(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する基板処理方法および基板処理装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1に示すように、実施形態に係る基板処理装置1は、キャリア搬入出部2と、ロット形成部3と、ロット載置部4と、ロット搬送部5と、ロット処理部6と、制御部100とを有する。
図1は、基板処理装置1の概略平面図である。ここでは、水平方向に直交する方向を上下方向として説明する。
【0011】
キャリア搬入出部2は、複数枚(例えば、25枚)の基板(シリコンウエハ)8を水平姿勢で上下に並べて収容したキャリア9の搬入、および搬出を行う。
【0012】
キャリア搬入出部2には、複数個のキャリア9を載置するキャリアステージ10と、キャリア9の搬送を行うキャリア搬送機構11と、キャリア9を一時的に保管するキャリアストック12,13と、キャリア9を載置するキャリア載置台14とが設けられている。
【0013】
キャリア搬入出部2は、外部からキャリアステージ10に搬入されたキャリア9を、キャリア搬送機構11を用いてキャリアストック12や、キャリア載置台14に搬送する。すなわち、キャリア搬入出部2は、ロット処理部6で処理する前の複数枚の基板8を収容するキャリア9を、キャリアストック12や、キャリア載置台14に搬送する。
【0014】
キャリアストック12は、ロット処理部6で処理する前の複数枚の基板8を収容するキャリア9を、一時的に保管する。
【0015】
キャリア載置台14に搬送され、ロット処理部6で処理する前の複数枚の基板8を収容するキャリア9からは、後述する基板搬送機構15によって複数枚の基板8が搬出される。
【0016】
また、キャリア載置台14に載置され、基板8を収容していないキャリア9には、基板搬送機構15から、ロット処理部6で処理した後の複数枚の基板8が搬入される。
【0017】
キャリア搬入出部2は、キャリア載置台14に載置され、ロット処理部6で処理した後の複数枚の基板8を収容するキャリア9を、キャリア搬送機構11を用いてキャリアストック13や、キャリアステージ10に搬送する。
【0018】
キャリアストック13は、ロット処理部6で処理した後の複数枚の基板8を一時的に保管する。キャリアステージ10に搬送されたキャリア9は、外部へ搬出される。
【0019】
ロット形成部3には、複数枚(例えば、25枚)の基板8を搬送する基板搬送機構15が設けられている。ロット形成部3は、基板搬送機構15による複数枚(例えば、25枚)の基板8の搬送を2回行い、複数枚(例えば、50枚)の基板8からなるロットを形成する。
【0020】
ロット形成部3は、基板搬送機構15を用いて、キャリア載置台14に載置されたキャリア9からロット載置部4へ複数枚の基板8を搬送し、複数枚の基板8をロット載置部4に載置することで、ロットを形成する。
【0021】
ロットを形成する複数枚の基板8は、ロット処理部6によって同時に処理される。ロットを形成するときは、複数枚の基板8の表面にパターンが形成されている面を互いに対向するようにロットを形成してもよく、また、複数枚の基板8の表面にパターンが形成されている面がすべて一方を向くようにロットを形成してもよい。
【0022】
また、ロット形成部3は、ロット処理部6で処理が行われ、ロット載置部4に載置されたロットから、基板搬送機構15を用いて複数枚の基板8をキャリア9へ搬送する。
【0023】
基板搬送機構15は、複数枚の基板8を支持するための基板支持部として、処理前の複数枚の基板8を支持する処理前基板支持部(不図示)と、処理後の複数枚の基板8を支持する処理後基板支持部(不図示)の2種類を有している。これにより、処理前の複数枚の基板8等に付着したパーティクル等が処理後の複数枚の基板8等に転着することを防止することができる。
【0024】
基板搬送機構15は、複数枚の基板8の搬送途中で、複数枚の基板8の姿勢を水平姿勢から垂直姿勢、および垂直姿勢から水平姿勢に変更する。
【0025】
ロット載置部4は、ロット搬送部5によってロット形成部3とロット処理部6との間で搬送されるロットをロット載置台16で一時的に載置(待機)する。
【0026】
ロット載置部4には、搬入側ロット載置台17と、搬出側ロット載置台18とが設けられている。
【0027】
搬入側ロット載置台17には、処理前のロットが載置される。搬出側ロット載置台18には、処理後のロットが載置される。
【0028】
搬入側ロット載置台17、および搬出側ロット載置台18には、1ロット分の複数枚の基板8が垂直姿勢で前後に並べて載置される。
【0029】
ロット搬送部5は、ロット載置部4とロット処理部6との間や、ロット処理部6の内部間でロットの搬送を行う。
【0030】
ロット搬送部5には、ロットの搬送を行うロット搬送機構19が設けられている。ロット搬送機構19は、ロット載置部4とロット処理部6とに沿わせて配置したレール20と、ロットを保持しながらレール20に沿って移動する移動体21とを有する。
【0031】
移動体21には、垂直姿勢で前後に並んだ複数枚の基板8で形成されるロットを保持する基板保持体22が設けられている。
【0032】
ロット搬送部5は、搬入側ロット載置台17に載置されたロットをロット搬送機構19の基板保持体22で受取り、受取ったロットをロット処理部6に受け渡す。
【0033】
また、ロット搬送部5は、ロット処理部6で処理されたロットをロット搬送機構19の基板保持体22で受取り、受取ったロットを搬出側ロット載置台18に受け渡す。
【0034】
さらに、ロット搬送部5は、ロット搬送機構19を用いてロット処理部6の内部においてロットの搬送を行う。
【0035】
ロット処理部6は、垂直姿勢で前後に並んだ複数枚の基板8で形成されたロットにエッチングや、洗浄や、乾燥などの処理を行う。
【0036】
ロット処理部6には、ロットにエッチング処理を行う2台のエッチング処理装置23と、ロットの洗浄処理を行う洗浄処理装置24と、基板保持体22の洗浄処理を行う基板保持体洗浄処理装置25と、ロットの乾燥処理を行う乾燥処理装置26とが並べて設けられている。なお、エッチング処理装置23の台数は、2台に限られることはなく、1台でもよく、3台以上であってもよい。
【0037】
エッチング処理装置23は、エッチング用の処理槽27と、リンス用の処理槽28と、基板昇降機構29,30とを有する。
【0038】
エッチング用の処理槽27には、エッチング用の処理液(以下、「エッチング液」という。)が貯留される。リンス用の処理槽28には、リンス用の処理液(純水等)が貯留される。なお、エッチング用の処理槽27の詳細については後述する。
【0039】
基板昇降機構29,30には、ロットを形成する複数枚の基板8が垂直姿勢で前後に並べて保持される。
【0040】
エッチング処理装置23は、ロット搬送機構19の基板保持体22からロットを基板昇降機構29で受取り、受取ったロットを基板昇降機構29で降下させることでロットを処理槽27のエッチング液に浸漬させてエッチング処理を行う。
【0041】
その後、エッチング処理装置23は、基板昇降機構29を上昇させることでロットを処理槽27から取り出し、基板昇降機構29からロット搬送機構19の基板保持体22にロットを受け渡す。
【0042】
そして、ロット搬送機構19の基板保持体22からロットを基板昇降機構30で受取り、受取ったロットを基板昇降機構30で降下させることでロットを処理槽28のリンス用の処理液に浸漬させてリンス処理を行う。
【0043】
その後、エッチング処理装置23は、基板昇降機構30を上昇させることでロットを処理槽28から取り出し、基板昇降機構30からロット搬送機構19の基板保持体22にロットを受け渡す。
【0044】
洗浄処理装置24は、洗浄用の処理槽31と、リンス用の処理槽32と、基板昇降機構33,34とを有する。
【0045】
洗浄用の処理槽31には、洗浄用の処理液(SC−1等)が貯留される。リンス用の処理槽32には、リンス用の処理液(純水等)が貯留される。基板昇降機構33,34には、1ロット分の複数枚の基板8が垂直姿勢で前後に並べて保持される。
【0046】
乾燥処理装置26は、処理槽35と、処理槽35に対して昇降する基板昇降機構36とを有する。
【0047】
処理槽35には、乾燥用の処理ガス(IPA(イソプロピルアルコール)等)が供給される。基板昇降機構36には、1ロット分の複数枚の基板8が垂直姿勢で前後に並べて保持される。
【0048】
乾燥処理装置26は、ロット搬送機構19の基板保持体22からロットを基板昇降機構36で受取り、受取ったロットを基板昇降機構36で降下させて処理槽35に搬入し、処理槽35に供給した乾燥用の処理ガスでロットの乾燥処理を行う。そして、乾燥処理装置26は、基板昇降機構36でロットを上昇させ、基板昇降機構36からロット搬送機構19の基板保持体22に、乾燥処理を行ったロットを受け渡す。
【0049】
基板保持体洗浄処理装置25は、処理槽37を有し、処理槽37に洗浄用の処理液、および乾燥ガスを供給できるようになっており、ロット搬送機構19の基板保持体22に洗浄用の処理液を供給した後、乾燥ガスを供給することで基板保持体22の洗浄処理を行う。
【0050】
次に、エッチング用の処理槽27について、
図2を参照し説明する。
図2は、実施形態に係るエッチング用の処理槽27の構成を示す概略ブロック図である。
【0051】
エッチング用の処理槽27では、エッチング液を用いて、基板8上に形成されたシリコン窒化膜(SiN)とシリコン酸化膜(SiO2)のうち、シリコン窒化膜を選択的にエッチングする。
【0052】
シリコン窒化膜のエッチング処理では、薬液にシリコン(Si)含有化合物(以下、単に「シリコン」と称する場合がある。)を添加してシリコン濃度を調整した溶液が、エッチング液(処理液)として一般的に用いられる。薬液は、例えば、リン酸(H3PO4)水溶液が純水(DIW)によって希釈された液体である。
【0053】
シリコン濃度の調整は、処理槽27内のエッチング液にダミー基板を浸漬させてダミー基板のシリコンをエッチング液に溶解させることで行われる。シリコン濃度の調整は、例えば、実際にエッチング処理を行う基板8と同様のダミー基板(例えば、50枚)を基板昇降機構29によって保持し、内槽44のエッチング液に浸漬することで行われる。
【0054】
エッチング用の処理槽27は、リン酸水溶液供給部40と、リン酸水溶液排出部41と、純水供給部42と、内槽44と、外槽45とを有する。
【0055】
リン酸水溶液供給部40は、リン酸水溶液供給源40Aと、リン酸水溶液供給ライン40Bと、第1流量調整器40Cとを有する。
【0056】
リン酸水溶液供給源40Aは、リン酸水溶液を貯留するタンクである。リン酸水溶液供給ライン40Bは、リン酸水溶液供給源40Aと外槽45とを接続し、リン酸水溶液供給源40Aから外槽45にリン酸水溶液を供給する。
【0057】
第1流量調整器40Cは、リン酸水溶液供給ライン40Bに設けられ、外槽45へ供給されるリン酸水溶液の流量を調整する。第1流量調整器40Cは、開閉弁や、流量制御弁や、流量計などから構成される。
【0058】
純水供給部42は、純水供給源42Aと、純水供給ライン42Bと、第2流量調整器42Cとを有する。純水供給部42は、エッチング液を加熱することにより蒸発した水分を補給するために外槽45に純水(DIW)を供給する。また、純水供給部42は、エッチング液の一部を入れ替える場合や、薬液を補充する場合に、外槽45に純水を供給する。
【0059】
純水供給ライン42Bは、純水供給源42Aと外槽45とを接続し、純水供給源42Aから外槽45に所定温度の純水を供給する。
【0060】
第2流量調整器42Cは、純水供給ライン42Bに設けられ、外槽45へ供給される純水の流量を調整する。第2流量調整器42Cは、開閉弁、流量制御弁、流量計などから構成される。
【0061】
内槽44は、上部が開放され、エッチング液が上部付近まで供給される。内槽44では、基板昇降機構29によってロット(複数枚の基板8)がエッチング液に浸漬され、基板8にエッチング処理が行われる。
【0062】
また、内槽44では、薬液を補充する場合に、ダミー基板がエッチング液に浸漬され、エッチング液におけるシリコン濃度の調整が行われる。
【0063】
外槽45は、内槽44の上部周囲に設けられるとともに上部が開放される。外槽45には、内槽44からオーバーフローしたエッチング液が流入する。また、外槽45には、リン酸水溶液供給部40からリン酸水溶液が供給される。また、外槽45には、純水供給部42から純水が供給される。
【0064】
外槽45に薬液を補充する場合には、補充される薬液におけるリン酸濃度が予め設定された所定リン酸濃度となるように、リン酸水溶液の流量および純水の流量が制御される。
【0065】
外槽45と内槽44とは循環ライン50によって接続される。循環ライン50の一端は、外槽45に接続され、循環ライン50の他端は、内槽44内に設置された処理液供給ノズル49に接続される。
【0066】
循環ライン50には、外槽45側から順に、ポンプ51、ヒーター52およびフィルタ53が設けられる。外槽45内のエッチング液はヒーター52によって加温されて処理液供給ノズル49から内槽44内に流入する。ヒーター52は、内槽44に供給されるエッチング液の温度を調整する。
【0067】
ポンプ51を駆動させることにより、エッチング液は、外槽45から循環ライン50を経て内槽44内に送られる。また、エッチング液は、内槽44からオーバーフローすることで、再び外槽45へと流出する。このようにして、エッチング液の循環路55が形成される。すなわち、循環路55は、外槽45、循環ライン50、内槽44によって形成される。循環路55では、内槽44を基準として外槽45がヒーター52よりも上流側に設けられる。
【0068】
リン酸水溶液排出部41は、エッチング処理で使用されたエッチング液の全部、または一部を入れ替える際にエッチング液を排出する。リン酸水溶液排出部41は、排出ライン41Aと、第3流量調整器41Bと、冷却タンク41Cとを有する。
【0069】
排出ライン41Aは、循環ライン50に接続される。第3流量調整器41Bは、排出ライン41Aに設けられ、排出されるエッチング液の排出量を調整する。第3流量調整器41Bは、開閉弁や、流量制御弁や、流量計などから構成される。冷却タンク41Cは、排出ライン41Aを流れてきたエッチング液を一時的に貯留するとともに冷却する。
【0070】
なお、第1流量調整器40C〜第3流量調整器41Bを構成する開閉弁の開閉や、流量制御弁の開度は、制御部100からの信号に基づいてアクチュエータ(不図示)が動作することで、変更される。すなわち、第1流量調整器40C〜第3流量調整器41Bを構成する開閉弁や、流量制御弁は、制御部100によって制御される。
【0071】
図1に戻り、制御部100は、基板処理装置1の各部(キャリア搬入出部2、ロット形成部3、ロット載置部4、ロット搬送部5、ロット処理部6)の動作を制御する。制御部100は、スイッチなどからの信号に基づいて、基板処理装置1の各部の動作を制御する。
【0072】
制御部100は、例えばコンピュータからなり、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体38を有する。記憶媒体38には、基板処理装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。また、記憶媒体38には、後述するデータが記憶される。
【0073】
制御部100は、記憶媒体38に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理装置1の動作を制御する。なお、プログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体38に記憶されていたものであって、他の記憶媒体から制御部100の記憶媒体38にインストールされたものであってもよい。
【0074】
コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体38としては、例えばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0075】
処理槽27内のエッチング液は、エッチング処理が行われ、例えば、基板8にエッチング液が付着した状態で搬送されることで減少する。そのため、基板処理装置1は、所定のタイミング、例えば、所定回数のエッチング処理が終了したタイミングで、薬液を外槽45に補充し、シリコン濃度の調整を行う。具体的には、基板処理装置1は、薬液を外槽45に補充しつつ、ダミー基板を内槽44に浸漬させて、エッチング液を循環させることでエッチング液のシリコン濃度を調整する。
【0076】
薬液を補充すると、エッチング液におけるシリコン濃度が低くなる。シリコン濃度と、シリコン酸化膜(被膜)のエッチングレートとには相関関係があり、シリコン濃度が低くなると、ダミー基板におけるシリコン酸化膜のエッチングレートが大きくなることが知られている。
【0077】
そのため、エッチング液に薬液を補充すると、
図3に示すように、薬液の補充量が多くなるにつれて、シリコン酸化膜のエッチングレートが大きくなる。
図3は、薬液の補充量と、シリコン酸化膜のエッチングレートとの関係を示すマップである。なお、シリコン酸化膜のエッチングレートは、エッチング液の温度や、リン酸水溶液の濃度に応じて変化する。ここでは、エッチング液の温度は、一定であり、リン酸水溶液の濃度も、一定である。
【0078】
また、エッチング液にダミー基板を浸漬すると、ダミー基板からシリコンが溶解し、エッチング液のシリコン濃度が高くなる。そのため、ダミー基板の浸漬時間が長くなると、
図4に示すように、シリコン酸化膜のエッチングレートが小さくなる。
図4は、ダミー基板の浸漬時間と、シリコン酸化膜のエッチングレートとの関係を示すマップである。なお、エッチング液の温度は、一定であり、リン酸水溶液の濃度も、一定である。また、単位時間当たりのシリコンの溶解量は、ダミー基板の枚数や、ダミー基板の成膜状態などに応じても変化する。ここでは、ダミー基板の枚数は、予め設定された枚数(例えば、50枚)である。また、ダミー基板の成膜状態は、予め設定された状態である。
【0079】
このように、シリコン酸化膜のエッチングレート、すなわちシリコン濃度の変化は、薬液の補充量と、ダミー基板の浸漬時間とに関係している。そのため、シリコン酸化膜のエッチングレートを一定とする、ダミー基板の浸漬時間と薬液の補充量との関係は、
図5のように示すことができる。
図5は、シリコン酸化膜のエッチングレートを一定とする、ダミー基板の浸漬時間と薬液の補充量との関係を示すマップである。
図5に示すマップでは、直線の傾きが、エッチング液のシリコン濃度を一定に保ちつつ、薬液を補充することができる薬液の供給速度を示す。
【0080】
なお、ダミー基板の浸漬時間と、シリコン酸化膜のエッチングレートとの関係は、
図4に示すように必ずしも線形とはならない。しかし、薬液を補充する際に変化するシリコン酸化膜のエッチングレートは、小さいため、実際の補充範囲内で線形近似することができる。そのため、線形近似した、ダミー基板の浸漬時間と、シリコン酸化膜のエッチングレートとの関係から、
図5に示すように、シリコン酸化膜のエッチングレートを一定とする、ダミー基板の浸漬時間と薬液の補充量との関係を求めることができる。
【0081】
このようなマップは、シリコン酸化膜のエッチングレート、すなわちシリコン濃度毎にデータとして記憶媒体38に記憶されている。なお、
図5に示すマップに対応する表や、計算式が、データとして記憶媒体38に記憶されてもよい。このようなデータは、所定のシリコン濃度に対する薬液の補充量とダミー基板の浸漬時間とに関するデータであり、予め実験などによって取得され、記憶媒体38に記憶される。
【0082】
なお、データは、例えば、エッチング液の温度や、リン酸水溶液の濃度や、ダミー基板の枚数や、ダミー基板の成膜状態に応じて複数記憶されてもよい。これにより、エッチング液の温度などに応じてエッチング液のシリコン濃度を一定に保ちつつ、薬液を補充することできる。
【0083】
基板処理装置1では、エッチング液のシリコン濃度が、薬液を補充する前の所定濃度に維持されるように、薬液の供給速度が制御されて薬液が供給され、ダミー基板がエッチング液に浸漬される。
【0084】
次に、本実施形態に係るエッチング液の補充制御について
図6を参照し説明する。
図6は、エッチング液の補充制御を説明するフローチャートである。
【0085】
基板処理装置1は、現在のエッチング液におけるシリコン濃度を検出する(S10)。基板処理装置1は、現在のエッチング液におけるシリコン酸化膜のエッチングレートを検出し、シリコン酸化膜のエッチングレートに基づいてシリコン濃度を検出する。なお、シリコン酸化膜のエッチングレートに基づいたシリコン濃度は、作業者により、基板処理装置1に入力されてもよい。また、基板処理装置1は、循環路55にシリコン濃度センサを設け、シリコン濃度センサを用いてエッチング液から直接シリコン濃度を検出してもよい。
【0086】
基板処理装置1は、薬液の補充量を設定する(S11)。例えば、基板処理装置1は、処理槽27におけるエッチング液の設定量と、現在のエッチング液の量との差に基づいて薬液の補充量を設定する。薬液の補充量は、予め設定された一定の量であってもよい。
【0087】
基板処理装置1は、ダミー基板の浸漬時間を設定する(S12)。基板処理装置1は、薬液の補充量に対するダミー基板の浸漬時間を設定する。具体的には、基板処理装置1は、
図5に示すマップから薬液の補充量に対するダミー基板の浸漬時間を設定する。基板処理装置1は、検出したシリコン濃度に対応するマップを複数のマップの中から選択して読み出し、選択したマップに基づいてダミー基板の浸漬時間を設定する。すなわち、基板処理装置1は、シリコンの補充量を設定する。
【0088】
基板処理装置1は、薬液の供給速度を設定する(S13)。基板処理装置1は、薬液の補充量と、ダミー基板の浸漬時間とに基づいて、ダミー基板の浸漬時間を設定する際に用いたマップから薬液の供給速度を設定する。基板処理装置1は、シリコン濃度が薬液を補充する前の所定濃度に維持されるように、薬液の供給速度を設定する。この工程は、準備工程に対応する。
【0089】
基板処理装置1は、薬液を補充し、エッチング液のシリコン濃度を調整する(S14)。基板処理装置1は、設定した薬液の供給速度に基づいて薬液を外槽45に供給する。また、基板処理装置1は、ダミー基板を内槽44のエッチング液に浸漬し、シリコンをエッチング液に溶解させる。この工程は、補充工程に対応する。
【0090】
基板処理装置1は、浸漬時間が経過したか否かを判定し(S15)、浸漬時間が経過した場合には(S15:Yes)、今回の処理を終了する。
【0091】
基板処理装置1は、浸漬時間が経過していない場合には(S15:No)、薬液の補充およびシリコン濃度の調整(S14)を継続する。
【0092】
このように、基板処理装置1は、エッチング液の減少に対し、薬液の補充量とシリコンの補充量とに基づいて薬液の供給速度を設定する。そして、基板処理装置1は、設定された供給速度で薬液を供給しつつ、ダミー基板をエッチング液に浸漬し、シリコンをエッチング液に溶解させる。
【0093】
これにより、基板処理装置1は、エッチング液のシリコン濃度を、薬液を補充する前の所定濃度に維持しつつ、薬液を補充することができる。すなわち、基板処理装置1は、薬液を供給する工程と、シリコン濃度を調整する工程とを同時に行うことができる。
【0094】
そのため、基板処理装置1は、例えば、薬液を供給した後に、ダミー基板をエッチング液に浸漬する場合、すなわち、薬液を供給する工程と、シリコン濃度を調整する工程とが別々に行われる場合と比較して、作業工程を少なくすることができる。従って、基板処理装置1は、エッチング液の補充時間を短くすることができる。
【0095】
基板処理装置1は、シリコン濃度と、薬液の補充量と、ダミー基板の浸漬時間とに関するデータに基づいて薬液の供給速度を設定することで、薬液の供給速度を容易に設定することができる。
【0096】
基板処理装置1は、設定された供給速度により薬液を供給することで、薬液を補充した後のシリコン濃度を、薬液を補充する前の所定濃度に維持することができる。
【0097】
次に、本実施形態に係る基板処理装置1の変形例について説明する。
【0098】
変形例に係る基板処理装置1は、コロイダルシリカなどのシリコン含有化合物をリン酸水溶液に溶解させて、シリコン濃度を調整してもよい。また、変形例に係る基板処理装置1は、シリコン含有化合物水溶液をリン酸水溶液に添加してシリコン濃度を調整してもよい。変形例に係る基板処理装置1は、例えば、単位時間当たりのシリコン含有化合物の溶解量、シリコン含有化合物水溶液の供給速度に基づいて薬液の供給速度を設定する。これらによっても、実施形態に係る基板処理装置1と同様の効果を得ることができる。
【0099】
変形例に係る基板処理装置1は、薬液の補充を行う場合に、薬液を補充した後のシリコン濃度を変更してもよい。変形例に係る基板処理装置1は、薬液の供給速度を変更することで、薬液を補充した後のシリコン濃度を変更する。
【0100】
上記実施形態の準備工程で設定した薬液の補充量と、浸漬時間と、薬液の供給速度に基づき補充工程を行った場合には、
図7において実線で示すように、シリコン濃度は、所定濃度に維持され、変化しない。
図7は、薬液の供給速度に対するシリコン濃度の変化を示すマップである。
【0101】
シリコン濃度を所定濃度に維持する供給速度よりも薬液の供給速度が小さい場合には、
図7において破線で示すように、シリコン濃度は、所定濃度よりも高くなり、薬液の供給速度が小さくなるほど、所定濃度よりも高くなる。また、シリコン濃度を所定濃度に維持する供給速度よりも薬液の供給速度が大きい場合には、
図7において一点鎖線で示すように、シリコン濃度は、所定濃度よりも低くなり、薬液の供給速度が大きくなるほど、所定濃度よりも低くなる。
【0102】
例えば、変形例に係る基板処理装置1は、薬液を補充する前の所定濃度よりもシリコン濃度を高くする場合には、シリコン濃度を所定濃度に維持する供給速度よりも薬液の供給速度を小さくする。また、例えば、変形例に係る基板処理装置1は、薬液を補充する前の所定濃度よりもシリコン濃度を低くする場合には、シリコン濃度を所定濃度に維持する供給速度よりも薬液の供給速度を大きくする。このように、変形例に係る基板処理装置1は、薬液の供給速度を変更することで、薬液を補充した後のシリコン濃度を変更することができる。
【0103】
また、変形例に係る基板処理装置1は、薬液の補充中にシリコン濃度を検出し、検出したシリコン濃度に基づいて薬液の供給速度を変更してもよい。例えば、変形例に係る基板処理装置1は、薬液の供給速度を設定し、設定した供給速度で薬液を補充している途中で、シリコン濃度を検出する。そして、変形例に係る基板処理装置1は、検出したシリコン濃度が、薬液を補充する前の所定濃度と異なる濃度である場合に、シリコン濃度が薬液を補充する前の所定濃度となるように設定した薬液の供給速度を変更してもよい。
【0104】
これにより、変形例に係る基板処理装置1は、薬液を補充中のシリコン濃度、および薬液を補充した後のシリコン濃度を、所望するシリコン濃度に精度よく調整することができる。
【0105】
変形例に係る基板処理装置1は、
図8に示すように、予備タンク60を有してもよい。
図8は変形例に係るエッチング用の処理槽27の構成を示す概略ブロック図である。また、変形例に係る基板処理装置1は、エッチング液のシリコン濃度を検出するシリコン濃度センサ54を循環路55に設け、シリコン濃度センサ54によって現在のエッチング液におけるシリコン濃度を検出する。
【0106】
予備タンク60には、薬液が供給される。すなわち、予備タンク60には、リン酸水溶液供給部40からリン酸水溶液が供給され、純水供給部42から純水(DIW)が供給される。なお、純水供給ライン42Bには、例えば、三方弁42Dが設けられ、三方弁42Dにより、純水の供給を外槽45、または予備タンク60に切り替えることができる。
【0107】
予備タンク60では、減少したエッチング液を補充するためのエッチング液である補充液が生成される。予備タンク60は、予備タンク60内の補充液を循環させる循環ライン61が接続される。循環ライン61には、ポンプ62と、ヒーター63と、シリコン濃度センサ64とが設けられる。ヒーター63をONにした状態でポンプ62を駆動させることで、循環ライン61内の補充液が加温されて循環する。
【0108】
予備タンク60では、薬液が供給されつつ、ダミー基板が浸漬されることで、新たに補充液が生成される。
【0109】
変形例に係る基板処理装置1は、シリコン濃度センサ54によって検出したエッチング液のシリコン濃度と、シリコン濃度センサ64によって検出した予備タンク60の補充液のシリコン濃度とに基づいて、予備タンク60における薬液の供給速度を設定する。変形例に係る基板処理装置1は、予備タンク60における補充液のシリコン濃度が、内槽44(外槽45)のエッチング液のシリコン濃度となるように、薬液の供給速度を設定する。
【0110】
予備タンク60で生成された補充液は、予備タンク60と外槽45とを接続する供給ライン65を介して外槽45に供給される。供給ライン65には、ポンプ66と、第4流量調整器67とが設けられる。
【0111】
なお、リン酸水溶液供給部40は、リン酸水溶液の供給を外槽45および予備タンク60に切り替える三方弁(不図示)を有してもよい。
【0112】
変形例に係る基板処理装置1は、予備タンク60において補充液を予め生成することができ、エッチング液の補充時間を短くすることができる。また、変形例に係る基板処理装置1は、シリコン濃度センサ54、64によってシリコン濃度を検出することで、シリコン濃度の検出精度を向上させることができる。
【0113】
変形例に係る基板処理装置1は、
図9に示すように、リン酸水溶液排出部41によって排出されるエッチング液を予備タンク60に供給し、貯留してもよい。
図9は、変形例に係るエッチング用の処理槽27の構成を示す概略ブロック図である。
【0114】
変形例に係る基板処理装置1の予備タンク60では、リン酸水溶液排出部41によって排出されたエッチング液に対して、薬液が供給され、ダミー基板が浸漬されて、新たな補充液が生成される。
【0115】
変形例に係る基板処理装置1は、リン酸水溶液排出部41によって排出されたエッチング液を用いることで、エッチング液を再利用することができる。また、変形例に係る基板処理装置1は、ダミー基板から溶解させるシリコンの量を少なくすることができ、コストを低減することができる。なお、リン酸水溶液排出部41から予備タンク60へは、排出されるエッチング液の一部が供給されてもよい。
【0116】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。