(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
厚さ5〜60μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビニルアルコール系フィルムであって、フィルム表面の任意の位置に長さ1mmの仮想線を設けた際に、該仮想線と交差する幅1〜10μmかつ交点の高さが0.01〜0.1μmの線状突起数が、1〜10本であり、ヘイズが、0.3%以下であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、キャスト型に吐出及び流延して製膜し、連続的に乾燥して得られることを特徴とする請求項1または2記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
キャスト型が、キャスト型表面の任意の位置に長さ1mmの仮想線を設けた際に、該仮想線と交差する幅1〜10μmかつ交点の深さが0.01〜0.2μmのマイクロクラックを5〜30本含有するキャスト型であることを特徴とする請求項3記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、厚さ5〜60μm、幅2m以上、長さ2km以上であるポリビニルアルコール系フィルムであって、フィルム表面の任意の位置に長さ1mmの仮想線を設けた際に、該仮想線と交差する幅1〜10μmかつ交点の高さが0.01〜0.1μmの線状突起が1〜10本であるフィルムである。
【0018】
かかる線状突起の数は、好ましくは2〜9本、特に好ましくは3〜8本である。線状突起の数が下限値未満では、ポリビニルアルコール系フィルムを歩留りよく製造することが困難となり好ましくなく、上限値を超えると偏光膜の光線透過率が低下し、本発明の目的を達成することができない。
なお、本発明においては、アスペクト比10以上をもって線状と定義する。
【0019】
かかる線状突起の数を所定の範囲に制御する手法としては、キャスト型表面のマイクロクラックの形状や本数を所定の範囲に整える手法、フィルム表面を熱ロールに接触させて凸状の線状突起を押しつぶす手法、フィルム表面を水やアルコールなどの溶剤と接触させて一部溶解させることにより平坦化する手法、フィルム表面を研磨処理や粗面化処理する手法、製膜原料にレベリング剤を配合して凹凸を低減する手法などが挙げられるが、本発明においては、後述するキャスト型表面のマイクロクラックの形状や本数を所定の範囲に整える手法が、フィルム表面のプロファイルを一定にできる点で好ましい。
【0020】
以下、本発明のポリビニルアルコール系フィルム、及びそれを用いてなる偏光膜について説明する。
【0021】
本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、未変性のポリビニルアルコール系樹脂、即ち、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂が用いられる。必要に応じて、酢酸ビニルと、少量(例えば、10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等が挙げられる。また、ケン化後の水酸基を化学修飾して得られる変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。
【0022】
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(i)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(ii)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(iv)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
【0023】
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、10万〜30万であることが好ましく、特に好ましくは11万〜28万、更に好ましくは12万〜26万である。かかる重量平均分子量が小さすぎるとポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られにくい傾向があり、大きすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜製造時の延伸が困難となる傾向がある。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC−MALS法により測定される重量平均分子量である。
【0024】
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、通常98モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは99モル%以上、更に好ましくは99.5モル%以上、殊に好ましくは99.8モル%以上である。かかる平均ケン化度が小さすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜とする場合に充分な光学性能が得られない傾向がある。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
【0025】
本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂として、変性種、重量平均分子量、平均ケン化度などの異なる2種以上のものを併用してもよい。
【0026】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、上記ポリビニルアルコール系樹脂を用いてポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製し、この水溶液をキャスト型に吐出及び流延して、キャスト法により製膜、乾燥することで連続的に製造することができ、例えば以下の工程により製造することができる。
(A)キャスト法によりフィルムを製膜する工程。
(B)製膜されたフィルムを加熱して乾燥する工程。
(C)乾燥されたフィルムをスリットした後、ロールに巻き取る工程。
【0027】
ここで、上記キャスト型としては、例えばキャストドラム(ドラム型ロール)やエンドレスベルト等があげられるが、幅広化や長尺化、膜厚の均一性に優れる点からキャストドラムで行うことが好ましい。
以下、キャスト型がキャストドラムの場合を例にとって説明する。なお、後述のキャストドラムにおいて、特定条件でのキャストドラム表面のマイクロクラックの本数、キャストドラム表面の表面粗さRz、キャストドラムからフィルムを剥離する時の剥離強度の、各々の特定範囲の設定は、例えばエンドレスベルト等、キャストドラム(ドラム型ロール)以外のキャスト型においても適用される。
【0028】
まず、前記工程(A)について説明する。
【0029】
工程(A)においては、まず、前述したポリビニルアルコール系樹脂を、水などの溶剤を用いて洗浄し、遠心分離機などを用いて脱水して、含水率50重量%以下のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキとすることが好ましい。含水率が大きすぎると、所望する水溶液濃度にすることが難しくなる傾向がある。
かかるポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを温水または熱水に溶解して、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調整する。
【0030】
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の調製方法は、特に限定されず、例えば、加熱された多軸押出機を用いて調製してもよく、また、上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶に、前述したポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを投入し、缶中に水蒸気を吹き込んで、溶解及び所望濃度の水溶液を調製することもできる。
【0031】
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、ポリビニルアルコール系樹脂以外に、必要に応じて、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどの一般的に使用される可塑剤や、ノニオン性、アニオン性、およびカチオン性の少なくとも一つの界面活性剤を含有させることが、製膜性の点より好ましい。
【0032】
このようにして得られるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂濃度は、15〜60重量%であることが好ましく、特に好ましくは17〜55重量%、更に好ましくは20〜50重量%である。かかる樹脂濃度が低すぎると乾燥負荷が大きくなるため生産能力が低下する傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎて均一な溶解ができにくくなる傾向がある。
【0033】
次に、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、脱泡処理される。脱泡方法としては、静置脱泡や多軸押出機による脱泡などの方法があげられる。多軸押出機としては、ベントを有した多軸押出機であれば、とくに限定されないが、通常はベントを有した2軸押出機が用いられる。
【0034】
脱泡処理ののち、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、一定量ずつT型スリットダイに導入され、回転するキャストドラム上に吐出及び流延されて、キャスト法により製膜される。
【0035】
T型スリットダイ出口のポリビニルアルコール系樹脂水溶液の温度は、80〜100℃であることが好ましく、特に好ましくは85〜98℃である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の温度が低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると発泡する傾向がある。
【0036】
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の粘度は、吐出時に50〜200Pa・sであることが好ましく、特に好ましくは70〜150Pa・sである。
かかる水溶液の粘度が、低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると流涎が困難となる傾向がある。
【0037】
T型スリットダイからキャストドラムに吐出されるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の吐出速度は、0.5〜5m/分であることが好ましく、特に好ましくは0.6〜4m/分、更に好ましくは0.7〜3m/分である。
かかる吐出速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると流涎が困難となる傾向がある。
【0038】
かかるキャストドラムの直径は、好ましくは2〜5m、特に好ましくは2.4〜4.5m、更に好ましくは2.8〜4mである。
かかる直径が小さすぎると乾燥長が不足し速度が出にくい傾向があり、大きすぎると輸送性が低下する傾向がある。
【0039】
かかるキャストドラムの幅は、好ましくは2m以上であり、特に好ましくは3m以上、更に好ましくは4m以上、殊に好ましくは5〜6mである。
キャストドラムの幅が小さすぎると生産性が低下する傾向がある。
【0040】
かかるキャストドラムの回転速度は、3〜50m/分であることが好ましく、特に好ましくは4〜40m/分、更に好ましくは5〜35m/分である。
かかる回転速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると乾燥が不十分となる傾向がある。
【0041】
かかるキャストドラムの表面温度は、40〜99℃であることが好ましく、特に好ましくは60〜95℃である。
かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向があり、高すぎると発泡してしまう傾向がある。
【0042】
かかるキャストドラムとしては、通常、鉄を主成分とするステンレス鋼(SUS)の表面に、傷つき防止のため金属メッキが施されているもの、すなわち金属メッキ層が形成されたものが使用される。金属メッキとしては、例えば、クロムメッキ、ニッケルメッキ、亜鉛メッキなどが挙げられ、これらが単独または2層以上積層化して使用される。これらの中でも、ドラム表面の平滑化の容易さや、耐久性に優れる点で、最表面がクロムメッキ層であることが好ましい。
【0043】
本発明で使用されるキャストドラムは、キャストドラム表面の任意の位置に長さ1mmの仮想線を設けた際に、該仮想線と交差する幅1〜10μmかつ交点の深さが0.01〜0.2μmのマイクロクラックの本数が5〜30本であることが好ましく、特に好ましくは6〜25本、更に好ましくは7〜20本である。
かかるマイクロクラックの本数が、少なすぎるとフィルムの剥離性が低下し、ポリビニルアルコール系フィルムの生産性が低下する傾向があり、多すぎるとポリビニルアルコール系フィルムの表面粗さが増大し偏光膜の偏光性能が低下する傾向がある。
【0044】
ここで、一般的に、キャストドラム表面の金属メッキ層には、多かれ少なかれマイクロクラックが存在するものである。かかるマイクロクラックは、金属メッキ層のストレスにより生じるものであり、金属メッキ層の厚さ、メッキ条件、加熱処理、薬品処理、多層化などにより、形状や個数を制御することができる。例えば、クロムメッキの場合、100℃〜150℃で加熱処理することにより、上述した範囲のマイクロクラックを形成することができる。
【0045】
かかるマイクロクラックは、ロータス効果(蓮の葉効果)により、キャストドラム表面に撥水性を付与することができ、かかる撥水効果は、水分を比較的多量に含んだフィルムのキャストドラムからの剥離性を高め、ポリビニルアルコール系フィルムの製造を容易にするものであるため、本発明ではキャストドラム(およびキャスト型)表面が撥水性を有するキャストドラム(およびキャスト型)を用いることが好ましい。
【0046】
また、一般的に、ポリビニルアルコール系フィルムの製造においては、製膜原液であるポリビニルアルコール系樹脂水溶液に、界面活性剤を添加して剥離性を向上させる。しかしながら、かかる界面活性剤の添加により、ポリビニルアルコール系フィルムの表面粗さは増大し、結果的に、偏光膜の偏光性能が低下する傾向がある。上記マイクロクラックは、化学的な作用では無く、物理的な作用によりフィルムの剥離性を高めるものであるため、界面活性剤を使用した場合に起こるような問題点は生じないものである。
【0047】
また、本発明で用いられるキャストドラム表面の表面粗さRzは、0.1〜0.3μmであることが好ましく、特に好ましくは0.13〜0.27μm、更に好ましくは0.15〜0.25μmである。
表面粗さRzが小さすぎると、ポリビニルアルコール系フィルムを高い生産性で製造することが困難となる傾向があり、大きすぎるとポリビニルアルコール系フィルムの表面粗さが増大し、偏光膜の偏光度が低下する傾向がある。
【0048】
かかる表面粗さを所定の範囲に制御する手法としては、キャストドラム表面のマイクロクラックの形状や本数を所定の範囲に整える手法、キャストドラム表面の点状欠点を調整する手法、キャストドラム表面を研磨処理や粗面化処理する手法などが挙げられるが、本発明においては、キャストドラム表面のマイクロクラックの形状や個数を所定の範囲に整える手法が、フィルム表面のプロファイルを一定にできる点で好ましい。
【0049】
本発明においては、キャストドラムからフィルムを剥離する時の剥離強度が、0.001〜0.1N/25mmであることが好ましく、特に好ましくは0.002〜0.05N/25mm、更に好ましくは0.003〜0.01N/25mmである。
かかる剥離強度が大きすぎると、キャストドラムからのフィルムの剥離性が低下し、フィルムが破断したり、ポリビニルアルコール系フィルムのリタデーションが増大する傾向があり、小さすぎると、製膜中にキャストドラムからフィルムが剥離し、フィルムの平滑性が低下する傾向があるため、いずれの場合においてもポリビニルアルコール系フィルムを高い生産性で製造することが困難となる。
【0050】
かかる剥離強度を制御する手法としては、キャストドラム表面のマイクロクラックの形状や本数を所定の範囲に整える手法、キャストドラム表面を研磨処理や粗面化処理する手法、製膜原料に界面活性剤を配合する手法、キャストドラム表面に剥離膜を形成する手法などが挙げられるが、本発明においては、キャストドラム表面のマイクロクラックの形状や本数を所定の範囲に整える手法が、フィルム表面のプロファイルを一定にできる点で好ましい。
【0051】
次いで、前記工程(B)について説明する。工程(B)は、製膜されたフィルムを加熱して乾燥する工程である。
【0052】
キャストドラムで製膜されたフィルムの乾燥は、膜の表面と裏面とを複数の熱ロールに交互に接触させることにより行なわれる。熱ロールの表面温度は、通常40〜150℃、好ましくは50〜140℃である。かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向が有り、高すぎると乾燥しすぎることとなり、うねりなどの外観不良を招く傾向がある。
また、熱ロールは、例えば、表面をハードクロムメッキ処理又は鏡面処理した、直径0.2〜2mのロールであり、通常2〜30本、好ましくは10〜25本を用いて乾燥を行うことが好ましい。
【0053】
本発明においては、熱ロールによる乾燥後、フィルムに熱処理を行うことが好ましい。熱処理温度は、60〜150℃が好ましく、特には70〜140℃が好ましい。熱処理温度が低すぎると、ポリビニルアルコール系フィルムの耐水性が低下したり、位相差ふれの原因となる傾向があり、高すぎると偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。かかる熱処理方法としては、例えば、高温の熱ロールに接触させる方法や、フローティングドライヤーにて行う方法等が挙げられる。
【0054】
乾燥、必要に応じて熱処理が行われたフィルムは、前記工程(C)を経て製品(本発明のポリビニルアルコール系フィルム)となる。工程(C)は、フィルムの両端をスリットして、ロールに巻き取る工程である。
【0055】
なお、ここまでポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製し、この水溶液を回転するキャストドラム(ドラム型ロール)に流延して、キャスト法により製膜、乾燥し、ポリビニルアルコール系フィルムを製造する方法を説明してきたが、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を樹脂フィルム上、または金属ベルト上に流延し、製膜、乾燥することも可能である。
【0056】
かくして本発明のポリビニルアルコール系フィルムが得られる。
【0057】
本発明の製造方法により得られるポリビニルアルコール系フィルムは、厚さが5〜60μmであることが必要であり、薄型化の点から、厚さが5〜50μmであることが好ましく、特に好ましくはリタデーション低減の点から5〜40μm、更に好ましくは破断回避の点から5〜30μmである。
【0058】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、幅が2m以上であることが必要であり、大面積化の点から特に好ましくは3m以上、特に好ましくは4m以上、破断回避の点から更に好ましくは4〜6mである。
【0059】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、長さが2km以上であることが必要であり、大面積化の点から特に好ましくは3km以上、輸送重量の点から更に好ましくは3〜50kmである。
【0060】
また、本発明のポリビニルアルコール系フィルムのヘイズは、0.3%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.2%以下、更に好ましくは0.1%以下である。ヘイズが高すぎると偏光膜とした際の光線透過率が低下する傾向がある。
【0061】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは生産性に優れるものであり、光学用のポリビニルアルコール系フィルムとして好適に用いられ、更には偏光膜用の原反として特に好ましく用いられる。
【0062】
以下、本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いて得られる偏光膜の製造方法について説明する。
【0063】
本発明の偏光膜は、上記ポリビニルアルコール系フィルムを、ロールから巻き出して水平方向に移送し、膨潤、染色、ホウ酸架橋、延伸、洗浄、乾燥などの工程を経て製造される。
【0064】
膨潤工程は、染色工程の前に施される。膨潤工程により、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れを洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色ムラなどを防止する効果もある。膨潤工程において、処理液としては、通常、水が用いられる。当該処理液は、主成分が水であれば、ヨウ化化合物、界面活性剤等の添加物、アルコール等が少量入っていてもよい。膨潤浴の温度は、通常10〜45℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1〜10分間程度である。
【0065】
染色工程は、フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は1〜100g/Lが適当である。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。処理浴の温度は5〜50℃が好ましい。水溶液には、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させてもよい。
【0066】
ホウ酸架橋工程は、ホウ酸やホウ砂などのホウ素化合物を使用して行われる。ホウ素化合物は水溶液または水−有機溶媒混合液の形で濃度10〜100g/L程度で用いられ、液中にはヨウ化カリウムを共存させるのが、偏光性能の安定化の点で好ましい。処理時の温度は30〜70℃程度、処理時間は0.1〜20分程度が好ましく、また必要に応じて処理中に延伸操作を行なってもよい。
【0067】
延伸工程は、一軸方向に3〜10倍、好ましくは3.5〜6倍延伸することが好ましい。この際、延伸方向の直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸)を行なっても差し支えない。延伸時の温度は、40〜170℃が好ましい。さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定されればよく、延伸操作は一段階のみならず、製造工程の任意の範囲の段階に実施すればよい。
【0068】
洗浄工程は、例えば、水やヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行われ、フィルムの表面に発生する析出物を除去することができる。ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合のヨウ化カリウム濃度は1〜80g/L程度でよい。洗浄処理時の温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃である。処理時間は、通常、1〜300秒間、好ましくは10〜240秒間である。なお、水洗浄とヨウ化カリウム水溶液による洗浄は、適宜組み合わせて行ってもよい。
【0069】
乾燥工程は、大気中で40〜80℃で1〜10分間行えばよい。
【0070】
また、偏光膜の偏光度は、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.8%以上である。偏光度が低すぎると液晶ディスプレイにおけるコントラストを確保することができなくなる傾向がある。
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H
11)と、2枚の偏光膜を、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H
1)より、下式にしたがって算出される。
〔(H
11−H
1)/(H
11+H
1)〕
1/2
【0071】
さらに、本発明の偏光膜の単体透過率は、好ましくは42%以上である。かかる単体透過率が低すぎると液晶ディスプレイの高輝度化を達成できなくなる傾向がある。
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
【0072】
かくして、本発明の偏光膜が得られるが、本発明の偏光膜は、偏光性能に優れ、偏光ムラの少ない偏光板を製造するのに好適である。
以下、本発明の偏光板の製造方法について説明する。
【0073】
本発明の偏光膜は、その片面または両面に、接着剤を介して、光学的に等方性な樹脂フィルムを保護フィルムとして貼合されて偏光板となる。保護フィルムとしては、たとえば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイドなどのフィルムまたはシートがあげられる。
【0074】
貼合方法は、公知の手法で行われるが、例えば、液状の接着剤組成物を、偏光膜、保護フィルム、あるいはその両方に均一に塗布した後、両者を貼り合わせて圧着し、加熱や活性エネルギー線を照射することで行われる。
【0075】
また、偏光膜には、薄膜化を目的として、上記保護フィルムの代わりに、その片面または両面にウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂などの硬化性樹脂を塗布し、硬化して偏光板とすることもできる。
【0076】
本発明により得られる偏光膜や偏光板は、表示欠点や色ムラがなく偏光性能の面内均一性にも優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類などの液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパーなど)用反射低減層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具などに好ましく用いられる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
各物性について、次のようにして測定を行った。
【0078】
<測定条件>
(1)マイクロクラック本数(本/mm)
キーエンス社製レーザーフォーカス顕微鏡VK−9700(対物レンズ:50倍)を用いて、微分干渉処理モードにてキャストドラム表面の10か所において、長さ1mmの仮想線を設けた場合、該仮想線と交差する幅1〜10μmであり、かつ交点の深さが0.01〜0.2μmのマイクロクラックをカウントし、10か所の平均値をマイクロクラック本数とした。
【0079】
(2)線状突起数(本/mm)
キーエンス社製レーザーフォーカス顕微鏡VK−9700(対物レンズ:50倍)を用いて、微分干渉処理モードにて、キャストドラムに接していたフィルム表面の10か所において、長さ1mmの仮想線を設けた場合、該仮想線と交差する幅1〜10μmであり、かつ交点の高さが0.01〜0.1μmの線状突起(アスペクト比10以上)をカウントし、10か所の平均値を線状突起数とした。
【0080】
(3)表面粗さRz(μm)
JIS B0601:2001に準拠し、キーエンス社製レーザーフォーカス顕微鏡VK−9700(測定長:1mm、対物レンズ:50倍)を用いて、微分干渉処理モードにてキャストドラムの10か所を測定し、平均値を表面粗さとした。
【0081】
(4)ヘイズ(%)
ロールフィルムから50mm×50mmの試験片を10枚採取し、日本電色工業社製ヘイズメーター「NDH−2000」を用いて測定し、10枚の平均値をヘイズとした。
【0082】
(5)剥離強度(N/25mm)
キャストドラムに付着したフィルムの端部(幅25mm)を、ばね計りでキャストドラム表面に対して垂直になるように、0.1N、0.01N、0.001Nの力で引っ張り、下記の基準にて剥離性を評価した。
(評価基準)
○・・・剥離したもの。
×・・・全面もしくは一部が剥離しなかったもの。
【0083】
(6)偏光度(%)、単体透過率(%)
得られた偏光膜から、長さ4cm×幅4cmのサンプルを切り出し、自動偏光フィルム測定装置(日本分光社製:VAP7070)を用いて、偏光度と単体透過率を測定した。
【0084】
(7)偏光ムラ
長さ1m×幅1mの偏光膜をクロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟んだのちに、表面照度14000lxのライトボックスを用いて、透過モードで光学的な色ムラを観察し、以下の基準で評価する。
(評価基準)
○・・・色ムラなし。
×・・・色ムラあり。
【0085】
<実施例1>
(ポリビニルアルコール系フィルムの製造)
5000lの溶解缶に、重量平均分子量142,000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂1,000kg、水2,500kg、可塑剤としてグリセリン105kg、および界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.25kgを入れ、撹拌しながら150℃まで昇温して加圧溶解を行い、樹脂濃度25%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を得た。
次に該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、2軸押出機に供給して脱泡した後、水溶液温度を95℃にし、T型スリットダイ吐出口よりキャストドラムに、吐出速度1.25m/分で流延して製膜した。使用したキャストドラムの表面には、表1の通り、マイクロクラックが6本存在していた。
【0086】
次いで、得られたフィルムを、熱ロールで乾燥後、フローティングドライヤーを用いて熱処理を行なった。最後に、フィルムの両端部をスリットで切り落とし、巻き取ることによりロール状のポリビニルアルコール系フィルム(厚さ30μm、幅5m、長さ4km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性を表1に示す。
【0087】
(偏光膜の製造)
得られたポリビニルアルコール系フィルムを、水温25℃の水槽に浸漬しながら1.7倍に一軸延伸した。次に、ヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる28℃の水溶液中に浸漬しながら1.6倍に一軸延伸した。次に、ホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる55℃の水溶液に浸漬しながら2.1倍に一軸延伸した。最後に、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄を行い、乾燥して総延伸倍率5.8倍の偏光膜を得た。得られた偏光膜の偏光特性を表2に示す。
【0088】
<実施例2>
マイクロクラックが11本存在するキャストドラムを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム、及び偏光膜を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性を表1、偏光膜の特性を表2に示す。
【0089】
<実施例3>
マイクロクラックが28本存在するキャストドラムを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム、及び偏光膜を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性を表1、偏光膜の特性を表2に示す。
【0090】
<比較例1>
マイクロクラックが2本しか存在しないキャストドラムを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルムを製造したが、剥離不良により長さ0.1kmしか製造できず、偏光膜の製造は不可能であった。
【0091】
<比較例2>
マイクロクラックが40本存在するキャストドラムを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム、及び偏光膜を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性を表1、偏光膜の特性を表2に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
実施例1〜3のポリビニルアルコール系フィルムは線状突起数を1〜10本の範囲内で含むものであるのに対し、比較例1のポリビニルアルコール系フィルムは下限値以下の0本、比較例2のポリビニルアルコール系フィルムは上限値以上の18本含むものである。
そして、実施例1〜3のポリビニルアルコール系フィルムから得られる偏光膜の偏光特性は優れるものであるのに対し、比較例1は偏光膜が製造できない結果となり、比較例2の偏光膜は偏光性能に劣るものであることがわかる。
【0095】
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。