(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物を保持する保持テーブルと、スピンドルと該スピンドルに装着されて該保持テーブルで保持された被加工物を研削する研削ホイールとを含む研削手段と、を備えた研削装置であって、
該研削ホイールは、砥粒をボンド剤で結合した研削砥石を有し、
該保持テーブルで保持された被加工物を該研削手段で研削する際に少なくとも該研削砥石に研削水を供給する研削水供給手段と、
該保持テーブルに隣接して配設され、該保持テーブルで保持された被加工物を研削する該研削砥石の研削面に光を照射する光照射手段と、を備え、
該光照射手段は、該光を発光する発光部と、該発光部を囲繞し該光の拡散を防止する拡散防止壁と、を有し、該研削ホイールの回転軌跡上で該研削砥石の研削面に対面して配置され、該拡散防止壁には、該研削ホイールが進入する入口部と該研削ホイールが退出する出口部とが形成されている研削装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウエーハが、窒化ガリウム(GaN)、シリコンカーバイド(SiC)またはガリウムヒ素(GaAs)等の難削材で形成されている場合には、研削ホイールの研削砥石の磨耗量が激しく生産コストが嵩むという問題がある。また、金属で形成されたウエーハまたは金属電極が部分的にウエーハの被研削面に露出したウエーハを研削する場合は、金属の延性によって研削が困難となるという問題がある。
【0005】
よって、難削材で形成されたウエーハまたは金属を含むウエーハを研削する場合においては、研削砥石の過度な摩耗を抑えるとともに円滑に研削できるようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、被加工物を保持する保持テーブルと、スピンドルと該スピンドルに装着されて該保持テーブルで保持された被加工物を研削する研削ホイールとを含む研削手段と、を備えた研削装置であって、該研削ホイールは、砥粒をボンド剤で結合した研削砥石を有し、該保持テーブルで保持された被加工物を該研削手段で研削する際に少なくとも該研削砥石に研削水を供給する研削水供給手段と、該保持テーブルに隣接して配設され、該保持テーブルで保持された被加工物を研削する該研削砥石の研削面に光を照射する光照射手段と、を備え、該光照射手段は、該光を発光する発光部と、該発光部を囲繞し該光の拡散を防止する拡散防止壁と、を有
し、該研削ホイールの回転軌跡上で該研削砥石の研削面に対面して配置され、該拡散防止壁には、該研削ホイールが進入する入口部と該研削ホイールが退出する出口部とが形成されている研削装置である。
【0008】
前記研削砥石は、前記砥粒と光触媒粒とを前記ボンド剤で結合しており、該光照射手段は該光触媒粒を励起させる該光を照射するものとすると好ましい。
【0009】
前記ボンド剤はビトリファイドボンドであると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る研削装置は、研削ホイールは、砥粒をボンド剤で結合した研削砥石を有し、保持テーブルで保持された被加工物を研削手段で研削する際に少なくとも研削砥石に研削水を供給する研削水供給手段と、保持テーブルに隣接して配設され、保持テーブルで保持された被加工物を研削する研削砥石の研削面に光を照射する光照射手段と、を備え、光照射手段は、光を発光する発光部と、発光部を囲繞し光の拡散を防止する拡散防止壁と、を有
し、研削ホイールの回転軌跡上で研削砥石の研削面に対面して配置され、拡散防止壁には、研削ホイールが進入する入口部と研削ホイールが退出する出口部とが形成されているため、研削加工中において、発光部が生み出す光を拡散防止壁によって拡散させずに研削砥石の研削面に対する光の照射効率を向上させ、被加工物に切り込む研削砥石を効率よく親水化等することで研削水による冷却効果を向上させて研削砥石の磨耗を抑えるとともに、研削屑の排出性を向上させることが可能となる。更に、研削砥石の親水化等によって、研削砥石が被加工物を研削する加工領域に効果的に研削水が供給されるため、加工熱による加工品質の悪化を防止でき、被加工物が難削材で形成されたウエーハであっても円滑に研削することが可能となる。
【0011】
また、研削砥石を、砥粒と光触媒粒とをボンド剤で結合し、光照射手段は光触媒粒を励起させる光を照射するものとすることで、供給した研削水にヒドロキシラジカルによる酸化力を発現させることができる。よって、例えば被加工物が難削材で形成されたウエーハであっても、生成させたヒドロキシラジカルの強い酸化力によって被加工物の被研削面を酸化させて脆弱化させながら研削を行うことができ、被加工物を円滑に研削することが可能となる。同様に被加工物が金属で形成されたウエーハまたは金属電極が部分的にウエーハの被研削面に露出したウエーハであっても、ヒドロキシラジカルの強い酸化力によって金属を酸化させて脆弱化させながら研削を行うことができるため、被加工物を円滑に研削することが可能となる。
【0012】
研削砥石のボンド剤をビトリファイドボンドとすることで、光の照射による研削砥石の親水化等をより高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示す研削装置1は、保持テーブル30上に保持された被加工物Wを研削ホイール74を備える研削手段7によって研削する装置である。研削装置1のベース10上の前方側(−Y方向側)は、保持テーブル30に対して被加工物Wの着脱が行われる領域である着脱領域Aとなっており、ベース10上の後方は、研削手段7により被加工物Wの研削が行われる領域である研削領域Bとなっている。ベース10上の前方側には、オペレータが研削装置1に対して加工条件等を入力するための入力手段12が配設されている。
【0015】
保持テーブル30は、例えば、その外形が円形状であり、被加工物Wを吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。吸着部300は図示しない吸引源に連通し、吸着部300の露出面である保持面300a上で被加工物Wを吸引保持する。保持テーブル30の保持面300aは、保持テーブル30の回転中心を頂点とする極めて緩やか傾斜を備える円錐面に形成されている。保持テーブル30は、カバー31によって周囲から囲まれており、Z軸方向の軸心周りに回転可能であると共に、カバー31及びカバー31に連結された蛇腹カバー31aの下方に配設された図示しないY軸方向送り手段によって、着脱領域Aと研削領域Bとの間をY軸方向に往復移動可能となっている。
【0016】
研削領域Bには、コラム11が立設されており、コラム11の側面には研削手段7をZ軸方向に研削送りする研削送り手段5が配設されている。研削送り手段5は、Z軸方向の軸心を有するボールネジ50と、ボールネジ50と平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50の上端に連結しボールネジ50を回動させるモータ52と、内部のナットがボールネジ50に螺合し側部がガイドレールに摺接する昇降板53と、昇降板53に連結され研削手段7を保持するホルダ54とから構成され、モータ52がボールネジ50を回動させると、これに伴い昇降板53がガイドレール51にガイドされてZ軸方向に往復移動し、ホルダ54に保持された研削手段7がZ軸方向に研削送りされる。
【0017】
研削手段7は、軸方向がZ軸方向であるスピンドル70と、スピンドル70を回転可能に支持するハウジング71と、スピンドル70を回転駆動するモータ72と、スピンドル70の先端に連結されたマウント73と、マウント73の下面に着脱可能に装着された研削ホイール74とを備える。
【0018】
図2に示す研削ホイール74は、環状のホイール基台74bと、ホイール基台74bの底面(自由端部)に環状に配設された複数の略直方体形状の研削砥石74aとから構成される。また、ホイール基台74bの上面にはネジ穴74c及び研削水を研削砥石74aに向かって噴射する噴射口74dが設けられている。本実施形態において研削砥石74aは、
図3に示すように、ダイヤモンド砥粒P1と酸化チタン(TiO2)粒等の光触媒粒P2とを混在させ、ガラス質、セラミック質のボンド剤であるビトリファイドボンドB1で結合したものである。研削ホイール74は、
図1に示すネジ73aをマウント73に設けられた穴に通してホイール基台74bのネジ穴74cに螺合させることにより、マウント73の下面に装着される。
研削砥石74aの形状は、一体の環状を形成しているものでもよく、また、光触媒粒P2は、酸化スズ粒、酸化亜鉛粒、又は酸化セリウム粒等であってもよい。なお、研削砥石74aは、光触媒粒P2を含まないものであってもよく、ボンド剤としてビトリファイドボンド以外のボンド剤を用いたものであってもよい。
【0019】
研削ホイール74の製造方法は、例えば以下のとおりである。まず、ビトリファイドボンドB1に対して、粒径♯1000のダイヤモンド砥粒P1を混入し、さらに光触媒粒P2を混入した後攪拌して混在させる。ビトリファイドボンドB1としては、例えば、二酸化珪素(SiO2)を主成分とし、融点を制御するために微量の添加剤を加えてもよい。次いで、この混合物を所定の温度で加熱し、さらにプレスして略直方体状に成型する。その後、更に高温で数時間焼結させることで、研削砥石74aを製造する。研削砥石74a中の光触媒粒P2の含有量は例えば15重量%である。そして、製造した研削砥石74aをホイール基台74bの底面に環状に複数配設し固着することで、研削ホイール74を製造する。なお、ダイヤモンド砥粒P1の粒径は、本実施形態における例に限定されるものではなく、光触媒粒P2の種類及び含有量等によって適宜変更可能である。
【0020】
図1に示すスピンドル70の内部には、研削砥石74aに対して研削水を供給する研削水供給手段8に連通し研削水の通り道となる流路70aが、スピンドル70の軸方向(Z軸方向)に貫通して設けられており、流路70aを通過した研削水は、マウント73を通り、ホイール基台74bから研削砥石74aに向かって噴出できるようになっている。
【0021】
研削水供給手段8は、水(例えば、純水)を蓄えた研削水源80と、研削水源80に接続され流路70aに連通する配管81と、配管81上の任意の位置に配設され研削水の供給量を調整する調整バルブ82とを備え、少なくとも研削砥石74aに対して研削水を供給する。
【0022】
研削装置1は、
図1、4に示すように、保持テーブル30に隣接して配設され、保持テーブル30で保持された被加工物Wを研削する研削砥石74aの研削面(下面)に光を照射する光照射手段9を備えている。
図4に示すように、光照射手段9は、例えば、略円弧状の外形を有する台部90と、台部90の上面に複数(図示の例においては4つ)並ぶように配設された発光部91と、発光部91に向かって洗浄水(例えば、純水)を供給する洗浄水供給部92と、発光部91に汚れが付着してしまうことを防ぐカバー93と、発光部91を囲繞し光の拡散を防止する拡散防止壁94とを備えている。
【0023】
例えば台部90の上面に形成された窪みに埋設されている発光部91は、LED照明であり所定波長の光を発光することができ、図示しない電源によってオン/オフを切り替えることができる。なお、本実施形態のように研削砥石74aに含まれる光触媒粒P2が酸化チタン粒である場合には、発光部91が生み出す光(紫外光)の波長は、例えば201nm以上400nm以下であると好ましく、201nm以上365nm以下であるとより好ましい。
なお、研削砥石74aが光触媒粒P2を含まないものである場合には、発光部91は2波長の光を発光できる2波長LEDや低圧水銀ランプであると好ましく、80nm以上200nm以下の波長(例えば、波長185nm)の光と240nm以上280nm以下の波長(例えば、波長254nm)の光とを発光できるとより好ましい。もちろん、研削砥石74aが光触媒粒P2を含まないものである場合に201nm以上365nm以下の光を照射してもよい。
【0024】
板状のカバー93は、例えば、ガラス等の透明部材から構成されており、台部90の上面に発光部91を覆うように固定されている。例えば、台部90は、上下動可能となっており、研削加工を実施する際にカバー93の上面の高さ位置を研削砥石74aの研削送り位置を考慮した所望の高さ位置に設定することができる。
【0025】
洗浄水供給部92は、例えば、水を蓄えた図示しない洗浄水源と、洗浄水源に連通する洗浄水ノズル920とを備えている。洗浄水ノズル920は、例えば、台部90の側面に台部90に沿うように固定されており、洗浄水を発光部91を覆うカバー93に向かって噴射する細幅のスリット状の噴射口920aが複数長手方向に整列して設けられている。噴射口920aは、噴射した洗浄水をカバー93の上面で整流化できるように形状、サイズ、及び発光部91に対する角度等が設定されている。
【0026】
発光部91を囲繞する拡散防止壁94は、例えば、外側板940及び内側板941とを備えており、外側板940及び内側板941は、SUS等の金属板を台部90の外形に合わせて曲成して形成されたものであり、台部90の側面にそれぞれ固定されている。外側板940及び内側板941には図示しない排水口が形成されており、洗浄水ノズル920から噴射されカバー93の上面を洗浄した洗浄水は、カバー93の上面から流下した後にこの排水口から拡散防止壁94外部に排出される。拡散防止壁94には、研削ホイール74が進入する入口部94aと研削ホイール74が退出する出口部94bとが形成されている。入口部94a及び出口部94bは、少なくとも研削砥石74aが通過できる程度の大きさに形成されている。
図4においては、外側板940及び内側板941の内側面は滑らかな曲面となっているが、これに限定されるものではなく、外側板940及び内側板941は所定の角度を設けて折り曲げられて形成されており、その内側面が多面体状になっていてもよい。
【0027】
以下に、
図1に示す研削装置1を用いて被加工物Wを研削する場合の、研削装置1の動作について説明する。
図1に示す外形が円形板状の被加工物Wは、例えば、難削材のSiCで形成される半導体ウエーハであり、
図1において下側を向いている被加工物Wの表面Waには、分割予定ラインによって区画された格子状の領域に多数のデバイスが形成されており、表面Waを保護する保護テープTが貼着されている。被加工物Wの裏面Wbは研削ホイール74で研削される被研削面となる。なお、被加工物Wの形状及び種類は特に限定されるものではなく、研削ホイール74との関係で適宜変更可能であり、GaASまたはGaN等で形成されるウエーハや、金属で形成されたウエーハまたは金属電極が部分的にウエーハの裏面に露出したウエーハも含まれる。
【0028】
まず、着脱領域A内において、被加工物Wが、裏面Wbが上側になるように保持テーブル30の保持面300a上に載置される。そして、図示しない吸引源により生み出される吸引力が保持面300aに伝達されることにより、保持テーブル30が保持面300a上で被加工物Wを吸引保持する。被加工物Wは、緩やかな円錐面である保持面300aにならって吸引保持された状態になる。
【0029】
保持テーブル30が、図示しないY軸方向送り手段によって研削手段7の下まで+Y方向へ移動して、研削ホイール74と保持テーブル30に保持された被加工物Wとの位置合わせがなされる。位置合わせは、例えば、研削ホイール74の回転中心が被加工物Wの回転中心に対して所定の距離だけ+Y方向にずれ、研削砥石74aの回転軌跡が被加工物Wの回転中心を通るように行われる。また、緩やかな円錐面である保持面300aが、研削砥石74aの下面である研削面に対して平行になるように保持テーブル30の傾きが調整されることで、被加工物Wの裏面Wbが研削砥石74aの研削面に対して平行になる。
【0030】
研削ホイール74と被加工物Wとの位置合わせが行われた後、モータ72によりスピンドル70が回転駆動されるのに伴って、
図5に示すように、研削ホイール74が、+Z方向側からみて反時計周り方向に回転する。また、研削手段7が研削送り手段5により−Z方向へと送られ、研削ホイール74が−Z方向へと降下していき、研削砥石74aが被加工物Wの裏面Wbに当接することで研削加工が行われる。さらに、研削中は、保持テーブル30が+Z方向側からみて反時計周り方向に回転するのに伴って被加工物Wも回転するので、研削砥石74aが被加工物Wの裏面Wbの全面の研削加工を行う。
【0031】
研削加工中においては、研削水供給手段8が研削水をスピンドル70中の流路70aに対して供給する。
図5に示すように、流路70aに供給された研削水は、マウント73の内部にマウント73の周方向に一定の間隔をおいて形成された流路73bを通り、さらにホイール基台74bの噴射口74dから研削砥石74aに向かって噴射される。
【0032】
被加工物Wは保持テーブル30の緩やかな円錐面である保持面300a上に保持面300aにならって吸引保持されているため、
図6(A)に二点鎖線で示す研削ホイール74の回転軌跡中の領域E(以下、加工領域Eとする。)において、研削砥石74aは被加工物Wに当接し研削を行う。
【0033】
保持テーブル30に隣接して配設される光照射手段9は、例えば、研削ホイール74と保持テーブル30との位置合わせがなされた状態において、
図6(A)に示すように加工領域Eに研削砥石74aが進入する直前に配置され、かつ、
図6(B)に示すように、光照射手段9は、研削ホイール74の回転軌跡上で研削砥石74aの研削面(下面)に対面して配置される。研削加工の開始に伴って、発光部91がオン状態となり、発光部91が例えば波長365nm程度の光(紫外光)を発光する。そして、回転する研削ホイール74の研削砥石74aが、入口部94aから拡散防止壁94内に進入すると、発光部91が生み出す光が、カバー93を透過して拡散防止壁94内において研削砥石74aの研削面に照射される。拡散防止壁94が発光部91が生み出す光が拡散してしまうことを防ぎ、拡散防止壁94内の上方を通過する研削砥石74aの研削面に光が集光されるため、研削砥石74aの研削面に対する光の照射効率が従来よりも良くなる。
【0034】
光の照射によって、研削砥石74a中に混在する光触媒粒P2が励起される、即ち、光触媒粒P2の価電子帯の電子が励起され、電子及び正孔の2つのキャリアが生じる。研削砥石74aに混在する光触媒粒P2に生じた正孔は、光触媒粒P2の表面に接触した研削水を酸化し、酸化力の高いヒドロキシラジカルを生成する。そのため、出口部94bから退出する研削砥石74aの研削面と接触した研削水には、少なくとも被加工物Wの裏面Wb上でヒドロキシラジカルによる酸化力が与えられる。
【0035】
SiCで形成された被加工物Wが、生成したヒドロキシラジカルにより酸化され脆弱化するので、被加工物Wを研削ホイール74で容易に研削することが可能となる。また、生じたヒドロキシラジカルの存在時間は非常に短いため、研削水による被加工物Wの裏面Wb以外の酸化は生じない。また、噴射された研削水は、研削砥石74aと被加工物Wの裏面Wbとの接触部位を冷却しかつ被加工物Wの裏面Wbに生じた研削屑を除去も行う。
なお、例えば、被加工物Wが金属で形成されたウエーハまたは金属電極が部分的にウエーハの裏面に露出したウエーハであっても、ヒドロキシラジカルの強い酸化力によって金属を酸化させて脆弱化させながら研削を行うことができるため、被加工物を円滑に研削することが可能となる。
【0036】
また、ボンド剤としてビトリファイドボンドB1が用いられている研削砥石74aの研削面は、例えば、光の照射によって極性の大きな親水基が形成されることで親水性が向上し、研削砥石74aの研削面において研削水が水滴になりにくくなり、研削砥石74aの研削面全体に研削水が水膜状に広がりやすくなる。そのため、親水化した研削砥石74aは、多くの研削水を伴って加工領域E内へと進入し被加工物Wの裏面Wbを研削する。研削水が被加工物Wの裏面Wbと研削砥石74aの研削面との接触部位により多く入り込むことで、接触部位に発生する摩擦熱の発生が抑制される。そのため、研削砥石74aの過度な磨耗が抑えられると共に、研削屑の排出性を向上させることが可能となる。更に、研削砥石74aの親水化によって、研削砥石74aが被加工物Wを研削する加工領域Eに効果的に研削水が供給されるため、加工熱による加工品質の悪化が防止できる。
【0037】
なお、研削砥石74aが光触媒粒P2を含まないものである場合においては、発光部91は、例えば波長185nmの紫外光と波長254nmの紫外光とを研削砥石74aに向かって照射してもよい。研削砥石74aの研削面に対して波長185nmの紫外光が照射されることで、研削砥石74aの下面と発光部91との間に存在する空気中の酸素分子が紫外光を吸収し、基底状態の酸素原子を生成する。生成された酸素原子は周囲の酸素分子と結合してオゾンを生成する。さらに、発生したオゾンが波長254nmの紫外光を吸収することで、励起状態の活性酸素が生成される。活性酸素やオゾンは高い酸化力を有するため、研削砥石74aの研削面に生じた炭素や水素等と結合して、極性の大きな親水基を研削砥石74aの研削面に形成していき、結果研削砥石74aが親水化される。
【0038】
また、
図7に示すように、研削加工中においては、洗浄水供給部92が洗浄水を発光部91上のカバー93に対して供給する。すなわち、洗浄水ノズル920からカバー93上に噴射された洗浄水が、流れが適度に整流化されつつカバー93上に付着している研削屑等の汚れを除去していくことで、研削中において発光部91が生み出す光が常時研削砥石74aの加工面に適切に照射される。カバー93上から流下した洗浄水は、図示しない排水口から拡散防止壁94の外部に排出される。
【0039】
研削加工について得られた実験結果の一例としては、SiCで形成された被加工物Wを50μm研削するのに、従来の研削装置では110秒掛かっていたが、本発明に係る研削装置1は90秒で済み、研削時間の短縮を図ることができた。また、被加工物WのSi面の研削において、研削量を100とした場合に従来の研削装置では研削砥石の全体の83%が磨耗したが、本発明に係る研削装置1では、研削量を100とした場合に研削砥石74aの磨耗は全体の57%で済んだ。さらに、被加工物WのC面の研削において、研削量を100とした場合に従来の研削装置では研削砥石の全体の60%が磨耗したが、本発明に係る研削装置1では、研削量を100とした場合に研削砥石74aの磨耗は全体の39%で済んだ。
【符号の説明】
【0040】
1:研削装置 10:ベース 11:コラム 12:入力手段
30:保持テーブル 300:吸着部 300a:保持面 301:枠体
31:カバー 31a:蛇腹カバー
5:研削送り手段 50:ボールネジ 51:ガイドレール 52:モータ 53:昇降板 54:ホルダ
7:研削手段 70:スピンドル 70a:流路 71:ハウジング 72:モータ 73:マウント 73a:ネジ 74:研削ホイール 74a:研削砥石 74b:ホイール基台 74c:ネジ穴
8:研削水供給手段 80:研削水源 81:配管 82:調整バルブ
9:光照射手段 90:台部 91:発光部 92:洗浄水供給部 93:カバー
94:拡散防止壁 940:外側板 941:内側板 94a:入口部 94b:出口部
P1:ダイヤモンド砥粒 P2:光触媒粒 B1:ビトリファイドボンド
W:被加工物 Wa:被加工物の表面 Wb:被加工物の裏面 T:保護テープ
A:着脱領域 B:研削領域