(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る組電池の平面を示す図である。
図1に示す組電池1は、正三角形の扁平電池を3つ厚み方向に積層し、電気的に直列に接続したものである。
【0016】
本実施形態に係る組電池1は、全ての扁平電池を積層した場合に接合の対象となる正電極端子及び負電極端子が組電池1の各辺から突出しており、それぞれの辺から突出している正電極端子及び負電極端子を接合することによって全ての扁平電池が電気的に直列に接続される構造を有している。
【0017】
具体的には、
図1に示すように、扁平電池はその平面形状は例えば正三角形となっており、正電極端子及び負電極端子は、120°(360°/N)回転した位置に配置されており、正三角形の扁平電池の一辺から矩形の電極端子が突出した形状となっている。
【0018】
組電池1を平面視した
図1においては、積層される3つの扁平電池の2つ目の正電極端子22a、3つ目の正電極端子23a、3つ目の負極集電体63と一体に形成される負電極端子63a、セパレータ43、及び一方の外装フィルム11を確認することができる。1つ目の正電極端子21aは、3つ目の負電極端子63aの下に配置されるため、直接目視することはできない。なお、
図1は、最上面に配置される外装フィルム11を不透明のフィルムで構成した場合の図である。よって、積層される負電極端子63a及びセパレータ43は、直接目視することはできない。
【0019】
負極集電体63は、電気を集める電気導電体としての機能と支持体としての機能を果たすもので、この例では正三角形の一辺が該一辺の長さより短い幅で外部に延伸されて負電極端子63aを形成している。
【0020】
セパレータ43は、3つ目の扁平電池の正極と負極の間を隔離し、電解液を保持して電極間のイオン伝導性を確保する部材である。1つ目と2つ目の扁平電池の間に配置されるセパレータ形状は、セパレータ43及び正電極端子21aと同形状である。よって、
図1においては最上面にあるセパレータ43のみが確認できる。
【0021】
なお、各扁平電池の間を隔離する隔離フィルムは、外装フィルム11及び正電極端子21aの一部と同じ形状であり、
図1において確認することはできない。詳しくは後述する。
【0022】
本実施形態では、積層する扁平電池は正三角形であり、扁平電池を構成する正極集電体、正極、セパレータ、負極、負極集電体、外装フィルム、及び隔離フィルムも正三角形となる。
【0023】
以上述べたように本実施形態に係る組電池は、N角形(Nは3以上の整数)の複数の扁平電池を積層した組電池1であって、正電極端子と負電極端子が360°/Nの角度を変えて延出されるN角形の複数の扁平電池を、電気的に直列に接続する。
【0024】
これにより例えば正三角形という幾何学的な対称性により、各扁平電池で使用する電極端子と一体となった集電体の形状は、表面及び裏面で異なる処理が施された部材であっても、全て同一形状でよく、部材を加工する打ち抜き工程が容易となる。
【0025】
また、扁平電池を積層する際は、各扁平電池の正電極端子及び負電極端子が120°(360°/N)ずつ回転した位置に配置されるため、1つ目の扁平電池の正電極端子を基点とし、2つ目以降の扁平電池の正電極端子を120°ずつ回転させて積層することで、全ての扁平電池を直列接続が可能な配置とすることができる。
【0026】
また、基点とした1つ目の扁平電池の正電極端子と、積層した3つ目の扁平電池の負電極端子が、組電池1の同一の辺から突出した構造となるため、外部回路と接続するための正電極端子21aと負電極端子63aの位置が近く、配線をコンパクトに収めることができる。
【0027】
正電極端子21aと負電極端子63a以外の電極端子は、熱シーラー、溶接等で接合されることで全ての扁平電池は直列に接続される。このように、本実施形態に係る組電池1は、積層した全ての扁平電池の電気的接合を、正三角形の各辺から突出する電極端子をつなげて組電池化する。よって、作業性が簡単な上に、各扁平電池を同一形状で形成するため、部材の作製及び調達が容易である。
【0028】
更に、各扁平電池の電極端子は、組電池1の異なる辺から突出しているため、各々の扁平電池の電圧を監視することが容易であり、メンテナンス性にも優れる。
【0029】
(製造方法)
図2は、組電池1を構成する複数層のそれぞれの層の平面形状を模式的に示す図である。
図2を参照して組電池1の製造方法について説明する。
【0030】
組電池1は、
図2の下から1つ目の扁平電池A、2つ目の扁平電池B、及び3つ目の扁平電池Cが直列に接続されて構成される。扁平電池A,B,Cが積層された組電池1は、厚み方向の上下から外装フィルム10,11で封止される。この例の外装フィルム10,11の形状は、正極31及び負極51等の平面形状よりも大きい正三角形である。
【0031】
扁平電池Aは、正極集電体21、正極31、セパレータ41、負極51、及び負極集電体61が積層されて構成される。正三角形の正極集電体21の一辺が、該一辺の長さより短い幅で外側に延伸され、矩形の正電極端子21aが正極集電体21と一体となって形成されている。また、正三角形の負極集電体61の一辺が、該一辺の長さより短い幅で外側に延伸され、矩形の負電極端子61aが負極集電体61と一体となって形成されている。負電極端子61aは、正電極端子21aを基準に120°回転している。
【0032】
扁平電池BとCは、扁平電池Aと同様に正極集電体22,23、正極32,33、セパレータ42,43、負極52,53、及び負極集電体62,63が積層されて構成される。扁平電池BとCの正電極端子22a,23a、及び負電極端子62a,63aについても扁平電池Aと同様に形成される。扁平電池Cの負電極端子63aは、正電極端子21aの平面位置と同じ位置に配置される。負電極端子63aと正電極端子21aは、厚み方向で離間している。
【0033】
扁平電池Aと扁平電池Bの間には、隔離フィルム71が配置される。また、扁平電池Bと扁平電池Cの間には、隔離フィルム72が配置される。隔離フィルム71,72の平面形状は、セパレータ41,42,43の平面形状以上の大きさが必要である。何故ならば、隔離フィルム71,71の大きさがセパレータ41,42,43より小さいと、扁平電池A〜Cの間で、電解液が漏れることによる液絡が生じるためである。
【0034】
隔離フィルム71,72の平面形状は、セパレータ41,42,43を覆う形状であればどのような形状であっても構わない。この例では、隔離フィルム71,72の形状は外装フィルム10,11と同じ正三角形で構成している。
【0035】
なお、隔離フィルム71は、正電極端子21aに対応する一辺の幅が該正電極端子21aの幅よりも大きな幅で外側に延伸されて矩形の絶縁部71aが隔離フィルム71と一体となって形成されている。
【0036】
この絶縁部71aは、正電極端子21aの平面位置と同じ位置に配置される負電極端子63aとの電気的な短絡を防止するように作用する。これにより、正電極端子21aと負電極端子63aを、クリップ、ボルトナット、及びワッシャ等で挟み込むように配線を圧着接続することが可能であり、外部回路との接続をより容易にする効果が得られる。
【0037】
次に、各層の材料について説明する。
図2に示すように本実施形態の組電池1は、正極集電体21,22,23、正極31,32,33、セパレータ41,42,43、負極51,52,53、負極集電体61,62,63、隔離フィルム71,72、及び外装フィルム10,11を備える。
【0038】
例えば、正極集電体21,22,23にカーボンクロス、正極31,32,33にカーボン多孔体、セパレータ41,42,43に植物由来微多孔膜、負極51,52,53にマグネシウム、負極集電体61,62,63にカーボンクロス、隔離フィルム71,72に生分解フィルム、外装フィルム10,11に生分解フィルムを用いた。
【0039】
この例の組電池1は、レアメタル及び有害物質を使用しない低環境負荷のマグネシウム空気電池を構成する。なお、マグネシウム空気電池に限らず低環境負荷電池であれば、空気電池、燃料電池、バイオ燃料電池、及びイオン電池等であってもよい。
【0040】
更に、低環境負荷電池以外の各種電池にも、本実施形態の構成を適用することが可能である。また、本実施形態では、セパレータ41,42,43が保持する電解液として塩化ナトリウム水溶液を使用しているが、電池駆動が可能な電解液なら他の電解液の使用が可能である。
【0041】
また、固体電解質を用いても良い。固体電解質を用いた場合は、液絡の問題が生じないため、隔離フィルム71,72は不要である。また、正極集電体22又は負極集電体61のどちらか一方、また、正極集電体23又は負極集電体62のどちらか一方が有れば良い。この場合、正極集電体21と負極集電体63は必要である。
【0042】
更に、電解液を使用する場合は、電解液は外部に保有してもよく、組電池1の先端部をハサミやカッター等で切断し、電解液に含浸させることで発電を開始させても良い。そのようにすることで、電解液の揮発による液枯れ、正極31,32,33及び負極51,52,53の腐食、自己放電といった問題の発生を抑制することができる。
【0043】
更に、電解液を含浸させる手法ではなく、セパレータ41,42,43又は、扁平電池A,B,C内に電解質を事前に含ませることで、水を含浸させるだけで電池として作用させることが可能である。
【0044】
(組み立て)
図3は、組電池1の組み立て方法を模式的に示す図である。
図3を参照して組電池1の組み立て方法について説明する。
【0045】
図3に示すように、最下段に正極集電体21を、正電極端子21aを6時の方向になるように配置した場合、その上に、正極31、セパレータ41、負極51の順に配置し、負極集電体61の負電極端子61aを反時計回りに120°回転させた方向(2時の方向)になるように配置する。
【0046】
次に、扁平電池Aの上に、2つ目の扁平電池Bを積層させるが、扁平電池Aと扁平電池Bの間には電気的な短絡及び電解液の液絡を防止するための隔離フィルム71が必要となる。
【0047】
扁平電池Aに隔離フィルム71を積層した後は、正極集電体22の正電極端子22aが扁平電池Aの負電極端子61aと同じ方向(2時の方向)となるように配置し、その上に、扁平電池Aと同様に、正極32、セパレータ42、負極52の順に配置し、負極集電体62の負電極端子62aを扁平電池Bの正電極端子22aよりも反時計回りに120°回転させた方向(10時の方向)になるように配置する。
【0048】
更に、扁平電池Bの上に、最上段に位置させる扁平電池Cを積層させるが、扁平電池Aと扁平電池Bの間と同様に、扁平電池Bと扁平電池Cの間に隔離フィルム72が必要となる。
【0049】
扁平電池Bに隔離フィルム72を積層した後は、正極集電体23の正電極端子23aが、扁平電池Bの負電極端子62と同じ方向(10時の方向)となるように配置し、その上に、扁平電池A,Bと同様に、正極33、セパレータ43、負極53の順に配置し、負極集電体63の負電極端子63aを扁平電池Cの正電極端子23aよりも反時計回りに120°回転させた方向(6時の方向)になるように配置する。
【0050】
上記の例は、最下段に位置させる扁平電池Aの正電極端子21aが6時の方向になる配置で説明したが、本実施形態は、
図3に示す電極端子の配置方向及び回転方向に制限されるものではない。
【0051】
更に、扁平電池A,B,Cのそれぞれをパッキングするために、各扁平電池A,B,Cを外装フィルム10と11で挟み、熱シーラー等で外装フィルム10,11及び隔離フィルム71,72を熱シールする。
【0052】
最後に、積層した扁平電池A,B,Cを電気的に直列に接続するために、2時の方向の負電極端子61aと正電極端子22a、及び10時の方向の負電極端子62aと正電極端子23aを熱シーラー等で熱シールすることで組電池1を作製することができる。以降、負電極端子61aと正電極端子22aの接合部を接合部ABと称する。また、負電極端子62aと正電極端子23aの接合部を接合部BCと称する。
【0053】
扁平電池A,B,Cごとの電池電圧を測定する場合は、各扁平電池A,B,Cに対応する電極端子に電圧計等の計測器を接続すれば良い。扁平電池Aの電池電圧を測定する場合は、正電極端子21aと接合部ABの電圧を測定すれば良く、扁平電池Bの電池電圧を測定する場合は、接合部ABと接合部BCの電圧を測定すれば良く、扁平電池Cの電池電圧を測定する場合は、接合部BCと負電極端子63aの電圧を測定すれば良い。
【0054】
以上述べたように、本実施形態に係る組電池の製造方法によれば、3個の扁平電池を3個直列に接続した組電池1を製造することができる。扁平電池A,B,Cの電気的接合は、正三角形の各辺から突出する電極端子を接続することで行えるので、必要最低限の材料のみで組電池化することができ、作業性が良好である。また、各扁平電池A,B,Cは、同一形状の部材を使用するため部材の作製と調達が容易である。
【0055】
更に、電極端子の接合の際に積層した扁平電池A,B,Cに応力をかけることがないため、接合部AB,BCが外れ難く、耐久性及び信頼性に優れる。また、各電極端子から個々の扁平電池A,B,Cの電圧を監視することが可能であるためメンテナンス性にも優れている。
【0056】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態に係る組電池の平面を示す図である。
図4に示す組電池1は、正五角形の扁平電池を5つ厚み方向に積層し、電気的に直列に接続したものである。
【0057】
5つの扁平電池は、その平面形状が例えば正五角形となっており、正電極端子及び負電極端子は、72°(360°/N)回転した位置に配置されており、正五角形の扁平電池の一辺から矩形の電極端子が突出した形状となっている。
【0058】
組電池2を平面視した
図4においては、積層される5つの扁平電池の2つ目の正電極端子222a、3つ目の正電極端子223a、4つ目の正電極端子224a、5つ目の正電極端子225a、5つ目の負極集電体265と一体に形成される負電極端子265a、セパレータ245、及び一方の外装フィルム211を確認することができる。1つ目の正電極端子221aは、5つ目の負電極端子265aの下に配置されるため、直接目視することはできない。
【0059】
図5は、組電池2を構成する複数層のそれぞれの層の平面形状を模式的に示す図である。
図5は、組電池2を構成する5つの扁平電池A,B,C,D,Eの下から1つ目の扁平電池Aを構成する各層の平面を示す。2つ目以降の扁平電池B〜Eについては、組電池1と同様に同じ形状の各層で構成されるので、その表記を省略する。
【0060】
組電池2の1つ目の扁平電池Aは、正極集電体221、正極231、セパレータ241、負極251、及び負極集電体261が積層されて構成される。正五角形の正極集電体221の一辺が、該一辺の長さより短い幅で外側に延伸され、矩形の正電極端子221aが正極集電体221と一体となって形成されている。また、正五角形の負極集電体261の一辺が、該一辺の長さより短い幅で外側に延伸され、矩形の負電極端子261aが負極集電体261と一体となって形成されている。負電極端子61aは、正電極端子21aを基準に72°回転している。
【0061】
2つ目以降の扁平電池B〜Eは、正極231及び負極251等の形状が正五角形になり、各電極端子の延出角度が72°になる点のみが異なるだけで、正三角形の組電池1と同じである。
【0062】
本実施形態の組電池2は、5個の扁平電池を5個直列に接続した組電池である。組電池2は、1つの扁平電池の端子電圧を組電池1と同じにした場合、より高い電圧を生成できる点で組電池1と異なる。得られる作用効果は組電池1と同じである。よって、これ以上の説明は省略する。
【0063】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態に係る組電池の平面を示す図である。
図6に示す組電池1は、正十六角形の扁平電池を16個厚み方向に積層し、電気的に直列に接続したものである。
【0064】
16個の扁平電池は、その平面形状が例えば正十六角形となっており、正電極端子及び負電極端子は、20°(360°/N)回転した位置に配置されており、正十六角形の扁平電池の一辺から矩形の電極端子が突出した形状となっている。
【0065】
組電池3を平面視した
図6においては、積層される16個の扁平電池の2つ目の正電極端子322aから、16個目の正電極端子336a、16個目の負極集電体376と一体に形成される負電極端子376a、セパレータ356、及び一方の外装フィルム311を確認することができる。1つ目の正電極端子321aは、16個目の負電極端子376aの下に配置されるため、直接目視することはできない。
【0066】
図7は、組電池3を構成する16個の扁平電池A〜Pの下から1つ目の扁平電池Aを構成する各層の平面を示す。2つ目以降の扁平電池B〜Pについては、組電池1,2と同様に同じ形状の各層で構成されるので、その表記を省略する。
【0067】
組電池3の1つ目の扁平電池Aは、正極集電体321、正極331、セパレータ341、負極351、及び負極集電体361が積層されて構成される。正十六角形の正極集電体321の一辺が、該一辺の長さより短い幅で外側に延伸され、矩形の正電極端子321aが正極集電体321と一体となって形成されている。また、正十六角形の負極集電体361の一辺が、該一辺の長さより短い幅で外側に延伸され、矩形の負電極端子361aが負極集電体361と一体となって形成されている。負電極端子361aは、正電極端子321aを基準に20°回転している。
【0068】
2つ目以降の扁平電池B〜Pは、正極331及び負極351等の形状が正十六角形になり、各電極端子の延出角度が20°になる点のみが異なるだけで、正三角形及び正五角形の組電池1,2と同じである。得られる作用効果も組電池1,2と同じである。
【0069】
本実施形態の組電池3は、16個の扁平電池を16個直列に接続した組電池である。組電池3は、1つの扁平電池の端子電圧を組電池1と同じにした場合、より高い電圧を生成できる点で組電池1と異なる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態による組電池は、N角形(Nは3以上の整数)の複数の扁平電池を積層した組電池であって、正電極端子と負電極端子が360°/Nの角度を変えて延出される前記N角形の複数の前記扁平電池を、電気的に直列に接続する。これにより、多数の扁平電池の積層化が容易である組電池を提供することができる。
【0071】
なお、第3実施形態では、扁平電池を16個直列に接続した例で説明を行ったが、本発明はこの例に限定されない。扁平電池の数は、16個より少なくても良いし、多くても良い。扁平電池の数は、3個以上の数であればいくつで有っても構わない。
【0072】
なお、上記の実施形態は、正三角形、正五角形、及び正十六角形の例を示して説明したが、本発明はこの例に限定されない。Nが3以上の整数の多角形であれば本発明の技術思想を適用することができる。
【0073】
また、本発明の技術思想は、扁平電池の形状が多角形でない場合でも適用することができる。扁平電池が円形若しくは該扁平電池の中心を固定して回転した場合の形状に対称性が有れば本発明の実施が可能である。
【0074】
つまり、M個(Mは3以上の整数)の平面形状が同じ扁平電池を積層した組電池であって、正電極端子と負電極端子が扁平電池の中心に対して360°/Mの角度を変えて延出される該扁平電池を、電気的に直列に接続して組電池を構成しても良い。このように本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で変形が可能である。
【0075】
例えば、以下に説明する変形例では、上記の実施形態の隔離フィルム71、72および外装フィルム11は、空気、電解液、溶媒等が流入される孔を有してもよい。
【0076】
<変形例1>
図8は、変形例1の隔離フィルム71、72の孔の一例を示す図である。本変形例の組電池は、空気電池である。空気電池は、正極活物質として空気中の酸素を用い、負極活物質として金属を用いる電池である。本変形例の隔離フィルムは、空気を流入するための少なくとも1つの孔13(空気孔)を備える。図示する例では、隔離フィルムの孔13は1つであるが、複数の孔13を有してもよい。また、孔13の位置は、扁平電池間での電解液の液絡を防止するため、セパレータ41、42、43の外側に形成されることが望ましい。
【0077】
また、本変形例の外装フィルム11は、1つまたは複数の孔111(空気孔)を有し、当該孔111を塞ぐ封止シール112が貼付されている。また、2つの外装フィルム11、10の両方が、孔および封止シールを備えていてもよい。本変形例では、ユーザが組電池を使用する際に外装フィルム11から封止シール112を剥すことで、外装フィルム11の孔111および隔離フィルム71、72の孔13から空気が組電池の内部に流入し、組電池の発電または放電が開始される。これにより、ユーザが組電池を使用する前に生じる、正極及び負極の腐食、自己放電といった問題の発生を抑制することができる。
【0078】
また、孔13、111は、
図8に示すように、隔離フィルム71、72および外装フィルム11にあらかじめ形成されていてもよい。あるいは、ユーザが、組電池を使用する際に、組電池の先端部をハサミやカッターなどで切断することで、孔13、111を形成してもよい。
【0079】
図9は、
図1に示す三角形の組電池に、ユーザが孔13、111を形成する場合の切断位置を説明するための説明図である。ここでは、切断線13Aにより組電池の先端を切断することで孔を形成する場合と、切り込み線13Bにより組電池1に切り込みをいれることで孔を形成する場合について説明する。切断線13Aは、扁平電池間での電解液の液絡を防止するため、セパレータ41、42、43の外側、すなわちセパレータを切断しない位置(図では、セパレータ43の頂点より上の位置)であることが望ましい。これにより、隔離フィルム71、72および外装フィルム10、11に孔が形成される。また、切り込み線13Bにより、組電池の先端に切り込みを入れることで、隔離フィルム71、72および外装フィルム10、11に孔を形成してもよい。切り込み線13Bについても、セパレータ41、42、43の外側、すなわちセパレータを切断しない位置であることが望ましい。
【0080】
図10は、
図4に示す5角形の組電池の切断線13Aおよび切り込み線13Bの一例を示す図である。
図11は、
図6に示す16角形の組電池の切断線13Aおよび切り込み線13Bの一例を示す図である。
【0081】
<変形例2>
図12は、変形例2の隔離フィルム71、72および外装フィルム10,11の孔の一例を示す図である。本変形例の組電池は、組電池内部に電解液を有していない電池である。本変形例の隔離フィルム71、72は、電解液を流入するための少なくとも1つの孔14、(液孔)を備える。また、外装フィルム10、11も、電解液を流入するための少なくとも1つの孔114、(液孔)を備える。孔114は外装フィルム10または11のどちらか一方のみ備えていてもよい。図示する例では、孔14、114は1つであるが、複数の孔を有してもよい。また、孔14の位置は、組電池の内部に電解液を流入するために、セパレータ41、42、43の内側であって、正極、負極、正極集電体および負極集電体の外側に形成されることが望ましい。
【0082】
本変形例では、ユーザが組電池を使用する際に孔14、114から電解液を含浸させることで、孔14、114から電解液が組電池の内部に流入し、組電池の発電または放電が開始される。これにより、ユーザが組電池を使用する前に生じる、電解液の揮発による液枯れ、正極及び負極の腐食、自己放電といった問題の発生を抑制することができる。また、孔14、114は、
図12に示すように、隔離フィルム71、72および外装フィルム11にあらかじめ形成されていてもよい。あるいは、ユーザが、組電池を使用する際に、組電池の先端部をハサミやカッターなどで切断することで、孔14、114を形成してもよい。
【0083】
図13は、
図1に示す三角形の組電池に、ユーザが孔14、114を形成する場合の切断位置を説明するための説明図である。ここでは、切断線14Aにより組電池の先端を切断することで孔を形成する場合と、切り込み線14Bにより組電池1に切り込みをいれることで孔を形成する場合について説明する。切断線14Aは、セパレータ41、42、433に孔を形成する必要があるため、セパレータ41、42、43の内側、すなわちセパレータを切断する位置(図では、セパレータ43の頂点より下の位置)で、正極および負極を切断しない位置であることが望ましい。これにより、隔離フィルム71、72および外装フィルム10、11に孔が形成される。また、切り込み線14Bにより、先端に切り込みを入れることで、隔離フィルム71、72および外装フィルム10、11に孔を形成してもよい。切り込み線13Bの場合も、セパレータの内側、すなわちセパレータを切断する位置で、正極および負極を切断しない位置であることが望ましい。
【0084】
図14は、
図4に示す5角形の組電池の切断線14Aおよび切り込み線14Bの一例を示す図である。
図15は、
図6に示す16角形の組電池の切断線14Aおよび切り込み線14Bの一例を示す図である。
【0085】
<変形例3>
図16は、変形例3の隔離フィルム71、72の孔の一例を示す図である。本変形例の組電池は、組電池内部に電解質15を有しており、孔(液孔)14、114から溶媒を流入する点において、変形例2と異なり、その他については、変形例2と同様である。溶媒には、例えば水などを用いることができる。なお、図示する例では、電解質15は、セパレータ41、42、43と、負極51、52、53との間に配置されているが、これに限定されない。ただし、電解質15は、セパレータに接する位置が望ましい。また、図示する例では、各扁平電池が電解質15を備えるが、組電池全体で1つの電解質15を備えこととしてもよい。
【0086】
電解質15は、正極と負極との間で金属イオン及び水酸化物イオンの移動が可能な物質であればよい。電解質15は、特に限定されない。電解質15は、例えば、塩酸、塩化ナトリウムや、塩化カリウム、塩化マグネシウム、などの塩化物、酢酸、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム無水和物、酢酸マグネシウム四水和物などの酢酸塩、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウムなどのクエン酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸マグネシウムなどのピロリン酸塩、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリリウム、メタリン酸マグネシウムなどのメタリン酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、その他、アンモニウム塩、リン酸、リン酸塩、炭酸、HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)などで構成することが好ましい。
【0087】
本変形例の隔離フィルム71、72は、溶媒を流入するための少なくとも1つの孔14、(液孔)を備える。また、外装フィルム10、11も、溶媒を流入するための少なくとも1つの孔114(液孔)を備える。本変形例では、ユーザが組電池を使用する際に孔14、114から溶媒を含浸させることで、溶媒が組電池の内部に流入し、組電池の発電または放電が開始される。これにより、ユーザが組電池を使用する前に生じる、電解液の揮発による液枯れ、正極及び負極の腐食、自己放電といった問題の発生を抑制することができる。また、孔14、114は、
図16に示すように、隔離フィルム71、72および外装フィルム11にあらかじめ形成されていてもよい。あるいは、ユーザが、組電池を使用する際に、組電池の先端部をハサミやカッターなどで切断することで、孔14、114を形成してもよい。本変形例の切断線14Aおよび切り込み線14Bについては、
図13から
図15と同様であるため、ここでは説明を省略する。