6-オクタジエニルアミンがホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド形成性化合物と反応する。
【0007】
非特許文献3は、非環式モノテルペンからの香料化合物の合成、特にリナロール及びβ‐シトロネレンのロジウム触媒によるヒドロホルミル化(hydroformulation)及びタンデム型ヒドロホルミル化/アセタール化に関する。
【0008】
本発明の目的は、有利な特性を有する新たなアロマケミカルを提供することである。このアロマケミカルは特に心地よい匂い特性を有するはずである。さらに、我々は特にイオノン及びダマスコンに関連する構造に照準をあてた。イオノンは、3つのメチル基及び側鎖としてα、β‐不飽和ケトンを有するシクロヘキセン環を含む。ダマスコンでは、側鎖におけるケト基及び二重結合の位置が交換されている。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO 2012/174064
【特許文献2】欧州特許第0324111号明細書
【特許文献3】特開平04−26646号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Vogt等, Helvetia Chimica Acta, 37, 1954, 1779-1790
【非特許文献2】Labar等, J. Chem. Soc., Chem. Commun., 10, 564-566, 1982
【非特許文献3】Vieira等, Appl. Catalysis A: General, 466, 208-215
【発明の概要】
【0011】
本発明は、式(A)の化合物
【化2】
[式中、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。]、
式(A)の化合物のエステル、
及び式(A)の化合物のケトンを提供する。
【0012】
具体的には、Rは、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニル、より具体的には、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニル、特にエチル、n-ブチル、1-プロペニル、2-プロペニルから選択される。ただし、化合物(A)が式(A)のエステルである場合にはRはまた水素であってもよい。
【0013】
好ましい実施形態では、本発明は、式(A)の化合物
【化3】
[式中、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニル、具体的にはC〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニル、より具体的にはC〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニル、特にエチル、n-ブチル、1-プロペニル、2-プロペニルから選択される。]、
式(A)の化合物のエステル、
及び式(A)の化合物のケトンを提供する。ただし、化合物(A)が式(A)のエステルである場合にはRはまた水素であってもよい。
【0014】
本発明の一態様では、式(A)の化合物のエステルは、式(B)の化合物
【化4】
[式中、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択され、
はC〜Cアルキルから選択される。]
から選択される。
【0015】
具体的には、Rは水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、特に水素から選択され、RはC〜Cアルキル、特にメチル及びエチルから選択される。
【0016】
本発明の一態様では、式(A)の化合物のケトンは、式(C)の化合物
【化5】
[式中、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択される。ただし、Rがメチルである場合は除外される。]
から選択される。
【0017】
具体的には、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニル、特にエチル、n-ブチル、1-プロペニル、2-プロペニルから選択される。
【0018】
本発明はさらに、式(A)の化合物
【化6】
[式中、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。]
を製造するための方法であって、
i)式(D)の化合物
【化7】
を提供すること、及び
iia)式(D)の化合物を、ヒドリド化合物から選択される還元剤と反応させ、又は触媒的水素化により反応させ、式(A.a)の化合物
【化8】
を得ること、若しくは
iib)式(D)の化合物を、少なくとも1つのリガンドR[ここで、RはC〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。]を含む有機金属化合物から選択される求核剤と反応させ、式(A.b)の化合物
【化9】
を得ること
を含む方法を提供する。
【0019】
本発明はさらに、本明細書で定義される式(A)の化合物、式(A)の化合物のエステル、及び式(A)の化合物のケトンから選択される少なくとも1種の化合物のアロマケミカルとしての使用に関する。
【0020】
本発明はさらに、
a)本明細書で定義される式(A)の化合物、式(A)の化合物のエステル、及び式(A)の化合物のケトンから選択される少なくとも1種の化合物、
b)任意で、成分a)の化合物と異なる少なくとも1種の別のアロマケミカル、及び
c)任意で、少なくとも1種の希釈剤
を含む着香味料組成物に関する。ただし、当該組成物は少なくとも1種の成分b)又はc)を含む。
【0021】
本発明はさらに、
官能的に(organoleptically)有効な量の、本明細書で定義される式(A)の化合物、式(A)の化合物のエステル、及び式(A)の化合物のケトンから選択される少なくとも1種の化合物を含み、かつ/又は
官能的に有効な量の、本明細書で定義される少なくとも1種の着香味料組成物を含む、
香気付けられた(perfumed)又は芳香付けられた(aromatized)製品に関する。
【0022】
本発明はさらに、官能的に有効な量の、本明細書で定義される式(A)の化合物、式(A)の化合物のエステル、及び式(A)の化合物のケトンから選択される少なくとも1種の化合物に製品を接触させる、製品の香り又は風味を付与及び/又は増強するための方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、以下の利点を有する。
−本化合物は有利な芳香特性を示す。
−本化合物は単純な反応で大量に得ることができる。
−本化合物は効果的な合成経路を介して容易に入手できる。
−第4級炭素原子に近接するメチル基の導入
−本合成経路により合成の際精製工程無しで合成することが可能となり、それにより当該経路を容易に拡大(upscaling)/短縮化すること(telescoping)が可能となる。
【0024】
本発明との関係において、C〜Cアルキルは、1〜8個のC原子を有するアルキル部分、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル及びそれらの構造異性体、を表す。
【0025】
好ましいC〜Cアルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等のC〜Cアルキルである。
【0026】
本発明との関係において、C〜Cアルケニルは、2〜8個のC原子を有し、1個以上の、例えば1、2、3個又は3個より多い、C−C不飽和結合を有するアルケニル部分、例えばビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチル-ビニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、n-ブタジエニル、n-ペンテニル、n-ペンタジエニル、n-ヘキセニル、n-ヘキサジエニル、n-ヘプテニル、n-ヘプタジエニル、n-オクテニル、n-オクタジエニル及びそれらの構造異性体、を表す。
【0027】
好ましいC〜Cアルケニルは、1又は2個のC−C不飽和結合を有するC〜Cアルケニル、例えばビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチル-ビニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1,3-ブタジエニル、及びそれらの構造異性体、である。
【0028】
本発明との関係において、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。好ましくは、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。具体的には、Rは水素、エチル、n-ブチル、1-プロペニル及び2-プロペニルから選択される。
【0029】
本発明との関係において、RはC〜Cアルキルから選択される。好ましくは、RはC〜Cアルキル、特にメチル及びエチルから選択される。
【0030】
本発明との関係において、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。ただし、Rがメチルである場合は除外される。好ましくは、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択され(ただし、Rがメチルである場合は除外される。)、具体的には、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニル、特にエチル、n-ブチル、1-プロペニル及び2-プロペニルから選択される。
【0031】
本発明との関係において、飽和モノカルボン酸は、通常1〜8個のC原子を有するモノカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、及びそれらの異性体、を表す。
【0032】
本発明との関係において、不飽和モノカルボン酸は、通常3〜8個のC原子を有するモノカルボン酸、例えばアクリル酸、ブテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸及びそれらの異性体を表す。
【0033】
本発明との関係において、飽和及び不飽和モノカルボン酸のハロゲン化物は、モノカルボン酸の酸フッ化物、酸塩化物、及び酸臭化物から選択される。
【0034】
本発明との関係において、飽和及び不飽和モノカルボン酸の無水物は、飽和及び不飽和モノカルボン酸に基づく無水物から選択される。これらは同一(similar)であっても、又は異なっていても良い。好ましい飽和モノカルボン酸の無水物は、式(C〜Cアルキル)‐C(O)‐O‐C(O)‐(C〜Cアルキル)[式中、好ましくは双方のアルキル部分は同一である。]を有する。
【0035】
本発明との関係において、飽和及び不飽和モノカルボン酸のC〜Cアルキルエステルは、飽和及び不飽和モノカルボン酸のメチル、エチル、n-プロピル、イソ−プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ−ブチル、及びtert-ブチルエステルから選択される。
【0036】
他に記載されない限り、式(A)、(B)、(C)及び(D)の化合物には、すべての配置異性体、具体的には純粋形態のすべてのジアステレオマー及び/又はエナンチオマー並びにそれらの混合物、これらの化合物のエナンチオマーの光学活性混合物と、さらに光学不活性ラセミ化合物も含まれる。
【0037】
本発明との関係において、官能的に有効な量とは、意図された通りに適用されると使用者又は消費者に香気の印象をもたらすのに十分な量であると理解すべきである。
【0038】
式(A)の化合物
本発明は、Rが水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される、本明細書で定義される式(A)の化合物に関する。
【0039】
好ましくは、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。より好ましくは、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。
【0040】
一つの好ましい実施形態では、Rは水素である。
【0041】
他の好ましい一実施形態では、Rは、C〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択され、好ましくは、C〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択され、より好ましくは、C〜Cアルキル及びC〜Cアルケニル、特にエチル、n-ブチル、1-プロペニル、及び2-プロペニルから選択される。
【0042】
具体的には好ましい式(A)の化合物は、式(A.1)、(A.2)、(A.3)、(A.4)及び(A.5)、特に(A.2)、(A.3)、(A.4)及び(A.5)の化合物から選択される。
【化10】
【0043】
式(A)の化合物のエステル、特に式(B)の化合物
本発明はまた、式(A)の化合物のエステルに関し、
【化11】
式中、R及びRは上述の通り定義される。好ましいエステルは、本明細書に定義される式(B)のエステル化合物であり、
【化12】
式中、
は水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択され、
はC〜Cアルキルから選択される。
【0044】
具体的には、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニル、特に水素から選択され、RはC〜Cアルキル、特にメチル及びエチルから選択される。
【0045】
式(A)の化合物のエステルは通常、ケテン、飽和及び不飽和モノカルボン酸、飽和及び不飽和モノカルボン酸のハロゲン化物、飽和及び不飽和モノカルボン酸の無水物、及び飽和及び不飽和モノカルボン酸のC〜Cアルキルエステルから選択される化合物でのヒドロキシ基のエステル化により得られる。
【0046】
好ましくは、ヒドロキシ基のエステル化は、式(K)のケテン
【化13】
[式中、RK1及びRK2は互いに独立に水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択される。]
を用いて行われる。好ましくは、RK1及びRK2は互いに独立に水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択され、それらはより好ましくは同一である。
【0047】
特定の好ましい実施形態では、RK1及びRK2は両方とも水素である。この場合、ケテン(K)はエテノンである。
【0048】
エテノンは好ましくは、概ね650℃よりも高い温度でアセトン又は酢酸の高温熱分解により生成される。温度は好ましくは650〜1000℃の範囲であるが、特に好ましくは700〜900℃である。
【0049】
特定の実施形態では、エテノンは減圧下で合成される。圧力は好ましくは約100〜900mbarの範囲であり、特に好ましくは300〜500mbar、特に350〜450mbarである。別の実施形態では、エテノンは周囲圧力で合成される。この場合、圧力は好ましくは約950mbar〜1050mbarの範囲である。
【0050】
ケテン化合物、特にエテノンは、二量体化しジケテンを形成する傾向の強い、非常に反応性の高い化合物であるため、好ましくは直前に合成されたケテン化合物が本発明による方法において用いられる。本発明による方法は、例えばアセトン、酢酸、又は無水酢酸の熱開裂により、本発明による方法における反応の直前に合成されたエテノンを用いた場合、特に有利となる。
【0051】
本発明による方法の第1の変形形態では、ケテン、特にエテノンは、液体表面下で反応混合物に投入され、反応混合物中に通される。ケテンが比較的大量に実質的に気相に変換しないよう、ケテンは有利には激しい攪拌下で反応混合物に加えられる。ケテンの圧力は、エテノン投入上部の反応混合物の静水圧に打ち勝つために十分高くなければならず、任意で不活性ガス、例えば窒素の気流により支えられる。
【0052】
ケテンは任意の適切な装置により投入され得る。ここではよく分散させ迅速に混合することが重要である。適切な装置は、例えば、適切な位置に固定されても良い散布ランス、又は好ましくはノズルである。ノズルは反応器の底面又は底面付近に与えられ得る。この目的のために、ノズルは反応器周辺の中空チャンバーからの開口部として構成されても良い。しかしながら、適切な供給経路を有する浸漬ノズルを用いることが好ましい。複数のノズルは例えば、環状に配置され得る。ノズルは上又は下向きであっても良い。ノズルは好ましくは斜め下向きである。
【0053】
本発明による方法の第2の変形形態では、ケテン、特にエテノンは減圧下で合成され、式(A)の化合物と減圧下で反応させられる。ケテンの合成及び反応の間の圧力は、好ましくは約100〜900mbarの範囲であり、特に好ましくは300〜500mbar、特に350〜450mbarの範囲である。
【0054】
エテノンを合成するための方法及び装置は、例えばOrganic Syntheses, Coll. Vol. 1, p. 330 (1941) 及び Vol. 4, p. 39 (1925)、並びにChemiker Zeitung [The Chemists Journal] 97, No. 2, p. 67-73 (1979)に記載されている。ケテン化合物CRK1K2=C=O(K)が本発明による方法において使用され、RK1及びRK2が水素とは異なる場合、当該合成は原則として既知の方法により行われ得る。これには、例えば近接する水素を有するハロゲン化カルボニルからのハロゲン化水素の脱離が含まれる。このような方法は、例えば、Organikum, VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften, 16版, Berlin 1986, Chapter 3.1.5, 特に234頁に記載されている。ケテン化合物の合成はまた、ハロゲン化カルボニルをジアゾメタンと反応させることによるアーント・アイシュタート合成により可能である。
【0055】
過剰なケテンは望ましくない副反応をもたらし得る。従って、一般式(A)の化合物のケテンとの反応は、好ましくはほぼ等モル量のケテンを用いて行われる。
【0056】
式(A)の化合物は、好ましくは、反応において常に反応混合物中のケテンの蓄積が回避されるように、ケテンと反応させる。
【0057】
式(A)の化合物のケテンとの反応は、好ましくは、式(A)の化合物の変換が少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%となるまでケテンが反応混合物中に投入されるように、行われる。
【0058】
式(A)の化合物は、好ましくは、0〜150℃、好ましくは40〜120℃、より好ましくは80〜100℃の範囲の温度でケテンとの反応に付される。
【0059】
第1の好ましい実施形態では、式(A)の化合物は添加触媒の非存在下でケテンとの反応に付される。
【0060】
第2の好ましい実施形態では、式(A)の化合物は触媒の存在下でケテンとの反応に付される。少なくとも1種の亜鉛塩を触媒として使用することが好ましく、これは水和物又は多水和物としても存在し得る。
【0061】
特に好ましいのは、触媒としてカルボン酸、特に1〜18個の炭素原子を有するモノカルボン酸又は2〜18個の炭素原子を有するジカルボン酸、の亜鉛塩を用いることである。これらには例えば、ギ酸亜鉛、酢酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、酪酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、コハク酸亜鉛又はシュウ酸亜鉛が含まれる。特に好ましいのは酢酸亜鉛である。
【0062】
概して非常に少量の触媒を使用するだけでよいことは、本発明による方法において非常に有利であり、それにより、当該方法は費用効果がより高くなり、反応混合物のワークアップが容易となる。これは、特に触媒として亜鉛塩を使用することに当てはまる。
【0063】
触媒は、好ましくは、化合物(A)の総量に基づき0.01〜2重量%、特に好ましくは0.02〜0.5重量%の量で使用される。
【0064】
本発明による反応を行うために、有利には、優れた攪拌及び/又は混合装置、エテノンの計量装置、反応を開始し反応後に反応温度を維持するための加熱装置、発熱反応の反応熱を取り除くための冷却装置、及び真空ポンプを必須の構成要素として含む適切な反応槽において前記反応が行われるように進行させる。
【0065】
最適な反応様式(reaction regime)のために、有利には、反応混合物中に決して過剰に存在しないよう、かつ反応混合物が常に完全に混合されるよう、ケテンを計量する。
【0066】
最適な反応様式のために、さらに有利には、急速にケテンを加えすぎることを避け、例えば反応熱を監視することにより、反応の終了を明確に判定する。
【0067】
特徴的なカルボニル結合を用いて、例えば赤外線分光法によりケテンを検出することもまた可能である。
【0068】
本発明による方法を用いて、技術的に単純な方法で、高純度であるにも関わらず優れた収率及び空時収率で、式(A)の化合物を合成することができる。反応物は本質的に完全に生成物に変換されるため、本発明による方法は最大の原子経済により特徴づけられる。
【0069】
好ましくは、式(A)の化合物のエステルは、式(B)の化合物から選択され、
式中、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択され、
はC〜Cアルキルから選択される。
【0070】
好ましくは、Rは水素、C〜Cアルキル、及びC〜Cアルケニルから選択され、
はC〜Cアルキル、特にメチル及びエチルから選択される。より好ましくは、Rは水素であり、RはC〜Cアルキル、特にメチル及びエチルから選択される。
【0071】
式(B)の特に好ましい化合物は、式(B.1)及び(B.2)の化合物である。
【化14】
【0072】
式(A)の化合物のケトン、特に式(C)の化合物
本発明はまた、式(A)の化合物のケトン
【化15】
[式中、R及びRは上記に定義される。]に関する。好ましいケトンは本明細書に定義される式(C)のケトン化合物
【化16】
[式中、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択される。ただし、Rがメチルである場合は除外される。]である。
【0073】
具体的には、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニル、特にエチル、n-ブチル、1-プロペニル、2-プロペニルから選択される。
【0074】
式(A)の化合物のケトンは通常、ヒドロキシル基のケト基への酸化により得られる。
【0075】
通常、ヒドロキシ基の酸化は、金属酸化物及びその塩、並びにオキソ酸及びその塩から選択される酸化試薬を用いて行われる。
【0076】
金属酸化物及びその塩についての例は、酸化Cr(VI)化合物及びその塩、Cr(VI)オキシクロロ化合物及びその塩、酸化Mn(VII)化合物及びその塩であり、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びピリジニウム塩が好ましい。
【0077】
オキソ酸及びその塩の例は、クロム酸及びその塩、二クロム酸及びその塩、過マンガン酸及びその塩、マンガン酸及びその塩、硝酸及びその塩、過硝酸及びその塩、リン酸及びその塩、硫酸及びその塩、ピロ硫酸及びその塩、ペルオキソ一硫酸及びその塩、ペルオキソ二硫酸及びその塩、過塩素酸及びその塩、並びに他のその類似ハロゲン化合物、塩素酸及びその塩、並びに他のその類似ハロゲン化合物、亜塩素酸及びその塩、並びに他のその類似ハロゲン化合物、次亜塩素酸及びその塩、並びに他のその類似ハロゲン化合物である。
【0078】
好ましくは、酸化剤は遷移金属酸化物及びその塩、より好ましくは、酸化Cr(VI)化合物及びその塩、並びにCr(VI)オキシクロロ化合物及びその塩から選択される。具体的には、酸化剤はクロロクロム酸ピリジニウムである。
【0079】
さらに好ましい酸化法は以下である:
−好ましくは(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)-オキシダニル(TEMPO)の使用と共に、N−オキシドを触媒として用い、塩素化溶媒中で次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を用いた酸化;
−Mo、W、Mn若しくはV触媒を用い、水において又は水と適切な有機溶媒との混合物において、H水を用いた酸化;
−白金及びO、具体的にはPtO及びO、並びに/又はPt/C及びOを用いた酸化。一般的な方法は例えば、Heyns, Blazejewicz in Tetrahedron, 1960, 9, 67-75により記載されている。
【0080】
好ましくは、式(A)の化合物のケトンは、式(C)の化合物であって、RがC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択される化合物から選択される。
【0081】
好ましくは、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択される。より好ましくは、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択される。特に、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニル、特にエチル、n-ブチル、1-プロペニル、2-プロペニルから選択される。
【0082】
特定の好ましい式(C)の化合物は、式(C.1)、(C.2)、(C.3)及び(C.4)の化合物から選択される。
【化17】
【0083】
式(A)の化合物を合成するための方法
本発明はまた、式(A)の化合物を合成するための方法であって、
i)本明細書に定義される式(D)の化合物
【化18】
を提供すること、及び
iia)式(D)の化合物を、ヒドリド化合物から選択される還元剤と反応させ、又は触媒的水素化により反応させ、式(A.a)の化合物を得ること、若しくは
iib)式(D)の化合物を、少なくとも1つのリガンドR[ここで、RはC〜Cアルキル及びC〜Cアルケニルから選択される。]を含む有機金属化合物から選択される求核剤と反応させ、式(A.b)の化合物を得ること
を含む方法を提供する。
【0084】
従って、一実施形態において、本発明は式(A.a)の化合物を合成するための方法であって、
i)式(D)の化合物を提供すること、及び
iia)式(D)の化合物を、ヒドリド化合物から選択される還元剤と反応させ、又は触媒的水素化により反応させ、式(A.a)の化合物を得ること
を含む方法を提供する。
【0085】
一変形形態では、アルデヒドはヒドリド化合物から選択される還元剤で還元される。
【0086】
工程iia)における反応に適したヒドリド化合物は、例えば、共有結合性ヒドリド、イオン結合性ヒドリド(ionic hydride)、金属ヒドリド、及び遷移金属ヒドリド錯体である。
【0087】
好ましくは、ヒドリド化合物は、ホウ素ヒドリド及びアルミニウムヒドリドから選択される。
【0088】
具体的には、ヒドリド化合物は、ナトリウムボロヒドリド(NaBH)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAL)、ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムヒドリド(Red−Al(登録商標))及びリチウムアルミニウムヒドリド(LiAlH)から選択される。
【0089】
ボロヒドリドを用いる場合、工程iia)における反応は、−20〜+30℃の範囲の温度で、メタノールなどの有機溶媒において行われる。アルミニウムヒドリドを用いる場合、ジエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル‐テトラヒドロフラン(Me-THF)などのエーテル溶媒又はトルエンにおいて、−30〜+80℃の範囲の温度で行われる。一般的な反応条件は、当業者に既知である。
【0090】
他の変形形態では、アルデヒドは触媒的水素化により還元される。
【0091】
適切な触媒は、遷移金属触媒であり、それらは水素雰囲気下で用いられる。概して、遷移金属はCu、Ni、Ru、Rh、Pd及びPtから選択される。触媒は、担持されなくてもよく(例えば、酸化物として、又はラネーニッケルの場合はNi/Al混合物として)、或いは、炭素、Al、ZrO、シリカ、CeO及びそれらの混合物上に担持されても良い(0.01〜10%金属)。あるいはまた、銅クロマイト触媒を使用することができる。
【0092】
水素圧は、概して2〜100barの範囲である。適切な溶媒は、メタノール若しくはエタノール等のアルコール、酢酸エチル等のエステル、又はテトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(Me-THF)等のエーテル溶媒である。或いは、水素化は追加の溶媒無しで行われる。
【0093】
より具体的には、好ましい触媒的水素化法は以下である:
a 銅クロマイト(Cu/Cr)を触媒として用いる、特開平04−283527号公報に類似の方法。
b Synlett 2000, 4, 197-200、特に前記論文の化合物8aの8bへの反応、に類似の方法。
c 100bar以下のHと共に、150℃以下で、数時間THF中で、ZrO上のRu(10重量%)を触媒として用いる方法。
d 10bar以下のHと共に、60℃以下で数時間、任意でMeN(5重量%)を含有するMeOH中で、Pd/Cを触媒として用いる方法。
e 30bar以下のHと共に、60℃以下で数時間、任意でMeN(0.1〜1重量%)を含有するMeOH中で、任意でFeを含有するRu/Cを触媒として用いる方法。
【0094】
特定の態様では、この方法は、
iiia)式(A.a)の化合物を、ケテン、飽和及び不飽和モノカルボン酸、並びにそれらのハロゲン化物、無水物、及びC〜Cアルキルエステルから選択される化合物と反応させて、式(B.a)の化合物(式中、Rは本明細書で定義される通りである。)を得ること
を更に含む。
【0095】
従って、本発明はまた、式(B.a)の化合物を合成するための方法であって、
i)式(D)の化合物を提供すること、
iia)式(D)の化合物を、ヒドリド化合物から選択される還元剤と反応させ、式(A.a)の化合物を得ること、及び
iiia)式(A.a)の化合物を、ケテン、飽和及び不飽和モノカルボン酸、並びにそれらのハロゲン化物、無水物、及びC〜Cアルキルエステルから選択される化合物と反応させて、式(B.a)の化合物を得ること
を含み、Rは本明細書で定義される通りである、方法を提供する。
【0096】
通常、ケテン、飽和及び不飽和モノカルボン酸、並びにそれらのハロゲン化物、無水物、及びC〜Cアルキルエステルから選択される化合物は、以上に定義される通りである。
【0097】
好ましくは、ヒドロキシ基のエステル化はケテンを用いて行われる。特定の好ましいケテンは以上に記載の通りであり、特に好ましいのはエテノンである。
【0098】
工程iiia)は、追加の溶媒無しで、又はトルエン等の有機溶媒中で行われる。典型的には、温度は70〜110℃の範囲、好ましくは80〜100℃の範囲である。一般的な反応条件は当業者に既知である。
【0099】
第2実施形態では、本発明は、式(A.b)の化合物を合成するための方法であって、
i)式(D)の化合物を提供すること、及び
iib)式(D)の化合物を、少なくとも1つのリガンドRを含む有機金属化合物から選択される求核剤と反応させ、式(A.b)の化合物を得ること
を含み、Rが本明細書に記載の通りである、方法を提供する。
【0100】
通常、工程iib)で用いられる求核試薬は、本明細書に定義される少なくとも1つのリガンドRを含む金属C〜Cアルキル化合物及び金属C〜Cアルケニル化合物から選択される。好ましくは、求核試薬は、本明細書に定義される少なくとも1つのリガンドRを含む金属C〜Cアルキル化合物及び金属C〜Cアルケニル化合物から選択される。
【0101】
前記化合物における適切な金属は、リチウム、マグネシウム、銅、及び亜鉛である。好ましいのはマグネシウム及びリチウムである。
【0102】
具体的には、求核試薬はMgClR、MgBrR及びLiRから選択され、ここでRは本明細書に定義される通りである。
【0103】
典型的には、工程iib)はテトラヒドロフラン等のエーテル有機溶媒中で、−35〜+15℃の範囲の温度で行われる。一般的な反応条件は当業者に既知である。
【0104】
特定の態様では、本方法は、
iiib)式(A.b)の化合物を酸化試薬と反応させて式(C)の化合物を得ること[ここで、Rは本明細書に定義される通りである。]
をさらに含む。
【0105】
従って、本発明はまた、式(C)の化合物を合成するための方法であって、
i)式(D)の化合物を提供すること、
iib)式(D)の化合物を、少なくとも1つのリガンドRを含む有機金属化合物から選択される求核剤と反応させ、式(A.b)の化合物を得ること、及び
iiib)式(A.b)の化合物を酸化試薬と反応させて式(C)の化合物を得ること
を含み、Rは本明細書に定義される通りである、方法を提供する。
【0106】
通常、ヒドロキシル基の酸化は以上に定義される酸化試薬を用いて行われる。
【0107】
好ましくは、酸化剤はクロロクロム酸ピリジニウムから選択される。典型的には、工程iiib)はジクロロメタン等の有機溶媒中で0〜+30℃の範囲の温度で行われる。一般的な反応条件は当業者に既知である。
【0108】
他の適切な酸化方法は、上記の酸化方法、例えば、
−次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)を用いた酸化;
−Mo、W、Mn若しくはV触媒を用い、水中で又は水と適切な有機溶媒との混合物中で、H水を用いた酸化;
−白金及びO、具体的にはPtO及びO、並びに/又はPt/C及びOを用いた酸化である。
【0109】
式(D)の化合物を合成するための方法
本発明は、式(A)の化合物を合成するための方法であって、
ia)式(D.a)の化合物
【化19】
を提供すること、
ib)式(D.a)の化合物をアルドール縮合反応に付し、式(D.b)の化合物
【化20】
を得ること、
ic)式(D.b)の化合物を水素化反応に付し、式(D.c)の化合物
【化21】
を得ること、
id)式(D.c)の化合物をアセチル化反応に付し、式(D.d)の化合物
【化22】
を得ること、
ie)式(D.d)の化合物を環化反応に付し、式(D)の化合物を得ること
を含む方法をさらに提供する。
【0110】
式(D.a)の化合物は「シトロネラール」として市販されている。(S)-(-)-シトロネラールはCAS 5949-05-3で入手可能であり、(R)-(+)-シトロネラールはCAS 2385-77-5で入手可能であり、(±)-シトロネラールはCAS 106-23-0で入手可能である。
【0111】
工程ib)について、一般的なアルドール縮合反応は当業者に既知である。
【0112】
通常、工程ib)におけるアルドール縮合反応は、水性ホルムアルデヒドを用いて行われる。当該反応は通常、10〜60℃の範囲の温度で、イソプロパノール/水を溶媒として行われる。
【0113】
工程ic)について、一般的な水素化反応は当業者に既知である。
【0114】
通常、工程ic)における水素化反応は、触媒の存在下で水素分子を用いて行われる。好ましくは、炭素上のパラジウム、Pd/Cが工程ic)において触媒として使用される。
【0115】
工程id)について、一般的なアセチル化反応は当業者に既知である。
【0116】
典型的には、工程id)におけるアセチル化反応はアシル化剤を用いて行われる。一般的なアシル化剤は当業者に既知である。好ましくは、無水酢酸が工程id)において使用される。
【0117】
工程ie)について、一般的な環化反応は当業者に既知である。
【0118】
典型的には、工程ie)における環化反応は、トルエン中の鉱酸の存在下で行われる。好ましくは、硫酸、硝酸、リン酸、塩酸等の鉱酸が工程ie)において使用される。より好ましくは、リン酸が使用される。
【0119】
アロマケミカル
本発明はさらに、本明細書に定義される式(A)、(B)、(C)及び(D)、好ましくは(A)、(B)及び(C)の化合物をアロマケミカルとして提供する。アロマケミカルとして使用される好ましい化合物は、本明細書に記載の化合物、特に式(A.1)、(A.2)、(A.3)、(A.4)、(A.5)、(B.1)、(B.2)、(C.1)、(C.2)、(C.3)及び(C.4)、特に(A.1)、(A.2)、(A.3)、(A.4)、(A.5)、(B.1)、(C.1)、(C.2)及び(C.3)の化合物から選択される化合物である。特に好ましい化合物は、(A.1)、(A.2)、(A.3)、(B.1)、(C.1)、(C.2)及び(C.3)である。
【0120】
芳香化合物、着香剤、アロマ、香料又は香味料としても知られるアロマケミカルは、匂い又は香りを有する化学化合物である。化学化合物が、嗅覚系、典型的には鼻孔上部に運ばれるのに十分揮発性である場合、化学化合物は典型的には匂い又は香りを有する。
【0121】
本発明は、特にユーカリプトール、フラワリー、アース様(earth-like)の香調及び/又は芳香で、香気を生じさせるための、又は製品の香り若しくは風味を付与及び/若しくは増強するための、式(A.1)の化合物のアロマケミカルとしての使用を提供する。
【化23】
【0122】
本発明は、特にアンブラ(ambra)、ナフタレンの香調及び/又は芳香で、香気を生じさせるための、又は製品の香り若しくは風味を付与及び/若しくは増強するための、式(A.2)の化合物のアロマケミカルとしての使用を提供する。
【化24】
【0123】
本発明は、特にウッディ、シダー、オークモスの香調及び/又は芳香で、香気を生じさせるための、又は製品の香り若しくは風味を付与及び/若しくは増強するための、式(A.3)の化合物のアロマケミカルとしての使用を提供する。
【化25】
【0124】
本発明は、特にウッディ、スイートパウダリー、フレッシュ、フリージアの香調及び/又は芳香で、香気を生じさせるための、又は製品の香り若しくは風味を付与及び/若しくは増強するための、式(B.1)の化合物のアロマケミカルとしての使用を提供する。
【化26】
【0125】
本発明は、特にわら、干し草、アース様、僅かにウッディの香調及び/又は芳香で、香気を生じさせるための、又は製品の香り若しくは風味を付与及び/若しくは増強するための、式(C.1)の化合物のアロマケミカルとしての使用を提供する。
【化27】
【0126】
本発明は、特にドライフルーツ、ダマスコン、ローズ様、ラビッジの香調及び/又は芳香で、香気を生じさせるための、又は製品の香り若しくは風味を付与及び/若しくは増強するための、式(C.2)の化合物のアロマケミカルとしての使用を提供する。
【化28】
【0127】
本発明は、特にアース様、セダーウッド、パウダリー、ドライの香調及び/又は芳香で、香気を生じさせるための、又は製品の香り若しくは風味を付与及び/若しくは増強するための、式(C.3)の化合物のアロマケミカルとしての使用を提供する。
【化29】
【0128】
本開示は、特にユーカリプトール、カンファー(campher)、シトラス、スプルースニードル(spruce needle)の香調及び/又は芳香で、香気を生じさせるための、又は製品の香り若しくは風味を付与及び/若しくは増強するための、式(D)の化合物のアロマケミカルとしての使用を提供する。
【化30】
【0129】
本開示は、特にシトラスの香調及び/又は芳香で、香気を生じさせるための、又は製品の香り若しくは風味を付与及び/若しくは増強するための、式(D.b)の化合物のアロマケミカルとしての使用を提供する。
【化31】
【0130】
本開示は、特にローズ様(部屋全体に広がる)、シトラス、ワックス様の香調及び/又は芳香で、香気を生じさせるための、又は製品の香り若しくは風味を付与及び/若しくは増強するための、式(D.c)の化合物のアロマケミカルとしての使用を提供する。
【化32】
【0131】
従って、式(A)、(B)、(C)及び(D)の化合物から選択される、好ましくは式(A)、(B)及び(C)の化合物から選択される化合物、特に本明細書で言及した好ましい化合物は、製品及び/又は組成物に上述の独特な芳香の香調を与えるための材料として本明細書に定義されるアロマケミカルとして又は着香味料組成物において、使用され得る。
【0132】
本明細書におけるアロマケミカルの使用は、具体的には、香気ディスペンサー、香料香水、香水、洗剤及びクリーナー、化粧用組成物、ボディケア組成物、衛生用品、口腔及び歯科衛生用製品から選択される製品又は組成物における使用を含む。
【0133】
本明細書におけるアロマケミカルとしての使用は、以下に言及される製品における、又は香気付けられた物品における使用をさらに含む。
【0134】
着香味料組成物
本発明は、
a)式(A)、(B)、(C)及び(D)の化合物から選択される、好ましくは式(A)、(B)及び(C)の化合物から選択される少なくとも1種の化合物、
b)任意で、成分a)の化合物と異なる少なくとも1種の別のアロマケミカル、及び
c)任意で、少なくとも1種の希釈剤
を含む着香味料組成物(ただし当該組成物は少なくとも1種の成分b)又は成分c)を含む。)をさらに提供する。
【0135】
好ましい実施形態では、本発明による着香味料組成物は、唯一のアロマケミカルとして成分a)を含む。
【0136】
さらに好ましい実施形態では、本発明による着香味料組成物は、式(A)、(B)、(C)及び(D)の化合物とは異なる少なくとも1種の別のアロマケミカルb)を含む。
【0137】
別のアロマケミカル、香味料、特に着香剤は、例えばS. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, Vol. I 及び II、 Montclair, N. J., 1969, 自費出版、又は K. Bauer, D. Garbe 及び H. Surburg, Common Fragrance and Flavor Materials, 第4版, Wiley-VCH, Weinheim 2001において見つけられ得る。
【0138】
好ましくは、成分b)に対する成分a)の定量的な重量比は100:1〜1:100、特に好ましくは50:1〜1:50の範囲である。
【0139】
アロマケミカル又は着香味料組成物は、任意で少なくとも1種の希釈剤c)を含み得る。適切な希釈剤は個別に、又は2種若しくはそれ以上の希釈剤の混合物として使用され得る。適切な希釈剤は、着香味料組成物、香料又は香味料のための溶媒として通常用いられる希釈剤である。
【0140】
好ましくは、着香味料組成物は、20℃及び1013mbarで液体である少なくとも1種の化合物を希釈剤c)として含む。
【0141】
好ましくは、成分a)の化合物は、少なくとも0.1mg/mlの、特に好ましくは少なくとも0.5mg/mlの、20℃での成分c)における溶解度を有する。好ましくは、存在する場合には、成分b)の化合物は、少なくとも0.1mg/mlの、特に好ましくは少なくとも0.5mg/mlの、20℃での成分c)における溶解度を有する。
【0142】
成分c)は、好ましくは脂肪族及び脂環式モノアルコール、ポリオール、開鎖脂肪族エーテル、環状エーテル、ポリオールモノ及びポリエーテル、それらのエステル及び混合物から選択される。
【0143】
適切な脂肪族及び脂環式モノアルコールは、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール及びシクロヘキサノールである。適切なポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール又はグリセロールである。適切な開鎖脂肪族エーテル及び環状エーテルは、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン又はモノホリンである。適切なポリオールモノ及びポリエーテルは、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル又はジエチレングリコールモノエチルエーテルである。適切なエステルは、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酪酸エチル、乳酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のジアルキルエステル、具体的には1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(Hexamoll(登録商標)DINCH, BASF SE)等である。
【0144】
香気付けられた又は芳香付けられた製品
本発明は、
−官能的に有効な量の、本明細書に定義される式(A)、(B)、(C)及び(D)の化合物から選択される、好ましくは式(A)、(B)及び(C)の化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含み、かつ/又は
−官能的に有効な量の、本明細書に定義される少なくとも1種の着香味料組成物を含む、
香気付けられた又は芳香付けられた製品をさらに提供する。
【0145】
本発明による、及び本発明に従い使用される式(A)、(B)、(C)及び(D)の化合物は、香気ディスペンサー、香料香水、香水、洗剤及びクリーナー、化粧用組成物、ボディケア組成物、衛生用品、口腔及び歯科衛生用製品等の一連の製品に組み込まれ、かつ/又はそのような製品に適用され得る。
【0146】
本発明によるアロマケミカルは、香気付けられた物品の製造において使用され得る。本発明によるアロマケミカルの、材料特性(通常の溶媒における溶解度、及びそのような製品の別の通常の構成成分との融和性等)等の嗅覚特性は、前述の用途に対する適性を明示する。肯定的な特性は、本発明に従い使用されるアロマケミカル及び本発明による着香味料組成物が特に好ましくは香水製品、ボディケア製品、衛生用品、繊維製品用洗剤(textile detergent)において、及び固体表面のためのクリーナーにおいて使用されるという事実に寄与する。
【0147】
香気付けられた物品は、例えば香水製品、ボディケア製品、衛生用品、繊維製品用洗剤、及び固体表面のためのクリーナーから選択される。本発明による好ましい香気付けられた物品はまた、以下から選択される:
−香水エキス、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、オードソリッド(Eau de Solide)、エクストレパルファム、液体形態、ゲル状形態又は固体担体に適用される形態のエアフレッシュナー、エアロゾールスプレー、香料入りのクリーナー及びオイルから選択される香水製品;
−アフターシェーブ、プレシェーブ製品、スプラッシュコロン、固形及び液体石鹸、シャワー用ゲル、シャンプー、シェービングソープ、シェービングフォーム、バスオイル、例えばスキンクリーム及びローション、フェイスクリーム及びローション、日焼け止めクリーム及びローション、アフターサンクリーム及びローション、ハンドクリーム及びローション、フットクリーム及びローション、除毛クリーム及びローション、アフターシェーブクリーム及びローション、タンニングクリーム及びローション等の水中油型の、油中水型の、及び水中油中水型の化粧用エマルジョン、例えば、ヘアスプレー、ヘアジェル、ヘアセッティングローション、ヘアコンディショナー、ヘアシャンプー、永久及び半永久染毛剤等のヘアケア製品、例えばコールドウェーブ及びヘアスムージング組成物、ヘアトニック、ヘアクリーム及びヘアローション等のヘアシェーピング組成物、例えば脇下スプレー、ロールオン、デオドラントスティック、デオドラントクリーム等のデオドラント及び制汗剤、例えばアイシャドー、マニキュア液、メイクアップ用化粧品、口紅、マスカラ等の装飾的化粧品、歯磨き粉、デンタルフロスから選択されるボディケア製品;
−キャンドル、ランプオイル、線香、殺虫剤、防虫剤、噴射剤、錆除去剤、香気付けられたフレッシュニングワイプ、脇下パッド、乳児用おむつ、生理用ナプキン、トイレットペーパー、化粧用ワイプ、ポケットティッシュ、食洗機脱臭剤から選択される衛生用品;
−例えば床クリーナー、窓クリーナー、食器用洗剤、バス及びサニタリークリーナー、スカーリングミルク(scouring milk)、固形及び液体のトイレクリーナー、粉末及び泡のカーペットクリーナー等の香気付けられた酸性、アルカリ性及び中性クリーナー、例えば家具用艶出し剤、床ワックス、靴クリーム等のワックス及び艶出し剤、消毒剤、表面消毒剤及びサニタリークリーナー、ブレーキクリーナー、パイプクリーナー、水垢除去剤、グリル及びオーブンクリーナー、藻及び苔除去剤、カビ除去剤、ファサードクリーナーから選択される固体表面用クリーナー;
−液体洗剤、粉末洗剤、例えば漂白剤、浸漬剤、しみ除去剤等の洗濯前処理剤、柔軟剤、洗濯石鹸、洗濯タブレットから選択される繊維製品用洗剤。
【0148】
香気付けられた物品が以下の1つであるならば好ましい:
−特に全用途のクリーナー、床クリーナー、窓クリーナー、食器用洗剤、バス及びサニタリークリーナー、スカーリングミルク、固形及び液体のトイレクリーナー、粉末及び泡のカーペットクリーナーから選択される酸性、アルカリ性又は中性クリーナー、液体洗剤、粉末洗剤、例えば漂白剤、浸漬剤、しみ除去剤等の洗濯前処理剤、柔軟剤、洗濯石鹸、洗濯タブレット、消毒剤、表面消毒剤、
−液体形態、ゲル状形態若しくは固体担体に適用される形態の、又はエアロゾールスプレーとしてのエアフレッシュナー、
−特に家具用艶出し剤、床ワックス、靴クリームから選択されるワックス又は艶出し剤、又は
−特にシャワー用ゲル及びシャンプー、シェービングソープ、シェービングフォーム、バスオイル、例えばスキンクリーム及びローション、フェイスクリーム及びローション、日焼け止めクリーム及びローション、アフターサンクリーム及びローション、ハンドクリーム及びローション、フットクリーム及びローション、除毛クリーム及びローション、アフターシェーブクリーム及びローション、タンニングクリーム及びローション等の水中油型の、油中水型の、及び水中油中水型の化粧用エマルジョン、例えば、ヘアスプレー、ヘアジェル、ヘアセッティングローション、ヘアコンディショナー、永久及び半永久染毛剤等のヘアケア製品、例えばコールドウェーブ及びヘアスムージング組成物、ヘアトニック、ヘアクリーム及びヘアローション等のヘアシェーピング組成物、例えば脇下スプレー、ロールオン、デオドラントスティック、デオドラントクリーム等のデオドラント及び制汗剤、装飾的化粧品の製品から選択されるボディケア組成物。
【0149】
本発明に従い使用されるアロマケミカル又は本発明による着香味料組成物が好ましく組み合わされ得る成分は、例えば以下である:
保存剤、研磨剤、抗ニキビ剤、皮膚老化に対抗するための薬剤、抗菌剤、抗脂肪沈着剤、ふけ防止剤、抗炎症剤、刺激防止剤、刺激緩和剤、抗微生物剤、抗酸化剤、収斂剤、発汗抑制剤、防腐剤、帯電防止剤、結合剤、緩衝剤、担体材料、キレート剤、細胞賦活剤、洗浄剤、ケア剤、除毛剤、界面活性物質、脱臭剤、制汗剤、皮膚軟化剤、乳化剤、酵素、精油、繊維、膜形成剤、固定剤、泡形成剤、泡安定剤、発泡防止用物質、泡増幅剤、殺菌剤、ゲル化剤、ゲル形成剤、ヘアケア剤、ヘアシェーピング剤、ヘアスムージング剤、水分供与剤、保湿物質、湿潤物質、漂白剤、補強材、しみ除去剤、蛍光増白剤、含浸剤、防汚剤、摩擦低減剤、潤滑剤、保湿クリーム、軟膏、乳白剤、可塑剤、被覆剤、艶出し剤、光沢剤、ポリマー、粉末、タンパク質、加脂剤、皮膚剥離剤、シリコーン、皮膚鎮静剤、スキンクレンジング剤、スキンケア剤、皮膚治癒剤、皮膚美白剤、皮膚保護剤、皮膚軟化剤、冷却剤、皮膚冷却剤、加温剤、皮膚加温剤、安定剤、UV吸収剤、UV除去剤、洗剤、柔軟剤、懸濁化剤、皮膚タンニング剤、増粘剤、ビタミン、オイル、ワックス、脂肪、リン脂質、飽和脂肪酸、モノ又はポリ不飽和脂肪酸、α−ヒドロキシ酸、ポリヒドロキシ脂肪酸、液化剤、染料、色保護剤、顔料、防食剤、芳香物質、香味料、着香剤、ポリオール、界面活性剤、電解質、有機溶媒又はシリコーン誘導体。
【0150】
更なる態様によると、アロマケミカルは、溶媒で希釈されてない又は希釈された液体形態で、又は着香味料組成物の形態で、香気付けられた物品の製造において使用される。この用途に適した溶媒は成分c)として上述された溶媒である。その全体がここに参照される。
【0151】
本発明による、芳香付けられた物品に存在するアロマケミカル及び/又は着香味料組成物は、この関連において、一実施形態では、担体上に吸収され、製品内の着香剤又は着香組成物の優れた分散及び使用上の制御された放出の両方を確実にし得る。このタイプの担体は、軽質硫酸塩(light sulfate)、シリカゲル、ゼオライト、石膏、クレー、クレー粒、気泡コンクリート等の多孔質の無機材料、又は木材及びセルロースに基づく材料等の有機材料であってもよい。
【0152】
本発明に従い使用されるアロマケミカル及び本発明による着香味料組成物は、マイクロカプセル化形態、噴霧乾燥形態、包接錯体形態又は押出製品形態であっても良く、この形態で香気が付される製品又は物品に添加されても良い。特性は、より標的化された香気の放出に関して、適切な材料でのいわゆる「コーティング」によりさらに最適化されてもよく、その目的のために、好ましくは例えばポリビニルアルコール等のワックス様の合成物質が使用される。
【0153】
マイクロカプセル化は、例えばポリウレタン様物質又はソフトゼラチン製のカプセル材料を用いて、いわゆる液滴形成法により行われ得る。噴霧乾燥した香油は、例えば香油を含むエマルジョン又は分散液を噴霧乾燥することにより製造されてもよく、ここで使用され得る担体物質は加工されたデンプン、タンパク質、デキストリン及び植物ガムである。包接錯体は、例えば、着香剤組成物及びシクロデキストリン若しくは尿素誘導体の適切な溶媒、例えば水への分散を誘導することより調製され得る。押出製品は、本発明に従い使用される着香剤及び本発明による着香組成物を適切なワックス様物質で溶融することにより、及び押出後、任意で適切な溶媒、例えばイソプロパノール中で、固化することにより、製造され得る。
【実施例】
【0154】
香りの分析
化合物の香りは、匂い紙上の試料の匂いを感じること(smelling)又は嗅ぐこと(sniffing)により判定した。数字が示されている場合、それは、(1)=非常に弱い〜(6)=非常に強い、の範囲の強度を表示する。
【0155】
実施例1:化合物(D.b)
【化33】
シトロネラール(10.0kg、64.9mol)、水性ホルムアルデヒド(37%、6.0kg、73.8mol)及びイソプロパノール(iPrOH)(1.04L)の溶液に、室温で45分間にわたって、ピロリジン(550mL、6.7mol)を添加した。そして、45分間にわたってプロパン酸(503g、6.7mol)を添加した。完全に添加した後、反応混合物を45℃に4時間加熱し、室温に戻し、水(20.0L)で希釈した。相を分離し、酢酸エチル(20.0L)で水層を抽出した。有機相を合わせて初めは5%NaHCO水溶液(7.5L)で、次に脱塩水(10L)で洗浄した。有機相を分離し、減圧下で溶媒を取り除いた。僅かに黄色のオイルとして生成物を得た(11kg、GC純度98%、収率99%)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ= 9.5 (s, 1 H), 6.3 (s, 1 H), 6.0 (s, 1 H), 5.07 - 5.03 (m, 1 H), 2.71 - 2.64 (m, 1 H), 1.96 - 1.84 (m, 2 H), 1.64 (s, 3 H), 1.54 (s, 3 H), 1.54 - 1.47 (m, 1 H), 1.39 - 1.32 (m, 1 H), 1.04 (d, J = 7.0 Hz, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 17.5, 19.4, 25.6, 25.7, 30.8, 35.5, 124.0, 131.4, 132.9, 155.3, 194.4 ppm.
香り:シトラス。
【0156】
実施例2:化合物(D.c)
【化34】
化合物(D.b)(3000g、18.04mol)、メタノール(832.5g)及びPd/C(35.1g、50%HO)をN雰囲気下でオートクレーブに置いた。トリメチルアミン(277.3g、4.69mol)を添加し、混合物を室温で30分間攪拌した後、それを70℃まで加熱した。そして、オートクレーブを水素で加圧し(8bar)、29時間攪拌し続けた。その間382Lの水素が消費された。冷却後オートクレーブを窒素でパージし、反応混合物を濾過して触媒を取り除いた。そして、混合物をMTBE(2−メトキシ−2−メチルプロパン、メチルtert−ブチルエーテル)(1.5L)で希釈し、水(1.5L)で3回抽出した。有機相をNaSOで乾燥させ、再度濾過し、減圧下で溶媒を取り除いた(60°C、350mbar)。95%の純度で粗生成物が得られ、次の工程で直接使用することができた(黄色のオイル、2926g、92%)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3, 異性体の混合物): δ= 9.67 (d, J = 1.9 Hz, 1 H), 9.65 (d, J = 1.4 Hz, 1 H), 5.12 - 5.06 (m, 2 H), 2.38 - 2.27 (m, 2 H), 2.09 - 1.90 (m, 6 H), 1.69 - 1.68 (br dd, J = 1.1, 4.7 Hz, 6 H), 1.60 (d, J = 4.7 Hz, 6 H), 1.44 - 1.18 (m, 4 H), 1.04 (d, J = 7.0 Hz, 3 H), 1.00 (d, J = 2.9 Hz, 3 H), 0.99 (d, J = 2.8 Hz, 3 H), 0.84 (d, J = 6.9 Hz, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3, 異性体 1): δ= 7.9, 15.2, 17.4, 25.60, 25.64, 32.0, 34.7, 50.4, 123.9, 131.6, 205.35 ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3, 異性体 2): δ= 9.7, 17.2, 17.5, 25.56, 25.59, 33.1, 33.2, 51.4, 124.0, 131.6, 205.44 ppm.
香り:ローズ様(部屋全体に広がる)、シトラス、ワックス様。
【0157】
実施例3:化合物(D.d)
【化35】
AcO(971.1g、9.52mol)、KOAc(93.4g、0.95mol)及びEtN(1203g、11.8mol)を室温で二層ジャケット付きガラス反応器に置いた。化合物(D.c)(97.6%純度、820g、4.76mol)を30分間にわたって添加した。そして、反応混合物を105℃に加熱し、6時間攪拌し続けた。40℃に冷却後、冷却しながら水(1.5L)をゆっくり添加し、混合物をCHCl(1.5L)で希釈した。相を分離し、水層をCHCl(500mL)で再び抽出し、有機相を合わせて飽和NaHCO水溶液(1L)で抽出し、NaSOで乾燥させた。溶媒を取り除き(50°C、350mbar)、4:1のE/Z−混合物として所望の生成物を得た。それは次の工程で直接使用することができた(990g、純度97%、収率96%)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3, 異性体の混合物): δ= 6.96 - 6.94 (m, 1 H), 6.86 - 6.84 (m, 1 H), 5.12 - 5.06 (m, 2 H), 2.13 (s, 3 H), 2.11 (s, 3 H), 1.88 (br q, J = 7.4 Hz, 2 H), 1.67 (br d, J = 1.0 Hz, 6 H), 1.60 (d, J = 1.5 Hz, 3 H), 1.58 (br s, 6 H), 1.53 (d, J = 1.6 Hz, 3 H), 1.44 - 1.27 (m, 8 H), 1.01 (d, J = 6.9 Hz, 3 H), 0.98 (d, J = 6.9 Hz, 3 H) ppm.
E-酢酸エノール: 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 9.6, 17.7, 19.6, 20.8, 25.7, 26.0, 34.7, 36.9, 125.4, 130.1, 131.4, 124.4, 168.2 ppm.
Z-酢酸エノール: 13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 12.7, 17.6, 18.6, 20.8, 25.7, 26.1, 31.5, 34.4, 124.6, 125.5, 129.5, 131.3, 168.2 ppm.
【0158】
実施例4:化合物(D)
【化36】
化合物(D.d)(990.0g、4.6mol)及びトルエン(1800g)を二層ジャケット付きガラス反応器に置き、70℃に加熱した。85%HPO(3400g)を45分間にわたって添加し、100℃で5時間攪拌し続けた。そして、2相の反応混合物を30℃に冷却し、水(2L)で希釈し、相を分離した。有機相を飽和NaHCO水溶液(2.5L)、水(1L)及びブライン(500mL)で洗浄した。そして、それをNaSOで乾燥させ、減圧下で溶媒を取り除いた。粗生成物(753g、純度67%)を分留により精製し、粘着性の固体として得た(280g、純度93%、収率34%)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ= 9.61 (s, 1 H), 2.35 (dqd, J = 13.5, 6.8, 3.6 Hz, 1 H), 1.60 - 1.46 (m, 4 H), 1.18 - 1.10 (m, 2 H), 1.12 (s, 3 H), 0.94 (s, 3 H), 0.83 (s, 3 H), 0.73 (d, J = 6.8 Hz, 3 H).
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 8.2, 17.9, 21.7, 22.8, 27.1, 29.3, 30.6, 36.5, 36.8, 54.2, 209.7 ppm.
香り:ユーカリプトール、カンファー(4)、シトラス(2)、スプルースニードル(2)。
【0159】
実施例5:化合物(A.1)
【化37】
化合物(D)(20g、119mmol)を0℃でメタノール(50mL)に溶解した。NaBH(4.50g、119mmol)を30分にわたって少しずつ添加した。NaBHを完全に添加した後、0℃で1時間攪拌し続けた。そして、反応混合物をトルエン(50mL)で希釈しブライン(30mL)で抽出した。有機相を飽和NaHCO水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で溶媒を蒸発させた(60℃、100mbar)。低融点の固体として生成物を得た(17.1g、粗物質の純度95%、収率80%)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ= 3.65 (d, J = 11.8 Hz, 1 H), 3.43 (d, J = 11.8 Hz, 1 H), 1.93 (dtd, J = 13.4, 6.7, 3.7 Hz, 1 H), 1.57 - 1.38 (m, 4 H), 1.28 - 1.16 (m, 2 H), 1.03 (s, 3 H), 0.88 (s, 3 H), 0.86 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 0.71 (s, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 11.9, 17.1, 22.3, 23.8, 26.8, 31.1, 31.6, 36.1, 38.6, 42.1, 67.2 ppm.
香り:ユーカリプトール(2)、フラワリー(2)、アース様(2)。
【0160】
実施例6:化合物(B.1)
【化38】
化合物(A.1)(7.9g、46.4mmol)をトルエン(100mL)中に溶解し、Zn(OAc)・HO(4mg)を添加した。700℃でのアセトン(0.411mL/min)の熱分解を通してケテンを得た。粗製のケテン含有気流を3時間、激しい攪拌下、90℃で反応混合物中に通した。そして、反応器を窒素でパージし、室温に冷却した。反応混合物を水で洗浄し、相を分離した。有機相の溶媒を減圧下で取り除き、残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製した。透明の液体として生成物を得た(6.5g、66%)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ= 4.02 (d, J = 11.8 Hz, 1 H), 3.89 (d, J = 11.8 Hz, 1 H), 2.05 (s, 3 H), 1.94 (dtd, J = 13.3, 6.3, 2.6 Hz, 1 H), 1.57 - 1.36 (m, 4 H), 1.25 - 1.16 (m, 1 H), 1.12 - 1.06 (m, 1 H), 0.97 (s, 3 H), 0.88 (s, 3 H), 0.80 (d, J = 6.7 Hz, 3 H), 0.78 (s, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 11.8, 16.9, 21.3, 22.2, 23.3, 26.8, 30.9, 32.3, 36.1, 38.3, 41.0, 68.3, 171.3 ppm.
香り:ウッディ(2)、スイートパウダリー(2)、フレッシュ(2)、フリージア(2)。
【0161】
実施例7:化合物(A.3)
【化39】
雰囲気下で化合物(D)(100.0g、0.6mol)を乾燥THF(500mL)中に入れ、当該溶液を0℃に冷却した。0〜5℃の範囲の温度を維持しながら、アリルマグネシウムクロリド(ヘキサン中2mol/L、300mL)をゆっくり添加した。反応混合物を5℃で1時間攪拌した。反応が完了した後、飽和NHCl水溶液(500mL)を添加し、混合物を室温で30分間攪拌した。そして、混合物を濾過し、残留物を酢酸エチルで洗った(2x250mL)。濾液をブライン(100mL)で洗浄し、相を分離し、減圧下で溶媒を取り除いた。125gの化合物(A.3)を得た(GC純度97%、収率98%)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ= 5.90 - 5.79 (m, 1 H), 5.14 (br s, 1 H), 5.13 - 5.09 (m, 1 H), 3.75 (d, J = 11.1 Hz, 1 H), 2.43 - 2.38 (m, 1 H), 2.27 - 2.14 (m, 2 H), 1.59 - 1.42 (m, 4 H), 1.36 - 1.20 (m, 2 H), 1.08 (s, 3 H), 0.91 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 0.86 (s, 3 H), 0.82 (s, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3):δ= 137.4, 117.8, 73.3, 44.6, 40.0, 38.7, 37.6, 31.6, 31.0, 27.3, 22.4, 24.3, 18.9, 12.5 ppm.
香り:ウッディ(3)、シダー(3)、オークモス(3)。
【0162】
実施例8:化合物(C.1)
【化40】
化合物(A.3)(60.0g、285mmol)をCHCl(350mL)に溶解させ、クロロクロム酸ピリジニウム(70g、325mmol)を10℃で添加した。反応混合物を室温で20時間攪拌した。反応が完了した後、混合物を濾過し、残留物をCHClで洗浄した(2x250mL)。濾液を5%NaHCO水溶液(100mL)で抽出し、次にブライン(100mL)で抽出した。相を分離し、減圧下で有機相の溶媒を取り除いた。粗生成物(60g)をヘプタン(100mL)中に入れ、生じた沈殿物を濾過により取り除いた。減圧下で溶媒を取り除き、所望の生成物を85%の収率で得た(GC純度90%)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ= 5.96 (ddt, J = 17.1, 10.2, 6.8 Hz, 1 H), 5.16 - 5.11 (m, 1 H), 5.10 - 5.03 (m, 1 H), 3.24 (d, J = 6.8 Hz, 2 H), 2.49 - 2.42 (m, 1 H), 1.55 - 1.48 (m, 4 H), 1.15 (s, 3 H), 1.12 - 1.07 (m, 2 H), 0.94 (s, 3 H), 0.89 (s, 3 H), 0.68 (d, J = 6.6 Hz, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 213.7, 132.1, 117.6, 57.3, 46.5, 36.9, 36.1, 31.7, 29.9, 27.5, 24.4, 21.6, 18.7, 10.7 ppm.
香り:わら(3)、干し草、アース様(3)、僅かにウッディ(2)
【0163】
実施例9:化合物(A.5)
【化41】
雰囲気下で化合物(D)(15g、90mmol)を乾燥THF(150mL)中に入れ、当該溶液を−25℃に冷却した。温度を−25℃に維持しながら、2時間にわたってブチルリチウム(ヘキサン中1.6mol/L、150mL、240mmol)を添加した。そして反応混合物を5℃で1時間攪拌した。20%NHCl水溶液(50mL)を添加することにより反応を止め、混合物を酢酸エチルで抽出した(2x75mL)。組み合わされた有機相をブライン(50mL)で洗浄し、相を分離し、減圧下で溶媒を取り除いた。溶離液として酢酸エチル:ヘプタン(20:80)を用いシリカゲルクロマトグラフィーにより生成物を精製した。所望の生成物を38%の収率で得た(8g、GC純度97%)。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ= 3.71 (d, J = 10.6 Hz, 1 H), 2.15 - 2.08 (m, 1 H), 1.60 - 1.21 (m, 12 H), 1.08 (s, 3 H), 0.91 (t, J = 7.3 Hz, 3 H), 0.87 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 0.85 (s, 3 H), 0.80 (s, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 75.7, 44.8, 38.8, 37.6, 34.8, 31.6, 31.0, 30.4, 27.3, 24.4, 22.8, 22.5, 18.8, 14.2, 12.7 ppm.
【0164】
実施例10:化合物(A.2)
【化42】
雰囲気下で化合物(D)(6.8g、40mmol)を乾燥THF(50mL)中に入れ、当該溶液を−25℃に冷却した。−25℃で1時間にわたってエチルリチウム(ヘキサン中0.5mol/L、100mL、50mmol)を添加した。そして反応混合物を5℃で2時間攪拌した。20%NHCl水溶液(50mL)を添加することにより反応を止め、混合物を酢酸エチルで抽出した(2x75mL)。有機相を合わせてブライン(50mL)で洗浄し、相を分離し、減圧下で溶媒を取り除いた。溶離液として酢酸エチル:ヘプタン(20:80)を用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより粗生成物を精製した。所望の生成物を42%の収率で得た(3.5g、GC純度97%)。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3, 1つの異性体): δ= 3.61 (dd, J = 11.1, 2.0 Hz, 1 H), 2.16 - 2.09 (m, 1 H), 1.69 - 1.23 (m, 8 H), 1.08 (s, 3 H), 0.98 (t, J = 7.3 Hz, 3 H), 0.87 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 0.85 (s, 3 H), 0.80 (s, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3, 1つの異性体): δ= 77.3, 44.9, 38.7, 37.5, 31.6, 31.0, 27.6, 27.3, 24.4, 22.5, 18.8, 12.5, 12.4 ppm.
香り:アンブラ(1)、ナフタレン。
【0165】
実施例11:化合物(C.3)
【化43】
実施例8と同様に、化合物(A.2)の酸化により得られた。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3,1つの異性体):δ= 2.5 (m, 3 H), 1.69 - 1.23 (m, 6 H), 1.08 (s, 3 H), 0.98 (t, J = 7.3 Hz, 3 H), 0.87 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 0.85 (s, 3 H), 0.80 (t, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3):δ= 216.4, 57.0, 39.1, 36.0, 35.0, 31.8, 29.9, 27.5, 24.5, 21.6, 18.7, 10.7, 8.2 ppm.
香り:アース様(3)、セダーウッド(3)、パウダリー、ドライ。
【0166】
実施例12:化合物(C.2)
【化44】
化合物(C.1)(7g、33mmol)を室温でメタノール(50mL)に溶解させた。トリエチルアミン(12g、117mmol)を添加した。25℃で20時間攪拌し続けた。減圧下で溶媒を留去して粗製化合物(7.0g)を得た。そして、粗製化合物をジクロロメタン(50mL)で希釈し、HCl水溶液(1mol/L、30mL)で抽出後水(50mL)により抽出した。有機相をNaSOで乾燥させ、減圧下(60°C、100mbar)で溶媒を蒸発させた。生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し(溶離液はヘプタン:酢酸エチル、98:2)、収率30%で得た(2g、GC純度95%)。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ= 6.9-6.7 (m, 1 H), 5.5 - 5.4 (d, 1 H), 2.49 - 2.42 (m, 1 H), 1.9-1.8 (d, 3 H), 1.55 - 1.48 (m, 4 H), 1.15 (s, 3 H), 1.12 - 1.07 (m, 2 H), 0.94 (s, 3 H), 0.89 (s, 3 H), 0.68 (d, J = 6.6 Hz, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 203.9, 140.7, 129.4, 55.7, 37.0, 36.1, 31.5, 30.0, 27.3, 24.3, 21.8, 18.4, 18.3, 10.7 ppm.
香り:ドライフルーツ(3)、ダマスコン(3)、ローズ様(3)、ラビッジ(lovage)(2)。
【0167】
実施例13:化合物(C.4)
【化45】
実施例8と同様に、化合物(A.5)の酸化により得られた。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3):δ= 2.47 - 2.36 (m, 3 H), 1.55 - 1.42 (m, 6 H), 1.33 - 1.21 (m, 2 H), 1.12 (s, 3 H), 1.11 - 1.03 (m, 2 H), 0.90 (s, 3 H), 0.89 (t, J = 7.3 Hz, 3 H), 0.86 (s, 3 H), 0.63 (d, J = 6.6 Hz, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 215.9, 56.9, 41.8, 37.0, 36.0, 31.8, 29.9, 27.6, 26.2, 24.5, 22.5, 21.6, 18.7, 14.1, 10.7 ppm.
【0168】
実施例14:化合物(B.2)
【化46】
ジクロロメタン(10mL)中の化合物(A.1)(2.0g、12mmol)及びトリメチルアミン(1.75g、17mmol)の溶液に、塩化プロピオニル(1.3g、13mmol)を5℃でゆっくり添加した。反応混合物を室温で3時間攪拌した。そして、水(10mL)を添加し、相を分離した。有機相を1N HCl(10mL)で洗浄後、水(10mL)で洗浄し、減圧下で溶媒を取り除いた。生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製した(2.0g、75%)
1H-NMR (500 MHz, CDCl3): δ= 4.00 (d, J = 11.8 Hz, 1 H), 3.89 (d, J = 11.8 Hz, 1 H), 2.31 (q, J = 7.8 Hz, 2 H), 1.98 - 1.90 (m, 1 H), 1.56 - 1.35 (m, 4 H), 1.24 - 1.16 (m, 1 H), 1.13 (t, J = 7.6 Hz, 3 H), 1.09 - 1.07 (m, 1 H), 0.96 (s, 3 H), 0.87 (s, 3 H), 0.79 (d, J = 6.7 Hz, 3 H), 0.76 (s, 3 H) ppm.
13C-NMR (125 MHz, CDCl3): δ= 174.5, 68.1, 41.1, 38.3, 36.1, 32.3, 31.0, 28.0, 26.8, 23.4, 22.3, 16.9, 11.9, 9.2 ppm.