特許第6976124号(P6976124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6976124ヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造及びヘッドマウントディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6976124
(24)【登録日】2021年11月11日
(45)【発行日】2021年12月8日
(54)【発明の名称】ヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造及びヘッドマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/64 20060101AFI20211125BHJP
【FI】
   H04N5/64 511A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-191283(P2017-191283)
(22)【出願日】2017年9月29日
(65)【公開番号】特開2019-68235(P2019-68235A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【弁理士】
【氏名又は名称】江川 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100189991
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 通子
(72)【発明者】
【氏名】横山 公輔
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 道憲
【審査官】 大室 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/082023(WO,A1)
【文献】 特許第3547652(JP,B2)
【文献】 中国実用新案第205608298(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/00−11/14
A62B7/00−33/00
G02B27/00−27/64
G06F 3/01
G06F 3/048−3/0489
G06T 1/00
G06T11/60−13/80
G06T17/05
G06T19/00−19/20
H04N 5/64−5/655
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドマウントディスプレイに用いられる顔当てパッド構造であって、
前記ヘッドマウントディスプレイは、使用者が覗き込む少なくとも1つのレンズが配されたレンズユニットと、前記レンズユニットと前記使用者の顔面との間に配される顔当てパッドとを備え、
前記顔当てパッドは、
フレーム状部材と、前記フレーム状部材に積層一体化されて顔面に当接する、繊度2dtex以下の極細繊維を含む絡合不織布,または前記絡合不織布の空隙に高分子弾性体を付与した人工皮革である表装材と、を備え、
記顔当てパッドが、前記レンズユニットに脱着自在に固定されていることを特徴とするヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造。
【請求項2】
前記レンズユニットを取り囲む外周縁を前記フレーム状部材の内周縁に嵌め込むことにより脱着自在に固定されている請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造。
【請求項3】
前記外周縁に沿って形成された第1の嵌合部に、前記内周縁に沿って形成された第2の嵌合部を嵌合させる嵌合構造を有する請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造。
【請求項4】
前記フレーム状部材が弾性体である請求項1〜3の何れか1項に記載のヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造を備えるヘッドマウントディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造及びヘッドマウントディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の眼を覆うように顔に当てられて使用されるヘッドマウントディスプレイが知られている。
【0003】
ヘッドマウントディスプレイは、箱形状の筐体内に、映像や画像を表示するディスプレイ(像表示部)及びそれを制御するプロセッサを含む表示制御部や両眼に対向させて配置される接眼レンズを収容し、ゴーグルのように使用者の頭部に装着して接眼レンズから像表示部に表示される像を覗かせるように、顔面に当てられて使用される。使用者は接眼レンズを通して、像表示部に表示される再生される像を視認する。
【0004】
ヘッドマウントディスプレイは、鮮明な画像を使用者に提示するために、像表示部を配置する筐体内、及び、ヘッドマウントディスプレイと顔との間に形成される空間に外部の光が侵入しないように視界を外部から遮る必要がある。ヘッドマウントディスプレイには、顔面との間に形成される空間に外部の光が侵入しないように、使用者が覗き込む接眼レンズが配されたレンズユニットに、使用者の目を取り囲む顔当てパッドが配される。
【0005】
ヘッドマウントディスプレイの筐体内には、像表示部とともに、像の表示を制御するための表示制御部が収容される。表示制御部は再生装置から送信される像データを高速で処理するときに発熱する。そのために、像表示部や表示制御部から発せられる熱や体温による熱が使用者の顔面からの発汗を促し、顔当てパッドが汚れたり汗を吸収したりして使用者に不快感を与えることが問題となっていた。
【0006】
このような不快感を与えることを解消するために、次のような技術が知られている。例えば、下記特許文献1は、ヘッドマウントディスプレイの肌に密着する部分に装着する使い捨てカバーを提案する。また、下記特許文献2は、被検者の顔面に装着固定するゴーグルの装着面に着脱可能なゴーグル装着部交換シートであって、被検者の両眼各々の外周縁に当接する眼部外周縁当接部と被検者の鼻梁及びその両側部に当接する鼻当接部を一体に備えたゴーグル装着部交換シートを開示する。また、ゴーグルの装着面は、スポンジが貼着されたものであるとともに、ゴーグル装着部交換シート本体のゴーグルとの当接面側は不織布からなるものであることを開示する。さらに、下記特許文献3は、ヘッドマウントディスプレイの使用者の両眼の外周縁に当接する不織布で構成されている眼部外周縁当接部と、使用者の頸部から上の頭部に装着するための装着部を有するゴーグル汚損防止シートを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017−153053号公報
【特許文献2】特開2005−70554 号公報
【特許文献3】特開2016−170431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜3に開示されたような不織布を用いた交換用シートは、ヘッドマウントディスプレイの一部である顔当てパッドを覆うことにより、顔当てパッドに顔面が直接触れないようにする使い捨てられるシートである。しかし、顔当てパッドを交換用シートで覆っても、交換用シートを通過した汗が顔当てパッドに付着したり、顔当てパッドが汚れたりすることがあった。従来の顔当てパッドはヘッドマウントディスプレイの本体に交換できないように固定されていたために、清浄化された予備の顔当てパッドに交換したり、使用済みの顔当てパッドを清浄化したりすることが簡便にはできなかった。
【0009】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイに装着される顔当てパッドを交換できる顔当てパッド構造及びその構造を含むヘッドマウントディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面は、ヘッドマウントディスプレイに用いられる顔当てパッド構造であって、ヘッドマウントディスプレイは、使用者が覗き込む少なくとも1つのレンズが配されたレンズユニットと、レンズユニットと使用者の顔面との間に配される顔当てパッドとを備え、顔当てパッドが、レンズユニットに脱着自在に固定されているヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造である。このような構成によれば、顔当てパッドがヘッドマウントディスプレイのレンズユニットから脱着自在であるために、顔当てパッドが交換できる。それにより、顔当てパッドを予備の清浄化されたものに交換したり、使用済みのものを清浄化したりして使用することができる。
【0011】
また、顔当てパッドは、顔面に当接する表装材と、表装材を支持するフレーム状部材とを備え、フレーム状部材がレンズユニットに脱着自在に固定されていることが、脱着を容易にする構造を採用しやすい点から好ましい。具体的には、例えば、レンズユニットを取り囲む外周縁をフレーム状部材の内周縁に嵌め込むことにより脱着自在に固定されているような構造が挙げられる。さらに具体的には、外周縁に沿って形成された線状の凹部等の第1の嵌合部に、内周縁に沿って形成された前記線状の凹部に対応する線状の凸部等の第2の嵌合部を嵌合させる嵌合構造を有すること、さらには、フレーム状部材がゴムまたは熱可塑性エラストマーのような弾性体であることが、脱着が容易になる点から好ましい。また、フレーム状部材が弾性体である場合には、それ自身が弾力性を有するために顔面との接触性に優れ、また、洗濯による洗浄も可能になる顔当てパッドが得られる。
【0012】
また、表装材は布帛または皮革様シートを含むことが、意匠性と快適性に優れる点から好ましい。また、弾性体のフレーム状部材と組み合わせた場合には、表装材とフレーム状部材とをインモールド成形等を用いて一体成形できるために生産性にも優れる。
【0013】
また、本発明の一局面は、上記何れかのヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造を備えるヘッドマウントディスプレイである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、顔当てパッドを交換できるヘッドマウントディスプレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、顔当てパッド3を備えるヘッドマウントディスプレイ10の斜視模式図であり、(a)は顔当てパッド3を取り外したとき、(b)は顔当てパッド3を装着したときの様子を示す模式図である。
図2図2は、ヘッドマウントディスプレイ10を再生装置20に接続してなるヘッドマウントディスプレイシステム100のブロック図である。
図3図3は、ヘッドマウントディスプレイ10を使用者Uに装着させ、使用するときのヘッドマウントディスプレイシステム100の全体構成を示す説明図である。
図4図4は、顔当てパッド3をレンズユニット2に脱着するときの様子を説明する説明図である。
図5図5は、顔当てパッド3をレンズユニット2に装着するときの模式断面図である。
図6図6は、ヘッドマウントディスプレイ10を装着したときに使用者Uの顔面に顔当てパッド3が当接する様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
はじめに、本発明に係るヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造を備えるヘッドマウントディスプレイの一実施形態の全体構成を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の顔当てパッド3を備えるヘッドマウントディスプレイ10の斜視模式図であり、(a)はヘッドマウントディスプレイ10から顔当てパッド3を取り外したときの様子を示し、(b)はヘッドマウントディスプレイ10に顔当てパッド3を装着したときの様子を示す模式図である。また、図2は、ヘッドマウントディスプレイ10を再生装置20に接続してなるヘッドマウントディスプレイシステム100のブロック図である。また、図3は、ヘッドマウントディスプレイ10を使用者Uに装着させ、使用するときのヘッドマウントディスプレイシステム100の全体構成を示す説明図である。
【0018】
図1中、1は筐体、2aはレンズユニット本体、2b,2cはレンズ装着凹部、2dは鼻あて部、3は顔当てパッド、4aは右目用接眼レンズ、4bは左目用接眼レンズ、5は固定ベルトである。固定ベルト5は、使用者Uの頭部にヘッドマウントディスプレイ10を固定するためのベルト5a及び長さ調節するためのサイズ調節具5bを備える。レンズユニット2は、使用者が覗き込む右目用接眼レンズ4a及び左目用接眼レンズ4bをレンズユニット本体2aのレンズ装着凹部2b,2cに配して形成されている。図1(a)及び図1(b)に示すように、顔当てパッド3は、レンズユニット2に脱着自在に装着される。
【0019】
図2は、ヘッドマウントディスプレイ10に像データを送信する再生装置20を接続したヘッドマウントディスプレイシステム100のブロック図である。ヘッドマウントディスプレイシステム100は、ヘッドマウントディスプレイ10と、再生装置20と、ヘッドマウントディスプレイ10に電力を供給するバッテリーユニット15と、を備える。
【0020】
ヘッドマウントディスプレイ10においては、筐体1内に、使用者の右目に像を提示するための右目用像表示部6a、左目に像を提示するための左目用像表示部6b、像表示のための表示制御部7、像信号入力端子8を収容し、使用者が覗き込む面に右目用接眼レンズ4a及び左目用接眼レンズ4bを備えたレンズユニット2が配されている。以下、右目用像表示部6aと左目用像表示部6bとをまとめて像表示部6とも称する。
【0021】
右目用像表示部6a及び左目用像表示部6bは、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示素子であり、ハーフミラーを備えたものであってもよい。また、表示制御部7は、再生装置20から送信された像データを受信し、その像データに基づき、右目用像表示部6a及び左目用像表示部6bのそれぞれに再生された像の出力を実行するプログラム及びプロセッサ等を含む処理装置である。像信号入力端子8はHDMI(High-Definition Multimedia Interface:登録商標)端子等であり、対応する端子を有する信号を伝送するための伝送ケーブル12が接続される。また、ヘッドマウントディスプレイ10は、給電ケーブル11で接続されたバッテリーユニット15から給電される。
【0022】
再生装置20は、ヘッドマウントディスプレイ10に送信する像データを記憶する記憶部21と、像データの記憶部21への格納,格納された像データの再生,ヘッドマウントディスプレイ10への信号の送信を制御する再生制御部22、HDMIケーブル等の伝送ケーブル12を接続するHDMI端子等の像信号出力端子23とを備える。再生装置20としては、例えば、HDDレコーダー、スマートフォン等のモバイル機器、パソコン等が用いられる。ヘッドマウントディスプレイ10は、再生装置20に伝送ケーブル12で接続され、再生装置20が送信する信号を適宜受信する。ヘッドマウントディスプレイ10は再生装置20に伝送ケーブル12により有線接続されているが、有線接続の代わりに無線接続されていてもよい。
【0023】
再生装置20により再生され、伝送ケーブル12で送信された再生データは、ヘッドマウントディスプレイ10の像信号入力端子8を経て表示制御部7に入力される。詳しくは、表示制御部7は、再生装置20から送信された再生データの信号を、右目用像表示部6aまたは左目用像表示部6bに表示するために像情報に変換する。また、表示制御部7は、右目用像表示部6a及び左目用像表示部6bに表示する像に視差を与える処理を行うことにより、使用者に3D画像として視認されるようにデータ変換することもある。表示制御部7は、生成させた右目用または左目用の像情報を右目用像表示部6aまたは左目用像表示部6bにそれぞれ出力させる。そして、右目用像表示部6a及び左目用像表示部6bはそれぞれ入力された像情報に基づいて画像や映像を表示する。ヘッドマウントディスプレイ10を装着した使用者Uは、右目用接眼レンズ4aを通して右目用像表示部6aに表示された像を視認し,左目用接眼レンズ4bを通して左目用像表示部6bに表示された像を視認する。右目用像表示部6a及び左目用像表示部6bは、非透過型でも透過型でもよい。なお、右目用像表示部6aまたは左目用像表示部6bは、それぞれ右目用接眼レンズ4aまたは左目用接眼レンズ4bに対応して像を表示するものであれば、一体化されたディスプレイであってもよい。
【0024】
ヘッドマウントディスプレイ10は、図3に示すように、右目用接眼レンズ4a,左目用接眼レンズ4bを使用者Uの右目または左目でそれぞれ覗き込ませるように、レンズユニット2に固定された顔当てパッド3を使用者Uの顔面に当接させ、使用者Uの頭部に固定ベルト5で固定して装着される。顔当てパッド3を装着したレンズユニット2は、使用者Uの両目の視界をその周囲から遮蔽し、顔面と右目用接眼レンズ4a,左目用接眼レンズ4bとの間に空間を形成する。ヘッドマウントディスプレイにおいては、像表示部6に表示される像を視認させやすくするために、顔当てパッド3が、顔面の表面に形成される空間に外光を侵入させないように光遮蔽空間を形成させる。
【0025】
右目用接眼レンズ4a及び左目用接眼レンズ4bは、ヘッドマウントディスプレイ10を使用者に装着させたときに、それぞれ使用者の右目及び左目に対向するように配置される。また、右目用接眼レンズ4a及び左目用接眼レンズ4bは、それぞれ、右目用像表示部6a及び左目用像表示部6bに対向するように配置される。また、右目用接眼レンズ4a及び左目用接眼レンズ4bのそれぞれは、右目または左目のそれぞれの視界を制限すべく、筐体1に向けて突出するレンズユニット本体2aに設けられたカップ状のレンズ装着凹部2b,2cの底部にそれぞれ配されており、装着時に使用者の右目または左目のそれぞれの視界を制限するように配されている。このように各要素を配置することにより、使用者に右目で右目用接眼レンズ4aを通して右目用像表示部6aに表示される像を視認させ、左目で左目用接眼レンズ4bを通して左目用像表示部6bに表示される像を視認させる。
【0026】
次に、本発明に係るヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造の実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。
【0027】
図4は、顔当てパッド3をレンズユニット2に脱着するときの様子を説明する説明図である。また、図5は、顔当てパッド3をレンズユニット2に装着するときの模式断面図である。また、図6は、ヘッドマウントディスプレイ10を装着したときに使用者Uの顔面に顔当てパッド3が当接する様子を説明する説明図である。
【0028】
図4において、(a)はレンズユニット2から顔当てパッド3を取り外した状態、(b)はレンズユニット2に顔当てパッド3を装着したときの状態を示す。図4に示すように、顔当てパッド3は、レンズユニット2の外周縁Pに顔当てパッド3を嵌め込むようにして、脱着自在に装着されて、顔当てパッド構造9を形成している。
【0029】
図5(a)はレンズユニット2から顔当てパッド3を取り外した状態、図5(b)はレンズユニット2に顔当てパッド3を装着した顔当てパッド構造9を示す。図5(a)に示すように、顔当てパッド3は、使用者Uの顔面に当接する表装材3aと、表装材3aを支持するフレーム状部材3bとが一体化されて形成されている。詳しくは、顔当てパッド3は、使用者の顔面の目の周囲に当接する表装材3aと、表装材3aに一体化されたフレーム状部材3b、とを備える。そして、顔当てパッド3のフレーム状部材3bは、その内周縁Iに沿って形成された断面が凸部である線状の第2の嵌合部Cを有する。また、レンズユニット2は、それを取り囲む外周縁Pに沿って断面が凹部である線状の第1の嵌合部Gを有する。そして、図5(b)に示すように、レンズユニット2の外周縁Pに沿って形成された第1の嵌合部Gに、顔当てパッド3のフレーム状部材3bの内周縁Iに沿って形成された第2の嵌合部Gを嵌合させることにより、顔当てパッド3がレンズユニット2に装着される。
【0030】
顔当てパッド3は、装着時に使用者に発汗による不快感を与えないように、肌触りのよい素材、さらに好ましくは吸水性を有する素材からなる表装材3aを有し、また、表装材3aが顔面に密着するように弾力性を有する。このような弾力性を保持させるために、フレーム状部材3bは、ゴムまたは熱可塑性エラストマーのような弾性体、好ましくは軟質の弾性体であることが、顔に対して密着性がよく、また、外周縁Pにフレーム状部材3bを嵌合させてレンズユニット2に顔当てパッド3を弾力性により脱着させやすい点から好ましい。
【0031】
レンズユニット2を形成する素材としては、従来からヘッドマウントディスプレイのレンズユニットに用いられている素材がとくに限定なく用いられる。その具体例としては、例えば、ポリカーボネート,ポリエステル系樹脂,ポリオレフィン系樹脂,ポリアミド系樹脂等の硬質樹脂や、マグネシウム合金,アルミニウム,ステンレス鋼等の金属が挙げられる。
【0032】
また、フレーム状部材3bを形成する素材としては、エラストマーまたはゴム等の弾性体が好ましく用いられる。このような弾性体の具体例としては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)系熱可塑性エラストマー,スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;シリコーン,フルオロシリコーンなどのシリコーン系エラストマー;ポリウレタン;ポリイソプレン,ポリブタジエン,ポリイソブチレン等のオレフィン系弾性体;ポリオキシエチレン−ポリウレタン系共重合エラストマーや、ポリウレタン−ポリスチレン−ポリエチレン系共重合エラストマー;アクリロニトリル−ブタジエンゴム,アクリルゴム,フッ素ゴム,シリコーンゴム,天然ゴム等のゴム、が挙げられる。また、これらの2種類以上を組み合わせた複合材であってもよい。さらに、フレーム状部材3bには、種々の表面改質処理が施されていてもよい。弾性体は、発泡構造を有することが快適性にとくに優れる点から好ましい。
【0033】
また、表装材3aとしては、使用者に発汗による不快感を与えないような、肌触りのよいシート素材がとくに限定なく用いられる。このようなシート素材の具体例としては、例えば、絡合不織布,抄紙不織布,織布,織物,編物等の布帛や、これらの布帛の空隙にポリウレタン等の高分子弾性体を付与した人工皮革や合成皮革のような皮革様素材が挙げられる。これらの中では、とくに、絡合不織布、または絡合不織布にポリウレタン等の高分子弾性体を付与した人工皮革等の皮革様素材、とくには、極細繊維の絡合不織布、または、極細繊維の絡合不織布を含む皮革様素材が意匠性に優れ、また、吸水したときの速乾性に優れるために快適性にも優れる点から好ましい。
【0034】
顔当てパッド3の製造は、フレーム状部材3bの表面に表装材3aを積層一体化できる限り特に限定されない。フレーム状部材3bの表面に表装材3aを一体化する方法としては、フレーム状部材3bの表面に表装材3aを接着剤で貼りあわせて接着する方法や、金型内に表装材3aを収容し、射出成形することにより成形される射出成形体であるフレーム状部材3bに表装材3aを一体化するインモールド成形する方法が挙げられる。これらの中では、インモールド成形する方法が生産性に優れる点から特に好ましい。
【0035】
インモールド成形によりフレーム状部材3bの表面に表装材3aを一体化させた顔当てパッド3を製造する場合、表装材3aとしては、極細繊維の絡合不織布、または、極細繊維の絡合不織布を含む皮革様素材を用いることが成形性に優れる点から好ましい。
【0036】
極細繊維の絡合不織布の繊維を形成する熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルや、ポリアミド6,ポリアミド66等のポリアミド;ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン等が挙げられる。また、極細繊維の絡合不織布を形成する繊維の繊度は、繊度2dtex以下、さらには、0.001〜1dtex、とくには0.01〜0.6dtexであることが好ましい。繊度が高すぎる場合には、緻密な不織布が得られるにくくなり、吸水したときの速乾性が低下する傾向がある。
【0037】
繊維の繊維長は特に限定されず、紡糸後に繊維長が3〜80mm程度になるように意図的に切断された短繊維であるステープルであっても、80mm以上の適度な長さに切断されたフィラメントであっても、紡糸後に意図的にカットしない連続繊維であってもよい。これらの中では、繊維密度の高い不織布が得られる点から連続繊維がとくに好ましい。連続繊維の繊維長は、技術的に製造可能であり、かつ、製造工程において不可避的に切断されない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の繊維長であってもよい。なお、絡合時のニードルパンチや、表面のバフィングにより、製造工程において不可避的に長繊維の一部が切断されて短繊維になることもある。
【0038】
絡合不織布の空隙にポリウレタン等の高分子弾性体を付与することにより人工皮革等の皮革様素材が得られる。高分子弾性体の種類は特に限定されない。その具体例としては、例えば、ポリウレタン、アクリル系弾性体、ポリウレタンアクリル複合弾性体、ポリ塩化ビニル、合成ゴム等が挙げられる。これらの中では、ポリウレタンが接着性や機械特性が優れる点から好ましい。高分子弾性体の含有割合としては、極細繊維との合計量に対して、5〜50質量%、さらには、12〜40質量%、とくには8〜30%であることが風合いを損なわずに充分な耐摩耗性や機械的強度を付与できる点から好ましい。
【0039】
皮革様素材は、意匠性の点から着色剤で着色されていることが好ましい。皮革様素材に着色剤を含有させる方法は特に限定されない。例えば、繊維を溶融紡糸する際繊維中に顔料を配合したり、無着色の繊維を染料で染色したり、高分子弾性体を顔料や染料で着色したり、インクジェットプリントにより表面をインクで印刷してもよい。また、これらを組み合わせて着色してもよい。これらの中では、遮光性に優れる点及び堅牢度が高い点から顔料で着色する方法がとくに好ましい。顔料の具体例としては、例えば、カーボンブラックや、フタロシアニン系,アントラキノン系,キナクドリン系,ジオキサジン系,ペリレン系,チオインジゴ系,アゾ系等の有機顔料や、酸化チタン,べんがら,クロムレッド,モリブデンレッド,リサージ,酸化鉄等の無機顔料が挙げられる。また、染料は堅牢性の観点から適宜選択されるが、絡合不織布を形成する繊維がポリエステル繊維である場合には、カチオン可染性ポリエステル繊維を用い、カチオン染料で染色することが堅牢性に優れる点から好ましい。
【0040】
以上、本発明に係るヘッドマウントディスプレイ用顔当てパッド構造及びヘッドマウントディスプレイの一実施形態を説明したが、具体的な構成については、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 筐体
2 レンズユニット
2a レンズユニット本体
2b,2c レンズ装着凹部
2d 鼻当て部
3 顔当てパッド
3a 表装材
3b フレーム状部材
4a 右目用接眼レンズ
4b 左目用接眼レンズ
5 固定ベルト
5a ベルト
5b サイズ調節具
6 像表示部
6a 右目用像表示部
6b 左目用像表示部
7 表示制御部
8 像信号入力端子
9 顔当てパッド構造
10 ヘッドマウントディスプレイ
11 給電ケーブル
12 伝送ケーブル
15 バッテリーユニット
20 再生装置
21 記憶部
22 再生制御部
23 像信号出力端子
100 ヘッドマウントディスプレイシステム
C、G 嵌合部
I 内周縁
P 外周縁
U 使用者
図1
図2
図3
図4
図5
図6