(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体と、下記(A)群及び(B)群の溶媒を含む有機溶媒と、を含有することを特徴とする液晶配向剤。
(A)群:N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンから選ばれる少なくとも1種の溶媒
(B)群:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン及び2−メチル−2−ヘキサノールから選ばれる少なくとも1種の溶媒
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の液晶配向剤は、ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体と、下記(A)群及び(B)群の溶媒を含む有機溶媒と、を含有することを特徴とする。以下、本発明の液晶配向剤につき詳述する。
【0019】
<有機溶媒>
本発明の液晶配向剤には、下記(A)群及び下記(B)群の溶媒を含む有機溶媒を含有する。
(A)群:N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンから選ばれる少なくとも1種の溶媒である。
(B)群:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン及び2−メチル−2−ヘキサノールから選ばれる少なくとも1種の溶媒である。
【0020】
<(A)群の溶媒>
本発明の有機溶媒に含有される(A)群の溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン及びγ−ブチロラクトンから選ばれる少なくとも1種の溶媒である。これらは、主に重合体を溶解させるための溶媒である。その中でも、溶解性の観点から、N−メチルピロリドン及びγ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0021】
前記(A)群の溶媒の含有量は、全溶媒量に対し、50重量%〜95重量%であることが配向剤の溶解性の観点から好ましい。
【0022】
<(B)群の溶媒>
本発明の有機溶媒に含有される(B)群の溶媒は、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ブタノン及び2−メチル−2−ヘキサノールから選ばれる少なくとも1種の溶媒である。これらは、主に良好な塗布性を具備させるための溶媒である。
【0023】
前記(B)群の溶媒の含有量は、全溶媒量に対し、5重量%〜50重量%であることが、溶液の安定性の観点から好ましい。
【0024】
<その他の溶媒>
本発明の液晶配向剤には、本発明の効果を奏する程度において、上記の溶媒以外の溶媒(以下、その他の溶媒とも言う)を含有させることが出来る。以下にその他の溶媒の例を列挙するが、これらに限定されるものではない。
【0025】
例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシ−1−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
【0026】
その他の溶媒として好ましい溶媒及び、前記(A)群、前記(B)群との組み合わせが好ましい溶媒の組み合わせを以下に例示する。
【0027】
例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジイソブチルカービノール、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルケトン、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシ−1−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチル−n−プロピルエーテル等が挙げられる。
【0028】
<重合体>
本発明の液晶配向剤に含有される重合体は、ポリイミド及びポリイミド前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体である。
【0029】
ポリイミド前駆体は、以下の式(1)で表すことが出来る。
【0031】
上記式(1)中、X
1は、テトラカルボン酸誘導体由来の4価の有機基であり、Y
1はジアミン由来の2価の有機基であり、R
1は、水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキレンを表す。加熱時のイミド化反応の進行のしやすさの観点から、R
1は水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
A
1及びA
2は、それぞれ独立して、水素原子又は、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数2〜5のアルキニル基である。液晶配向性の観点から、A
1及びA
2は水素原子、又はメチル基が好ましい。
【0032】
以下、重合体をなす原料となる各成分について詳述する。
【0033】
<ジアミン>
本発明の液晶配向剤に用いられるジアミン成分の構造は特に限定されない。
【0034】
上記式(1)の構造を持つ重合体の重合に用いられるジアミンは以下の式(2)で一般式化することが出来る。
【0036】
上記式(2)のA
1及びA
2は好ましい例も含めて、上記式(1)のA
1及びA
2と同様の定義である。Y
1の構造を例示すると、以下の通りである。
【0056】
上記式(Y−165)及び上記式(Y−166)中、nは、1〜6の整数である。
【0058】
上記式(Y−175)、上記式(Y−176)、上記式(Y−179)及び上記式(Y−180)中のBocは、tert−ブトキシカルボニル基を表す。
【0059】
<テトラカルボン酸誘導体>
本発明の液晶配向剤に含有される、上記式(1)の構造単位を有する重合体を作製するためのテトラカルボン酸誘導体成分としては、テトラカルボン酸二無水物だけでなく、そのテトラカルボン酸誘導体であるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物またはテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物を用いることもできる。
【0060】
テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体としては、下記式(3)で示されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体から選ばれる少なくとも1つを用いることがより好ましい。
【0062】
上記式(3)中、X
1は、脂環式構造を有する4価の有機基であり、その構造は特に限定されない。具体例としては、下記式(X1−1)〜下記式(X1−44)が挙げられる。
【0064】
上記式(X1−1)〜上記式(X1−4)において、R
3からR
23は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、フッ素原子を含有する炭素数1〜6の1価の有機基、又はフェニル基であり、同一でも異なってもよい。液晶配向性の観点から、R
3からR
23は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましい。上記式(X1−1)の具体的な構造としては、下記式(X1−1−1)〜下記式(X1−1−6)で表される構造が挙げられる。液晶配向性及び光反応の感度の観点から、下記式(X1−1−1)が特に好ましい。
【0071】
<ポリアミック酸エステルの製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体の一つであるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)、(2)又は(3)の方法で合成することができる。
【0072】
(1)ポリアミック酸から合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成することができる。
【0073】
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1時間〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0074】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼン、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジンー2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2モル当量〜6モル当量が好ましい。
【0075】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。
【0076】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから合成することができる。
【0077】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1時間〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0078】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2倍モル〜4倍モルであることが好ましい。
【0079】
上記の反応に用いる溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0080】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンからポリアミック酸エステルを合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより合成することができる。
【0081】
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、及び有機溶剤の存在下で0℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3時間〜15時間反応させることによって合成することができる。
【0082】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3−ジヒドロ−2−チオキソ−3−ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2倍モル〜3倍モルが好ましい。
【0083】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2倍モル〜4倍モルが好ましい。
【0084】
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0倍モル〜1.0倍モルが好ましい。
【0085】
上記3つのポリアミック酸エステルの合成方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は上記(2)の合成法が特に好ましい。
【0086】
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0087】
<ポリアミック酸の製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下に示す方法により合成することができる。
【0088】
具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1時間〜12時間反応させることによって合成できる。
【0089】
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜20質量%がより好ましい。
【0090】
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0091】
<ポリイミドの製造方法>
本発明に用いられるポリイミドは、前記ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸をイミド化することにより製造することができる。ポリアミック酸エステルからポリイミドを製造する場合、前記ポリアミック酸エステル溶液、又はポリアミック酸エステル樹脂粉末を有機溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸溶液に塩基性触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0092】
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸エステルを、有機溶媒中において塩基性触媒存在下で撹拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもトリエチルアミンは反応を進行させるのに充分な塩基性を持つので好ましい。
【0093】
イミド化反応を行うときの温度は、−20℃〜140℃、好ましくは0℃〜100℃であり、反応時間は1時間〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸エステル基の0.5モル倍〜30モル倍、好ましくは2モル倍〜20モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。イミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0094】
ポリアミック酸からポリイミドを製造する場合、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られた前記ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
【0095】
化学的イミド化は、イミド化させたい重合体を、有機溶媒中において塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0096】
イミド化反応を行うときの温度は、−20℃〜140℃、好ましくは0℃〜100℃であり、反応時間は1時間〜100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5モル倍〜30モル倍、好ましくは2モル倍〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1モル倍〜50モル倍、好ましくは3モル倍〜30モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。
【0097】
ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸のイミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0098】
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。
【0099】
前記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0100】
<液晶配向剤>
本発明に用いられる液晶配向剤は、特定構造の重合体が有機溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。本発明に記載のポリイミド前駆体及びポリイミドの分子量は、重量平均分子量で2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは5,000〜300,000であり、さらに好ましくは、10,000〜100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000〜250,000であり、より好ましくは、2,500〜150,000であり、さらに好ましくは、5,000〜50,000である。
【0101】
本発明に用いられる液晶配向剤の重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1重量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは10重量%以下とすることが好ましい。
【0102】
本発明の液晶配向剤は、シランカップリング剤や架橋剤などの各種添加剤を含有してもよい。シランカップリング剤は、液晶配向剤が塗布される基板と、そこに形成される液晶配向膜との密着性を向上させる目的で添加される。シランカップリング剤は既存のものが添加される。
【0103】
上記シランカップリング剤の添加量は、多すぎると未反応のものが液晶配向性に悪影響を及ぼすことがあり、少なすぎると密着性への効果が現れないため、ポリマーの固形分に対して0.01重量%〜5.0重量%が好ましく、0.1重量%〜1.0重量%がより好ましい。上記シランカップリング剤を添加する場合は、ポリマーの析出を防ぐために、前記した塗膜均一性を向上させるための溶媒を加える前に添加するのが好ましい。
【0104】
また、本発明の液晶配向剤には、塗膜を焼成する際にポリイミド前駆体のイミド化を効率よく進行させるために、イミド化促進剤を添加してもよい。イミド化促進剤としては既存のものが使用される。
【0105】
イミド化促進剤を添加する場合は、加熱することでイミド化が進行する可能性があるため、良溶媒及び貧溶媒で希釈した後に加えるのが好ましい。
【0106】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥、焼成して得られる膜である。本発明の液晶配向剤を塗布する基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができ、液晶駆動のためのITO電極等が形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
【0107】
本発明の液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法なども使用できるが、上記したように、特に、本発明の液晶配向剤は、インクジェット法に特に適する。本発明の液晶配向剤をインクジェット法により塗布して塗布膜を形成する場合(インクジェット塗布)、塗布面内の膜厚の均一性や、塗布周辺部の直線性に優れる塗布膜が得られる。
【0108】
本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために50℃〜120℃で1分〜10分乾燥させ、その後150℃〜300℃で5分〜120分焼成される。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5nm〜300nm、好ましくは10nm〜200nmである。
【0109】
本発明の液晶配向処理剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光配向処理などで配向処理をして、または垂直配向用途などでは配向処理無しで、液晶配向膜として用いることができる。
【0110】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得、配向処理を行った後、公知の方法で液晶セルを作製し、液晶表示素子としたものである。
【0111】
液晶セルの製造方法は特に限定されないが、一例を挙げるならば、液晶配向膜が形成された1対の基板を液晶配向膜面を内側にして、好ましくは1μm〜30μm、より好ましくは2μm〜10μmのスペーサーを挟んで設置した後、周囲をシール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後封止を行う滴下法などが例示できる。
【実施例】
【0112】
以下に実施例を挙げて、さらに、本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されないことはもちろんである。
【0113】
なお、実施例及び比較例で使用する略号、及び各特性の測定方法は以下の通りである。
1,3DMCBDA:1,3−ジメチル1,2,3,4シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
DA−1:下記式DA−1のジアミン
DA−2:下記式DA−2のジアミン
DA−3:下記式DA−3のジアミン
【0114】
【化31】
【0115】
上記式DA−2及び上記式DA−3中のBocは、tert−ブトキシカルボニル基を表す。
【0116】
<溶剤>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
GBL:γ−ブチロラクトン
BCA:ブチルセロソルブアセテート
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
DME:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
DEDG:ジエチレングリコールジエチルエーテル
DAA:ダイアセトンアルコール
4M4M2P:4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン
4H2B:4−ヒドロキシ−2−ブタノン
2M2H:2−メチル−2−ヘキサノール
【0117】
<粘度>
合成例において、重合体溶液の粘度は、E型粘度計TVE−22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE−1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0118】
<分子量>
合成例において、重合体の分子量はGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量(以下、Mnとも言う。)と重量平均分子量(以下、Mwとも言う。)を算出した。
GPC装置:Shodex社製(GPC−101)
カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H
2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(重量平均分子量(Mw) 約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp)約12,000、4,000、1,000)。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、1,000の4種類を混合したサンプル、及び150,000、30,000、4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルを別々に測定した。
【0119】
<合成例>
(合成例1)
撹拌装置及び窒素導入管付きの50mLの四つ口フラスコに、DA−1を1.88g(7.70mmol)及びDA−3を1.17g(2.11mmol)、DA−2を1.67g(4.20mmol)取り、NMPを40.00g加えて、窒素を送りながら撹拌し、溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながら1,3DMCBDAを2.04g(9.10mmol)加えてさらに撹拌し、粘度の安定したところでCBDAを0.62g(3.16mmol)を添加し、さらに固形分濃度が15質量%になるようにNMPを加え、室温で24時間撹拌してポリアミック酸(PAA−1)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の25℃における粘度は212mPa・Sであった。
【0120】
(合成例2)
撹拌装置及び窒素導入管付きの100mLの四つ口フラスコに合成例1で得られたPAA−1を30g量り取り、固形分濃度が8質量%になるようにNMPを加えて希釈した。
【0121】
次に無水酢酸2.61g(25.5mmol)、ピリジン0.67g(8.47mmol)を加えて、溶解させた。次に、この溶液を撹拌しながら55℃に加熱し、3時間反応させた。得られたポリアミド酸−可溶性ポリイミド酸溶液を全溶液の3.5倍等量のメタノールに撹拌しながら投入し再沈殿させた。再沈殿後の粉体は自然濾過もしくは吸引濾過によってろ取し、この後さらに、それぞれ0.188l(5.86mmol)のメタノールを2回に分けて洗浄し、乾燥させることにより白色のポリアミド酸−可溶性ポリイミド樹脂粉末(PWD−1)を得た。この樹脂粉末の分子量はMn=13,493であり、Mw=27,207であった。
【0122】
上記で得られたPWD−1をNMPに溶解させ、固形分濃度12質量%のポリアミド酸−可溶性ポリイミド樹脂粉末溶液(SPI−1)を得た。
【0123】
(実施例1)
撹拌子を入れた20mlサンプル管に、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA−1)を6.75g量り取り、NMPで1.0質量%に希釈した3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン溶液を0.81g、NMPを6.84g加えた。その後、DAAを3.60g加えてマグネチックスターラーで30分間撹拌し、液晶配向剤(A−1)を得た。液晶配向剤A−1を−20℃で1週間保管したところ、固形物の析出が見られず、均一な溶液であった。
【0124】
(実施例2〜実施例5、比較例1〜比較例6)
ポリアミック酸(PAA−1)の代わりに、ポリアミド酸−可溶性ポリイミド樹脂粉末溶液(SPI−1)を用いるか、もしくは溶剤としてDAAの代わりに下記表の溶剤を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、それぞれ液晶配向剤(A−2)〜(A−5)、(B−1)〜(B−6)を得た。上記により得られた全ての液晶配向剤を−20℃で1週間保管したところ、固形物の析出が見られず、均一な溶液であった。各々の結果は下記表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
液晶セルの電気特性を評価するため、初めに電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板である。基板上には膜厚35nmのITO電極が形成されており、電極は縦40mm、横10mmのストライプパターンである。
【0127】
次に、液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板に、スピンコート塗布にて塗布した。50℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させて液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜をレーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に4μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板をラビング方向が逆方向、かつ膜面が向き合うようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶ML−7026−100(メルク・ジャパン製)を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で60分間加熱し、その後室温まで除冷してセルの観察を行ったところ配向性は良好であった。
【0128】
<電圧保持率の測定>
(実施例6)
上記液晶セルに60℃の温度下で1Vの電圧を60μs間印加し、50ms後の電圧を測定して、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として計算した。
【0129】
この結果、配向剤A−1からなる配向膜の60℃における電圧保持率は96.7%であった。
【0130】
(実施例7〜実施例10、比較例7〜比較例12)
実施例2〜実施例5、比較例1〜比較例6で得られた配向剤(A−2)〜配向剤(A−5)及び配向剤(B−1)〜配向剤(B−6)に対しても同様の手法により液晶セルを作成し、実施例6に記載の測定方法により、電圧保持率を測定した。各々の結果は下記表2に示す。
【0131】
【表2】