(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子機器の高性能化が急速に進展し、益々軽量化、薄型化の傾向にあり、これに伴い電子機器に用いられる部品やそれらを実装する基板に対しても、高性能化への対応要求が高まっている。ディスプレイやタッチパネル用途などにおいては、表示パネルの基材としてガラス基板が用いられているが、さらに薄型化、軽量化、フレキシブル化、ロールトゥロール(Roll−to−Roll)プロセスによる加工コストの低減を図るために、樹脂基板材料が開発されている。しかし、樹脂は、一般にガラスと比較して、表面硬度、寸法安定性、透明性、耐熱性等に劣るため、種々の検討がなされている。
【0003】
ディスプレイ用途としては、テレビのような大型ディスプレイや、携帯電話、パソコン、スマートフォンなどの小型ディスプレイが挙げられ、例えば、有機EL装置において薄膜トランジスタ(TFT)等の各種素子を搭載する支持基板用途として、ガラス材料が使用されている。また、タッチパネル用途、ディスプレイ表示面を保護するカバーシート(ディスプレイ前面板ともいう。)用途においても、ガラス材料が使用されている。
これらのガラス材料を代替できる樹脂材料の要請が強く、その場合、熱膨張係数(CTE)も低いことが求められ、例えば45ppm/K以下であることが、反りの発生防止等の観点から望まれている。特に、カバーシートとして使用する場合、硬い材料であることが求められ、例えば、弾性率が5GPa以上であることが、キズの付き難さ、耐衝撃性及び表面硬度の観点から望まれている。
【0004】
こうした樹脂材料として、ポリイミドは、耐熱性、寸法安定性、透明性、耐屈曲性、耐衝撃性及び表面硬度に優れることから有望な材料の一つである。
【0005】
近年、薄型ポリイミドフィルムを得るために、ガラス基板を支持基材とし、一旦この支持基材上にポリイミドフィルムを形成し、次いで電子部品を実装後、ポリイミドフィルムを支持基材としてのガラス基板から剥離することも提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1は、キャリア基板から剥離して製造するフレキシブルデバイス基板形成用のポリイミド前駆体樹脂組成物であって、ガラス転移温度が300℃以上、熱膨張係数(CTE)が20ppm/K以下であるものを開示する。しかし、透明性等についての検討はなされていない。
【0007】
特許文献2は、特定構造のポリイミド前駆体溶液を無機基板上に流延し、乾燥およびイミド化して得られるポリイミドフィルムと無機基板とからなる積層体であって、光透過率が高く、アウトガスが少ないものを開示する。しかし、ポリイミドのCTEは、45ppm/Kを超えるため、形状安定性に劣る。
【0008】
特許文献3は、無色透明で、低CTEのポリイミドフィルムを製造するために、ジアミン由来構造と、テトラカルボン酸二無水物由来構造を特定し、特定の脂環式テトラカルボン酸二無水物に由来するアミド結合のイミド化率が10〜100%であるポリイミド前駆体及び樹脂組成物を開示する。
【0009】
特許文献4は、ジアミン化合物及び三個以上のアミノ基を含む化合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させ、かつ分子末端に熱硬化性架橋基を有するポリアミック酸をイミド化させて得られるポリイミド樹脂を提案する。
しかし、これらのポリイミド樹脂を前面板用途へ適用することは開示されておらず、また、高い弾性率を得るための樹脂組成等の制御方法を開示されていない。
【0010】
特許文献5は、ポリイミド系樹脂又はその前駆体に平均粒径0.05μm以上、1μm以下の微粒子を含有させたポリマー溶液を開示し、これを用いて微粒子含有層を有する透明性、耐熱性、機械強度が良好な透明ポリイミド系フィルムを開示する。しかし、微粒子の含有により、耐衝撃性や表面硬度等の機械強度は向上する一方で、フィルムとしての耐屈曲性が悪化する恐れがある。耐屈曲性が十分でない場合、支持基材上にポリイミドフィルムを形成し、支持基材から剥離してポリイミドフィルムを得る際に、フィルムが破損する等の問題が起こり得る。また、フレキシブルディスプレイとして使用する場合は、数万回以上の耐折り曲げが要求される。
【0011】
特許文献6は、透明性と表面硬度とを両立させるために、脂環式酸無水物である1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の使用を提案する。しかし、この酸無水物は光学異性体が存在するため、工業的に利用する場合、製品ごとに特性が安定しないという問題がある。
【0012】
従って、特にディスプレイ用前面板においてガラス材料に代替でき、寸法安定性、透明性、耐熱性、耐衝撃性、鉛筆硬度に優れ、かつ支持基材から容易に剥離して薄型ポリイミドフィルムを得ることができるポリイミド樹脂材料は存在していないのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のポリイミド及びその前駆体は、ジアミンに由来する構造単位と酸二無水物に由来する構造単位を有するポリイミド前駆体であって、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(TFMB)に由来する構造単位(A1)と、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)に由来する構造単位(D2)とを有する。
そして、全酸二無水物に由来の構造単位(D)中に、上記CBDAに由来する構造単位(D2)を50モル%以上含み、全ジアミンに由来する構造単位(A)中にTFMBに由来する構造単位(A1)を10モル%以上含む。
【0023】
周知のようにジアミンに由来する構造単位と酸二無水物に由来する構造単位を有するポリイミド前駆体及びポリイミドは、下記一般式(11)及び(12)で表すことができる。
[−OCX(COOH)
2CO−HN−Y−NH−] (11)
[−N(OC)
2X(CO)
2N−Y−] (12)
ここで、Xは酸二無水物に由来の構造単位に対応し、Yはジアミンに由来する構造単位に対応する。
【0024】
本発明のポリイミド及びその前駆体は、TFMBに由来する構造単位(A1)を、全ジアミン由来の構造単位(A)中の10モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上含む。この範囲であれば、本発明のポリイミドが光透過率に優れたものとなり、フレキシブル耐熱透明樹脂材料としての透明性が向上するので好ましい。
【0025】
本発明のポリイミド及びその前駆体は、CBDAに由来する構造単位(D1)を、全テトラカルボン酸二無水物由来の構造単位(D)中、50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上含む。この範囲であれば、本発明のポリイミドは、フレキシブル耐熱透明樹脂材料としての透明性に優れたものとなる。また、CTEが低いため、フレキシブル耐熱透明樹脂材料としての寸法安定性に優れ、反りを抑制できる。また、弾性率が高く、フレキシブル耐熱透明樹脂材料としての耐衝撃性や表面硬度等の機械強度が向上するので好ましい。
【0026】
本発明のポリイミド前駆体における構造単位(D1)及び構造単位(A1)は、下記式(5)から理解される。構造単位(D1)及び構造単位(A1)は、アミド結合で連結してポリマーとなる。
【0028】
本発明のポリイミドにおける構造単位(D1)及び構造単位(A1)は、下記式(6)から理解される。構造単位(D1)及び構造単位(A1)は、イミド結合で連結してポリマーとなる。
【化6】
【0029】
本発明のポリイミド及びその前駆体は、上記式(5)又は式(6)で表される構造単位を、好ましくは50〜97モル%、より好ましくは70〜97モル%含むことが望ましい。
【0030】
更に、本発明のポリイミド及びその前駆体は、上記構造単位(D1)及び構造単位(A1)に加えて、他の構造単位(D2)及び構造単位(A2)を含むことができる。
上記他の構造単位(D2)は、CBDA以外の酸二無水物に由来する構造単位であり、全酸二無水物に由来する構造単位(D)中に50モル%以下含むことが好ましい。
上記構造単位(A2)は、TFMB以外のジアミンに由来する構造単位であり、全ジアミンに由来する構造単位(A)中に60モル%以下含むことが好ましい。
この範囲であれば、本発明のポリイミドは、高い透明性及び低いCTEを保ったまま、弾性率を高くすることができるので好ましい。
上記構造単位(D2)及び構造単位(A2)の種類及び存在量を選択することにより本発明のポリイミドの光透過率を更に高くすることができ、CTEを更に低くすることができるという効果がある。
【0031】
TFMB以外のジアミンに由来する構造単位(A2)は、構造単位(A)の好ましくは1〜50モル%、より好ましくは1〜30モル%、さらに好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは1〜15モル%である。また、CBDA以外の酸二無水物に由来する構造単位(D2)は、構造単位(D)の好ましくは1〜30モル%、より好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは1〜15モル%である。
構造単位(A2)の好ましい態様として、上記構造単位(A3)があり、この構造単位(A3)は構造単位(A)の3〜60モル%含むことが好ましい。
構造単位(D2)の好ましい態様として、上記構造単位(D3)があり、この構造単位(D3)は構造単位(D)の3〜50モル%含むことが好ましい。
【0032】
TFMB以外のジアミンに由来する構造単位(A2)は、H
2N−Ar
1−N
2Hによって表される化合物に由来する構造単位である。Ar
1は、好ましくは、下記式(7)によって表される芳香族ジアミン残基が例示される。これは、上記一般式(11)、(12)におけるYに対応する。
【化7】
【0033】
これらの芳香族ジアミン残基の中でも、より好ましくは、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(m−TB)、5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾイミダゾール(AAPBZI)又は5-アミノ-2-(4-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(AAPBZO)の残基、すなわち、上記式7-7、7-4、7-2で表わされる残基である。
【0034】
CBDA以外の酸二無水物に由来する構造単位は、下記式(8)で表される化合物に由来する構造単位である。
【化8】
【0035】
Ar
2は、好ましくは下記式(9)によって表される酸二無水物残基が例示される。これらは、上記一般式(11)、(12)におけるXに対応する。
【化9】
【0036】
これらの酸二無水物残基の中でも、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリット酸無水物(PMDA)、又は2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)の残基、すなわち上記式9-3、9-1、9-4で表わされる残基が好ましく、BPDAの残基がより好ましい。
【0037】
なお、構造単位の説明において、ジアミンに由来する構造単位や酸二無水物に由来する構造単位等の用語を使用しているが、これは便宜上であって、ポリイミド前駆体やポリイミドの上記一般式(11)、(12)に示すような構造単位を与えるものであればよく、原料や製造条件に限定されるものではない。具体的には、ポリイミド前駆体やポリイミドの上記一般式において、酸二無水物に由来する構造単位はXであり、ジアミンに由来する構造単位はYであると解され、原料又は製造法を意味すると解されるべきではない。そして、本発明のポリイミドとその前駆体の構造単位とその割合は、ジアミンと酸二無水物の種類と使用割合によって定まるので、構造単位の説明はジアミンと酸二無水物により説明することができる。ジアミンと酸二無水物の使用割合は、それぞれに由来する構造単位の存在割合とする。例えば、全酸二無水物におけるCBDAの使用割合(モル%)が、全酸二無水物に由来する構造単位におけるCBDAに由来する構造単位の含有量(モル%)となる。全ジアミンに由来する構造単位におけるTFMBに由来する構造単位の含有量(モル%)等についても同様である。
【0038】
本発明のポリイミドとその前駆体は、一般的な製法として知られている酸二無水物とジアミンとの反応により、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸又はポリアミド酸とも呼ばれる)を得て、これを脱水、閉環反応によりポリイミドとする方法を用いることができる。
【0039】
CBDAと併用可能な酸二無水物としては、上述したものが挙げられるが、寸法安定性、透明性、耐熱性、耐衝撃性、鉛筆硬度等を改良させるために、更に別の公知の酸二無水物を併用することもできる。かかる酸二無水物は、例えば、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-テトラクロロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3'',4,4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'',3,3''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3'',4''-p-テルフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3.4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ペリレン-2,3,8,9-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-4,5,10,11-テトラカルボン酸二無水物、ペリレン-5,6,11,12-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,7,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,6,7-テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン-1,2,9,10-テトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピロリジン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ジ(ヘプタフルオロプロピル)ピロメリット酸二無水物、ペンタフルオロエチルピロメリット酸二無水物、ビス{3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ}ピロメリット酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシビフェニル二無水物、2,2',5,5'-テトラキス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシビフェニル二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、5,5'-ビス(トリフルオロメチル)-3,3',4,4'-テトラカルボキシベンゾフェノン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ベンゼン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}、トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)トリフルオロメチルベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン二無水物、2,2-ビス{(4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル}ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物、ビス{(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ}ジフェニルエーテル二無水物、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル二無水物などが挙げられる。
【0040】
TFMBと併用可能なジアミンとしては、上述したものが挙げられるが、寸法安定性、透明性、耐熱性、耐衝撃性、鉛筆硬度等を改良させるために、更に別の公知の酸二無水物を併用することもできる。かかるジアミンは、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノメシチレン、4,4'-メチレンジ-o-トルイジン、4,4'-メチレンジ-2,6-キシリジン、4,4'-メチレン-2, 6-ジエチルアニリン、2,4-トルエンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエタン、3,3'-ジアミノジフェニルエタン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン4,4'-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ジアミノビフェニル、3,3' -ジアミノビフェニル、3,3' -ジメチル- 4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシ-4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノ-p-テルフェニル、3,3'-ジアミノ-p-テルフェニル、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,4-ビス(β-アミノ-t-ブチル)トルエン、2,4-ジアミノトルエン、m-キシレン-2,5-ジアミン、p-キシレン-2,5-ジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,6-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノピリジン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、ピペラジンなどが挙げられる。
【0041】
本発明のポリイミド前駆体は、公知の方法で製造される。例えば、ジアミンと酸二無水物とのモル比を0.9:1〜1.1:1の(実質的に等モル)で使用し、有機極性溶媒中で重合し、製造することができる。具体的には、窒素雰囲気中、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの非プロトン性アミド系溶媒にジアミンを溶解させた後、酸二無水物を加えて、室温で3〜20時間程度反応させることにより得られる。この際、分子末端は芳香族モノアミン又は芳香族モノカルボン酸無水物で封止してもよい。溶媒としては、DMAc、NMP以外には、ジメチルホルムアミド、2-ブタノン、ジグライム、キシレン、γ-ブチルラクトン等が挙げられ、これらを2種以上併用することもできる。
【0042】
本発明のポリイミドは、上記ポリイミド前駆体をイミド化して得られる。イミド化は、熱イミド化法又は化学イミド化法により行うことができる。熱イミド化は、ガラス、金属、樹脂(ポリイミドフィルム等)など任意の支持基材上に、ポリイミド前駆体を、アプリケーターを用いて塗布し、130℃以下の温度で3〜60分予備乾燥した後、溶剤除去及びイミド化のために通常室温〜360℃程度の温度で30分〜24時間程度熱処理することにより行われる。化学イミド化は、ポリイミド前駆体溶液に脱水剤と触媒を加え、30〜60℃で化学的に脱水反応を行う。代表的な脱水剤としては無水酢酸が、触媒としてはピリジンが例示される。熱イミド化は、酸二無水物やジアミンの種類、溶剤の種類の組み合わせを選択すれば、イミド化が比較的短時間で完了し、予備加熱を含め熱処理は60分間以内で行うことも可能である。また、熱イミド化と化学イミド化の併用も可能である。ポリイミド前駆体を塗布する際、ポリイミド前駆体を公知の溶媒に溶解させたポリイミド前駆体溶液として、塗布してもよい。なお、支持基材の厚みは、例えば0.02〜1.0mm程度のものを使用するとよい。
【0043】
本発明のポリイミド及びその前駆体の好ましい重合度は、ポリイミド前駆体溶液のE型粘度計による測定する粘度として1,000〜40,000cPであり、好ましくは 3,000〜5,000cPの範囲にあることがよい。また、ポリイミド前駆体の分子量はGPC法によって求めることができる。ポリイミド前駆体の好ましい分子量範囲(ポリスチレン換算)は、数平均分子量(Mn)で15,000〜250,000、重量平均分子量(Mw)で30,000〜800,000、好ましくは50,000〜300,000の範囲であることが望ましいが、これらは目安であり、この範囲外のポリイミドすべてが使用できないというわけではない。なお、ポリイミドの分子量も、その前駆体の分子量と同等の範囲にある。
【0044】
本発明のポリイミド前駆体からは、上記に従って、ジアミンに由来する構造単位と酸二無水物に由来する構造単位を制御することで、薄いポリイミド層(フィルム)を支持基材上に形成でき、寸法安定性、透明性、耐熱性、耐衝撃性、鉛筆硬度に優れ、かつ、支持基材から容易に剥離できる、厚さが200μm以下の薄型ポリイミドフィルムを得ることができる。本発明のポリイミドフィルムの厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下であり、10μm以上の厚みであることが好ましい。なお、ディスプレイ前面板用の場合は、30〜110μmの範囲において好適に適用でき、30〜80μmの範囲においてより好適に適用できる。
【0045】
本発明のポリイミド前駆体からは、上記に従って、ジアミンに由来する構造単位と酸二無水物に由来する構造単位を制御することで、薄いポリイミド層(フィルム)を支持基材上に形成でき、寸法安定性、透明性、耐熱性、耐衝撃性、鉛筆硬度に優れ、かつ、支持基材から容易に剥離できる、厚さが200μm以下の薄型ポリイミドフィルムを得ることができる。厚みは、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下のポリイミドフィルムにも適用できる。
【0046】
本発明のポリイミドの各種物性は、具体的には、引張弾性率が5GPa以上であり、光透過率が430nmにおいて80%以上であり、YIが4以下である。上記数値は、好ましくは10〜20μm、特に12μmの厚みにおいて、測定されたものである。
また、本発明のポリイミドフィルムは、好ましくは10〜100μm厚みであり、この厚みにおいて、上記数値を満足する。
【0047】
さらに、原料の配合組成や反応条件等を調整することによって、上記の範囲において、ジアミンに由来する構造単位と酸二無水物に由来する構造単位、更には分子量等を制御することで、本発明のポリイミド又は本発明のポリイミドフィルムを、好ましくは引張弾性率を6.0GPa以上、より好ましくは引張弾性率を6.5GPa以上にすることができる。また、光透過率を430nmにおいて好ましくは83%以上、さらに85%以上にすることができる。また、YIを好ましくは3以下、さらに2以下にすることができる。また、フィルムとしたときの面内のCTEを好ましくは30ppm/K以下、さらに27ppm/K以下にすることができる。
【0048】
本発明のポリイミドフィルムが、ポリイミドフィルム又はポリイミドフィルム上に機能層が設けられた機能層付きポリイミドフィルムとして使用される場合は、上記光透過率は、別段の断りがない限り、そのフィルムについて測定した値である。また、CTEは、別段の断りがない限り、250℃から100℃まで変化させたときの線膨張係数である。これらの物性の詳細な測定条件は実施例に記載の方法に従う。上記CTEは、面内のCTEであり、これは厚み方向ではなく、面方向のCTEを意味する。
【0049】
本発明のポリイミド(本発明のポリイミドフィルムを含む。)は、ガラスのCTE(10ppm/K以下)との差が大きくないことから、ガラスを支持基材にした場合において形状安定性に優れる。例えば、ディスプレイ前面板、ボトムエミッション構造又はトップエミッション構造を有する有機EL装置用TFT基板、タッチパネル基板、カラーフィルター等における機能層積層等のフレキシブルデバイスの製造時に、基板の反りを抑制でき、フレキシブルデバイスの製造歩留まりに優れる。
【0050】
本発明のポリイミドは、不可視光領域の光線を吸収し、可視光領域の透過率を高めることができる。この範囲であれば、可視光領域の透明性を保持しながら、308nmレーザー光(エキシマレーザー)を吸収することができる。その結果、ディスプレイ前面板、有機EL装置用基板、タッチパネル基板、カラーフィルター基板等のフレキシブル基板を、レーザー照射することにより、ポリイミド層(フィルム)をガラスから剥離させることができる。
【0051】
本発明のポリイミドは、YIが4以下であるので、ディスプレイ前面板、有機EL装置用TFT基板、タッチパネル基板、カラーフィルター基板等の透明性や無色であることを要求される基板に好適に使用できる。
【0052】
本発明のポリイミドは、耐熱性の観点からは、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは380℃以上であり、熱分解温度(Td1、1%重量減温度)が、好ましくは350℃以上、より好ましくは380℃以上である。
【0053】
本発明のポリイミドは、本発明のポリイミド前駆体を脱水、閉環してイミド化されたものであるから、構造単位の配列は同様に維持される。また、本発明のポリイミド前駆体は、これをポリイミドとしたときの光透過率、及び熱膨張係数等の特性が上記を満足し、共通する。
【0054】
本発明のポリイミドから得られる本発明のポリイミドフィルムは、ディスプレイ前面板、薄型ディスプレイ、タッチパネル用途などにおいて、既存材料であるガラス材料を代替し、寸法安定性、透明性、耐熱性、耐衝撃性、鉛筆硬度等の要求特性を満足する実用的なフレキシブル耐熱透明樹脂材料として好適に利用できる。すなわち、ポリイミドフィルムを基板材料として用い、その表面上に、さまざまな機能を有する素子等の機能層を形成することができる。例示すると、液晶表示装置、有機EL表示装置、タッチパネル、電子ペーパーなどの主要表示装置だけでなく、それに関連する構成部品、例えば薄膜トランジスタ(TFT)、カラーフィルター、導電性フィルム、ガスバリアフィルム、フレキシブル回路基板、接着フィルムなども形成可能である。
【0055】
この場合、ポリイミドフィルムは、単層だけでなく、複数層のポリイミドからなるようにしてもよい。
【0056】
機能層の形成方法は、目的とするデバイスに応じて、適宜、形成条件が設定される。例えば、薄型ディスプレイ、タッチパネル用途では、一般的には金属膜、無機膜、有機膜等をポリイミドフィルム上に成膜した後、必要に応じて所定の形状にパターニングしたり、熱処理したりするなど、公知の方法を用いて得ることができる。すなわち、これら表示素子を形成するための手段については、特に制限されず、例えば、スパッタリング、蒸着、CVD、印刷、露光、浸漬など、適宜選択されたものであり、必要な場合には真空チャンバー内などでこれらのプロセス処理を行うようにしてもよい。そして、ポリイミドフィルム上に機能層を形成した後、支持基材と機能層付ポリイミドフィルムとを分離するのは、各種プロセス処理を経て機能層を形成した直後であってもよく、又はある程度の期間を経過させて支持基材と一体にしておき、例えば表示装置として利用する直前に分離して取り除くようにしてもよい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0058】
実施例等に用いた原材料とその略号を以下に示す。
ジアミン・TFMB:前掲
・m−TB:前掲
・DAPE:4,4'-ジアミノジフェニルエーテル
・AAPBZI:前掲
・AAPBZO:前掲
・CBDA:前掲
・BPDA:前掲
・6FDA:前掲
溶剤
・NMP:前掲
【0059】
実施例等における各物性の測定方法及び評価方法を以下に示す。[光透過率及び黄色度(YI)]
ポリイミドフィルム(50mm×50mm、厚み10〜18μm)をSHIMADZU UV−3600分光光度計にて、430nmにおける光透過率(T430)を求めた。
また、下記の計算式に基づいてYI(黄色度)を算出した。
YI=100×(1.2879X−1.0592Z)/Y
X, Y, Zは試験片の三刺激値、JIS Z 8722に規定する。
【0060】
[熱膨張係数(CTE)]
3mm×15mmのサイズのポリイミドフィルムを、熱機械分析(TMA)装置にて5.0gの荷重を加えながら一定の昇温速度(10℃/min)で30℃から280℃まで昇温し、次いで、250℃から100℃まで降温し、降温時におけるポリイミドフィルムの伸び量(線膨張)から熱膨張係数を測定した。
【0061】
[引っ張り弾性率E´(GPa)]
テンションテスターを用い、幅12.4mm、長さ160mmのポリイミドフィルムを10kgの荷重を加えながら50mm/minで引っ張り試験を行った。
【0062】
実施例1
窒素雰囲気中、100mlのセパラブルフラスコの中に、5.22gのTFMBを、85gのNMPに溶解させた。10分間撹拌してから、3.45gのm−TBを加えた。次いで、この溶液に、6.34gのCBDAを加えた。その後、この溶液を室温で24時間攪拌を続けて重合反応を行い、高重合度(Mw8万以上、粘度3,000cP以上)のポリイミド前駆体A(粘稠な無色溶液)を得た。
【0063】
実施例2〜8、比較例1〜4
原料としてのジアミンと酸二無水物を、表1及び表2に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイミド前駆体を調製し、前駆体B〜Lを得た。
【0064】
表1及び表2において、ジアミン及び酸二無水物の量の単位はgであり、括弧内の数値は、ジアミン成分又は酸二無水物成分中のモル%を示す。なお、NMPについては、全実施例及び比較例で同量(85g)使用した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
実施例9
実施例1で得られたポリイミド前駆体溶液Aに、NMPを加えて、粘度が4000cPになるように希釈した上で、75μmのポリイミド基材(Upilex−S)の上に、硬化後のポリイミド厚みが約15μmになるように塗工した。続いて、100℃で15分間加熱を行った。そして、窒素雰囲気中で、一定の昇温速度(3℃/min)で室温から300℃まで昇温させ、途中130℃で10min保持し、ポリイミド積層体Aを得た。その後、ポリイミド基材を剥離し、ポリイミドフィルムAを得た。上記剥離は、形成されたポリイミド層だけを、カッターで切り口を作って、ピンセットで基材から剥離することによって行った。
【0068】
実施例10〜16
ポリイミド前駆体を、ポリイミド前駆体B〜Hとした他は、実施例9と同様にして、ポリイミド積層体B〜H及びポリイミドフィルムB〜Hを得た。
【0069】
比較例1〜3
ポリイミド前駆体を、ポリイミドI〜Kとし、大気中で、一定の昇温速度(3℃/min)で室温から360℃まで昇温させた他は、実施例9と同様にして、ポリイミド積層体I〜K及びポリイミドフィルムI〜Kを得た。
【0070】
比較例4
ポリイミド前駆体を、ポリイミドLとし、大気中で、一定の昇温速度(4℃/min)で室温から360℃まで昇温させた他は、は、実施例9と同様にして、ポリイミド積層体L及びポリイミドフィルムLを得た。
【0071】
得られたポリイミドフィルムA〜Lについて、膜厚、弾性率、YI、430nmにおける光透過率(T430)、CTEを測定した。結果を表3と表4に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】