特許第6974624号(P6974624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974624熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974624
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/16 20060101AFI20211118BHJP
   C08L 55/02 20060101ALI20211118BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20211118BHJP
   C08L 39/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C08L25/16
   C08L55/02
   C08L71/02
   C08L39/00
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-547073(P2020-547073)
(86)(22)【出願日】2019年11月7日
(65)【公表番号】特表2021-516714(P2021-516714A)
(43)【公表日】2021年7月8日
(86)【国際出願番号】KR2019015089
(87)【国際公開番号】WO2020149504
(87)【国際公開日】20200723
【審査請求日】2020年9月8日
(31)【優先権主張番号】10-2019-0006154
(32)【優先日】2019年1月17日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】スンフン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】スク・ジョ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジノ・ナム
(72)【発明者】
【氏名】ソン・リョン・キム
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2018−507921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/00−25/18
C08L 55/02
C08L 71/02
C08L 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20〜40重量%及びα−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体60〜80重量%を含むベース樹脂100重量部と;アルコキシ化ポリエチレンイミン0.4〜3重量部と;を含み、
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、アルコキシ化率が60重量%以上であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、エトキシ化ポリエチレンイミン、プロポキシ化ポリエチレンイミン、エトキシ化−ブトキシ化ポリエチレンイミン、及びエトキシ化−プロポキシ化−ブトキシ化ポリエチレンイミンからなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、ブルックフィールド粘度計により40℃で測定した動粘性係数(Dynamic viscosity)が700〜1500mPa・sであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエンゴム40〜80重量%、芳香族ビニル化合物10〜40重量%及びビニルシアン化合物1〜20重量%を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記α−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体は、α−メチルスチレン系化合物50〜80重量%及びビニルシアン化合物20〜50重量%を含んで重合された共重合体であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記α−メチルスチレン系化合物は、α−メチルスチレン及びその誘導体からなる群から選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂組成物は、1.7%のひずみ(strain)を有する曲率ジグ(jig)に、試験片サイズ200×12.7×3.2mmを固定し、シンナー(ナフサ45重量%、キシレン25重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル20重量%及び酢酸n−ブチル10重量%が混合されたシンナー)200μlを塗布した後、試験片にクラックが発生する時間を測定する耐化学性評価において、耐化学性が300秒以上であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物は、試験片サイズ10cm×10cmをイソプロピルアルコールで脱脂した後、ブラック塗料(メチルメタクリレート、ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、熱硬化性アクリル樹脂、カーボンブラック及び溶媒を含む塗料)を50ml噴射し、5分後、クリア塗料(ブチル 2−メチルプロプ−2−エノエート、2−ヒドロキシエチル 2−メチルプロプ−2−エノエート、メチル 2−メチルプロプ−2−エノエート、スチレン、熱硬化性アクリル樹脂及び有機溶媒を含む塗料)を50ml噴射した後、85℃のオーブンで30分間乾燥させた後、塗装面のピンホール(pinhole)の発生個数を観察する塗装性評価において、ピンホールが発生しないことを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256に準拠して試験片サイズ1/4"で測定した衝撃強度が20kgf・cm/cm以上であることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20〜40重量%及びα−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体60〜80重量%を含むベース樹脂100重量部と;アルコキシ化ポリエチレンイミン0.4〜3重量部と;を230〜270℃及び200〜400rpmの条件下で溶融混練した後、押出させるステップを含み、
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、アルコキシ化率が60重量%以上であることを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物で製造されることを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2019年1月17日付の韓国特許出願第10−2019−0006154号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関し、より詳細には、流動性、機械的物性及び熱変形温度の低下なしに、シンナーなどの化学溶剤に対する耐化学性が大きく改善されて塗装性に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂に代表されるビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体(以下、「ABS樹脂」という)は、人体有害性が少ないながらも、外部環境に対する耐衝撃性、耐薬品性、耐候性などの性質が比較的優れ、射出成形、押出成形などの成形性及び2次加工性に優れるので、様々な技術分野で広範囲に活用されている。
【0004】
ABS樹脂は、一般的に後加工工程を経る場合が多く、代表的な後加工工程としては塗装工程がある。前記塗装工程では、ABS樹脂上に塗料を適切に塗るために、シンナー(thinner)のような化学溶剤が使用される。ABS樹脂は、化学溶剤の成分によってゴム成分の表面屈曲がひどくなり、塗装後、塗料と成形された樹脂との間の接着表面が不均一になってしまい、大小のクラック(Crack)が発生し、塗装不良であるピンホール(Pinhole)の発生につながる。
【0005】
このような問題を解決するために、化学溶剤の成分を希釈する方法、及びゴム成分の損傷を防止するために、アクリロニトリル(AN)の含量が高いスチレン−アクリロニトリル(SAN)樹脂を使用してゴム成分の損傷を防止する方法が提案されたが、希釈された溶剤を成形された樹脂に長期間暴露しなければならないという不便さがあり、アクリロニトリル(AN)の含量が高いスチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN樹脂)を使用する場合、耐化学性及び光沢特性が低下するという問題がある。
【0006】
その他にも、ABS樹脂の原料単量体であるブタジエンゴムの含量を増大、ゴムの大きさの増大、分子量の増大などの方法が多様に研究されているが、この場合にも、流動性の低下による成形品の残留応力の増加により、塗装不良(ピンホール)を改善するのに限界がある。
【0007】
したがって、化学溶剤に対する耐化学性及び塗装性を向上させながらも、流動性などの物性に優れたABS樹脂組成物の開発が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平7−47679号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記の熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、上記の熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20〜40重量%及びα−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体60〜80重量%を含むベース樹脂100重量部と;アルコキシ化ポリエチレンイミン0.4〜3重量部と;を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0014】
また、本発明は、ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20〜40重量%及びα−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体60〜80重量%を含むベース樹脂100重量部と;アルコキシ化ポリエチレンイミン0.4〜3重量部と;を230〜270℃及び200〜400rpmの条件下で溶融混練した後、押出させるステップを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱可塑性樹脂にアルコキシ化ポリエチレンイミンを含ませる場合、流動性、耐熱性及び機械的強度の低下なしに耐化学性が向上して、塗装性に優れた熱可塑性樹脂組成物、その製造方法及びそれを含む成形品を提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】アルコキシ化ポリエチレンイミンを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物を詳細に説明する。
【0019】
本発明者らは、ABS樹脂を含む熱可塑性樹脂にアルコキシ化ポリエチレンイミンを含ませる場合、流動性、耐熱性及び機械的強度の低下なしに、耐化学性及び塗装性が大きく改善される効果を確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0020】
本発明による熱可塑性樹脂組成物を詳細に説明すると、次の通りである。
【0021】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20〜40重量%及びα−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体60〜80重量%を含むベース樹脂100重量部と;アルコキシ化ポリエチレンイミン0.4〜3重量部と;を含むことを特徴とし、この場合に、流動性、耐熱性及び機械的強度の低下なしに、耐化学性及び塗装性に優れるという効果がある。
【0022】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を詳細に説明すると、次の通りである。
【0023】
(a)ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体
前記(a)ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、一例として、ベース樹脂内に20〜40重量%、または20〜35重量%、好ましくは25〜32重量%、より好ましくは27〜30重量%含まれてもよく、この範囲内で、機械的強度、流動性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0024】
前記(a)ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、一例として、共役ジエンゴム40〜80重量%、芳香族ビニル化合物10〜40重量%及びビニルシアン化合物1〜20重量%を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体であってもよく、この場合に、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0025】
好ましくは、前記(a)ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエンゴム45〜70重量%、芳香族ビニル化合物20〜40重量%及びビニルシアン化合物5〜20重量%を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体であってもよく、この場合に、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0026】
より好ましくは、前記(a)ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエンゴム50〜65重量%、芳香族ビニル化合物20〜35重量%及びビニルシアン化合物5〜15重量%を含んでグラフト重合されたグラフト共重合体であってもよく、この場合に、耐衝撃性に優れるという効果がある。
【0027】
前記(a)ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、一例として、共役ジエンゴムの平均粒径が0.05〜0.2μmであるビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体10〜40重量%または20〜30重量%;及び共役ジエンゴムの平均粒径が0.2μm超〜0.5μm以下であるビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体60〜90重量%または70〜80重量%;を含むことができ、この場合に、耐熱性に優れるという効果がある。
【0028】
好ましくは、前記(a)ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、共役ジエンゴムの平均粒径が0.1〜0.15μmであるビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体10〜40重量%または20〜30重量%;及び共役ジエンゴムの平均粒径が0.3〜0.4μmであるビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体60〜90重量%または70〜80重量%;を含むことができ、この場合に、耐熱性に優れるという効果がある。
【0029】
本発明において、共役ジエンゴムの平均粒径は、ダイナミックレーザー光散乱法で米国Nicomp社のNicomp 370HPL機器を用いてガウスモードにてインテンシティ(intensity)値で測定することができる。
【0030】
前記共役ジエン化合物は、一例として、1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、クロロプレン及びピペリレンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0031】
前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びビニルトルエンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0032】
前記ビニルシアン化合物は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、またはこれらの混合物であってもよい。
【0033】
前記(a)ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体は、一例として、乳化重合、懸濁重合、塊状重合などを含む公知の重合方法によって製造可能であり、特に制限されない。
【0034】
前記(a)ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体を乳化グラフト重合する方法は、一例として、前記グラフト共重合体に含まれる共役ジエンゴム、芳香族ビニル化合物及びビニルシアン化合物の合計100重量部を基準として、共役ジエンゴム40〜80重量%、乳化剤0.1〜5重量部、分子量調節剤0.1〜3重量部及び重合開始剤0.05〜1重量部からなる混合溶液に、ビニルシアン化合物1〜20重量%及び芳香族ビニル化合物10〜40重量%を含む単量体混合物を連続又は一括投入して行うことができる。
【0035】
前記乳化剤は、一例として、アリルアリールスルホネート、アルカリメチルアルキルスルホネート、スルホン化アルキルエステル、脂肪酸石鹸及びロジン酸アルカリ塩からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合に、重合反応の安定性に優れるという効果がある。
【0036】
前記分子量調節剤は、一例として、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン及び四塩化炭素からなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくはt−ドデシルメルカプタンである。
【0037】
前記重合開始剤は、一例として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムからなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合に、効率的に乳化重合が行われ得る。
【0038】
前記グラフト乳化重合により収得されたラテックスは、一例として、硫酸、MgSO、CaClまたはAl(SOなどの凝集剤で凝集した後、熟成、脱水及び乾燥して粉末状態で得ることができる。
【0039】
α−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体
前記α−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体は、ベース樹脂内に、一例として、60〜80重量%、または65〜80重量%、好ましくは68〜75重量%、より好ましくは70〜73重量%含まれてもよく、この場合に、耐熱性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0040】
前記α−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、重量平均分子量が70,000〜150,000g/mol、好ましくは80,000〜140,000g/mol、より好ましくは90,000〜130,000g/molであってもよく、この範囲内で、耐熱性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0041】
本発明において、重量平均分子量は、カラム充填物質として多孔性シリカで充填されたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を通じて、温度40℃で溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を使用して、標準PS(ポリスチレン標準;Standard polystyrene)試料に対する相対値を測定することができる。
【0042】
前記α−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、α−メチルスチレン系化合物60〜80重量%及びビニルシアン化合物20〜40重量%を含んで重合された共重合体;好ましくは、α−メチルスチレン系化合物65〜75重量%及びビニルシアン化合物25〜35重量%を含んで重合された共重合体;であってもよく、この場合に、耐熱性に優れるという効果がある。
【0043】
前記α−メチルスチレン系化合物は、一例として、α−メチルスチレン及びその誘導体からなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合に、耐熱性に優れるという効果がある。
【0044】
前記α−メチルスチレンの誘導体は、一例として、その水素のうちの1又は2以上が、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン基などのような置換基で置換された化合物であってもよく、好ましくは、その芳香族環(aromatic ring)内の水素のうちの1又は2以上が、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン基などのような置換基で置換された化合物であってもよい。
【0045】
前記ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、またはこれらの混合物であってもよい。
【0046】
前記α−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、下記化学式1のようなα−メチルスチレンとアクリロニトリルの共重合体であってもよい。
【0047】
【化1】
【0048】
前記α−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体は、一例として、α−メチルスチレン系化合物60〜80重量%及びビニルシアン単量体20〜40重量%を含む単量体混合物100重量部に、重合開始剤0.01〜0.5重量部、好ましくは0.01〜0.3重量部を含んで塊状重合して製造することができる。
【0049】
前記重合開始剤は、一例として、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシイソブチレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキサン)プロパン、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシラウレート、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ 2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド及びジ−t−アミルペルオキシドからなる群から選択された1種以上であってもよく、好ましくは、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンであってもよい。
【0050】
アルコキシ化ポリエチレンイミン
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、ベース樹脂100重量部に対して、0.4〜3重量部、好ましくは0.5〜2.7重量部、より好ましくは0.5〜2.5重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部含まれてもよく、この場合に、流動性、耐熱性及び機械的強度の低下なしに、耐化学性及び塗装性に優れるという効果がある。
【0051】
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、一例として、アミン基及びエチレン基を含む繰り返し単位を有する重合体部分を含むことができる。前記重合体部分は、一例として、アルコキシ化ポリエチレンイミンのポリエチレンイミン骨格(backbone)としての役割を果たすことができる。前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、一例として、アミン基の1つ以上の窒素原子が1つ以上のアルコキシ基に改質されてアルコキシ化ポリエチレンイミンを形成することができる。
【0052】
前記ポリエチレンイミン骨格のアミン基は、一例として、下記化学式2の一次アミン基、化学式3の二次アミン基、及び化学式4の三次アミン基からなる群から選択された1種以上であってもよいが、これに制限されない。
【0053】
前記ポリエチレンイミン骨格は、線状、分岐状、デンドリマー状、または櫛−類似構造を有することができる。
【0054】
【化2】
【0055】
【化3】
【0056】
【化4】
【0057】
前記ポリエチレンイミン骨格の構造は、一例として、アミン基の水素原子のうちの1つ以上が、1つ以上のアルコキシ基で代替されてもよい。
【0058】
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンのアルコキシ基は、一例として、エトキシ基、プロポキシ基、またはブトキシ基であってもよい。前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、一例として、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0059】
本発明において、基(moiety)は、分子の一部分を意味する。
【0060】
具体的に前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、一例として、エトキシ化ポリエチレンイミン、プロポキシ化ポリエチレンイミン、エトキシ化−ブトキシ化ポリエチレンイミン、及びエトキシ化−プロポキシ化−ブトキシ化ポリエチレンイミンからなる群から選択された1種以上であってもよく、この場合に、流動性、耐熱性及び機械的強度の低下なしに、耐化学性及び塗装性に優れるという効果がある。
【0061】
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、一例として、アルコキシ化率が60重量%以上、好ましくは60〜90重量%、より好ましくは60〜80重量%であってもよく、この範囲内で、流動性、耐熱性及び機械的強度の低下なしに、耐化学性及び塗装性に優れるという効果がある。
【0062】
本発明において、アルコキシ化率は、核磁気共鳴スペクトル分析法(NMR法)で測定することができる。
【0063】
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、ブルックフィールド粘度計により40℃で測定した動粘性係数(Dynamic viscosity)が、700〜1500mPa・s、好ましくは800〜1400mPa・s、より好ましくは1000〜1200mPa・sであってもよく、この範囲内で、流動性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0064】
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、好ましくは、多数の窒素原子を有するエトキシ化ポリエチレンイミンであってもよく、前記ポリエチレンイミン骨格のそれぞれの窒素原子に結合されたエトキシ基の個数は、一例として、1〜40、5〜35、10〜30、または15〜25、好ましくは17〜23、より好ましくは18〜22個であってもよい。
【0065】
前記分岐状エトキシ化ポリエチレンイミンは、一例として、下記化学式5で表される化合物であってもよく、この場合に、流動性が維持されながら耐化学性及び塗装性に優れるという効果がある。
【0066】
【化5】
【0067】
前記アルコキシ化ポリエチレンイミンは、一例として、エチレンイミンまたはアジリジンの酸−触媒化開環反応から形成されてもよい。
【0068】
下記図1を参照すると、親水性基(EO)と疎水性基(AO)がアミノ基を介して連結されているアルコキシ化ポリエチレンイミンを概略的に示したもので、アルコキシ化ポリエチレンイミンの親水性基と疎水性基が樹脂の表面を改質して耐化学性を改善させる効果がある。
【0069】
前記熱可塑性樹脂組成物は、下記の方法により測定した耐化学性が、一例として、300秒以上、好ましくは300秒〜800秒、より好ましくは350秒〜700秒であってもよく、この範囲内で、流動性が維持されながらも塗装性が向上して、ピンホールが発生しないという効果がある。
【0070】
本発明において、耐化学性は、1.7%のひずみ(strain)を有する曲率ジグ(jig)に、試験片サイズ200×12.7×3.2mmを固定し、シンナー200μlを塗布した後、試験片にクラックが発生する時間を測定する。
【0071】
前記シンナーは、一例として、ナフサ45重量%、キシレン25重量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル20重量%、及び酢酸n−ブチル10重量%の混合物であってもよい。
【0072】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、下記の塗装性評価方法により測定した塗装面のピンホールが発生しないものであって、この場合に、化学溶剤に対する耐化学性が向上して塗装製品に適用することができる。
【0073】
本発明において、塗装性評価方法は、試験片サイズ10cm×10cmをイソプロピルアルコールで脱脂した後、ブラック塗料を50ml噴射し、5分後、クリア塗料を50ml噴射した後、85℃のオーブンで30分間乾燥させた後、塗装面のピンホール(pinhole)の個数を観察する。
【0074】
前記ブラック塗料は、一例として、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、熱硬化性アクリル樹脂、カーボンブラック、溶媒などを含む塗料であってもよい。
【0075】
前記クリア塗料は、一例として、ブチル 2−メチルプロプ−2−エノエート、2−ヒドロキシエチル 2−メチルプロプ−2−エノエート、メチル 2−メチルプロプ−2−エノエート、スチレン、熱硬化性アクリル樹脂、有機溶媒などを含む塗料であってもよい。
【0076】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D256に準拠して試験片の厚さ1/4"で測定した衝撃強度が、一例として、20kgf・cm/cm以上、好ましくは20.5〜30kgf・cm/cm、より好ましくは21.5〜26.8kgf・cm/cmであってもよく、この範囲内で、流動性、耐熱性及び物性バランスに優れるという効果がある。
【0077】
前記熱可塑性樹脂組成物は、一例として、滑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、顔料、染料及び無機物添加剤からなる群から選択された1種以上を、ベース樹脂100重量部に対して1〜5重量部、好ましくは1.5〜4重量部、より好ましくは2〜3重量部含むことができ、この場合に、耐化学性及び塗装性に優れながら物性バランスに優れるという効果がある。
【0078】
前記滑剤は、一例として、ワックス、シリコーンオイル及びステアルアミドからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0079】
前記シリコーンオイルは、一例として、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、エステル変性シリコーンオイル、ヒドロキシシリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、ビニルシリコーンオイル及びシリコンアクリレートからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0080】
前記熱安定剤は、一例として、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(tris(nonylphenyl)phosphite)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(tris(2,4−di−t−butyl phenyl)phosphite;TBPP)、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェニル−2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト(2,4,6−tri−tert−butylphenyl−2−butyl−2−ethyl−1,3−propanediol phosphite)、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト(diisodecyl pentaerythritol diphosphite)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(distearyl pentaerythritol diphosphite)、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(bis(2,4−di−t−butylphenyl)pentaerythritol diphosphite;PEP24)、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(bis(2,4−di−cumylphenyl)pentaerythritol diphosphite)、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスホネート(tetrakis(2,4−di−tert−butylphenyl)[1,1−biphenyl]−4,4’−diyl bisphosphonate)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0081】
前記酸化防止剤は、一例として、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、またはこれらの混合物であってもよい。
【0082】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体20〜40重量%及びα−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体60〜80重量%を含むベース樹脂100重量部と;アルコキシ化ポリエチレンイミン0.4〜3重量部と;を230〜270℃及び200〜400rpmの条件下で溶融混練した後、押出させるステップを含むことができ、この場合に、流動性、耐熱性及び機械的強度の低下なしに、耐化学性及び塗装性に優れるという効果がある。
【0083】
前記溶融混練及び押出させるステップは、一例として、230〜245℃及び200〜370rpm、好ましくは、230〜240℃及び250〜350rpmで行うことができ、この場合に、耐化学性に優れながら機械的物性に優れるという効果がある。
【0084】
前記溶融混練時に、一例として、滑剤、難燃剤、熱安定剤、滴下防止剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、顔料、染料及び無機物添加剤からなる群から選択された1種以上を、ベース樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜4重量部、より好ましくは0.5〜3重量部含むことができ、この場合に、耐化学性が付与されながら物性バランスに優れるという効果がある。
【0085】
前記溶融混練及び押出ステップを通じた押出物は、一例として、ペレット形状を有する熱可塑性樹脂組成物であってもよい。
【0086】
前記ペレット形状の押出物は、一例として、射出成形するステップを含んで射出成形品として製造され得、前記射出成形は、一例として、210〜250℃、好ましくは215〜240℃、より好ましくは220〜230℃;及び射出速度7〜13mm/sec、より好ましくは75〜85mm/sec;の条件で行うことができ、この範囲内で、流動性の低下なしに、耐化学性及び塗装性に優れるという効果がある。
【0087】
前記熱可塑性樹脂組成物に含まれたビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体、α−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体、及びアルコキシ化ポリエチレンイミンなどは、上述した内容に従うので、その記載を省略する。
【0088】
本発明の成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とし、この場合に、流動性、耐熱性及び機械的強度の低下なしに、耐化学性及び塗装性に優れるという効果がある。
【0089】
前記成形品は、一例として、自動車用射出成形品であってもよく、具体的には、ラジエータグリル、スポイラー、トランクガーニッシュ及びスイッチパネルであってもよい。
【0090】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例】
【0091】
下記の実施例及び比較例で使用した成分は、次の通りである。
【0092】
*ABS樹脂(ビニルシアン化合物−共役ジエン化合物−芳香族ビニル化合物グラフト共重合体):LG化学社のDP270(共役ジエンゴム60重量%、スチレン30重量%及びアクリロニトリル10重量%のグラフト重合体)
*AMS耐熱樹脂(α−メチルスチレン系化合物−ビニルシアン化合物共重合体):α−メチルスチレン69重量%とアクリロニトリル31重量%の共重合体であるLG化学社の100UH
*APEI(アルコキシ化ポリエチレンイミン):BASF社のPN80(アルコキシ化率:60重量%以上、ブルックフィールド粘度計で測定した動粘性係数(Dynamic viscosity;50℃):1000〜1200mPa・s)
*PEI(ポリエチレンイミン):アルコキシ化されていないポリエチレンイミンであって、BASF社のLupasol G20(重量平均分子量1300g/mol、ブルックフィールド粘度計で測定した動粘性係数(Dynamic viscosity;50℃)400mPa・s)
【0093】
実施例1
ABS樹脂27重量%及びAMS耐熱樹脂73重量%を含むベース樹脂100重量部に、アルコキシ化ポリエチレンイミン0.5重量部を、二軸押出機を用いて250℃及び300rpm下で溶融混練及び押出し、前記押出物をペレット形状に製造した。前記ペレット形状の押出物を80℃で4時間乾燥させた後、射出機にて射出温度240℃、金型温度60℃及び射出速度10mm/secの条件下で射出成形して、各種物性を測定するための試験片を製造した。
【0094】
実施例2〜5及び比較例1〜8
実施例1において、ABS樹脂及びAMS耐熱樹脂を含むベース樹脂に、アルコキシ化ポリエチレンイミン又はポリエチレンイミンを、下記表1及び表2の組成比で混合した以外は、前記実施例1と同様に行った。
【0095】
[試験例]
前記実施例1〜5及び比較例1〜8で製造された試験片の特性を下記の方法により測定し、その結果を、下記の表1及び表2に示した。
【0096】
測定方法
*アイゾット衝撃強度(kgf・cm/cm):試験片の厚さ1/4"を用いて、ASTM D256に準拠して測定した。
*流動性(g/10min):ASTM D256に準拠して、220℃及び10kgの条件下で測定した。
*HDT(熱変形温度;℃):試験片の厚さ1/4"を用いて、ASTM D648に準拠して18.6kgf/cmの荷重条件下で測定した。
*耐化学性:1.7%のひずみ(strain)を有する曲率ジグ(jig)に、試験片サイズ200×12.7×3.2mmを固定し、シンナー(ノルビーケミカル、T803)200μlを塗布した後、試験片にクラックが発生する時間を測定した。
*塗装性:試験片サイズ10cm×10cmをイソプロピルアルコールで脱脂した後、ブラック塗料(KCC社のUT578(A)−EB(PC))を50ml噴射し、5分後、クリア塗料(KCC社、UT5015−A−CLEAR)を50ml噴射した後、85℃のオーブンで30分間乾燥させた後、塗装面のピンホール(pinhole)の個数を観察して、下記の基準で評価して記載した。
○:ピンホールの発生がない
△:角部位に1〜5個のピンホール発生
×:角部位に6個以上のピンホール発生
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
前記表1及び表2に示したように、本発明による実施例1〜5は、比較例1〜8と比較して、衝撃強度、流動性及び熱変形温度は同等以上に維持されながら、耐化学性及び塗装性に優れる効果があった。アルコキシ化ポリエチレンイミンを含まない比較例6、及びアルコキシ化されていないポリエチレンイミンを含む比較例1及び2は、耐化学性が劣悪であり、塗装性が不良であった。
【0100】
また、アルコキシ化ポリエチレンイミンを少量含む比較例3は、耐化学性及び塗装性が低下し、アルコキシ化ポリエチレンイミンを過量含む比較例4及び5は、衝撃強度が急激に低下した。
【0101】
また、ベース樹脂内にABS樹脂が過量含まれた比較例7は、流動性、熱変形温度及び塗装性が劣悪となり、ABS樹脂が少量含まれた比較例8は、衝撃強度、耐化学性及び塗装性が劣悪となった。
図1