(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料がプラズマ処理される処理室と、プラズマを生成するための第1高周波電力を供給する第1高周波電源と、試料が載置される試料台と、前記試料台に第2高周波電力を供給する第2高周波電源とを備えるプラズマ処理装置において、
前記第1高周波電力をパルス変調するための第1パルスと前記第2高周波電力をパルス変調するための第2パルスを生成するパルス生成ユニットをさらに備え、
前記第1パルスは、オフ期間と第1期間と第2期間とを有し、
前記第1期間は、第1振幅の期間である第1振幅期間と第2振幅の期間である第2振幅期間とを有し、
前記第1振幅は、前記第2振幅より小さく、
前記第2期間の振幅は、前記第1期間の振幅より大きく、
前記第2パルスは、前記第2期間の間、オン期間となることを特徴とするプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜
図10を用いて、本発明の一実施の形態のプラズマ処理装置について詳細に説明する。
【0015】
[プラズマ処理装置]
図1は、本発明の実施の形態のプラズマ処理装置1として、特にECR方式のマイクロ波プラズマエッチング装置の縦断面の概略構成を示す。なお、説明上、縦および軸に対応する鉛直方向をZ方向として示す。水平方向や半径方向を構成する2つの方向をX方向およびY方向として示す。プラズマ処理装置1における、処理室、試料台、試料等の各部は、概略的に円筒や円柱や円板等の軸対称形状を有する。その軸方向(一点鎖線で示す)がZ方向に相当し、半径方向がX方向またはY方向に相当する。本実施の形態のプラズマ処理装置1は、軸対称形状の空間や試料におけるプラズマ等の分布やエッチング速度等の分布を制御する。
【0016】
図1で、プラズマ処理装置1は、制御部120、真空容器101、処理室104、シャワープレート102、誘電体窓103、ガス供給装置105、真空排気装置106、試料台である試料載置用電極111、導波管107、電磁波発生用電源109、パルス生成ユニット121、磁場生成コイル110、高周波バイアス電源114、直流電源116、等を備える。
【0017】
真空容器101は、上部の一部が開放されて、導波管107と接続されている。真空容器101の上部には、シャワープレート102と誘電体窓103とが設置されて、密封されている。これにより、真空容器101内に、プラズマ処理室である処理室104が形成されている。シャワープレート102は、真空容器101内すなわち処理室104内に、エッチングガスを導入するための複数の孔が設けられた、例えば石英製のプレートである。シャワープレート102には、ガス管を通じて、エッチングガスを流すためのガス供給装置105が接続されている。
【0018】
また、真空容器101の底面には、排気用開閉バルブ117および排気速度可変バルブ118を介して、真空排気装置106が接続されている。処理室104内部は、プラズマ処理装置1が排気用開閉バルブ117を開として真空排気装置106を駆動することで減圧され、真空状態となる。処理室104内の圧力は、排気速度可変バルブ118によって所望の圧力に調整される。エッチングガスは、ガス供給装置105からシャワープレート102を介して処理室104内に導入され、排気速度可変バルブ118を介して真空排気装置106によって排気される。
【0019】
また、Z方向の軸上で、シャワープレート102に対向して、真空容器101内の下部には、試料台である試料載置用電極111が設けられている。試料載置用電極111上には、試料であるウエハ112が配置される。ウエハ112は円板状である。ウエハ112の上面の被エッチング材に対してエッチングが行われることで、半導体素子のための回路パターンが形成される。
【0020】
プラズマを生成するための高周波電力を処理室104に供給するために、誘電体窓103の上方には、Z方向の軸に沿って、電磁波を伝送する導波管107が設けられている。導波管107は、Z方向に延在して真空容器101の開口部に連通する導波管部と、コーナー部を通じて曲がって水平方向(例えばX方向)に延在する導波管部とを有する。
【0021】
また、真空容器101内で誘電体窓103の上方には、導波路の一部として円柱状の空間部が形成されている。導波管107を伝送された電磁波は、この空間部でも伝送されて、誘電体窓103を透過して、処理室104内に供給される。
【0022】
導波管107へ伝送される電磁波は、電磁波発生用電源109から整合器119を介して発振させられる。電磁波発生用電源109は、第1高周波電源であり、プラズマを生成するための電磁波(第1高周波電力161)、特にマイクロ波を発生して、導波管107へ供給する。電磁波発生用電源109は、パルス生成ユニット121からの第1パルス151に基づいて、パルス変調されたマイクロ波(第1高周波電力161)を出力する。
【0023】
電磁波発生用電源109および高周波バイアス電源114には、電気的接続回路を通じてパルス発生ユニット121が接続されている。パルス発生ユニット121により、電磁波発生用電源109からのマイクロ波を、
図2に示すように任意に設定可能な繰り返し周波数でパルス変調(特に時間変調)することができる。パルス発生ユニット121は、電磁波発生用電源109の出力(第1高周波電力161)をパルス変調された出力とするための第1パルス151(
図2での位相調整後電磁波変調用パルス信号P3)を生成し、電磁波発生用電源109に供給する。これにより、電磁波発生用電源109から、出力の電磁波(第1高周波電力161)として、パルス変調されたマイクロ波が発生される。
【0024】
なお、本実施の形態の効果は、第1高周波電力161として使用する電磁波の周波数によって特に限定されるものではない。本実施の形態のプラズマ処理装置1では、電磁波発生用電源109からの電磁波の周波数として2.45GHzとしたマイクロ波を使用する。
【0025】
処理室104の外部、真空容器101の外側には、磁場を生成する磁場生成コイル110が設けられている。真空容器101の上部の側壁の外側、および上面の上側に、磁場生成コイル110が配置されている。電磁波発生用電源109から発振された電磁波は、磁場生成コイル110により生成された磁場との相互作用によって、ECRを生起し、処理室104内に高密度プラズマを生成する。また、高周波バイアス電源114からは試料載置用電極111へ高周波バイアスが供給される。これらにより、試料台である試料載置用電極111上に配置されたウエハ112にエッチング処理が施される。
【0026】
シャワープレート102、試料載置用電極111、磁場生成コイル110、排気用開閉バルブ117、排気速度可変バルブ118、およびウエハ112等の各部は、処理室104の中心軸(一点鎖線)に対し同軸上に配置されている。そのため、エッチングガスの流れや、プラズマにより生成されたラジカルおよびイオン、更にはエッチングにより生成された反応生成物は、ウエハ112に対し同軸の方向(Z方向)に導入されて排気される。この同軸および軸対称形状の配置は、エッチングレート、エッチング形状のウエハ面内均一性を、軸対称の分布に近付けて、ウエハ処理の均一性を向上させる効果がある。
【0027】
試料載置用電極111は、その電極表面が、図示しない溶射膜で被覆されており、高周波フィルタ115を介して直流電源116と接続されている。さらに、試料載置用電極111には、マッチング回路113を介して高周波バイアス電源114が接続されている。
【0028】
高周波バイアス電源114は、第2高周波電源であり、高周波バイアスである第2高周波電力162を発生し、試料載置用電極111へ供給する。高周波バイアス電源114は、パルス発生ユニット121からの第2パルス152に基づいて、パルス変調された第2高周波電力162を発生する。パルス発生ユニット121は、第2高周波電力162をパルス変調(特に時間変調)された出力とするための第2パルス152(
図2での位相調整後高周波バイアス変調用パルス信号P4)を生成し、高周波バイアス電源114へ供給する。制御部120からの制御に基づいて、高周波バイアス電源114からは、時間変調された第2高周波電力162を、試料載置用電極111に選択的に供給することができる。
【0029】
なお、本実施の形態の効果は、高周波バイアス電源114の高周波バイアスの周波数によっては特に限定されない。本実施の形態のプラズマ処理装置1は、その周波数として400kHzとした高周波バイアスを使用する。
【0030】
制御部120は、上述のECR方式のマイクロ波プラズマエッチング装置であるプラズマ処理装置1を制御する。制御部120は、計算機またはIC基板等で構成される。制御部120は、パルス生成ユニット121、電磁波発生用電源109、ガス供給装置105、排気速度可変バルブ118、直流電源116、高周波バイアス電源114等の各部と電気的に接続されている。制御部120は、パルス発生ユニット121等の動作を制御する。制御部120は、図示しない入力手段による入力に基づいて、電磁波発生用電源109、高周波バイアス電源114、およびパルス発生ユニット121のパルスのオン・オフのタイミングを含む繰り返し周波数やデューティー比等の制御パラメータを制御する。また、制御部120は、図示しない入力手段による入力に基づいて、エッチングを実施するためのガス流量、処理圧力、電磁波電力、高周波バイアス電力、コイル電流、パルスのオン時間およびオフ時間等の、エッチングパラメータを制御する。
【0031】
なお、デューティー比とは、パルスの一周期に対するオン期間の割合のことである。本実施の形態の例では、パルスの繰り返し周波数は、5Hz〜10kHzまでの範囲で変更でき、デューティー比は、1%〜90%までの範囲で変更できる。また、時間変調の設定は、オン時間でもオフ時間でも可能である。
【0032】
パルス発生ユニット121は、制御部120からの制御に基づいて、第1高周波電力161を時間変調するための第1パルス151を電磁波発生用電源109に送信するとともに、第2高周波電力162を時間変調するための第2パルス152を高周波バイアス電源114に送信する。
【0033】
[制御部およびパルス生成ユニット]
図2を用いて、電磁波発生用電源109から時間変調された電磁波(第1高周波電力161)を発生する場合と、高周波バイアス電源114から時間変調された高周波バイアス(第2高周波電力162)を試料載置用電極111に供給する場合とについて説明する。
【0034】
図2は、上記電磁波発生および高周波バイアス供給を行う場合の制御部120およびパルス生成ユニット121等の構成を示す。制御部120は、電磁波発生用電源109および高周波バイアス電源114をそれぞれパルス変調するための時間情報(言い換えると制御信号)C1を、パルス発生ユニット121に送信する。この時間情報(制御信号)C1は、繰り返し周波数、デューティー比、電磁波発生用電源109のオンのタイミングと高周波バイアス電源114のオンのタイミング、電磁波発生用電源出力値、および高周波バイアス電源出力値、を合わせた時間情報である。
【0035】
制御部120からパルス発生ユニット121へは、時間情報C1として、電磁波発生用電源109のパルス変調用波形である第1パルス151と高周波バイアス電源114のパルス変調用波形である第2パルス152とを同期させるか、非同期させるかを選択する情報も送信される。また、制御部120からパルス発生ユニット121へは、時間情報C1として、電磁波発生用電源109の出力における後述のパルスオン期間の二値以上の出力値とそれに係わる時間情報も送信される。
【0036】
パルス発生ユニット121から電磁波発生用電源109および高周波バイアス電源114へは、それぞれ、制御されたタイミングで、パルス出力制御のための時間情報が送信される。すなわち、パルス発生ユニット121から電磁波発生用電源109へは第1パルス151として位相調整後電磁波変調用パルス信号P3が供給される。パルス発生ユニット121から高周波バイアス電源114へは第2パルス152として位相変調後高周波バイアス変調用パルス信号P4が供給される。電磁波発生用電源109は、パルス発生ユニット121からの第1パルス151(位相調整後電磁波変調用パルス信号P3)に基づいて、時間変調された電磁波を第1高周波電力161として発生させる。高周波バイアス電源114は、パルス発生ユニット121からの第2パルス152(位相変調後高周波バイアス変調用パルス信号P4)に基づいて、時間変調された高周波バイアス電力を第2高周波電力162として発生させる。
【0037】
パルス発生ユニット121は、回路として、パルス生成部201、位相制御部202を含む。パルス生成部201は、基準となるパルスとして、電磁波変調用パルス信号P1および高周波バイアス変調用パルス信号P2を生成し出力する。位相制御部202は、入力されたパルスの位相を制御して、位相調整されたパルスを出力する。パルス生成部201からの電磁波変調用パルス信号P1は、位相制御部202で位相調整され、出力である位相調整後電磁波変調用パルス信号P3が、第1パルス151として電磁波発生用電源109へ供給される。
【0038】
本実施の形態のプラズマ処理装置1は、制御部120からパルス発生ユニット121、およびパルス発生ユニット121から電磁波発生用電源109への回路において、第1高周波電力161のパルス変調の制御のための信号として、以下のような信号を送信する。すなわち、プラズマ発生ユニット121は、パルス生成部201および位相制御部202を介して、電磁波変調用パルス信号P1および位相調整後電磁波変調用パルス信号P3として、パルスオン期間に、二値あるいは三値の電磁波発生用電源出力値と時間情報を連続して送信する。電磁波発生用電源出力値は、電磁波発生用電源109の出力の第1高周波電力161(マイクロ波)におけるパルスオン期間での出力値を指す。
【0039】
例えば、電磁波変調用パルス信号P1は、パルス生成部201からの出力の3本のラインで示す、三値の電磁波発生用電源出力値として、出力値a1、出力値a2、出力値a3を有する。同様に、位相調整後電磁波変調用パルス信号P3は、位相調整部202からの出力の3本のラインで示す、三値の電磁波発生用電源出力値として、出力値a1、出力値a2、出力値a3を有する。それぞれの出力値には時間情報を伴う。なお、
図2の構成例では、電磁波変調用パルス信号P1および位相調整後電磁波変調用パルス信号P3は、三値(a1,a2,a3)に対応可能な形態とする場合の3本のラインとして示している。二値(a1,a2)のみに対応可能な形態としてもよいし、三値のうち二値を選択して使用可能な形態としてもよい。
【0040】
これにより、プラズマ処理装置1は、電磁波発生用電源109から、第1高周波電力161として、時間変調され、かつ、パルスオン期間に二値あるいは三値の出力値を持つ電磁波であるマイクロ波を連続して発生させる。例えば、後述の
図4の第1ケースのマイクロ波出力401における第1出力411および第2出力412は、パルスオン期間の二値の出力値(a1,a2)と対応している。
【0041】
また、パルス発生ユニット121は、パルス生成部201から出力された高周波バイアス変調用パルス信号P2を、位相制御部202で位相調整し、出力である位相調整後高周波バイアス変調用パルス信号P4を、第2パルス152として高周波バイアス電源114へ供給する。高周波バイアスは、パルスオン期間で1つの出力値を有する。
図2では、高周波バイアス変調用パルス信号P2および位相調整後高周波バイアス変調用パルス信号P4を1本のライン(点線)で示している。
【0042】
[整合器]
図3を用いて、電磁波発生用電源109より発振された電磁波(第1高周波電力161)を整合する整合器119について説明する。
図3は、実施の形態での整合器119の構成例を示す。電磁波発生用電源109より発振された電磁波311は、第1高周波電力161およびマイクロ波に対応する。電磁波311は、前述のように、時間変調された、パルスオン期間で二値(a1,a2)あるいは三値(a1,a2,a3)の出力値を持つ。本例では、電磁波311を、三値(a1,a2,a3)に対応可能な形態における3本のラインで示している。
【0043】
電磁波311は、整合器119を介して、調整後電磁波312として、導波管107へ伝送される。整合器119では、電磁波311を、調整器301に入力して調整し、調整後電磁波312を導波管107へ供給する。プラズマ処理装置1の整合器119は、第1高周波電力161(電磁波311)の出力値におけるパルスオン期間での二値以上の出力値をモニタするために、少なくとも2つの検波器を有する。
図3の構成例では、三値に対応可能な形態として、3つの検波器として、検波器(第1検波器)302、検波器(第2検波器)303、および検波器(第3検波器)304が設けられている。電磁波311の出力値における二値あるいは三値の調整を、パルスオン期間に連続して行う場合、その電磁波311の出力値の数に応じた数の検波器を設けることが望ましい。このような整合器119の構成によって、遅延なく連続的に調整が可能となる。
【0044】
電磁波311の出力値が二値である形態の場合には、それに応じた2個の検波器302,303が設けられる。電磁波311の出力値が三値である形態の場合には、それに応じた3個の検波器302,303,304が設けられる。なお、プラズマ処理装置1は、
図2および
図3のような三値の出力値に対応可能な回路の構成において、後述の出力制御のパターンに応じて、二値の出力値とするように制御することも可能である。
【0045】
図3の構成例では、調整器301の出力における三値に対応する3本の電気的接続回路のラインには、分岐する形で、検波器302,303,304が接続されている。調整器301での調整は、検波器302,303,304によって電磁波を逐次モニタすることで実施される。例えば、調整器301の出力の第1ラインには、分岐して検波器302が接続されており、検波器302の出力のラインが、モニタ値313として、調整器301に入力される。他の検波器303,304についても同様である。調整器301から導波管107への出力の調整後電磁波312における三値の出力値を(b1,b2,b3)で示す。
【0046】
[パルス出力制御]
次に、実施の形態のプラズマ処理装置1における詳細構成例として、各種のパルス出力制御の例について説明する。本発明者は、エッチング速度分布の偏りとCDの差異とを同時に避ける方法として、マイクロ波オン期間でマイクロ波出力値を二値以上設定する方法、および対応するプラズマ処理装置1のパルス生成ユニット121等の構成を工夫した。プラズマ処理装置1は、制御部120からパルス生成ユニット121を時間情報C1(
図2)によって制御することで、以下の各種のパルス出力制御を実現できる。以下では、制御部120およびパルス発生ユニット121を通じた、各パルス出力制御の例を、各ケース(第1ケース〜第4ケースとする)として説明する。
【0047】
[第1ケース]
図4は、パルス出力制御に関する第1ケースにおける、パルス変調されたマイクロ波出力401、パルス変調された高周波バイアス出力402、およびプラズマ密度403における時間的な関係を表すタイミングチャートを示す。マイクロ波出力401は、第1パルスと対応し、電磁波発生用電源109からの電磁波としてマイクロ波(第1高周波電力161)の出力に対応する。高周波バイアス出力402は、第2パルスと対応し、高周波バイアス電源114からの高周波バイアス(第2高周波電力162)の出力に対応する。プラズマ密度403は、マイクロ波出力401および高周波バイアス出力402の両方による制御が行われた場合に、処理室104内でウエハ112上方に形成されるプラズマの密度に対応する。
【0048】
マイクロ波出力401は、図示の通り、周期(周期時間450)毎に、オフ期間430、第1期間431、および第2期間432を有し、第1期間431の第1出力411と第2期間432の第2出力412とで連続して二値の出力値が出力される。オフ期間430は例えば時刻t0から時刻t1までの期間である。第1出力411は、例えば時刻t1から時刻t2までの第1期間431でオン状態である第1出力値を示す。第2出力412は、例えば時刻t2から時刻t3までの第2期間432でオン状態である第2出力値を示す。第1出力411および第2出力412は、
図2および
図3での二値(a1,a2)や二値(b1,b2)と対応している。また、マイクロ波出力401における一周期(周期時間450)のうち、パルスオン期間441、およびパルスオフ期間440を示す。パルスオン期間441は、上記第1期間431と第2期間432とで構成されている。パルスオフ期間440はオフ期間430と対応している。
【0049】
この際、プラズマ処理装置1の特に制御部120は、マイクロ波出力401の第2出力412(第2期間432)と同期させるように、パルス生成ユニット121で位相を変調させることで、高周波バイアス出力402をオンする。これにより、高周波バイアス出力402のパルスオン期間461での第1出力421となる。パルスオン期間461は、上記第2期間432と同じく例えば時刻t2から時刻t3までの期間である。パルスオン期間461の前には、パルスオフ期間460を有する。パルスオフ期間460は、上記第1期間431と対応した例えば時刻t1から時刻t2までの期間(オフ期間470)を含む。
【0050】
マイクロ波出力401の第1期間431の第1出力411の出力値は、0よりも大きく、かつ、第2期間432の第2出力412の出力値よりも小さい値として設定されている。また、マイクロ波出力401の第1出力411の出力値は、対応する高周波バイアス出力402のパルスオフ期間460(特にオフ期間470)での等方性エッチングを極力抑制する最低の値であることが望ましい。さらに、その出力値は、マイクロ波出力401の第1出力411から第2出力412への移行(例えば時刻t2)、プラズマオフからプラズマオン、または、プラズマオンのままステップを切り替えた場合に、プラズマ密度が不安定にならず、プラズマが着火あるいは継続する最低の値であることが望ましい。すなわち、マイクロ波出力401の第1出力411の目的は、等方性エッチングを極力抑制しつつ、かつ、高周波バイアス出力402のパルスオン期間461のプラズマ密度の安定化にある。
【0051】
本発明者は、パルスオン期間中のプラズマ密度分布の挙動を確認するため、プラズマ密度の時間分解測定をラングミュアプローブ測定法により行った。プラズマ密度403は、図示の通り、マイクロ波出力401の第1出力411の第1期間431(対応する高周波バイアス出力402のパルスオフ期間460、特にオフ期間470)で、ある程度安定してから、第2出力412の第2期間432へ移行するため、直ちに安定する。図示のように、第2期間432(対応する高周波バイアス出力402のパルスオン期間461)、例えば時刻t2から時刻t3までの期間では、プラズマ密度が安定している。本実施の形態では、このプラズマ密度が安定した期間に、高周波バイアス出力402がオンされている。すなわち、パルスオン期間461で第1出力421とされている。これにより、プラズマ中のイオン分布が均一な状態でウエハ112上に引き込まれ、エッチング速度分布が均一となる。さらに、マイクロ波出力401の第1出力411の値は極力小さい値に設定されているため、等方性エッチングが抑制でき、デバイス特性を良好に保つことができる。
【0052】
図4で、第1高周波電力161に対応するマイクロ波出力401の出力値は、パルスオン期間441における第1期間431および第2期間432で、第1出力411および第2出力412として二値が連続で出力されている。パルスオン期間441では、第2高周波電力162に対応する高周波バイアス電力402のパルスオン期間461の前に、パルスオフ期間460、特にオフ期間470を有する。このパルスオフ期間460、特にオフ期間470と、第1出力411の第1期間431とが対応している。第2高周波電力162のパルスオフ期間460、特にオフ期間470での第1高周波電力の第1出力411の出力値は、0よりも大きく、かつ、第2高周波電力162のパルスオン期間461での第1高周波電力161の第2出力412の出力値よりも小さい値として設定されている。第1パルスにおける第1期間431の振幅値(第1出力411)は有限の値である。第2期間432の振幅(第2出力412)は、第1期間431の振幅(第1出力411)よりも大きい。第2パルスは、第2期間432の間、オン期間(パルスオン期間461)となる。
【0053】
制御パラメータとして、マイクロ波出力401に関するパルス周波数、デューティー比、およびオン時間とオフ時間の比を有する。パルス周波数は、オン(パルスオン期間441)とオフ(パルスオフ期間440)の繰り返し周波数である。デューティー比は、オンとオフの繰り返しの一周期(周期時間450)に対するオン時間(パルスオン期間441)の比である。オン時間とオフ時間の比は、パルスオン期間441とパルスオフ期間440との比である。また、制御パラメータとして、パルスオン期間441における第1出力411のオン時間、および第2出力412のオン時間等を有する。
【0054】
次に、第1高周波電力161に対応するマイクロ波出力値を三値に設定した場合のパルス出力制御例を、
図5、
図6および
図7に、第2ケース、第3ケースおよび第4ケースとして示す。
【0055】
[第2ケース]
図5は、第2ケースにおけるマイクロ波出力501と高周波バイアス出力502とのタイミングチャートを同様に示す。なお、時刻t0〜t7等の値は
図4の例とは異なる。マイクロ波出力501は、周期(周期時間550)毎に、オフ期間530、第1期間531、および第2期間532を有し、第1期間531は、さらに、期間(第1振幅期間)531a、期間(第2振幅期間)531bで構成される。マイクロ波出力501は、周期毎に、パルスオフ期間540、パルスオン期間541を有し、パルスオン期間541は、上記第1期間531、第2期間532で構成されている。パルスオン期間541では、期間531aの第1出力511、期間531bの第2出力512、および第2期間532の第3出力513の三値の出力値が連続して出力される。第1出力511は、例えば時刻t1〜t2の期間531aでオン状態である第1出力値を示す。第2出力512は、例えば時刻t2〜t3の期間531bでオン状態である第2出力値を示す。第3出力513は、例えば時刻t3〜t4の第2期間532でオン状態である第3出力値を示す。第2ケースでは、第1出力511、第2出力512、および第3出力513の順で出力値が大きくなる。第1出力511の出力値は、0よりも大きく、かつ、第2出力512の出力値よりも小さい値として設定されている。第2出力512の出力値は、第3出力513の出力値よりも小さい値として設定されている。期間531aの第1振幅(第1出力511)は、期間531bの第2振幅(第2出力512)よりも小さい。
【0056】
プラズマ処理装置1は、マイクロ波出力501の第3出力513と同期させるように、位相を変調させることで、高周波バイアス出力502をオンする。これにより、高周波バイアス出力502のパルスオン期間561(例えば時刻t3〜t4)での第1出力521となる。第1出力521のパルスオン期間561の前に、パルスオフ期間560(例えば時刻t0〜t3)、特にオフ期間570を有する。そのパルスオフ期間560、特にオフ期間570に対し、マイクロ波出力502の第1出力511の期間531a、および第2出力512の期間531bを有する。第1出力511の出力値は、第1ケースと同様に、高周波バイアス出力502のパルスオフ期間560、特にオフ期間570での等方性エッチングを極力抑制する最低の値となるように設定される。プラズマ密度は、マイクロ波出力501の第1出力511の期間531aおよび第2出力512の期間531bを通じてある程度安定してから、第3出力513および高周波バイアスのパルスオン期間561へ移行して直ちに安定する。これにより、第2ケースでも、第1ケースと同様に、エッチング速度分布が均一となり、等方性エッチングが抑制できる。
【0057】
[第3ケース]
図6は、第3ケースにおけるタイミングチャートを同様に示す。マイクロ波出力601は、周期(周期時間650)毎に、オフ期間630、第1期間631、および第2期間632を有し、第1期間631は、さらに、期間(第1振幅期間)631a、期間(第2振幅期間)631bで構成される。マイクロ波出力601は、周期毎に、パルスオフ期間640、パルスオン期間641を有し、パルスオン期間641は、上記第1期間631、第2期間632で構成されている。パルスオン期間641では、期間631aの第1出力611、期間631bの第2出力612、および第2期間632の第3出力613の三値の出力値が連続して出力される。第1出力611は、例えば時刻t1〜t2の期間631aでオン状態である第1出力値を示す。第2出力612は、例えば時刻t2〜t3の期間631bでオン状態である第2出力値を示す。第3出力613は、例えば時刻t3〜t4の第2期間632でオン状態である第3出力値を示す。第3ケースでは、第2出力612、第1出力611、および第3出力613の順で出力値が大きくなる。第2出力612の出力値は、0よりも大きく、かつ、第1出力612の出力値よりも小さい値として設定されている。第1出力611の出力値は、第3出力613の出力値よりも小さい値として設定されている。期間631aの第1振幅(第1出力611)は、期間631bの第2振幅(第2出力612)よりも大きい。
【0058】
プラズマ処理装置1は、マイクロ波出力601の第3出力613と同期させるように、位相を変調させることで、高周波バイアス出力602をオンする。これにより、高周波バイアス出力602のパルスオン期間661(例えば時刻t3から時刻t4)の第1出力621となる。第1出力621のパルスオン期間661の前に、パルスオフ期間660(例えば時刻t0〜t3)、特にオフ期間670を有する。そのパルスオフ期間660、特にオフ期間670に対し、マイクロ波出力602の第1出力611の期間631a、および第2出力612の期間631bを有する。第2出力611の出力値は、第1ケースと同様に、高周波バイアス出力602のパルスオフ期間660、特にオフ期間670での等方性エッチングを極力抑制する最低の値となるように設定される。プラズマ密度は、マイクロ波出力601の第1出力611の期間631aおよび第2出力612の期間631bを通じてある程度安定してから、第3出力613および高周波バイアスのパルスオン期間661へ移行して直ちに安定する。これにより、第3ケースでも、第2ケースと同様の効果が得られる。
【0059】
[第4ケース]
図7は、第4ケースにおけるタイミングチャートを同様に示す。マイクロ波出力701は、周期(周期時間750)毎に、所定の期間733、オフ期間730、第1期間731、および第2期間732を有する。マイクロ波出力701は、周期毎に、パルスオフ期間740、パルスオン期間741(オフ期間730と対応する)を有し、パルスオン期間741は、上記所定の期間733、第1期間731、第2期間732で構成されている。パルスオン期間741では、所定の期間733の第1出力711、第1期間731の第2出力712、および第2期間732の第3出力713の三値の出力値を有する。所定の期間733の第1出力711と第1期間731の第2出力712の間にオフ期間730を有する。第2出力712および第3出力713は連続して出力される。第1出力711は、例えば時刻t0から時刻t1までの所定の期間733でオン状態である第1出力値を示す。時刻t1から時刻t2まではオフ期間730とされる。第2出力712は、例えば時刻t2〜t3の第1期間731でオン状態である第2出力値を示す。第3出力713は、例えば時刻t3〜t4の第2期間732でオン状態である第3出力値を示す。第3出力713の後には再び所定の期間733の第1出力値711が続いている。第4ケースでは、第1出力711および第2出力712は、高周波バイアス出力702のパルスオフ期間760、特にオフ期間770,771での等方性エッチングを極力抑制する最低の値となるように設定されている。所定の期間733は、オフ期間730よりも前の期間である。第1期間731は、オフ期間730よりも後の期間である。所定の期間733の振幅値(第1出力711)は、有限の値である。第2期間732の振幅(第3出力713)は、所定の期間733の振幅(第1出力711)よりも大きい。
【0060】
プラズマ処理装置1は、マイクロ波出力701の第3出力713と同期させるように、位相を変調させることで、高周波バイアス出力702をオンする。これにより、高周波バイアス出力702のパルスオン期間761(例えば時刻t3から時刻t4)の第1出力721となる。第1出力721のパルスオン期間761の前に、パルスオフ期間760(例えば時刻t0〜t3)を有する。そのパルスオフ期間760に対し、マイクロ波出力702の第1出力711の所定の期間733、オフ期間730、および第2出力712の第1期間731を有する。プラズマ密度は、マイクロ波出力701の第1出力711の所定の期間733、オフ期間730、および第2出力712の第1期間731を通じてある程度安定してから、第3出力713および高周波バイアスのパルスオン期間761へ移行して直ちに安定する。これにより、第4ケースでも、同様の効果が得られる。これらの第2ケース〜第4ケースを用いても、第1ケースと同様に、エッチング速度分布の偏りとCDの差異とを同時に避ける効果が得られた。
【0061】
図8および
図9には、実施の形態に対する比較例として、従来技術のプラズマ処理装置および方法における、パルス変調されたマイクロ波出力および高周波バイアス出力の関係を示す。
【0062】
[第5ケース]
図8は、比較例における第5ケースでのタイミングチャートを同様に示す。マイクロ波出力801は、周期(周期時間850)毎に、パルスオフ期間840、パルスオン期間841を有し、パルスオン期間841での第1出力811を有する。第1出力811は、例えば時刻t1〜t2のパルスオン期間841でオン状態にされた1つの出力値を示す。比較例のプラズマ処理装置は、マイクロ波出力801の第1出力811と同期させるように、高周波バイアス出力802をオンする。これにより、高周波バイアス出力802のパルスオン期間861(例えば時刻t1から時刻t2)での第1出力821となる。
【0063】
[第6ケース]
図9は、比較例における第6ケースでのタイミングチャートを示す。マイクロ波出力901は、周期(周期時間950)毎に、パルスオフ期間940、パルスオン期間941を有し、パルスオン期間941での第1出力911を有する。第1出力911は、例えば時刻t1〜t3のパルスオン期間941でオン状態にされた1つの出力値を示す。比較例のプラズマ処理装置は、位相変調を用いて、マイクロ波出力901のパルスオン期間941の第1出力911のうち、後半の一部の期間(例えば時刻t2から時刻t3)と同期させるように、言い換えると例えば時刻t1のオンのタイミングよりも遅れた時刻t2のタイミングで、高周波バイアス出力902をオンする。これにより、高周波バイアス出力902のパルスオン期間961(例えば時刻t2〜t3)での第1出力921となる。パルスオン期間961の前にはパルスオフ期間960を有する。
【0064】
この第6ケースでは、マイクロ波出力901の第1出力911のパルスオン期間941よりも、高周波バイアス出力902の第1出力921のパルスオン期間961の方が短い。マイクロ波の第1出力911のパルスオン期間941に対し、高周波バイアスのオフ期間970を有する。すなわち、このオフ期間970として、前述のマイクロ波オン、かつ高周波バイアスオフの期間が生じている。前述のように、このオフ期間970でのマイクロ波の出力値と、パルスオン期間961でのマイクロ波の出力値とが第1出力値911として同じである。そのため、このオフ期間970では、エッチングの反応は、ラジカルエッチングが主体となり、等方性エッチングが進む。等方性エッチングによって、CDに差異が生じてしまう。
【0065】
[エッチング特性]
図10には、上記各パルス出力制御のケースに対応するマイクロ波出力値パターンにおける、エッチング特性の測定値を示す。各ケースとして、第1ケース(
図4)、第2ケース(
図5)、第3ケース(
図6)、および第4ケース(
図7)と、比較例の第5ケース(
図8)および第6ケース6(
図9)とを示す。ウエハ122がポリシリコンである場合のエッチング特性として、エッチング速度[nm/min]と、均一性[%]とを示す。均一性[%]は、0を基準とした正負の率であり、値が0に近いほど高い。第1ケースから第6ケースまで順に、エッチング速度は、{80.1, 75.6, 78.2, 76.5, 83.0, 85.7}となった。均一性は、{1.9, 2.1, 2.4, 2.2, 5.4, 3.5}となった。このように、実施の形態における第1ケースから第4ケースの各ケースでは、比較例の第5ケースおよび第6ケースに比べ、均一性が良好になる結果が得られた。
【0066】
[効果等]
上述したように、本発明の実施の形態のプラズマ処理装置は、試料を載置する試料台(試料載置用電極111)を含み、試料がプラズマ処理される処理室104と、処理室104内にプラズマを生成するための第1高周波電力161(マイクロ波)を供給する第1高周波電源(電磁波発生用電源109)と、試料台に第2高周波電力162(高周波バイアス電力)を供給する第2高周波電源(高周波バイアス電源114)と、第1高周波電力161を時間変調するための第1パルス151を第1高周波電源に送信するとともに、第2高周波電力162を時間変調するための第2パルス152を第2高周波電源に送信するパルス発生ユニット121と、パルス発生ユニット121等を制御する制御部120とを備える。そして、
図4等で示したように、第1高周波電力161の出力値は、パルスオン期間での二値以上の出力値となる。第1高周波電力161のパルスオン期間では、第2高周波電力162のパルスオン期間の前に第2高周波電力162のオフ期間を少なくとも1つ有する。第2高周波電力162のオフ期間での第1高周波電力161の出力値(例えば二値のうちの第1出力値)は、0よりも大きく、かつ、第2高周波電力162のパルスオン期間での第1高周波電力161の出力値(例えば二値のうちの第2出力値)よりも小さい。さらに、プラズマ処理装置1は、
図3で示したように、第1高周波電力161のパルスオン期間の二値以上の出力値をモニタするために、少なくとも2つの検波器を有する。
【0067】
上述した通り、本発明の実施の形態のプラズマ処理装置1によれば、マイクロ波出力値をパルスオン期間での二値以上の出力値とすることで、エッチング速度分布が均一となり、かつ、等方性エッチングが抑制可能となる。これにより、プロセス性能の高精度な制御が可能となる。プラズマ処理装置1の構成によれば、最適なプラズマ状態と高周波バイアスとの組み合わせを制御することが可能となり、高精度なプロセス制御ができる。
【0068】
上述した実施の形態では、マイクロ波ECRプラズマの生成方式を一例として説明したが、容量結合型プラズマや誘導結合型プラズマ等の他のプラズマの生成方式に対応するプラズマ処理装置等においても、本発明を同様に適用可能であり、同様の効果が得られる。また、上述した実施の形態では、マイクロ波出力変調用パルスの繰り返し周波数と高周波バイアス変調用パルスの繰り返し周波数とが等しい場合で説明したが、それらを異なる周波数とした場合でも、同様の効果が得られる。さらに、上述した実施の形態では、エッチング装置およびエッチング処理の場合について説明したが、パルス変調方式を用いる装置であれば、エッチング処理以外のプラズマ処理にも、本発明を同様に適用可能である。
【0069】
以上、本発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前述の実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。